JP2020203253A - 塗膜作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体塗料を用いても乾燥工程が不要な、塗膜作製方法の提供。【解決手段】(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、(II)液体塗料供給部5より供給される液体塗料組成物を、作動ガス供給部2から供給され、加熱部3により加熱される作動ガスと接触させる工程と、(III)少なくとも樹脂を含む材料を、作動ガスによって吐出部4から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、を含み、(III)工程で、吐出時の作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法。【選択図】図1
Description
本発明は、塗膜作製方法に関する。
塗料は、通常、塗膜形成要素である樹脂と、溶剤とを含み、その他、塗膜への装飾性の付与のための顔料、塗膜の老化防止のための酸化防止剤などの各種添加剤を含む。
溶剤を含む液体塗料を塗った直後の膜は乾燥状態ではないため、塗布から乾燥までの間の液体塗料のはねおよび垂れ、ならびに乾燥していない塗膜への物または人の接触などの問題があり、乾燥工程が必要である。
加えて、液体塗料では、はねまたは垂れなどがあるため、塗装前に塗装対象の周囲を養生する必要もある。
ところで、フッ素樹脂などの樹脂粉末を溶射によって固体基材の表面に固着させる方法が知られており、この場合、溶剤を使わないため、乾燥工程は不要となる。
しかし、例えば、特許文献1では、このような溶射による方法では、樹脂であるフルオロポリマーを高温のガス燃焼で発生した火炎中で融解状態にしているため、過剰な熱負荷がかかり、樹脂の劣化が生じやすいという問題を指摘している。そして、この問題に対して、特許文献1では、樹脂粉末の表面にトリアジンチオール誘導体を結合させる処理を行なう粉末表面処理工程と、該粉末表面処理工程で処理された樹脂粉末を、コールドスプレー方法を用い、該樹脂粉末の融点より低い温度に加温したガスに投入し該ガスを亜音速ないし超音速流にして固体基材に対して噴射して該固体基材の表面に樹脂を付着する付着工程と、該付着工程で固体基材に付着された樹脂を加温処理する熱処理工程とを備える樹脂皮膜の形成方法を提案している。
しかし、特許文献1の方法でも、乾燥工程に相当する、基材に付着した樹脂を加温処理する熱処理工程が必要であり、処理時間は、30分以上が好ましいとされている。
また、例えば、内装塗装など建築塗装では、塗装の依頼人に指定された色での塗装を行うため、まず、少量の白色ベースの液体塗料に、その指定した色の塗料となるように顔料を含む着色剤を添加し、混合して着色した液体塗料を調製する(この作業を調色ともいう)。そして、その液体塗料を壁などの対象物に試し塗りして塗膜の色が指定された色であるかを確認する。塗膜の色が指定された色であれば、塗装対象物の全体に塗装するための量の液体塗料を調製する。
しかし、特許文献1のような樹脂粉末では、調色を行う場合に、液体塗料のように均一に混ざらず、調色が技術的に困難である。さらに、樹脂粉末を調色する装置ないし設備が普及していないため、液体塗料を調色するための装置ないし設備に代えて、樹脂粉末を調色するための装置ないし設備の導入が必要となる問題もある。
そこで、本発明は、液体塗料を用いても乾燥工程が不要な、塗膜作製方法を提供することを目的とする。
本発明に係る塗膜作製方法は、
(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、
(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程と、
(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、
を含み、
前記(III)工程で、吐出時の前記作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、前記吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法である。これにより、樹脂を含む液体塗料組成物を用いても、乾燥工程を行わなくとも、塗膜を作製することができる。
(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、
(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程と、
(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、
を含み、
前記(III)工程で、吐出時の前記作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、前記吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法である。これにより、樹脂を含む液体塗料組成物を用いても、乾燥工程を行わなくとも、塗膜を作製することができる。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記初速が50〜1000m/sである。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記(III)工程での前記作動ガスの温度が、100〜1000℃である。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記(II)工程を大気圧下で行う。
本発明によれば、液体塗料を用いても乾燥工程が不要な、塗膜作製方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、100〜1500℃は、100℃以上1500℃以下を意味する。
本明細書では、(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程、(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程、および(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程をそれぞれ、単に、(I)工程、(II)工程、および(III)工程ということがある。
(塗膜作製方法)
本発明に係る塗膜作製方法は、
(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、
(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程と、
(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、
を含み、
前記(III)工程で、吐出時の前記作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、前記吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法である。
本発明に係る塗膜作製方法は、
(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、
(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程と、
(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、
を含み、
前記(III)工程で、吐出時の前記作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、前記吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法である。
本発明に係る塗膜作製方法では、液体塗料組成物中の溶剤は、所定の温度の作動ガスと接触して、揮発することで熱による樹脂の劣化を抑制する。また、溶剤が揮発することで、乾燥工程が不要となる利点もある。
本発明に係る塗膜作製方法では、所定の初速で少なくとも樹脂を含む材料を吐出することにより、樹脂と作動ガスとの接触時間を短くして、熱による樹脂の劣化を抑制することができることに加え、樹脂と基材が衝突した際に、樹脂を緻密な塗膜とするのに必要な樹脂の運動エネルギーも得られ、乾燥工程がなくとも、塗膜を形成可能となる利点もある。
ところで、液体塗料を吹き付けで塗装する方法には、作動ガスによって塗料を霧状に噴出させるスプレー塗装と、塗料自体を加圧して霧状に噴出させるエアレススプレー塗装がある。しかし、これらの方法では、通常、吐出される塗料の初速が、100m/s以下であり、作動ガスの温度も常温程度であるため、単に液体塗料が霧状に噴出されて、液滴または樹脂微粒子が基材に付着して堆積するのみで、乾燥工程が必要であったり、連続した塗膜が得られないなどの問題がある。
さらに、液体塗料をこのような従来のスプレー塗装、エアレススプレー塗装、および刷毛による塗装などで塗装する場合、上述したように乾燥工程が必要であり、塗り重ねを行う場合、インターバルが必要となる。また、これらの従来の塗装方法では、液体塗料が垂れるため、厚膜を一回で塗装することができない。これに対して、本発明に係る塗膜作製方法では、乾燥工程が不要であるため、塗り重ねる場合のインターバルも不要で、塗膜作製をより効率的に行うことができる利点もある。加えて、本発明に係る塗膜作製方法では、塗装時の液体塗料の垂れも生じないため、厚膜を一回で塗装することができるという利点もある。さらには、本発明に係る塗膜作製方法では、乾燥工程が不要であるため、自然乾燥では水性塗料が乾燥しないような低温(例えば、氷点下)環境においても、塗膜を作製することができるという利点もある。
この他、吹き付けによって基材に皮膜を形成する方法には、溶射法およびコールドスプレー法がある。しかし、溶射分野およびコールドスプレー分野の当業者に明らかなように、溶射法およびコールドスプレー法は、金属粒子、サーメット、樹脂粉末などの粉末材料を用いることが技術常識である。溶射法については、例えば、特開2018−192382号公報では、「溶射法とは、皮膜材料を加熱により溶融もしくは軟化させ、当該皮膜材料を粒子状のまま加速し、基材表面に衝突させて、扁平に潰れた皮膜材料の粒子を凝固・堆積させることにより皮膜を形成するコーティング技術の一種である。」とある。また、コールドスプレー法については、例えば、特開2012−188677号公報では、「コールドスプレーとは、溶射用粉末の融点又は軟化温度よりも低い温度に加熱した作動ガスを超音速にまで加速し、その加速した作動ガスにより溶射用粉末を固相のまま高速で基材に衝突させることにより皮膜を形成する技術である。」とある。実際、特許文献1では、樹脂粉末をコールドスプレー法で噴射して、樹脂皮膜を形成することは記載されているが、樹脂を含む液体塗料を用いることについては、一切記載がない。
これに対して、本発明者は、溶剤を含む液体塗料組成物を所定の温度の作動ガスと接触させることで、上述したように、作動ガスと溶剤が、溶剤の揮発と熱に対する樹脂の保護において機能的に関連すること、加えて、少なくとも樹脂を含む材料を作動ガスによって所定の初速で吐出することで、上述したように、作動ガスと材料が、作動ガスの運動エネルギーの一部を樹脂の運動エネルギーに変換し、この運動エネルギーを利用して塗膜を形成することにおいて機能的に関連することを見出し、これらを利用して乾燥工程がなくとも塗膜を形成することに成功した。
以下、本発明に係る塗膜作製方法の(I)工程と(II)工程と(III)工程とを説明する。
・(I)工程
(I)工程では、樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する。本発明において、液体塗料組成物は、25℃において流動性を有する塗料組成物である。したがって、本発明において、液体塗料組成物は、溶液、ペースト状またはスラリー状のいずれであってもよい。
(I)工程では、樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する。本発明において、液体塗料組成物は、25℃において流動性を有する塗料組成物である。したがって、本発明において、液体塗料組成物は、溶液、ペースト状またはスラリー状のいずれであってもよい。
<樹脂>
樹脂は、塗料分野で公知の樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂などを挙げることができる。また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂、アルコキシシラン縮合物などの、無機成分を含む、または、無機成分からなる高分子化合物を用いることもできる。樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂は、塗料分野で公知の樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂などを挙げることができる。また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂、アルコキシシラン縮合物などの、無機成分を含む、または、無機成分からなる高分子化合物を用いることもできる。樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一実施形態では、樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である。
液体塗料組成物における樹脂の大きさは、特に限定されず、適宜調節すればよい。粒子状樹脂の場合、液体塗料組成物における当該粒子状樹脂の大きさは、例えば、10nm〜10μmである。樹脂は、後述する(III)工程の吐出時には溶剤の蒸発などによって凝集して吐出されることがあり、その場合、吐出時の凝集した樹脂の大きさは、1μm〜10mmとなることがある。
液体塗料組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、液体塗料組成物における樹脂の含有量は、液体塗料組成物の総質量に対して、0.1〜99.0質量%とすることができる。
一実施形態では、樹脂の含有量は、液体塗料組成物の全固形分量に対して、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%以上である。一実施形態では、樹脂の含有量は、液体塗料組成物の全固形分量に対して、100質量%以下、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下または40質量%以下である。
<溶剤>
溶剤としては、従来公知の塗料組成物の水または有機溶剤などの溶剤を適宜選択して用いることができる。溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤としては、従来公知の塗料組成物の水または有機溶剤などの溶剤を適宜選択して用いることができる。溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3−オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ミネラルスピリット、灯油などの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶剤などが挙げられる。
一実施形態では、溶剤は、水である。別の実施形態では、溶剤は、水、エタノールおよびキシレンからなる群より選択される1種以上である。
溶剤の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、液体塗料組成物における溶剤の含有量は、液体塗料組成物の総質量に対して、1.0〜99.9質量%とすることができる。一実施形態では、液体塗料組成物における溶剤の含有量は、液体塗料組成物の総質量に対して、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%以上である。一実施形態では、液体塗料組成物における溶剤の含有量は、液体塗料組成物の総質量に対して、99.9質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下または40質量%以下である。別の実施形態では、液体塗料組成物における溶剤の含有量は、液体塗料組成物の総質量に対して、30〜90質量%である。
溶剤を用いない場合、樹脂を含む塗料組成物を基材に衝突させて一応塗膜を形成することもできる場合もあるが、溶剤による保護がないため、樹脂が変色したり、変質したりするおそれがある。
<その他の成分>
液体塗料組成物は、樹脂と溶剤以外に、顔料、分散剤、造膜助剤、凍結防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤などの塗料組成物で使用されるその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液体塗料組成物は、樹脂と溶剤以外に、顔料、分散剤、造膜助剤、凍結防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤などの塗料組成物で使用されるその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液体塗料組成物における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、液体塗料組成物100質量部に対して、1〜99.9質量部、好ましくは20〜50質量部である。
一実施形態では、液体塗料組成物は、水性塗料組成物である。別の実施形態では、液体塗料組成物は、油性塗料組成物である。
<液体塗料組成物の調製方法>
塗料組成物の調製方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂と溶剤とを任意の混合装置を用いて撹拌して調製することができる。
塗料組成物の調製方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂と溶剤とを任意の混合装置を用いて撹拌して調製することができる。
また、液体塗料組成物を構成する2以上の成分を別個に塗装装置に供給して、装置内で混合して液体塗料組成物を準備してもよい。
・(II)工程
(II)工程では、液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる。これにより、液体塗料組成物中の溶剤の少なくとも一部が揮発し、また、作動ガスの運動エネルギーの一部が、樹脂または液体塗料組成物に付与される。
(II)工程では、液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる。これにより、液体塗料組成物中の溶剤の少なくとも一部が揮発し、また、作動ガスの運動エネルギーの一部が、樹脂または液体塗料組成物に付与される。
作動ガスとしては、公知の作動ガスを用いることができる。作動ガスとしては、例えば、空気、ヘリウム(He)ガス、窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガス、水蒸気(H2O)およびこれらの組合せなどが挙げられる。作動ガスは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(II)工程での作動ガスの温度は、例えば、100〜2000℃とすることができる。一実施形態では、(II)工程での作動ガスの温度は、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、850℃以上、900℃以上、950℃以上、1000℃以上、1100℃以上、1200℃以上、1300℃以上、1400℃以上、1500℃以上、1600℃以上、1700℃以上、1800℃以上、1900℃以上または2000℃である。一実施形態では、(II)工程での作動ガスの温度は、2000℃以下、1900℃以下、1800℃以下、1700℃以下、1600℃以下、1500℃以下、1400℃以下、1300℃以下、1200℃以下、1100℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下、800℃以下、750℃以下、700℃以下、650℃以下、600℃以下、550℃以下、500℃以下、450℃以下、400℃以下、350℃以下、300℃以下、250℃以下、200℃以下または150℃以下である。
一実施形態では、(II)工程での作動ガスの温度は、100℃以上かつ溶剤の発火温度未満である(ただし、作動ガスが水蒸気である場合を除く)。本明細書において、発火温度は、国際化学物質安全性カード(ICSC)に規定の発火温度である。
作動ガスの速度は、適宜調節すればよく、例えば、5〜2500m/sである。一実施形態では、(II)工程での作動ガスの速度は、5m/s以上、10m/s以上、20m/s以上、30m/s以上、40m/s以上、50m/s以上、60m/s以上、70m/s以上、80m/s以上、90m/s以上、100m/s以上、150m/s以上、200m/s以上、250m/s以上、300m/s以上、350m/s以上、400m/s以上、450m/s以上、500m/s以上、550m/s以上、600m/s以上、650m/s以上、700m/s以上、750m/s以上、800m/s以上、850m/s以上、900m/s以上、950m/s以上、1000m/s以上、1100m/s以上、1200m/s以上、1300m/s以上、1400m/s以上、1500m/s以上、1600m/s以上、1700m/s以上、1800m/s以上、1900m/s以上、2000m/s以上、2100m/s以上、2200m/s以上、2300m/s以上、2400m/s以上または2500m/sである。一実施形態では、(II)工程での作動ガスの速度は、2500m/s以下、2400m/s以下、2300m/s以下、2200m/s以下、2100m/s以下、2000m/s以下、1900m/s以下、1800m/s以下、1700m/s以下、1600m/s以下、1500m/s以下、1400m/s以下、1300m/s以下、1200m/s以下、1100m/s以下、1000m/s以下、950m/s以下、900m/s以下、850m/s以下、800m/s以下、750m/s以下、700m/s以下、650m/s以下、600m/s以下、550m/s以下、500m/s以下、450m/s以下、400m/s以下、350m/s以下、300m/s以下、250m/s以下、200m/s以下、150m/s以下、100m/s以下、90m/s以下、80m/s以下、70m/s以下、60m/s以下、50m/s以下、40m/s以下、30m/s以下、20m/s以下または10m/s以下である。
(II)工程での液体塗料組成物と作動ガスとの接触時間は、適宜調節すればよく、例えば、1μs〜1sである。
(II)工程は、大気圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。減圧下の場合、真空度は、適宜調節すればよく、例えば、1kPa〜100kPaとしてもよい。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記(II)工程を大気圧下で行う。
・(III)工程
(III)工程では、少なくとも樹脂を含む材料を、作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する。そして、(III)工程で、吐出時の作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである。
(III)工程では、少なくとも樹脂を含む材料を、作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する。そして、(III)工程で、吐出時の作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである。
(II)工程で液体塗料組成物を作動ガスと接触させることにより、液体塗料組成物中の溶剤の少なくとも一部が揮発する。そのため、溶剤がすべて揮発した場合、(III)工程では、溶剤以外の少なくとも樹脂を含む材料が、作動ガスによって吐出部から吐出される。溶剤の一部が揮発し、残りの溶剤が揮発しなかった場合、(III)工程では、少なくとも樹脂を含む材料として液体塗料組成物が、作動ガスによって吐出部から吐出される。
(III)工程での吐出時の作動ガスの温度は、100〜1500℃である。一実施形態では、(III)工程での吐出時の作動ガスの温度は、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、850℃以上、900℃以上、950℃以上、1000℃以上、1100℃以上、1200℃以上、1300℃以上、1400℃以上または1500℃である。一実施形態では、(III)工程での吐出時の作動ガスの温度は、1500℃以下、1400℃以下、1300℃以下、1200℃以下、1100℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下、800℃以下、750℃以下、700℃以下、650℃以下、600℃以下、550℃以下、500℃以下、450℃以下、400℃以下、350℃以下、300℃以下、250℃以下、200℃以下または150℃以下である。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記(III)工程での前記作動ガスの温度が、100〜1000℃である。
一実施形態では、(III)工程での作動ガスの温度は、100℃以上かつ溶剤の発火温度未満である(ただし、作動ガスが水蒸気である場合を除く)。
吐出部から吐出される少なくとも樹脂を含む材料の初速は、5〜2500m/sである。一実施形態では、(III)工程で吐出される少なくとも樹脂を含む材料の初速は、5m/s以上、10m/s以上、20m/s以上、30m/s以上、40m/s以上、50m/s以上、60m/s以上、70m/s以上、80m/s以上、90m/s以上、100m/s以上、150m/s以上、200m/s以上、250m/s以上、300m/s以上、350m/s以上、400m/s以上、450m/s以上、500m/s以上、550m/s以上、600m/s以上、650m/s以上、700m/s以上、750m/s以上、800m/s以上、850m/s以上、900m/s以上、950m/s以上、1000m/s以上、1100m/s以上、1200m/s以上、1300m/s以上、1400m/s以上、1500m/s以上、1600m/s以上、1700m/s以上、1800m/s以上、1900m/s以上、2000m/s以上、2100m/s以上、2200m/s以上、2300m/s以上、2400m/s以上または2500m/sである。一実施形態では、(III)工程で吐出される少なくとも樹脂を含む材料の初速は、2500m/s以下、2400m/s以下、2300m/s以下、2200m/s以下、2100m/s以下、2000m/s以下、1900m/s以下、1800m/s以下、1700m/s以下、1600m/s以下、1500m/s以下、1400m/s以下、1300m/s以下、1200m/s以下、1100m/s以下、1000m/s以下、950m/s以下、900m/s以下、850m/s以下、800m/s以下、750m/s以下、700m/s以下、650m/s以下、600m/s以下、550m/s以下、500m/s以下、450m/s以下、400m/s以下、350m/s以下、300m/s以下、250m/s以下、200m/s以下、150m/s以下、100m/s以下、90m/s以下、80m/s以下、70m/s以下、60m/s以下、50m/s以下、40m/s以下、30m/s以下、20m/s以下または10m/s以下である。
本発明に係る塗膜作製方法の一実施形態では、前記初速が50〜1000m/sである。
吐出部から吐出される少なくとも樹脂を含む材料の初速は、例えば、高速度カメラで、吐出を開始した時(t=0)から、基材に材料が最も早く衝突した時(t=i)までの時間を測定し、吐出部と基材との距離(d)をその時間(t=i)で割ることで求めることができる。ここで、基材に材料が最も早く衝突した時は、基材が材料(塗料)で着色した時としてもよい。あるいは、吐出部から吐出される少なくとも樹脂を含む材料の初速は、例えば、高速度カメラで、吐出部を一定時間撮影し、その時間内に吐出される材料のメジアン径(d50)を求め、そのメジアン径の材料の速度を高速度カメラの撮影画像から求めて、材料の初速とすることもできる。
吐出部から吐出された少なくとも樹脂を含む材料の基材との衝突時の速度は、例えば、5〜2500m/sまたは5〜1000m/sである。一実施形態では、吐出された少なくとも樹脂を含む材料の基材との衝突時の速度は、5m/s以上、10m/s以上、20m/s以上、30m/s以上、40m/s以上、50m/s以上、60m/s以上、70m/s以上、80m/s以上、90m/s以上、100m/s以上、150m/s以上、200m/s以上、250m/s以上、300m/s以上、350m/s以上、400m/s以上、450m/s以上、500m/s以上、550m/s以上、600m/s以上、650m/s以上、700m/s以上、750m/s以上、800m/s以上、850m/s以上、900m/s以上、950m/s以上、1000m/s以上、1100m/s以上、1200m/s以上、1300m/s以上、1400m/s以上、1500m/s以上、1600m/s以上、1700m/s以上、1800m/s以上、1900m/s以上、2000m/s以上、2100m/s以上、2200m/s以上、2300m/s以上、2400m/s以上または2500m/sである。一実施形態では、吐出された少なくとも樹脂を含む材料の基材との衝突時の速度は、2500m/s以下、2400m/s以下、2300m/s以下、2200m/s以下、2100m/s以下、2000m/s以下、1900m/s以下、1800m/s以下、1700m/s以下、1600m/s以下、1500m/s以下、1400m/s以下、1300m/s以下、1200m/s以下、1100m/s以下、1000m/s以下、950m/s以下、900m/s以下、850m/s以下、800m/s以下、750m/s以下、700m/s以下、650m/s以下、600m/s以下、550m/s以下、500m/s以下、450m/s以下、400m/s以下、350m/s以下、300m/s以下、250m/s以下、200m/s以下、150m/s以下、100m/s以下、90m/s以下、80m/s以下、70m/s以下、60m/s以下、50m/s以下、40m/s以下、30m/s以下、20m/s以下または10m/s以下である。
吐出部と基材との距離は、作動ガスの温度、吐出される材料の初速などに応じて適宜調節すればよい。吐出部と基材との距離は、例えば、1mm〜1mである。一実施形態では、吐出部と基材との距離は、10mm〜500mmである。好ましくは50mm〜300mmである。
基材は、特に限定されず、適宜選択することができる。基材としては、例えば、自動車、電車、バス、タクシーなどの車両;船;飛行機、ヘリコプターなどの航空機;戸建住宅、マンションなどの集合住宅、オフィスビル、公共施設、商業施設、研究施設、軍事施設、トンネルなどの建築物ないし建造物の壁面、床面、天井、屋根、柱、看板、電子看板(デジタルサイネージ)、ドア、門;橋;自動販売機;道路標識;信号;街灯;LED方式、液晶方式、電球方式などの電光掲示板;建築現場の建築材料、作業機械、建築機械;石碑;墓石;衣類;靴などの履物;傘などの雨具;包装材;メガネ、望遠鏡、カメラ、ビデオカメラなどのレンズ;鏡などが挙げられる。基材は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いる場合の例としては、壁面とドアとの組み合わせなどである。
基材の材料は、特に限定されず、適宜選択することができる。基材の材料としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどの有機ないしプラスチック材料;ガラス;ブリキ、ステンレス、鉄材、鋼材、銅材、金、銀、アルミニウムなどの金属;アスファルト;セラミック;コンクリート、モルタル、れんが、スレート、大理石などの石材;木材、合板などが挙げられる。基材の材料は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る塗膜作製方法を用いて作製された塗膜を有する物品としては、例えば、自動車、鉄道車両などの車両、航空機、船舶、建築物、家具、建具、窓ガラス、透明体(ケース、容器、樹脂板およびフィルムを含む)、電化製品などが挙げられる。
本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜は、乾燥工程が不要な状態である。本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜の乾燥状態としては、例えば、指触乾燥、半硬化乾燥、硬化乾燥または表面乾燥などが挙げられる。一実施形態では、本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜の乾燥状態は、指触乾燥である。ここで、指触乾燥は、JIS K 5500に規定の「塗った面の中央に軽く触れてみて、試料で指先が汚れない状態」をいう。
本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜は、乾燥工程が不要な状態であれば、微量の溶剤が含まれていてもよい。
本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜の固形分量は、例えば、塗膜の総質量に対して、60〜100質量%である。一実施形態では、得られる塗膜の固形分量は、塗膜の総質量に対して、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または95質量%以上である。一実施形態では、得られる塗膜の固形分量は、塗膜の総質量に対して、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下または65質量%以下である。
例えば、本発明に係る塗膜作製方法で得られる塗膜の固形分量が、塗膜の総質量に対して、80〜90質量%の場合、塗膜の表面がミクロなレベルで流動してレベリングしやすい利点がある。塗膜の表面のレベリングが不要な場合は、得られる塗膜の固形分量は、塗膜の総質量に対して、100質量%であってもよい。
本発明に係る塗膜作製方法では、本発明を実施するための機能を備えていれば、公知の溶射装置またはコールドスプレー装置を用いてもよい。これらの装置の従来、粉末材料を装填していた部分に、粉末材料に代えて、液体塗料組成物を装填して、塗装を行ってもよい。
例えば、公知の溶射装置またはコールドスプレー装置を用いて本発明の塗膜作製方法を行う場合、液体塗料組成物の流量は、0.01〜100(cc/秒)としてもよい。一実施形態では、公知の溶射装置またはコールドスプレー装置を用いて本発明の塗膜作製方法を行う場合、当該液体塗料組成物の流量は、0.01cc/秒以上、0.1cc/秒以上、1cc/秒以上、10cc/秒以上または100cc/秒である。一実施形態では、公知の溶射装置またはコールドスプレー装置を用いて本発明の塗膜作製方法を行う場合、当該液体塗料組成物の流量は、100cc/秒以下、10cc/秒以下、1cc/秒以下、0.1cc/秒以下または0.01cc/秒である。
また、例えば、公知の溶射装置またはコールドスプレー装置を用いて本発明の塗膜作製方法を行う場合、塗装環境(塗膜を作製する環境)の温度は、−50〜50℃としてもよい。
図1は、本発明に係る塗膜作製方法で用いることができる塗装装置の一例の構成を模式的に示した概念図である。この一例の塗装装置1は、作動ガス供給部2、加熱部3、吐出部4、液体塗料組成物供給部5および液体塗料組成物供給管6を含む。そして、この塗装装置1では、作動ガス供給部2から作動ガスが加熱部3に供給されて加熱され、その後、作動ガスは吐出部4に導入される。一方、液体塗料組成物供給部5から、液体塗料組成物が液体塗料組成物供給管6を通って吐出部4に供給される。そして、吐出部4で液体塗料組成物が作動ガスと接触する。次いで、少なくとも樹脂を含む材料が作動ガスによって、吐出部4から吐出される。
本発明において、図面は、塗装装置の構成を例示することを優先しており、図中の各構成の縮尺および構成間の距離は、正確ではない。
図1では、塗装装置1が、作動ガス供給部2、加熱部3、吐出部4、液体塗料組成物供給部5および液体塗料組成物供給管6を含む例を示したが、吐出部4以外の部分は、塗装装置1とは別のユニットないし装置としてもよい。例えば、塗装装置1から作動ガス供給部2および加熱部3を取り外し、公知のコールドスプレー装置の作動ガス供給ユニットおよび加熱ユニットを塗装装置1と組み合わせて使用してもよい。また、例えば、塗装装置1から液体塗料組成物供給部5および液体塗料組成物供給管6を取り外し、公知の液体塗料供給装置を塗装装置1と組み合わせて使用してもよい。
また、任意に、図1に示した2以上の部分を組み合わせてもよい。例えば、加熱部3と吐出部4を組み合わせて、加熱機能付き吐出部としてもよいし、作動ガス供給部2と加熱部3を組み合わせて、加熱機能付き作動ガス供給部としてもよい。
図2は、本発明に係る塗膜作製方法で用いることができる塗装装置の別の一例の構成を模式的に示した概念図である。この一例の塗装装置1は、吐出部4を含む。この図2では、作動ガス供給ユニット7、加熱ユニット8、液体塗料組成物供給管を含む液体塗料組成物供給ユニット9は、塗装装置1とは別の独立したユニットである。各ユニットの機能は、図1の各部の機能と同様である。
塗装装置の吐出部の内部の作動ガスおよび液体塗料組成物が移動する空間の形状は、特に限定されず、一定幅の矩形状または筒状でもよいし、吐出方向に沿って幅が異なる形状でもよい。一定幅の矩形状または筒状の形状の吐出部の場合、中塗り塗装の上などに模様を描く描画塗装にも好適に利用可能である。吐出方向に沿って幅が異なる形状の吐出部の場合、例えば、吐出側の端部の幅を広くすることで、大面積の塗装にも好適に利用可能である。
一定幅の矩形状または筒状の形状の吐出部の場合、吐出側の端部の幅は、例えば、2mm〜50mmでもよい。
吐出方向に沿って幅が異なる形状の吐出部の場合、吐出側の端部の幅は、例えば、2mm〜100mmでもよい。
図3は、本発明に係る塗膜作製方法で用いることができる塗装装置の別の一例の構成を模式的に示した概念図である。図1および図2では、吐出部4で、作動ガスと液体塗料組成物が接触するのに対し、図3では、吐出部4とは別部品の接触部10において、作動ガスと液体塗料組成物とが接触し、吐出部4へと移動する。
図4は、吐出部4の一例を拡大した模式図である。この吐出部4では、吐出方向に沿って幅が異なる形状を有する。そして、この吐出部4では、加熱された作動ガスが導入される部分P1の幅(紙面縦方向)に対して、吐出方向側のある部分P2の幅が狭く、かつ、部分P2の幅に対して、吐出側の部分P3の幅が広い。さらに、液体塗料組成物を供給するための液体塗料組成物供給管6は、部分P2の近傍部分のうち、部分P3側に連結されている。このような構成とすることにより、吐出部4内の最も幅の狭い部分P2で、作動ガスによる圧力が最も高くなる一方、吐出部4内の液体塗料組成物供給管6が位置する部分は、部分P2に比べて幅が広く、部分P2の圧力に対して圧力が低くなる。そのため、液体塗料組成物を吐出部4内に供給しやすいという利点がある。
本発明に係る塗膜作製方法では、上述した(I)工程、(II)工程および(III)工程以外の工程を任意に含んでいてもよい。
本発明に係る塗膜作製方法では、乾燥工程が不要、すなわち、乾燥工程が必要ではないが、塗膜の乾燥状態の変更、または塗膜に含まれる添加剤の機能の発現などのために、任意に公知の乾燥工程を含んでいてもよい。任意の乾燥工程としては、例えば、自然乾燥および加熱乾燥などが挙げられる。
塗膜の乾燥状態の変更としては、例えば、半硬化乾燥から硬化乾燥への乾燥状態の変更などが挙げられる。
塗膜に含まれる添加剤の機能の発現としては、例えば、特定の温度範囲で所定の色に変色する示温材料による変色などが挙げられる。このような示温材料としては、例えば、内外コーポレーション社製の「サーモペイント」などが挙げられる。
自然乾燥を行う場合、乾燥時間は、例えば、1秒〜72時間とすることができる。
加熱乾燥を行う場合、加熱温度は、例えば、40〜350℃とすることができる。加熱乾燥を行う場合、加熱時間は、例えば、1秒〜2時間とすることができる。
一実施形態では、本発明に係る塗膜作製方法は、乾燥工程を含まない。別の実施形態では、本発明に係る塗膜作製方法は、加熱乾燥工程を含まない。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例で使用した材料は以下のとおりである。
<樹脂>
エコフラット(登録商標)70:アクリル樹脂、日本ペイント社製
パワーバインド改:エポキシ樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製パワーバインド(登録商標)の溶剤をキシレンに変更したもの
オーデエコライン(登録商標):ポリエステル樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製
ビリューシア(登録商標)PL1000:ポリエステル樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製
<装置>
低圧コールドスプレー:コールドスプレー装置、型番DYMET 423
スプレー塗装装置:アネスト岩田社製、型番W−101
工業用ドライヤー:白光社製、型番FV310−81
<基材>
スレート板:TP技研社製、型番スレート板(297mm×210mm)
<作動ガス>
空気
<高速度カメラ>
フォトロン社製、型番AX200
<樹脂>
エコフラット(登録商標)70:アクリル樹脂、日本ペイント社製
パワーバインド改:エポキシ樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製パワーバインド(登録商標)の溶剤をキシレンに変更したもの
オーデエコライン(登録商標):ポリエステル樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製
ビリューシア(登録商標)PL1000:ポリエステル樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製
<装置>
低圧コールドスプレー:コールドスプレー装置、型番DYMET 423
スプレー塗装装置:アネスト岩田社製、型番W−101
工業用ドライヤー:白光社製、型番FV310−81
<基材>
スレート板:TP技研社製、型番スレート板(297mm×210mm)
<作動ガス>
空気
<高速度カメラ>
フォトロン社製、型番AX200
実施例1
アクリル樹脂と水と顔料とを含む液体塗料組成物として日本ペイント社製のエコフラット(登録商標)70を粘度測定器アネスト岩田社製NK−2で粘度約0.05Pa・sに水道水で希釈したものを準備した(液体塗料組成物100質量部に対して、塗料固形分量40質量部)。ノズル長140mmの丸(円筒)ノズルを備える低圧コールドスプレー装置(DYMET 423)を準備した。コールドスプレー装置の作動ガスとして、空気を用いた。コールドスプレー装置で、吐出部(ノズル先端)における吐出時の作動ガスの温度を350℃、圧力0.6MPaに設定した。コールドスプレー装置のノズル先端と、スレート板(基材)との距離を30mmとした。コールドスプレー装置に、液体塗料組成物を0.5cc/sで供給した。そして、液体塗料組成物を作動ガスと接触させ、少なくとも樹脂を含む材料を作動ガスによって吐出部から吐出して、スレート板に衝突させて塗膜を作製した。乾燥工程は行わなかった。拡大レンズを取り付けた高速度カメラで吐出部から吐出される速度の判別可能な粒子のサイズは約10μmで、その材料粒子(少なくとも樹脂を含む)の初速を測定すると800m/sであった。作製した塗膜の膜厚は110μmであった。
アクリル樹脂と水と顔料とを含む液体塗料組成物として日本ペイント社製のエコフラット(登録商標)70を粘度測定器アネスト岩田社製NK−2で粘度約0.05Pa・sに水道水で希釈したものを準備した(液体塗料組成物100質量部に対して、塗料固形分量40質量部)。ノズル長140mmの丸(円筒)ノズルを備える低圧コールドスプレー装置(DYMET 423)を準備した。コールドスプレー装置の作動ガスとして、空気を用いた。コールドスプレー装置で、吐出部(ノズル先端)における吐出時の作動ガスの温度を350℃、圧力0.6MPaに設定した。コールドスプレー装置のノズル先端と、スレート板(基材)との距離を30mmとした。コールドスプレー装置に、液体塗料組成物を0.5cc/sで供給した。そして、液体塗料組成物を作動ガスと接触させ、少なくとも樹脂を含む材料を作動ガスによって吐出部から吐出して、スレート板に衝突させて塗膜を作製した。乾燥工程は行わなかった。拡大レンズを取り付けた高速度カメラで吐出部から吐出される速度の判別可能な粒子のサイズは約10μmで、その材料粒子(少なくとも樹脂を含む)の初速を測定すると800m/sであった。作製した塗膜の膜厚は110μmであった。
実施例2〜5および比較例1〜4
液体塗料、樹脂、溶剤、塗装方法、吐出部から吐出される材料の初速、作動ガスの温度および作動ガスの吐出圧力を表1に示すように変更して、実施例1と同様に、塗膜の作製を行った。ただし、以下のように条件を変更した。比較例2では、工業用ドライヤーにノズルホルダーを取り付け、熱風吹き出し口から10mmの部分にシリンジおよびシリンジノズルでエコフラット70を0.5cc/sで供給し、霧化しながら塗装した。その際の吹き出し口の熱風の温度は80℃であった。比較例4では、スプレー塗装装置を用いて温度20℃で塗装を行い、乾燥を行わなかった。
液体塗料、樹脂、溶剤、塗装方法、吐出部から吐出される材料の初速、作動ガスの温度および作動ガスの吐出圧力を表1に示すように変更して、実施例1と同様に、塗膜の作製を行った。ただし、以下のように条件を変更した。比較例2では、工業用ドライヤーにノズルホルダーを取り付け、熱風吹き出し口から10mmの部分にシリンジおよびシリンジノズルでエコフラット70を0.5cc/sで供給し、霧化しながら塗装した。その際の吹き出し口の熱風の温度は80℃であった。比較例4では、スプレー塗装装置を用いて温度20℃で塗装を行い、乾燥を行わなかった。
評価
各実施例および比較例から得られた塗膜に対して、以下に記載するように、成膜性、塗膜の色および塗膜の乾燥状態について、評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。
各実施例および比較例から得られた塗膜に対して、以下に記載するように、成膜性、塗膜の色および塗膜の乾燥状態について、評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。
成膜性
塗膜を作製することができた場合を合格とし、一方、塗膜を作製することができなかった場合を不合格とした。
塗膜を作製することができた場合を合格とし、一方、塗膜を作製することができなかった場合を不合格とした。
塗膜の色
以下の基準で塗膜の色を評価した。基準AまたはBが合格である。
基準A:塗膜に変色がない
基準B:塗膜に変色がわずかに認められる
基準C:塗膜が変色している
以下の基準で塗膜の色を評価した。基準AまたはBが合格である。
基準A:塗膜に変色がない
基準B:塗膜に変色がわずかに認められる
基準C:塗膜が変色している
塗膜の乾燥状態
塗装直後(塗装終了後10秒以内)に、塗膜に指で触れて、以下の基準で塗膜の乾燥状態を評価した。基準AまたはBが合格である。
基準A:塗膜が指触乾燥している
基準B:指に乾燥した塗料の粉がわずかに付着する
基準C:指に乾燥していない塗料が付着する
塗装直後(塗装終了後10秒以内)に、塗膜に指で触れて、以下の基準で塗膜の乾燥状態を評価した。基準AまたはBが合格である。
基準A:塗膜が指触乾燥している
基準B:指に乾燥した塗料の粉がわずかに付着する
基準C:指に乾燥していない塗料が付着する
比較例1について、塗膜を作製することができず、成膜性が不合格であったため、塗膜の色と乾燥状態の評価は行わなかった。
比較例では、成膜性が不十分であったり、塗膜が変色したり、塗膜の乾燥状態が不十分であった。
実施例では、成膜性、塗膜の色および塗膜の乾燥状態のいずれでも良好な結果が得られた。
本発明によれば、液体塗料を用いても乾燥工程が不要な、塗膜作製方法を提供することができる。
1:塗装装置
2:作動ガス供給部
3:加熱部
4:吐出部
5:液体塗料組成物供給部
6:液体塗料組成物供給管
7:作動ガス供給ユニット
8:加熱ユニット
9:液体塗料組成物供給ユニット
10:接触部
2:作動ガス供給部
3:加熱部
4:吐出部
5:液体塗料組成物供給部
6:液体塗料組成物供給管
7:作動ガス供給ユニット
8:加熱ユニット
9:液体塗料組成物供給ユニット
10:接触部
Claims (4)
- 塗膜作製方法であって、
(I)樹脂と溶剤とを含む液体塗料組成物を準備する工程と、
(II)前記液体塗料組成物を、作動ガスと接触させる工程と、
(III)少なくとも前記樹脂を含む材料を、前記作動ガスによって吐出部から吐出し、基材に衝突させて塗膜を作製する工程と、
を含み、
前記(III)工程で、吐出時の前記作動ガスの温度が100〜1500℃であり、かつ、前記吐出部から吐出される前記材料の初速が5〜2500m/sである、塗膜作製方法。 - 前記初速が50〜1000m/sである、請求項1に記載の塗膜作製方法。
- 前記(III)工程での前記作動ガスの温度が、100〜1000℃である、請求項1または2に記載の塗膜作製方法。
- 前記(II)工程を大気圧下で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜作製方法。
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