以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。第1実施形態では、本開示に係る車両用空調装置1を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用している。車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調や、バッテリ45等を含む機器の温度調整を行う。
そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行う運転モードとして、冷房モードと、除湿暖房モードと、暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気Wを冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却に伴い除湿された送風空気Wを再度加熱して車室内に吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気Wを加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1を参照して説明する。車両用空調装置1は、冷凍サイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路40と、機器側熱媒体回路50と、室内空調ユニット60と、制御装置70を有している。
初めに、車両用空調装置1における冷凍サイクル10について説明する。冷凍サイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。冷凍サイクル10は、圧縮機11と、水−冷媒熱交換器12と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、チラー15と、室内蒸発器16と、蒸発圧力調整弁17等を有している。冷凍サイクル10は、後述する各運転モードに応じて、冷媒回路の回路構成を切り替えることができる。
冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共に冷凍サイクル10を循環している。
圧縮機11は、冷凍サイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は車両前方側の駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、車両走行用の駆動力の発生或いは調整のために用いられる機器(例えば、モータジェネレータ)等の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12における冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体とを熱交換させる高温側熱交換部である。水−冷媒熱交換器12は、所謂、サブクール型の熱交換器によって構成されており、凝縮部12aと、レシーバ部12bと、過冷却部12cを有している。
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、高温側熱媒体回路20の熱媒体とを熱交換させて冷媒を凝縮させる凝縮用の熱交換部である。レシーバ部12bは、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を蓄える受液部である。過冷却部12cは、レシーバ部12bから流出した液相冷媒と、高温側熱媒体回路20の熱媒体とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。尚、水−冷媒熱交換器12は、加熱部の一部を構成する。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、冷媒分岐部13aの流入口側が接続されている。冷媒分岐部13aは、水−冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐する。冷媒分岐部13aは、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手である。冷媒分岐部13aでは、3つの流入出口の内の1つを流入口として用い、残りの2つを流出口として用いている。
冷媒分岐部13aの一方の流出口には、第1膨張弁14aを介して、チラー15における冷媒通路の入口側が接続されている。冷媒分岐部13aの他方の流出口には、第2膨張弁14bを介して、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。
第1膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時において、冷媒分岐部13aの一方の流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁14aは、絞り開度を変化させる弁体及び、弁体を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有する電気式の可変絞り機構である。第1膨張弁14aは、制御装置70から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。
第2膨張弁14bは、冷媒分岐部13aの他方の流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第2膨張弁14bの基本的構成は、第1膨張弁14aと同様である。第2膨張弁14bは、制御装置70から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。
第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bは、弁開度を全開にすることで冷媒減圧作用及び流量調整作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。更に、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bは、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bは、この全開機能及び全閉機能によって、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bは、冷凍サイクル10の回路構成を切り替える冷媒回路切替部としての機能を兼ね備えている。
そして、第1膨張弁14aの出口には、チラー15における冷媒通路の入口側が接続されている。チラー15は、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路40を循環する熱媒体とを熱交換させる低温側熱交換器である。チラー15は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって低温側熱媒体回路40の熱媒体を冷却する。即ち、チラー15は吸熱器の一例である。チラー15における冷媒通路の出口には、冷媒合流部13bの一方の流入口側が接続されている。
第2膨張弁14bの出口には、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風空気Wとを熱交換させる空気冷却用熱交換器である。室内蒸発器16は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気Wを冷却する。室内蒸発器16は、後述する室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
室内蒸発器16の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁17の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する蒸発圧力調整部である。
蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16の冷媒出口側の冷媒圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構である。これにより、本実施形態の蒸発圧力調整弁17では、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器16の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(例えば、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁17の出口には、冷媒合流部13bの他方の流入口側が接続されている。
冷媒合流部13bは、チラー15の冷媒通路から流出した冷媒の流れと蒸発圧力調整弁17から流出した冷媒の流れとを合流させる。冷媒合流部13bは、冷媒分岐部13aと同様の三方継手である。冷媒合流部13bでは、3つの流入出口のうち2つを流入口とし、残りの1つを流出口としている。冷媒合流部13bの流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、車両用空調装置1における高温側熱媒体回路20について説明する。高温側熱媒体回路20は、複合型熱交換器21、ヒータコア22等の構成機器を高温側熱媒体流路20aにて接続して構成されている。高温側熱媒体回路20は、各構成機器を介して熱媒体を循環させる高温側熱媒体回路である。高温側熱媒体回路20における熱媒体としては、エチレングリコール水溶液を採用している。
高温側熱媒体回路20には、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路、複合型熱交換器21の放熱部21aにおける熱媒体通路、ヒータコア22、電気ヒータ26、高温側ポンプ27、第1リザーブタンク28、高温側切替部30等が配置されている。
図1に示すように、高温側熱媒体回路20では、複合型熱交換器21の放熱部21aと、ヒータコア22と、高温側切替部30が、高温側熱媒体流路20aによって接続されている。又、複合型熱交換器21の放熱部21aと、ヒータコア22にそれぞれ並列な共通流路23が配置されている。共通流路23には、第1リザーブタンク28、高温側ポンプ27、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路、電気ヒータ26が配置されている。
高温側ポンプ27の吐出口には、水−冷媒熱交換器12における熱媒体通路の入口側が接続されている。高温側ポンプ27は、高温側熱媒体回路20における熱媒体を水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ圧送する。水−冷媒熱交換器12では、冷媒通路を流通する高圧冷媒の流れと熱媒体通路を流通する熱媒体の流れが対向流となっている。高温側ポンプ27は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
水−冷媒熱交換器12における熱媒体通路の出口側には、電気ヒータ26が配置されている。電気ヒータ26は、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体を加熱する加熱装置である。高温側熱媒体回路20では、電気ヒータ26として、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを採用している。電気ヒータ26の発熱量は、制御装置70から出力される制御電圧によって任意に制御することができる。
電気ヒータ26の下流側には、分岐部24の流入口側が接続されている。分岐部24は、高温側熱媒体回路20において、電気ヒータ26の下流側の熱媒体の流れを分岐する。分岐部24は、冷媒分岐部13a等と同様の三方継手であり、高温側熱媒体流路20aと共通流路23の接続部である。
分岐部24の一方の流出口には、高温側切替部30の第1電磁弁30aを介して、複合型熱交換器21における放熱部21aの熱媒体入口側が接続されている。又、分岐部24の他方の流出口には、高温側切替部30の第2電磁弁30bを介して、ヒータコア22の熱媒体入口側が接続されている。
第1電磁弁30aは、高温側熱媒体回路20において、複合型熱交換器21の放熱部21aへ流入する熱媒体の流量を調整する流量調整部である。第1電磁弁30aは、高温側熱媒体流路20aの通路断面積を変化させる弁体、及び弁体を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有する電気式の流量調整弁である。第1電磁弁30aは、制御装置70から出力される制御パルスによって、その作動が制限される。
第2電磁弁30bは、高温側熱媒体回路20において、ヒータコア22へ流入する熱媒体の流量を調整する流量調整部である。第2電磁弁30bの基本的構成は、第1電磁弁30aと同様である。第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bは、高温側熱媒体回路20において、複合型熱交換器21へ流入する熱媒体の流量に対するヒータコア22へ流入する熱媒体の流量の高温側流量日を調整する高温側流量比調整部である。
更に、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bは、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bと同様の全開機構及び全閉機構を有している。従って、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bは、高温側熱媒体回路20の回路構成を切り替える高温側切替部30を構成している。
複合型熱交換器21は、高温側熱媒体回路20の熱媒体と外気OAとを熱交換させる放熱部21aと、低温側熱媒体回路40等を循環する熱媒体と外気OAとを熱交換させる吸熱部21bとを一体的に構成した熱交換器である。放熱部21aにおける熱媒体出口側には、合流部25における一方の流入口側が接続されている。
複合型熱交換器21は、駆動装置室内の前方側に配置されている。そして、放熱部21aは吸熱部21bに対して車両前方側に配置されている。換言すると、放熱部21aは、外気OAの流れに関して、吸熱部21bの上流側に配置されている。
又、複合型熱交換器21には、図示しない外気ファンが配置されている。従って、複合型熱交換器21は、外気ファンによって送風される外気OAや、電気自動車の走行に伴って送風される外気OAとの熱交換を行うことができる。つまり、複合型熱交換器21は空気熱媒体熱交換器の一例である。
そして、複合型熱交換器21の放熱部21a及び吸熱部21bは、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっている。熱媒体と、空気(即ち、外気OA)とを熱交換させるタンクアンドチューブ型の熱交換器は、熱媒体を流通させる複数のチューブと、複数のチューブを流通する熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。そして、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブを流通する熱媒体と、隣り合うチューブ間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
図2に示すように、放熱部21aにおけるチューブ21atの間に形成される空気通路と、吸熱部21bにおけるチューブ21btの間に形成される空気通路には、熱交換フィン21cが配置されている。熱交換フィン21cは、一つの薄板状の金属部材により構成されている。熱交換フィン21cは、放熱部21aにおける熱媒体と外気OAとの熱交換を促進させると共に、吸熱部21bにおける熱媒体と外気OAとの熱交換を促進させる部材である。
そして、複合型熱交換器21では、熱交換フィン21cが、放熱部21aのチューブ21atと、吸熱部21bのチューブ21btの双方にろう付け接合されており、放熱部21aと吸熱部21bを連結している。これにより、複合型熱交換器21では、熱交換フィン21cを介して、放熱部21a側の熱媒体と、吸熱部21b側の熱媒体との間における伝熱可能に構成されている。
複合型熱交換器21の空気流れ上流側には、シャッター装置31が配置されている。シャッター装置31は、複合型熱交換器21へ流入する外気OAの流量を調整する。これにより、シャッター装置31は、複合型熱交換器21を流通する熱媒体と外気OAとの熱交換量を調整することができる。シャッター装置31は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ヒータコア22は、水−冷媒熱交換器12等で加熱された熱媒体と送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する加熱用熱交換部である。図1等に示すように、ヒータコア22は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。ヒータコア22の熱媒体出口側には、合流部25における他方の流入口側が接続されている。
合流部25は、複合型熱交換器21の放熱部21aから流出した熱媒体の流れと、ヒータコア22から流出した熱媒体の流れとを合流させる。合流部25は、冷媒合流部13b等と同様の三方継手である。
そして、合流部25の流出口側には、共通流路23の一端が接続されている。図1に示すように、共通流路23の他端は、分岐部24の流入口側に接続されている。高温側熱媒体回路20では、複合型熱交換器21とヒータコア22は、高温側熱媒体回路20における熱媒体の流れに対して並列に接続されている。
即ち、共通流路23は、高温側熱媒体回路20にて、複合型熱交換器21を介して循環する熱媒体と、ヒータコア22を介して循環する熱媒体の何れもが共通して流れる熱媒体流路である。共通流路23には、第1リザーブタンク28、高温側ポンプ27、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路、電気ヒータ26が、熱媒体の流れ上流側から順に配置されている。
第1リザーブタンク28は、高温側熱媒体回路20で余剰となっている熱媒体を貯留する高温側熱媒体回路用の貯留部である。高温側熱媒体回路20では、第1リザーブタンク28を配置することで、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体の液量低下を抑制している。
又、第1リザーブタンク28は、高温側熱媒体回路20内の高温側熱媒体量が不足した際に高温側熱媒体を補給するための熱媒体供給口を有している。そして、第1リザーブタンク28の熱媒体出口側には、高温側ポンプ27の吸入口側が接続されている。
次に、車両用空調装置1における低温側熱媒体回路40について説明する。低温側熱媒体回路40は、チラー15、複合型熱交換器21の吸熱部21b、バッテリ45を低温側熱媒体流路40a等で接続して構成され、各構成機器に対して熱媒体を循環させる熱媒体回路である。低温側熱媒体回路40の熱媒体としては、高温側熱媒体回路20と同様の熱媒体を採用できる。
図1に示すように、低温側熱媒体回路40には、チラー15の熱媒体通路、複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体通路、低温側ポンプ41、バッテリ45の熱媒体通路45a、低温側切替部43、第2リザーブタンク29等が配置されている。
そして、低温側熱媒体流路40aは、複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体通路と、チラー15の熱媒体通路を接続した環状の熱媒体流路である。低温側熱媒体流路40aには、低温側ポンプ41、第2リザーブタンク29、低温側切替部43の開閉弁43bが配置されている。
低温側ポンプ41の吐出口には、チラー15における熱媒体通路の入口側が接続されている。低温側ポンプ41は、低温側熱媒体回路40の熱媒体をチラー15の熱媒体通路の入口へ圧送する。低温側ポンプ41の基本的構成は、高温側ポンプ27と同様である。
チラー15では、冷媒通路を流通する低圧冷媒の流れと熱媒体流路を流通する熱媒体の流れが対向流となっている。従って、チラー15は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることで低温側熱媒体回路40の熱媒体を冷却することができる。
チラー15における熱媒体通路の出口には、低温側切替部43の開閉弁43bが、低温側熱媒体流路40aを介して接続されている。開閉弁43bは、低温側熱媒体回路40を流通する熱媒体の流量を調整する電気式の流量調整弁である。開閉弁43bの基本的構成は、上述した第1電磁弁30aと同様である。
開閉弁43bは、制御装置70からの制御信号に従って、低温側熱媒体流路40aを開閉する。これにより、開閉弁43bは、その動作によって、低温側熱媒体回路40の流路構成を切り替えることができる為、低温側切替部43を構成する。
開閉弁43bの流出口側には、複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体入口側が接続されている。従って、複合型熱交換器21の吸熱部21bは、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気ファンから送風された外気OAとを熱交換させることで、外気OAの熱を熱媒体に吸熱させることができる。
複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体出口側には、第2リザーブタンク29が接続されている。第2リザーブタンク29は、低温側熱媒体回路40で余剰となっている熱媒体を貯留する低温側熱媒体用の貯留部である。第2リザーブタンク29の基本的構成は、第1リザーブタンク28と同様である。そして、第2リザーブタンク29の熱媒体出口側には、低温側ポンプ41の吸入口側が接続されている。
図1に示すように、低温側熱媒体回路40には、迂回流路42が配置されている。迂回流路42の一端側は、開閉弁43bの流出口と複合型熱交換器21における吸熱部21bの入口を接続する低温側熱媒体流路40aに対して接続されている。一方、迂回流路42の他端部は、第2リザーブタンク29の流出口と低温側ポンプ41の吸入口を接続する低温側熱媒体流路40aに対して接続されている。
従って、車両用空調装置1は、迂回流路42を利用することによって、低温側熱媒体回路40の熱媒体を複合型熱交換器21の吸熱部21bを迂回するように循環させることができる。
そして、迂回流路42とバッテリ接続流路44の接続部には、低温側切替部43を構成する低温側三方弁43aが配置されている。低温側三方弁43aは、3つの流入出口を有する三方式の流量調整弁によって構成されている。
低温側三方弁43aにおける流入出口の一つは、迂回流路42を介して、開閉弁43bの流出口に接続されている。低温側三方弁43aにおける他の流入出口は、迂回流路42を介して、低温側ポンプ41の吸入口側に接続されている。そして、低温側三方弁43aの残りの流入出口には、バッテリ接続流路44の一端側が接続されている。
低温側三方弁43aは、流入口から流入した熱媒体の内、一方の流出口側へ流出させる熱媒体流量と、他方の流出口側へ流出させる熱媒体流量との流量比を連続的に調整できる。従って、低温側三方弁43aは、その動作によって低温側熱媒体回路40における流路構成を切り替えることができ、低温側切替部43の一部を構成する。
そして、低温側三方弁43aの一つの流入出口は、バッテリ接続流路44を介して、バッテリ45の熱媒体通路45aに接続されている。ここで、バッテリ45は、複数の電池セルを電気的に直列的あるいは並列的に接続することによって形成された組電池である。電池セルは、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)である。バッテリ45は、複数の電池セルを略直方体形状となるように積層配置して専用ケースに収容している。
この種の二次電池は、作動時(即ち、充放電時)に発熱する。二次電池は、低温になると化学反応が進行しにくく出力が低下しやすい。更に、二次電池は、高温になると劣化が進行しやすい。この為、二次電池の温度は、二次電池の充放電容量を充分に活用することのできる適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されていることが望ましい。
そこで、バッテリ45の専用ケースの内部には、熱媒体を流通させる熱媒体通路45aが形成されている。熱媒体通路45aは、専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した構成になっている。これにより、熱媒体通路45aは、全ての電池セルの有する熱を均等に吸熱することができる為、全ての電池セルについて均等に冷却可能な構成になっている。バッテリ45は冷却対象物の一例である。
そして、バッテリ45における熱媒体通路45aの他端側は、バッテリ接続流路44を介して、低温側ポンプ41の吐出口と開閉弁43bの流入口を接続する低温側熱媒体流路40aに接続されている。
従って、低温側熱媒体回路40によれば、低温側切替部43の動作を制御することで、チラー15で冷却された熱媒体を、バッテリ45の熱媒体通路45aを通過させることができる。これにより、車両用空調装置1は、バッテリ45を適切に冷却できる。
続いて、車両用空調装置1における機器側熱媒体回路50について説明する。機器側熱媒体回路50は、電気自動車に搭載された発熱機器51に生じる熱を活用する為の熱媒体回路である。機器側熱媒体回路50は、低温側熱媒体回路40の構成の一部を兼用して構成されている。機器側熱媒体回路50の熱媒体としては、上述した低温側熱媒体回路40等と同様の熱媒体を採用できる。
機器側熱媒体回路50は、機器側熱媒体流路50aと、発熱機器51と、機器側ポンプ52と、機器側三方弁53と、バイパス流路54とを有している。図1に示すように、機器側熱媒体流路50aの一端部は、複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体入口側の低温側熱媒体流路40aに接続されている。機器側熱媒体流路50aの他端部は、第2リザーブタンク29の流出口側の低温側熱媒体流路40aに対して接続されている。
そして、機器側熱媒体流路50aには、発熱機器51の熱媒体通路51aが配置されている。従って、発熱機器51は、複合型熱交換器21の吸熱部21bに対して並列に接続されている。
発熱機器51は、電気自動車に搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器によって構成されている。換言すると、発熱機器51は、発熱とは異なる目的の作動によって発熱し、その発熱量の制御が困難な機器である。
従って、発熱機器51は、発熱を目的として作動して、任意の熱量を発生させる電気ヒータ26のような加熱装置ではない。発熱機器51としては、所謂、パワーコントロールユニット(PCU)が採用されている。
発熱機器51であるパワーコントロールユニットには、例えば、インバータ、モータジェネレータ、トランスアクスル装置等が含まれている。そして、発熱機器51の熱媒体通路51aは、熱媒体を流通させることで、それぞれの構成機器を冷却できるように形成されている。
インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。又、トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。
そして、発熱機器51の熱媒体通路51aにおける入口側には、機器側ポンプ52の吐出口が接続されている。機器側ポンプ52は、機器側熱媒体回路50の熱媒体を発熱機器51の熱媒体通路51aにおける入口側へ圧送する。機器側ポンプ52の基本的構成は、高温側ポンプ27等と同様である。
図1に示すように、機器側ポンプ52の吸込口は、機器側熱媒体流路50aを介して、第1電磁弁30aの出口と第2リザーブタンク29の入口とを接続する低温側熱媒体流路40aに接続されている。
そして、発熱機器51の熱媒体通路51aにおける出口側には、機器側三方弁53の流入出口の1つが接続されている。機器側三方弁53は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
機器側三方弁53における別の流入出口は、機器側熱媒体流路50aを介して、複合型熱交換器21の吸熱部21bにおける熱媒体入口と合流部25とを接続する低温側熱媒体流路40aに対して接続されている。従って、機器側熱媒体回路50によれば、発熱機器51を通過した熱媒体を複合型熱交換器21の吸熱部21bに供給することができる。
ここで、機器側三方弁53のさらに別の流入出口は、バイパス流路54が接続されている。バイパス流路54は、熱媒体の流れに関して、複合型熱交換器21及び第2リザーブタンク29を迂回させる為の熱媒体流路である。バイパス流路54の他端側は、機器側ポンプ52の吸込口側に接続されている。
これにより、機器側熱媒体回路50は、機器側三方弁53の作動を制御することで、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流れを切り替えることができる。従って、機器側三方弁53は切替部の一例である。
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット60について、図3を参照して説明する。室内空調ユニット60は、車両用空調装置1において、冷凍サイクル10等によって温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット60は、送風空気Wの空気通路を形成するケーシング61を有している。ケーシング61の内部に形成された空気通路には、送風機62、室内蒸発器16、ヒータコア22等が配置されている。ケーシング61は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
図3に示すように、ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。内外気切替装置63の駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
送風機62の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器16及びヒータコア22が、送風空気Wの流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器16は、ヒータコア22よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
又、ケーシング61内には、冷風バイパス通路65が形成されている。冷風バイパス通路65は、室内蒸発器16を通過した送風空気Wを、ヒータコア22を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
室内蒸発器16の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア22の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。エアミックスドア64は、室内蒸発器16を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整する。エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号により、その作動が制御される。
ヒータコア22の送風空気流れ下流側には、混合空間66が設けられている。混合空間66では、ヒータコア22にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路65を通過してヒータコア22にて加熱されていない送風空気Wとが混合される。
更に、ケーシング61の送風空気流れ最下流部には、混合空間66にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す複数の開口穴が配置されている。そして、複数の開口穴は、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)を含んでいる。
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面に配置された窓ガラスの内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらの開口穴の上流側には、図示しない吹出モード切替ドアが配置されている。吹出モード切替ドアは、各開口穴を開閉することによって、空調風を吹き出す開口穴を切り替える。吹出モード切替ドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の制御系について、図4を参照して説明する。制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、制御装置70は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御装置70は、制御部の一例である。
制御対象機器には、圧縮機11と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、電気ヒータ26と、高温側ポンプ27と、第1電磁弁30aと、第2電磁弁30bと、シャッター装置31が含まれている。更に、制御対象機器には、低温側ポンプ41と、低温側三方弁43aと、開閉弁43bと、機器側ポンプ52と、機器側三方弁53と、送風機62が含まれている。
図4に示すように、制御装置70の入力側には、空調制御用のセンサ群が接続されている。空調制御用のセンサ群は、内気温センサ72a、外気温センサ72b、日射センサ72c、高圧センサ72d、蒸発器温度センサ72e、冷媒圧力センサ72f、空調風温度センサ72g、バッテリ温度センサ72hを含んでいる。制御装置70には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ72aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ72cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ72dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ72eは、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。冷媒圧力センサ72fは、チラー15の冷媒出口側の冷媒流路における冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出部である。空調風温度センサ72gは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
そして、バッテリ温度センサ72hは、バッテリ45の温度を検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ72hは、例えば、バッテリ45を構成する各電池セルの温度を検出する。
又、制御装置70の入力側には、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ73a〜第5熱媒体温度センサ73eが含まれている。
第1熱媒体温度センサ73aは、共通流路23が接続された分岐部24の入口部分に配置されており、共通流路23から流出する熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ73bは、ヒータコア22の流出口部分に配置されており、ヒータコア22を通過する熱媒体の温度を検出する。
第3熱媒体温度センサ73cは、複合型熱交換器21における吸熱部21bの熱媒体出口部分に配置されており、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサ73cは検出部の一例であり、複合型熱交換器21の吸熱部21bから流出する熱媒体の温度は、特定物理量の一例である。
第4熱媒体温度センサ73dは、チラー15における熱媒体通路の流入口部分に配置されており、チラー15に流入する熱媒体の温度を検出する。第5熱媒体温度センサ73eは、発熱機器51の熱媒体通路51aにおける流出口部分に配置されており、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出する熱媒体の温度を検出する。
車両用空調装置1は、第1熱媒体温度センサ73a〜第5熱媒体温度センサ73eの検出結果を参照して、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流れを切り替える。これにより、車両用空調装置1は、熱媒体を用いて、車両における熱を管理して有効に活用することができる。
更に、制御装置70の入力側には、操作パネル71が接続されている。操作パネル71には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置70には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル71における各種操作スイッチとしては、車室内の目標温度Tsetを設定する為の温度設定スイッチ等が含まれている。
尚、制御装置70では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、制御装置70のうち、複合型熱交換器21にて発熱機器51に生じた熱を外気OAに放熱する必要があるか否かを判定する構成は、放熱要否判定部70aである。制御装置70の内、複合型熱交換器21における吸熱部21bの除霜が必要であるか否かを判定する構成は、除霜判定部70bである。
そして、制御装置70の内、複合型熱交換器21の除霜の際に、熱媒体との熱交換器によって発熱機器51が結露する結露条件を満たすか否かを判定する構成は、機器結露判定部70cである。
制御装置70の内、複合型熱交換器21の除霜が完了したか否かを判定する構成は、除霜完了判定部70dである。又、制御装置70の内、複合型熱交換器21の除霜動作時において、バッテリ45を冷却する必要があるか否かを判定する構成は、冷却要否判定部70eである。
又、制御装置70の内、複合型熱交換器21の除霜に関する動作制御を行う構成は、除霜動作制御部75aである。後述するステップS1〜ステップS9を実行する制御装置70は、除霜動作制御部75aである。
そして、制御装置70の内、複合型熱交換器21の除霜からの復帰に関する動作制御を行う構成は、復帰動作制御部75bである。後述するステップS10〜ステップS12を実行する制御装置70は、復帰動作制御部75bである。
続いて、第1実施形態における車両用空調装置1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることによって、車室内の空調や、発熱機器51及び、バッテリ45等の温度調整を実現することができる。
具体的に、車両用空調装置1における複数の運転モードには、冷房冷却モード、除湿暖房モード、暖房モードが含まれており、暖房モードには、暖房蓄熱モード、暖房除霜モードが含まれている。以下、各運転モードについて説明する。
(a)冷房冷却モード
冷房冷却モードは、車室内の冷房を行うとともに、バッテリ45の冷却を行う運転モードである。冷房冷却モードでは、制御装置70が、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させる。更に、制御装置70は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。
又、制御装置70は、高温側熱媒体回路20の高温側ポンプ27を作動させる。更に、制御装置70は、高温側切替部30の第1電磁弁30aを全開状態とし、第2電磁弁30bを全閉状態とする。
そして、制御装置70は、低温側熱媒体回路40の低温側ポンプ41を作動させる。制御装置70は、低温側切替部43の開閉弁43bを全閉状態にすると共に、低温側三方弁43aの作動を制御して、チラー15の熱媒体通路から流出した熱媒体をバッテリ45の熱媒体通路45aに流入させる。
又、制御装置70は、機器側熱媒体回路50の機器側ポンプ52を作動させる。冷房冷却モードにおいて、制御装置70は、発熱機器51の温度が適正な温度範囲内に維持されるように、機器側三方弁53の作動を制御する。
具体的には、発熱機器51の温度が上昇した場合、制御装置70は、複合型熱交換器21側へ流出させる熱媒体流量を増加させるように、機器側三方弁53の作動を制御する。これにより、機器側熱媒体回路50を流通する熱媒体を介して、発熱機器51に生じた熱を複合型熱交換器21から外気OAへ放熱することができ、発熱機器51の温度を低下させることができる。
一方、発熱機器51の温度が低下した場合は、制御装置70は、バイパス流路54側へ流出させる熱媒体流量を増加させるように、機器側三方弁53の作動を制御する。これにより、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体を、バイパス流路54を介して、再び機器側ポンプ52の吸入口側へ戻すことができる。従って、発熱機器51に生じた熱を機器側熱媒体回路50に蓄熱すると共に、発熱機器51の自己発熱によって、発熱機器51を暖機することができる。
そして、制御装置70は、室内空調ユニット60の送風機62を作動させる。更に、制御装置70は、室内蒸発器16を通過した送風空気Wの全風量が冷風バイパス通路65を通過するように、エアミックスドア64を変位させる。
従って、冷房冷却モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12において、冷媒通路へ流入した高圧冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体へ放熱して過冷却液相冷媒となる。これにより、熱媒体通路を流通する熱媒体が加熱される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した過冷却液相冷媒の流れは、冷媒分岐部13aにて分岐される。冷媒分岐部13aにて分岐された一方の冷媒は、第1膨張弁14aにて減圧される。第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒は、チラー15の冷媒通路へ流入する。
チラー15において、冷媒通路へ流入した低圧冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、熱媒体通路を流通する熱媒体が冷却される。チラー15の冷媒通路から流出した冷媒は、冷媒合流部13bの一方の流入口へ流入する。
冷媒分岐部13aにて分岐された他方の冷媒は、第2膨張弁14bにて減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。室内蒸発器16へ流入した低圧冷媒は、送風機62から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発する。これにより、送風空気Wが冷却される。
室内蒸発器16から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17を介して、冷媒合流部13bの他方の流入口へ流入する。冷媒合流部13bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
又、冷房冷却モードの高温側熱媒体回路20では、高温側ポンプ27から圧送された熱媒体が、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入して加熱される。水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体は、電気ヒータ26、分岐部24及び高温側切替部30の第1電磁弁30aを介して、複合型熱交換器21の放熱部21aへ流入する。
複合型熱交換器21の放熱部21aにおいて、熱媒体は、シャッター装置31を介して複合型熱交換器21の放熱部21aを通過する外気OAに放熱する。これにより、高温側熱媒体回路20の熱媒体が冷却される。複合型熱交換器21の放熱部21aから流出した熱媒体は、合流部25及び第1リザーブタンク28を介して、高温側ポンプ27へ吸入されて再び圧送される。
又、冷房冷却モードの低温側熱媒体回路40では、低温側ポンプ41から圧送された熱媒体が、チラー15の熱媒体通路へ流入して冷却される。チラー15の熱媒体通路から流出した熱媒体は、バッテリ接続流路44を介して、バッテリ45の熱媒体通路45aへ流入する。
バッテリ45の熱媒体通路45aへ流入した熱媒体は、バッテリ45の電池セルから吸熱して温度上昇する。これにより、バッテリ45が冷却される。バッテリ45の熱媒体通路45aから流出した熱媒体は、低温側三方弁43a及び迂回流路42を介して、低温側ポンプ41へ吸入されて再び圧送される。
そして、冷房冷却モードの室内空調ユニット60では、室内蒸発器16を通過して冷却された送風空気Wが車室内へ送風される。これにより、車室内の冷房が実現される。
冷房冷却モードでは、上記の如く、車室内の冷房及びバッテリ45の冷却が実現される。更に、冷房冷却モードにおいて、バッテリ45の冷却が不要となる運転条件では、制御装置70が第1膨張弁14aを全閉状態として単独冷房モードを実行してもよい。又、冷房冷却モードにおいて車室内の冷房が不要となる運転条件では、制御装置70が第2膨張弁14bを全閉状態として単独冷却モードを実行してもよい。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、車室内の除湿暖房を行う運転モードである。除湿暖房モードでは、制御装置70が、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させる。更に、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。
又、制御装置70は、高温側熱媒体回路20の高温側ポンプ27を作動させる。そして、制御装置70は、高温側切替部30の第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bを、それぞれ流量調整状態とする。更に、制御装置70は、ヒータコア22から流出した熱媒体の温度が、予め定めた基準ヒータコア出口側温度以上になるように、電気ヒータ26の加熱能力を調整する。
そして、制御装置70は、低温側熱媒体回路40における低温側ポンプ41を停止させる。
又、制御装置70は、機器側熱媒体回路50の機器側ポンプ52を作動させる。除湿暖房モードにおいても、制御装置70は、冷房冷却モードと同様に、発熱機器51の温度が適正な温度範囲内に維持されるように、機器側三方弁53の作動を制御する。
制御装置70は、室内空調ユニット60の送風機62を作動させる。更に、制御装置70は、車室内へ送風される送風空気Wの温度が目標吹出温度TAOに近づくように、エアミックスドア64を変位させる。目標吹出温度TAOは、上述したセンサ群の検出信号及び操作パネル71の操作信号を用いて算定される。
従って、除湿暖房モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した高圧冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体へ放熱して過冷却液相冷媒となる。これにより、水−冷媒熱交換器12においては、冷房冷却モードと同様に、熱媒体通路を流通する熱媒体が加熱される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した過冷却液相冷媒は、冷媒分岐部13aを介して、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。
室内蒸発器16へ流入した低圧冷媒は、送風機62から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器16へ流入した送風空気Wが冷却されて除湿される。室内蒸発器16から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部13bを介して圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
又、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路20では、高温側ポンプ27から圧送された熱媒体が、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入して加熱される。水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体の流れは、電気ヒータ26を介して、分岐部24へ流入して分岐される。
高温側熱媒体回路20において、分岐部24で分岐された一方の熱媒体は、第1電磁弁30aを介して、複合型熱交換器21の放熱部21aへ流入する。複合型熱交換器21の放熱部21aへ流入した熱媒体は、シャッター装置31を介して放熱部21aへ流入した外気OAに放熱する。これにより、高温側熱媒体回路20の熱媒体が冷却される。複合型熱交換器21の放熱部21aから流出した熱媒体は、合流部25の一方の流入口へ流入する。
一方、分岐部24にて分岐された他方の熱媒体は、第2電磁弁30bを介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した熱媒体は、室内蒸発器16にて冷却された送風空気Wの少なくとも一部に放熱する。これにより、送風空気Wの少なくとも一部が再加熱される。ヒータコア22から流出した熱媒体は、合流部25の他方の流入口へ流入する。
高温側熱媒体回路20において、合流部25から流出した熱媒体は、第1リザーブタンク28を介して、高温側ポンプ27へ吸入されて再び圧送される。
そして、除湿暖房モードの室内空調ユニット60では、室内蒸発器16にて除湿された送風空気Wの少なくとも一部が、ヒータコア22にて加熱される。そして、エアミックスドア64の開度調整によって、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された送風空気Wが車室内へ送風される。これにより、車室内の除湿暖房が実現される。
(c)暖房モード
暖房モードは、車室内の暖房を行う運転モードである。車両用空調装置1は、暖房モードの具体的な運転モードとして、暖房蓄熱モード、暖房放熱モード、暖房除霜モード等の運転モードを有している。以下の説明では、先ず、暖房モードにおける通常運転モードである暖房蓄熱モードについて説明する。暖房蓄熱モードは、車室内の暖房を行うと同時に、発熱機器51に生じた熱を機器側熱媒体回路50にて蓄熱しておく運転モードである。
暖房蓄熱モードでは、制御装置70が、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させる。更に、制御装置70は、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを全閉状態とする。
又、制御装置70は、高温側熱媒体回路20の高温側ポンプ27を作動させる。更に、制御装置70は、高温側切替部30の第1電磁弁30aを全閉状態とし、第2電磁弁30bを全開状態とする。
更に、制御装置70は、ヒータコア22から流出した熱媒体の温度が、予め定めた基準ヒータコア出口側温度以上となるように、電気ヒータ26の加熱能力を調整する。基準ヒータコア出口側温度は、ヒータコア22にて加熱された送風空気Wの温度が車室内の充分な暖房を実現できるように決定されている。この為、熱媒体の温度が基準ヒータコア出口側温度を超えている場合は、制御装置70は、電気ヒータ26に電力を供給しない。
そして、制御装置70は、低温側熱媒体回路40の低温側ポンプ41を作動させる。更に、制御装置70は、低温側切替部43の開閉弁43bを全開状態にすると共に、低温側三方弁43aの作動を制御して、チラー15の熱媒体通路から流出した熱媒体を複合型熱交換器21の吸熱部21bへ流入させる。
暖房蓄熱モードの機器側熱媒体回路50について、制御装置70は、機器側ポンプ52を作動させる。そして、制御装置70は、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体がバイパス流路54を通過するように、機器側三方弁53の作動を制御する。この時、機器側熱媒体回路50における熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51の熱媒体通路51a、機器側三方弁53、バイパス流路54、機器側ポンプ52の順に流れ、機器側熱媒体回路50を循環する。
そして、制御装置70は、室内空調ユニット60の送風機62を作動させる。更に、制御装置70は、室内蒸発器16を通過した送風空気の全風量がヒータコア22を通過するように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。
従って、暖房蓄熱モードの冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12において、冷媒通路へ流入した高圧冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体へ放熱して過冷却液相冷媒となる。これにより、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路を流通する熱媒体が加熱される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した過冷却液相冷媒は、冷媒分岐部13aを介して、第1膨張弁14aへ流入して減圧される。第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒は、チラー15の冷媒通路へ流入する。
チラー15において、冷媒通路へ流入した低圧冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、低温側熱媒体回路40では、チラー15の熱媒体通路を流通する熱媒体が冷却される。チラー15の冷媒通路から流出した冷媒は、冷媒合流部13bを介して圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
又、暖房蓄熱モードの高温側熱媒体回路20では、図5等に示すように、高温側ポンプ27から圧送された熱媒体は、水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入して加熱される。水−冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体は、電気ヒータ26、分岐部24及び第2電磁弁30bを介して、ヒータコア22へ流入する。
ヒータコア22へ流入した熱媒体は、送風機62から送風された送風空気Wに放熱する。これにより、送風空気Wが加熱される。ヒータコア22から流出した熱媒体は、合流部25及び第1リザーブタンク28を介して、高温側ポンプ27へ吸入されて再び圧送される。
又、暖房蓄熱モードの低温側熱媒体回路40では、図5に示すように、低温側ポンプ41から圧送された熱媒体は、チラー15の熱媒体通路へ流入して、冷媒通路を通過する低圧冷媒の蒸発に伴う吸熱作用によって冷却される。チラー15の熱媒体通路から流出した熱媒体は、低温側切替部43の開閉弁43bを介して、複合型熱交換器21の吸熱部21bへ流入する。
複合型熱交換器21において、吸熱部21bへ流入した熱媒体は、放熱部21aを通過した外気OAから吸熱して温度上昇する。吸熱部21bから流出した熱媒体は、第2リザーブタンク29を介して、低温側ポンプ41へ吸入されて再び圧送される。
これにより、低温側熱媒体回路40によれば、熱媒体の循環によって、複合型熱交換器21の吸熱部21bで外気OAから吸熱した熱を、チラー15にて低圧冷媒に吸熱させることができる。この時の低温側熱媒体回路40における熱媒体の流れは、第1態様の流量構成の一例である。
暖房蓄熱モードの機器側熱媒体回路50では、図5に示すように、機器側ポンプ52から圧送された熱媒体は、発熱機器51の熱媒体通路51aへ流入する。熱媒体通路51aへ流入すると、熱媒体は、発熱機器51の作動によって生じた排熱によって加熱される。
発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体は、機器側三方弁53及びバイパス流路54を介して、機器側ポンプ52へ吸入されて再び圧送される。これにより、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に対して、発熱機器51の排熱が蓄熱される。
又、暖房蓄熱モードの室内空調ユニット60では、ヒータコア22を通過して加熱された送風空気Wが車室内へ送風される。これにより、車室内の暖房が実現される。
暖房蓄熱モードの低温側熱媒体回路40では、複合型熱交換器21の吸熱部21bにおいて、外気OAの熱が熱媒体に対して吸熱される。外気OAから吸熱した熱媒体は、低温側熱媒体回路40を循環する過程で、チラー15に流入して、冷凍サイクル10の低圧冷媒によって吸熱される。
そして、チラー15で冷媒に吸熱された熱は、冷凍サイクル10によって汲み上げられて、水−冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体回路20の熱媒体に放熱される。高温側熱媒体回路20の熱媒体は、電気ヒータ26等を介して、ヒータコア22に流入して、送風機62によって送風された送風空気Wと熱交換する。つまり、車両用空調装置1の暖房蓄熱モードによれば、車室内暖房の熱源として、外気OAを利用することができる。
上述したように、暖房モードの具体的な運転モードには、暖房放熱モードが含まれている。暖房放熱モードは、車室内の暖房を行うと同時に、発熱機器51に生じた熱を外気に放熱する運転モードである。暖房放熱モードは、暖房蓄熱モードにて発熱機器51の温度が上昇した場合に切り替えられる運転モードである。
暖房放熱モードでは、機器側熱媒体回路50の作動が暖房蓄熱モードと異なっている。つまり、冷凍サイクル10等の作動については、基本的に暖房蓄熱モードと同様である。暖房放熱モードにおいて、制御装置70は、機器側三方弁53の作動を制御して、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体を複合型熱交換器21の吸熱部21bに流入させる。
これにより、暖房放熱モードの熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51の熱媒体通路51a、機器側三方弁53、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、機器側ポンプ52の順に流れて、機器側熱媒体回路50を循環する。
この結果、機器側熱媒体回路50において、熱媒体は、発熱機器51の熱媒体通路51aに流入すると、発熱機器51の排熱によって加熱される。発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体は、複合型熱交換器21に流入して、外気OAに放熱する。
従って、暖房放熱モードによれば、車室内の暖房を実現すると同時に、機器側熱媒体回路50を流通する熱媒体を介して、発熱機器51に生じた熱を複合型熱交換器21から外気OAへ放熱して、発熱機器51の温度を低下させることができる。
上述したように、車両用空調装置1における暖房蓄熱モードでは、暖房熱源として外気OAを利用することができる。ここで、外気OAが低温高湿度である場合には、複合型熱交換器21にて外気OAから吸熱する際に、複合型熱交換器21の表面が着霜してしまうことが想定される。
複合型熱交換器21に着霜が生じてしまうと、熱媒体と外気OAの間における熱交換性能を大きく低下させてしまう為、車両用空調装置1における暖房性能の低下要因になると考えられる。
又、暖房蓄熱モードにおいて、複合型熱交換器21の除霜を適切なタイミングで行うことができない場合、機器側熱媒体回路50における熱媒体の温度調整に影響を及ぼすことが想定される。そして、熱媒体は発熱機器51の熱媒体通路51aを通過する為、熱媒体の温度は、発熱機器51の作動に対しても影響を及ぼすことが考えられる。
そこで、車両用空調装置1では、暖房モードの制御内容について、複合型熱交換器21の除霜の適正化と共に、発熱機器51の保護を図るように構成している。以下、車両用空調装置1の暖房モードで実行される制御内容について、図面を参照して説明する。
図6に示すように、操作パネル71の操作によって車両用空調装置1の暖房モードが開始されると、ステップS1において、暖房蓄熱モードが開始され、暖房蓄熱モードに係る空調動作が行われる。暖房蓄熱モードにおいては、制御装置70は、機器側ポンプ52を作動させると共に、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体がバイパス流路54を通過するように、機器側三方弁53の作動を制御する。これにより、発熱機器51に由来する排熱は、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に蓄熱される。
又、制御装置70は、暖房蓄熱モードにおける冷凍サイクル10の作動に関し、所定期間の間、圧縮機11の回転数を予め定められた回転数Ncに定めて作動させる。
ステップS2においては、所定期間の間、ステップS1の条件で圧縮機11を作動させた後に、暖房モードにおける初期状態を示す指標として、外気温センサ72bで検出される外気温Tam、電磁自動車の車速V、圧縮機11の回転数Ncが取得される。この時に検出された外気温Tamを基準外気温KTamという。同様に、ステップS2で検出された車速V、圧縮機11の回転数Ncを、それぞれ、基準車速KV、基準回転数KNcという。
又、ステップS2では、複合型熱交換器21における吸熱部21bの初期状態を示す指標として、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twが取得される。以下の説明では、ステップS2で取得した熱媒体温度Twを基準熱媒体温度KTwという。
そして、ステップS2において、基準外気温KTam、基準車速KV、基準回転数KNc、基準熱媒体温度KTwを取得した後、図5に示すように、暖房蓄熱モードでの作動制御が行われる。
ステップS3においては、発熱機器51に対する熱の影響を示す指標である機器温度Twdが予め定められた保護温度KTpよりも低いか否かが判定される。機器温度Twdとして、発熱機器51の熱媒体通路51aの流出口を通過する熱媒体温度が採用され、第5熱媒体温度センサ73eで検出される。
そして、保護温度KTpは、発熱機器51を正常に利用できる温度の上限値を示している。保護温度KTpは、例えば、発熱機器51が複数の機器で構成されていた場合、各機器における使用温度範囲の上限値の内、最も低い温度に定められる。ステップS3では、機器側熱媒体回路50の発熱機器51の使用環境が適正に利用できる範囲であるか否かを判定しているということができる。
機器温度Twdが保護温度KTpよりも低い場合、発熱機器51を正常に利用可能な状態である為、暖房蓄熱モードを維持したまま、ステップS4に移行する。ステップS4では、複合型熱交換器21の吸熱部21bに対する除霜が必要であるか否かを精度よく判定する為の判定補正値Cvを決定する。判定補正値Cvの決定については、後に詳細に説明する。
一方、機器温度Twdが保護温度KTpよりも低くない場合には、機器側熱媒体回路50における熱媒体の温度上昇を抑制する為に、ステップS5に進む。機器温度Twdが保護温度KTpよりも高い場合、発熱機器51が過度に高温な環境にあると判断できる。この場合、発熱機器51の動作に、高温環境による影響がでることが想定される。
この為、ステップS5では、制御装置70は、機器側三方弁53の作動を制御して、発熱機器51の熱媒体通路51aから流出した熱媒体が複合型熱交換器21の吸熱部21bに流入するように、熱媒体の流路を切り替える。
即ち、車両用空調装置1の運転モードは、暖房蓄熱モードから暖房放熱モードに切り替えられる。これにより、機器側熱媒体回路50では、熱媒体の有する熱が複合型熱交換器21にて外気OAに放熱される為、発熱機器51を通過する熱媒体の温度を低下させることができる。
ステップS6においては、機器側熱媒体回路50の熱媒体温度である機器温度Twdが保護温度KTpよりも低い放熱完了温度KTrよりも低いか否かを判断する。つまり、機器側熱媒体回路50にて、発熱機器51の温度環境が標準的な状態に戻ったか否かが判定されている。
機器温度Twdが放熱完了温度KTrよりも低い場合には、機器側三方弁53を制御して、機器側熱媒体回路50の熱媒体に対する蓄熱を再開させると共に、ステップS3に戻る。つまり、ステップS3に戻る場合、車両用空調装置1の運転モードは、暖房放熱モードから、図5に示す暖房蓄熱モードに切り替えられる。
一方、機器温度Twdが放熱完了温度KTrよりも低くない場合、処理を待機する。即ち、車両用空調装置1は、暖房放熱モードのまま作動し続ける為、機器側熱媒体回路50の熱媒体から外気OAへの放熱が継続される。
上述したように、ステップS4では、複合型熱交換器21の除霜判定に関する判定補正値Cvを決定する。判定補正値Cvの決定には、ステップS2で取得した基準外気温KTam、基準車速KV、基準回転数KNcが用いられる。
具体的に説明すると、先ず、現時点における外気温Tam、車速、圧縮機11の回転数Ncが取得される。次に、現時点における外気温Tamと基準外気温KTamの差分値、現時点の車速Vと基準車速KVの差分値、現時点における圧縮機11の回転数Ncと基準回転数KNcとの差分値を算出する。
続いて、外気温Tam、車速V、回転数Ncに係る差分値と、それぞれに対応付けて作成された制御マップが参照されて、判定補正値Cvが決定される。従って、判定補正値Cvは、外気温Tam、車速V、圧縮機11の回転数Ncの観点で、ステップS2の時点から現時点までの環境の変化に対応する数値に決定される。判定補正値Cvを決定した後、ステップS7に移行する。
ステップS7では、基準熱媒体温度KTwから判定補正値Cv及び判定低下代Mを減算した値よりも現時点の熱媒体温度Twが高い状態が予め定められた所定期間継続しているか否かが判定される。以下、ステップS7で判定される条件を除霜条件という。
そして、判定低下代Mは、複合型熱交換器21の吸熱部21bの着霜によって生じる熱媒体温度Twに対する影響の大きさを示しており、実験等によって予め定められているものである。
ステップS7の除霜条件において、基準熱媒体温度KTwは、特定物理量によって定められる基準値の一例である。又、基準熱媒体温度KTwから減算させる値は、判定補正値Cvと判定低下代Mの合計値であり、環境に応じて定められる変動値の一例である。
ステップS7にて除霜条件を満たすと判定された場合、複合型熱交換器21の吸熱部21bの着霜が進行しており、複合型熱交換器21の除霜が必要であることを意味する。従って、除霜条件を満たすと判定された場合は、ステップS8に進めて、車室内の暖房と並行して、複合型熱交換器21の除霜を行う。一方、そうでない場合には、ステップS3に処理を戻す。
ここで、暖房蓄熱モードの運転に伴う熱媒体温度Twの変化について、図7を参照して説明する。上述したように、暖房蓄熱モードで運転を開始した場合、複合型熱交換器21の吸熱部21bには、チラー15で冷却された熱媒体が流通する。この為、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twは、車両用空調装置1のウォームアップと共に低下していき、機器の作動が安定することによって温度変動が小さくなっていく。基準熱媒体温度KTwは、機器の作動が安定した状態のステップS2で取得される。
暖房蓄熱モードの運転を継続していくと、熱媒体温度Twは、図7に示すように、外気温Tam等の変動に伴って低下していく。複合型熱交換器21の吸熱対象は外気OAである為、外気温Tamは、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twに影響を及ぼす。
そして、外気OAは、電気自動車の走行に伴って複合型熱交換器21を流通する為、車速Vは、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twに影響を及ぼす。又、圧縮機11の回転数Ncは、チラー15の冷却性能に相関を有している為、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twに影響を及ぼす。即ち、判定補正値Cvは、複合型熱交換器21の吸熱部21bから流出する熱媒体温度Twに対して、複合型熱交換器21の着霜を除いた外的要因の影響の大きさを示している。
外気温Tam等の変動によって熱媒体温度Twが低下していくと、複合型熱交換器21の吸熱部21bの表面は、外気OAからの吸熱に伴って着霜していく。吸熱部21bの着霜が進行すると、吸熱部21bにおける熱媒体と外気OAとの熱交換性能が低下する為、熱媒体温度Twは大きく低下していく。
上述したように、ステップS7の除霜条件には、基準熱媒体温度KTwから判定補正値Cv及び判定低下代Mを減算した値よりも現時点の熱媒体温度Twが高いか否かという条件が含まれている。換言すると、現時点の熱媒体温度Twが、基準熱媒体温度KTwに対して、判定補正値Cv及び判定低下代Mの合計値で定められる変動値よりも大きく乖離しているか否かという条件を含んでいる。
この条件は、ステップS2と現時点で検出された値の差分値を利用している為、外気温センサ72b等のセンサの誤差を含むことはなく、精度よく、複合型熱交換器21が着霜し除霜が必要であるか否かを判定することができる。
再び、図6を参照して、ステップS8以後の処理について説明する。ステップS8においては、機器温度Twdが予め定められた除霜許可温度KTdsよりも高いか否かが判定される。ステップS8は、ステップS7で行われた判定の結果、複合型熱交換器21の除霜動作の実行を許容するか否かを判定する判定処理である。
除霜許可温度KTdsは、発熱機器51を構成する各機器の使用温度範囲に従って定められており、複合型熱交換器21の除霜に伴って、各機器の動作に対する影響が少なくなるように定められている。
機器温度Twdが除霜許可温度KTdsよりも高い場合、複合型熱交換器21の除霜を行う為に、ステップS9に進んで除霜動作を行う。一方、機器温度Twdが除霜許可温度KTdsよりも高くない場合、ステップS3に処理を戻す。
ステップS9の除霜動作においては、制御装置70は、予め定められた順番で各構成機器の作動を制御して、暖房蓄熱モードから暖房除霜モードへ切り替える。具体的に説明すると、先ず、制御装置70は、バッテリ温度センサ72hで検出されるバッテリ温度に基づいて、バッテリ45の冷却が必要であるか否かを判定する。
例えば、バッテリ温度が予め定められている基準バッテリ温度よりも高い場合には、バッテリ45の冷却が必要であると判定して、車室内の暖房と並行して、複合型熱交換器21の除霜及びバッテリ45の冷却を行う。この場合の運転モードを暖房除霜モードのバッテリ冷却態様という。
一方、バッテリ温度が基準バッテリ温度よりも高くない場合には、バッテリ45の冷却は不要であると判定して、車室内の暖房と並行して、複合型熱交換器21の除霜を行う。この場合の運転モードについては、暖房除霜モードの通常態様という。
暖房蓄熱モードから暖房除霜モードの通常態様に切り替える際の除霜動作について、図8を参照して説明する。図8は、暖房除霜モードの通常態様における作動状態を示している。図8では、図5と同様に、冷媒又は熱媒体が流動している部分を太線で示している。
先ず、暖房蓄熱モードにおける運転状態について説明する。図5に示すように、暖房蓄熱モードにおける冷凍サイクル10の冷媒は、圧縮機11、水−冷媒熱交換器12、冷媒分岐部13a、第1膨張弁14a、チラー15、冷媒合流部13b、圧縮機11の順で循環している。
又、暖房蓄熱モードにおける高温側熱媒体回路20の熱媒体は、高温側ポンプ27、水−冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、分岐部24、第2電磁弁30b、ヒータコア22、合流部25、第1リザーブタンク28、高温側ポンプ27の順で循環している。
そして、暖房蓄熱モードにおける低温側熱媒体回路40の熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー15、開閉弁43b、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、低温側ポンプ41の順で循環している。
更に、暖房蓄熱モードにおける機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51、機器側三方弁53、バイパス流路54、機器側ポンプ52の順で循環している。
図5に示す暖房蓄熱モードから、図8に示す暖房除霜モードの通常態様へと切り替える場合、制御装置70は、先ず、複数の事前動作を実行する。事前動作の一つとして、制御装置70は、圧縮機11の作動を停止して冷凍サイクル10の運転を停止する。
又、暖房除霜モードの通常態様へ切り替える為の事前動作の一つとして、制御装置70は、シャッター装置31の動作を制御して、複合型熱交換器21へ流入する外気OAの流量が最も少なくなるように調整する。これにより、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を、外気OAの流量の観点から低下させることができる。
更に、事前動作の一つとして、低温側ポンプ41の作動を停止する。これにより、低温側熱媒体回路40における熱媒体の循環が停止される。これにより、チラー15から流出した熱媒体に関して、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する流量を減少させることができる。即ち、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を、低温側熱媒体回路40の熱媒体流量の観点から低下させることができる。
これらの事前動作を終了すると、暖房除霜モードの通常態様における除霜実行動作が行われる。この場合の除霜実行動作では、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流路構成が切り替えられる。
具体的には、制御装置70は、機器側三方弁53の作動を制御して、複合型熱交換器21における吸熱部21bの流入口側と、発熱機器51における熱媒体通路51aの流出口側とを連通させる。この時、機器側三方弁53におけるバイパス流路54側の流入出口は閉塞される。
このように機器側三方弁53を切り替えることで、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51、機器側三方弁53、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、機器側ポンプ52の順に流れる。
この結果、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、複合型熱交換器21を介して循環する。機器側熱媒体回路50の熱媒体は、暖房蓄熱モードで、発熱機器51の排熱を蓄熱している為、複合型熱交換器21の吸熱部21b通過する際に、吸熱部21bに付着している霜を除去することができる。
上述のように、事前動作及び除霜実行動作を行うことで、車両用空調装置1は、暖房蓄熱モードから暖房除霜モードの通常態様に切り替わる。暖房除霜モードの通常態様に切り替える場合、事前動作及び除霜実行動作を行って、図8に示す作動状態になると、制御装置70は、ステップS9を終了して、ステップS10に進む。
ここで、図5、図8を比較してわかるように、暖房除霜モードの通常態様では、冷凍サイクル10における冷媒の循環及び低温側熱媒体回路40における熱媒体の循環は停止している。
そして、高温側熱媒体回路20の熱媒体は、高温側ポンプ27、水−冷媒熱交換器12、電気ヒータ26、分岐部24、第2電磁弁30b、ヒータコア22、合流部25、第1リザーブタンク28、高温側ポンプ27の順で循環し続けている。
従って、暖房除霜モードの通常態様によれば、高温側熱媒体回路20の熱媒体に蓄えられた熱を利用して、送風空気Wの加熱を継続することができ、車室内の暖房を実現することができる。
暖房蓄熱モードから暖房除霜モードの通常態様への切り替えに際し、冷凍サイクル10の停止、シャッター装置31の動作制御、低温側ポンプ41の停止といった事前動作を行った後に、除霜実行動作として、機器側三方弁53の切替動作が行われる。
機器側三方弁53の切替動作に対する事前動作として、複合型熱交換器21を通過する外気OAの風量が制限されている。この為、複合型熱交換器21において、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱から外気OAに放熱される放熱量が少ない状態で、機器側三方弁53の切替動作を行うことができる。つまり、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱に関して、外気OAへの漏えいを抑制して、複合型熱交換器21の除霜に有効に利用できる。
又、機器側三方弁53の切替動作に対する事前動作として、低温側ポンプ41の作動を停止して、複合型熱交換器21の吸熱部21bに対して、チラー15を経由した熱媒体の流入が制限されている。
従って、事前動作の実行によって、複合型熱交換器21において、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱から、チラー15を経由した熱媒体に放熱される放熱量を少なくすることができる。即ち、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱に関し、低温側熱媒体回路40の熱媒体への熱の漏えいを抑制して、複合型熱交換器21の除霜に有効に利用することができる。
更に、機器側三方弁の切替動作に対する事前動作として、圧縮機11の作動を停止することで、冷凍サイクル10の運転が停止される。複合型熱交換器21の除霜に際して、冷凍サイクル10の運転を停止することで、圧縮機11の作動に伴う消費エネルギ等を低減させることができる。これにより、エネルギ効率の良い状態で、車室内の暖房と、複合型熱交換器21の除霜を両立させることができる。
次に、暖房蓄熱モードから暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える際の除霜動作について、図9を参照して説明する。図9は、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様における作動状態を示している。
暖房除霜モードのバッテリ冷却態様は、ステップS9に移行した際に、バッテリ45の冷却が必要であると判定された場合に実行される暖房除霜モードの一態様である。暖房蓄熱モードから暖房除霜モードのバッテリ冷却態様へと切り替える場合についても、制御装置70は、複数の事前動作を実行する。
暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える際の事前動作としては、事前動作の一つとして、制御装置70は、圧縮機11の作動を停止して冷凍サイクル10の運転を停止する。
又、事前動作の一つとして、制御装置70は、シャッター装置31の動作を制御して、複合型熱交換器21へ流入する外気OAの流量が最も少なくなるように調整する。冷凍サイクル10の運転停止、シャッター装置31の動作制御については、暖房除霜モードの通常態様に切り替える際の事前動作と同様である。
そして、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える際の事前動作には、通常態様の場合における低温側ポンプ41の停止に替えて、低温側切替部43の動作制御が含まれている。従って、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様では、低温側熱媒体回路40における熱媒体の循環は継続される。
具体的に説明すると、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える際の事前動作として、制御装置70は、低温側切替部43の開閉弁43bを全閉状態にすると共に、低温側三方弁43aの作動を制御する。
これにより、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様では、低温側熱媒体回路40の熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー15の熱媒体通路、バッテリ45の熱媒体通路45a、低温側三方弁43a、低温側ポンプ41の順に流れて循環する。この場合の低温側熱媒体回路40における熱媒体の流れは、第2態様の流路構成の一例である。
図9に示すように、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様によれば、チラー15で冷却された熱媒体を、バッテリ45の熱媒体通路45aを介して循環させることができるので、バッテリ45を冷却することができる。
そして、事前動作として、低温側切替部43の動作制御を行った場合、低温側切替部43が切り替えられている為、複合型熱交換器21の吸熱部21bに対して、チラー15を経由した熱媒体が流入することはない。即ち、低温側熱媒体回路40の熱媒体に関し、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する流量を減少させることができる。従って、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を、低温側熱媒体回路40の熱媒体流量の観点から低下させることができる。
これらの事前動作を終了すると、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様における除霜実行動作が行われる。除霜実行動作では、暖房除霜モードの通常態様の場合と同様に、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流路構成を切り替えられる。
具体的には、図9に示すように、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51、機器側三方弁53、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、機器側ポンプ52の順に流れる。
この結果、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、複合型熱交換器21を介して循環する。機器側熱媒体回路50の熱媒体は、暖房蓄熱モードで、発熱機器51の排熱を蓄熱している為、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する際に、吸熱部21bに付着している霜を除去することができる。
上述のように、事前動作及び除霜実行動作を行うことで、車両用空調装置1は、暖房蓄熱モードから暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替わる。暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える場合、事前動作及び除霜実行動作を行って、図9に示す作動状態になると、制御装置70は、ステップS9を終了して、ステップS10に進む。
これにより、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様によれば、車室内の暖房と複合型熱交換器21の除霜と同時に、低温側熱媒体回路40の熱媒体の循環によるバッテリ45の冷却を行うことができる。
暖房蓄熱モードから暖房除霜モードのバッテリ冷却態様への切り替えに際しても、事前動作によって、複合型熱交換器21を通過する外気OAの風量が制限されている。これにより、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替える場合においても、暖房除霜モードの通常態様に切り替える場合と同様の効果を発揮する。
即ち、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様においても、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱に関して、外気OAへの漏えいを抑制して、複合型熱交換器21の除霜に有効に利用できる。
又、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様への切り替えに際して、事前動作として、圧縮機11の作動を停止することで、冷凍サイクル10の運転が停止される。これにより、暖房除霜モードの通常態様に切り替える場合と同様に、エネルギ効率の良い状態で、車室内の暖房と、複合型熱交換器21の除霜を両立させることができる。
更に、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様の切り替えに際して、事前動作として、低温側熱媒体回路40における流路構成を、バッテリ45及びチラー15を介して循環する構成に切り替える。
これにより、チラー15で冷却された熱媒体がバッテリ45の熱媒体通路45aを通過して循環する為、バッテリ45の冷却を実現することができる。又、低温側熱媒体回路40における流路構成を切り替えたことで、複合型熱交換器21の吸熱部21bに対して、チラー15を経由した熱媒体の流入が制限されている。
即ち、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様においても、機器側熱媒体回路50の熱媒体が有する熱に関して、低温側熱媒体回路40の熱媒体への熱の漏えいを抑制して、複合型熱交換器21の除霜に有効に利用することができる。
暖房除霜モードの通常態様又はバッテリ冷却態様に移行すると、ステップS10の判定処理が行われる。ステップS10では、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twが予め定められた結露保護温度KTcよりも低いか否かが判定される。ここで、結露保護温度KTcは、発熱機器51の熱媒体通路51aを通過する熱媒体の温度との関係で、発熱機器51に結露が生じない上限値を意味する。
熱媒体温度Twが結露保護温度KTcよりも低い場合、発熱機器51が内部に発生した結露の影響を受ける虞がある。熱媒体温度Twが結露保護温度KTcよりも低いことは結露条件の一例である。この場合、発熱機器51の結露を抑制する為に、複合型熱交換器21の除霜を完了していない状態でも、ステップS12に移行して、暖房蓄熱モードへ復帰させる。
一方、熱媒体温度Twが結露保護温度KTcよりも低くない場合は、複合型熱交換器21の吸熱部21bの除霜に際して、発熱機器51に結露が生じていないと考えられる為、ステップS11に進む。
ステップS11では、暖房除霜モードにおいて、除霜完了条件を満たすか否かが判定される。除霜完了条件は、複合型熱交換器21における吸熱部21bの除霜によって、熱交換性能が回復したと考えられる条件を意味する。
除霜完了条件としては、例えば、熱媒体温度Twが予め定められた基準値よりも高いことや、ステップS9の除霜動作の開始から予め定められた期間を経過していること等を挙げることができる。又、熱媒体温度Twに替わる物理量として、チラー15の熱媒体通路を通過する熱媒体の温度、発熱機器51の熱媒体通路51aを通過する熱媒体の温度を採用することも可能である。除霜完了条件を満たした場合、暖房除霜モードから暖房蓄熱モードに復帰させる為に、ステップS12に進む。
ステップS12の復帰動作では、制御装置70は、予め定められた順番で各構成機器の作動を制御して、暖房除霜モードから暖房蓄熱モードへ切り替える。上述したように、暖房除霜モードには、通常態様とバッテリ冷却態様の二つの態様が存在している為、それぞれの態様について説明する。
先ず、暖房除霜モードの通常態様から暖房蓄熱モードへ復帰する際の復帰動作について説明する。暖房除霜モードの通常態様からの復帰動作において、制御装置70は、先ず、切替動作を実行する。具体的には、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流路構成が切り替えられる。
これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ52、発熱機器51の熱媒体通路51a、機器側三方弁53、バイパス流路54、機器側ポンプ52の順に流れて循環する。従って、機器側熱媒体回路50の熱媒体に対して、発熱機器51に生じた排熱の蓄熱が再開される。
暖房除霜モードの通常態様からの復帰動作において、切替動作を終了すると、制御装置70は、暖房蓄熱モードに復帰する為に、複数の復帰実行動作を行う。復帰実行動作の一つとして、制御装置70は、先ず、圧縮機11の作動を開始して、冷凍サイクル10の運転を再開する。
これにより、冷凍サイクル10の冷媒は、圧縮機11、水−冷媒熱交換器12、冷媒分岐部13a、第1膨張弁14a、チラー15、冷媒合流部13b、圧縮機11の順に流れて循環する。
次に、暖房除霜モードの通常態様からの復帰実行動作の一つとして、制御装置70は、低温側ポンプ41の作動を再開する。従って、低温側熱媒体回路40の熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー15、開閉弁43b、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、低温側ポンプ41の順に流れて循環する。
これにより、復帰実行動作によって、低温側熱媒体回路40の熱媒体に関して、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する流量を増大させることができる。この結果、低温側熱媒体回路40の熱媒体流量の観点において、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を回復させることができる。
更に、暖房除霜モードの通常態様からの復帰実行動作の一つとして、制御装置70は、シャッター装置31の動作を制御して、複合型熱交換器21へ流入する外気OAの流量が最も多くなるように調整する。これにより、外気OAの流量の観点において、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を回復させることができる。
暖房除霜モードの通常態様から暖房蓄熱モードへ復帰する際の復帰動作として、切替動作及び複数の復帰実行動作を行うことで、車両用空調装置1の作動状態は、図5に示す暖房蓄熱モードの状態に復帰する。これにより、車両用空調装置1は、機器側熱媒体回路50の熱媒体に、発熱機器51の排熱を蓄熱すると共に、外気OAを熱源として利用した車室内の暖房を再度行うことができる。
暖房除霜モードの通常態様から暖房蓄熱モードへの復帰動作に際し、機器側三方弁53の切替動作を行った後に、復帰実行動作として、冷凍サイクル10の運転再開、低温側ポンプ41の運転再開、シャッター装置31による外気OAの風量制限の解除を行う。
従って、暖房除霜モードの通常態様からの復帰に際して、発熱機器51の熱媒体通路51aに関して、熱媒体が通過している状態を維持しておくことができる。これにより、発熱機器51に対する熱媒体の流れが停止した場合に比べて、発熱機器51が排熱によって過剰に高温になることを抑制することができる。
又、複数の復帰実行動作に先んじて、機器側三方弁53の切替動作を行うことで、発熱機器51で生じた排熱が外気OAや低温側熱媒体回路40の熱媒体に漏れてしまうことを抑制できる。即ち、暖房除霜モードの通常態様からの復帰動作において、できるだけ早い段階から、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に対して、発熱機器51の排熱を蓄熱しておくことができる。
そして、機器側三方弁53の切替動作の後で、低温側ポンプ41の作動を再開する為、発熱機器51の熱媒体通路51aに対して、チラー15を通過した熱媒体が直接流入することはない。これにより、チラー15を通過した熱媒体によって、発熱機器51が急冷されることを防止することができ、発熱機器51の保護を図ることができる。
続いて、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様から暖房蓄熱モードへ復帰する際の復帰動作について説明する。暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰動作において、制御装置70は、先ず、切替動作を実行する。具体的には、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流路構成が切り替えられる。
これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、暖房除霜モードの通常態様から復帰する場合と同様に、発熱機器51の熱媒体通路51a及びバイパス流路54を介して循環する流路構成となる。従って、機器側熱媒体回路50の熱媒体に対して、発熱機器51に生じた排熱の蓄熱が再開される。
暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰動作において、切替動作を終了すると、制御装置70は、複数の復帰実行動作を行う。復帰実行動作の一つとして、制御装置70は、先ず、冷凍サイクル10の運転を再開する。
次に、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰実行動作の一つとして、制御装置70は、シャッター装置31の動作を制御して、複合型熱交換器21へ流入する外気OAの流量が最も多くなるように調整する。
暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰実行動作として、冷凍サイクル10の運転再開と、シャッター装置31の動作制御は、暖房除霜モードの通常態様からの復帰の場合と同様である。
そして、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰実行動作として、制御装置70は、低温側切替部43の作動を制御する。具体的には、制御装置70は、低温側切替部43の開閉弁43bを全開状態にすると共に、低温側三方弁43aの作動を制御する。これにより、低温側熱媒体回路40の熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー15、開閉弁43b、複合型熱交換器21の吸熱部21b、第2リザーブタンク29、低温側ポンプ41の順に流れて循環する。
従って、復帰実行動作によって、低温側熱媒体回路40の熱媒体に関して、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する流量を増大させることができる。この結果、低温側熱媒体回路40の熱媒体流量の観点で、複合型熱交換器21における外気OAと熱媒体との熱交換性能を回復させることができる。
図5に示すように、暖房蓄熱モードに復帰する為、低温側熱媒体回路の熱媒体は、バッテリ45を迂回するように流れて循環する。従って、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様から復帰すると、チラー15を通過した熱媒体によって、バッテリ45が冷却されることはない。
上述したように、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様から暖房蓄熱モードへ復帰する際の復帰動作として、切替動作及び複数の復帰実行動作を行うことで、車両用空調装置1の作動状態は、図5に示す暖房蓄熱モードの状態に復帰する。これにより、車両用空調装置1は、機器側熱媒体回路50の熱媒体に、発熱機器51の排熱を蓄熱すると共に、外気OAを熱源として利用した車室内の暖房を再度行うことができる。
暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰動作に際し、機器側三方弁53の切替動作を行った後に、復帰実行動作として、冷凍サイクル10の運転再開、低温側切替部43の動作制御、シャッター装置31による外気OAの風量制限の解除を行う。
従って、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様からの復帰に際しても、発熱機器51の熱媒体通路51aに対する熱媒体の流通を維持しておくことができる。これにより、発熱機器51に対する熱媒体の流れが停止した場合に比べて、発熱機器51が排熱によって過剰に高温になることを抑制することができる。
又、複数の復帰実行動作に先んじて、機器側三方弁53の切替動作を行うことで、できるだけ早い段階から、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に対して、発熱機器51の排熱を蓄熱しておくことができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ステップS12の復帰動作にて、機器側三方弁53の切替動作の後に復帰実行動作を行って、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を回復させる。
これにより、暖房除霜モードから暖房蓄熱モードに復帰する過程において、発熱機器51の熱媒体通路51aを流通する熱媒体の流量を確保することができる。この結果、車両用空調装置1は、暖房除霜モードから暖房蓄熱モードへ復帰させる際に、発熱機器51が過度に高温になる状態を抑制することができる。
つまり、車両用空調装置1は、発熱機器51の排熱を利用した複合型熱交換器21の除霜を実現すると共に、暖房除霜モードからの復帰時における発熱機器51の保護を図ることができる。
機器側三方弁53の切替動作によって、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、発熱機器51及びバイパス流路54を介して循環する状態になっている。従って、その後に、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を回復させたとしても、チラー15を通過した熱媒体が発熱機器51に直接供給されることはない。
従って、車両用空調装置1は、暖房除霜モードからの復帰する際に、低温側熱媒体回路40の熱媒体による発熱機器51の急冷を抑制して、発熱機器51の保護を図ることができる。
又、車両用空調装置1は、ステップS12にて、暖房除霜モードからの復帰動作における復帰実行動作として、先ず、冷凍サイクル10の運転再開を行う。つまり、車両用空調装置1によれば、機器側三方弁53の切替動作の後で、冷凍サイクル10の運転を再開する為、発熱機器51の保護を図りつつ、暖房蓄熱モードでの運転を再開できる。
そして、車両用空調装置1によれば、ステップS9〜ステップS12において、複合型熱交換器21の除霜が完了していない場合でも、結露条件を満たして発熱機器51の結露が想定される場合には、暖房蓄熱モードに復帰させる。暖房蓄熱モードに復帰させることにより、発熱機器51及びその周辺の温度を上昇させ、飽和水蒸気圧を上昇させることができる。
これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器21の除霜が途中であっても発熱機器51の結露が想定される場合は、暖房蓄熱モードに復帰させて、発熱機器51の結露を抑制することができる。これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器21の除霜に伴う発熱機器51の結露を抑制して、発熱機器51の保護を図ることができる。
そして、車両用空調装置1は、ステップS12における復帰実行動作の一つとして、シャッター装置31の作動を制御して、外気OAの流量が最大になるように回復させる。これにより、車両用空調装置1は、暖房蓄熱モードにおいて、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を、外気OAの流量の観点で回復させることができ、暖房蓄熱モードにおける外気OAからの吸熱量を確保できる。
又、車両用空調装置1は、ステップS12における復帰実行動作の一つとして、暖房除霜モードの通常態様の場合は、低温側ポンプ41の運転再開を行い、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様では、低温側切替部43の動作制御を行う。これにより、車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を、低温側熱媒体回路40の熱媒体の流量の観点で回復させることができ、暖房蓄熱モードにおける外気OAからの吸熱量を確保できる。
そして、車両用空調装置1は、ステップS9にて、複合型熱交換器21の除霜動作を行う際に、複数の事前動作の実行後に、機器側三方弁53による除霜実行動作を行う。つまり、機器側三方弁53による除霜実行動作は、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を低下させた後に実行され、機器側熱媒体回路50の熱媒体が複合型熱交換器21に供給される。
これにより、複合型熱交換器21の除霜に際して、発熱機器51を通過した熱媒体の熱が、外気OAや低温側熱媒体回路40の熱媒体に漏えいすることを抑制できる。即ち、車両用空調装置1は、複合型熱交換器21の除霜に関して、発熱機器51の排熱を効率良く利用することができる。
又、ステップS9の除霜動作に際して、発熱機器51を通過する熱媒体の流量を確保することができる為、発熱機器51が過度に高温になる状態を抑制することができ、発熱機器51の保護を実現することができる。
車両用空調装置1は、暖房除霜モードに切り替える為の除霜動作における事前動作の一つとして、冷凍サイクル10の運転を停止する。つまり、冷凍サイクル10の運転が停止した後で、機器側三方弁53による除霜実行動作が行われる。これにより、暖房除霜モードにおける圧縮機11の消費エネルギを抑制することができ、発熱機器51の排熱を利用した複合型熱交換器21の除霜を、効率よく実行することができる。
そして、車両用空調装置1によれば、除霜条件を満たすと判定される状態であっても、発熱機器51が過度に高温になっていると判定される場合には、発熱機器51を通過した熱媒体を、複合型熱交換器21の吸熱部21bを介して循環させる。これにより、発熱機器51の排熱は、複合型熱交換器21にて外気OAへ放熱され、発熱機器51の温度上昇を抑制できる。
即ち、車両用空調装置1によれば、発熱機器51に生じた熱を用いた複合型熱交換器21の除霜を実現すると共に、発熱機器51における過度の温度上昇を抑制して発熱機器51の保護を図ることができる。
又、車両用空調装置1によれば、ステップS7の判定処理において、除霜条件を満たすか否かを判定して、除霜条件を満たす場合には、暖房除霜モードへ切り替える為の除霜動作を実行する。ステップS7の除霜条件は、基準熱媒体温度KTwから判定補正値Cv及び判定低下代Mを減算した値よりも現時点の熱媒体温度Twが高い状態が予め定められた所定期間継続していることである。
即ち、ステップS7の判定処理によれば、発熱機器51の排熱を利用した複合型熱交換器21の除霜を実行するか否かの判定基準を、環境に応じて変動する判定補正値Cvを含めて変化させることができる。
これにより、車両用空調装置1は、精度の良い除霜の実行に関する判定を行うことができ、適切なタイミングで複合型熱交換器21の除霜動作を開始することができる。又、発熱機器51に生じた熱を適切なタイミングで複合型熱交換器21の除霜に利用することができる為、発熱機器51に対する熱の影響を抑えて発熱機器51の保護を図ることができる。
そして、車両用空調装置1は、ステップS9における事前動作の一つとして、シャッター装置31の作動を制御して、外気OAの流量が最小にする。これにより、車両用空調装置1は、暖房除霜モードにおいて、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を、外気OAの流量の観点で低下させることができる。従って、暖房除霜モードの車両用空調装置1によれば、発熱機器51の排熱が外気OAに漏えいすることを抑制でき、複合型熱交換器21の除霜に効率よく活用することができる。
又、車両用空調装置1は、ステップS9における事前動作の一つとして、暖房除霜モードの通常態様に移行する場合は、低温側ポンプ41の運転を停止し、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に移行する場合は、低温側切替部43の動作制御を行う。
これにより、車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路40の熱媒体と外気OAに関する複合型熱交換器21の熱交換性能を、低温側熱媒体回路40の熱媒体の流量の観点で低下させることができる。従って、暖房除霜モードの車両用空調装置1によれば、発熱機器51の排熱が低温側熱媒体回路40の熱媒体に漏えいすることを抑制でき、複合型熱交換器21の除霜に効率よく活用することができる。
そして、車両用空調装置1は、ステップS7における判定条件を構成する基準熱媒体温度KTwや、判定補正値Cvの決定に用いられる基準外気温KTam、基準車速KV、基準回転数KNcを、車両用空調装置1における暖房蓄熱モードの運転開始後に取得する。
暖房蓄熱モードの運転開始後であるステップS2の時点で、基準熱媒体温度KTw等を取得することで、車両用空調装置1自体の状態や、車両用空調装置1を取り巻く環境を反映させることができる。これにより、車両用空調装置1は、ステップS7における除霜条件に関する判定精度を向上させることができる。
又、ステップS2における基準熱媒体温度KTw等の取得は、圧縮機11を予め定められた回転数Ncで所定期間作動させた後で実行される。換言すると、圧縮機11を所定の条件の下で運転し、車両用空調装置1の作動が安定した状態で、基準熱媒体温度KTw等が取得される。
これにより、基準熱媒体温度KTw等に関して、車両用空調装置1の作動が不安定である状態が含まれることがなくなる為、基準熱媒体温度KTwや判定補正値Cvの信頼性を高めて、ステップS7における除霜条件の判定精度を向上させることができる。
そして、ステップS7の除霜条件を構成する判定補正値Cvは、ステップS4で決定される。具体的には、判定補正値Cvを決定する際には、現時点における外気温Tamと基準外気温KTamの差分値、現時点の車速Vと基準車速KVの差分値、現時点における圧縮機11の回転数Ncと基準回転数KNcとの差分値が算出される。
その後、外気温Tam、車速V、回転数Ncに係る差分値と、それぞれに対応付けて作成された制御マップが参照されて、判定補正値Cvが決定される。従って、判定補正値Cvは、外気温Tam、車速V、圧縮機11の回転数Ncの観点で、ステップS2の時点から現時点までの環境の変化に対応する数値になる。
この為、ステップS7における除霜条件に、判定補正値Cvを用いることで、車両用空調装置1を取り巻く環境の変化を反映させることができ、適切なタイミングでの複合型熱交換器21の除霜を実現することができる。
又、上述した差分値は、外気温センサ72b等のように同一の構成から、時期的に異なるタイミングで取得された値を用いて算出されている。従って、判定補正値Cvの決定に関して、外気温センサ72b等の構成自体が有している誤差の影響が及ぶことはない。これにより、判定補正値Cvは、車両用空調装置1を取り巻く環境の変化を純粋に反映させた値となる為、この点に関しても、ステップS7における除霜条件の判定精度を向上させることができる。
そして、車両用空調装置1によれば、ステップS9における暖房除霜モードへの除霜動作に際して、バッテリ45の冷却が必要であるか否かが判定され、バッテリ45の冷却が必要であると判定された場合、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様に切り替えられる。
図9に示すように、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様では、高温側熱媒体回路20による車室内の暖房と、機器側熱媒体回路50による複合型熱交換器21の除霜と共に、低温側熱媒体回路40によるバッテリ45の冷却が行われる。暖房除霜モードのバッテリ冷却態様の車両用空調装置1によれば、車室内の暖房と、複合型熱交換器21の除霜に加えて、バッテリ45の冷却を並行して行うことができる。
又、ステップS9における暖房除霜モードへの除霜動作に際し、バッテリ45の冷却が必要でないと判定された場合、暖房除霜モードの通常態様に切り替えられる。図8に示すように、暖房除霜モードの通常態様では、高温側熱媒体回路20による車室内の暖房と、機器側熱媒体回路50による複合型熱交換器21の除霜が並行して行われる。この時、低温側ポンプ41の運転が停止され、低温側熱媒体回路40における熱媒体の循環が停止する。これにより、暖房除霜モードの通常態様の車両用空調装置1によれば、エネルギ消費を抑えた状態で、車室内暖房と複合型熱交換器21の除霜を並行して実現できる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図10を参照して説明する。第2実施形態では、暖房モードの制御内容の内、除霜条件を満たすか否かの判定処理が第1実施形態と相違している。従って、第2実施形態に係る車両用空調装置1の基本的構成や各運転モードの作動状態等は第1実施形態と同様である。
第2実施形態に係る車両用空調装置1において、操作パネル71の操作によって車両用空調装置1の暖房モードが開始されると、制御装置70は、ステップS21の処理を事項する。ステップS21は、第1実施形態のステップS1と同様の処理である。
次に、ステップS22では、機器温度Twdが保護温度KTpより低いか否かが判定される。ステップS22は、ステップS3と同様の処理である。機器温度Twdが保護温度KTpよりも低い場合、ステップS23に進む。
一方、機器温度Twdが保護温度KTpよりも低くない場合、ステップS24,ステップS25に進む。ステップS24、ステップS25は、第1実施形態のステップS5、ステップS6と同様の処理である。従って、再度の説明は省略する。
これにより、第2実施形態においても、除霜条件を満たすと判定される状態でも、発熱機器51が過度に高温になっていると判定される場合には、機器側熱媒体回路50の切り替えによって、発熱機器51の排熱を外気OAに放熱させることができる。
ステップS23では、第2実施形態における除霜条件を満たすか否かが判定される。第2実施形態における除霜条件は、第3熱媒体温度センサ73cで検出される熱媒体温度Twが予め定められた判定閾値KTwaよりも低いことである。
ここで、判定閾値KTwaは、複合型熱交換器21の除霜が必要な状態において、複合型熱交換器21の吸熱部21bから流出する熱媒体の温度により定められている。判定閾値KTwaは、例えば、実験値によって求められており、制御装置70のROM等に記憶されている。判定閾値KTwaは閾値の一例である。
熱媒体温度Twが判定閾値KTwaよりも低い場合、複合型熱交換器21の除霜が必要であると判定して、ステップS26に進む。熱媒体温度Twが判定閾値KTwaよりも低くない場合、複合型熱交換器21の除霜は不要であると判定し、ステップS22に戻る。
ステップS26では、機器温度Twdが除霜許可温度KTdsよりも高いか否かが判定される。ステップS26は、第1実施形態のステップS8と同様の処理である。機器温度Twdが除霜許可温度KTdsよりも高い場合、ステップS27に進む。そうでない場合は、ステップS22に処理を戻す。
ステップS27では、第2実施形態における除霜動作が行われる。ステップS27においては、第1実施形態のステップS9と同様に、先ず、バッテリ45の冷却が必要であるか否かが判定される。この判定結果に基づいて、車両用空調装置1の運転モードが、暖房除霜モードの通常態様と、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様の何れかに決定される。
そして、暖房除霜モードの通常態様又は暖房除霜モードのバッテリ冷却態様の何れかに応じた複数の事前動作を実行した後で、切替動作を行う。ステップS27の処理内容は、既に説明済みである為、再度の説明を省略する。
暖房除霜モードを開始した後のステップS28、ステップS29の処理内容は、第1実施形態におけるステップS10、ステップS11と同様である。これにより、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、複合型熱交換器21の除霜が途中であっても発熱機器51の結露が想定される場合は、暖房蓄熱モードに復帰させて、発熱機器51の結露を抑制することができる。
ステップS30では、第2実施形態における復帰動作が行われる。ステップS30においては、第1実施形態のステップS12と同様に、切替動作を実行した後、複数の復帰実行動作が行われる。複数の復帰実行動作の内容は、現在の運転モードが暖房除霜モードの通常態様と、暖房除霜モードのバッテリ冷却態様の何れであるかによって決定される。ステップS30の処理内容は、既に説明済みである為、再度の説明を省略する。
このように、第2実施形態に係る車両用空調装置1では、ステップS23で判定される除霜条件を、熱媒体温度Twが判定閾値KTwaよりも低いことにしている。従って、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、複合型熱交換器21の除霜が必要か否かの判定処理を簡便にして、制御装置70の処理負担を抑制することができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、複合型熱交換器21の除霜が必要であるかの判定内容を変更した場合であっても、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
又、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第3熱媒体温度センサ73cによる熱媒体温度Twと、予め定められた判定閾値KTwaの比較によって、除霜条件の判定が行われる。これにより、車両用空調装置1は、複合型熱交換器21の除霜に関する判定の簡便化を図ることができ、制御装置70の処理負担を低減することができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態では、冷凍サイクル10における第1膨張弁14a、第2膨張弁14bとして、電気式膨張弁を採用していたが、この態様に限定されるものではない。冷凍サイクル10において、高圧冷媒を減圧することができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、第1膨張弁14aを電気式膨張弁としたまま、第2膨張弁14bを温度式膨張弁に変更しても良い。
(2)又、上述した実施形態においては、水−冷媒熱交換器12として、サブクール型の凝縮器を採用していたが、この態様に限定されるものではない。水−冷媒熱交換器12として、レシーバ部12b、過冷却部12cを有しておらず、凝縮部12aで構成された態様を採用しても良い。
(3)そして、上述した実施形態においては、送風空気Wを加熱する為の加熱部の構成として、水−冷媒熱交換器12及びヒータコア22を含む高温側熱媒体回路20を採用していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態におけるヒータコア22の位置に室内凝縮器を配置して、冷凍サイクル10の高圧冷媒の熱で送風空気Wを加熱する構成を採用しても良い。
(4)上述した実施形態においては、空気熱媒体熱交換器として、複合型熱交換器21を採用していたが、この態様に限定されるものではない。低温側熱媒体回路の熱媒体又は機器側熱媒体回路50の熱媒体と、外気OAとの熱交換が可能な熱交換器であれば、空気熱媒体熱交換器として採用することができる。
従って、複合型熱交換器21の吸熱部21bに替えて、外気熱交換器を配置した構成としても良い。この時、複合型熱交換器21の放熱部21aに替えて、高温側ラジエータを配置しても良いし、他の態様を採用しても良い。
(5)そして、上述した実施形態においては、高温側熱媒体回路20における高温側切替部30を、第1電磁弁30a及び第2電磁弁30bにて構成していたが、この態様に限定されるものではない。高温側切替部30としては、分岐部24の一方の流出口側における熱媒体の流量と、分岐部24の他方の流出口側における熱媒体の流量とを調整可能であれば、種々の態様を採用できる。例えば、高温側切替部30を、分岐部24の位置に配置された三方弁によって構成しても良い。
又、低温側切替部43は、低温側三方弁43a及び開閉弁43bによって構成していたが、この態様に限定されるものではない。低温側三方弁43aに替えて、迂回流路42とバッテリ接続流路44の接続部分が間に位置するように、迂回流路42上に配置された2つの開閉弁で構成しても良い。
(6)又、上述した実施形態においては、発熱機器51として、インバータ、モータジェネレータ、トランスアクスル装置を含むパワーコントロールユニットを採用していたが、この態様に限定されるものではない。発熱機器51としては、車両に搭載されており、予め定められた機能を発揮する為の作動に伴い副次的に発熱する機器であれば、種々の機器を採用することができる。例えば、先進運転支援システムの構成機器を採用することも可能である。
(7)そして、上述した実施形態における除霜条件の判定においては、複合型熱交換器21の吸熱部から流出する熱媒体温度Tw及び基準熱媒体温度KTwを用いていたが、この態様に限定されるものではない。複合型熱交換器21の吸熱部21bにおける着霜と相関を有する物理量であれば、他の物理量を採用してもよい。例えば、チラー15の熱媒体通路における熱媒体温度、チラー15の冷媒通路における冷媒温度、チラー15の冷媒通路における冷媒圧力等を、除霜条件に採用しても良い。又、複合型熱交換器21の吸熱部21bを通過する光量、吸熱部21bを通過する前後の風量、圧縮機11の回転数Nc等を採用することも可能である。
(8)又、上述した実施形態におけるステップS6等では、機器温度Twdと放熱完了温度KTrの比較により、発熱機器51の放熱が完了したか否かを判定していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、ステップS5において、発熱機器51の排熱を外気OAに対して放熱した時点からの経過時間によって、発熱機器51の放熱が完了したか否かを判定しても良い。
(9)更に、上述した実施形態におけるステップS10においては、第3熱媒体温度センサ73cで検出された熱媒体温度Twと、結露保護温度KTcとの比較によって、発熱機器51における結露に関する判定を行っている。この点、発熱機器51における結露の判定する為の物理量として、第5熱媒体温度センサ73eで検出される機器温度Twdを採用しても良い。
(10)そして、車両用空調装置1における冷凍サイクル10、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50は、上述の実施形態に開示されたものに限定されるものではない。
冷凍サイクル10の冷媒として、例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらのうち複数の冷媒を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路40及び機器側熱媒体回路50の熱媒体として、例えば、ジメチルポリシロキサン、或いはナノ流体等を含む溶液、不凍液、アルコール等を含む水系の液冷媒、オイル等を含む液媒体等を採用してもよい。