JP2021114931A - 組換え宿主細胞及びそれを用いた有用物質の製造方法 - Google Patents

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誠久 蓮沼
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昭彦 近藤
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涼太 秀瀬
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崇弘 番場
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Abstract

【課題】本発明は、酵母を用いてより効率よく有用物質を生産することができる方法を提供することを課題とする。さらには、有用物質の生産のみならず、細胞自体の生育にも優れる方法を提供することも課題とする。【解決手段】本発明は、鉄硫黄クラスターの生合成を制御する、少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを過剰発現させた組換え宿主細胞において、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドが導入された組換え宿主細胞である。上記鉄硫黄クラスターの生合成を制御するタンパク質は、Tyw1であることが好ましく、上記組換え宿主細胞は、BOL2が欠損していることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、組換え宿主細胞及びそれを用いた有用物質の製造方法に関する。
近年、地球温暖化や化石資源の枯渇等が大きな問題となっている。そのため、バイオマス原料から様々な化合物を生産できるような、微生物を用いた再生可能なプロセスの開発が進められている。このような微生物を用いた化合物生産の例としては、これまでに、酵母や大腸菌等の微生物を用いた、抗マラリヤ薬の原料となるアルテミシニンや、汎用的なプラスチックの原料となる1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール等の生産が代表例として挙げられる(非特許文献1及び2参照)。
これまで、トウモロコシやサトウキビ等の第一世代バイオマスが微生物の発酵原料として使用されてきた。しかしながら、これら第一世代バイオマスは、食料や肥料としての使用と競合し、価格が不安定化する等社会に大きな影響を与えた。そこで、次世代のバイオマスとしては、草や木等のリグノセルロース系バイオマスが注目を浴びている。これらのリグノセルロース系バイオマスは、稲わら、麦わら、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)、コーンストーバー(トウモロコシの芯、茎、葉)のような農産系の廃棄物、あるいはスイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス(いずれもイネ科の植物)、そして廃材、間伐材、林地残材、古紙等といった、安価で大量に存在するものであるため、食料と競合しないことが大きな特徴となっている。
このリグノセルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの主に3つの構成要素からなり、これらが強固に絡み合った構造をとっている。そのため、リグノセルロース系バイオマスを発酵原料として用いる際には、リグニンを除去する前処理の工程、バイオマスに含まれるセルロースやヘミセルロースの酵素による糖化の工程、微生物による発酵の3つのプロセスが必要である。上記前処理の工程では、酢酸やギ酸等の発酵阻害物が発生し、微生物の発酵能をしばしば阻害する。そのため、バイオマスの分解液から直接化合物を生産する際の微生物宿主には、物質生産の宿主としてよく用いられる大腸菌Escherichia coli等の原核生物ではなく、発酵阻害物や弱酸による低pHに耐性のあるSaccharomyces cerevisiae(S.cerevisiae)に代表される酵母が適している。前処理を経て得られたセルロースとヘミセルロースは、糖化酵素を用いてグルコースやキシロースに変換されるが、リグノセルロース系バイオマスには、およそ60〜70%のグルコースと20〜30%のキシロースが微生物の変換できる糖として含まれている。しかしながら、酵母S.cerevisiaeの野生株は、グルコースを変換する代謝経路を持っているものの、キシロースを変換する代謝経路を持っていない。そのため、発酵の工程での糖の変換効率が不十分であるという課題が存在していた。
そこで、近年S.cerevisiaeに他の生物種からキシロース代謝経路を導入し、キシロース変換能を付与する研究が盛んに行われている(非特許文献3参照)。このようなキシロース代謝経路としては、いくつかの真核生物が有する、キシロースをキシロースレダクターゼ(XR)及びキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)を介してキシルロースに変換するXR/XDH経路や、原核生物が有する、キシロースを、キシロースイソメラーゼ(XI)を介してキシルロースに変換するXI経路が知られている。XR/XDH経路では、キシロースがNADPHを補酵素にキシリトールに変換され、続いてキシリトールがNAD+を補酵素にキシルロースへと変換する。一方、XI経路では、キシロースが補酵素なしで直接XIによってキシルロースに変換される。これらの経路によって変換されたキシルロースはキシルロースキナーゼ(XK)によるリン酸化反応によりキシルロース5リン酸(R5P)に変換され、ペントースリン酸経路へと入る。しかし、S.cerevisiaeは、XR、XDH、XKの酵素をそれぞれ有しているが、発現量が低く、野生株ではキシロースをほとんど変換することができない。また、XR/XDH経路では、XRとXDHの使用する補酵素の違いから補酵素バランスが悪く、中間生成物であるキシリトールが蓄積することが大きな課題となる。また、XI経路では、キシロースの消費速度がXR/XDH経路と比較して遅いことが課題となる。また、XKの酵素反応はATPを用いることから、細胞内のエネルギーが消費されること、解糖系の脱炭酸反応により対糖収率が減少すること等が課題として挙げられる。
そこで、これら従来のキシロース代謝経路に代わる新規のキシロース代謝経路が注目されている。この代謝経路では、まずキシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)よりキシロースをキシロノラクトンへと変換し、キシロノラクトンは酵母内生のラクトナーゼまたはキシロノラクトナーゼによりキシロネートへと変換される。キシロネートはキシロネートデヒドラターゼにより2−ケト−3−デオキシ−キシロネート(KDX)へと変換される。この代謝経路は酸化的キシロース代謝経路(XO)経路と呼ばれ、少ない反応数で2−ケトグルタル酸やピルビン酸、グリオキシル酸等の細胞内の重要な代謝物へ変換できる経路である。また解糖系の脱炭酸反応を介さないことから対糖収率100%で目的物質へと変換可能であり、エネルギーを必要とするリン酸化反応もないという利点も有している。近年、大腸菌などの原核生物を宿主に、XO経路の構築及び改変が報告されている(非特許文献4及び5参照)。
このような利点を持つにも関わらず、XR/XDH経路やXI経路と比較して、真核生物である酵母を宿主としたXO代謝経路の導入に関する研究はあまり進展していない。その原因の一つとして、酵母に異種のXO代謝経路を導入しても、この代謝経路を構成する酵素のうち、キシロネートデヒドラターゼであるXylDの活性が非常に低くなることが挙げられる。これを解決するための方法として、FRA2(BOL2)遺伝子を破壊することによりで酵母内でのXylDの活性を強化し、導入したXO代謝経路を機能させて代謝物を得る方法が知られている(特許文献1、非特許文献6及び7参照)。しかし、この方法では、キシロースからの代謝物は得られるものの、キシロースを細胞の生育に用いることができず、キシロースを単一の炭素源とした生育、又はキシロースからの代謝物の生産と酵母自身の生育とを両立させることができない。キシロースを単一の炭素源として生育できないことは、即ち酵母細胞内でキシロース代謝経路が十分に機能していないことを示している。また、本発明者らは酵母の鉄代謝機構を改変することで鉄硫黄タンパク質であるXylDの活性を強化し、導入したブタントリオール生合成系からのブタントリオールの生産性を向上させることに成功した(特許文献2及び非特許文献8参照)。しかし、この方法によっても、キシロースからのブタントリオールの生産性は向上できるものの、キシロースを細胞の生育に用いることはできていない。
国際公開公報2014/162063号 国際公開公報2019/159831号
Nature Chemical Biology, vol.7, 445-452, 2011 Current Opinion in Biotechnology, vol.14, 454-459, 2003 Microbial Cell Factories, vol.16, Article No.82, 2017 Nature Biotechnology, vol.34, 435-440, 2016 Nature Chemical Biology, vol.12, 247-253, 2020 Applied Microbiology and Biotechnology, vol.101, 8151-8163, 2017 Metabolic Engineering, vol.55, 1-11, 2019 Metabolic Engineering, vol.56, 17-27, 2019.
このような状況の中、本発明は、酵母を用いてより効率よく有用物質を生産することができる方法を提供することを課題とする。さらには、有用物質の生産のみならず、細胞自体の生育にも優れる方法を提供することも課題とする。具体的には、酵母(S.cerevisiae)に、新規キシロース代謝経路を導入することで、キシロース代謝機構が十分機能し、キシロースを単一の炭素源として生育が可能になる。更には、発酵の工程での糖の変換効率が向上してエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質を効率よく生産することができると共に、キシロースによって細胞自体の生育も可能であるような新規組換え宿主細胞、及びそれらを用いたエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質の新規製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、本発明者らが以前に開発した方法によって鉄代謝機構を改変したS.cerevisiaeを宿主として、新規キシロース代謝経路を導入し、キシロース単一炭素源で生育できる酵母の開発に成功した。次に、開発した酵母株を用いてグルコースとキシロースの混合糖培地による培養試験を行い、エチレングリコールやグリコール酸等のプラスチック原料として大きな市場を有する化合物の生産にも成功した。
[1]鉄硫黄クラスターの生合成を制御する、少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを過剰発現させた組換え宿主細胞において、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドが導入された組換え宿主細胞。
[2]上記鉄硫黄クラスターの生合成を制御するタンパク質が、Tyw1である、[1]に記載の組換え宿主細胞。
[3]BOL2が欠損している、[1]又は[2]に記載の組換え宿主細胞。
[4]上記キシロース代謝経路が、XO経路(キシロース・オキシダティブ経路;xylose oxidative pathway)である、[1]から[3]のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[5]上記キシロース代謝経路が、ダームス経路又はヴァインベルク経路である、[1]から[4]のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[6]上記キシロース代謝経路がダームス経路であり、上記キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群が、キシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)、及びアルドラーゼである、[1]から[5]のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[7]上記キシロース代謝経路がヴァインベルク経路であり、上記キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群が、キシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼ(XylX)及び2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(XylA)である、[1]から[5]のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[8]上記宿主細胞が、酵母宿主細胞である、[1]から[7]のいずれかに記載の組換え宿主細胞。
[9]上記酵母宿主細胞が、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ブレタノミセス属(Brettanomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジタ属(Candida)、クロッケラ属(Klocckera)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、イサトケンキア属(Issatchenkia)、スワニオミセス属(Schwanniomyces)、トリコスポロン(Trichosporon)属、ヤマダジマ属(Yamadazyma)、及びパチソレン属(Pachysolen)からなる群より選択される、少なくとも1種の酵母細胞である、[8]に記載の組換え宿主細胞。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の組換え宿主細胞を用いる、D−キシロース代謝物質の製造方法。
[11][6]に記載の組換え宿主細胞を用いる、エチレングリコール、グリコール酸、及びピルビン酸からなる群より選択される、少なくとも1種のD−キシロース代謝物質の製造方法。
[12][7]に記載の組換え宿主細胞を用いる、2−ケトグルタル酸及びコハク酸からなる群より選択される、少なくとも1種のD−キシロース代謝物質の製造方法。
[13]キシロースを単一の炭素源として含む培地を用いた、[1]から[9]のいずれかに記載の組換え宿主細胞の生育方法。
[14]キシロースを単一の炭素源として含む培地中での組換え宿主細胞の増殖能を指標として、高活性の酵素を産生する有用宿主細胞を選定する方法。
本発明によると、酵母を用いてより効率よく有用物質を生産することができる。さらには、有用物質の生産のみならず、細胞自体の増殖も効率よく行うことができる。具体的には、本発明によると、酵母(S.cerevisiae)に、新規キシロース代謝経路を導入することで、キシロース代謝機構が十分機能し、発酵の工程での糖の変換効率が向上してエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質を効率よく生産することができると共に、キシロースによって細胞自体の増殖も可能であるような新規組換え宿主細胞、及びそれらを用いたエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質の新規製造方法を提供することができる。
図1は、キシロース代謝経路のうちのヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)を示す図である。 図2は、キシロース代謝経路のうちのダームス経路(Dahms Pathway)を示す図である。 図3は、ヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)とダームス経路(Dahms Pathway)を示す図である。 図4−1は、キシロース単一炭素源におけるヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)導入株の生育試験の結果を示す図である。 図4−2は、キシロース単一炭素源における異なる生物種由来のXylXによるヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)導入株の生育試験の結果を示す図である。 図5は、ヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)導入株(BDΔBtT−ksaD−CcxylX株とBDΔBtT−ksaD−BxxylX株)のXylX活性を比較した結果を示す図である。 図6は、キシロース単一炭素源におけるダームス経路(Dahms Pathway)導入株の生育試験の結果を示す図である。 図7は、ヴァインベルク経路(Weimberg Pathway)導入株(BDΔBtT−ksaD−CcxylX株及びBDΔBtT−ksaD−BxxylX株)のコハク酸生産量を示す図である。 図8は、ダームス経路(Dahms Pathway)導入株(BDΔBtT−E株)の代謝物(GA; Glycolate、EG; Ethylene glycol)の生産量を示す図である。
以下、本発明の組換え宿主細胞、及びD−キシロース代謝物質の製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において、DNAやベクターの調製等の分子生物学的手法は、特に明記しない限り、当業者に公知の一般的実験書に記載の方法又はそれに準じた方法により行うことができる。また、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
<組換え宿主細胞>
本発明の組換え宿主細胞は、鉄硫黄クラスターの生合成を制御する少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを過剰発現させた組換え宿主細胞において、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドが導入された組換え宿主細胞である。以下に本発明の組換え宿主細胞について説明する。
(宿主細胞)
本発明に用いる宿主細胞の種類は、当業者にとって周知の宿主細胞のいずれでもよく、原核細胞、真核細胞、例えば細菌細胞、菌類細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は植物細胞が含まれる。
これらのうち、本発明における宿主細胞としては、発酵阻害物や弱酸による低pH等の種々のストレスに耐性があり、遺伝子組換えも容易であることから、酵母細胞が好ましい。酵母細胞としては、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ブレタノミセス属(Brettanomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジタ属(Candida)、クロッケラ属(Klocckera)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、イサトケンキア属(Issatchenkia)、スワニオミセス属(Schwanniomyces)、トリコスポロン(Trichosporon)属、ヤマダジマ属(Yamadazyma)、パチソレン属(Pachysolen)等が挙げられる。これらのうち、サッカロミセス属(Saccharomyces)であることがより好ましく、具体的には、例えばYPH499株、S288C株、YPH500株、BY4741株、BY4742株、W303株、CEN.PK株、BY4743株、FY4株、AB972株、A364A株、DC5株、X2180−1A株、D−273−10B株、FL100株、JK9−3d株、RM11−1a株、SEY6210株、SEY6211株、Sigma1278b株、SK1株、XJ24−24a株、Y55株、YPH501株等を用いることができる。中でも、YPH499株、S288C株、YPH500株、BY4741株、BY4742株、W303株、CEN.PK株がさらに好ましく、YPH499株が特に好ましい。
本発明において「ポリヌクレオチド」という用語は、単一の核酸及び複数の核酸の両方を意味し、mRNA等の核酸分子、プラスミドRNA、全長のcDNA及びその断片等を含む。ポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドから構成され、修飾、非修飾のどちらでもよい。一本鎖でも二本鎖でもよく、両者の混合でもよい。
(異種)
本発明において、「異種由来の酵素」等に用いられる「異種」とは、本発明の組換え宿主細胞とは異なる種であることを言い、例えば本発明の組換え宿主細胞が酵母細胞である場合、異種としては、大腸菌、緑膿菌等のバクテリア等が挙げられる。また、対応する天然遺伝子とは異なる形態で宿主細胞中に再導入された天然コード領域又はその一部も含む。例えば、ゲノム中のその天然位置にはないものも含まれる。なお、本発明の組換え宿主細胞において異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドを導入する目的は、元来その宿主細胞が有していない酵素等のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを異種から導入し、キシロース代謝経路等の代謝経路を機能させ及び/又は亢進させることである。
(ポリヌクレオチドの導入方法)
細胞に異種ポリヌクレオチドを発現させるには、例えば、当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで細胞を形質転換させればよい。発現ベクターは、本発明の遺伝子を発現可能な状態で含むものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを用いることができる。
本発明の発現ベクターは、上記異種ポリヌクレオチドの上流に転写プロモーター、場合によっては下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、このカセットを発現ベクターに挿入することにより作製することができる。あるいは、発現ベクターに転写プロモーター及び/又はターミネーターがすでに存在する場合には、発現カセットを構築することなく、ベクター中のプロモーター及び/又はターミネーターを利用して、その間に当該異種ポリヌクレオチドを挿入すればよい。
ベクターに上記異種ポリヌクレオチドを挿入するには、制限酵素を用いる方法、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用することができる。また、挿入の際に必要であれば、適当なリンカーを付加してもよい。また、アミノ酸への翻訳にとって重要な塩基配列として、SD配列やKozak配列等のリボソーム結合配列が知られており、これらの配列を遺伝子の上流に挿入することもできる。挿入にともない、遺伝子がコードするアミノ酸配列の一部を置換してもよい。
本発明において使用されるベクターは、本発明の遺伝子を保持するものであれば特に限定されず、それぞれの宿主に適したベクターを用いることができる。ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNA等が挙げられる。
宿主への発現ベクターの導入方法は、宿主に適した方法であれば特に限定されるものではない。利用可能な方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。組換え宿主細胞における当該ポリヌクレオチドの発現は、当業者に公知の方法に従って定量化することができる。例えば、当該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの、細胞タンパク質全体のパーセントによって表すことができる。また、形質転換した細胞の細胞抽出液を用い、当該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを検出できる抗体を使用したウエスタンブロッティング、あるいは当該ポリヌクレオチドを特異的に検出するプライマーを使用したリアルタイムPCR等により確認することができる。
(鉄硫黄クラスター)
本発明において、「鉄硫黄クラスター」とは、非ヘム鉄と無機硫黄原子からなるコファクターのことを言い、一般的には[2Fe−2S]、[4Fe−4S]、[3Fe−4S]の形でタンパク質内部のシステイン残基に配位結合している。鉄硫黄タンパク質(Fe−Sタンパク質)の種類により要求する鉄硫黄(Fe−S)クラスターは異なる。
(鉄硫黄クラスターの生合成を制御する少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチド)
本発明の組換え宿主細胞は、鉄硫黄クラスターの生合成を制御する少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを過剰発現させた細胞である。「鉄硫黄クラスターの生合成を制御するタンパク質」としては、鉄硫黄クラスターの合成を制御するタンパク質、細胞内で鉄硫黄クラスターの運搬に関与しているタンパク質、鉄の感知・取り込み・利用を制御するタンパク質等のいずれであってもよく、最終的に鉄硫黄クラスターの生合成に影響を与えるタンパク質であれば特に限定されない。ここで、鉄の感知・取り込み・利用を制御するタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、鉄の代謝に関与する遺伝子群である鉄(Fe)レギュロンに含まれる遺伝子であってもよい。
本発明において、鉄硫黄クラスターの生合成を制御する少なくとも1種のタンパク質としては、細胞内での鉄硫黄(Fe−S)クラスターの貯蔵に関与するタンパク質であるTYW1が好ましい。このTYW1をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞において過剰発現させることにより、鉄の細胞内への取り込みが促進され、鉄硫黄クラスターが充分に供給されることにより鉄硫黄タンパク質であるXylD等の活性を向上させることができると考えられる。典型的なTYW1タンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、本願実施例で用いたもの等が挙げられる。なお、鉄硫黄クラスターの生合成を制御する少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、TYW1タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は同等の機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、酵母内でのXylDの活性向上効果の観点から、配列番号1及び2のポリヌクレオチドが好ましい。それぞれの特定の配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、かつTYW1活性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
本発明において「過剰発現」という用語は、本明細書で使用される場合、同一又は関連のポリヌクレオチド若しくは遺伝子の内因性発現よりも高い発現を指す。また、異種ポリヌクレオチド又は遺伝子は、同等の内因性遺伝子の発現よりもその発現が高ければ、あるいは、ポリヌクレオチド又は遺伝子を過剰発現しない手段によって導入された同じポリヌクレオチド又は遺伝子の発現よりもその発現が高ければ、過剰発現に該当する。宿主細胞においてポリヌクレオチドのコピー数を増大させる任意の手段を使用してポリヌクレオチドを過剰発現させることができる。例えば、高コピー数プラスミド、又は制御可能なコピー数を有するプラスミドを使用してもよいし、多数の染色体組込みによって過剰発現としてもよい。
細胞にポリヌクレオチドを過剰発現させるには、例えば、当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで細胞を形質転換させればよい。方法の詳細は、上述の「ポリヌクレオチドの導入方法」の項を参照されたい。なお、比較に用いる過剰発現させない細胞は、形質転換させなくてもよいし、当該ポリヌクレオチドを含まない発現ベクターで形質転換させてもよい。組換え宿主細胞における当該ポリヌクレオチドの発現又は過剰発現は、当業者に公知の方法に従って定量化することができる。例えば、当該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの、細胞タンパク質全体のパーセントによって表すことができる。また、形質転換した細胞の細胞抽出液を用い、当該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを検出できる抗体を使用したウエスタンブロッティング、あるいは当該ポリヌクレオチドを特異的に検出するプライマーを使用したリアルタイムPCR等により確認することができる。過剰発現させなかった細胞と比較して、過剰発現させた細胞で当該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの発現量が多いこと、好ましくは2倍以上になっていることを確認すること等により、過剰発現されたと判断することができる。
本発明の組換え宿主細胞は、転写抑制因子BOL2を欠損していることが好ましい。本発明の組換え宿主細胞は、転写抑制因子BOL2を欠損させることにより、鉄代謝が改善される。具体的には、BOL2の不在によりAft1によって転写が調節される鉄代謝に関わる遺伝子の発現が促進される。その結果、細胞内への取り込みが促進され、鉄硫黄クラスターが充分に供給されることにより鉄硫黄タンパク質であるXylD等の活性を向上させることができると考えられる。
宿主細胞において転写抑制因子BOL2を欠損させる方法としては、当業者に公知の遺伝子欠損方法を使用することができ、その方法は限定されるものではない。例えば、紫外線等の光又は化学物質を用いて突然変異を誘発し、得られた突然変異体から目的遺伝子が欠損した菌株を選別することができる。また、上記遺伝子欠損は、例えば、目的遺伝子と相同性があるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列又はベクターを宿主細胞に導入して相同組換え(homologous recombination)を起こさせることによっても得られる。また、上記注入されるヌクレオチド配列又はベクターには優性選別マーカーを含むことができる。使用可能なベクターは、特に限定されるものではなく公知の発現ベクターを使用することができる。
(キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチド)
本発明の組換え宿主細胞には、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドが導入されている。キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群を宿主細胞に導入することにより、元来この宿主細胞が備えていない代謝経路が働くようになり、所望の物質生産が可能となる。以下に、キシロース代謝経路、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドについて説明する。
(キシロース代謝経路)
本発明において、「キシロース代謝経路」とは、キシロースからエチレングリコール、グリコール酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、2−ケトグルタル酸、コハク酸、エタノール、キシリトール、D−キシロネート、D−1,2,4−ブタントリオール(D−BT)、3,4−ジヒドロキシ酪酸、1,4−ブタンジオール、メサコネート等を生産する経路をいい、例えば、XO経路、Dahms/Weinberg経路として知られている経路、XR/XDH経路、XI経路、これらの経路を工業的に利用できるように改変した経路等も含まれる。好ましくは、D−キシロースからエチレングリコール、グリコール酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、2−ケトグルタル酸、コハク酸、3,4−ジヒドロキシ酪酸等を生産するための酵素経路を指す。
本発明において、宿主に導入するキシロース代謝経路としては、少ない反応数で2−ケトグルタル酸やピルビン酸、グリオキシル酸等の細胞内の重要な代謝物へ変換できる点、また解糖系の脱炭酸反応を介さないことから対糖収率100%で変換可能であり、エネルギーを必要とするリン酸化反応もない点等から、XO経路、ヴァインベルク経路(Weinberg Pathway)、ダームス経路(Dahms pathway)として知られている経路が好ましい。
(ヴァインベルク経路(Weinberg Pathway)の場合)
本発明において、宿主細胞に異種由来のヴァインベルク経路を導入する場合には、ヴァインベルク経路に関与する酵素として、キシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼ(XylX)及び2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(XylA、KsaD)を発現させる。
(ダームス経路(Dahms pathway)の場合)
本発明において、宿主細胞に異種由来のダームス経路を導入する場合には、ダームス経路に関与する酵素として、異種由来のキシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)及び2−ケト3−デオキシキシロネートアルドラーゼを発現させる。
(XylD)
XylDタンパク質(ペプチド)は鉄硫黄タンパク質(Fe−Sタンパク質)であり、典型的なXylDタンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、本願実施例で用いたもの等が挙げられる。なお、XylDタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチドとしては、XylDタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチド、又は同等の機能を有するタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチドであり、配列番号3のポリヌクレオチドが特に好ましい。XylDタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、上記特定の配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、かつXylD活性(キシロネートデヒドラターゼ活性)を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
(XylB)
典型的なキシロースデヒドロゲナーゼタンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、本願実施例において用いたもの等が挙げられる。なお、キシロースデヒドロゲナーゼタンパク質としては、キシロースデヒドロゲナーゼタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチド、又は同等の機能を有するタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチドであり、組換え宿主細胞での有用物質産生を効率的に向上させる効果の観点から、配列番号4のポリヌクレオチドがコードするものが特に好ましい(XylB)。上記特定の配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、キシロースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
(XylX)
本発明におけるXylXは、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼであり、典型的な2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼタンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、本願実施例で用いたもの等が挙げられる。
なお、本発明におけるXylXとしての2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼタンパク質としては、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチド、又は同等の機能を有するタンパク質(ペプチド)をコードするポリヌクレオチドであり、配列番号5〜10のポリヌクレオチドがコードするものが具体的に挙げられ、組換え宿主細胞での有用物質産生や細胞増殖を効率的に向上させる効果の観点から、配列番号6、9、10のポリヌクレオチドがコードするものが特に好ましい(XylX)。上記特定の配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼ活性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
(XylA;KsaD)
本発明におけるXylA及びKsaDは、2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼであり、典型的な2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼタンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、本願実施例で用いたもの等が挙げられる。
なお、本発明におけるXylA及びKsaDとしての2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼタンパク質としては、それぞれ配列番号11、12のポリヌクレオチドがコードするものが挙げられ、組換え宿主細胞での有用物質産生を効率的に向上させる効果の観点から、特に配列番号12のポリヌクレオチドがコードするものが特に好ましい。それぞれの特定の配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
(アルドラーゼ)
アルドラーゼタンパク質(ペプチド)及びそれをコードするポリヌクレオチドとしては、組換え宿主細胞での有用物質産生を効率的に向上させる効果の観点から、配列番号13のポリヌクレオチドがコードするもの(YagE)、配列番号14のポリヌクレオチドがコードするもの(yjhH)が好ましい。それぞれの特定の配列に対して、少なくとも90%、好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)であり、アルドラーゼ活性を有するタンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)は、本発明において使用可能であると理解される。
なお、細胞にキシロース代謝経路に関与する酵素をコードする異種ポリヌクレオチドを発現させるには、例えば、当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで細胞を形質転換させる等、当業者に公知の方法により行うことができる。方法の詳細は上述の「ポリヌクレオチドの導入」の項を参照されたい。
以上説明したとおり、本発明によると、酵母において鉄取り込み量の調節に関与するタンパク(TYW1)を過剰発現させ、かつキシロース代謝経路に関与する酵素群を発現させることで、キシロースからの有用物質の生産及びキシロースによる酵母自身の生育が可能となる。
<有用物質の製造方法>
本発明は、上述の本発明の組換え宿主細胞を用いた有用物質(D−キシロース代謝物質)の製造方法も提供する。上記有用物質としては、エチレングリコール、グリコール酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、2−ケトグルタル酸、コハク酸、エタノール、キシリトール、D−キシロネート、D−1,2,4−ブタントリオール(D−BT)、3,4−ジヒドロキシ酪酸、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、これらのうち、エチレングリコール、グリコール酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、2−ケトグルタル酸、コハク酸、3,4−ジヒドロキシ酪酸が好ましい有用物質として挙げられる。本発明の製造方法においては、上記組換え宿主細胞を、SD培地等を用いて25℃から40℃、15時間から72時間培養して増殖させた後、キシロース及びグルコース混合糖培地、キシロース単一炭素源を含む培地等に植菌し、25℃から40℃、50rpmから800rpmの条件で生育させた。その後、培養液を回収し、常法に従い、製造系から酵母を回収し、適宜濃縮、精製することにより各有用物質を取得することができる。
<有用宿主細胞株の選定・取得方法>
本発明は、上述の本発明の組換え宿主細胞等の組換え宿主細胞を、キシロース単一炭素源培地中で培養し、より生育の良い株(増殖能の高い株)を選定・取得することを特徴とする、有用宿主細胞株の選定・取得方法も含む。即ち、本発明者らは、キシロースを単一の炭素源として含む培地中で本発明の組換え宿主細胞を培養した場合に、生育の良かった株(増殖能の高かった株)においては、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素の活性が高いことを見出した。この結果から、より有用な宿主細胞株、より高活性な酵素を取得する方法として、キシロースを単一の炭素源として含む培地中での宿主細胞株の生育状態を指標とする方法を確立することに成功した。
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
1.鉄代謝改変株への新規キシロース代謝経路の導入及びキシロース単一炭素源での生育
XO経路のうち、Dahms pathwayでは、キシロースがKDXまで変換されたのちに、KDX aldolaseにより、1molのKDXから1molのpyruvateと1molのglycolaldehydeが生成される。一方、Weimberg pathwayでは、まずKDXがKDX dehydrataseにより2-ketoglutarate semialdehyde(2KGSA)へ変換される。更に、2KGSAは2KGSA dehydrogenaseにより2-ketoglutarate(2KG)へ変換される(図1、図2)。これらのXO経路には、共通して鉄硫黄タンパク質XylDによるxylonateからKDXへの反応が含まれる(図3)。そこで、本発明者らは、鉄代謝改変技術を用いてXylD活性を強化することにより、これらのキシロース代謝経路が効率よく機能するのではないかと考えた。
キシロースがキシリトールに変換されるのを防ぐため、S.cerevisiae YPH499株のGRE3を破壊したYPH499ΔGRE3株を宿主として使用した。YPH499ΔGRE3株において、TDH3プロモーター(TDH3p)の制御下にCaulobacter crescentus由来のxylose dehydrogenaseであるXylB(配列番号4)と、SED1プロモーター(SED1p)の制御下にC.crescentus由来のxylonate dehydrataseであるXylD(配列番号3)を導入し、BD株を作成した。鉄代謝改変のために、鉄の取り込み等に関わる転写抑制因子であるBOL2を破壊したBDΔB株を作成し、その株にTYW1の1から199番目までのアミノ酸配列をコードする遺伝子であるtTYW1(配列番号1)をPGK1プロモーター(PGK1p)の制御下で導入し、鉄代謝改変株であるBDΔBtT株を作成した。
Weimberg pathway導入株作成のため、BDΔBtT株に、酵母で活性があると報告されている2KGSA dehydrogenaseであるCorynebacterium glutamicum由来のKsaD(配列番号12)を導入し、BDΔBtT−ksaD株を作成した。さらに、BDΔBtT−ksaD株に対して、C. crescentus由来、Burkholderia xenovorans由来、Halopiger aswanensis由来、Halalkalicoccus paucihalophilus由来のxylX、Sphingomonas aerolata由来又はNovosphingobium taihuense由来xylX(配列番号5〜10)を導入した、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株、BDΔBtT−ksaD−BxxylX株、BDΔBtT−ksaD−NtxylX株、BDΔBtT−ksaD−SaxylX株、BDΔBtT−ksaD−HaxylX株、BDΔBtT−ksaD−HpxylX株を作成した。Dahms pathway導入株作成のために、Escherichia coli由来のYagE(配列番号13)を導入した、BDΔBtT−E株を作成した。
(使用菌体及び培地)
本実施例において、プラスミドの増幅には全て、Escherichia coli NovaBlue (Merck Millipore, Darmstadt, Germany)を用いた。NovaBlueは、100μg/mLアンピシリンを含むLuria-Bertani培地(5g/L yeast extract、10g/L tryptone、及び10g/L NaCl)で培養した。キシロース代謝経路導入株の宿主には、S.cerevisiae YPH499 [MATa ura3-52 lys2-801 ade2-101 trp1- 63 his3-Δ200 leu2-Δ1 (Stratagene, La Jolla, CA, USA)]を用いた。酵母株の培養には、SD培地[6.7g/L yeast nitrogen base without amino acids (Difco Laboratories, Detroit, MI, USA),20g/L glucose]に株の栄養要求性に合わせてアミノ酸・核酸を加えたもの、又はSCD培地 [6.7g/L yeast nitrogen base without amino acids (Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)、2g/L synthetic complete mix, 20g/L glucose]を用いた。酵母の形質転換の際には、synthetic complete mixから株の栄養要求性に合わせて適切にアミノ酸・核酸を抜いたものを用いた。また、前培養は30℃、200rpmで行った。
(プラスミドの作製)
本実施例で作成したプラスミドは、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kit (Takara)、Ligation high ver.2 (Takara)を用いて作成した。In-Fusionでは、制限酵素処理したベクターの末端15塩基の相同配列を、クローニングする塩基配列の両端にPCRで付加して、ベクターとクローニング配列、In-Fusion酵素を混合し50℃で15 minインキュベートすることで作製した。Ligationでは、制限酵素処理したベクター、ベクターに対応する制限酵素で処理した目的の遺伝子配列、Ligation酵素を混合し30min インキュベートすることで作製した。この研究で使用した異種生物由来の遺伝子は全て、S. cerevisiaeのコドンに最適化したものをGeneArt (Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)にて人工合成した。本研究で作成したプラスミドを表1に示す。なお、本明細書中の「Bamba et al., 2019」は、0009段落における非特許文献8である。
Figure 2021114931
C.glutamicum由来ksaDをTDH3pに連結するため、pIU−pTDH3−tADH1(Bamba et al., 2019)をsmaIで処理したものにコドン最適化したksaDの断片を組み込むことで、pIU−tdh3p−CgksaDを作成した。pIBG−SS(Inokuma et al., Biotechnol Biofuels, 7, Article number 8, 2014)を鋳型として、XhoI−SED1p F(5′-CGGGCCCCCCCTCGAGATTGGATATAGAAAATTAACGTAAGG-3′:配列番号15)とXhoI−SED1p R(5′-AACTGTACACCCGGGCTTAATAGAGCGAACGTATTTTATTTTG-3′:配列番号16)、又はSAG1t F(5′-CCCGGGTGTACAGTTAGTACATTGAGTC-3′:配列番号17)とSAG1t R(5′-ACCGCGGTGGCGGCCGCATCCAGTGAGCGCGCGTAATACGAC-3′:配列番号18)を使用し、SED1pとSAG1tをそれぞれPCRした。SED1pとSAG1tを鋳型として、XhoI−SED1p FとSAG1t Rを用いてPCRすることで、SED1p−SAG1tを作成した。これを、XhoIとNotIで処理したpGK405(Ishii et al., The Journal of Biochemistry 145, 701-708, 2009)に組み込むことでpIL−sed1p−sag1tを作成した。pIL−sed1p−sag1tをSmaIで処理し、コドン最適化したC. crescentus 、B. xenovorans、H. aswanensis由来、H. paucihalophilus由来のxylX、S. aerolata由来又はN. taihuense由来のxylX(配列番号5〜10)を組み込むことで、pIL−sed1p−CcxylX−sag1t、pIL−sed1p−BxxylX−sag1t、pIL−sed1p−HaxylX又はpIL−sed1p−HpxylX、pIL−sed1p−NtxylX、pIL−sed1p−SaxylXを作成した。また、E.coli由来のyagE(配列番号13)をTDH3pと連結するため、pIL−pTDH3−tADH1をsmaIで処理しコドン最適化したyagEを組み込むことで、pIL−tdh3p−yagEを作成した。
(酵母株の作製)
本実施例において、酵母の形質転換は、酢酸リチウムを用いたOne-step transformation法に従い行った(Chen et al.,Curr Genet 21, 83-84, 1992)。本実施例で使用した酵母株を表2に示す。本実施例の酵母株はS.cerevisiae YPH499株を用いた。キシロースをキシリトールに変換するGRE3の破壊、及びキシロースからキシロネートまでの反応を触媒するC.crescentus由来のxylB(配列番号4)およびxylD(配列番号3)が導入されたBD株 (Bamba et al., 2019) のBOL2遺伝子をHIS3で置換することにより、BDΔB株を作成した。tTYW1過剰発現株を作成するために、pIAur−tTYW1 (Bamba et al., 2019)をBDΔB株に導入し、BDΔBtT株を作成した。
鉄代謝の改変されたBDΔBtT株を宿主にWeimberg pathwayを導入するために、まずpIU−tdh3p−CgksaDが導入されたBDΔBtT−ksaD株を作成した。BDΔBtT−ksaD株にpIL−sed1p−CcxylX、pIL−sed1p−BxxylX、pIL−sed1p−NtxylX、pIL−sed1p−SaxylX、pIL−sed1p−HaxylX又はpIL−sed1p−HpxylXを導入することで、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株、BDΔBtT−ksaD−BxxylX株、BDΔBtT−ksaD−NtxylX株、BDΔBtT−ksaD−SaxylX株、BDΔBtT−ksaD−HaxylX株、BDΔBtT−ksaD−HpxylX株を作成した。鉄代謝の改変されたBDΔBtT株を宿主にDahms pathwayを導入するために、BDΔBtT株にpIL−tdh3p−yagEを導入することでBDΔBtT−E株を作成した。
Figure 2021114931
次に、鉄代謝改変とWeimberg pathway又はDahams pathwayが導入された株が、キシロースを単一の炭素源として含む培地で生育可能か否かを検討した。YPH499株、BDΔBtT株、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株、BDΔBtT−ksaD−BxxylX株をキシロース単一炭素源培地で培養した結果を図4−1に示す。YPH499株、BDΔBtT株、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株ではキシロース単一炭素源で生育できなかったのに対し、BDΔBtT−ksaD−BxxylX株ではキシロース単一炭素で生育可能であった(図4−1)。用いるXylX又はXylAによって、酵母がキシロース単一炭素源での生育可能か否かが明確に分類されたため、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株とBDΔBtT−ksaD−BxxylX株を用いてXylXの活性測定を行なった。図5に示す通り、C. crescentus由来のXylXと比較してB. xenovorans由来のXylXは約2倍高いXylX活性を示した。XO経路を構成する酵素の活性がキシロースを単一の炭素源として含む培地での生育において重要であることがわかった。そこで、活性が未知の酵素を導入した株を作成し、キシロース単一炭素源での生育を測定することで、酵素の活性を簡便に評価できるのではないかと考えた。H. aswanensis由来、H. paucihalophilus由来、S. aerolata由来又はN. taihuense由来のxylXをBDΔBtT−ksaD株に導入した株を作成し、キシロースを単一の炭素源として含む培地で培養した結果を図4−2に示す。BDΔBtT−ksaD−HaxylX株、BDΔBtT−ksaD−HpxylX株ではキシロースのみでは生育できなかったのに対し、BDΔBtT−ksaD−NtxylX株、BDΔBtT−ksaD−SaxylX株ではキシロースのみで生育が可能であった。また、Dahms pathway導入株であるBDΔBtT−E株おいてもキシロース単一炭素源で生育可能であった(図6)。これらは、筆者らの知る限り、酵母がXO経路を介して生育した初の報告である。鉄代謝改変とWeimberg pathway又はDahams pathwayが導入された株においては、酵母を宿主としたXO経路構築の際の課題であったXylD活性が強化されたため、キシロース単一炭素源で生育可能となったと考えられる。C. crescentus由来のXylXを導入した酵母株ではキシロース単一炭素源での増殖能を示さなかったのに対し、B. xenovorans由来のxylXを導入した酵母株はキシロース単一炭素源での増殖能を示した。また、XylXの活性測定の結果から、活性の高い酵素の選抜がXO経路を介した生育に極めて重要であることがわかる。また、キシロース単一炭素源での増殖能の高い酵母株を単離することで、酵母でより高活性な酵素を簡便に探索することが可能であることが示された。
上記キシロースを単一炭素源とした生育試験は、具体的には、以下のように行った。即ち、生育試験に用いる菌体をSD培地で30℃、24h培養した後、集菌しD.W.で2度洗浄した。キシロースを単一の炭素源として含む培地(6.7 g/L yeast nitrogen base without amino acids (Difco Laboratories, Detroit, MI, USA), 1.46g/L Yeast Synthetic Drop-out Media Supplements、380mg/L Leucine、76mg/L uracil、76mg/L tryptophan、20g/L xylose)にOD600=0.1となるように植菌し、30℃、50rpmで生育試験を行なった。サンプリングし、OD600を、分光光度計を用いて測定した。また、XylXの活性測定方法は、Taiらの方法(Tai, Y.-S. et al, 2016. Nature Chemical Biology 12, 247-253)によって報告されているNADHのカップリング反応による方法を参考に行なった。まず対象の酵母をYPD培地(10g/L yeast extract、20g/L peptone、20g/L glucose)で30℃、24h培養した。培養液を10mMの洗浄用バッファー(10mM リン酸バッファー、2mM EDTA、pH7.5)で2度洗浄した。洗浄した菌体をタンパク質抽出バッファー(100mM リン酸バッファー; pH7.5、 2mM MgCl、1mM ジチオレイトール)に懸濁して、ビーズにより破砕した。遠心して上清を回収し、酵母タンパク質抽出液として活性測定に用いた。XylX活性測定は、基質として5mM2−ケト−3−デオキシ−キシロネート(KDX)、20mMトリス塩酸バッファー(pH 8.0)、10mM 塩化マグネシウム、1mM NAD+の混合液に酵母タンパク質抽出液を加え、30℃で5min反応させた。NADHの増加量を、波長400nmで経時的に観測してモル吸光係数は6.3mM-1 cm-1を用いた。
2.XO経路を介した代謝物生産
上述のとおり、鉄代謝改変及びキシロース代謝経路導入により、キシロース単一炭素源で生育する酵母の開発に成功した。そこで、鉄代謝改変とWeimberg pathway又はDahms pathway導入株を詳細に調べるため、グルコース及びキシロースを混合糖として含む培地で培養試験を行い、代謝物を測定した。その結果を図7及び図8に示す。
上記代謝物測定は、具体的には、以下のとおり行った。即ち、発酵培地中のグルコース及びキシロース濃度は、SPR-Pbカラム(7.8mm ×250mm, particle size 8μm; Shimadzu, Kyoto, Japan)とRID-10A 検出器を装着した、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Shimadzu)を用いて分析した。移動相に水を用いて流速0.6mL/min、80℃で稼働した。
コハク酸、EG及びGAの濃度は、Aminex HPX-87Hカラムと屈折率検出器RID-10Aを装着したHPLCを用いて分析した。移動相に5mM HSOを用いて流速0.6mL/min 、65℃で稼働した。キシロネートの濃度はガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC-MS)(Shimadzu)により分析した。5 μLの培養上清に、2μLの10g/Lリビトールを内部標準物質として加えて、CentriVap Benchtop Vacuum Concentrators (Labconco, Kansas City, MO, USA)を用いて乾燥させた。GC−MS分析のためのトリメチルシリル化は以下の手順で行った; 乾燥させたサンプルに、ピリジンに溶解させた100 μLの20 mg/mL O-メチルヒドロキシルアミン塩酸塩溶液を加え90分間反応させた(1200 rpm,30℃;M-BR-022UP; Taitec, Saitama, Japan)。そして、50μLのN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)を加えて、30分間反応させた(1200rpm at 37℃; M-BR-022UP; Taitec)。サンプルは室温で遠心分離(3000g, 5分)して上清を分析に用いた。
GC−MS(GCMS-QP2010 Ultra; Shimadzu)には、CP-Sil 8CB カラム(30m length×0.25mm i.d., film thickness of 0.25μm; Agilent)を装着して用いた。GC−MSの各パラメーターの設定は以下の通りである; 試料気化室の温度は230℃に設定した。サンプル注入量は1μLでスプリット比は1:25に設定した。ヘリウムをキャリアーガスに用いて、流量は1.12 mL/minに設定した。カラム温度は、80℃で2 分間保温したのちに、15℃/minで330℃まで昇温して、330℃で6 分間保温した。インターフェース温度及びイオン源の温度はそれぞれ、250℃と200℃に設定した。イオン化(Electron impact ionization; EI)は70eVで行った。分析はFast Automated Scan/SIM(FASTT)モードにより、Scanモード(85-500m/z)及びSelected ion monitoring (SIM)モード(BT; m/z 103, 129, リビトール;m/z 103)を並行して行った。
(結果)
図7に示すとおり、Weimberg pathwayが導入されたBDΔBtT−ksaD−CcxylX株及びBDΔBtT−ksaD−BxxylX株では、コハク酸の生産が確認された。驚くべきことに、キシロース単一炭素源培地で生育の見られなかったBDΔBtT−ksaD−CcxylX株の方が、キシロース単一炭素源培地で生育の見られたBDΔBtT−ksaD−BxxylX株よりコハク酸の生産量が多かった。96時間後のコハク酸の生産量は、BDΔBtT−ksaD−BxxylX株で1.1g/Lであったのに対して、BDΔBtT−ksaD−CcxylX株で1.4g/Lであった。キシロース単一炭素源で生育が見られたBDΔBtT−ksaD−BxxylX株は、グルコースとキシロースの混合糖培地の条件においても、YPH499ΔGRE3株(XO代謝経路なし)やBDΔBtT−ksaD−CcxylX株と比較して最終到達ODが高かった。このことは、BDΔBtT−ksaD−BxxylXがキシロースを細胞増殖と有用物質生産の両方に活用できることを明確に示している。
図8に示すとおり、Dahms pathwayが導入されたBDΔBtT−E株では、glycolaldehydeからaldehyde reductaseによって変換されるethylene glycol(EG)及びaldehyde dehydrogenaseによって変換されるglycolate(GA)の生産が確認された。96時間後のGA及びEGの生産量はそれぞれ、0.6g/L及び1.6g/Lであった。BDΔBtT−E株は、YPH499ΔGRE3株と比較して、最終到達ODが高かった。このことは、キシロースからDahms pathwayを介して生産されるピルビン酸を細胞増殖に用いていることを示唆する。Dahms pathway導入株であるBDΔBtT−E株においても、キシロースを細胞増殖と有用物質生産の両方に活用できることがわかった。また、この結果は、これまでの酵母へのDahms pathway導入株のEG生産量及び、EGとGAの総キシロース収率を上回るものである。
代謝物生産試験に用いる菌体は、まず5mLのSCD培地で24h培養した。そして、50mLのYPD培地にOD600=0.1となるように植菌して30℃、150rpmで24h培養した。菌体を10 mLの滅菌したD.W.で2度洗浄した後、発酵用培地(10g/L tryptone, 5g/L yeast extract,10g/Lグルコース,10g/Lキシロース)にOD600=5となるように植菌して、全量20mLの系で、30℃、200rpmで発酵試験を行った。24h毎にサンプリングを行い、培養上清はHPLC及びGC−MSを用いて測定した。
本発明によると、酵母を用いてより効率よく有用物質を生産することができる。さらには、有用物質の生産のみならず、細胞自体の増殖も効率よく行うことができる。具体的には、本発明によると、酵母(S.cerevisiae)に、新規キシロース代謝経路を導入することで、キシロース代謝機構が十分機能し、発酵の工程での糖の変換効率が向上してエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質を効率よく生産することができると共に、キシロースによって細胞自体の増殖も可能であるような新規組換え宿主細胞、及びそれらを用いたエチレングリコールやグリコール酸等の有用物質の新規製造方法を提供することができる。

Claims (14)

  1. 鉄硫黄クラスターの生合成を制御する、少なくとも1種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを過剰発現させた組換え宿主細胞において、キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群をコードするポリヌクレオチドが導入された組換え宿主細胞。
  2. 上記鉄硫黄クラスターの生合成を制御するタンパク質が、Tyw1である、請求項1に記載の組換え宿主細胞。
  3. BOL2が欠損している、請求項1又は2に記載の組換え宿主細胞。
  4. 上記キシロース代謝経路が、XO経路(キシロース・オキシダティブ経路;xylose oxidative pathway)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
  5. 上記キシロース代謝経路が、ダームス経路又はヴァインベルク経路である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
  6. 上記キシロース代謝経路がダームス経路であり、上記キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群が、キシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)、及びアルドラーゼである、請求項1から5のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
  7. 上記キシロース代謝経路がヴァインベルク経路であり、上記キシロース代謝経路に関与する異種由来の酵素群が、キシロースデヒドロゲナーゼ(XylB)、キシロネートデヒドラターゼ(XylD)、2−ケト−3−デオキシ−キシロネートデヒドラターゼ(XylX)及び2−ケトグルタル酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(XylA)である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
  8. 上記宿主細胞が、酵母宿主細胞である、請求項1から7のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞。
  9. 上記酵母宿主細胞が、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ブレタノミセス属(Brettanomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジタ属(Candida)、クロッケラ属(Klocckera)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、イサトケンキア属(Issatchenkia)、スワニオミセス属(Schwanniomyces)、トリコスポロン(Trichosporon)属、ヤマダジマ属(Yamadazyma)、及びパチソレン属(Pachysolen)からなる群より選択される、少なくとも1種の酵母細胞である、請求項8に記載の組換え宿主細胞。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞を用いる、D−キシロース代謝物質の製造方法。
  11. 請求項6に記載の組換え宿主細胞を用いる、エチレングリコール、グリコール酸、及びピルビン酸からなる群より選択される、少なくとも1種のD−キシロース代謝物質の製造方法。
  12. 請求項7に記載の組換え宿主細胞を用いる、2−ケトグルタル酸及びコハク酸からなる群より選択される、少なくとも1種のD−キシロース代謝物質の製造方法。
  13. キシロースを単一の炭素源として含む培地を用いた、請求項1から9のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞の生育方法。
  14. キシロースを単一の炭素源として含む培地中での組換え宿主細胞の増殖能を指標として、高活性の酵素を産生する有用宿主細胞を選定する方法。
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