本開示は、FIXポリペプチドと少なくとも1つの異種部分とを含むFIX融合タンパク質、ならびにその製造および使用方法を提供する。特定の態様では、FIX融合タンパク質はFIXポリペプチド内で挿入されるか、FIXポリペプチドのC末端に融合するか、またはその両方である、少なくとも1つの異種部分を含み、FIX融合タンパク質は凝血原活性を示す。特定の態様では、異種部分はXTENである。
I.定義
本開示の全体にわたり、用語「1つの(a)」または「1つの(an)」が付けられた実体は、その実体が1つまたはそれ以上であることを指し、例えば「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」は、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを表すと解される。かかる用語「1つの(a)」(または「an」)、「1つまたはそれ以上」および「少なくとも1つの」は、本明細書において交換可能に使用できる。
さらに、本明細書において使用される「および/または」は、2つの特定の特徴または成分のうちのいずれかが、もう一方の有無にかかわらずに開示されるものと解釈する。すなわち、本明細書における「Aおよび/またはB」などのフレーズにおいて用いられる用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むものとする。同様に、「A、Bおよび/またはC」などのフレーズで使用される用語「および/または」は、「A、BおよびC」、「A、BまたはC」、「AまたはC」、「AまたはB」、「BまたはC」、「AおよびC」、「AおよびB」、「BおよびC」、「A」(単独)、「B」(単独)および「C」(単独)の態様の各々を含むものとする。
本明細書において記載される、「含む」(comprising)を有するいずれの態様も、それ以外の類似する態様である「からなる」および/または「から基本的になる」という観点から記載される場合も包含されるものと解するものとする。
特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての専門的および科学的用語は一般に、本開示に関連する当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。例えば、「Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology」(Juo,Pei−Show、第2版、2002、CRC Press)「The Dictionary of Cell and Molecular Biology」(第3版、1999、Academic Press)および「Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology」(Revised、2000、Oxford University Press)は、当業者に対し、本開示において使用する多くの用語を有する一般的な辞書である。
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)により認められる形式で記載される。数値範囲は、範囲を画定する数値を含むものとする。特に明記しない限り、アミノ酸配列は、左から右に向かって、アミノ側からカルボキシル側として記載する。本明細書において提供される見出しは、本開示の各種態様を限定するものではなく、明細書全体を参照することによって限定が可能である。したがって、以下に定義される用語は、明細書の全内容を参照することにより完全に定義される。
用語「約」は、本明細書において、ほぼ、概ね、およそ、またはその周辺であることを示す際に使用される。用語「約」は、数値的範囲に関連して使用されるとき、記載される数値の上下限値を延長することによってその範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、所定の数値の上下の数値を、例えば10パーセント上下に変動させることにより修飾することができる。
用語「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」には、単一の核酸および複数の核酸、ならびに単離された核酸分子または構築物(例えばメッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA))が包含されるものとする。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、通常のホスホジエステル結合または通常にはない結合(例えばペプチド核酸(PNA)に存在するアミド結合)を含む。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在する1つまたはそれ以上のあらゆる核酸セグメント(例えばDNAまたはRNA断片)を指す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然の環境から隔離された核酸分子、DNAまたはRNAを指すものとする。例えば、ベクターに含まれるFIXポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示では単離されたものと考える。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞において維持されるか、または(部分的にまたは実質的に)溶液中にて他のポリヌクレオチドから精製された組換えポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本開示のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロでのRNA転写物が含まれる。本開示に係る単離されたポリヌクレオチドまたは核酸には、合成された該分子がさらに含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位または転写終結シグナル)を含んでもよい。
本明細書における「コーディング領域」または「コーディング配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチド部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は、典型的にはアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、それはコーディング領域の一部であると考えることができる一方、何らかの隣接配列(例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン等)はコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は典型的には、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドン、および得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンによって決定される。例えば、本開示の2つ以上のコーディング領域は、例えば単一のベクターなどの単一のポリヌクレオチド構築物において、または、別々の(異なる)ベクターなどの別々のポリヌクレオチド構築物において、存在し得る。それはすなわち、単一のベクターが、ただ1つのコード領域を含んでも、または2つ以上のコード領域を含んでもよく、例えば、単一のベクターが、後述するように、結合ドメインAおよび結合ドメインBを別々にコードしてもよい。加えて、本開示のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、本開示の結合ドメインをコードする核酸に融合するかまたは融合しない形で、異種コード領域をコードすることができる。異種コード領域としては、限定されないが、機能特化されたエレメントまたはモチーフ(例えば分泌シグナルペプチドまたは異種の機能性ドメイン)が挙げられる。
哺乳動物細胞によって分泌されるある種のタンパク質は、分泌シグナルペプチドと会合しており、該ペプチドは、粗面小胞体を通じて合成されたタンパク質鎖の輸送が開始されると、成熟タンパク質から分離される。当業者であれば、シグナルペプチドは一般にポリペプチドのN末端に融合し、完全型または「全長」ポリペプチドから分離されることにより、ポリペプチドの分泌型または「成熟」型を生成させることを認識する。特定の実施形態では、天然シグナルペプチドまたはその配列の機能的誘導体は、それと作動可能な状態で会合するポリペプチドの分泌を促進する能力を保持する。あるいは、異種哺乳類のシグナルペプチド(例えばヒトまたはマウスの組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA))、またはβ−グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはそれらの機能的誘導体を用いることができる。
用語「下流」とは、参照ヌクレオチド配列に対して3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は、転写開始点に従う配列を指す。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に位置する。「下流」とは、参照ペプチド配列に対してC末端側に位置するペプチド配列を指すこともある。
用語「上流」とは、参照ヌクレオチド配列に対して5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列は、コード領域の5’側または転写開始点の配列を指す。例えば、ほとんどのプロモーターは、転写開始部位の上流に位置する。「上流」とは、参照ペプチド配列に対してN末端側に位置するペプチド配列を指すこともある。
本明細書における用語「制御領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、内部または下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列であって、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性または翻訳に影響するものを指す。制御領域としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造が挙げられる。コード領域が真核細胞における発現を目的とする場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は通常、コーディング配列に対して3’側に位置する。
遺伝子産物(例えばポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、作動可能に1つまたはそれ以上のコード領域と連結するプロモーターまたは他の転写もしくは翻訳調節エレメントを含んでもよい。作動可能な連結において、遺伝子産物(例えばポリペプチド)のコード領域は、制御領域の影響または制御下に遺伝子産物の発現が置かれる態様で、1つまたはそれ以上の制御領域と連結される。例えば、コード領域およびプロモーターが「作動可能に連結される」とは、プロモーター機能の誘導により、コード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写がもたらされる場合、ならびに、プロモーターとコード領域との結合の性質が、遺伝子産物の発現を促進するプロモーターの能力を妨げないか、または、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げない場合のことを指す。プロモーター以外の他の転写調節エレメント(例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナル)が、コード領域と作動可能に連結して遺伝子産物発現を制御することもあり得る。
様々な転写制御領域が当業者に公知である。それらとしては、限定されないがサイトメガロウイルス(初期プロモーター、イントロンAと関連)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)およびレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなど、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域等が挙げられるが、これらに限定されない。他の転写制御領域としては、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ−グロビンなどの、脊椎動物の遺伝子に由来するそれら、ならびに真核細胞の遺伝子発現を制御できる他の配列が挙げられる。更なる適切な転写制御領域としては、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンフォカイン−誘導性プロモーター(例えばインターフェロンまたはインターロイキン誘導性プロモーター)が挙げられる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。それらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始および終結コドン、およびピコルナウイルス由来のエレメント(特に内部リボソームエントリー部位またはIRES、またCITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「発現」とは、ポリヌクレオチドが遺伝子産物(例えばRNAまたはポリペプチド)を産生するプロセスのことを指す。かかるプロセスとしては、限定されないが、ポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)、運搬RNA(tRNA)、小型ヘアピンRNA(shRNA)、小型干渉RNA(siRNA)または他のあらゆるRNA産物への転写、ならびに、mRNAのポリペプチドへの翻訳が挙げられる。発現により「遺伝子産物」が産生される。本発明において、遺伝子産物は、核酸(例えば遺伝子の転写によって産生されるmRNA)、または転写物から翻訳されるポリペプチドであってもよい。本明細書において記載される遺伝子産物には、転写後修飾(例えばポリアデニル化またはスプライシング)を有する核酸、または翻訳後修飾(例えばメチル化、グリコシレーション、脂質付加、他のサブユニットタンパク質との会合)を有するポリペプチド、またはタンパク質切断がさらに包含される。
「ベクター」とは、宿主細胞への核酸のクローニングおよび/または輸送を行うためのあらゆるビヒクルを意味する。ベクターは、他の核酸セグメントが連結して、連結された該セグメントの複製をもたらすことができるレプリコンでもよい。「レプリコン」とは、インビボにおけるDNA複製の自律的単位として機能する、すなわちそれ自身の制御下で複製し得る任意の遺伝的要素(例えばプラスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」には、インビトロ、エクスビボまたはインビボで、核酸を細胞に導入するためのウイルス性および非ウイルス性のビヒクルが包含される。例えば、プラスミド、修飾された真核生物ウイルス、または修飾させた細菌ウイルスなど、多数のベクターが従来技術において公知であり、使用されている。ポリヌクレオチドの適切なベクターへの挿入は、相補的結合性を有する末端を有する適切なベクターに適切なポリヌクレオチド断片をライゲートすることにより実施できる。
ベクターは、ベクターが導入された細胞を選抜または識別するためのレポーターまたは選抜マーカーをコードするよう設計してもよい。選択マーカーまたはレポーターの発現により、ベクター上の他のコード領域の導入および発現を示す宿主細胞の識別および/または選抜が可能となる。従来技術において公知であり、使用される選抜可能なマーカー遺伝子の例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミド等に対する抵抗性を付与する遺伝子、ならびにアントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子等の表現型マーカーとして使用される遺伝子が挙げられる。従来技術において公知であり、使用されるレポーターの例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、β−グルクロニダーゼ(Gus)等が挙げられる。選抜マーカーは、レポーターであるとも考えられる。
用語「プラスミド」は、細胞の中心的な代謝の一部を構成しない遺伝子を担持し、通常環状の二本鎖DNA分子の形態である細胞質因子のことを指す。かかる因子は、自己複製配列、ゲノム統合配列、ファージ由来配列、または直鎖状、環状もしくは超コイル状の、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAのヌクレオチド配列であって、あらゆる起源に由来してもよく、それらは多くのヌクレオチド配列が連結または再結合してユニークな構成を有し、細胞に適切な3’非翻訳配列とともに、プロモーター断片および選択された遺伝子産物のためのDNAの塩基配列を導入できるものである。
使用できる真核生物ウイルスベクターとしては、限定されないが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびポックスウイルス(例えばワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクター)が挙げられる。非ウイルス性のベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA−タンパク質複合体およびバイオポリマーが挙げられる。
「クローニングベクター」とは、連続的に複製する、所定の長さを有する核酸ユニットである「レプリコン」を指し、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドなどが挙げられ、それらは複製開始点を有し、他の核酸セグメントが連結して連結された該セグメントを複製するものである。特定のクローニングベクターは、一方では例えば細菌などのタイプの細胞において複製し、他方では例えば真核細胞などにおいて発現を行うことができる。クローニングベクターは典型的には、ベクターを含む細胞の選抜のために使用できる1つまたはそれ以上の配列、および/または目的の核酸配列の挿入のための1つまたはそれ以上のマルチクローニングサイトを含む。
用語「発現ベクター」は、挿入された核酸配列の宿主細胞への導入後、その発現を可能にするよう設計されたビヒクルを指す。挿入された核酸配列は、上記の調節領域との間で作動可能な位置関係に置かれる。
ベクターは、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、トランスダクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃またはDNAベクタートランスポーターの使用など、公知技術の方法によって宿主細胞に導入される。
本明細書で用いられる「培養」、「培養すること」および「培養工程」とは、インビトロの条件で細胞の増殖または分裂を可能にし、または生きた細胞の状態を維持するよう細胞をインキュベートすることを意味する。本明細書で用いられる「培養細胞」とは、インビトロで増殖させた細胞を意味する。
本明細書において、用語「ポリペプチド」には、単一の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」が包含されるものとし、アミド結合(別名ペプチド結合)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸によるあらゆる1つまたはそれ以上の鎖を指し、生成物の具体的な長さには関係しない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために用いる他のいずれの用語も、「ポリペプチド」の定義に包含され、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれらの交換可能に用いることができる。用語「ポリペプチド」は、ポリペプチド発現後の修飾を有する生成物を指すこともあり、かかる修飾としては、限定されないが、グリコシレーション、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断または非天然アミノ酸による修飾が挙げられる。ポリペプチドは、天然の生物給源から誘導するか、または組換技術により製造してもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳される必要はない。それはあらゆる方法(化学合成を含む)で産生させてもよい。
「単離された」ポリペプチド、またはその断片、変異体もしくは誘導体とは、その天然の環境に存在しない状態であるポリペプチドを指す。具体的な精製の程度は関係がない。例えば、単離されたポリペプチドは、単にその固有または天然の環境から取り出されたものであってもよい。宿主細胞において発現される組換産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、本開示の目的において、分離されたか、分画されたか、またはいずれかの適切な方法により部分的もしくは実質的に精製された天然または組換え型ポリペプチドと同様に、単離されたものとする。
本明細書において、用語「宿主細胞」とは、組換え核酸を担持しているかまたは担持できる細胞または細胞集団を指す。宿主細胞は原核細胞(例えば大腸菌)であってもよく、あるいは宿主細胞は、例えば真核細胞(例えば酵母細胞(例えばサッカロマイセス・セレビジエ、ピキア・パストリスまたはサッパロマイセス・ポンベ)、および各種の動物細胞(例えば昆虫細胞(例えばSf−9)または哺乳動物細胞(例えばHEK293F、CHO、COS−7、NIH−3T3)であってもよい。
本開示にはまた、ポリペプチドの断片または変異体、ならびにそれらのあらゆる組合せも包含される。「断片」または「変異体」という用語は、本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子を指すときは、参照ポリペプチドの特性(例えばFcRn結合ドメインまたはFc変異体のFcRnとの結合親和性、またはFIX変異体の凝固活性)の少なくともいくつかを保持するあらゆるポリペプチドも包含する。ポリペプチドの断片には、本明細書に記載される特異的な抗体断片に加えて、タンパク質の切断による断片、および欠失型断片が包含されるが、天然に存在する全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)は含まれない。本開示に係るポリペプチド結合ドメインまたは結合分子の変異体には、上記の断片、さらにはアミノ酸の置換、欠失または挿入による改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドが包含される。変異体は、天然に、または非天然に発生し得る。非天然に生じる変異体は、公知の変異導入技術を使用して作製することができる。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または挿入を含み得る。本明細書において開示される具体的な1つのFIX変異体は、R338L FIX(Padua)変異体(配列番号2)である。全開示内容が、参照により本明細書に組み込まれる、例えばSimioni,P.ら、「X−Linked Thrombophilia with a Mutant Factor IX(Factor IX Padua)」(NEJM 361:1671〜75(2009年10月))を参照されたい。
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換されることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、従来技術において定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が包含される。したがって、ポリペプチドのアミノ酸が同じ側鎖ファミリーに属する他のアミノ酸と置換される場合、該置換は保守的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸鎖が、側鎖ファミリーのメンバーの順序および/または組成において異なるが構造的に類似する鎖と、保守的に置換されることもある。
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の「配列同一性(%)」という用語は、比較ウインドウの2つの配列のアラインメントにおいて共有される、最適アラインメントを得るために必要な挿入または欠失(すなわちギャップ)を考慮した、同一のマッチ部位の数を意味する。マッチ部位は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的および参照配列において示されるあらゆる部位であってもよい。標的配列に示されるギャップは、ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸でないため、カウントされない。同様に、参照配列に示されるギャップは、標的配列ヌクレオチドまたはアミノ酸がカウントされ、参照配列からのヌクレオチドまたはアミノ酸がカウントされないため、これもカウントされない。
配列同一性のパーセンテージは、両配列に存在する同一のアミノ酸残基または核酸塩基の部位数を決定してマッチ部位の数を得ることと、比較ウインドウ中の全部位数で、マッチ部位の数を除算することと、得られた数に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることと、により算出される。2つの配列間の比較および配列同一性(%)の決定は、オンライン使用用の、およびダウンロードにより入手可能なソフトウェアを使用して実施できる。適切なソフトウェアプログラムは、タンパク質およびヌクレオチド配列のアラインメント用のいずれの場合も、様々な供給元から入手可能である。配列同一性(%)を決定する1つの適切なプログラムは、bl2seqであり、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTサイトの一部である。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用する2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列を比較するために用い、一方、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために用いる。他の適切なプログラムは、例えばNeedle、Stretcher、WaterまたはMatcherであり、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSサイトの一部であり、またのEuropean Bioinformatics Institute(EBI、www.ebi.ac.uk/Tools/psa)から入手可能である。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列とアラインメントされた単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列中のそれぞれの領域は、自分自身のパーセント配列同一性を各々有することができる。配列同一性(%)値は、最も近い値に四捨五入されることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13および80.14は、80.1に切り捨てられる一方、80.15、80.16、80.17、80.18および80.19は、80.2に切り上げられる。また、長さの値が常に整数である点に留意されたい。
当業者は、配列同一性(%)算出のための配列アラインメントの作成が、一次配列データによって行われる2つの配列−配列間比較のみに限定されないことを理解するであろう。配列アラインメントは、複数の配列アラインメントに由来してもよい。複数の配列アラインメントを作成する1つの適切なプログラムは、ClustalW2(www.clustal.orgから入手可能)である。他の適切なプログラムは、MUSCLE(www.drive5.com/muscle/から入手可能)である。あるいは、ClustalW2およびMUSCLEは、例えばEBIから入手可能である。
例えば構造データ(例えば結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば変異の位置)または系統発生データなどの異なる情報源からの配列データを統合することによって、配列アラインメントを作成してもよいことが理解される。異種のデータを統合して複数の配列アラインメントを作成する適切なプログラムは、T−Coffeeであり、www.tcoffee.orgから入出してもよく、あるいは、例えばEBIから入手してもよい。配列同一性(%)算出に用いる最終的なアラインメントは、自動的に、または手動により調整してもよいことが理解される。
本明細書において、因子IXのタンパク質配列「に対応するアミノ酸」、「に対応する部位」または「と同等なアミノ酸」は、第1FIX配列と第2FIX配列の同一性または類似性を最大にするアラインメントにより同定される。第2FIX配列と同等なアミノ酸を同定するために用いる数は、第1FIX配列の対応するアミノ酸を同定するために用いる数に基づく。
本明細書において、用語「挿入部位」とは、FIXポリペプチド(典型的には成熟型FIXポリペプチド)またはその断片、変異体または誘導体中の、異種部分を挿入できる部位の直ぐ上流のアミノ酸残基番号を指す。「挿入部位」は数字として特定され、その数字は、R338L FIX(Padua)変異体(配列番号2)中の挿入部位に対応し、該挿入部位の直ぐN末端側のアミノ酸の番号である。例えば、「配列番号2のアミノ酸105に対応する挿入部位で、EGF2ドメインがXTENを含む」というフレーズは、異種部分が、配列番号2のアミノ酸105およびアミノ酸106に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。しかしながら、当業者であれば、FIX変異体中の対応する部位を容易に同定することができ、また本開示は、R338L FIX(Padua)変異体への挿入のみに限定されるものではない。むしろ、本明細書において開示される挿入は、凝血原活性を有するあらゆるFIX変異体または断片中の、R338L FIX変異体の部位に対応するあらゆる部位においても行うことができる。
本明細書中で使用する「アミノ酸の直ぐ下流」というフレーズは、アミノ酸の末端カルボキシル基の直ぐ隣の部位を指す。同様に、「アミノ酸の直ぐ上流」というフレーズは、アミノ酸の末端アミン基の直ぐ隣の部位を指す。したがって、本明細書において使用される「挿入部位の2つのアミノ酸の間」というフレーズは、XTENまたは他のいずれかのポリペプチドが2つの隣接するアミノ酸の間に挿入される部位を指す。
本明細書で用いられる用語「挿入された」、「挿入される」、「〜に挿入される」、または文法的に同等の用語は、R338L FIX(Padua)変異体(配列番号2)の類似する部位に対応する、融合ポリペプチド中のXTENの部位を指す。当業者であれば、例えば配列番号1として示される他のFIXポリペプチド配列に対応する挿入部位を同定するための方法を理解するであろう。本明細書において、当該用語は、R338L FIX(Padua)変異体に対応する組換え型FIXポリペプチドの特徴のことを指すのであって、融合ポリペプチドを製造する何らかの方法またはプロセスを示すか、意味するか、または示唆するものではない。例えば、本明細書において提供される融合ポリペプチドに関して、「XTENが、FIXポリペプチドの残基105の直ぐ下流の、EGF2ドメイン中に挿入される」というフレーズは、融合ポリペプチドが、R338L FIX変異体(配列番号2)のアミノ酸105に対応するアミノ酸の直ぐ下流にXTENを含み、例えば、R338L FIX変異体のアミノ酸105および106に対応するアミノ酸と結合することを意味する。
「融合」または「キメラ」タンパク質は、天然において連結されない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。通常別々のタンパク質として存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチドとしてまとめてもよく、または、通常同じタンパク質中に存在するアミノ酸配列を、新規な配置にて融合ポリペプチド(例えば、本開示のFIXドメインとIg Fcドメインとの融合)としてもよい。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、または、ペプチド領域が好ましい関係においてコードされるポリヌクレオチドを作製し、翻訳することによって製造される。融合タンパク質は、第1のアミノ酸配列と共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって会合する第2のアミノ酸配列をさらに含んでもよい。
用語「異種」および「異種部分」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは他の部分が、それと比較されるそれらとは異なるものに由来することを意味する。例えば、異種ポリペプチドは、合成物であってもよく、または異なる種、個体内の異なるタイプの細胞、または異なる個体の同じもしくは異なるタイプの細胞に由来するものであってもよい。一態様では、異種部分は、他のポリペプチドに融合して、融合ポリペプチドまたはタンパク質を生じさせるポリペプチドである。別の態様では、異種部分は、例えばポリペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートするPEGなどの非ポリペプチドである。
本明細書において、用語「半減期」とは、インビボでの特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与された量の半分が、動物の血流および/または他の組織から排除されるために必要となる時間により表される。所定のポリペプチドのクリアランス曲線が時間の関数として作成されるとき、該曲線は通常、迅速なα相および長いβ相の二相型となる。α相は典型的には、血管内および血管外空間の間に投与されたポリペプチドの平衡を表し、ポリペプチドのサイズにより部分的に決定される。β相は典型的には、血管内空間におけるポリペプチドの異化作用を表す。いくつかの実施形態では、FIX、およびFIXを含む融合タンパク質は一相型であり、したがって、α相を有さず、β相のみを有する。したがって、特定の実施形態では、本明細書で用いられる用語「半減期」は、β相のポリペプチドの半減期を指す。ヒトにおけるヒト抗体の典型的なβ相半減期は21日である。
本明細書において用いられる用語「連結される」および「融合する」とは、それぞれ、第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、第2アミノ酸配列またはヌクレオチド配列と、共有結合により、または非共有結合的に結合することを指す。第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に直接結合するかまたは並置されてもよく、あるいは、介在配列が第1の配列および第2の配列と共有結合してもよい。用語「連結される」とは、C末端またはN末端において第2のアミノ酸配列が第1のアミノ酸配列と融合することを意味するのみならず、第1のアミノ酸配列(または第2アミノ酸配列)の全部が、それぞれ第2のアミノ酸配列(または第1のアミノ酸配列)中のいずれかの2つのアミノ酸の間へ挿入されることをも意味する。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結される。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結されてもよい。リンカーは、ペプチドもしくは(ポリペプチド鎖の場合)ポリペプチド、またはヌクレオチドもしくは(ヌクレオチド鎖の場合)ヌクレオチド鎖、または(ポリペプチドおよびポリヌクレオチド鎖の場合)あらゆる化学部分であってもよい。用語「連結される」はまた、ハイフン(−)によって示されることもある。
本明細書において使用する用語「会合する」とは、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖の間で形成される共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、該用語「会合する」とは、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合を意味する。この会合は、コロン(:)によって示すこともある。別の実施形態では、それはペプチド結合を除く共有結合を意味する。例えば、アミノ酸のシステインはチオール基を含み、該チオール基により、第2のシステイン残基に対してジスルフィド結合または架橋を形成することができる。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合により会合し、また2つの重鎖は、Kabat付番では239および242に対応する部位(EU付番では226または229部位)における2つのジスルフィド結合により会合する。共有結合の例としては、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、σ結合、π結合、δ結合、グリコシド結合、アゴスティック結合、曲がった結合、双極性結合、πバックボンド、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、コンジュゲーション、ハイパーコンジュゲーション、芳香族性、多座性または反結合が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えばカチオン−π結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば二水素結合、二水素錯体、低バリア水素結合または対称性水素結合)、ファン・デル・ワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性(aurophilicity)、インターカレーション、重層、エントロピー力または化学極性が挙げられる。
本明細書中で使用する「切断部位」または「酵素的切断部位」という用語は、酵素によって認識される部位を意味する。特定の酵素的切断部位は、細胞内プロセシング部位を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、凝血カスケードの間に活性化される酵素によって切断される酵素的切断部位を有し、かかる部位の切断は、血餅形成部位で生じる。かかる部位の例としては、例えばトロンビン、因子XIaまたは因子Xaによって認識されるそれらが挙げられる。FXIa切断部位の例としては、例えばTQSFNDFTR(配列番号166)およびSVSQTSKLTR(配列番号167)が挙げられる。トロンビン切断部位の例としては、例えばDFLAEGGGVR(配列番号168)、TTKIKPR(配列番号169)、LVPRG(配列番号170)およびALRPR(配列番号171)が挙げられる。他の酵素的切断部位は、従来技術において公知である。
本明細書における「プロセシング部位」または「細胞内プロセシング部位」という用語は、ポリペプチドの翻訳後に機能する酵素の標的となるポリペプチドの酵素的切断部位の一種を意味する。一実施形態では、かかる酵素は、ゴルジ体ルーメンからトランスゴルジ区画までの輸送の間に機能する。細胞内プロセシング酵素は、細胞からのタンパク質の分泌前にポリペプチドを切断する。かかるプロセシング部位の例としては、例えば、PACE/フーリン(furin)(PACEはPaired basic Amino acid Cleaving Enzymeの頭文字)ファミリーのエンドペプチダーゼが標的とするそれらが挙げられる。これらの酵素は、ゴルジ膜に局在化し、配列モチーフArg−[任意の残基]−(LysまたはArg)−Argのカルボキシ末端側のタンパク質を切断する。本明細書において、「フーリン」ファミリーの酵素としては、例えばPCSK1(別名PC1/Pc3)、PCSK2(別名PC2)、PCSK3(別名フーリンまたはPACE)、PCSK4(別名PC4)、PCSK5(別名PC5またはPC6)、PCSK6(別名PACE4)またはPCSK7(別名PC7/LPC、PC8またはSPC7)が挙げられる。他のプロセシング部位は、従来技術において公知である。本明細書において参照される用語「プロセシング可能なリンカー」とは、細胞内プロセシング部位を含むリンカーを意味する。
複数のプロセシングまたは切断部位を含む構築物において、かかる部位が同一でもよく、または異なってもよいことが理解されよう。
本明細書で用いられる「プロセシング可能なリンカー」とは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位を含むリンカーを指し、それは本明細書の他の箇所に記載されている。
本明細書で用いられる「ベースライン」とは、投与前の対象における最も低い血漿中FIXの測定濃度である。血漿中FIX濃度は、投与前の2つの時点、すなわちスクリーニング通院時および投与の直前前に測定することができる。あるいは、(a)前処置FIX活性が<1%であり、検出可能なFIX抗原を有さず、ナンセンス遺伝子型を有する対象のベースラインを0%として定義し、(b)前処置FIX活性が<1%であり、検出可能なFIX抗原を有する対象のベースラインを0.5%として定義し、(c)前処置FIX活性が1〜2%である対象のベースラインをCmin(PK試験全体にわたり最も低い活性)とし、(d)前処置FIX活性が≧2%である対象のベースラインを2%として定義してもよい。
本明細書で用いられる「対象」は、ヒトを意味する。本明細書で用いられる対象には、抑制できない出血エピソードを少なくとも一回発症したが知られているか、抑制できない出血エピソードと関連する疾患もしくは障害(例えば出血性の疾患もしくは障害、例えば血友病B)と診断されたか、抑制できない出血エピソード(例えば血友病)に罹患し易いか、またはそれらのいずれかの組合せを有する個体が包含される。対象はまた、特定の活動(例えば手術、スポーツ活動または何らかの激しい活動)前に1つまたはそれ以上の制御できない出血エピソードの危険を有する個体も含んでいてもよい。対象は、1%、0.5%未満、2%未満、2.5%未満、3%未満または4%未満のベースラインFIX活性を有し得る。対象にはまた、小児のヒトが包含される。小児のヒト対象は、出生〜20歳、好ましくは出生〜18歳、出生〜16歳、出生〜15歳、出生〜12歳、出生〜11歳、出生〜6歳、出生〜5歳、出生〜2歳、および2〜11歳である。
本明細書において使用される処置する、処置、処置することとは、例えば疾患または症状の重症度を低減し、疾病経過の持続期間を減少させ、疾患または症状と関連する1つまたはそれ以上の兆候を改善させ、疾患または症状を有する対象に対して、疾患または症状を必ずしも治療せずに有益な効果を提供し、または疾患もしくは症状と関連する1つまたはそれ以上の兆候を予防することを指す。一実施形態では、「処置」という用語は、本開示の融合タンパク質を投与することによって、対象物のFIXトラフレベルを少なくとも1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dLまたは20IU/dLに維持することを意味する。別の実施形態では、処置とは、約1〜約20IU/dL、2〜約20IU/dL、約3〜約20IU/dL、約4〜約20IU/dL、約5〜約20IU/dL、約6〜約20IU/dL、約7〜約20IU/dL、約8〜約20IU/dL、約9〜約20IU/dLまたは約10〜約20IU/dLにFIXトラフレベルを維持することを意味する。疾患または症状の処置にはまた、対象のFIX活性を、少なくとも非血友病対象のFIX活性の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%についてレベルと同等に維持することが包含される。処置のために必要とされる最低限のトラフレベルは、1つまたはそれ以上の公知の方法により決定してもよく、また対象毎に調整(増加または減少)してもよい。
本明細書で用いられる止血性障害とは、フィブリンクロットを形成する能力に障害を有するか、またはかかる能力がないために、自発的に、または外傷の結果として出血する傾向を有することを特徴とする、遺伝的または後天性の症状を意味する。かかる障害の例としては、血友病が挙げられる。3つの主な形態として、血友病A(因子VIII欠損)、血友病B(因子XI欠損または「クリスマス病」)および血友病C(因子XI欠損、軽度の出血傾向)が存在する。他の止血性障害としては、例えばVon Willebrand病、因子XI欠損(PTA欠乏症)、因子XII欠損、フィブリノゲン、プロトロンビン、因子V、因子VII、因子Xまたは因子XIIIの欠損または構造異常、GPIbの欠損または欠陥であるベルナール−スーリエ症候群が挙げられる。GPIb(VWFの受容体)は、不完全となり易く、一次血餅形成(一次性止血)の不足および高い出血傾向、またグランツマンおよびネーゲリ血小板無力症(グランツマン血小板無力症)をもたらすことがある。肝不全(急性および慢性形態)において、肝臓での凝固因子の不十分な産生が見られ、これは出血の危険性を増加させ得る。
本明細書中で使用する「急性出血」という用語は、出血エピソードを指し、その基となる理由は問わない。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝出血障害(例えば因子VII欠損)、血小板障害、または抗凝固因子抗体の産生による抵抗性を有し得る。
II.FIX融合タンパク質:
本開示は、FIXポリペプチドと、FIXポリペプチド内に挿入されるか、FIXポリペプチドのC末端に融合するか、またはその両方である少なくとも1つの異種部分とを含むFIX融合タンパク質の皮下投与に関する。本開示の特定の態様は、FIXポリペプチドおよび異種部分(例えばFc領域)を含むFIX融合タンパク質の皮下投与に関し、FIXポリペプチドは、R338L変異(Padua変異)を含む。FIX融合タンパク質は、異種部分による挿入または融合の後も、1つまたはそれ以上のFIX活性を維持される。一実施形態では、FIX活性は凝血原活性である。用語「凝血原活性」とは、血液の凝固カスケードに関与し、天然のFIXの代替となる、本開示のFIXタンパク質の能力を意味する。例えば、本開示の組換え型FIXタンパク質は、例えば発色アッセイによる試験において、因子VIII(FVIII)の存在下で因子X(FX)を活性化因子X(FXa)に変換できるときに、凝血原活性を有する。別の実施形態では、FIX活性は、テナーゼ複合体を生成させる能力である。他の実施形態では、FIX活性は、トロンビン(または凝血塊)を生成させる能力である。
本開示の組換えFIXタンパク質は、天然の成熟型ヒトFIXの凝血原活性の100%を示す必要はない。実際には、特定の態様では、本開示のFIXポリペプチドに挿入される異種部分が顕著にタンパク質の半減期または安定性を増加させるため、その活性が低くとも申し分なく許容される。したがって、特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、天然のFIXの凝血原活性の、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を有する。しかしながらいくつかの開示される実施形態では、本開示の組換えFIXタンパク質は、FIX Padua R338L高活性変異体を含むタンパク質における天然のFIX活性に対して100%超の活性を有してもよく、例えば、その活性の少なくとも約105%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%または200%、またはそれ以上の活性を有してもよい。
凝血原活性は、いずれかの適切なインビトロまたはインビボアッセイにより測定できる。FIXの活性は、凝血塊の生成をモニターすることによる凝血カスケードの下流側の測定(凝固アッセイ)、または、FVIII−FIX複合体の活性化後に直接FXの酵素活性を測定することによる上流側の測定(発色アッセイ)により測定できる(Barrowcliffeら、Semin.Thromb.Haemost.28:247〜56(2002)、Leeら、Thromb.Haemost.82:1644〜47(1999)、Lippiら、Clin.Chem.Lab.Med.45:2〜12(2007)、Matsumotoら、J.Thromb.Haemost.4:377〜84(2006)を参照)。したがって、凝血原活性は、発色基質アッセイ、凝固アッセイ(例えば1段階または2段階凝固アッセイ)、またはその両方を用いて測定することができる。発色アッセイのメカニズムは、血液凝固カスケードの原則に基づくものであり、活性化FIXがFVIII、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下でFXをFXaに変換するというものである。FXa活性は、FXaに特異的なp−ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解により評価する。405nMで測定されるp−ニトロアニリン放出の初速度は、FXa活性に、すなわちサンプルのFIX活性に正比例する。発色アッセイは、国際血栓止血学会議(International Society on Thrombosis and Hemostasis、ISTH)の学術標準化委員会(Scientific and Standardization Committee、SSC)の因子VIIIおよび因子IX分科会により推奨されている。
凝血原活性の測定に有用な他の適切なアッセイとしては、例えば全開示内容が参照により本明細書に組み込まれるScheiflingerおよびDockalの米国特許出願公開第2010/0022445号に開示されるアッセイが挙げられる。
特定の態様では、本開示の組換えFIXタンパク質の凝血原活性は天然の成熟型FIXと比較され、特定の態様では、それは国際標準と比較される。
少なくとも1つの異種部分は、以下に詳細に説明するように、あらゆる異種部分も含んでもよく、または改善された特性をFIXタンパク質に提供できる部分であってもよい。例えば、一態様では、本開示において有用な異種部分は、FIXタンパク質の半減期を延長できる部分、またはFIXタンパク質の安定性を改善できる部分であり得る。本開示のFIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドに挿入されるかまたは融合する複数の異種部分を有してもよい。一実施形態では、複数の異種部分は同一のものである。別の実施形態では、複数の異種部分は異なるものである。他の実施形態では、異種部分は、XTEN、アルブミン、アルブミン結合ペプチド、アルブミン小結合分子、Fcドメイン、FcRn結合パートナー、PAS、CTP、PEG、HES、PSAまたはそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、FIXポリペプチドのドメイン間でなく、ドメイン内に挿入される。FIXポリペプチドは、例えばγ−カルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、上皮成長因子様ドメイン1(EGF1)、上皮成長因子様ドメイン2(EGF2)、活性化ペプチド(AP)ドメイン、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー、および触媒ドメイン(例えばセリンプロテアーゼドメイン)などの複数のドメインを含む。FIXチモーゲンは、461のアミノ酸を含み、アミノ酸1〜28(配列番号3に対応)はシグナルペプチドであり、アミノ酸29〜46(配列番号3に対応)はプロペプチドであり、415アミノ酸のFIXタンパク質配列がそれに続く。この415にプロセシングされたFIXは、FIX 軽鎖であるアミノ酸1〜145(配列番号1または配列番号2に対応)と、活性化ペプチドであるアミノ酸146〜180と、触媒的FIX重鎖であるアミノ酸181〜415(配列番号1または配列番号2に対応)とを含む。軽鎖および重鎖において、GLAドメインは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸1〜46に対応し、EGF1ドメインは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸47〜84に対応し、EGF2ドメインは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸85〜127に対応し、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカーは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸128〜145に対応し、APドメインは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸146〜180に対応し、触媒ドメインは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸181〜415に対応する。
特定の実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、FIXポリペプチドの1つまたはそれ以上のドメイン内に挿入される。例えば、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、APドメイン、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー、触媒ドメインおよびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるドメイン内に挿入することができる。特定の一実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、GLAドメイン内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸1〜46内)に挿入される。特定の一実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、EGF1ドメイン内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸47〜83内)に挿入される。特定の一実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、EGF2ドメイン内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸84〜125内)に挿入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、EGF2ドメインとAPドメインの間にリンカー内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸132〜145内)に挿入される。特定の一実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、APドメイン内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸146〜180内)に挿入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)は、触媒ドメイン内(例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸181〜415内)に挿入される。
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の異種部分は、各種の挿入部位内に挿入することができる。特定の実施形態では、これらの1つまたはそれ以上の部位への少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)の挿入は、FIX活性の損失をもたらさず、および/またはFIXタンパク質の性質改善をもたらす。例えば、少なくとも1つの異種部分は、以下からなる群:配列番号2のアミノ酸103(すなわち配列番号2のアミノ酸103に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸105(すなわち配列番号2のアミノ酸105に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸142(すなわち配列番号2のアミノ酸142に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸149(すなわち配列番号2のアミノ酸149に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸162(すなわち配列番号2のアミノ酸162に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸166(すなわち配列番号2のアミノ酸166に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸174(すなわち配列番号2のアミノ酸174に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸224(すなわち配列番号2のアミノ酸224に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸226(すなわち配列番号2のアミノ酸226に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸228(すなわち配列番号2のアミノ酸228に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、配列番号2のアミノ酸413(すなわち配列番号2のアミノ酸413に対応するアミノ酸の直ぐ下流)、およびそれらのいずれかの組合せから選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
一実施形態では、異種部分(例えばXTEN)は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸149、配列番号1または配列番号2のアミノ酸162、配列番号1または配列番号2のアミノ酸166、配列番号1または配列番号2のアミノ酸174、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入される。別の実施形態では、異種部分(例えばXTEN)は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸224、配列番号1または配列番号2のアミノ酸226、配列番号1または配列番号2のアミノ酸228、配列番号1または配列番号2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入される。他の実施形態では、異種部分(例えば、XTEN)は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸103、配列番号1または配列番号2のアミノ酸105、およびその両方、からなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入される。別の実施形態では、異種部分(例えばXTEN)は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸142に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入される。
以下さらに詳細に説明するように、異種部分はXTENであってもよく、それは様々な長さを有し得る。例えば、XTENは少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、少なくとも約288のアミノ酸または少なくとも約864のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、XTENは、AE42、AG42、AE72、AG72、AE144、AG144、AE288、AG288、AE864およびAG864からなる群から選択される。FIXポリペプチドに挿入できるかまたは融合させることができるXTENの非限定的な例は、本明細書に記載されるとおりである。
いくつかの実施形態では、42アミノ酸(例えばAE42またはAG42)を含むXTENは、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
いくつかの実施形態では、72アミノ酸(例えばAE72またはAG72)を含むXTENは、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入されるか、または、XTENはC末端に融合し、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
いくつかの実施形態では、144アミノ酸(例えばAE144またはAG144)を含むXTENは、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
いくつかの実施形態では、288アミノ酸(例えばAE288またはAG288)を含むXTENは、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
さらに他の実施形態では、864アミノ酸(例えばAE864またはAG8648)を含むXTENは、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。
本開示のFIX融合タンパク質は、FIX内に挿入されるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、第2の異種部分(例えば第2のXTEN)をさらに含んでもよい。第2の異種部分は、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入されてもよく、または、第2のXTENは、FIXポリペプチドのC末端に融合する。いくつかの実施形態では、第1のXTENおよび第2のXTENは、配列番号1または2の以下からなる群からそれぞれ選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入されるか、および/またはFIXポリペプチドのC末端に融合する:配列番号1または2のアミノ酸105および配列番号1または2のアミノ酸166;配列番号1または2のアミノ酸105および配列番号1または2のアミノ酸224;配列番号1または2のアミノ酸105およびC末端に融合される;配列番号1または2のアミノ酸166および配列番号1または2のアミノ酸224;配列番号1または2のアミノ酸166およびC末端に融合される;配列番号1または2のアミノ酸224およびC末端に融合される。一実施形態では、第1のXTENは配列番号1または2のアミノ酸166に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入され、第2のXTENはFIXポリペプチドのC末端に融合する。
第2のXTENは、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸または少なくとも約288のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、第2のXTENは、6のアミノ酸、12のアミノ酸、36のアミノ酸、42のアミノ酸、72のアミノ酸、144のアミノ酸または288のアミノ酸を含む。第2のXTENは、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択することができる。特定の一実施形態では、第2のXTENは、AE72またはAE144である。
特定の一実施形態では、第2のXTENは、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、第3、第4、第5および/または第6のXTENをさらに含む。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、配列番号54〜配列番号153からなる群から選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列なしで含む。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、配列番号54〜配列番号153からなる群から選択されるアミノ酸配列を、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列なしで含む。一実施形態では、FIX融合タンパク質は、配列番号119、120、121および123からなる群から選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列なしで含む。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、配列番号119、120、123、121および226または122からなる群から選択されるアミノ酸配列を、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列なしで含む。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列のない、FIX−AP.72、FIX−AP.144、FIX−CT.72、FIX−CT.144、FIX−AP.288およびFIX−CT.288からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、2種類の異なる異種部分を含む。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドと、XTENと、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)またはその断片とを含む。いくつかの実施形態では、XTENはFIX内に挿入され、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)またはその断片は、FIXのC末端に融合する。いくつかの実施形態では、XTENは、表3に列挙される挿入部位から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入される。一実施形態では、XTENは、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、および配列番号1または2のアミノ酸413からなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入され、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)またはその断片は、FIXのC末端に融合する。特定の実施形態では、XTENは、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸166、および配列番号1または2のアミノ酸224からなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入され、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)またはその断片は、FIXのC末端に融合する。いくつかの実施形態では、XTENは、AE42、AE72およびAE144から選択される。
本開示の特定の態様では、FIX融合タンパク質は、1つまたは2つのポリペプチド鎖を含む。一実施形態では、FIX融合タンパク質は、2つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖はFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)に融合したFIXポリペプチドを含み、第2のポリペプチド鎖は第2のFcドメインを含み、第1のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)および第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)は、共有結合により会合する。
別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドおよびFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含む単一のポリペプチド鎖を含む。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質はリンカーをさらに含み、それはFIXポリペプチドとFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)とを連結する。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメインおよび第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含む。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質はリンカーをさらに含み、それはFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)とを連結する。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)および第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含み、FIXポリペプチドは、リンカーによりFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結される。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)および第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含み、FIXポリペプチドは、第1のリンカーによりFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結され、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)は、リンカーにより第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結される。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、以下からなる群:
(i)FIX(X)−F1;
(ii)FIX(X)−L1−F1;
(iii)FIX(X)−F1−F2;
(iv)FIX(X)−L1−F1−F2;
(v)FIX(X)−L1−F1−L2−F2;
(vi)FIX(X)−F1−L1−F2;
(vii)FIX(X)−F1:F2;
(viii)FIX(X)−L1−F1:F2;および
(ix)それらのいずれかの組合せ
から選択される式を含み、式中、FIX(X)は、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の挿入部位にXTENが挿入されたFIXポリペプチドであり、L1およびL2は各々リンカーであり、F1はFcドメインまたはFcRn結合パートナーであり、F2は第2のFcドメインまたは第2のFcRn結合パートナーであり、(−)はペプチド結合または1つもしくはそれ以上のアミノ酸であり、(:)は共有結合(例えばジスルフィド結合)である。
リンカー(L1およびL2)は、同一であっても異なってもよい。リンカーは切断可能であっても切断不可能であってもよく、リンカーは1つまたはそれ以上の細胞内プロセシング部位を含んでもよい。リンカーの非限定的な例は、本明細書において記載されている。いずれかのリンカーを用いて、FIXと異種部分(例えばXTENまたはFc)、または第1の異種部分(例えば第1のFc)と第2の異種部分(例えば第2のFc)とを結合させることができる。
特定の実施形態では、リンカーは、トロンビン切断部位を含む。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はXVPRを含み、Xはいずれかの脂肪族アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)である。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はLVPRを含む。いくつかの実施形態では、リンカーはPAR1エキソサイト相互作用モチーフを含み、それはSFLLRN(配列番号190)を含む。いくつかの実施形態では、PAR1エキソサイト相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193)、PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらのいずれかの組合せから選択されるアミノ酸配列をさらに含む。他の実施形態では、リンカーは、FXIa切断部位LDPRを含む。
特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドと、XTENを含む異種部分とを含み、XTENは、FIXポリペプチドのC末端に、リンカーの有無にかかわらず融合し、該リンカーは、切断可能であっても切断可能でなくともよく、また該融合タンパク質は42超のアミノ酸長および864未満のアミノ酸長のアミノ酸配列を含み、144未満のアミノ酸長がより好ましい。XTENは、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70または71超のアミノ酸長、かつ、140、139、138、137、136、135、134、133、132、131、130、129、128、127、126、125、124、123、122、121、120、119、118、117、116、115、114、113、112、111、110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、76、75、74または73未満のアミノ酸長、またはそれらのいずれかの組合せのアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、XTENは、72アミノ酸長である。特定の一実施形態では、XTENは、AE72である。別の実施形態では、XTENは、配列番号35と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、少なくとも1つの挿入されたXTEN配列と、XTENを含む異種部分とを含むFIXポリペプチドを含み、XTENは、リンカーの有無にかかわらずFIXポリペプチドのC末端に融合し、該リンカーは、切断可能であっても切断可能でなくともよい。いくつかの実施形態では、XTENは、864アミノ酸長より短く、好ましくは144アミノ酸長より短い。他の実施形態では、XTENは、244、140、130、120、110、100、90、80または75アミノ酸長より短いアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、以下からなる群:
(i)FiX−X
(ii)FIX−L1−X
(iii)FIX(X)−X
(iv)FIX(X)−L1−X
(v)FIX(X)−L1:X
(vi)それらのいずれかの組合せ
から選択される式を含み、式中、FIXはFIXポリペプチドであり、FIX(X)は、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の挿入部位に挿入される少なくとも1つのXTENを有するFIXポリペプチドであり、(X)は42超のアミノ酸長および144未満のアミノ酸長のXTENであり、Xは、42超のアミノ酸長および864未満のアミノ酸長(例えば288アミノ酸長)、好ましくは144未満のアミノ酸長のXTEN(例えば72アミノ酸長のXTEN)であり、L1はリンカーであり、(−)はペプチド結合または1つもしくはそれ以上のアミノ酸であり、(:)は共有結合(例えばジスルフィド結合)である。
リンカー(L1)は、同一であっても異なってもよい。リンカーは必要に応じて切断可能であっても切断不可能であってもよく、リンカーは1つまたはそれ以上の細胞内プロセシング部位を含んでもよい。リンカーの非限定的な例は、本明細書において記載されている。いずれかのリンカーを用いて、FIXと異種部分(例えばXTENまたはFc)とを結合させることができる。以下は、多くの開示される実施形態に適するリンカーの非限定的な例である:
特定の他の実施形態では、リンカーは、トロンビン切断部位を含む。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はXVPRを含み、Xはいずれかの脂肪族アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)である。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位は、LVPRを含む。いくつかの実施形態では、リンカーはPAR1エキソサイト相互作用モチーフを含み、それはSFLLRN(配列番号190)を含む。いくつかの実施形態では、PAR1エキソサイト相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193)、PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらのいずれかの組合せから選択されるアミノ酸配列をさらに含む。特定の他の実施形態では、リンカーは、LDPRを含むFXIa切断部位を含み、それはPAR1エキソサイト相互作用モチーフと組み合わせることができる。
特定の実施形態では、C末端でXTENに融合するFIXポリペプチドは、第2のXTENをさらに含んでもよい。第2のXTENは、本明細書に開示される挿入部位を含むがこれに限られない、FIX融合タンパク質のあらゆる部分に融合してもよく、またはそれに挿入されてもよい。FIX融合タンパク質は、第3のXTEN、第4のXTEN、第5のXTENまたは第6のXTENをさらに含んでもよい。
本開示のFIX融合タンパク質は、天然のFIXと比較して活性のレベルが維持される。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、天然のFIXの凝血原活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または100%を有する。凝血原活性は、公知技術のあらゆる方法によって測定してもよく、発色基質アッセイ、一段階凝固アッセイまたはその両方が挙げられるが、これらに限定されない。
II.A.因子XI
ヒト因子IX(FIX)は、血液凝固カスケードの固有の経路の重要なコンポーネントであるセリンプロテアーゼである。本明細書で用いられる「因子IX」または「FIX」は、凝固因子タンパク質、ならびにその種および配列変異体を指し、限定されないが、ヒトFIX前駆体ポリペプチド(「プレプロ」)である単鎖の461アミノ酸の配列、成熟型ヒトFIX(配列番号1)である単鎖の415アミノ酸の配列およびR338L FIX(Padua)変異体(配列番号2)が挙げられる。FIXには、血液凝固因子IXの典型的特徴を有するいずれのFIX分子も包含される。本明細書において、「因子IX」および「FIX」は、ドメインGla(γ−カルボキシグルタミン酸残基を含む領域)、EGF1およびEGF2(ヒト上皮成長因子と相同な配列を含む領域)、活性化ペプチド(「AP」、成熟型FIXの残基R136〜R180により形成される)およびC末端プロテアーゼドメイン(「プロ」)、または従来技術において公知のこれらのドメインの同等物、を含むポリペプチドを含むものとし、あるいは、天然タンパク質の少なくとも一部の生物活性が維持された短縮型の断片または配列変異体であってもよい。FIXまたは配列変異体は、米国特許第4,770,999号および第7,700,734号にて説明されるようにクローニングされおり、またヒト因子IXをコードするcDNAは単離され、解析され、発現ベクターにクローニングされている(Chooら、Nature 299:178〜180(1982)、Fairら、Blood 64:194〜204(1984)およびKurachiら、Proc.Natl.Acad.Sci.、U.S.A.79:6461〜6464(1982)を参照)。Simioniら(2009)により解析されたFIX(R338L FIX(Padua)変異体(配列番号2))の1つの特定の変異体は、機能獲得型変異を含み、それは天然のFIXと比較しPadua変異体の活性の約8倍の増加に相当する(表1)。FIX変異体には、FIXポリペプチドのFIX活性に影響を及ぼさない、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有するあらゆるFIXポリペプチドが包含される。
FIXポリペプチドは55kDaであり、3つの領域:28アミノ酸(配列番号3のアミノ酸1〜28)のシグナルペプチド、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化に必要とされる18アミノ酸(アミノ酸29〜46)のプロペプチド、および415アミノ酸(配列番号1または2)の成熟型因子IX、から構成されるプレプロポリペプチド鎖(配列番号1)として合成される。プロペプチドは、N末端〜γ−カルボキシグルタミン酸ドメインの18アミノ酸残基の配列である。プロペプチドは、ビタミンK依存性γカルボキシラーゼと結合し、次に内因性のプロテアーゼ、ほとんどの場合PACE(対塩基性アミノ酸切断酵素)(別名フーリンまたはPCSK3)によりFIXの前駆体ポリペプチドから分離される。γカルボキシル化なしでは、Glaドメインは、負荷電タンパク質をリン脂質表面に固定するのに必要となる正しいコンフォメーションをとるために必要なカルシウムとの結合ができず、それにより因子IXが機能しなくなる。カルボキシル化される場合であっても、Glaドメインはまた、適切な機能を発揮するためにはプロペプチドの切断が必要であり、さもなければ、保持されたプロペプチドがカルシウムおよびリン脂質への最適な結合のために必要となるGlaドメインのコンフォメーション変化が妨げられる。ヒトにおいて、結果として得られる成熟型因子IXは、約17重量%の炭水化物を含む415アミノ酸残基の単鎖タンパク質である不活性チモーゲンとして肝細胞により血流中に分泌される(Schmidt,A.E.ら、(2003)Trends Cardiovasc Med、13:39)。
成熟型FIXは、N末端からC末端に向かって、いくつかのドメイン:GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメインおよびプロテアーゼ(または触媒)ドメイン、から構成される。短いリンカーは、EGF2ドメインをAPドメインと連結する。FIXは、それぞれ、R145〜A146およびR180〜V181により形成される2つの活性化ペプチドを含む。活性化の後、単鎖FIXは2鎖状分子になり、そこでは2つの鎖はジスルフィド結合により連結される。凝固因子は、それらの活性化ペプチドを置換して異なる活性化特異性をもたらすよう、改変することができる。哺乳動物において、成熟型FIXは活性化因子XIにより活性化され、因子IXaとならなければならない。プロテアーゼドメインは、FIXのFIXaへの活性化により、FIXの触媒活性を得る。活性化因子VIII(FVIIIa)は、FIXa活性の完全な発現のための特異的な補因子である。
他の実施形態では、FIXポリペプチドは、血漿由来の因子IXのThr148アレル形態を含み、内因性因子IXと類似する構造および機能的特徴を有する。
多数の機能的FIX変異体が公知である。国際公開第02/040544号A3パンフレットは、ヘパリンによる阻害に対する高い抵抗性を示す変異体を開示する(4頁目9〜30行および15頁目6〜31行)。国際公開第03/020764号A2パンフレットは、表2および3(14〜24頁)および12頁目1〜27行において、低いT細胞免疫原性を有するFIX変異体を開示する。国際公開第2007/149406号A2パンフレットは、高いタンパク質安定性、高いインビボおよびインビトロ半減期、およびプロテアーゼに対する高い抵抗を示す機能的変異体FIX分子を開示する(4頁目1行〜19頁目11行)。国際公開第2007/149406号A2はまた、キメラおよび他の変異体FIX分子を開示する(19頁目12行〜20頁目9行)。国際公開第08/118507号A2は、高い凝固活性を示すFIX変異体を開示する(5頁目14行〜6頁目5行)。国際公開第09/051717号A2は、N−結合および/またはO−結合グリコシル化部位の数が多いFIX変異体が、高い半減期および/または回復をもたらすことを開示する(9頁目11行〜20頁目2行)。国際公開第09/137254号A2は、グリコシル化部位の数が多い因子IX変異体を開示する(2頁目段落[006]〜5頁目段落[011]、および16頁目段落[044]〜24頁目段落[057])。国際公開第09/130198号A2は、グリコシル化部位の数の増加した機能的変異体FIX分子が高い半減期を有することを開示する(4頁目26行〜12頁目6行)。国際公開第09/140015号A2は、ポリマー(例えばPEG)コンジュゲーションに使用できる、システイン残基数が増加した機能的FIX変異体を開示する(11頁目段落[0043]〜13頁目段落[0053])。2011年7月11日に出願された国際出願番号PCT/US2011/043569に記載され、2012年1月12日に国際公開第2012/006624号パンフレットとして公開されたFIXポリペプチドも、参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
加えて、FIXの何百もの非機能的変異が血友病対象において同定されており、それらの多くは、国際公開第09/137254号A2パンフレットの11〜14頁の表5に開示されている。かかる非機能的変異は本開示には含まれず、それらはむしろ、あらゆる変異が多少なりとも機能的なFIXポリペプチドをもたらすかに関する更なる指針を提供するものである。
一実施形態では、FIXポリペプチド(または融合ポリペプチドの因子IX部分)は、配列番号1または2に記載される配列(配列番号1または2のアミノ酸1〜415)と、あるいは、プロペプチド配列またはプロペプチドおよびシグナル配列(完全長FIX)と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、FIXポリペプチドは、配列番号2に記載される配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含む。
IX因子の凝血活性は、国際単位(IU)として表される。1IUのFIX活性は、約1mLの健常ヒト血漿中のFIXの量に対応する。1段階凝固アッセイ(活性化部分的トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン世代時間(TGA)および回転トロンボエラストメリー(ROTEM(登録商標))などの、因子IX活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用できる。本開示には、FIX配列との相同性を有する配列、天然の配列断片(ヒト、非ヒト霊長類、哺乳動物(家畜等)に由来)、ならびに少なくとも部分的に生物活性またはFIXの生物学的機能を維持し、および/または、凝固因子関連の疾患、不全、障害または症状(例えば外傷、手術または凝固因子の欠損に関連する出血エピソード)を予防、治療、緩和または改善するため有用である、非天然の配列変異体が包含される。ヒトFIXに対するホモロジーを有する配列は、標準的なホモロジー検索技術(例えばNCBI BLAST)により見出すことができる。
II.B.異種部分
本開示のFIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド内の1つまたはそれ以上の部位に挿入されるか、C末端に融合するか、またはその両方である少なくとも1つの異種部分を含むことができ、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。「異種部分」は、異種ポリペプチド、非ポリペプチド部分、またその両方を含んでもよい。特定の態様では、異種部分はXTENである。いくつかの態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド内の1つまたはそれ以上の部位に挿入される少なくとも1つのXTENを含む。いくつかの態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドのC末端に融合する少なくとも1つのFc領域を含む。他の実施形態として、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド内の1つまたはそれ以上の部位に挿入される少なくとも1つの異種部分を含み、異種部分は、半減期を延長させる部分(例えばインビボ半減期を延長させる部分)である。
FIXの凝血原活性の少なくとも一部が保持される挿入部位を発見したことにより、同じ1つまたはそれ以上の部位でFIXタンパク質と融合したときに半減期を延長させる、構造化されていないかまたは構造化された特徴を有する他のペプチドおよびポリペプチドを挿入することも可能となると考えられる。異種部分(例えば半減期を延長させる部分)の非限定的な例としては、アルブミン、アルブミン断片、イムノグロブリンFc断片、FcRn結合パートナー、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、トランスフェリン、米国特許出願公開第20100292130号のPASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、50%未満から50%超の様々な程度の二次構造を有し、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸塩(E)およびプロリン(P)から選択される2種類のアミノ酸の6〜40アミノ酸のペプチドおよび短鎖ポリペプチドが挙げられ、それらがとりわけ、FIXの同定された活性挿入部位への挿入に適する。
特定の態様では、異種部分は、FIX融合タンパク質のインビボまたはインビトロ半減期を増加させる。他の態様では、異種部分は、FIX融合タンパク質の視覚化または局在化を促進する。FIX融合タンパク質の視覚化および/または局在化は、インビボ、インビトロ、エクスビボまたはそれらの組合せであってもよい。他の態様では、異種部分は、FIX融合タンパク質の安定性を増加させる。本明細書において、用語「安定性」とは、環境要因(例えば温度の上下)に応答したFIX融合タンパク質の1つまたはそれ以上の物理的特性の維持に関する、当業者に公知の尺度を指す。特定の態様では、物理的特性とは、FIX融合タンパク質の共有結合的な構造の維持(例えばタンパク質の切断や、不必要な酸化または脱アミド化がないこと)である。別の態様では、物理的特性とは、適切にフォールディングされた状態のFIX融合タンパク質の存在(例えば可溶性または不溶性の凝集物または沈殿物がないこと)であってもよい。一態様では、FIX融合タンパク質の安定性は、FIX融合タンパク質の、例えば熱安定性、pHによる脱フォールディングプロファイル、グリカンの安定な除去、溶解性、生化学的機能(例えば別のタンパク質と結合する能力)、および/またはそれらの組合せ、等の生物物理学的特性をアッセイすることにより測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用における結合能により示される。一態様では、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性(すなわち熱負荷に対する抵抗性)である。安定性は、例えばHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)等の従来技術において公知の方法を用いて測定することができる。熱安定性の測定方法としては、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光測定(DSF)、円二色性(CD)および熱負荷アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の態様では、FIX融合タンパク質における1つまたはそれ以上の挿入部位に挿入される異種部分は、FIX融合タンパク質の生物化学的活性を保持する。特定の実施形態では、異種部分はXTENである。一実施形態では、生物化学的活性はFIX活性であり、それは発色アッセイにより測定することができる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、異種部分のN末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方に位置するリンカーを介して、間接的に挿入部位に挿入される。異種部分のN末端およびC末端のリンカーは、同一であっても異なってもよい。いくつかの実施形態では、いくつかのリンカーは、異種部分の一方または両方の末端に隣接して直接に位置し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは「Gly−Serペプチドリンカー」である。用語「Gly−Serペプチドリンカー」とは、グリシンおよびセリン残基を含むペプチドを指す。
例示的なGly/Serペプチドリンカーとしては、アミノ酸配列(Gly4Ser)n(配列番号161)が挙げられるが、これに限定されず、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、46、50、55、60、70、80、90または100、またはそれらを超える整数である。一実施形態では、n=1であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)(配列番号161)である。一実施形態では、n=2であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)2(配列番号162)である。別の実施形態では、n=3であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)3(配列番号172)である。別の実施形態では、n=4であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)4(配列番号173)である。別の実施形態では、n=5であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)5(配列番号174)である。さらに別の実施形態では、n=6であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)6(配列番号175)である。別の実施形態では、n=7であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)7(配列番号176)である。さらに別の実施形態では、n=8であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)8(配列番号177)である。別の実施形態では、n=9であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)9(配列番号178)である。さらに別の実施形態では、n=10であり、すなわちリンカーは(Gly4Ser)10(配列番号179)である。
別の例示的なGly/Serペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(Gly4Ser)n(配列番号180)を含み、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、46、50、55、60、70、80、90または100、またはそれらを超える整数である。一実施形態では、n=1であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)(配列番号180)である。一実施形態では、n=2であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)2(配列番号181)である。別の実施形態では、n=3であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)3(配列番号182)である。別の実施形態では、n=4であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)4(配列番号183)である。別の実施形態では、n=5であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)5(配列番号184)である。さらに別の実施形態では、n=6であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)6(配列番号185)である。さらに別の実施形態では、n=7であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)7(配列番号186)である。さらに別の実施形態では、n=8であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)8(配列番号187)である。さらに別の実施形態では、n=9であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)9(配列番号188)である。さらに別の実施形態では、n=10であり、すなわちリンカーはSer(Gly4Ser)10(配列番号189)である。
特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される1つの挿入部位に挿入される1つの異種部分を含む。他の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される2つの挿入部位に挿入される2つの異種部分を含む。特定の実施形態では、表8に列挙される2つの挿入部位に2つの異種部分が挿入される。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される3つの挿入部位に挿入される3つの異種部分を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される4つの挿入部位に挿入される4つの異種部分を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される5つの挿入部位に挿入される5つの異種部分を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される6つの挿入部位に挿入される6つの異種部分を含む。いくつかの態様では、挿入されるすべての異種部分は同一である。他の態様では、挿入される異種部分の少なくとも1つは、残りの挿入される異種部分と異なる。
FIXポリペプチドの少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)との融合は、本開示の融合タンパク質の物理的または化学的性質(例えば薬物動態)に影響を及ぼし得る。特定の実施形態では、FIXタンパク質に連結される異種部分は、少なくとも1つの薬物動態学的特性を向上させ(例えば終末相半減期の増加または曲線下面積(AUC)の増加)、その結果、異種部分を欠く野生型FIXまたは対応するFIXと比較し、本明細書に記載される融合タンパク質は、長期間生体内に留まる。更なる実施形態では、本開示において使用するXTEN配列は、少なくとも1つの薬物動態学的特性を向上させ、例えば、終末相半減期の増加、皮下投与における回復および/またはバイオアビアビリティの増加、曲線下面積(AUC)の増加をもたらし、その結果、異種部分を欠く野生型FIXまたは対応するFIXと比較し、本明細書に記載される融合タンパク質は、長期間生体内に留まる。
特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質の半減期を増加させる異種部分は、限定されないが、例えばアルブミン、免疫グロブリンFc領域、XTEN配列、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリン、アルブミン−結合部分、などの異種ポリペプチド、またはこれらのポリペプチドの断片、誘導体、変異体もしくは組合せを含む。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、半減期を増加させる異種ポリペプチドを含み、該異種ポリペプチドはXTEN配列である。他の関連する態様では、異種部分は、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸などの非ポリペプチド部分のための付着部位、またはこれらの部分の誘導体、変異体もしくは組合せを含んでもよい。
他の実施形態では、本開示のFIX融合タンパク質は、1つまたはそれ以上のポリマーとコンジュゲートする。ポリマーは、水溶性であっても非水溶性であってもよい。ポリマーは共有結合または非共有結合により、FIXに、またはFIXにコンジュゲートする他の部分に付着してもよい。ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリンまたはポリ(アクリロイルモルホリン)が挙げられる。
特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は1つ、2つ、3つまたはそれ以上の異種部分を含み、それらは各々同じまたは異なる分子であってもよい。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、1つまたはそれ以上のXTENを含む。他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、1つまたはそれ以上のXTENおよび1つまたはそれ以上のFcドメインを含む。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIX内に挿入されるXTENおよびFIXのC末端に融合するFcを含んでもよい。
本開示のFIX融合タンパク質は、天然のFIX、rFIXFcまたはFIX R338Lと比較し、インビボ半減期が増加している。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分を欠く天然のFIXと比較し、または異種部分を欠くFIX R338Lと比較し、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍増加したインビボ半減期を有し得る。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分のないFIXポリペプチドと比較し2倍以上増加したインビボ半減期を有する。
他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分を欠くFIXポリペプチドのインビボ半減期と比較し、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも32時間、少なくとも約33時間、または少なくとも約34時間長いインビボ半減期を有し得る。
II.B.1.XTEN
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分はXTENである。本明細書で用いられる「XTEN配列」とは、主に小型の親水性アミノ酸から構成される非天然の実質的に非反復的な配列を有する拡張された長さのポリペプチドを指し、該配列は、生理的条件下で二次または三次構造を採る程度が低いかまたはない。融合タンパク質パートナーとして、XTENは担体として機能することができ、本開示のFIX配列に連結されて融合タンパク質を形成するとき、特定の望ましい薬物動態学的、物理化学的および薬学的特性を付与する。かかる望ましい特性としては、強化された薬物動態学的パラメーターおよび溶解特性が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる「XTEN」において、特に抗体または抗体断片(例えば単鎖抗体、または軽鎖もしくは重鎖のFc断片)は除外される。
特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入される少なくとも1つのXTENまたはその断片、変異体もしくは誘導体を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。特定の態様では、異種部分の2つはXTEN配列である。いくつかの態様では、異種部分の3つはXTEN配列である。いくつかの態様では、異種部分の4つはXTEN配列である。いくつかの態様では、異種部分の5つはXTEN配列である。いくつかの態様では、異種部分の6つ以上はXTEN配列である。
いくつかの実施形態では、本開示において有用なXTEN配列は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800または2000個の、またはそれを超える数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の実施形態では、XTENは、約20超〜約3000アミノ酸残基、30超〜約2500、40超〜約2000残基、50超〜約1500残基、60超〜約1000残基、70超〜約900残基、80超〜約800残基、90超〜約700残基、100超〜約600残基、110超〜約500残基、または120超〜約400残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、42超のアミノ酸長および144未満のアミノ酸長のアミノ酸配列を含む。
本開示のXTEN配列は、5〜14(例えば9〜14)アミノ酸残基による1つまたはそれ以上の配列モチーフ、または配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含んでもよく、該モチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)からなる群から選択される4〜6種類のアミノ酸(例えば5つのアミノ酸)を含むか、それらから基本的になるか、またはそれらからなる。米国特許出願公開第2010/0239554号A1明細書を参照されたい。
いくつかの実施形態では、XTENは、非オーバーラップ配列モチーフを含み、配列の約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%、または約100%が、表2Aから選択される単一モチーフファミリーら選択される非オーバーラップ配列の複数のユニットからなり、それによりファミリー配列が形成される。本明細書において、「ファミリー」とは、XTENが表2Aの単一モチーフのカテゴリー、すなわちAD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBD XTENのみから選択されるモチーフを有し、ファミリーのモチーフ以外に由来するXTEN内のアミノ酸については、コード化ヌクレオチドによる制限部位の導入、切断配列の導入を可能にするか、またはFIXへの良好な結合を可能にするなどの、必要とされる特性が得られるよう選択されることを意味する。XTENファミリーのいくつかの実施形態では、XTEN配列は、ADのモチーフファミリーの、またはAEのモチーフファミリーの、またはAFのモチーフファミリーの、またはAGのモチーフファミリーの、またはAMのモチーフファミリーの、またはAQのモチーフファミリーの、またはBCのファミリーの、またはBDのファミリーの非オーバーラップ配列モチーフの複数のユニットを含み、それにより、得られるXTENが上記のホモロジー範囲を示す。他の実施形態では、XTENは、表2Aのモチーフファミリーの2つ以上に由来するモチーフ配列の複数のユニットを含む。これらの配列は、さらに詳細に後述するモチーフのアミノ酸組成により与えられる総電荷、親水性、二次構造の欠如または反復の欠如など、所望の物理的/化学的性質が得られるよう選択することができる。本段落で上記した実施形態では、本明細書に記載される方法を用いてXTENに導入されるモチーフは、約36〜約3000アミノ酸残基のXTENを得るために選択され、また組み合わせることができる。
XTENは、FIXへの挿入または連結のために様々な長さを有し得る。一実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列の長さは、融合タンパク質において得られる特性または機能に基づき選択される。意図される特性または機能に応じて、XTENは、短いもしくは中間の長さの配列であってもよく、または担体としての有用性を発揮できる長い配列であってもよい。特定の実施形態では、XTENには、約6〜約99のアミノ酸残基の短いセグメント、約100〜約399のアミノ酸残基の中間の長さのセグメント、および約400〜約1000であって最長約3000のアミノ酸残基長の長いセグメントが包含される。したがって、FIXに挿入されるかまたは連結されるXTENは、約6、約12、約36、約40、約42、約72、約96、約144、約288、約400、約500、約576、約600、約700、約800、約864、約900、約1000、約1500、約2000、約2500または最大約3000アミノ酸残基長を有し得る。他の実施形態では、XTEN配列は約6〜約50、約50〜約100、約100〜150、約150〜250、約250〜400、約400〜約500、約500〜約900、約900〜1500、約1500〜2000または約2000〜約3000アミノ酸残基長である。FIXに挿入されるかまたは連結されるXTENの実際の長さは、FIXの活性に悪影響を与えることなく変化し得る。一実施形態では、本発明において用いられるXTENの1つまたはそれ以上は、42アミノ酸長、72アミノ酸長、144アミノ酸長、288アミノ酸長、576アミノ酸長または864アミノ酸長を有し、XTENファミリー配列の1つまたはそれ以上、すなわちAD、AE、AF、AG、AM、AQBCまたはBDから選択することができる。
いくつかの実施形態では、本開示において使用するXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される配列と、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。米国特許出願公開第2010/0239554号A1明細書を参照されたい。特定の一実施形態では、XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG 42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864またはそれらのいずれかの組合せを含む。
一実施形態では、XTEN配列は、AE36(配列番号217)、AE42(配列番号34)、AE72(配列番号35)、AE78(配列番号218)、AE144(配列番号36)、AE144_2A(配列番号37)、AE144_3B(配列番号38)、AE144_4A(配列番号39)、AE144_5A(配列番号40)、AE144_6B(配列番号41)、AG144(配列番号42)、AG144_A(配列番号43)、AG144_B(配列番号44)、AG144_C(配列番号45)、AG144_F(配列番号46)、AE288(配列番号47)、AE288_2(配列番号48)、AG288(配列番号49)、AE576(配列番号50)、AG576(配列番号51)、AE864(配列番号52)、AG864(配列番号53)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号202)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号203)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号204)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号205)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号206)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号207)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号208)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号209)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号210)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号211)、配列番号230)、XTEN_AE144_1A(配列番号212)、AE150(配列番号213)、AG150(配列番号214)、AE294(配列番号215)、AG294(配列番号216)およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。
いくつかの実施形態では、XTENのアミノ酸の100%未満は、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択されるか、または、配列の100%未満は、表2Aまたは表2BのXTEN配列の配列モチーフからなる。かかる実施形態では、XTENの残りのアミノ酸残基は、その他の14種の天然L−アミノ酸のいずれかから選択されるが、その際、XTEN配列が親水性アミノ酸を少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも約99%含むよう、親水性アミノ酸から優先的に選択することができる。コンジュゲート構築物において用いられるXTENの疎水性アミノ酸の含量は、5%未満、2%未満、または1%未満の疎水性アミノ酸含量であり得る。XTENの構成において望ましくない疎水性残基としては、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリンおよびメチオニンが挙げられる。さらに、XTEN配列は、以下のアミノ酸を5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満で含むか、または含まない:メチオニン(例えば酸化を回避)、またはアスパラギンおよびグルタミン(非アミド化を回避)。
別の実施形態では、XTEN配列は、AE36(配列番号217)、AE42(配列番号34)、AE72(配列番号35)、AE78(配列番号218)、AE144(配列番号36)、AE144_2A(配列番号37)、AE144_3B(配列番号38)、AE144_4A(配列番号39)、AE144_5A(配列番号40)、AE144_6B(配列番号41)、AG144(配列番号42)、AG144_A(配列番号43)、AG144_B(配列番号44)、AG144_C(配列番号45)、AG144_F(配列番号46)、AE288(配列番号47)、AE288_2(配列番号48)、AG288(配列番号49)、AE576(配列番号50)、AG576(配列番号51)、AE864(配列番号52)、AG864(配列番号53)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号202)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号203)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号204)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号205)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号206)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号207)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号208)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号209)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号210)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号211)、配列番号230)、XTEN_AE144_1A(配列番号212)、AE150(配列番号213)、AG150(配列番号214)、AE294(配列番号215)、AG294(配列番号216)およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、XTEN配列は、AE72、AE144およびAE288からなる群から選択される。本開示の特定のXTEN配列のアミノ酸配列を表2Bに示す。
更なる実施形態では、本開示において使用するXTEN配列は、本開示の融合タンパク質の物理的または化学的性質(例えば薬物動態)に影響を及ぼす。本開示において使用するXTEN配列は、以下の1つまたはそれ以上の有利な特性を示し得る:立体配座の柔軟性、高い水溶性、高いプロテアーゼ抵抗性、低い免疫原性、哺乳動物の受容体に対する低い結合性、または高い水力学的(またはStokes)半径。特定の実施形態では、本開示のFIXタンパク質に連結されるXTEN配列は薬物動態学的特性を向上させ(例えば長い終末半減期、高いバイオアビアビリティまたは高い曲線下面積(AUC))、その結果、本明細書に記載されるタンパク質は、野生型FIXと比較し長期間、生体内に留まる。更なる実施形態では、本開示において使用するXTEN配列は薬物動態学的特性を向上させ(例えば長い終末半減期または高い曲線下面積(AUC))、その結果、FIXタンパク質は野生型FIXと比較し長期間、生体内に留まる。
いくつかの実施形態では、FIXタンパク質は、天然のFIX、rFIXFc、FIX R338LまたはXTENを欠く対応するFIXタンパク質と比較し、少なくとも1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、またはそれを超過するインビボ半減期を示す。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分のないFIXポリペプチドより2倍超のインビボ半減期を有し得る。
他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分を欠くFIXポリペプチドのインビボ半減期と比較し、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも32時間、少なくとも約33時間、または少なくとも約34時間長いインビボ半減期を示す。
XTEN配列を含むタンパク質の物理的/化学特性を決定するために、各種の方法およびアッセイを使用することができる。かかる方法としては、分析的遠心法、EPR、イオン交換HPLC、サイズ除外HPLC、逆相HPLC、光散乱法、キャピラリー電気泳動法、円二色法、示差走査熱量測定法、蛍光測定法、イオン交換HPLC、サイズ排除HPLC、IR法、NMR法、ラマン分光法、屈折測定法およびUV/可視光分光法が挙げられるが、これらに限定されない。更なる方法は、Amauら、Prot Expr and Purif 48、1〜13(2006)において開示される。
本開示に従い使用できるXTEN配列の更なる例は、米国特許出願公開第2010/0239554号A1、第2010/0323956号A1、第2011/0046060号A1、第2011/0046061号A1、第2011/0077199号A1または第2011/0172146号A1明細書、または国際公開第2010/091122号A1、第2010/144502号A2、第2010/144508号A1、第2011/028228号A1、第2011/028229号A1、第2011/028344号A2、第2014/011819号A2または第2015/023891号パンフレットに開示されている。
いくつかの態様では、FIX融合タンパク質は、FIX内に挿入されるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、1つまたはそれ以上のXTEN配列を含む。一実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、GLAドメイン内に挿入される。別の実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、EGF1ドメイン内に挿入される。他の実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、EGF2内に挿入される。さらに他の実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、AP内に挿入される。さらに他の実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、触媒ドメイン内に挿入される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のXTEN配列は、FIXのC末端に融合する。
特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される挿入部位に挿入される1つのXTEN配列を含む。他の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される2つの挿入部位に挿入される2つのXTEN配列を含む。具体的実施形態では、2つのXTEN配列が、表8に列挙される2つの挿入部位に挿入される。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される3つの挿入部位に挿入される3つのXTEN配列を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される4つの挿入部位に挿入される4つのXTEN配列を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される5つの挿入部位に挿入される5つのXTEN配列を含む。特定の態様では、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される6つの挿入部位に挿入される6つのXTEN配列を含む。いくつかの態様では、すべての挿入されるXTEN配列は同一である。他の態様では、挿入されるXTEN配列の少なくとも1つは、残りの挿入されるXTEN配列と異なる。
いくつかの態様では、FIX融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入される、少なくとも1つのXTENを含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を示す。いくつかの態様では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド内の、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413からなる群から選択されるアミノ酸およびそれらのいずれかの組合せに対応する挿入部位に第2のXTEN配列を含むか、または、第2のXTENはFIXポリペプチドのC末端に融合し、FIX融合タンパク質は凝血原活性を示す。1つの特定の態様では、FIX融合タンパク質は、FIXのC末端に融合する1つのXTEN配列を含み、XTENは、42アミノ酸超および144アミノ酸未満のアミノ酸配列長を含む。
II.B.2.Fc領域またはFcRn結合パートナー:
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、Fc領域(例えばFcRn結合パートナー)またはその断片である。特定の態様では、開示のFIX融合タンパク質は、FIX内に挿入されるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、少なくとも1つのFc領域(例えばFcRn結合パートナー)を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドのC末端に融合するFc領域を含む。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質(例えばFIX−Fc融合タンパク質)は、XTEN配列を含まない。本明細書で用いられる「Fc」または「Fc領域」は、特に明記しない限り、Fcドメイン、その変異体または断片を含むパートナーと結合する機能性新生児Fc受容体(FcRn)であってもよい。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体と特異的に結合でき、それに伴い、FcRn受容体により能動輸送されるいずれかのFcRn結合パートナー分子であってもよく、アルブミンが例示されるがこれに限定されない。したがって、用語Fcには、機能性を有するあらゆるIgGのFcの変異体が包含される。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶解析に基づき報告されている(Burmeisterら、Nature 372:379(1994)、全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる)。FcのFcRnとの主な接触領域は、CH2およびCH3ドメインのジャンクション部付近である。Fc−FcRnの接触はいずれも、単一のIg重鎖内でなされる。FcRn結合パートナーには、全IgG、IgGのFc断片、ならびにFcRnの全結合領域を含む他のIgG断片が包含されるが、これらに限定されない。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域の有無にかかわらず、免疫グロブリンのCH2およびCH3ドメインを含み得る。また、融合タンパク質におけるFc領域の望ましい特性(例えば半減期、例えばインビボ半減期、の増加)が維持されたFcフラグメント、変異体または誘導体も包含される。多くの変異体、断片、変異体および誘導体が、例えば国際公開第2011/069164号A2、第2012/006623号A2、第2012/006635号A2または第2012/006633号A2パンフレットに記載されており、それらの全開示内容が本明細書に参照により組み込まれる。
1つまたはそれ以上のFcドメインは、FIXポリペプチド内で挿入してもよく、ポリペプチドのC末端に融合させてもよく、またはその両方であってもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、FIXポリペプチドに融合する。特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、配列番号229のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一のアミノ酸配列を有するFIXFc融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、他の異種部分(例えばXTEN)に融合し、その際、FIX内に挿入されるか、またはXTENのC末端に融合する。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、第2のFcドメインを含む。第2のFcドメインは、例えば1つまたはそれ以上の共有結合を介して、第1のFcドメインと会合し得る。
II.B.3.アルブミン:
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、アルブミン、アルブミン結合ドメイン、またはアルブミン結合小分子、またはその変異体、誘導体もしくは断片である。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入される、FIXのC末端に融合する、またはその両方である、少なくとも1つのアルブミンポリペプチド、またはその断片、変異体もしくは誘導体を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。ヒト血清アルブミン(HSAまたはHA)は、その全長型が609アミノ酸のタンパク質であり、血清の浸透圧を左右する主要な物質であり、また内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で用いられる用語「アルブミン」には、全長アルブミンまたはその機能性断片、変異体、誘導体もしくは類似体が包含される。アルブミンまたはその断片もしくは変異体の例は、全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0194481号A1、第2008/0004206号A1、第2008/0161243号A1、第2008/0261877号A1または第2008/0153751号A1明細書、または国際公開第2008/033413号A2、第2009/058322号A1または第2007/021494号A2パンフレットに開示されている。
アルブミン結合ポリペプチド(ABP)としては、限定されないが、細菌由来のアルブミン結合ドメイン、アルブミン結合ペプチド、またはアルブミンと結合できるアルブミン結合抗体断片が含まれる。Kraulisら、FEBS Lett.378:190〜194(1996)およびLinhultら、Protein Sci.11:206〜213(2002)に開示される連鎖球菌のプロテインG由来のドメイン3は、細菌由来のアルブミン結合ドメインの一例である。アルブミン結合ペプチドの例としては、コア配列DICLPRWGCLW(配列番号163)を有する一連のペプチドが挙げられる。Dennisら、J.Biol.Chem.2002、277:35035〜35043(2002)を参照されたい。アルブミン結合抗体断片の例は、MullerおよびKontermann、Curr.Opin.Mol.Ther.9:319〜326(2007)、Rooversら、Cancer Immunol.Immunother.56:303〜317(2007)およびHoltら、Prot.Eng.Design Sci.、21:283〜288(2008)において開示され、それらの全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入されるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、アルブミンと結合できる非ポリペプチド小分子(例えばアルブミン結合小分子)、またはその変異体もしくは誘導体のための少なくとも1つの付着部位を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。例えば、本開示のFIX融合タンパク質は、FIX内の1つまたはそれ以上の挿入部位に付着するか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、1つまたはそれ以上の有機アルブミン結合部分を含むことができ、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。Trusselら、Bioconjugate Chem.20:2286〜2292(2009)により開示されるように、かかるアルブミン結合部分の一例は、2−(3−マレイミドプロパンアミド)−6−(4−(4−ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
いくつかの実施形態では、アルブミン結合ポリペプチド配列は、Gly−Serペプチドリンカー配列を介して、C末端、N末端または両末端に隣接配置される。いくつかの実施形態では、Gly−Serペプチドリンカーは、Gly4Ser(配列番号161)である。他の実施形態では、Gly−Serペプチドリンカーは、(Gly4Ser)2(配列番号162)である。
II.B.4.CTP
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、またはその断片、変異体もしくは誘導体である。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入されるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、少なくとも1つのCTP、またはその断片、変異体もしくは誘導体を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。組換えタンパク質に挿入される1つまたはそれ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質の半減期を増加させることが知られている。全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,712,122号を参照されたい。典型的なCTPペプチドとしては、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号164)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号165)が挙げられる。参照により組み込む米国特許出願公開第2009/0087411号A1を参照されたい。いくつかの実施形態では、CTP配列は、Gly−Serペプチドリンカー配列を介して、C末端、N末端または両末端に隣接配置される。いくつかの実施形態では、Gly−Serペプチドリンカーは、Gly4Ser(配列番号161)である。他の実施形態では、Gly−セリンペプチドリンカーは、(Gly4Ser)2(配列番号162)である。
II.B.5.PAS
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分はPASペプチドである。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入される、FIXのC末端に融合する、またはその両方である、少なくとも1つのPASペプチド、またはその断片、変異体もしくは誘導体を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。本明細書で用いられる「PASペプチド」または「PAS配列」は、主にアラニンおよびセリン残基を含むかまたは主にアラニン、セリンおよびプロリン残基を含むアミノ酸配列を意味し、該アミノ酸配列は生理学的条件下でランダムコイル高次構造を形成する。したがって、PAS配列は、融合タンパク質の異種部分の一部として使用できる、アラニン、セリンおよびプロリンを含むか、それらから基本的になるか、またはそれらからなる、構成部材、アミノ酸ポリマーまたは配列カセットである。アミノ酸ポリマーはまた、アラニン、セリンおよびプロリン以外の残基がPAS配列の微量要素として追加されたときでもランダムコイル高次構造を形成することができる。「微量要素」とは、アラニン、セリンおよびプロリン以外のアミノ酸を一定の程度で、例えばアミノ酸の約12%(すなわちPAS配列の100のアミノ酸のうちの約12)以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約6%、約5%、約4%、3%(すなわち約2%または約1%)で、PAS配列に追加できることを意味する。アラニン、セリンおよびプロリンと異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、TyrおよびValからなる群から選択することができる。PASペプチドは、生理学的条件下でランダムコイル高次構造を形成させることにより、本開示の組換えタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性を増加させ、また凝血原活性を有する。
PASペプチドの非限定的な例としては、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号154)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号155)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号156)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号157)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号158)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号159)、ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号160)またはそれらの変異体、誘導体、断片、またはそれらのいずれかの組合せが挙げられる。例えば、PAS配列の更なる例は、米国特許出願公開第2010/0292130号A1明細書および国際公開第2008/155134号A1パンフレット、欧州特許第2173890号明細書から公知である。
いくつかの実施形態では、PAS配列は、Gly−Serペプチドリンカー配列を介して、C末端、N末端または両末端に隣接配置される。いくつかの実施形態では、Gly−Serペプチドリンカーは、Gly4Ser(配列番号161)である。他の実施形態では、Gly−セリンペプチドリンカーは、(Gly4Ser)2(配列番号162)である。
II.B.6.HAP
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、ホモアミノ酸ポリマー(HAP)ペプチド、またはその断片、変異体もしくは誘導体である。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIX内に挿入される、FIXのC末端に融合する、またはその両方である、少なくとも1つのホモアミノ酸ポリマー(HAP)ペプチド、またはその断片、変異体もしくは誘導体を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。HAPペプチドは、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、120アミノ酸、140アミノ酸、160アミノ酸、180アミノ酸、200アミノ酸、250アミノ酸、300アミノ酸、350アミノ酸、400アミノ酸、450アミノ酸または500アミノ酸のグリシンの反復配列を含んでもよい。HAP配列は、HAP配列に融合するかまたは連結される部分の半減期を増加させることができる。HAP配列の非限定的な例としては、限定されないが(Gly)n、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)nが挙げられ、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。一実施形態では、nは20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40である。別の実施形態では、nは50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200である。Schlapschy Mら、Protein Eng.Design Selection、20:273〜284(2007)を参照されたい。
II.B.7.有機ポリマー
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、有機ポリマー(例えばポリエチレングリコール、ポリシアル酸またはヒドロキシエチルデンプン)である。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIXに挿入される、FIXのC末端に融合する、またはその両方である、非ポリペプチド異種部分またはその断片、変異体もしくは誘導体のための少なくとも1つの付着部位を含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。例えば、本開示のFIX融合タンパク質は、FIX配列内に付着するか、FIXのC末端に付着するか、またはその両方である、1つまたはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分を含んでもよく、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。
PEG化FIXとは、FIXと少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)分子との間で形成されるコンジュゲートのことを指す。PEGは、多様な分子量および平均分子量範囲のものが市販されている。PEGの平均分子量範囲の典型例としては、約200、約300、約400、約600、約1000、約1300〜1600、約1450、約2000、約3000、約3000〜3750、約3350、約3000〜7000、約3500〜4500、約5000〜7000、約7000〜9000、約8000、約10000、約8500〜11500、約16000〜24000、約35000、約40000、約60000および約80000ダルトンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの平均分子量は、単なる例示として示すものであり、いかなる形であれ限定的なものでない。
本開示のFIX融合タンパク質は、モノまたはポリ(例えば2〜4)PEG部分を含むようPEG化することができる。PEG化は、従来技術において公知のいずれかのPEG化反応によって実施することができる。PEG化タンパク質生成物の調製方法は一般に、(i)本開示のペプチドが、1つまたはそれ以上のPEG基と付着する条件下で、ポリペプチドをポリエチレングリコール(例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と反応させる工程と、(ii)反応生成物を得る工程とを含む。一般に、反応のための最適反応条件は、公知のパラメーターおよび所望の結果に基づき、ケースバイケースにより決定される。
当業者が利用できる多くのPEGの付着方法が、例えばMalik Fら、Exp.Hematol.20:1028〜35(1992)、Francis、Focus on Growth Factors 3(2):4〜10(1992)、欧州特許出願公開第0401384号、第0154316号および第0401384号明細書、ならびに国際公開第92/16221号および第95/34326号パンフレットに記載されている。非限定的な例としては、FIX変異体の本明細書に記載される1つまたはそれ以上の挿入部位、またはその近傍に、システイン置換を設け、さらに該システインをPEGポリマーとコンジュゲートさせることが挙げられる。全開示内容が参照により本明細書に組み込まれるMeiら、Blood 116:270〜279(2010)および米国特許第7,632,921号を参照されたい。
他の実施形態では、有機ポリマーはポリシアル酸(PSA)である。PSAは、特定の菌株により、および哺乳動物の特定の細胞において産生される、天然に存在する、分岐のないシアル酸ポリマーである。Roth J.ら、(1993)in Polysialic Acid:From Microbes to Man編、Roth J.、Rutishauser U.、Troy F.A.(BirkhauserVerlag、Basel、Switzerland)、335〜348頁を参照されたい。PSAは、限定酸加水分解により、またはノイラミニダーゼの切断により、または天然の細菌由来の形態のポリマーの分画により、シアル酸残基数n=約80超からn=2まで、各種の重合度で製造することができる。当業者が利用できる多くのPSA付着方法が存在し、例えば上記のPEG付着方法と同様である。特定の態様では、活性化PSAはまた、FIX上のシステインアミノ酸残基に付着することができる。米国特許第5846951号を参照されたい。
他の実施形態では、有機ポリマーはヒドロキシエチルデンプン(HES)である。特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質は、FIX内の1つまたはそれ以上の部位にコンジュゲートするか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方である、少なくとも1つのHESポリマーを含み、FIX融合タンパク質は、凝血原活性を有し、インビボで、またはインビトロで宿主細胞において発現することができる。
III.ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞および製造方法
本開示はさらに、本明細書に記載されるFIX融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、該ポリヌクレオチドもしくはベクターを含む宿主細胞、またはFIX融合タンパク質を製造する方法を提供する。
FIX融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、単一のヌクレオチド配列、2つのヌクレオチド配列、3つのヌクレオチド配列またはそれ以上であり得る。一実施形態では、単一のヌクレオチド配列は、FIXポリペプチドおよび異種部分(例えばXTEN)を含むFIX融合タンパク質をコードし、FIX融合タンパク質は例えば、FIXポリペプチドと、FIXポリペプチド内に挿入されるXTENと、FIXポリペプチドのC末端に融合するFcドメインと、任意のリンカーを介してFIXポリペプチドに融合する第2のFcドメインとを含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド配列を含み、第1のヌクレオチド配列は、FIXポリペプチドおよびFIXポリペプチド内に挿入されるXTENをコードし、第2のヌクレオチド配列は、異種部分(例えばFc)をコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド配列を含み、第1のヌクレオチド配列は、FIXポリペプチドと、FIXポリペプチド内に挿入されるXTENと、FIXポリペプチドに融合するFcドメインとをコードし、第2のヌクレオチド配列は、第2のFcドメインをコードする。コードされるFcドメインは、発現後に共有結合を形成することができる。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドンを最適化される。
本明細書中で使用する場合、「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞に導入されたときに、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳を行うために必要なエレメントを含む、またはRNAウイルスベクターの場合には、複製および翻訳を行うために必要なエレメントを含む、あらゆる核酸構築物を意味する。発現ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウイルスおよびその誘導体が挙げられる。
本明細書で用いられる遺伝子発現の制御配列は、例えばプロモーター配列またはプロモーター、エンハンサーの組合せなど、いずれの制御的ヌクレオチド配列であってもよく、それらは作動可能連結されるコーディング核酸の効率的な転写および翻訳を促進する。遺伝子発現の制御配列は、例えば、哺乳動物またはウイルス由来のプロモーター(例えば構成的または誘導性プロモーター)であってもよい。哺乳動物の構成的プロモーターとしては、限定されないが、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、β−アクチンプロモーター遺伝子のプロモーター、および他の構成的プロモーターが挙げられる。例えば、真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルス由来プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス由来のプロモーター、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの末端反復配列(LTR)、および単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターにはまた、誘導性プロモーターが含まれる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で誘導され、転写および翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。
本開示の目的において、多くの発現ベクター系を使用することができる。発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、または宿主の染色体DNAの一部として、宿主生物内で複製することができる。発現ベクターは、限定されないがプロモーター(例えば天然のまたは異種プロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメントおよび転写終結配列などの発現制御配列を含み得る。好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションできるベクターの真核生物プロモーター系である。発現ベクターでは、例えばウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)またはSV40ウイルスなどの動物性のウイルスに由来するDNAエレメントを利用することもできる。その他としては、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロン性の系の使用が挙げられる。
一般に、発現ベクターは、選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、所望のDNAの塩基配列によって変換された細胞の検出が可能になっている(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照)。DNAが染色体に組み込まれた細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって選抜できる。マーカーは、栄養要求性、生物致死剤(例えば抗生物質)抵抗性または銅などの重金属への耐性を、原栄養性宿主に提供することができる。選択マーカーの遺伝子配列は、発現させるDNA遺伝子配列と直接連結させてもよく、同時トランスフェクションにより同じ細胞内に導入してもよい。
最適化されたFIX配列の発現に有用なベクターの一例は、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)である。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスβグロビン主要プロモーター、SV40複製開始点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエキソン1およびエキソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子およびリーダー配列を含む。このベクターは、可変領域および定常領域の遺伝子の取り込み、細胞へのトランスフェクション、それに続くG418を含む培地における選抜およびメトトレキセート増幅に応じて、抗体の非常に高レベルでの発現をもたらすことがわかっている。ベクター系は、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号明細書においても教示され、それぞれの全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。この系は、例えば>30pg/細胞/日の高い発現レベルを提供するものである。他の例示的なベクター系は、例えば米国特許第6,413,777号に開示される。
他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、ポリシストロン性の構築物を使用して発現される。これらの発現系において、例えばマルチマー結合タンパク質の複数のポリペプチドなどの、目的の多重遺伝子産物は、単一のポリシストロン性構築物から産生させることができる。これらの系では、内部リボソームエントリー部位(IRES)を使用して、真核生物宿主細胞において相対的に高いレベルのポリペプチドを提供するのが好適である。互換性を有するIRES配列は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第6,193,980号に開示されている。
さらに一般的にいえば、ポリペプチドをコードするベクターまたはDNAの塩基配列を調製した後、発現ベクターを適切な宿主細胞に導入することができる。すなわち、宿主細胞を形質転換することができる。宿主細胞へのプラスミドの導入は、上記のように、当業者に公知の各種の技術により行うことができる。形質転換細胞は、FIXポリペプチドの産生に適する条件で増殖させ、FIXポリペプチドの合成についてのアッセイに供される。例示的なアッセイ技術としては、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)または蛍光活性化セルソーター分析(FACS)、免疫組織化学分析等が挙げられる。
組換え宿主からのポリペプチドの単離プロセスの説明において、用語「細胞」および「細胞培養」は、特に断りのない限り、ポリペプチドの給源を意味するものとして、交換可能に用いられる。換言すれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、スピンダウンさせた細胞全体からのもの、または、培地および懸濁している細胞を含む細胞培養物からのもの、のいずれを意味するものであってもよい。
タンパク質の発現に使用する宿主細胞系は、好ましくは哺乳動物由来であり、最も好ましくはヒトまたはマウス由来である。例示的な宿主細胞系は、上記のとおりである。FIX活性を有するポリペプチドを産生する方法の一実施形態では、宿主細胞はHEK293細胞である。FIX活性を有するポリペプチドを産生する方法の別の一実施形態では、宿主細胞はCHO細胞である。
本開示のポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば細菌または酵母または植物細胞などの非哺乳動物の細胞において発現させてもよい。この点に関しては、細菌などの各種の非哺乳動物の単細胞性微生物、すなわち培養または発酵において増殖させることができる微生物を形質転換できることは明らかである。形質転換され易い細菌としては、腸内細菌(例えば大腸菌またはサルモネラ菌の株)のメンバー、バチルス属細菌(例えば枯草菌)、肺炎球菌、レンサ球菌およびインフルエンザ菌が挙げられる。さらに前記のポリペプチドは、細菌内で発現させたとき、典型的には封入体の一部となることが理解される。該ポリペプチドは、単離され、精製され、さらに機能的な分子として構成されなければならない。
あるいは、本開示のポリヌクレオチド配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入用の導入遺伝子に組み込むことにより、トランスジェニック動物の乳中にそれを発現することができる(例えばDeboerら、米国特許第5,741,957号明細書、Rosen、米国特許第5,304,489号明細書、およびMeadeら、米国特許第5,849,992号明細書を参照)。適切な導入遺伝子では、ポリペプチドのコーディング配列が、プロモーターおよび乳腺特異的遺伝子(例えばカゼインまたはβラクトグロブリン)由来エンハンサーと作動可能に連結された形で含まれる。
インビトロ製造によりスケールアップが可能となり、所望のポリペプチドを大量生産することができる。組織培養条件下での哺乳動物細胞培養技術は当業者に公知の技術であり、例えばエアーリフト反応装置、または連続撹拌反応装置における均一な懸濁培養、または、例えば中空糸、マイクロカプセルもしくはアガロースマイクロビーズ中に、またはセラミックカートリッジ上に細胞を固定化もしくは捕捉させた培養が挙げられる。ポリペプチドの溶液は、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースクロマトグラフィーまたは(イムノ)アフィニティークロマトグラフィーなどの慣習的なクロマトグラフィー法により、例えば合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後、または本明細書に記載されるHICクロマトグラフィーの前後において、必要に応じて、および/または望ましい場合に、精製することができる。アフィニティータグ配列(例えばHis(6)タグ)を、ポリペプチド配列内に任意に付着させるかまたは含めることにより、下流側での精製を容易にすることが可能となる。
FIXタンパク質は、発現させた後、硫安沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動等の当技術分野の標準的な手順に従い精製することができる(一般的方法についてはScopes,Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.、(1982)を参照)。医薬用途において、少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋なタンパク質が好ましく、最も好ましくは98〜99%、またはそれより高い均一性である。
一実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。本明細書中で使用する場合、「真核細胞」とは、明確な核を有するあらゆる動物または植物細胞を意味する。動物の真核細胞としては、例えば脊椎動物(例えば哺乳動物)および無脊椎動物(例えば昆虫)の細胞が挙げられる。植物の真核細胞としては、限定されないが、酵母細胞が特に挙げられる。真核細胞は、原核細胞(例えば細菌)とは別である。
特定の実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は、哺乳動物に由来するあらゆる細胞である。具体的には、哺乳動物細胞には、限定されないが、哺乳動物細胞系が包含される。一実施形態では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、哺乳動物細胞はHEK293細胞であり、それはヒト胎生期の腎臓細胞系である。HEK293細胞は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)からCRL−1533として、293H細胞は、カタログ番号11631−017として、または293F細胞は、Invitrogen社(Carlsbad、Calif.)からカタログ番号11625−019として入手可能である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞はPER.C6(登録商標)細胞であり、それは網膜由来のヒト細胞系であり、またPER.C6(登録商標)細胞は、Crucell社(Leiden、オランダ)から入手可能である。他の実施形態では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。CHO細胞は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から入手可能である(例えば、CHO−K1、CCL−61)。さらに他の実施形態では、哺乳動物細胞は乳児ハムスター腎臓(BHK)細胞である。BHK細胞は、American Type Culture Collection(Manassas、Va.)から入手可能である(例えばCRL−1632)。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞はHKB11細胞であり、それはHEK293細胞およびヒトB細胞系のハイブリッド細胞系である。Meiら、Mol.Biotechnol.34(2):165〜78(2006)を参照されたい。
さらに他の実施形態では、トランスフェクション細胞は、安定的にトランスフェクトされる。これらの細胞は、当業者に公知の従来技術を用いて、安定な細胞系として選抜され、また維持することができる。
タンパク質のためのDNA構築物を含む宿主細胞は、適切な増殖培地において増殖させる。本明細書で用いる適切な成長培地という用語は、細胞増殖のために必要となる栄養分を含む培地を意味する。細胞増殖のために必要となる栄養分としては、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルおよび成長因子が挙げられる。培地には、1つまたはそれ以上の選択因子を任意に含めることができる。培地には、子ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を任意に含めることができる。一実施形態では、培地は実質的にIgGを含まない。増殖培地では一般に、DNA構築物上の選抜マーカーにより、またはDNA構築物のコトランスフェクションにより補足される、例えば薬剤選抜または必須栄養素の欠損に基づき、DNA構築物を含む細胞を選抜する。哺乳動物細胞は一般に、市販の血清含有培地または無血清培地(例えばMEM、DMEM、DMEM/F12)におい増殖する。一実施形態では、培地はCD293培地である(Invitrogen社、Carlsbad、CA.)。他の実施形態では、培地はCD17培地である(Invitrogen社、Carlsbad、CA.)。使用する特定の細胞系に適切な培地の選択は、当業者の技量の範囲内である。
いくつかの実施形態では、核酸、ベクターまたは宿主細胞は、タンパク質コンベルターゼをコードする更なるヌクレオチドをさらに含む。タンパク質コンベルターゼは、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン5型(PCSK5またはPC5)、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン7型(PCSK7またはPC5)、酵母Kex2、プロタンパク質コンベルターゼサブチリシン/ケキシン3型(PACEまたはPCSK3)およびそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質コンベルターゼはPACE、PC5またはPC7である。特定の一実施形態では、タンパク質コンベルターゼはPC5またはPC7である。参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/006623号を参照されたい。別の実施形態では、タンパク質コンベルターゼはPACE/フーリンである。
特定の態様では、本開示は、本明細書に記載される方法により産生されるFIX融合タンパク質に関する。
特定の態様では、本開示の宿主細胞は、インビボで、またはインビトロで、FIX融合タンパク質を発現することができる。インビトロ製造によりスケールアップが可能となり、本開示の所望の改変されたポリペプチドを大量生産することができる。FIX融合タンパク質は、FIX融合タンパク質が発現される条件下で本明細書に記載される宿主細胞を培養することにより製造することができる。組織培養条件下での哺乳動物細胞培養技術は当業者に公知の技術であり、例えばエアーリフト反応装置、または連続撹拌反応装置における均一な懸濁培養、または、例えば中空糸、マイクロカプセルもしくはアガロースマイクロビーズ中に、またはセラミックカートリッジ上に細胞を固定化もしくは捕捉させた培養が挙げられる。必要に応じて、および/または望ましい場合には、ポリペプチドの溶液を、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、DEAEセルロースクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーなどの慣習的なクロマトグラフィー法により精製することができる。他の態様では、宿主細胞はインビボでFIX融合タンパク質を発現する。
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように異種部分を挿入部位に挿入するか、FIXのC末端に異種部分を融合させるか、またはその両方を行うことを含み、FIX融合タンパク質が凝血原活性を示す、FIX融合タンパク質を製造する方法を包含する。
他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように異種部分を挿入部位に挿入するか、FIXのC末端に異種部分を融合させるか、またはその両方を行うことを含み、FIX融合タンパク質が、異種部分のないFIXタンパク質と比較し凝血原活性および増加した半減期を示す、FIXタンパク質の凝血原活性を除去させるかまたは低下させることなくFIXタンパク質の半減期を増加させる方法を包含する。
他の実施形態では、本開示は、FIX融合タンパク質を構築する方法であって、本明細書に記載されるように、少なくとも1つの異種部分が、挿入部位に含まれるか、FIXのC末端に融合するか、またはその両方であるFIX融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を設計することを含む、方法を提供する。
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように、挿入部位に異種部分を挿入するか、FIXのC末端に融合させるか、またはその両方を行うことを含み、FIX融合タンパク質が凝血原活性を示す、FIX融合タンパク質の発現を増加させる方法を包含する。
さらに別の実施形態では、本開示は、FIX融合タンパク質の凝血原活性を保持する方法であって、本明細書に記載されるように、異種部分を挿入部位に挿入するか、異種部分をFIXのC末端に融合させるか、またはその両方を行うことを含み、FIX融合タンパク質が凝血原活性を示す、方法を提供する。
IV.医薬組成物および処置方法
本開示はさらに、本開示のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物を使用して、それを必要とするヒト対象の凝固疾患もしくは症状、または出血症状を予防、治療、改善または管理する方法を提供する。例示的な方法は、本開示のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物/製剤を治療的有効量でそれを必要とする対象に投与することを含む。他の態様では、本開示の融合タンパク質をコードするDNAを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することができる。本開示の特定の態様では、本開示のFIX融合タンパク質を発現する細胞を、それを必要とする対象に投与することができる。本開示の特定の態様では、医薬組成物は、(i)FIX融合タンパク質、(ii)FIX融合タンパク質をコードする単離された核酸、(iii)FIX融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター、(iv)FIX融合タンパク質をコードする単離された核酸および/またはFIX融合タンパク質をコードするベクターを含む細胞、または、(v)それらのいずれかの組合せとを含み、また該医薬組成物は、許容される賦形剤または担体をさらに含む。
一態様では、本開示は、対象にFIX融合タンパク質を投与することを含む、因子IX(FIX)融合タンパク質を投与する方法であって、
(a)FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチドと、少なくとも1つのXTENとを含み、XTENは、FIXポリペプチドの、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位に挿入され、
(b)FIX融合タンパク質は、皮下投与され、
(c)投与後、FIX融合タンパク質は、約1%〜約30%の(例えば約5%〜約30%の)血漿中活性を示す、方法に関する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるFIX融合タンパク質の投与後、FIX融合タンパク質の血漿中活性は、処置の間(例えば第1の投与から第2投与までの間)、約1%〜約30%、例えば5%〜30%、例えば1%〜20%、例えば5%〜20%、例えば1%〜10%、例えば5%〜10%、例えば約10%〜約30%、約10%〜約20%である。例えば、本明細書に開示されるFIX融合タンパク質の投与の後の血漿中活性は、処置期間中(例えば第1の投与から第2、3、4、5、6、7、8、9または10、またはそれ以上の投与までの間)、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%超、かつ30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%または11%未満であり得る。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は有効量で投与される。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、約1IU/kg〜約500IU/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約50IU/kg〜約300IU/kg、約50IU/kg〜約250IU/kg、約50IU/kg〜約200IU/kg、約50IU/kg〜約150IU/kg、約50IU/kg〜約100IU/kg、約100IU/kg〜約300IU/kg、約150IU/kg〜約300IU/kg、約200IU/kg〜約300IU/kg、約250IU/kg〜約300IU/kg、約100IU/kg〜約250IU/kg、約100IU/kg〜約200IU/kg、約100IU/kg〜約150IU/kg、約150IU/kg〜約250IU/kgまたは約150IU/kg〜約200IU/kgの用量で投与される。一実施形態では、FIX融合タンパク質は、約50IU/kg〜約300IU/kgの用量で投与される。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約25IU/kg、約50IU/kg、約75IU/kg、約100IU/kg、約125IU/kg、約150IU/kg、約175IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、約300IU/kg、約325IU/kg、約350IU/kg、約375IU/kgまたは約400IU/kgの用量で投与される。一実施形態では、FIX融合タンパク質は、約100IU/kgの用量で投与される。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、約200IU/kgの用量で投与される。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約1%〜約50%の血漿中活性ピーク値を示す。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約5%〜約50%、約10%〜約50%、約15%〜約50%、約20%〜約50%、約25%〜約50%、約30%〜約50%、約35%〜約50%、約40%〜約50%、約10%〜約45%、約15%〜約40%、約20%〜約40%、約20%〜約35%、約25%〜約40%または約25%〜約35%の血漿中活性ピーク値を示す。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、約10%〜約30%の血漿中活性ピーク値を示す。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%または約30%の血漿中活性ピーク値を示す。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、約30%の血漿中活性ピーク値を示す。別の実施形態では、FIX融合タンパク質は、約15%の血漿中活性ピーク値を示す。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約1%〜約20%の血漿中活性トラフ値を示す。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、約5%〜約20%、約10%〜約20%、約15%〜約20%、約1%〜約15%、約1%〜約10%、約1%〜約5%または約5%〜約15%の血漿中活性トラフ値を示す。一実施形態では、FIX融合タンパク質は、約5%〜約10%の血漿中活性トラフ値を示す。
いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%または約15%の血漿中活性トラフ値を示す。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は、約5%の血漿中活性トラフ値を示す。
本開示のFIX融合タンパク質は、静脈内に、皮下に、または経口的に、患者に投与することができる。特定の実施形態では、FIX融合タンパク質は、静脈内注入により対象に投与される。他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、皮下注入により対象に投与される。注入では、単回ボーラスを含めることができる。対象には、複数回の注入を行うことができる。
本開示の融合タンパク質は、予防目的で使用することができる。本明細書中で使用する場合、「予防的処置」という用語は、出血エピソード以前における分子の投与を意味する。一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または受けようとしている。本開示の融合タンパク質は、予防薬として、手術前に、または手術後に投与することができる。本開示の融合タンパク質は、手術の間または後に投与され、急性の出血エピソードを制御することができる。手術には、肝移植、肝臓切除、歯科的手順または幹細胞移植が含まれるが、これらに限定されない。
本開示の融合タンパク質はまた、オンデマンドでの処置に使用される。用語「オンデマンドでの処置」とは、出血エピソードの兆候に応答するか、または出血を引き起こし得る活動前における、融合タンパク質の投与を意味する。一態様では、オンデマンドでの処置は、例えば損傷後などの出血が始まるとき、または例えば手術前などの出血が予想されるとき、対象に与えられる。別の態様では、オンデマンドでの処置は、例えば接触の多いスポーツなど、出血の危険度が高い活動の前に行われる。
他の実施形態では、融合タンパク質は、急性の出血エピソードを制御、改善または処理するために用いる。他の実施形態では、FIX融合タンパク質は、異種部分のない対応するFIXタンパク質との比較における1つまたはそれ以上の薬物動態学的パラメーターを示す。PKパラメーターは、FIX抗原量(しばしば「抗原」として括弧書きで本明細書に示す)またはFIX活性レベル(しばしば「活性」として括弧書きで本明細書に示す)に基づいてもよい。文献では、PKパラメーターはFIX活性レベルに基づくものが多いが、それは、対象の血漿中に存在する、投与された(すなわち外因性の)FIXを抗FIX抗体を使用して測定することを妨げる、内因性の不活性なFIXが存在するからである。しかしながら、本明細書に示すようにFc融合タンパク質の一部としてFIXを投与するとき、投与された(すなわち外因性の)FIX抗原は、異種ポリペプチドに対する抗体を使用することで正確に測定することができる。加えて、特定のPKパラメーターは、モデル予測データ(しばしば「モデル予測」として括弧書きで本明細書に示す)か、または観察されたデータ(しばしば「観察された」として括弧書きで本明細書に示す)に基づいてもよく、好ましくは、観察されたデータに基づく。
FIX融合タンパク質は、公知技術のあらゆる手段で対象に投与してもよい。例えば、FIX融合タンパク質は、局所(例えば経皮もしくは眼内)、経口、バッカル、鼻腔内、膣内、直腸内、非経口(例えば皮下、皮内、血管内/静脈内、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内、眼内、眼球内、眼窩内、腱滑液鞘内および腹腔内)投与により投与することができる。特定の一実施形態では、FIX融合タンパク質は皮下注入により投与される。例えば、皮下注入は、FIX融合タンパク質の用量の単回ボーラスを含む、1つまたはそれ以上のボーラスを含んでもよい。あるいは、FIX融合タンパク質は、静脈内注入により投与してもよい。
FIX融合タンパク質の用量は、特定の融合タンパク質の性質および対象の症状の性質に応じて変化させることができる。いくつかの実施形態では、FIX融合タンパク質の用量は、FIX融合タンパク質1〜1000IU/kgとし得る。
出血症状は、血液凝固障害により生じることもある。血液凝固障害は、凝血異常とも呼ばれる。1つの例において、本開示の医薬組成物で治療できる血液凝固障害は、血友病である。別の例において、本開示の医薬組成物で治療できる血液凝固障害は、血友病Bである。
いくつかの実施形態では、出血症状と関連する出血のタイプは、出血性関節症、筋肉内出血、口腔出血、多量出血、筋肉への多量出血、口腔での多量出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内多量出血、腹腔内多量出血、胸腔内多量出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙の出血、腹膜後隙の出血および腸腰筋鞘の出血から選択される。
他の実施形態では、出血症状に罹患する対象は、例えば外科手術前の予防的管理または手術中の管理など、手術の際の処置を必要とする。1つの例において、手術は、小手術および大手術から選択される。例示的な外科的手技としては、抜歯、扁桃摘出、鼠径部のヘルニア切開、滑膜切除、開頭、骨接合、外傷手術、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術、関節置換手術(例えば全膝置換、臀部置換等)、心臓手術および帝王切開が挙げられる。
別の例では、対象は同時に因子VIIIによる処置を受ける。本開示の化合物はFIXaを活性化できるため、それらは対象へのFIXaの投与前にFIXaポリペプチドを予め活性化するために使用できると考えられる。
本開示の方法は、予防的処置またはオンデマンドでの処置を必要とする対象に施すことができる。
例えば、本開示のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物は、局所(例えば経皮もしくは眼内)、経口、バッカル、鼻腔内、膣内、直腸内、非経口投与など、あらゆる適切な投与方法のためにも調製することができる。
本明細書で用いられる用語「非経口」とは、皮下、皮内、血管内(例えば静脈)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内、眼内、眼球内、眼窩内、腱滑液鞘内および腹腔内への注入、ならびにあらゆる類似の注入もしくは点滴技術を包含する。特に、本開示のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物は、皮下投与用に調製することができる。組成物は、例えば懸濁液、エマルジョン、持続的放出製剤、クリーム剤、ゲル剤または粉剤としてもよい。組成物は、トリグリセリド等の伝統的な結合剤および担体を用いて坐剤として製剤化してもよい。
1つの例において、医薬製剤は、例えば緩衝化等張水溶液などの液状製剤である。別の例において、医薬組成物は、生理的pH、または生理的pH付近のpHを有する。他の例において、水性製剤は生理的、または生理的に近いモル浸透圧および塩分濃度を有する。それは塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含んでもよい。いくつかの例において、本開示の組成物は凍結乾燥される。
本開示の融合タンパク質は、遺伝子療法を用いて、哺乳動物(例えばヒト患者)においてインビボで産生されてもよく、出血性凝固障害、出血性関節症、筋肉内出血、口腔出血、多量出血、筋肉への多量出血、口腔での多量出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内多量出血、腹腔内多量出血、胸腔内多量出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙の出血、腹膜後隙の出血および腸腰筋鞘の出血からなる群から選択される出血性の疾患または障害の治療的アプローチにおいて有用である。一実施形態では、出血性の疾患または障害は、血友病である。他の実施形態では、出血性の疾患または障害は、血友病Bである。この場合、適切な発現制御配列に作動可能に連結された、適切な融合タンパク質をコードする核酸を投与することを含む。特定の実施形態では、これらの配列は、ウイルスベクターに組み込まれる。かかる遺伝子治療用の適切なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスのベクター、エプスタイン=バーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルぺスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。ウイルス性ベクターは、複製能に欠陥を有するウイルスベクターであり得る。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、そのE1遺伝子またはE3遺伝子の欠失を有する。アデノウイルスベクターを用いるとき、哺乳動物は、選択可能なマーカー遺伝子をコードする核酸に曝露させないのが望ましい。他の実施形態では、当業者に公知の非ウイルスベクターに前記配列を組み込む。
本開示の実施は、特に明記しない限り、従来技術の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、細菌学、組換えDNA学および免疫学的方法を使用して行われ、またそれらは当業者の技量の範囲内である。かかる技術は、以下の文献において詳細に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Sambrookら編、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(1992)、DNA Cloning、D.N.Glover編、I巻およびII巻(1985)、Oligonucleotide Synthesis、M.J.Gait編(1984)、Mullisら、米国特許第4,683,195号明細書、Nucleic Acid Hybridization、B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、(1984)、Transcription And Translation、B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984)、Culture Of Animal Cells、R.I.Freshney、Alan R.Liss、Inc.、(1987)、Immobilized Cells And Enzymes、IRL Press、(1986)、B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984); the treatise,Methods In Enzymology、Academic Press、Inc.、N.Y.、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells、J.H.MillerおよびM.P.Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory(1987)、Methods In Enzymology、154および155巻(Wuら編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology、MayerおよびWalker編、Academic Press、London(1987)、Handbook Of Experimental Immunology、I〜IV巻、D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編(1986)、Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1986)、およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989)を参照されたい。
免疫学の一般的原理を記載する標準的な参考図書としては、Current Protocols in Immunology、John Wiley&Sons、New York、Klein、J.、Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination、John Wiley&Sons、New York(1982)、Roitt,I.、Brostoff,J.およびMale D.、Immunology、第6版、London:Mosby(2001)、Abbas A.、Abul,A.およびLichtman,A.、Cellular and Molecular Immunology、第5版、Elsevier Health Sciences Division(2005)、ならびにHarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)が挙げられる。
以上のとおり本開示を詳細に記載したが、それらは以下の実施例を参照することでより明確に理解されるが、それらは説明を目的とするものに過ぎず、本開示を限定することを目的とするものではない。
実施例1:活性FIX−XTEN変異体の同定
1つまたはそれ以上のXTENが挿入されたFIXポリペプチドを含むことでFIXタンパク質の特性が改善されたFIX融合タンパク質を構築した。しかしながら、XTEN修飾の位置、長さ、組成および数を容易に変化させることにより、それによりFIXの活性およびクリアランスに対するこれらの修飾の影響を評価することもできる。
本実施例は、FIX活性を損なうことなくXTENの導入に適応でき、このアプローチをその他の未変性FIXおよび組換えFIX−Fc融合タンパク質に適用できるFIXの部位を同定することを意図するものである。
方法:
開始Met残基をコードするATGコドンの直ぐ5’側へのKozak翻訳開始配列(GCCGCCACC)の導入の後、FIXポリペプチドのコーディング配列を、発現ベクターpcDNA4/myc−HisC(INVITROGEN(登録商標)Carlsbad、CA)のBsiWIとPmeIとの間にライゲートした。
ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences社、Warrington、PA)を使用して、HEK293F細胞(INVITROGEN(商標)、Carlsbad、CA)にプラスミドをトランスフェクトした。一時的にトランスフェクトした細胞を、FREESTYLE(商標)293培地またはFREESTYLE(商標)293培地とCD OPTICHO(商標)培地(INVITROGEN(商標)、Carlsbad、CA)との混合物において増殖させた。細胞培地をトランスフェクションの5日後に回収し、発色またはaPTT FIX活性アッセイにより、FIX活性を解析した。
発色FIX活性はAniara社製のBIOPHEN因子IXキットを用いて測定し、またすべてのインキュベーションを37℃のプレートヒーターにて振とうしながら行った。6ウェルプレートから得たFIX−XTEN変異体の一時的なトランスフェクション培地から培養細胞を回収し、トリス−BSA希釈バッファー(R4)を使用して所望のFIX活性範囲に希釈した。FIX標準もまた、トリス−BSA希釈バッファーにおいて調製した。標準、希釈された細胞培養サンプルおよびプールされた正常ヒト血漿アッセイ対照(50μL/ウェル)を、IMMULON(登録商標)2HB 96ウェルプレート2枚ずつに添加した。ヒト因子X、FVIII:Cおよびフィブリン重合阻害剤(50μL)、50μLの因子XIa、トロンビン、リン脂質およびカルシウムの混合物、ならびに因子Xa特異的な発色基質(SXa−11)50μLを各ウェルに順次添加し、その際、各添加の間に2分間インキュベートした。基質とインキュベートした後、50μLの20%酢酸を添加して呈色反応を終了させ、405nmの吸光度をSPECTRAMAX(登録商標)プラス(MOLECULAR DEVICES(登録商標))装置により測定した。SOFTMAX(登録商標)Pro Software(バージョン5.2)を使用してデータ解析を行った。
一段階活性化部分的トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイを用い、FIX活性を評価した。SYSMEX(登録商標)CA−1500機器(Siemens Healthcare Diagnostics社、Tarrytown、NY)を使用してFIX−XTEN aPTT活性を測定した。アッセイの標準曲線を作成するため、WHOの因子IX標準を、試験サンプルとして適切な培地濃度を有するmockトランスフェクション培地で希釈した。6ウェルプレートから得たFIX−XTEN変異体の一時的なトランスフェクション培地から培養細胞を回収し、mockトランスフェクション培地を使用して所望のFIX活性範囲に希釈した。希釈後、Sysmex装置を使用して以下のようにaPTTアッセイを行った:50μLの希釈された標準およびサンプルを、50μLのSiemensヒトFIX除去血漿、および50μLのSiemensアクチンFSL(エラグ酸)アクチベーターと混合した。混合物を1分間インキュベートした。次に、50μLのSiemens CaCl2を混合物に添加し、混合物を240秒間インキュベートした。このインキュベートの直後、凝固時間を測定した。試験サンプルのFIX活性を測定するため、対数スケールを使用して凝固時間とFIX活性との間の相関式を外挿して標準の凝固時間をプロットし、次にFIX−XTEN活性を標準曲線に対して算出した。
挿入部位の選抜:
タンパク質データバンクを用い、1PFX、1IXA、1CFI、1CFH、1EDM、3LC3、3LC5、1RFN、1X7Aおよび3KCGのFIX構造を解析し、FIX内のXTEN挿入部位を選抜した。リン脂質表面および内皮下タイプIVコラーゲンへの固定というFIXのGLAドメインの基本的役割を考慮し、GLAドメイン内へのXTEN挿入は回避した。以下の基準に従い、タンパク質データバンクの利用可能なFIX構造の解析を行い、XTEN挿入部位を選抜した:1)ASA View(http://www.abren.net/asaview/)およびGet Area(http://curie.utmb.edu/getarea.html)アルゴリズムソフトウェアによるアクセス可能な表面領域の算出、
2)水素/重水素交換質量スペクトロメトリー(H/DX−MS)による溶媒のアクセス可能性、
3)決定された二次構造エレメント、
4)顕著な種間タンパク質配列可変性に基づく部位の選択性、および
5)公知の血友病B変異に近接する部位の除外。
EGF1ドメインの4つの部位、EGF2ドメインの5つの部位、APドメインとEGF2ドメインとの間のリンカー領域の2つの部位、AP(活性化ペプチド)ドメインの4つの部位、および触媒ドメインの18の部位を、XTENの挿入のために選抜した(表6)。
42アミノ酸のXTENの挿入およびC末端への融合の際の活性スクリーニング
高活性のFIX Padua変異体(R338L)を用いて、XTENの導入により生じる活性低下に起因する潜在的なFIX活性低下に対応する足場とした。42残基XTENエレメント(AE42)を、上記の基準を用いて選抜した部位に挿入し、またはFIXのC末端に融合させた。上記のトランスフェクトしたHEK293細胞の調整培地において、これらの変異体のFIX活性を評価した。XTENのないベース構築物(FIX−R338L)に対するパーセンテージとして、FIX−AE42のFIX活性を示す(図1)。
XTEN挿入は、FIX発色アッセイにより決定された限られた部位において許容されるものであった(図1および表7)。FIX内の合計33の部位を選抜し、AE−42の挿入により評価した。これらの内、EGF2ドメインの2つ、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー領域の1つ、APドメインの4つ、および触媒ドメインの4つ(またC末端を含む)を、FIX活性アッセイによる許容部位として同定した(図1および表7)。
長いXTENの挿入およびC末端への融合における活性:
次に、長いXTEN(AE−72、−144および−288)を、AE42の挿入が許容された部位において同様に試験した。FIX活性を前述のように測定し、XTENのないベース構築物FIX−R338Lに対するパーセンテージとして示す(図2)。
AP内の部位およびFIXのC末端もしくはそれ近傍の部位のみにおいて、長いXTEN(AE144、AE288またはAE864)が許容された(図2)。FIX活性は、調整培地において、導入されたXTENの長さと逆相関する形で検出された(図2、表7)。FIXの異なるドメインにおける4つの挿入可能部位を選抜し、コンビナトリアルライブラリーを作製した。
複数のXTENの挿入:
XTEN単一変異体により得られた結果に基づき、様々な長さの複数のXTEN挿入を有する、4つの異なる部位におけるFIX変異体(図4および表8を参照)を、aPTTアッセイにより、トランスフェクトしたHEK293細胞の調整培地中でのFIX活性を評価した(表8〜10)。FIX活性は、XTENのないベース構築物であるFIX−R338Lに対するパーセンテージとして示す(図4)。
3つの群(単一のXTENを有するFIX、二重にXTENを挿入されたFIXおよび単一のXTEN挿入を有するFIX−Fc)では、検出可能な活性が示された一方、3つ以上の部位での挿入/融合の組合せを有する場合にはFIX活性が失われた(図4)。
結論として、XTEN挿入のためのいくつかの許容される部位はFIXに存在し、またXTEN挿入変異の選択された組合せはFIX活性が保持される。ここで同定された活性型のFIX−XTEN変異体は、血友病Bマウスの薬物動態学的解析の候補となる。
実施例2:FIX融合タンパク質およびその血漿における回復およびAUC/D
最初に、因子XI欠損マウス(HemB、B6.129P2−F9tm1Dws/J、MGI:1932297)(Linら、1997)を、Darrel Stafford博士(University of North Carolina、Chapel Hill)から取得した。オス/メスのHemBマウスに、各々、50または200IU/kgのFIX融合タンパク質(例えばFIX−CT.288(AE288 XTENがFIXポリペプチドのC末端に融合)、FIX−CT.864(AE864 XTENがFIXポリペプチドのC末端に融合)、FIX−AP.144(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後にAE144 XTENが挿入)、FIX−AP.72(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後にAE72 XTENが挿入)、FIX−AP.42(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後にAE42 XTENが挿入)、FIXFcおよびFIX)を、t=0時間において10mL/kgの投与体積で、静脈内へ単回ボーラス注入した。投与後5分〜最大168時間(7日)において、血液を採取した。示される各時点において、各時点当たり3〜4匹のマウスの眼窩後または末梢大静脈から、〜100μLのクエン酸添加血液を採取した。マウス当たりの採血部位は多くとも3箇所とした。血漿を5000rpmで8分間遠心分離し、血漿サンプルをドライアイス・エタノール浴において瞬間凍結し、−80℃で保存し、その後、Dade Behring試薬、および活性化剤としてのアクチンFSL、および活性標準としての投与材料を用い、Sysmex−CA1500凝固アナライザーにおける一段階活性トロンボプラスチン時間(aPTT)−アッセイによる分析を行った。図5A〜5Bにおいて、血漿中活性を、注入された用量に対する%としてプロットする。平均滞留時間(MRT)および他の薬物動態学的(PK)パラメーターは、Phoenix WinNonlin 6.2.1(Pharsight社、Certera、NCA分析)による非区画モデリングを用いて算出した。図5Cは、血漿における回復(Y軸)とそれに対するMRT(X軸)の相対値を表す。ドットの領域は、用量あたりの曲線下領域(AUC/D(h/kg/mL))を表し、FIXの血漿中活性の回復およびAUC/Dが、XTENの長さの増加と共に増加することを示す(図5C)。図は、長いXTEN長(C末端における288および864、ならびにAPドメインにおける144、72および42)を有するFIX融合タンパク質では、静脈内ボーラス投与後、血漿における回復がサイズ依存的に最大60%に増加し、またAUC/Dが増加したことを示す。
実施例3:FIX融合タンパク質およびそれらの半減期
FIX欠損マウスに、以下のFIX融合タンパク質50または200IU/kgの用量を静脈内投与した:288アミノ酸を有するXTEN(例えばAE288)を融合させたFIX;72アミノ酸を有するXTEN(例えばAE72)をAPドメインのD166の後に挿入したFIX−Fc;42アミノ酸を有するXTEN(例えばAE42)をAPドメインのD166の後に挿入したFIX−Fc;および対照(例えばFIXFcおよびFIX)。血漿を回収し、FIX活性およびPK分析を、実施例5に記載されるのと同様に行った。図6Aは、血漿中活性を注入された用量に対する%としてプロットしたものである。薬物動態学的(PK)パラメーターは、Phoenix WinNonlin 6.2.1(Pharsight社、Certera、NCA分析)を用いて算出し、図6Bは、血漿における回復(Y軸)とそれに対するMRT(X軸)の相対値を表す。ドットの領域は、用量あたりの曲線下領域(AUC/D(h/kg/mL))を表し、FIXFcの活性化ペプチド(AP)ドメインへのXTEN配列の挿入が、FIX(図6B)と比較し、rFIXFc単独のそれ以上に、平均滞留時間を延長することを示す。加えて、血漿中活性の回復およびAUC/Dは、XTEN長の増加と共に改善される(図6A〜6B)。rFIX−CT.288(配列番号226)およびrFIXFc−AP.72(配列番号151)のAUC/Dは、それぞれ、rFIXFcと比較し3.4および4.5倍の改善であった(図6A〜6B)。これは、rFIXの静脈内投与と比較し、それぞれ、8.5および14.5倍のAUC/Dの改善に相当する(図6A〜6B)。したがって、APドメインへのXTEN挿入と、rFIXFc−R338LのFcにより媒介される半減期増加との組合せにより、rFIXおよびrFIXFcと比較し、半減期の増加、血漿中活性の回復およびAUC/用量の増加がもたらされる。
実施例4:皮下送達によるFIX融合タンパク質の薬物動態の改善
FIX欠損マウスに、以下のFIX融合タンパク質50または200IU/kgの用量を、t=0において皮下投与した:288アミノ酸のXTEN(例えばAE288)をC末端に融合させたFIX(FIX−CT.288);APドメインに72アミノ酸(例えば、AE72)のXTENを有するFIXFc(FIXFc−AP.72);EGF2ドメインに42アミノ酸(例えばAE42)のXTENを有するFIXFc(例えばFIXFc−EGF.42);ならびに対照(FIXFcおよびFIX)。血漿を回収し、FIX活性およびPK分析を、実施例1に記載されるのと同様に行った。図7Aは、血漿中活性を注入された用量に対する%としてプロットしたものである。薬物動態学的(PK)パラメーターは、Phoenix WinNonlin 6.2.1(Pharsight社、Certera、NCA分析)を用いて算出し、図7Bは、バイオアベイラビリティ(Y軸)とそれに対するMRT(X軸)の相対値を表す。ドットの領域は、ドットの領域は、用量あたりの曲線下領域(AUC/D(h/kg/mL))を表し、rFIXのXTENポリペプチド配列のカルボキシル末端への融合、またはFIXFcの活性化ペプチド(AP)ドメインまたはEGF2ドメインへのXTEN配列の挿入が、FIX融合タンパク質の皮下投与プロファイルを非常に改善することを示す(図7B)。rFIXFc−AP.72およびrFIX−CT.288は、HemBマウスへのrFIXFcの皮下投与と比較し、AUC/Dの6〜9倍の改善、バイオアビアビリティの1.5〜2倍の改善、およびCmax/Dの3〜10倍の改善を示した。rFIXと比較し、FIXFc−AP.72およびrFIX−CT.288では、薬物動態学的パラメーターの28〜40倍のAUC/Dの改善、バイオアビアビリティの3倍の増加、およびCmax/Dの15〜30倍の改善が見られた(図7A〜7B)。
まとめると、FIX融合タンパク質(例えばrFIX−CT.288およびrFIXFc−AP.72)は、rFIXFcの静脈内投与と比較し、皮下投与において2.6および1.9倍のAUC/Dの改善を示し、これは週一回以下のヒトへの静脈内への予防的投与をサポートするものである。
実施例5:FIX融合タンパク質のインビトロ有効性
ヒトの血友病B血液を、rFIXFc(白丸、点線)、またはFIX融合タンパク質(例えばrFIXFc−AP.72)(黒丸、実線)またはビヒクル(白三角)3、10および30IU/dLの示される用量によりスパイクした(図8A〜8C)。全血の凝固特徴を回転トロンボエラストメリー(ROTEM)を用いて測定し、血液(NATEM)の再石灰化により凝固を開始させた。凝固時間(CT、秒)、α角度(度)および最大凝血塊硬さ(MCF、mm)に関しては、rFIXFc−AP.72は、血友病Bの血液において、rFIXFcと比較し同等の活性を示した(図8A〜8C)。各時点のデータは、4〜5サンプルの反復実験の平均+/−標準偏差である(図8A〜8C)。
rFIXFc−AP.72およびrFIX−CT.288は、HemBマウスにおいて、rFIXおよびrFIXFcと比較し非常に改善された皮下における薬物動態を示す。前臨床動物モデルにおける有効性およびアロメトリックスケーリングに関する更なる研究は、現在進行中である。
実施例6:急性マウス尾部クリップ出血モデルにおけるrFIXFc−AP.72のインビボ有効性
文献の記載に従い(Dumontら、Blood、119(13):3024〜3030、2012)、盲検のマウスの尾部クリップ出血モデルにおいて、投与を受けたマウスの尾部切断後の全失血を測定することにより、急性有効性を試験した。簡潔に述べると、8〜15週齢のオスの血友病Bマウス(Linら、Blood(1997)90:3962〜3966)を、50mg/kgのケタミンおよび0.5mg/kgのデキスメデトミジンの混合液により麻酔した。尾部を37℃にて10分間食塩水に浸漬して側脈を拡張させ、次に、ビヒクル(3.88g/LのL−ヒスチジン、23.8g/Lのマンニトール、11.9g/Lのスクロース、3.25g/Lの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート20(pH7.1)、3%のヒト血清アルブミン)、50、100および200IU/kgのrFIXFc−AP.72またはrFIXFcを尾静脈注入した。注入後5分において、尾部の遠位側先端5mmをクリップし、13mLの食塩水を含む予め秤量した試験管に30分間浸漬させた。失血を重量により測定した。GraphPad Prism 6にて、対応のない両側t検定を使用し、統計的有意差を算出した。かかる両側t検定により、rFIXFc−AP.72の50、100および200IU/kgの投与が、ビヒクルと著しく異なる効果を奏することが示された(p値<0.0001)。加えて、このデータは、低用量のrFIXFc−AP.72(例えば50IU/kg)が、同じ低用量のrFIXFc(すなわち50IU/kg)と比較し著しく失血を抑制することを示す。これらの結果は、本出血モデルにおいて、rFIXFcと比較した、rFIXFc−AP.72の同等もしくは改善された急性有効性を示す。
実施例7:予防的マウス尾静脈切断出血モデルにおけるFIXFc−AP.72のインビボ有効性
文献の記載に従い(Tobyら、PLOS One、DOI:10.1371/journal.pone.0148255、2016、Panら、Blood 114:2802〜2822(2009))、盲検のマウスの尾静脈切断(TVT)出血モデルにおいて、投与を受けた血友病Bマウスの外側尾静脈横断切断後の生存期間を測定することにより、長期有効性を試験した。簡潔には、8〜15週齢のオスの血友病Bマウス(Linら、Blood 90:3962〜3966(1997))に、rFIXFcを15、50、100IU/kgのFIX活性にて静脈内に、またはFIXFc−AP.72をそれとマッチングする用量にて皮下に前投薬し、ビヒクルをボーラス投与したマウスと比較した。投与後72時間において、すべてのマウスを麻酔し、外側尾静脈を2.7mmの尾部直径において横断切断した。TVT後9〜11時間の間、および24時間(一晩)の時点にて、再出血および致死時間(安楽死する時間として定義、動物がいつ死に瀕したかを測定)を含む質的エンドポイントをモニターし、1時間ごとに記録した。すべてのマウスを24時間の試験終了後に安楽死させた一方で、死んでいないか瀕死でない動物を、24時間目において生存していたものと決定した。
GraphPad Prism 6を用い、TVT後のパーセント生存率としてデータをプロットした。マウスに対し、ビヒクル(点線)で皮下投与、FIXFc−AP.72(実線、塗りつぶし記号)で皮下投与、またはFIXFc(点線、白抜き記号)で静脈内投与(15IU/kg、50IU/kg、100IU/kg、n=20/用量、但しビヒクル投与ではn=30)を行った(図10)。皮下投与されたFIXFc−AP.72とそれに対する静脈内投与されたrFIXFcのマッチングIU/kg用量で処理したマウスの生存曲線から、試験したすべてのrFIXFcの静脈内投与量の場合と比較し、FIXFc−AP.72を皮下投与したHemBマウスにおいて、改善された生存率が示された(図10)。
実施例8:HemBマウスにおける、rFIXと比較した、FIXFc−AP.72(FIX−216、二重鎖Fc)の改善された静脈内および皮下薬物動態学的パラメーター
血友病Bマウスに、200IU/kgのFIXFc−AP.72(FIX−216、二重鎖Fc)またはrFIXを投与した。示す時点における眼窩後出血により血液を採取した。活性標準として投与材料を用いた1段階凝固アッセイ活性により、FIXの血漿中レベルを測定した。図11Aにおいて、注入された用量に対する%として血漿中活性をプロットする。図11Bは、NCA(非区画)分析により、Phoenix WinNonLin 6.2.1(Pharsight社製、Certara)を用いて算出した薬物動態学的パラメーターの表を示す。FIX−216に対するrFIXの改善された薬物動態学的パラメーターには、平均滞留時間(MRT)、AUC/用量および他のパラメーターが含まれる。
FIXFc−AP.72の皮下投与は、マウスへの投与後20時間周辺においてtmaxを示し、また同等量(IU/kg)で静脈内投与されたrFIXまたはrFIXFcと比較し血漿中活性レベルが改善された。HemBマウスのTVT出血モデルを用いた結果、投与後72時間において、皮下投与されたFIXFc−AP.72ではすべての試験された用量の静脈内投与されたrFIXFcと比較し、インビボ有効性が改善されたことが示された。同様に、HemBマウス尾部クリップ出血モデルにおける急性有効性テストでは、rFIXFcと比較し、静脈内投与されたFIXFc−AP.72の改善された有効性が示された。これらのデータは、ヒトにおけるFIXFc−AP.72の週一回以下の頻度での皮下への予防的投与の可能性を支持するものである。
実施例9:皮下投与されたrFIXFc−XTENのPKの用量直線性
皮下投与されたrFIXFc−AP.72(pJH84;配列番号151)のPK用量直線性を、HemBマウスにおいて評価した。4匹のマウス3群に対し、50、100、200または400IU/kgのrFIXFc−AP.72を各々投与した。連続する3時点において、10%(w/v)のクエン酸中への眼窩後採血により、各マウスから血液を採取した(すなわち投与後1、6、24、48、72、96、144、168および192時間)。FIX活性は、自己標準に対する1段階活性アッセイにより測定した。投与溶液を、FIX WHO標準に対して確認した。Phoenixプログラム(Pharsight社、Mountainview、CA)を使用して薬物動態学的分析を行った。血漿中FIX活性および回復の算出値をそれぞれ図14Aおよび図14Bに示す。FIX活性曲線は、用量増加に伴い平行的に移動し(図14A)、注入した用量の回復のパーセンタイル(%)としてプロットしたときに重複し(図14B)、すなわちHemBマウスにおける50〜400IU/kgの用量範囲での用量直線性を示すものである。用量直線性は、試験した用量ごとに、実際の測定された用量およびマッチング血漿中活性レベルデータについて、Phoenix WinNonLinソフトウェアにより非区画分析を用いて算出したPKパラメーターにより確認した(図14C)。
実施例10:カニクイザルにおけるrFIXFc−XTENの薬物動態
コホート当たり3匹のナイーブなオスのカニクイザルに対し、静脈内または皮下投与経路により、各々、100IU/kgのrFIXFc−XTEN(pJH84;配列番号151)を投与した。示す時点の前後に血液を採取した(図15A)。rFIXFc−XTEN特異的なELISA(XTEN−捕捉およびヒトFIX検出)により、およびrFIXFc−XTEN特異的な血漿中活性を測定する修飾(XTEN−捕捉)FIX発色活性アッセイにより、FIXの血漿中レベルを測定した。用量はFIX WHO標準に対して確認し、またrFIXFc−XTEN血漿中レベルは標準としてrFIXFc−XTENを使用し測定した。図15Aにおいて、血漿中抗原量(点線)および血漿中活性(実線、n=3)の平均±標準偏差を、注入した用量からの回復のパーセンタイルとしてプロットする。図15Bは、Phoenix WinNonLin 6.2.1(Pharsight、Certara)を使用して、平均滞留時間(MRT)、AUC/用量および他のパラメーターを含むNCA分析により算出したPKパラメーターの表を示す。
実施例11:静脈内投与および皮下投与の比較
HemBマウスに対し、50IU/kg(実線)、100(大きな点線)または200IU/kg(小さな点線)でrFIXFcを静脈内投与し、FIX血漿中活性レベルを、投与後7日目までの各時点で測定した(図16)。陰影付きの領域は、100および200IU/kgで皮下投与されたrFIXFc−AP.72(pJH84;配列番号151)のモデル化されたFIX血漿中活性レベルを表し、それは、図14A〜14Cに記載されるすべての測定された血漿中活性データにフィッティングさせた1区画PKモデルを使用して算出されたものである。皮下投与されたrFIXFc−AP.72は、投与後約1日で、その予測された血漿中ピークに達した。100IU/kgおよび200IU/kgで皮下投与されたrFIXFc−AP.72の、それぞれ約15IU/dLおよび30IU/dLのピーク値は、皮下投与経路により過剰投与されるおそれが少なくなることを示すものである。血栓症の潜在的危険性は、150IU/kg超のピーク値として予想され、それは150IU/kg以上のrFIXの静脈内投与により容易に達する注目に値するのは、皮下投与されるrFIXFc−AP.72が、同等の用量で静脈内投与により投与されるrFIXFcよりも高い、投与後1日目における血漿中レベル、および毎週投与による一貫したレベルを提供することを見出したことである。このことは、7日のサイクルの1日目に静脈内投与されるrFIXFcの当量と比較し、rFIXFc−AP.72の皮下投与により、投与後7日間のうちの6日目まで、より良好に出血を防止し得ることを示唆するものである。
上記の具体的な実施形態に関する記載は、本開示の一般的な内容が、本開示の一般的な概念を逸脱しない範囲で、過度な実験を要さずに、他の当業者が公知技術を適用することにより、かかる具体的な実施形態を容易に変更でき、および/または、各種の用途に適応させることができることを明確に示すものである。したがって、かかる適応および変更は、本明細書に示される教示および指針に基づき、開示された実施形態と均等の範囲内にあることを意味するものである。本明細書における語法または用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではないことを理解すべきであり、ゆえに、本明細書の用語または語法は、その教示および指針を考慮して、当業者により解釈されるべきものである。
本開示の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示される内容の実施から、当業者にとり明らかである。明細書および実施例は、例示を目的とするものであり、本開示の真の範囲および趣旨は、後述する特許請求の範囲により示される。
本願は、全開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2017年1月31日に出願の米国仮特許出願第62/452,826号の優先権を主張するものである。
実施形態:
E1.因子IX(FIX)融合タンパク質を、それを必要とする対象に投与する方法であって、対象にFIX融合タンパク質を皮下投与することを含み、
(a)該FIX融合タンパク質が、FIXポリペプチドと、少なくとも1つのXTENとを含み、該XTENは、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で該FIXポリペプチド内に挿入され、
(b)投与後に、該FIX融合タンパク質が、該対象において約5%〜約30%の血漿中活性を示す、前記方法。
E2.FIX融合タンパク質が、約50IU/kg〜約400IU/kgの用量で投与される、E1に記載の方法。
E3.FIX融合タンパク質が、約50IU/kg、約100IU/kg、約200IU/kg、または約400IU/kgの用量で投与される、E1またはE2に記載の方法。
E4.FIX融合タンパク質が、約10%〜約30%の血漿中活性ピーク値を示す、E1〜E3のいずれか一項に記載の方法。
E5.FIX融合タンパク質が、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%または約30%の血漿中活性ピーク値を示す、E1〜E4のいずれか一項に記載の方法。
E6.FIX融合タンパク質が、約30%の血漿中活性ピーク値を示す、E1〜E5のいずれか一項に記載の方法。
E7.FIX融合タンパク質が、約5%〜約10%の血漿中活性トラフ値を示す、E1〜E6のいずれか一項に記載の方法。
E8.FIX融合タンパク質が、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%の血漿中活性トラフ値を示す、E1〜E7のいずれか一項に記載の方法。
E9.FIX融合タンパク質が、約5%の血漿中活性トラフ値を示す、E1〜E8のいずれか一項に記載の方法。
E10.FIX融合タンパク質が、約30%の血漿中活性ピーク値を示し、FIXタンパク質が、約5%の血漿中活性トラフ値を示す、E1〜E9のいずれか一項に記載の方法。
E11.挿入部位が、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する、E1〜E10のいずれか一項に記載の方法。
E12.挿入部位が、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する、E1〜E11のいずれか一項に記載の方法。
E13.挿入部位が、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105およびその両方からなる群から選択されるアミノ酸に対応する、E1〜E12のいずれか一項に記載の方法。
E14.挿入部位が配列番号2のアミノ酸142に対応する、E1〜E13のいずれか一項に記載の方法。
E15.XTENが、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸または少なくとも約288のアミノ酸を含む、E1〜E14のいずれか一項に記載の方法。
E16.XTENが、A42、A72、A864、A576、A288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、またはそれらのいずれかの組合せを含む、E1〜E15のいずれか一項に記載の方法。
E17.XTENが、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を含む、E1〜E16のいずれか一項に記載の方法。
E18.XTENがAE72またはAE144を含む、E16またはE17に記載の方法。
E19.XTENがAE72を含む、E16〜E18のいずれか一項に記載の方法。
E20.第2のXTENをさらに含む、E1〜E19のいずれか一項に記載の方法。
E21.第2のXTENが、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入されるか、または、第2のXTENが、FIXポリペプチドのC末端に、もしくはFIXポリペプチドのC末端に融合するリンカーに融合されている、E20に記載の方法。
E22.XTENおよび第2のXTENが、それぞれ、以下からなる群から選択されるアミノ酸に対応する挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入されるか、および/または、FIXポリペプチドのC末端に融合する、E20またはE21に記載の方法:
i.配列番号2のアミノ酸105および配列番号2のアミノ酸166;
ii.配列番号2のアミノ酸105および配列番号2のアミノ酸224;
iii.配列番号2のアミノ酸105およびC末端に融合される;
iv.配列番号2のアミノ酸166および配列番号2のアミノ酸224;
v.配列番号2のアミノ酸166およびC末端に融合される;および
vi.配列番号2のアミノ酸224およびC末端に融合される。
E23.XTENが、配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入され、第2のXTENは、FIXポリペプチドのC末端に融合する、E20またはE21に記載の方法。
E24.第2のXTENが、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸または少なくとも約288のアミノ酸を含む、E20〜E23のいずれか一項に記載の方法。
E25.第2のXTENが、A42、A72、A864、A576、A288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、またはそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、E20からE24のいずれか一項に記載の方法。
E26.第2のXTENが、A72またはAE144である、E25に記載の方法。
E27.第2のXTENが、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を含む、E20〜E26のいずれか一項に記載の方法。
E28.第3、第4、第5または第6のXTENをさらに含む、E20〜E27のいずれか一項に記載の方法。
E29.FIXポリペプチドと、XTENを含む異種部分とを含む方法であって、XTENが、FIXポリペプチドのC末端に融合し、長さが42アミノ酸より長く144アミノ酸より短いアミノ酸配列を含む、方法。
E30.XTENが、50、55、60、65または70アミノ酸超、かつ、140、130、120、110、100、90または80アミノ酸未満、またはそれらのいずれかの組合せの長さのアミノ酸配列を含む、E29に記載の方法。
E31.XTENが72アミノ酸長である、E30に記載の方法。
E32.XTENがA72である、E31に記載の方法。
E33.XTENが、配列番号35と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一のアミノ酸配列を含む、E29に記載の方法。
E34.Fcドメインをさらに含む、E1〜E33のいずれか一項に記載の方法。
E35.Fcドメインが、FIXポリペプチドまたはXTENに融合する、E34に記載の方法。
E36.第2のFcドメインを含む、E34またはE35に記載の方法。
E37.第2のFcドメインが、第1のFcドメインと会合する、E36に記載の方法。
E38.2つのポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖が、Fcドメインに融合するFIXポリペプチドを含み、第2のポリペプチド鎖が、第2のFcドメインを含み、第1のFcドメインおよび第2のFcドメインが、共有結合によって会合する、E36またはE37に記載の方法。
E39.FIXポリペプチドと、Fcドメインと、第2のFcドメインと、Fcドメインおよび第2のFcドメインを連結するリンカーとを含む単一のポリペプチド鎖である、E36またはE37に記載の方法。
E40.リンカーが、1つまたはそれ以上の細胞内プロセシング部位をさらに含む、E39に記載の方法。
E41.リンカーが、(Gly4Ser)n(nは1〜100から選択される整数である)を含む、E39またはE40に記載の方法。
E42.配列番号54〜配列番号153からなる群から選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を、シグナルペプチドおよびプロペプチド配列なしで含む、E1〜E41のいずれか一項に記載の方法。
E43.天然のFIXの凝血原活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または100%を有する、E1〜E42のいずれか一項に記載の方法。
E44.凝血原活性が、発色基質アッセイ、一段階凝固アッセイ、またはその両方により測定される、E43に記載の方法。
E45.FIXポリペプチドが、R338L FIX変異体である、E1〜E44のいずれか一項に記載の方法。
E46.R338L FIX変異体が、配列番号2と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一のアミノ酸配列を含む、E45に記載の方法。
E47.FIX融合タンパク質が、第1の鎖および第2の鎖を含み、
(a)第1の鎖が、
(i)FIXポリペプチドと、
(ii)配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で、FIXポリペプチド内に挿入され、少なくとも約72のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、少なくとも1つのXTENと、
(iii)前記少なくとも1つのXTENのFIXポリペプチドに融合する第1のFcドメインと
を含み、
(b)第2の鎖が、第2のFcドメインを含み、
第1のFcドメインおよび第2のFcドメインが、共有結合によって会合する、E1〜E10のいずれか一項に記載の方法。
E48.少なくとも1つのXTENが、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一のアミノ酸配列を含む、E47に記載の方法。
E49.FIX融合タンパク質の第1の鎖が、配列番号227のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含み、FIX融合タンパク質の第2の鎖が、配列番号228のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含む、E47またはE48の方法。
E50.FIX融合タンパク質の第1の鎖が、配列番号227のアミノ酸配列を含み、FIX融合タンパク質の第2の鎖が、配列番号228のアミノ酸配列を含む、E47〜E49のいずれか一項に記載の方法。
以下のベクター配列は、上記実施例および本願の他の部分において参照される。以下の記号は、配列情報の理解を助けるものである。
本発明は、少なくとも1つの異種部分(例えばXTEN)を含む因子IX(FIX)融合タンパク質、ならびにFIX融合タンパクを製造および使用する方法に関する。アスキーテキストファイルとして電子的に提出された配列表の内容(ファイル名:SA9_456_Sequence Listing.txt、サイズ:712,364バイト、作成日:2019年7月15日)は、本願と共に提出され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、リンカーは、トロンビン切断部位を含む。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はXVPRを含み、Xはいずれかの脂肪族アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)である。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はLVPR(配列番号231)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーはPAR1エキソサイト相互作用モチーフを含み、それはSFLLRN(配列番号190)を含む。いくつかの実施形態では、PAR1エキソサイト相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193)、PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらのいずれかの組合せから選択されるアミノ酸配列をさらに含む。他の実施形態では、リンカーは、FXIa切断部位LDPR(配列番号232)を含む。
特定の他の実施形態では、リンカーは、トロンビン切断部位を含む。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位はXVPRを含み、Xはいずれかの脂肪族アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)である。特定の一実施形態では、トロンビン切断部位は、LVPR(配列番号231)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーはPAR1エキソサイト相互作用モチーフを含み、それはSFLLRN(配列番号190)を含む。いくつかの実施形態では、PAR1エキソサイト相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193)、PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらのいずれかの組合せから選択されるアミノ酸配列をさらに含む。特定の他の実施形態では、リンカーは、LDPR(配列番号232)を含むFXIa切断部位を含み、それはPAR1エキソサイト相互作用モチーフと組み合わせることができる。
インビトロ製造によりスケールアップが可能となり、所望のポリペプチドを大量生産することができる。組織培養条件下での哺乳動物細胞培養技術は当業者に公知の技術であり、例えばエアーリフト反応装置、または連続撹拌反応装置における均一な懸濁培養、または、例えば中空糸、マイクロカプセルもしくはアガロースマイクロビーズ中に、またはセラミックカートリッジ上に細胞を固定化もしくは捕捉させた培養が挙げられる。ポリペプチドの溶液は、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースクロマトグラフィーまたは(イムノ)アフィニティークロマトグラフィーなどの慣習的なクロマトグラフィー法により、例えば合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後、または本明細書に記載されるHICクロマトグラフィーの前後において、必要に応じて、および/または望ましい場合に、精製することができる。アフィニティータグ配列(例えばHis(6)(配列番号236)タグ)を、ポリペプチド配列内に任意に付着させるかまたは含めることにより、下流側での精製を容易にすることが可能となる。