JP2020204195A - 固定部材、及び被覆構造体 - Google Patents

固定部材、及び被覆構造体 Download PDF

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康典 田中
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英人 軽賀
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Maki Mukai
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Abstract

【課題】鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体に関し、鉄骨の耐熱性を高め、安定した耐熱保護性を得る。【解決手段】本発明は、鉄骨に熱発泡性シートを固定する固定部材であって、前記固定部材は、固定部、及び熱発泡性被覆材層を有し、前記固定部の表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、新規な固定部材、及び被覆構造体に関するものである。
建築物、土木構築物等の構造物が火災等によって高温に晒された場合には、柱、梁等を構成する鉄骨の物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、鉄骨に耐熱保護性を有する被覆材を被覆し、火災時の鉄骨の温度上昇を遅延させて、鉄骨の物理的強度の低下を抑制する被覆構造が知られている。
上記被覆構造としては、例えば、セメント等の無機質バインダーに、無機質繊維状物質、軽量骨材、結晶水含有無機質粉体等を適宜混合した混合組成物を鉄骨表面に厚付けした湿式被覆構造が知られている。また、上記湿式被覆構造に代えて、無機繊維混合マット、ロックウール、耐火ボード、熱発泡性シート等の乾式材料による乾式被覆構造も知られている。乾式被覆構造は、湿式被覆構造に比べて施工性、仕上がり性に優れるため好適である。
乾式被覆構造において、鉄骨梁に乾式材料(被覆材)を固定する方法としては、溶接ピン、ビス、タッピンネジ(タッピングネジ)、タッカー等の止め具によって固定する手法が多く採用されている。例えば、特許文献1には、ロックウールフェルトを主材とする厚手タイプの耐火被覆材をワッシャー付き溶接ピンにより固定する方法が記載されている。この場合、厚手タイプ耐火被覆材は、ワッシャー部で十分に押さえられて固定される(特許請求の範囲、図3等)。
特開平10−152914号公報
しかし、熱発泡性シート等の薄手タイプの耐火被覆材の場合、特許文献1のようなワッシャー付き溶接ピンで固定すると、固定が不十分となるおそれがある。特に、火災等の高温時に熱発泡性シートの変形、例えば、固定部材の間において撓み等の変形が生じ、所望の耐熱保護性が得られ難いおそれがある。
本発明は、鉄骨に熱発泡性シートを固定する固定部材に関し、熱発泡性シートの固定性に優れ、安定した耐熱保護性を得ることを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、固定部の表面に熱発泡性被覆材が積層された固定部材に想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の固定部材は、下記の特徴を有するものである。
1.鉄骨に熱発泡性シートを固定する固定部材であって、
前記固定部材は、固定部、及び熱発泡性被覆材層を有し、
前記固定部の表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする固定部材。
2.前記固定部は、押さえ板及び止め具を有し、
前記押さえ板は平面形状が長尺形状であり、
前記押さえ板及び/または前記止め具の表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする1.に記載の固定部材。
3.前記押さえ板は、平面形状が長尺形状であり、その長径が30〜150mm、短径が5〜30mmであることを特徴とする2.に記載の固定部材。
4.鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体であって、
前記熱発泡性シートは、前記鉄骨の周囲を覆う様に設けられ、1.〜3.のいずれかに記載の固定部材で固定されていることを特徴とする被覆構造体。
本発明では、熱発泡性シートの固定性に優れ、鉄骨が火災等によって高温に晒された場合に、安定した耐熱保護性を得ることができる。
本発明で用いる鉄骨の一例を示す断面図である。 本発明で用いる固定部材の一例を示す斜視図である。 本発明で用いる固定部材の一例を示す(I)斜視図、(II)正面図、(III)平面図である。 本発明で用いる固定部材のバリエーションを示す平面図である。 本発明で用いる固定部材のバリエーションを示す正面図である。 本発明で用いる固定部材のバネ機能(変形イメージ)を示す正面図である。 本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。 本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。 本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。 本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。 本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。 本発明で用いる鉄骨の一例を示す断面図である。 本発明被覆構造体の一例を示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、鉄骨に熱発泡性シートを固定する固定部材に関するものである。
本発明の固定部材は、鉄骨の周囲を覆うように熱発泡性シートが設けられた(被覆された)被覆構造体に使用するのに好適である。鉄骨としては、特に限定されず、例えば、角型、丸型、H型、I型等の鉄骨鋼材が挙げられ、これらは構造物を構成する柱、梁、等として使用されるものである。これら鉄骨の周囲を覆うように熱発泡性シートが設けられた態様としては、例えば、鉄骨に直接(密着して)被覆する態様、空気層を介して被覆する態様等が挙げられ、熱発泡性シートの端部が固定部材で固定されているものである。本発明の固定部材は、鉄骨の周囲を、空気層を介して熱発泡性シートが覆うように被覆された被覆構造体に使用するのに好適であり、さらには、H型、I型等の鉄骨の場合により好適なものである。以下、本発明の固定部材、及び被覆構造体として好適な、構造材の下方に固定されたH型またはI型の鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体を例として、詳細に説明する。
(鉄骨)
図1に、本発明で用いるH型鉄骨の断面図を示す。
本発明の構造材1としては、鉄骨が設置可能な公知のものであればよく、建物の床や天井等が挙げられ、好ましくは耐熱性を有するもの、例えば、ALC板、PC板、デッキプレート、デッキプレートコンクリート等が挙げられる。
本発明のH型鉄骨2は、上記構造材1を支える梁として機能するものであり、上記構造材1と直接または接続部材等を介してボルト、溶接等の固定手段により固定されるものである。本発明のH型鉄骨2としては、図1のように断面がH字型であり、上フランジ2aと下フランジ2bを板状のウェブ2cにより連結して形成された態様のものが使用される。H型鉄骨は、フランジ幅が広く、フランジ内外面が平行なものである。また、本発明において、上フランジのエッジ部2dとは、上フランジの両端部付近のことをいう。なお、本発明では、構造材1に接する方を上フランジ、その反対側を下フランジという。
(熱発泡性シート)
本発明の熱発泡性シート3は、火災等により周囲温度が上昇してシート温度が所定の発泡温度(好ましくは180℃以上、より好ましくは200〜400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成するものである。熱発泡性シート3としては、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有するものが好適である。このうち、樹脂成分としては、例えばアクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、難燃剤としては、例えばポリリン酸アンモニウム等、発泡剤としては、例えばメラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等、炭化剤としては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、充填剤としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、無機繊維等が挙げられる。
各成分の配合比率は、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200〜600重量部、発泡剤40〜150重量部、炭化剤40〜150重量部、及び充填剤50〜160重量部であることが好ましい。
熱発泡性シート3の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2〜10mm程度、より好ましく0.3〜6mm程度である。
また、熱発泡性シート3には、上記構成成分に加え、必要に応じ、シート製造時に各種添加剤を含むこともできる。添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
さらに、本発明の熱発泡性シート3は、上記構成成分を含むシートのみから構成(熱発泡層3a)されていてもよいが、裏面(鉄骨側)に繊維質シート等の補強材3bが積層されていてもよい。このような補強材3bとしては、例えば、有機繊維及び/または無機繊維等を含む公知のシートを使用することができる。
<固定部材>
本発明の固定部材は、その表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とするものである。これにより、固定部材の耐熱保護性高め、熱発泡性シートの固定性に優れ、鉄骨が火災等によって高温に晒された場合に、安定した耐熱保護性を得ることができる。
本発明において、固定部材の形状は、熱発泡性シートを固定することが可能であれば、特に限定されない。
図2に、本発明の固定部材Aの一例(斜視図)を示す。本発明の固定部材Aは、図2に示すように押さえ板(座板)A1及び止め具(ピン)A2を有する固定部A12と、その表面に熱発泡性被覆材層A3が積層されていることを特徴とするものである。熱発泡性被覆材層A3は、押さえ板A1及び/または止め具A2の表面に積層されているものであり、少なくとも押さえ板A1の表面に積層されているものが好ましい。なお、本発明では、押さえ板A1と止め具A2は、予め接合されて一体化したものであっても、押さえ板A1に設けた穴に止め具A2を嵌めて使用する嵌合タイプのものであってもよい。
図3に、本発明の固定部材Aの別の一例を示す。図3(I)は固定部材Aの斜視図であり、本発明では図3(II)のように(I)を正面方向(矢印f方向)から見たものを正面図、図3(III)のように上方(矢印p方向)からみたもので平面図という。本発明の固定部材Aは、図3[(I):斜視図、(II)正面図]に示すように押さえ板A1及び止め具A2を有する固定部A12と、その表面(好ましくは少なくとも押さえ板A1の表面)に熱発泡性被覆材層A3が積層されていることを特徴とするものである。
本発明では、図3[(III):平面図]に示すように、押さえ板A1は平面形状(固定部材Aを上方から見た形状)が長尺形状(細長形状)であることが好ましく、例えば、図4[平面図]に示すように、三角形、四角形(長方形、台形、ひし形、等)、楕円形、リボン型等が挙げられ、その角部が丸くなっているものであってもよい。その長径は好ましくは30〜150mm(より好ましくは35〜120mm)であり、短径は好ましくは5〜30mm(より好ましくは6〜25mm)である。押さえ板A1の厚みは、好ましくは0.1〜10mm(より好ましくは0.2〜8mm)である。押さえ板A1の厚みは、均一であってもよいが、溶接作業性のために、止め具A2付近を凹んだ形状とすることもできる。このような場合、本発明の効果を十分に得ることができる。また、押さえ板A1の材質としては、金属製等の不燃性のものが好ましく、導電性のもの、絶縁性のものどちらも使用できる。なお、本発明では、重心を通る最長径を「長径」といい、重心を通る最短径を「短径」という。
さらに、押さえ板A1は、バネ機能を有することが好ましい。本発明において「バネ機能を有する」とは、押さえ板A1の上方から力を加えると変形し、力を取り除くと元に戻る機能(弾性)を有することをいう。このバネ機能により、熱発泡性シート3の表面を十分に押さえて固定できるため、本発明の効果をいっそう高めることができる。
このようなバネ機能を有する押さえ板A1’(以下、単に「押さえ板バネA1’」ともいう。)としては、上記効果を有するものであれば特に限定されないが、本発明では、図5[正面図]に示すように、押さえ板A1の長手方向の少なくとも一端部(好ましくは両端部)を、折り曲げた(または湾曲させた)構造を有するものが好ましい。押さえ板バネA1’の高さ(HA1’)は、好ましくは3〜30mm(より好ましくは5〜25mm)である。また、図6に、押さえ板バネA1’の上方から力を加えた際(溶接時)の変形のイメージ図を示す。本発明では、この変形幅(XA1’)が、好ましくは1〜10mm(より好ましくは2〜8mm)である。このような押さえ板バネA1’を有する固定部材Aを用いることにより、熱発泡性シート3の表面を押さえ板バネA1’の一端部(好ましくは両端部)、及び止め具A2で安定して固定することができる。さらには熱発泡性シート3と押さえ板バネA1’の間に空気層(断熱層)を形成して固定することができる。これにより本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
さらに、本発明では、図6(II)のように、変形時に押さえ板バネA1’の少なくとも一端部(好ましくは両端部)が、熱発泡性シート3と面接触することが好ましい。これにより、熱発泡性シート3をよりいっそう安定して固定することができるため、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
止め具A2としては、熱発泡性シート3を固定することができるものであれば特に限定されないが、例えば、スタッド(溶接ピン)、タッピンネジ(タッピングネジ)、等が好適である。スタッドとしては、図3(II)に示すように、頭部A2a、脚部A2b、先端部A2cからなり、頭部A2aに通電し先端A2cを溶融させて、構造材または鉄骨エッジ部に溶接し固定させるものである。このようなスタッドとしては、溶接ピンとして公知のものを使用できる。その材質としては、通電可能な(導電性を有する)金属であれば特に限定されず、例えば、銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。また、頭部A2aと、脚部A2b、先端A2c構成する材質は、同種であっても、異種であってもよい。また、タッピンネジは、図3(II’)に示すように、頭部A2a、脚部(ネジ部)A2dからなり、構造材1に脚部(ネジ部)A2dをねじ込んで固定させるものである。このようなタッピンネジとしては、公知のものを使用することができる。例えば、脚部(ネジ部)52dの形状は、JIS B 1007(2003)に記載の1種、2種、3種、及び4種の形状のいずれのものであってもよい。また、頭部52aの形状は、十字穴付き付きのナベ頭、皿頭、トラス頭、バインド頭、丸皿頭等いずれのものであってもよい。その材質としては、金属製等の不燃性のものが好ましい。
止め具A2(脚部A2bまたはA2d)の太さは、好ましくは0.5〜5mm(より好ましくは1〜4mm)である。また、止め具A2の長さ(HA2)(脚部A2b及び先端A2cの長さ、または脚部A2dの長さ)は、好ましくは5〜30mm(より好ましくは8〜25mm)である。さらに、本発明では、止め具A2の長さ(HA2)は、押さえ板バネA1’の高さ(HA1’ )と同等あるいはそれ以上であることが好ましく、その上限としては、押さえ板バネA1’の高さ(HA1’ )と、板バネA1’の変形幅(XA1’ )を合わせた長さとすることが好ましい。
(HA1’ )≦(HA2)≦(HA1’ )+(XA1’
このような範囲を満たすことによって、溶接時に押さえ板バネA1’がバネ機能を十分に発揮し、熱発泡性シート3を安定して固定することができ、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
また、本発明の固定部A12は、押さえ板A1、及び少なくとも1つの止め具A2を有ればよいが、必要に応じ、複数の止め具A2を有することもできる。さらに、止め具A2として、ワッシャーやナット付き等のものも使用でき、この場合ワッシャーやナットの表面にも熱発泡性被覆材を積層することができる。
上記固定部A12の表面に積層する熱発泡性被覆材層A3は、火災等により周囲温度が上昇して被覆材温度が所定発泡温度(好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃〜400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成するものである。熱発泡性被覆材層A3は、熱発泡性被覆材を固定部の表面に積層することにより形成できる。熱発泡性被覆材の構成成分としては、樹脂成分、難燃化剤、発泡剤、炭化剤、充填剤、及び必要に応じ各種添加剤等を含有するものが好適であり、これらは前述の熱発泡性耐火シート3と同様のものを使用できる。また、熱発泡性被覆材の態様としては、固定部の表面に積層可能なものであればよく、例えば、シート状、テープ状等の乾式被覆材、または塗材等の湿式被覆材のいずれの態様のものも使用できる。熱発泡性被覆材を固定部の表面(好ましくは押え板A1の表面)に積層する方法としては、例えば、シート状、テープ状等の乾式熱発泡性被覆材を、接着剤(粘着剤)等を介して貼着する方法、あるいは塗材等の湿式熱発泡性被覆材を塗付・乾燥する方法等が挙げられる。熱発泡性被覆材層A3の厚みは、適宜設定すればよいが、好ましくは0.2〜10mm(より好ましくは0.3〜6mm)である。
<被覆構造体>
本発明の被覆構造体の一例を図7に示す。
図7は、本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。図7では、構造材1の下方に設けられたH型鉄骨2と、熱発泡性シート3とを有し、構造材1に接した面を除くH型鉄骨2の周囲を、空気層4を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部が構造材1に固定部材Aによって固定されている。
図8は、本発明被覆構造体の別の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。図8では、構造材1の下方に設けられたH型鉄骨2と、熱発泡性シート3とを有し、構造材1に接した面を除くH型鉄骨2の周囲を、空気層4を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部がH型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2dに固定部材Aによって固定されている。
図7、図8に示す本発明の被覆構造体では、H型鉄骨2の周囲を覆う熱発泡性シート3が、構造材1及び/または鉄骨2の上フランジエッジ部2dに、固定部材5で固定されている。火災等によって高温に晒された場合、H型鉄骨2の周囲を覆う様に設けられた熱発泡性シート3は、発泡し炭化断熱層を形成する。本発明では、特定の固定部材Aを使用することにより、この炭化断熱層を形成する過程、及び形成後において、熱発泡性シート3の撓み等の変形を抑制、さらには形成した炭化断熱層の脱落等を防止して均一な炭化断熱層を形成し、安定した耐熱保護性を得ることができる。
以下、本発明の被覆構造体の構成について具体的に説明する。
(被覆構造体の形成方法)
本発明の被覆構造体は、例えば、構造材1の下方に固定されたH型鉄骨2の周囲を、熱発泡性シート3を覆う様に被覆し、熱発泡性シート3の端部を構造材1及び/またはH型鉄骨2の上フランジエッジ2dに固定部材Aで固定する工程を含む方法によって形成することができる。
固定部材Aは、当該押さえ板A1の長手方向(L)を、鉄骨2の長手方向(L)に沿って固定することが好ましい。これにより、熱発泡性シート3を安定して固定することができ、火災等によって高温に晒された場合、熱発泡性シート3の撓み等の変形を抑制、さらには形成した炭化断熱層の脱落等を防止して均一な炭化断熱層を形成し、安定した耐熱保護性を得ることができる。
熱発泡性シート3の端部を構造材1及び/またはH型鉄骨2の上フランジエッジ2dに固定部材Aで固定する場合、固定部材Aの間隔(Ax)は、熱発泡性シート3を保持できれば特に限定されず、また固定部材Aの長径等によって適宜設定すればよいが、好ましくは50〜300mm(より好ましくは80〜200mm)の間隔で設置する。
また、H型鉄骨2の長手方向(L)に複数の熱発泡性シート3を設ける場合は、図9に示すように、該熱発泡性シート3同士は重なり部を有するように被覆(図9(I))しても、突き合わせて被覆(図9(II))してもよい。また、熱発泡性シート3同士重なり部5を有するように被覆する場合、重なり部5の熱発泡性シート3同士は固定されていることが好ましく、例えば、重なり部5の内側の熱発泡性シート31表面と外側の熱発泡性シート32裏面を接着剤等で固定(図10(I))、及び/または内側の熱発泡性シート31の表面に外側の熱発泡性シート32の端部を熱発泡性テープ等で貼着して固定(図10(II))することが好ましい。また、熱発泡性シート3同士を突き合わせて被覆する場合、突き合わせ部6には、熱発泡性テープ7を貼着することが好ましい(図11)。さらに、本発明の被覆構造では、上記のようにH型鉄骨2の下フランジ2bを覆う熱発泡性シート3が接着剤を介して固定されてもよい。
本発明の被覆構造体は、熱発泡性シート3を2枚以上積層して使用することができる。熱発泡性シート3を2枚以上積層する場合は、予め接着剤等で積層した熱発泡性シートを用いることもできるが、上記工程を繰り返し行えばよい。
さらに、本発明の被覆構造体は、必要に応じて、上記熱発泡性シート3の上(熱発泡層3aの外側)に化粧層を有することもできる。これにより、さらに美観性を高めることができ、耐水性、耐候性等を高めることもできる。化粧層としては、例えば、上塗材、シート(またはフィルム)材料等が使用できる、これらは透明層であっても着色層(模様層)であってもよい。具体的に、上塗材は、公知のコーティング材を塗付することによって形成することができ、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等のコーティング材を用いることができる。上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。また、シート(またはフィルム)材料としては、例えば、公知の各種樹脂シートを貼着することができる。
本発明は、上述のH型鉄骨同様にI型鉄骨にも適用可能である。
図12は、本発明で用いるI型鉄骨の断面図を示す。本発明のI型鉄骨21としては、断面がI字型であり、上フランジ21aと下フランジ21bを板状のウェブ21cにより連結して形成された態様のものが使用される。I型鉄骨21は、通常、フランジ内側に勾配がつけられている。
図13では、構造材1に設けられたI型鉄骨21と、構造材1に接した面を除くI型鉄骨21の周囲を、空気層4を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部が構造材1に固定部材Aによって固定されている。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(熱発泡性シート)
熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)100重量部、メラミン90重量部、ジペンタエリスリトール90重量部、ポリリン酸アンモニウム320重量部、酸化チタン100重量部を主成分とする混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練して熱発泡性シート用混練物を調製後、無機繊維シートに混練物を積層し圧延ローラーによってシート状に加工し、膜厚1.5mmの熱発泡性シート(450mm×1200mm)を作製した。
(試験例1)
図7に示すように構造材(床板:ALC板)にH型鉄骨(H400×200×8×13mm、長さ1200mm)を設置した。図2に準じて、作製した熱発泡性シート3の無機繊維シート側がH型鉄骨側となるように熱発泡性シート3の一方の端部を固定部材[図6(II)に示す固定部A12(押さえ板A1)の表面に上記熱発泡性シートを貼り付けた固定部材]で溶接(固定間隔5x=50mm)して固定し、さらに、H型鉄骨の周囲を熱発泡性シート3が覆う様に巻きつけ(熱発泡性シート同士の継ぎ目部分の重なり幅20mm)、熱発泡性シートのもう一方の端部も同様にして固定部材で固定したものを試験体とした。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行った。その結果、炭化断熱層は脱落することなく、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱性能を示した。
(試験例2)
試験例1において、熱発泡性シートを突き合わせて被覆し、図11に示すようにその突き合わせ部に熱発泡性テープを貼着した以外は、試験例1と同様にして試験体を作成した。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行った。その結果、炭化断熱層は脱落することなく、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱性能を示した。
A:固定部材
A12:固定部
A1:押さえ板
:押さえ板の長手方向
A1’:押さえ板バネ
A1’ :押さえ板バネの高さ
A1’ :押さえ板バネの変形幅
A2:止め具
A2a:頭部
A2b:脚部
A2c:先端
A2d:脚部(ネジ部)
A2 :止め具の長さ
A3:熱発泡性被覆材
:固定部材の間隔
1:構造材(床材)
2:H型鉄骨
2a:上フランジ
2b:下フランジ
2c:ウェブ
2d:エッジ部
:鉄骨の長手方向
21:I型鉄骨
21a:上フランジ
21b:下フランジ
21c:ウェブ
21d:エッジ部
3.熱発泡性シート
3a:熱発泡層
3b:補強材
4:空気層
5:重なり部
6:突き合わせ部
7:熱発泡性テープ

Claims (4)

  1. 鉄骨に熱発泡性シートを固定する固定部材であって、
    前記固定部材は、固定部、及び熱発泡性被覆材層を有し、
    前記固定部の表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする固定部材。
  2. 前記固定部は、押さえ板及び止め具を有し、
    前記押さえ板は平面形状が長尺形状であり、
    前記押さえ板及び/または前記止め具の表面に熱発泡性被覆材層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の固定部材。
  3. 前記押さえ板は、平面形状が長尺形状であり、その長径が30〜150mm、短径が5〜30mmであることを特徴とする請求項2に記載の固定部材。
  4. 鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体であって、
    前記熱発泡性シートは、前記鉄骨の周囲を覆う様に設けられ、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固定部材で固定されていることを特徴とする被覆構造体。


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