JP2020203992A - ホース用ゴム組成物及びホース - Google Patents

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Abstract

【課題】耐油性を維持したまま、従来のホースよりも、物理的特性及び製品耐久性を更に向上したホース及び、該ホースを製造可能なホース用ゴム組成物を提供する。【解決手段】極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分と、分子量300以上350以下の可塑剤と、含有量が、質量基準で、前記可塑剤の含有量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%CA)が15以上であるプロセスオイルと、カーボンブラックとを含有するホース用ゴム組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ホース用ゴム組成物及びホースに関する。
トラック、バスなどの自動車および鉄道車両などのブレーキとして利用されているエアブレーキ(空気式制動装置ともいう)は、空気圧のシステムにより作動するブレーキである。そのような空気圧のシステム中のエアは、ホースの中を伝送されるオイル媒体により制御されている。
一般に、オイル媒体が伝送されるこのようなホースは、内面ゴム層と、この内面ゴム層の外周面に配置した、補強層と、その補強層の外周面に配置した外面ゴム層とを備えた構造を有する。
このようなホースとして、例えば、耐油性および耐寒性がいずれも優れ、かつ、機械的物性の劣化が抑制されたホース内管用ゴム組成物を得ることを目的として、ホース内管用ゴム組成物の組成をアクリロニトリルブタジエンゴムを55質量%以上含有するゴム成分100質量部と、酸化チタン5〜20質量部とすることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、高い耐油性を備えたホースを得ることを目的として、ゴム組成物を、極性の異なる少なくとも2種類のゴム成分のブレンドであって、当該ブレンドの総質量に対する、極性の最も大きいゴム成分の質量の割合が50%より大きいブレンドと、分子量が350以下である粘度低下剤と、を含有する組成とすることが開示されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開2012−17757号公報 特開2015−227405号公報 特開2018−28103号公報
オイル媒体を使用するホースの内面ゴム層には、耐油性、引張破壊に対する強度、耐インパルス性能などが要求され、特に内面ゴム層は、オイル媒体に接触することから、高い耐油性が要求されるが、特許文献1〜3に記載のホースでは、機械的強度、耐油性、及び製品耐久性について、更なる性能向上が求められる。
本発明は、耐油性を維持したまま、物理的特性及び製品耐久性を更に向上したホース及び、該ホースを製造可能なホース用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の<1>〜<6>に関する。
<1> 極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分と、分子量300以上350以下の可塑剤と、含有量が、質量基準で、前記可塑剤の含有量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイルと、カーボンブラックとを含有するホース用ゴム組成物。
<2> 前記ゴム(A)は前記ゴム(B)よりも極性が高く、前記ゴム(A)の含有量(a)と前記ゴム(B)の含有量(b)の比(a:b)が、質量基準で、90:10〜55:45であり、
前記可塑剤の含有量(s)と前記プロセスオイルの含有量(p)との含有量の比(s:p)が、質量基準で、90:10〜55:45である、<1>に記載のホース用ゴム組成物。
<3> 前記可塑剤と前記プロセスオイルとを含む軟化成分の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、<1>又は<2>に記載のホース用ゴム組成物。
<4> 前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、70質量部以上100質量部以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のホース用ゴム組成物。
<5> 前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が35m/g以上60m/g以下、及びDBP吸油量が110cm/100g以上125cm/100g以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のホース用ゴム組成物。
<6> <1>〜<5>のいずれか1つに記載のホース用ゴム組成物を最内面層に用いたホース。
本発明によれば、耐油性を維持したまま、物理的特性及び製品耐久性を更に向上したホース及び、該ホースを製造可能なホース用ゴム組成物を提供することができる。
本発明に係るホースの一実施形態を示す、一部を断面とした斜視図である。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A〜B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(B<Aの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
<ホース用ゴム組成物>
本発明のホース用ゴム組成物は、極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分と、分子量300以上350以下の可塑剤と、含有量が前記可塑剤の含有量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%CA)が15以上であるプロセスオイルと、カーボンブラックとを含有する。
本発明のホース用ゴム組成物は、更に、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等を含んでもよい。
なお、以下、「分子量300以上350以下の可塑剤」を「本発明の可塑剤」と称することがある。「アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル」を「本発明のオイルと称することがある。
また、本発明において、「ゴム成分」は未加硫状態のゴムを指し、加硫状態のゴムは「加硫ゴム」と称する。
本発明のホース用ゴム組成物は、上記構成であることで、耐油性を維持したまま、物理的特性及び製品耐久性を更に向上したホースが得られる。かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
特許文献1〜3に示されるように、ホース用ゴム組成物では、耐油性に優れることからアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)及び、機械的強度に優れることからスチレン−ブタジエンゴム(SBR)が用いられる傾向にある。
しかし、NBRとSBRは、相分離構造を形成する非相溶系のブレンド系であることから混ざり合いにくい。特許文献2及び3では、相分離状態を制御するために、1種類の第3成分を併用して、ゴム成分の海島構造の均一性を高めているが、不十分であった。
特にオイルなどの媒体とホースとが接触した場合に、オイルが加硫ゴムに侵入することで、その加硫ゴム特性に影響を与える。その際に加硫ゴムの相分離状態の均一性が低い場合には、極性の低いオイル等の成分が、より極性の低いゴム相(SBR)に侵入し易い。これにより、該ゴム相に存在するカーボンブラックなどの補強機能を保持するための充填剤の補強性能に影響を与え、機械的特性などの耐久性能などが低下してしまうという問題があった。
これに対し、本発明のホース用ゴム組成物は、極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分に対して、分子量300以上350以下の可塑剤(本発明の可塑剤)及び、該可塑剤よりも質量が少なく、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル(本発明のオイル)を用いる。本発明のの可塑剤と本発明のオイルの組み合わせは、極性のバランスのとれた2つの第3成分として働き、極性の異なるブレンドゴムそれぞれの相にバランスよく混さり合うことから、それぞれのゴム相において適切な可塑化が行われると考えられる。その結果、加硫ゴムへのオイルの侵入等による加硫ゴムの機械特性及び耐久性低下が抑制され、耐油性を維持したまま、従来のホースよりも、物理的特性及び製品耐久性を更に向上されると考えられる。
以下、本発明のホース用ゴム組成物及びホースの詳細について説明する。
〔ゴム成分〕
本発明のホース用ゴム組成物は、極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分を含有する。
本発明におけるゴム成分の極性は、ゴム成分の分子構造に基づいて、Hansen法(C.M.Hansen, J. Paint Tech., 39, (505),p.104-117, (1967))により算出される溶解度パラメーター(以下、「SP値」という)(δ)をいう。より具体的には、δは、以下の式により算出される。
式中、ΔEは凝集エネルギーであり、Vはモル体積であり、添字d、pおよびhは、それぞれ、London分散力項、双極子力項および水素結合力項である。
また、本明細書における可塑剤のSP値も、上記Hansen法により算出したものをいう。
ゴム成分としては、特に限定されず、従来公知のゴム成分を用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴム;クロロブチルゴム、ブロモブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO/ECO)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)等の非ジエン系ゴムなどが挙げられるが、これらに限定されない。ゴム成分は、これらの中から極性の異なる少なくとも2種類を選択することができる。
また、例えば、分子中のアクリロニトリル等の官能基の含有量の違いによって極性が異なるNBRなどの場合、極性の大きいNBR及び極性の小さいNBRを、極性の異なるゴム成分として用いてもよい。
この他、例えば、特開2013−133386号公報に記載の共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体を用いてもよい。
ゴム成分は、ジエン系ゴムであることが好ましい。ジエン系ゴムは、硫黄加硫が可能であり、過酸化物加硫を主とする他のEPDMなどのゴムに比べて、破壊特性に優れるという利点を有する。
ゴム成分は、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性を向上する観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)の2種類のゴム成分を含むことが好ましい。
ゴム成分は、極性の異なるゴム成分を3種類以上混合して用いてもよいが、ゴム成分の極性差を大きくし、ゴム成分の明確な海島構造を形成して物性(機械的強度、耐油性、及び耐久性)のバランスを取る観点から、2種類のゴム成分のブレンドであることが好ましい。
ゴム成分が2種類のゴム成分からなるとき、極性の高いゴム成分(高極性ゴムと称することがある)は、極性の低いゴム成分(低極性ゴムと称することがある)よりも質量が多いことが好ましい。具体的には、高極性ゴムのゴム成分中の割合は、50質量%より大きいことが好ましい。高極性ゴムの割合が50質量%より大きいことにより、高極性ゴムが、ゴム組成物中で海相(連続相)となる、海島構造のモルフォロジー(微細構造)を形成することができると推測される。更に、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性をより向上する観点から、高極性ゴムと低極性ゴムとは、次の関係を有することが好ましい。
高極性ゴムをゴム(A)、低極性ゴムをゴム(B)としたとき、高極性ゴムであるゴム(A)の含有量(a)と、低極性ゴムであるゴム(B)の含有量(b)との比(a:b)は、質量基準で、90:10〜55:45であることが好ましく、80:20〜55:45であることがより好ましく、70:30〜55:45であることが更に好ましい。
ゴム成分がアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含む場合、ニトリル基を含むNBRの方が、SBRよりも極性が高いことから、ゴム(A)がNBR、ゴム(B)がSBRである。
〔分子量300以上350以下の可塑剤〕
本発明のホース用ゴム組成物は、軟化成分として、分子量300以上350以下の可塑剤(本発明の可塑剤)を含有する。
ホース用ゴム組成物が本発明の可塑剤を含むことで、海島構造のゴム成分、特に、高極性ゴムを可塑化し易い。
可塑剤の分子量が300以上350以下でないと、可塑剤をゴム組成物中に拡散しにくく、ホース等の加硫ゴムの耐油性を向上させることができない。本発明の可塑剤の分子量は、310以上345以下であることが好ましく、320以上344以下であることがより好ましい。
本発明の可塑剤としては、例えば、エステル結合(−COO−)を有しないポリエーテル化合物;ジブチルアジペートなどの脂肪族二塩基酸エステル;グリセリントリアセタートなどの酢酸エステル;ジブチルフタレートなどの芳香族エステル;トリメチルホスフェートなどの正リン酸エステル;N−ブチルベンゼンスルホンアミドなどのスルホンアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
エステル結合を有しないポリエーテル化合物としては、具体的には、例えば、一般式(1)〔R1(OR2)nOR3O(R2O)nR1〕表されるポリエーテル化合物が挙げられる。
ここで、一般式(1)中、各R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6個の直鎖または分岐のアルキル基であり、各R2は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6個の直鎖または分岐のアルキレン基であり、R3は、炭素原子数1〜6個の直鎖または分岐のアルキレン基であり、各nは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
一般式(1)で表されるポリエーテル化合物としては、例えば、5,8,11,13,16,19−ヘキサオキサトリコサン(分子量336)等が挙げられる。
この他、例えば、株式会社ジェイ・プラス製の商品名D931(分子量346)などのポリエーテルエステル化合物、株式会社ジェイ・プラス製の商品名JP120(分子量314)などの芳香族エステル、大八化学工業株式会社製の商品名TPP(分子量326)などのホスフェートも用いることができる。
本発明の可塑剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の可塑剤は、環境対応の観点から、芳香族エステル以外であることが好ましい。
本発明の可塑剤は、ホースの耐油性の観点から、エステル結合を有しないポリエーテル化合物、ポリエーテルエステル系化合物および脂肪族二塩基酸エステルから選択される1種以上であることが好ましい。
ホースなどの加硫ゴムの耐油性をより向上させる観点から、本発明の可塑剤は、エステル結合を有しないポリエーテル化合物であることが好ましい。
本発明の可塑剤は、ホース等の加硫ゴムの耐油性をより向上させる観点から、上記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物であることが好ましく、5,8,11,13,16,19−ヘキサオキサトリコサンであることがより好ましい。
これにより、ホースなどの加硫ゴムの耐油性をより向上させることができる。
また、本発明の可塑剤は、SP値が18(J/cm1/2以上であることが好ましく、18〜35(J/cm1/2であることがより好ましい。本発明の可塑剤のSP値が18(J/cm1/2以上であることにより、極性が適度に高く、海相を形成する高極性ゴムとの相溶性が高まり、加硫ゴム表面への可塑剤の析出が抑制される。本発明の可塑剤のSP値が35(J/cm1/2以下であることにより、極性が適度に低く、島相(非連続相)を形成する低極性のゴム成分との相溶性が高まり、島相の高い柔軟性、および高い破壊特性が得られる。
本発明のホース用ゴム組成物中の本発明の可塑剤の含有量は、後述するアロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル(本発明のオイル)よりも多ければ特に制限されず、所望の耐油性などの物性、用途、使用態様等に応じて適宜調節すればよい。
本発明のホース用ゴム組成物中の本発明の可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましい。本発明の可塑剤の含有量をゴム成分100質量部に対して30質量部以下とすることにより、耐油性に加えて、ホース等の加硫ゴムの製品耐久性能(耐インパルス性能)も優れたものとすることができる。本発明の可塑剤の含有量をゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上とすることにより、十分に耐油性を向上させやすい。
また、耐油性に加えて、引張破壊強度および製品耐久性能(耐インパルス性能)も優れることから、本発明のホース用ゴム組成物中の本発明の可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜20質量部であることがより好ましく、2〜10質量部であることがさらに好ましい。
〔アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル〕
本発明のホース用ゴム組成物は、軟化成分として、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル(本発明のオイル)を含有する。
ホース用ゴム組成物が本発明のオイルを含むことで、海島構造のゴム成分、特に、低極性ゴムを可塑化し易い。
プロセスオイルのアロマ系炭素含有量(%C)が15未満であると、本発明の可塑剤との極性のバランスが悪くなり、極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)の分散性が悪くなり、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性を向上することができない。
加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性をより向上する観点から、本発明のオイルのアロマ系炭素含有量(%C)は18以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、21以上であることが更に好ましい。本発明のオイルのアロマ系炭素含有量(%C)の上限は特に制限されないが、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性をより向上する観点から40以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましく、29以下であることが更に好ましい。
なお、本発明のオイルのアロマ系炭素含有量(%C)は、ASTM D2140に準拠した方法で測定される。
本発明のオイルは、例えば、高芳香族系油、ナフテン系油、アロマ系油、パラフィン系油等を用いることができる。中でも、アロマ系油、及びナフテン系油が好ましい。
また、%Cn(ナフテン系炭素含有量)は20以上であることが好ましい。
本発明のホース用ゴム組成物中の本発明のオイルの含有量は、既述の本発明の可塑剤よりも少なければ特に制限されないが、具体的には、次の範囲とすることが好ましい。
高極性ゴムであるゴム(A)の含有量(a)と、低極性ゴムであるゴム(B)の含有量(b)との比(a:b)を、質量基準で、90:10〜55:45をしたとき、本発明の可塑剤の含有量(s)と本発明のオイルの含有量(p)との含有量の比(s:p)が、質量基準で、90:10〜55:45であることが好ましい。本発明の可塑剤と本発明のオイルとの質量比を上記範囲とすることで、極性の異なるゴム成分に対して、本発明の可塑剤及び本発明のオイルを極性のバランスの取れた軟化成分とすることができ、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性をより向上することができる。
上記観点から、含有量の比(s:p)は、質量基準で、80:20〜55:45であることがより好ましく、70:30〜55:45であることが更に好ましい。
また、本発明のホース用ゴム組成物中の本発明のオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。本発明のオイルの含有量をゴム成分100質量部に対して20質量部以下とすることにより、耐油性に加えて、ホース等の加硫ゴムの製品耐久性能(耐インパルス性能)も優れたものとすることができる。本発明のオイルの含有量を、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上含有することにより、十分に耐油性を向上させやすい。
また、耐油性に加えて、引張破壊強度および製品耐久性能(耐インパルス性能)も優れることから、本発明のホース用ゴム組成物中の本発明のオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
(他の軟化成分)
以上のように、本発明のホース用ゴム組成物は、軟化成分として、少なくとも、本発明の可塑剤及び本発明のオイルを含む。
本発明のホース用ゴム組成物は、更に、これら以外の軟化成分を含んでいてもよいが、加硫ゴムの機械的強度、耐油性、及び耐久性を過度に低下させないため、本発明のホース用ゴム組成物中の、本発明の可塑剤及び本発明のオイルを含む軟化成分(全軟化成分)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、本発明のホース用ゴム組成物中の、全軟化成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上13質量部以下であることが好ましく、5質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。
〔カーボンブラック〕
本発明のホース用ゴム組成物は、補強性充填剤として、カーボンブラックを含有する。
ホース用ゴム組成物がカーボンブラックを含むことで、加硫ゴムの機械的強度及び耐久性が高くなる。
カーボンブラックの種類は、特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられる。
カーボンブラックは、加硫ゴムの機械的強度及び耐久性をより向上する観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が35m/g以上60m/g以下であり、かつDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)が110cm/100g以上125cm/100g以下であることが好ましい。
カーボンブラックのNSAが35m/g以上であることで、加硫ゴムの機械的強度及び耐久性をより向上することができる。また、カーボンブラックのNSAが60m/g以下であることでゴム組成物中のカーボンブラックの分散性に優れる。
上記観点より、カーボンブラックのNSAは、38m/g以上55m/g以下であることがより好ましく、40m/g以上50m/g以下であることが更に好ましい。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001(比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法)のA法によって求められる。
カーボンブラックのDBP吸油量が110cm/100g以上であることで、加硫ゴムの機械的強度及び耐久性をより向上することができる。また、ゴム組成物の加工性の観点から、カーボンブラックのDBP吸油量は125cm/100g以下が好ましい。
上記観点より、カーボンブラックのDBP吸油量は110cm/100g以上123cm/100g以下であることがより好ましく、112cm/100g以上120cm/100g以下であることが更に好ましい。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217−4:2001(オイル吸収量の求め方)によって求められる。
また、本発明のホース用ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、70質量部以上100質量部以下であることが好ましい。カーボンブラックの含有量をゴム成分100質量部に対して100質量部以下とすることにより、ゴム組成物の加工性を損ねにくい。カーボンブラックの含有量を、ゴム成分100質量部に対して70質量部以上含有することにより、機械的強度及び耐久性を向上させやすい。
同様の観点から、本発明のホース用ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、73〜95質量部であることがより好ましく、75〜90質量部であることがさらに好ましい。
(他の充填剤)
本発明のホース用ゴム組成物は、補強性充填剤として、カーボンブラック以外の他の充填剤を更に含有していてもよい。
他の充填剤としては、シリカ、アルミナ等の金属酸化物等が挙げられる。
〔その他の成分〕
本発明のホース用ゴム組成物には、上述したゴム成分、軟化成分及び充填剤の他に、所望の耐油性などの物性、用途、使用態様などに応じて、例えば、ゴム組成物において用いられている従来公知の、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤などの成分を添加してもよい。
〔ホース用ゴム組成物の調製方法〕
本発明のホース用ゴム組成物は、上記各成分を、たとえば、開放混合式の練りロール機、密閉混合式のバンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いて混練りすることにより調製することができる。
<ホース>
本発明のホースは、本発明のホース用ゴム組成物を最内面層に用いてなる。
図1に、本発明に係るホースの一実施形態を示す、一部を断面とした斜視図を示す。
ホース1は、例えば、図1に示すように、内面ゴム層2、補強層3、および外面ゴム層4を備え、上記ゴム組成物が最内層(内面ゴム層2)に用いられている。
ホースは、上記ゴム組成物を少なくとも最内層に用いればよく、例えば、図1において、内面ゴム層2に加えて、外面ゴム層4に上記ゴム組成物を用いてもよい。複数層に上記ゴム組成物を用いる場合、各層のゴム組成物の配合組成は同一でもよいし、異なっていてもよい。
ホースが伝送する媒体は、特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、オイル、冷媒ガスなどのガス(気体)、水などを媒体とすることができる。
上述したように、ホースは、高い耐油性を備えることから、オイル媒体の伝送に好適に使用することができる。
補強層の材料、構成は従来公知のホースの補強層のものを用いることができる。
補強層に使用する補強糸は、特に限定されず、従来公知の補強糸を使用することができる。補強糸は、例えば、スチールワイヤ、銅ワイヤ、アルミワイヤなどの金属ワイヤでもよいし、ビニロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、アラミドなどの合成繊維でもよく、これらの組み合わせでもよい。
ホースの補強糸が合成繊維であれば、柔軟性、軽量化、低コストの点で有利である。
補強層の種類は、巻回した補強糸を有するスパイラルタイプ、および編み上げした補強糸を有するブレードタイプのいずれかでもよいし、これらの組み合わせでもよい。
スパイラルタイプであれば、連続一貫生産が可能であり、また、ブレード製造工程が省略できるため、生産設備がコンパクトで低コストであるという利点がある。
一方、ブレードタイプであれば、耐圧性能に優れる。
ホースは、図1の態様に限定されず、図示しないが、内面ゴム層と外面ゴム層との2層構造でもよいし、図示しないが、補強層を2層とし、この2層の補強層の間に中間層(中間ゴム)を配置した5層構造でもよい。また、この5層構造の場合、中間層にも上記ゴム組成物を用いてもよい。
ホースの製造方法は、少なくとも最内層に上記ゴム組成物を用いること以外は特に限定されず、従来公知のホースの製造方法を用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
<ゴム組成物の調製及び加硫ゴムの製造>
表1及び2に示す配合組成のゴム組成物を調製した。次いで、各ゴム組成物を150℃、60分間、15MPaの条件でプレス加硫し、加硫ゴムを得た。
表1〜2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(ゴム成分)
・NBR:アクリロニトリル−ブタジエンゴム、日本ゼオン株式会社製の商品名「Nipol DN212」(結合アクリロニトリル量33.5%)、SP値20.1(J/cm1/2
・SBR:スチレン−ブタジエンゴム、JSR株式会社製の商品名「SBR#1500」、SP値17.3(J/cm1/2
(軟化成分)
・ヘキサオキサトリコサン(可塑剤):ホールスター社製の商品名「TP−90B
(5,8,11,13,16,19−ヘキサオキサトリコサン)(分子量336)
・プロセスオイル1:JXTGエネルギー株式会社製の商品名「スーパーオイル Y−22」
・プロセスオイル2:日本サン石油株式会社製の商品名「SUNTHENE 4240」
・プロセスオイル3:JXTGエネルギー株式会社製の商品名「ダイアナプロセスオイル A/O MIX」
・カーボンブラック:FEFグレード、東海カーボン株式会社製の商品名「シースト SO」
・老化防止剤:精工化学株式会社製の商品名「オゾノン6C」を含む老化防止剤
・加硫促進剤:大内新興化学工業製の商品名「ノクセラーCZ」を含む加硫促進剤
・加硫遅延剤:1% butyl oleate treated n-cyclohexylthiophthalimide
上記ゴム成分のSP値及び表2の「可塑剤の特性」欄に示す可塑剤のSP値は、既述のHansen法により算出した。
また、表2の「オイルの特性」欄に示すプロセスオイルのアロマ系炭素含有量(%C)は、カタログ値(メーカー測定値)である。
<評価>
得られた加硫ゴムについて、以下に示すように、引張特性、耐油性および製品耐久性(耐インパルス性)を評価した。結果を表2に示す。
1.引張特性
加硫ゴムから厚み2mmのゴムシートを作成して、JIS3号ダンベルに打ち抜いたものを試験片を作成し、JIS K 6251:2010に準拠して25℃にて引っ張り試験を行い、100%伸長時の引張応力(M100)を測定した。比較例1の引張破壊時の最大強度を100として、指数表示した。値が大きいほど、引張特性に優れることを表す。
2.耐油性
加硫ゴムから厚み2mmのゴムシートを作成して、JIS3号ダンベルに打ち抜いたものを試験片として、JIS3号試験油(IRM−903)に100℃、72時間の条件で浸せき試験を行い、体積変化率を測定し変化率に応じて○、×の指標で示した。なお、○の場合は体積変化率が57.5%以下であり耐油性に優れ、×の場合は体積変化率が57.5%より大きく耐油性が不十分であることを示している。
3.製品耐久性
比較例1と実施例1の加硫ゴムを内面ゴム層(最内層)に用いたホースの両端を加締めたものに鉱物油を封入し、温度:100℃、周波数:30cpm、圧力:2MPaのパルス加圧試験を行い、バーストするまでのパルス回数を測定した。そのときの比較例1のパルス回数を100として、指数表示した。値が大きいほど、製品耐久性能に優れることを表す。比較例2〜4、実施例2については、加硫ゴムを内面ゴム層(最内層)に用いたホースの両端を加締めたものに鉱物油を封入し、温度:100℃、周波数:30cpm、圧力:2MPaのパルス加圧試験を行い、バーストするまでのパルス回数を測定する場合の製品耐久性の指数値を示す。
表2より、分子量300以上350以下の可塑剤(ヘキサオキサトリコサン)と、可塑剤の質量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイル(プロセスオイル2、プロセスオイル3)とを含む実施例1及び2の加硫ゴムは、比較例1の加硫ゴムに対し、耐油性を維持したまま、引張破壊強度と製品耐久性が向上していることがわかる。
ヘキサオキサトリコサンを含んでいても、プロセスオイルのアロマ系炭素含有量(%C)が15未満のプロセスオイル1を含む比較例2及び3の加硫ゴムは、可塑剤がオイルより多くても、少なくても、加硫ゴムの耐油性及び製品耐久性に優れなかった。
ヘキサオキサトリコサンとプロセスオイル2との両方を含んでいても、量関係が実施例1と反対の比較例4も、加硫ゴムの耐油性及び製品耐久性に優れなかった。
以上より、極性の異なる少なくとも2種類のゴムを含むゴム成分と、分子量300以上350以下の可塑剤と、含有量が、質量基準で、前記可塑剤の含有量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイルと、カーボンブラックとを含有するホース用ゴム組成物は、耐油性を維持したまま、従来のホースよりも、物理的特性及び製品耐久性を更に向上した加硫ゴムが得られることから、かかる加硫ゴムを適用したホースは、耐油性を維持したまま、従来のホースよりも、物理的特性及び製品耐久性を更に向上すると考えられる。
本発明に係るホース用ゴム組成物を用いて製造されるホースは、耐油ホースに好適に利用可能であり、エアブレーキの耐油ホースに特に好適に利用可能である。
1 ホース
2 内面ゴム層
3 補強層
4 外面ゴム層

Claims (6)

  1. 極性の異なるゴム(A)及びゴム(B)を含むゴム成分と、
    分子量300以上350以下の可塑剤と、
    含有量が、質量基準で、前記可塑剤の含有量よりも少なく、アロマ系炭素含有量(%C)が15以上であるプロセスオイルと、
    カーボンブラックと
    を含有するホース用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム(A)は前記ゴム(B)よりも極性が高く、前記ゴム(A)の含有量(a)と前記ゴム(B)の含有量(b)の比(a:b)が、質量基準で、90:10〜55:45であり、前記可塑剤の含有量(s)と前記プロセスオイルの含有量(p)との含有量の比(s:p)が、質量基準で、90:10〜55:45である、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
  3. 前記可塑剤と前記プロセスオイルとを含む軟化成分の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、請求項1または2に記載のホース用ゴム組成物。
  4. 前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、70質量部以上100質量部以下である、請求項1〜3にいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
  5. 前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が35m/g以上60m/g以下、及びDBP吸油量が110cm/100g以上125cm/100g以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホース用ゴム組成物を最内面層に用いたホース。
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