JP2020205194A - フロー電池、フロー電池用電解液、及びフロー電池用電極部材 - Google Patents

フロー電池、フロー電池用電解液、及びフロー電池用電極部材 Download PDF

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Abstract

【課題】起電力が高いフロー電池、フロー電池用電解液、及びフロー電池用電極部材を提供する。【解決手段】正極電極と、負極電極と、電解液とを備え、前記電解液は、前記正極電極と前記負極電極との間に供給され、正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である、フロー電池。【選択図】図1

Description

本開示は、フロー電池、フロー電池用電解液、及びフロー電池用電極部材に関する。
蓄電池の一つに、電池反応を行うイオンを含む電解液を電極に供給しながら充放電を行うフロー電池がある。代表的なフロー電池として、酸化還元反応を行うイオンを含む電解液を用いるレドックスフロー電池がある。特許文献1は、価数が異なるバナジウムイオンを正極活物質、負極活物質とする全バナジウム系レドックスフロー電池を開示する。
特開2000−012064号公報
高い起電力を有するフロー電池が望まれている。
上述の全バナジウム系レドックスフロー電池の起電力は約1.4Vである。そのため、起電力の更なる向上が望まれる。
更に、安全性が高く、高出力な運転が可能なフロー電池が望ましい。
そこで、本開示は、高い起電力を有するフロー電池を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、高い起電力を有するフロー電池を構築できるフロー電池用電解液、及びフロー電池用電極部材を提供することを別の目的とする。
本開示のフロー電池は、
正極電極と、
負極電極と、
電解液とを備え、
前記電解液は、
前記正極電極と前記負極電極との間に供給され、
正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である。
本開示のフロー電池用電解液は、
正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である。
本開示のフロー電池用電極部材は、
負極電極と、
前記負極電極の表面に設けられる遮水層とを備え、
前記遮水層は、アルカリ金属イオンを透過する。
本開示のフロー電池は、高い起電力を有する。本開示のフロー電池用電解液、及び本開示のフロー電池用電極部材は、高い起電力を有するフロー電池を構築できる。
図1は、実施形態のフロー電池を示す概念図である。
[本開示の実施の形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るフロー電池は、
正極電極と、
負極電極と、
電解液とを備え、
前記電解液は、
前記正極電極と前記負極電極との間に供給され、
正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である。
ここでの負極における電池反応は、析出・溶解反応、又はイオンの挿入・脱離反応である。
本開示のフロー電池では、負極において電池反応を行うイオン、即ち負極活物質イオンがアルカリ金属イオンである。そのため、本開示のフロー電池は、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有する。
また、本開示のフロー電池は、溶媒が水である水系電解液を備える。水系電解液は、溶媒が有機化合物である非水系電解液に比較して、以下の利点を有する。
(a)水系電解液は、不燃性であり安全性に優れる。
(b)水系電解液は、イオン伝導性に優れて高出力運転を行える。
(c)水系電解液は、揮発し難く利用し易い。
これらの利点から、本開示のフロー電池は、安全性が高く、高出力な運転も可能であり、長期の使用に適する。
(2)本開示のフロー電池の一例として、
前記アルカリ金属イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからなる群より選択される1種以上のイオンである形態が挙げられる。
上記に列挙するアルカリ金属イオンは、入手し易い。この点で、上記形態は、実用的である。
(3)本開示のフロー電池の一例として、
更に、前記負極電極と前記電解液中の水とを離隔する遮水層を備え、
前記遮水層は、前記アルカリ金属イオンを透過する形態が挙げられる。
上記形態では、負極電極が電池反応を行えると共に、遮水層によって、負極における電池反応で析出したアルカリ金属が電解液中の水に接触することを阻止できる。このような上記形態は、長期にわたり、安定して運転できる。
(4)上記(3)のフロー電池の一例として、
前記負極電極は、金属又は金属元素を含む化合物からなり、
前記遮水層は、前記負極電極の表面に設けられる形態が挙げられる。
負極電極の表面に遮水層を備える上記形態は、遮水層と負極電極とを一体に取り扱い易い。特に金属からなる負極電極を備える形態では、負極における電池反応が析出・溶解反応である。この形態は、負極における電池反応がイオンの挿入・脱離反応である場合に比較して、高い起電力を有する。
(5)上記(4)のフロー電池の一例として、
前記金属は、亜鉛又は亜鉛基合金であり、
前記遮水層は、クロメート処理層を含む形態が挙げられる。
上記形態は、自己修復性を有する遮水層を備える。このような上記形態は、長期にわたり、遮水層を良好に維持できるため、安定して運転できる。また、上記形態は、遮水層を容易に形成できること、負極電極と遮水層とを一体物として取り扱い易いことから、フロー電池の製造性にも優れる。
(6)上記(4)のフロー電池の一例として、
前記化合物は、チタン酸リチウムであり、
前記遮水層は、疎水性のイオン液体を含む形態が挙げられる。
上記形態は、イオン伝導性に優れつつ、良好な遮水機能を有する遮水層を備える。このような上記形態は、長期にわたり安定して運転できる。
(7)本開示のフロー電池の一例として、
前記正極電極と前記負極電極との間に、電気絶縁層を備え、
前記電気絶縁層は、前記アルカリ金属イオンを透過する形態が挙げられる。
電気絶縁層によって、正極電極と負極電極とが接触しない。そのため、上記形態は、電気絶縁性に優れる。
(8)本開示の一態様に係るフロー電池用電解液は、
正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である。
本開示のフロー電池用電解液では、負極において電池反応を行うイオン、即ち負極活物質イオンがアルカリ金属イオンである。そのため、本開示のフロー電池用電解液を用いれば、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有するフロー電池を構築することができる。
また、本開示のフロー電池用電解液は、溶媒が水である水系電解液であり、上述の(a)〜(c)の利点を有する。これらの利点から、本開示のフロー電池用電解液を用いれば、安全性が高く、高出力な運転も可能であり、長期の使用に適したフロー電池を構築することができる。
(9)本開示の一態様に係るフロー電池用電極部材は、
負極電極と、
前記負極電極の表面に設けられる遮水層とを備え、
前記遮水層は、アルカリ金属イオンを透過する。
本開示のフロー電池用電極部材を、代表的には、上述の本開示のフロー電池用電解液と共に用いれば、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有するフロー電池を構築することができる。構築されたフロー電池では、負極電極が電池反応を行えると共に、遮水層によって、負極における電池反応で析出したアルカリ金属が電解液中の水に接触することを阻止できる。従って、本開示のフロー電池用電極部材と上述の本開示のフロー電池用電解液とを用いれば、長期にわたり、安定して運転できるフロー電池を構築することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施形態を具体的に説明する。
[実施形態]
以下、図1を参照して、実施形態のフロー電池1、実施形態のフロー電池用電解液(以下、電解液10)、実施形態のフロー電池用電極部材(以下、電極部材5)を説明する。
(概要)
実施形態のフロー電池1は、正極電極2と、負極電極3と、電解液10とを備える。電解液10は、正極電極2と負極電極3との間に供給される。特に、電解液10は、正極及び負極の双方において電池反応に利用される水溶液である。また、電解液10は、負極において電池反応を行うイオン(以下、負極活物質イオン30)として、アルカリ金属イオンを含む。
代表的には、フロー電池1は、電解液10が流通される機構(以下、流通機構6)を備える。流通機構6によって、電解液10は、正極電極2に接するように供給される。また、フロー電池1は、電解液10中のアルカリ金属イオンが負極電極3に接するように設けられる。以下、より詳細に説明する。
(電解液)
電解液10(実施形態の電解液10)は、正極において電池反応を行うイオン(以下、正極活物質イオン20)と、負極活物質イオン30とを含む水溶液である。負極活物質イオン30は、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、及びカリウムイオン(K)からなる群より選択される1種以上のイオンが挙げられる。列挙するアルカリ金属イオンは、入手し易く、実用的である。電解液10は、一種又は複数種のアルカリ金属イオンを含む。
アルカリ金属イオンを含む電解液10は、例えばアルカリ金属の水酸化物(例、LiOH、NaOH、KOH等)を溶媒に溶解することで製造してもよい。この場合、電解液10は水酸化物イオンを含むため、水素イオン指数(pH)が大きい。このような電解液10は、水の電気分解に起因する水素の発生を低減する効果を期待できる。
正極活物質イオン20は、負極活物質イオン30であるアルカリ金属イオンの酸化還元電位に対して、酸化還元電位の差が大きいイオンが好ましい。フロー電池1の起電力が高くなり易いからである。正極活物質イオン20の一例として、金属イオンを含む錯イオンが挙げられる。上記錯イオンの一例として、ヘキサシアニド鉄酸イオン等の鉄イオンを含む錯イオンが挙げられる。
上述の負極活物質イオン30と正極活物質イオン20とを含む電解液10の具体例として、アルカリ金属の錯塩の水溶液等が挙げられる。アルカリ金属の錯塩として、例えば、ヘキサシアニド鉄酸リチウム、ヘキサシアニド鉄酸ナトリウム、ヘキサシアニド鉄酸カリウム等が挙げられる。アルカリ金属の錯塩は、代表的には、後述する電池反応式に示すように電解液10中に上記錯塩として存在する。電解液10中の上記錯塩の価数は、運転状態によって種々変化する。
ヘキサシアニド鉄酸のアルカリ金属塩を含む電解液10について、正極における電池反応式及び負極における電池反応式を以下に示す。以下の電池反応式において、双方向矢印(⇔)の右向きは充電反応を意味し、左向きは放電反応を意味する。負極における電池反応式は、上記電池反応が析出・溶解反応である場合を例示する。以下の場合の起電力はいずれも1.4V超であり、全バナジウム系レドックスフロー電池の起電力よりも高い。
(1)電解液10がヘキサシアニド鉄酸リチウムを含む場合
〈正極〉Li[Fe(CN)]⇔Li[Fe(CN)]+Li+e
〈負極〉Li+e⇔Li
〈起電力〉 3.3V
(2)電解液10がヘキサシアニド鉄酸ナトリウムを含む場合
〈正極〉Na[Fe(CN)]⇔Na[Fe(CN)]+Na+e
〈負極〉Na+e⇔Na
〈起電力〉 3V
(3)電解液10がヘキサシアニド鉄酸カリウムを含む場合
〈正極〉K[Fe(CN)]⇔K[Fe(CN)]+K+e
〈負極〉K+e⇔K
〈起電力〉 3.2V
(正極電極)
正極電極2は、例えば、炭素系材料の繊維集合体、多孔体の金属部材等が挙げられる。炭素系材料の繊維集合体は、例えば、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。正極電極2は、電解液10に対する耐性を有すれば、公知の電極材を利用してもよい。
(負極電極)
負極電極3は、電解液10中のアルカリ金属イオンとの間で電子の受け渡しが可能なものが挙げられる。負極電極3の構成材料は、例えば金属(但し、アルカリ金属を除く)が挙げられる。金属からなる負極電極3において行われる電池反応は、析出・溶解反応である。金属からなる負極電極3を備えるフロー電池1は、負極における電池反応がイオンの挿入・脱離反応である場合に比較して高い起電力を有する(上記の電池反応式、及び後述の電池反応式の項における起電力を比較参照)。
上述の金属の一例として、亜鉛又は亜鉛基合金が挙げられる。ここでの亜鉛とはいわゆる純亜鉛である。ここでの亜鉛基合金とは、添加元素を含み、残部がZn(亜鉛)及び不可避不純物からなる合金であり、Znの含有量が最も多い合金である。
亜鉛又は亜鉛基合金は、後述する遮水層4の一例であるクロメート処理層を容易に形成できる。クロメート処理層は、化成処理の一種であるクロメート処理によって、負極電極3の表面に直接設けられる。そのため、負極電極3とクロメート処理層とは、密着性に優れて一体物として取り扱い易い。この点で、亜鉛又は亜鉛基合金からなる負極電極3を備えるフロー電池1は、構築し易く、製造性にも優れる。
上述の金属からなる負極電極3は、例えば、板材、金属繊維の集合体、多孔体等が挙げられる。板材は、機械的強度に優れる。金属繊維の集合体や多孔体は表面積を大きく確保し易い。そのため、金属繊維の集合体や多孔体からなる負極電極3は、例えばエネルギー密度を大きく確保し易い。
又は、負極電極3の構成材料は、例えば金属元素を含む化合物が挙げられる。上記化合物は、電解液10中のアルカリ金属イオンの挿入・脱離が可能なものが挙げられる。このような上記化合物の一例として、チタン酸リチウム(LiTi12、以下、LTOと呼ぶことがある)が挙げられる。LTOは、安定な結晶構造を有し、充放電のサイクル時に膨張・収縮し難い。そのため、LTOはサイクル特性に優れる。また、LTOは、電気絶縁体である。そのため、LTOは、金属に比較して電子伝導性に劣るものの、正極電極2と負極電極3との間の電気絶縁性を高められる。LTOからなる負極電極3は、リチウムイオン電池の負極電極材として利用されている公知のものを利用してもよい。
上述のLTOからなる負極電極3を備えるフロー電池1について、電池反応式を以下に示す。双方向矢印の意味は上述の通りである。
(1)電解液10がヘキサシアニド鉄酸リチウムを含む場合
〈正極〉Li[Fe(CN)]⇔Li[Fe(CN)]+Li+e
〈負極〉Li[Li1/3Ti5/3]O+Li+e⇔Li[Li1/3Ti5/3]O
〈起電力〉 1.8V
(2)電解液10がヘキサシアニド鉄酸ナトリウムを含む場合
〈正極〉Na[Fe(CN)]⇔Na[Fe(CN)]+Na+e
〈負極〉1/2LiNaTi12+1/2LiTi12
⇔3Na+LiTi12
〈起電力〉 2V
(3)電解液10がヘキサシアニド鉄酸カリウムを含む場合
〈正極〉Li[Fe(CN)]⇔Li[Fe(CN)]+Li+e
〈負極〉1/2LiKTi12+1/2LiTi12
⇔3K+LiTi12
〈起電力〉 1.8V
(遮水層)
フロー電池1は、更に、負極電極3と電解液10中の水とを離隔する遮水層4を備えることが挙げられる。ここで、負極における電池反応では、上述の電池反応式に示すようにアルカリ金属が析出する。遮水層4は、負極で析出したアルカリ金属が電解液10中の水に接触することを阻止する。つまり、遮水層4は、負極で析出したアルカリ金属と上記水との化学反応を防止する。
遮水層4の構成材料は、負極電極3側に水が透過しない材料が挙げられる。このような材料からなる遮水層4は、負極で析出したアルカリ金属と電解液10中の水との化学反応を確実に防止できる。また、遮水層4の構成材料は、アルカリ金属イオンを透過する材料が挙げられる。このような材料からなる遮水層4が例えば負極電極3に接して設けられることで、負極電極3は、アルカリ金属イオンを利用して電池反応を良好に行える。これらのことから、遮水層4を備えるフロー電池1は、長期にわたり、安定して運転できる。
なお、遮水層4は、負極における電池反応を阻害しない範囲において電子の伝導を許容する。遮水層4の構成材料の電子伝導度が低いほど、遮水層4によって、正極電極2と負極電極3との間の電気絶縁性が高められる。
遮水層4は、例えば、負極電極3の表面に設けられることが挙げられる。この場合、フロー電池1の負極側に配置される部材は、負極電極3と、負極電極3の表面に設けられる遮水層4とを備える電極部材5(実施形態の電極部材5)を利用できる。電極部材5は、遮水層4と負極電極3とを一体に備える。そのため、電極部材5は、取り扱い易く、フロー電池1を構築し易い。
負極電極3の表面に備えられる遮水層4の一例として、負極電極3が上述した亜鉛等の金属からなる場合にクロメート処理層を含むことが挙げられる。クロメート処理層は、自己修復性を有する。そのため、クロメート処理層からなる遮水層4は、長期にわたり、負極電極3の表面に良好に維持される。従って、上記金属からなる負極電極3と、クロメート処理層からなる遮水層4とを備えるフロー電池1(電極部材5を備えるフロー電池1の一例)は、長期にわたり、安定して運転できる。
負極電極3の表面に備えられる遮水層4の別例として、負極電極3が上述したLTO等の金属酸化物からなる場合に疎水性のイオン液体を含むことが挙げられる。疎水性のイオン液体は、アルカリ金属イオン等のイオンの伝導性に優れると共に、良好な遮水機能を有する。従って、上記金属酸化物からなる負極電極3と、疎水性のイオン液体を含む遮水層4とを備えるフロー電池1(電極部材5を備えるフロー電池1の別例)は、長期にわたり安定して運転できる。また、イオン液体を含む遮水層4は、正極電極2と負極電極3との間の電気絶縁性を高められると期待される。
イオン液体は、例えば、上述の条件(水を透過しない、かつアルカリ金属イオンを透過する)を満たす種々のものが利用できる。このようなイオン液体の一例として、脂肪族四級アンモニウム塩等が挙げられる。脂肪族四級アンモニウム塩は、例えば、以下が挙げられる。以下に、イオン液体の名称、略称、構造式を示す。
名称:N−Methyl−N−propylpiperidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)amide
略称:PP13−TFSA
構造式:
Figure 2020205194
名称:N−butyl−N−trimethylammonium bis(trifluoromethanesulfonyl)amide
略称:BTMA−TFSA
構造式:
Figure 2020205194
イオン液体を含む遮水層4の一例として、イオン液体が負極電極3の表面に塗布されてなる層が挙げられる。この場合、負極電極3は、イオン液体の流動を抑制する構造を備えてもよい。上記構造は、例えば、負極電極3の表面に局所的に設けられる樹脂部(図示せず)を備えることが挙げられる。上記樹脂部は、例えば、紫外線硬化型樹脂によって構成される微小な突起等が挙げられる。
イオン液体を含む遮水層4の別例として、イオン液体を含むゲル(一般にイオンゲルと呼ばれる)からなる層が挙げられる。遮水層4がイオンゲルからなることで、イオン液体が負極電極3の表面に維持され易い。
イオン液体を含む遮水層4の更に別例として、イオン液体が含浸された多孔体が挙げられる。上記多孔体は、アルカリ金属イオンが透過可能な開気孔を有する。そのため、負極電極3は、上記多孔体を含む遮水層4を有していても、電池反応を良好に行える。多孔体の構成材料は、例えば樹脂が挙げられる。樹脂の一例として、ポリエチレン(PE)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂からなる多孔体は、一般に電気絶縁性に優れる。そのため、正極電極2と負極電極3との間に上記樹脂からなる多孔体が介在すれば、正極電極2と負極電極3との間の電気絶縁性も高められる。
(電気絶縁層)
フロー電池1は、更に、正極電極2と負極電極3との間に電気絶縁層7を備えることが挙げられる。電気絶縁層7の構成材料は、アルカリ金属イオンを透過する電気絶縁材料が挙げられる。上記電気絶縁材料は、正極電極2と負極電極3との間に求められる電気絶縁性を有することが好ましい。また、上記電気絶縁材料は、上述の遮水層4の構成材料よりも電気絶縁性に優れることが好ましい。このような電気絶縁層7が正極電極2と負極電極3との間に介在すれば、正極電極2と負極電極3との電気絶縁性に関する信頼性が高められる。
電気絶縁層7は、正極電極2と負極電極3との接触を阻止でき、所定の絶縁距離を確保可能な適宜な形状、大きさに設けられる。例えば、電気絶縁層7は、正極電極2における負極電極3との対向面、及び負極電極3における正極電極2との対向面のうち、一方の対向面、又は双方の対向面において、少なくとも一部を覆うように設けられることが挙げられる。このような電気絶縁層7は、例えば上述の樹脂からなる多孔体を備えることが挙げられる。正極電極2の対向面又は負極電極3の対向面において、電気絶縁層7が局所的に設けられてもよい。又は、電気絶縁層7は、正極電極2と負極電極3との間であって、正極電極2及び負極電極3の双方に接触しないように設けられていてもよい。
フロー電池1は、遮水層4と電気絶縁層7との双方を備えると、遮水性と電気絶縁性との双方に関する信頼性を高められる。
(供給機構)
流通機構6は、例えば、セル槽60と、タンク61と、配管62と、ポンプ63とを備える。セル槽60とタンク61とが配管62によって接続される。配管62は、往路管62aと、復路管62bとを備える。ポンプ63は例えば往路管62aに設けられる。セル槽60には、ポンプ63によって、タンク61から往路管62aを経て電解液10が供給される。セル槽60からの電解液10は、復路管62bを経てタンク61に戻される。本例の流通機構6は、ポンプ63によって、セル槽60に電解液10を循環供給する。流通機構6の基本的な構成は、公知のフロー電池に備えられる電解液の流通機構を参照してもよい。
セル槽60には、図1に例示するように、正極電極2が収納されると共に、負極電極3が電解液10中のアルカリ金属イオンと接触可能に配置される。代表的には、正極電極2は電解液10に浸漬される(図1)。負極電極3の表面に遮水層4を備える場合、遮水層4が電解液10に接触し、負極電極3は電解液10に接触しない。但し、負極電極3は、遮水層4を透過したアルカリ金属イオンを用いて、電池反応を行える。
(その他の構成)
フロー電池1は、例えば、電解液10中にクラウンエーテルを含むことが挙げられる。クラウンエーテルは、負極における電池反応で析出したアルカリ金属を囲むことで、上記析出したアルカリ金属が電解液10中の水と接触することを防止することに有効であると期待される。
又は、フロー電池1の運転時の電圧を調整して、負極で析出したアルカリ金属と電解液10中の水との反応を抑制することが考えられる。
(主な作用効果)
実施形態のフロー電池1は、負極活物質イオン30がアルカリ金属イオンである。そのため、実施形態のフロー電池1は、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有する。例えば、フロー電池1は、アルカリ金属イオンの種類にもよるが、1.8V以上、更に2.0V以上、2.5V以上といった高い起電力を有する。
また、実施形態のフロー電池1に備えられる電解液10は、水系電解液である。そのため、溶媒が有機化合物である非水系電解液に比較して、実施形態のフロー電池1は、安全性が高く、高出力な運転も可能であり、長期の使用に適する。
更に、実施形態のフロー電池1は、電解液10の流通機構6を正極側に備えればよく、負極側に不要である。この点で、フロー電池1は、正極用の流通機構と負極用の流通機構との双方を備える従来のレドックスフロー電池に比較して小型・軽量である上に、構築し易い。
実施形態の電解液10は、負極活物質イオン30をアルカリ金属イオンとする水系電解液である。そのため、実施形態の電解液10を用いれば、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有するフロー電池1を構築することができる。また、実施形態の電解液10を用いれば、安全性が高く、高出力な運転も可能であり、長期の使用に適したフロー電池1を構築することができる。
実施形態の電極部材5は、代表的には実施形態の電解液10と共に用いれば、従来の全バナジウム系レドックスフロー電池に比較して高い起電力を有するフロー電池1を構築できる。また、実施形態の電極部材5は、遮水層4によって、負極における電池反応で析出したアルカリ金属と電解液10中の水との反応を阻止できる。そのため、実施形態の電極部材5と電解液10とを用いれば、長期にわたり、安定して運転できるフロー電池1を構築することができる。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 フロー電池
2 正極電極
3 負極電極
4 遮水層
5 電極部材
6 流通機構
60 セル槽、61 タンク、62 配管、62a 往路管、62b 復路管
63 ポンプ
7 電気絶縁層
10 電解液
20 正極活物質イオン
30 負極活物質イオン

Claims (9)

  1. 正極電極と、
    負極電極と、
    電解液とを備え、
    前記電解液は、
    前記正極電極と前記負極電極との間に供給され、
    正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である、
    フロー電池。
  2. 前記アルカリ金属イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンからなる群より選択される1種以上のイオンである請求項1に記載のフロー電池。
  3. 更に、前記負極電極と前記電解液中の水とを離隔する遮水層を備え、
    前記遮水層は、前記アルカリ金属イオンを透過する請求項1又は請求項2に記載のフロー電池。
  4. 前記負極電極は、金属又は金属元素を含む化合物からなり、
    前記遮水層は、前記負極電極の表面に設けられる請求項3に記載のフロー電池。
  5. 前記金属は、亜鉛又は亜鉛基合金であり、
    前記遮水層は、クロメート処理層を含む請求項4に記載のフロー電池。
  6. 前記化合物は、チタン酸リチウムであり、
    前記遮水層は、疎水性のイオン液体を含む請求項4に記載のフロー電池。
  7. 前記正極電極と前記負極電極との間に、電気絶縁層を備え、
    前記電気絶縁層は、前記アルカリ金属イオンを透過する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフロー電池。
  8. 正極において電池反応を行うイオンと、負極において電池反応を行うアルカリ金属イオンとを含む水溶液である、
    フロー電池用電解液。
  9. 負極電極と、
    前記負極電極の表面に設けられる遮水層とを備え、
    前記遮水層は、アルカリ金属イオンを透過する、
    フロー電池用電極部材。
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