JP2020199020A - 脱臭材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、アンモニアの放散量が抑制された脱臭材を提供すること。【解決手段】担体と、該担体に担持されている、グアニジノ基を有する化合物、並びに周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有し、溶出試験により測定される、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%であることを特徴とする脱臭材。【選択図】なし

Description

本発明は、脱臭材及びその製造方法に関し、より詳しくは、グアニジノ基を有する化合物を含有する脱臭材及びその製造方法に関する。
従来から、家屋室内、車室内、工場内等における臭気成分(特に、悪臭物質)の除去を目的として、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物等の多孔性担体を利用した高活性の脱臭材が提案されている。特に、シックハウス症候群等に関連して注目されるホルムアルデヒドやタバコ臭の主要成分の一つであるアセトアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒドといった臭気物質の除去性能(以下、「脱臭性能」ともいう)に優れた脱臭材が提案されている。
例えば、特許3700909号公報(特許文献1)には、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)が、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合して、大きな結晶又は塊でない分子状態で高分散担持されている脱臭材が記載されており、その製造方法として、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)を溶液状態で接触させ、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の細孔中への前記脂肪族アミノカルボン酸溶液の浸入を促進する均一担持処理を行ったもとで、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させる方法が記載されており、前記均一担持処理として、
(1)予め減圧雰囲気下で細孔内が脱気された前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を含浸させ、及び/又は、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対する前記脂肪族アミノカルボン酸溶液の含浸を加圧雰囲気下に行う方法、
(2)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を浸漬した前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を煮沸する方法、
(3)超臨界流体を溶媒として含浸する方法、
のいずれかの処理を行うことが記載されている。
また、特許5174326号公報(特許文献2)には、グアニジノ基を有する化合物と塩基性物質とが担体に担持されている有機物質除去材が記載されており、この有機物質除去材がアルデヒド類や酢酸等の臭気の要因となる有機物質の除去に有効であることも記載されている。
特許3700909号公報 特許5174326号公報
しかしながら、特許文献1に記載の脱臭材の製造方法において、均一担持処理を施して含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の細孔中への脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の浸入を促進させても、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が効率よく進行しない場合があり、必ずしも十分に高い脱臭性能を有する脱臭材は得られていなかった。また、このようにして製造された脱臭材からは、かすかにアンモニア臭を感じる場合があり、脱臭材の用途、特に、衣類梱包用としての使用に制限があった。
また、特許文献2に記載の有機物質除去材は、アルデヒド類や酢酸等の酸性臭気の除去性能には優れているものの、有機物質除去材からのアンモニア臭の発生は必ずしも十分には抑制されておらず、有機物質除去材の用途、特に、衣類梱包用としての使用に制限があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、アンモニアの放散量が抑制された脱臭材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、担体と周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有する混合物に対して、グアニジノ基を有する化合物を含有し、該グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpHに調整されている添着液を接触させて、前記グアニジノ基を有する化合物を前記担体の外表面及び細孔内表面に担持させるとともに、前記金属化合物の少なくとも一部を金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素及び周期表第12族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在させることによって、優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、脱臭材からのアンモニアの放散量を抑制することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の脱臭材は、担体と、該担体に担持されている、グアニジノ基を有する化合物、並びに周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有し、溶出試験により測定される、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%であることを特徴とするものである。
また、本発明の脱臭材の製造方法は、担体と周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有する混合物に対して、グアニジノ基を有する化合物を含有し、該グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpHに調整されている添着液を接触させて、前記グアニジノ基を有する化合物を前記担体の外表面及び細孔内表面に担持させるとともに、前記金属化合物の少なくとも一部を金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素及び周期表第12族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在させることを特徴とする方法である。
本発明の脱臭材及びその製造方法においては、前記グアニジノ基を有する化合物が、アルギニン及びグアニジンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、前記金属化合物が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、さらに、前記担体が含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であることが好ましい。
なお、本発明において、「全グアニジノ基」は、イオン化していないグアニジノ基(下記式(1))と、このグアニジノ基にプロトンが付加したグアジニウムイオン(下記式(2))とを包含するものである。したがって、「全グアニジノ基の数」とは、イオン化していないグアニジノ基の数とグアジニウムイオンの数との合計を意味する。
また、本発明において、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合は以下の溶出試験によって測定されるものである。すなわち、脱臭材1.5gを秤量し、これに水50mlを加えて、周波数50kHz、出力100Wの超音波処理を5分間施した後、pH計を用いて懸濁液のpHを室温(23℃)で測定する。このようにして得られた懸濁液のpHから、グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図(pHとグアニジノ基を有する化合物の各電離状態の存在比率との関係を示す図)に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合を求めることができる。なお、グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図は、グアニジノ基を有する化合物のpKaを用いて求めることができる。このような電離平衡状態図の一例として、アルギニン(pK=1.82、pK=8.99、pK=12.48)の電離平衡状態図を図1に示す。例えば、グアニジノ基を有する化合物としてアルギニンが担持された脱臭材について前記溶出試験を行い、測定された懸濁液のpHが10.50である場合には、図1の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合は99%と求めることができる。
さらに、本発明の脱臭材が優れた低級アルデヒド類の除去性能を維持したまま、脱臭材からのアンモニアの放散量を抑制することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、グリシン等の脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)やアルギニン等のグアニジノ基を有する化合物は、アルカリ性領域においてアルデヒド類除去性能を発現する。しかしながら、前記脂肪族アミノカルボン酸はアルカリにより加水分解されやすいため、アルデヒド除去成分として前記脂肪族アミノカルボン酸が担持された脱臭材においては、その適性pH域(例えば、グリシンの場合にはpH10〜11)で微量のアンモニアが発生する。また、前記グアニジノ基を有する化合物は、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となる適性pH域(例えば、アルギニンの場合にはpH9.0〜11.2、グアニジンの場合にはpH9.0〜12.4)において比較的安定に存在し、優れたアルデヒド類除去性能を発現するものの、この適性pH域においてもアルカリによりわずかに加水分解されるため、アルデヒド除去材として前記グアニジノ基を有する化合物が担持された脱臭材においても、前記適性pH域で極微量のアンモニアが発生する。
一方、本発明の脱臭材においては、前記グアニジノ基を有する化合物に加えて、周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が担持されている。前記グアニジノ基を有する化合物は、上述したように、その適性pH域(例えば、アルギニンの場合にはpH9.0〜11.2、グアニジンの場合にはpH9.0〜12.4)において優れたアルデヒド類除去性能を発現する。前記周期表第2族元素を含む化合物は、水に難溶(25℃の水に対する溶解度積が1.0×10−4以下)であるが、脱臭材の適性pH域(例えば、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合にはpH9.0〜11.2、グアニジンの場合にはpH9.0〜12.4)においては、その少なくとも一部が水に溶解して周期表第2族元素の金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素を表す)〕を生成する。また、前記周期表第12族元素を含む化合物は、その一部が、脱臭材の適性pH域(例えば、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合にはpH9.0〜11.2、グアニジンの場合にはpH9.0〜12.4)において、水に溶解して周期表第12族元素の金属イオン〔M2+(Mは周期表第12族元素を表す)〕を生成する。そして、このようにして生成した前記周期表第2族元素の金属イオン及び前記周期表第12族元素の金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素及び周期表第12族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕がアンモニアと錯体を形成することによって、アンモニアが捕捉される。その結果、本発明の脱臭材においては、優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、脱臭材からのアンモニアの放散が抑制されると推察される。
本発明によれば、優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、脱臭材からのアンモニアの放散量を抑制することが可能となる。
アルギニンの電離平衡状態図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の脱臭材は、担体と、この担体に担持されている、グアニジノ基を有する化合物、並びに周期表第2族元素を含む化合物(アルカリ土類金属化合物)及び周期表第12族元素を含む化合物(亜鉛族元素化合物)からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有するものである。
また、本発明の脱臭材の製造方法は、担体と周期表第2族元素を含む化合物(アルカリ土類金属化合物)及び周期表第12族元素を含む化合物(亜鉛族元素化合物)からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有する混合物に対して、グアニジノ基を有する化合物を含有する添着液を接触させて、前記グアニジノ基を有する化合物を前記担体の外表面及び細孔内表面に担持させるとともに、前記金属化合物の少なくとも一部を金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素(アルカリ土類金属元素)及び周期表第12族元素(亜鉛族元素)からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在させる方法である。
先ず、本発明に用いられる担体、グアニジノ基を有する化合物、周期表第2族元素を含む化合物、周期表第12族元素を含む化合物について説明する。
(担体)
本発明に用いられる担体としては、グアニジノ基を有する化合物と、アルカリ土類金属化合物及び亜鉛族元素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを担持できるものであれば特に制限はなく、例えば、多孔性物質(活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカゲル、多孔質粘土鉱物等)、繊維、パルプ、布(織物布、不織布等)が挙げられる。これらの担体は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの担体のうち、担体自体もアルデヒド類除去性能を発現するという観点から、多孔性物質(活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカゲル、多孔質粘土鉱物等)が好ましく、多孔質粘土鉱物がより好ましく、含水珪酸塩系粘土鉱物が更に好ましく、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物が特に好ましい。
このような担体の形状としては特に制限はなく、例えば、シート状、板状、ハニカム状、繊維状、粒子状、粉末状が挙げられる。このような担体の大きさとしては特に制限はないが、例えば、繊維状の担体の場合、その平均直径としては0.01〜50μmが好ましく、0.05〜30μmがより好ましく、その平均長さとしては0.5μm〜50mmが好ましく、1μm〜10mmがより好ましく、平均アスペクト比としては10〜10000が好ましく、15〜1500がより好ましい。また、粒子状の担体の場合、その平均粒子径としては0.25〜4.75mmが好ましく、1〜2mmがより好ましい。このような大きさの担体は、例えば、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、ピンミル、叩解機等を用いて、湿式粉砕又は乾式粉砕することによって調製することができる。
前記多孔質粘土鉱物としては、例えば、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物等の含水珪酸塩系粘土鉱物が挙げられる。これらの含水珪酸塩系粘土鉱物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような含水珪酸塩系粘土鉱物の大きさ、形状としては特に制限はないが、通常、0.05〜0.6μm程度の直径を有する繊維状であり、一辺が0.6〜1nm程度の長方形断面の細孔(チャンネル)が繊維の長さ方向に平行に存在している。なお、前記細孔は、それ自身が雰囲気中の臭気成分や水蒸気を吸着する機能を有している。
また、このような含水珪酸塩系粘土鉱物は、そのまま使用してもよいが、適当な温度(例えば、800℃以下の温度)で仮焼した後、使用してもよい。さらに、使用時の形状としては特に制限はなく、例えば、粉末状、粒子状、板状等が挙げられるが、細孔が残留する程度に粉砕したものが好ましく、長さが10μm以下、アスペクト比が100以下の微結晶の集合体がより好ましい。含水珪酸塩系粘土鉱物を粉砕する方法としては特に制限はなく、例えば、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、ピンミル、叩解機等を用いて、湿式粉砕又は乾式粉砕する方法が挙げられる。
さらに、このような含水珪酸塩系粘土鉱物は、単独で使用してもよいが、パルプ、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、活性炭等の担体形成材料と混合して、シート状、顆粒状、ビーズ状、ペレット状、ハニカム成形品等の所望の形状の基材を成形してもよい。前記含水珪酸塩系粘土鉱物と前記担体形成材料との混合割合としては、粘土鉱物:担体形成材料(質量比)=20:80〜80:20が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。粘土鉱物:担体形成材料が前記下限未満になると、脱臭性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の強度が低下する傾向にある。
前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は含水珪酸マグネシウムを主成分として含有し、結晶水を配位した金属イオンを外表面及び/又は細孔内表面に有する多孔性担体である。前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物においては、ケイ素及びマグネシウムの一部が他の金属元素(例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、ナトリウム)に置換されていてもよい。また、多孔性担体の外表面及び/又は細孔内表面に存在する金属イオンは主としてマグネシウムイオンであり、このマグネシウムイオンに置換可能な結晶水が配位しているが、置換性の結晶水を配位するものであれば、多孔性担体の外表面及び/又は細孔内表面には、他の金属イオン(例えば、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン)が少量(例えば、2mol%以下)含まれていてもよい。
このような含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物としては、例えば、セピオライト、シロタイル、ラフリナイト、ファルコンドアイト、パリゴルスカイト等が挙げられる。また、通称でマウンテンコルク、マウンテンレザー、マウンテンウッド、海泡石、アタパルジャイトと呼ばれているものも該当する。これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物のうち、水に懸濁させた場合に、懸濁液がアルカリ性(例えば、pH9以上)を示すという観点から、セピオライトが好ましい。
(グアニジノ基を有する化合物)
本発明に用いられるグアニジノ基を有する化合物は、前記溶出試験により測定される、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%(好ましくは97〜100%、より好ましくは99〜100%)となるpH域(以下、「適性pH域」という)において、アルデヒド類(特に、低級アルデヒド類)の除去性能を発現するものである。このようなグアニジノ基を有する化合物としては、例えば、アルギニン(適性pH域:pH9.0〜11.2(好ましくはpH9.2〜11.0、より好ましくはpH9.5〜10.5))及びその塩、グアニジン(適性pH域:pH9.0〜12.4(好ましくはpH10.0〜12.0、より好ましくはpH10.5〜11.5))及びその塩が挙げられる。アルギニンの塩としては、グルタミン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、グアニジンの塩としては、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのグアニジノ基を有する化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのグアニジノ基を有する化合物のうち、前記適性pH域へのpH調整が容易であるという観点から、アルギニンそのもの及びグアニジンそのものが好ましく、アルギニンそのものがより好ましい。
(周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物)
本発明に用いられる周期表第2族元素を含む化合物は、得られる脱臭材の適性pH域(すなわち、前記グアニジノ基を有する化合物の適性pH域)において、周期表第2族元素(アルカリ土類金属元素)の金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素(アルカリ土類金属元素))〕を生成するアルカリ土類金属化合物であり、また、本発明に用いられる周期表第12族元素を含む化合物は、得られる脱臭材の適性pH域(すなわち、前記グアニジノ基を有する化合物の適性pH域)において、周期表第12族元素(亜鉛族元素)の金属イオン〔M2+(Mは周期表第12族元素(亜鉛族元素))〕を生成する亜鉛族元素化合物であって、前記金属イオンM2+(Mはアルカリ土類金属元素又は亜鉛族元素)がアンモニアと錯体を形成することによって、アンモニアを捕捉できる金属化合物である。このような金属化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記アルカリ土類金属元素としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられる。また、前記亜鉛族元素としては、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)が挙げられる。これらの金属元素は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの金属元素のうち、環境負荷が少なく、安全性、コスト、比重の観点から、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)が好ましく、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)がより好ましい。
また、前記アルカリ土類金属化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩が挙げられ、前記亜鉛族元素化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩、硫化物、塩基性塩化物、塩基性硫酸塩が挙げられる。これらの金属化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記アルカリ土類金属化合物のうち、化合物中の全元素に対してアルカリ土類金属元素が占める割合が多いという観点から、酸化物、水酸化物、炭酸塩が好ましく、酸化物、水酸化物がより好ましく、酸化物が更に好ましい。また、前記亜鉛族元素化合物のうち、少量の添加量で脱臭材からのアンモニアの放散がより抑制されるという観点から、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩が好ましく、酸化物、水酸化物、炭酸塩がより好ましく、酸化物が更に好ましい。
さらに、前記金属化合物としては、25℃の水に対する溶解度積が1.0×10−18〜1.0×10−4の範囲内(より好ましくは、1.0×10−11〜1.0×10−5の範囲内)となるものが好ましい。25℃の水に対する溶解度積が前記下限未満となる前記金属化合物を用いると、前記金属イオンとアンモニアとの錯体形成が起こりにくく、脱臭材からのアンモニアの放散が十分に抑制されない傾向にあり、他方、25℃の水に対する溶解度積が前記上限を超える前記金属化合物を用いると、抄紙した場合等において、前記金属化合物が多量の水に溶解して歩留りが低下する傾向にある。25℃の水に対する溶解度積が前記範囲内となる前記金属化合物としては、水酸化マグネシウム(例えば、25℃の水に対する溶解度積:1.2×10−11)、酸化マグネシウム(25℃の水に対する溶解度積:1.0×10−7)、炭酸マグネシウム(25℃の水に対する溶解度積:1.0×10−5)、水酸化亜鉛(25℃の水に対する溶解度積:1.2×10−17)、酸化亜鉛(25℃の水に対する溶解度積:3.9×10−10)、炭酸亜鉛(25℃の水に対する溶解度積:1.4×10−11)、塩基性炭酸亜鉛(25℃の水に対する溶解度積:1×10−14)、炭酸カルシウム(25℃の水に対する溶解度積:3.6×10−9)、炭酸バリウム(25℃の水に対する溶解度積:2.6×10−9)が挙げられる。これらの金属化合物のうち、安全性、コスト、比重、アンモニアとの錯体形成の観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましく、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛がより好ましく、酸化マグネシウム、酸化亜鉛が特に好ましい。
<脱臭材>
次に、本発明の脱臭材について説明する。本発明の脱臭材は、前記担体と、この担体に担持されている、前記グアニジノ基を有する化合物、並びに前記アルカリ土類金属化合物及び前記亜鉛族元素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有し、前記溶出試験により測定される、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%の範囲内にあるものである。前記グアニジウムイオンの数の割合が95%未満になると、pHが高くなり、前記グアニジノ基を有する化合物からのアンモニア臭の発生が起こりやすくなる。また、アルデヒド類除去性能とアンモニア放散抑制とをより高度に両立させるという観点から、前記グアニジウムイオンの数の割合の下限としては97%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
前記グアニジノ基を有する化合物の担持量としては、優れたアルデヒド類除去性能が得られる量であれば特に制限はないが、前記担体100質量部に対して、0.01〜100質量部が好ましく、0.1〜80質量部がより好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。前記グアニジノ基を有する化合物の担持量が前記下限未満になると、アルデヒド類除去性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記グアニジノ基を有する化合物が大きな(例えば、直径が100μm以上の)結晶又は塊となって前記担体上に析出するため、前記グアニジノ基を有する化合物の担持量に見合ったアルデヒド類除去性能が発現しない傾向にある。
前記金属化合物の担持量としては、脱臭材からのアンモニアの放散が十分に抑制できる量であれば特に制限はないが、前記担体100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、2〜25質量部がより好ましく、5〜20質量部が特に好ましい。前記金属化合物の担持量が前記下限未満になると、脱臭材からのアンモニアの放散が十分に抑制されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、相対的に前記担体の含有量が減少することにより、前記グアニジノ基を有する化合物の担持量が減少するため、アルデヒド類除去性能が低下する傾向にある。
<脱臭材の製造方法>
次に、本発明の脱臭材の製造方法について説明する。本発明の脱臭材の製造方法においては、前記担体と前記アルカリ土類金属化合物及び前記亜鉛族元素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有する混合物に対して、前記グアニジノ基を有する化合物を含有し、前記グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpHに調整されている添着液を接触させる。これにより、前記グアニジノ基を有する化合物が前記担体の外表面及び細孔内表面に担持されるとともに、前記金属化合物の少なくとも一部が金属イオン〔M2+(Mは前記アルカリ土類金属元素及び前記亜鉛族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在する脱臭材を得ることができる。
前記混合物中の前記金属化合物の含有量としては、得られる脱臭材において、アンモニアの放散が十分に抑制できる量であれば特に制限はないが、前記担体100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、2〜25質量部がより好ましく、5〜20質量部が特に好ましい。前記金属化合物の含有量が前記下限未満になると、得られる脱臭材において、アンモニアの放散が十分に抑制されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、相対的に前記担体の含有量が減少することにより、前記グアニジノ基を有する化合物の担持量が減少するため、アルデヒド類除去性能が低下する傾向にある。
前記添着液の調製方法としては、先ず、前記グアニジノ基を有する化合物を水に溶解し、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液を調製する。前記グアニジノ基を有する化合物の濃度としては1〜150g/Lが好ましく、10〜100g/Lがより好ましい。前記グアニジノ基を有する化合物の濃度が前記下限未満になると、前記担体への前記グアニジノ基を有する化合物の担持量が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記グアニジノ基を有する化合物が大きな結晶又は塊となって前記担体に担持される傾向にある。
次に、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHとして、前記グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%(好ましくは97〜100%、より好ましくは99〜100%)となるpHを設定する。例えば、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合には、図1に示すアルギニンの電離平衡状態図に基づいて、前記グアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpH9.0〜11.2の範囲内のpHをアルギニン水溶液のpHとして設定する。また、前記グアニジノ基を有する化合物がグアニジンの場合には、前記グアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpH9.0〜12.4の範囲内のpHをグアニジン水溶液のpHとして設定する。前記上限を超えるpH、すなわち、前記グアニジウムイオンの数の割合が前記下限未満となるpHを、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHとして設定すると、前記グアニジノ基を有する化合物からのアンモニア臭の発生が起こりやすくなる。他方、前記下限未満のpHを前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHとして設定すると、前記グアニジウムイオンの数の割合は100%となるものの、前記金属化合物が水に溶解して歩留りが低下する傾向にある。また、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHの下限としては、前記金属化合物の金属イオンM2+(Mはアルカリ土類金属元素又は亜鉛族元素)が生成し、かつ、前記金属化合物の溶解度が最小になるという観点から、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合には、pH9.2以上が好ましく、pH9.5以上がより好ましく、前記グアニジノ基を有する化合物がグアニジンの場合には、pH10.0以上が好ましく、pH10.5以上がより好ましい。さらに、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHの上限としては、前記グアニジウムイオンの数の割合が97%以上になるという観点から、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合には、pH11.0以下が好ましく、前記グアニジノ基を有する化合物がグアニジンの場合には、pH12.0以下が好ましく、前記グアニジウムイオンの数の割合が99%以上になるという観点から、前記グアニジノ基を有する化合物がアルギニンの場合には、pH10.5以下がより好ましく、前記グアニジノ基を有する化合物がグアニジンの場合には、pH11.5以下がより好ましい。
次に、このようにして設定したpHとなるように、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液に酸を徐々に添加して、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHを調整する。前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。これらの酸は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
次に、このようにしてpHを調整した前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液(添着液)を、前記担体と前記金属化合物との混合物に接触させる。これにより、前記担体に前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液が含浸する。また、前記混合物に接触させる前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液のpHが脱臭材の適性pH域(すなわち、前記グアニジノ基を有する化合物の適性pH域)であるため、前記金属化合物の少なくとも一部は、金属イオン〔M2+(Mはアルカリ土類金属元素及び亜鉛族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在する。
前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液を前記混合物に接触させる方法としては特に制限はなく、例えば、前記グアニジノ基を有する化合物水溶液を前記混合物に噴霧する方法、前記混合物を前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液に浸漬する方法等が挙げられる。また、接触処理の際の温度としては、室温〜40℃が好ましい。
その後、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液を含浸した前記混合物を乾燥して、溶媒である水を除去することによって、前記担体に前記グアニジノ基を有する化合物が担持される。また、脱臭材のpHが適性pH域(すなわち、前記グアニジノ基を有する化合物の適性pH域)となるため、前記金属化合物は、脱臭材中において、金属イオン〔M2+(Mはアルカリ土類金属元素及び亜鉛族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在する。乾燥温度としては、60〜150℃が好ましく、また、乾燥時間としては0.1〜5時間が好ましい。
また、本発明の脱臭材の製造方法においては、前記担体の外表面及び細孔内表面に前記グアニジノ基を有する化合物を分子状態でかつ均一に高分散担持させるために、下記の均一担持処理を行なってもよい。また、下記(1)及び(2)の方法を併用することが好ましい。
(1)予め減圧(好ましくは、20Torr以下)雰囲気下で細孔内が脱気された前記担体と前記金属化合物との混合物に対して前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液を含浸させる方法(負圧法)。これにより、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、前記グアニジノ基を有する化合物が細孔内表面に十分に担持される。
(2)前記担体と前記金属化合物との混合物に対する前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液の含浸を加圧(好ましくは、10気圧以上)雰囲気下に行う方法(正圧法)。これにより、前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、前記グアニジノ基を有する化合物が細孔内表面に十分に担持される。
(3)前記担体と前記金属化合物との混合物を浸漬した前記グアニジノ基を有する化合物の水溶液を煮沸する方法。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
容量1Lのポリ容器にイオン交換水100mlを入れ、これに含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であるセピオライト(近江鉱業株式会社製「P150」、平均直径:0.1μm、平均アスペクト比:20)0.8g及び酸化マグネシウム(MgO、飽和水溶液のpH10.3、25℃の水に対する溶解度積:1.0×10−7)0.08gを投入し、十分に攪拌した。次いで、直径11cmのろ紙(アズワン株式会社製「Code No.2−873−03」、最大孔径:20〜25μm、質量:83g/m)を用いて吸引ろ過を行い、セピオライトと酸化マグネシウムとの混合物をろ別した。その後、ろ紙上の残渣(セピオライトと酸化マグネシウムとの混合物)をそのままの状態で室温で風乾させた。
一方、グアニジノ基を有する化合物であるアルギニン(pK=12.48)10gをイオン交換水100mlに溶解してアルギニン水溶液を調製した。次いで、図1に示したアルギニンの電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が99%となるpHとしてpH10.50を設定し、前記アルギニン水溶液に0.1mol/Lの塩酸を徐々に添加して前記アルギニン水溶液のpHをpH10.50に調整した。
次に、添着液である前記アルギニン水溶液(pH10.50)2.6ml(飽和量相当)をピペットを用いて前記残渣に滴下してろ紙ごと含浸させた後、105℃で1時間乾燥させることにより、セピオライトにアルギニンと酸化マグネシウムとが担持した脱臭材を得た。
(実施例2)
酸化マグネシウム(MgO)の代わりに酸化亜鉛(ZnO、飽和水溶液のpH7、25℃の水に対する溶解度積:3.9×10−10)0.08gを用いた以外は実施例1と同様にして、セピオライトにアルギニンと酸化亜鉛とが担持した脱臭材を得た。
(比較例1)
酸化マグネシウムを使用せず、添着液として、グリシン(pK=9.78)10gをイオン交換水100mlに溶解し、さらに、炭酸ナトリウムを徐々に添加してpHを10.09に調整したグリシン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、セピオライトにグリシンが担持した脱臭材を得た。
(比較例2)
酸化マグネシウムを使用せず、添着液として、アルギニン(pK=12.48)10gと炭酸ナトリウム12.14gとをイオン交換水100mlに溶解して調製したアルギニン水溶液(pH12.74)を用いた以外は実施例1と同様にして、セピオライトにアルギニンと炭酸ナトリウムとが担持した脱臭材を得た。
<溶出試験>
実施例及び比較例で得られた脱臭材1.5gを秤量し、これに水50mlを加えて、周波数50kHz、出力100Wの超音波処理を5分間施した後、pH計を用いて懸濁液のpHを室温(23℃)で測定した。また、図1に示したアルギニンの電離平衡状態図に基づいて、得られた懸濁液のpHから全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合を求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1には、使用した添着液のpH、並びに、図1に示したアルギニンの電離平衡状態図に基づいて求めた前記添着液のpHに対応する全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合も示した。
<アルデヒド除去性能試験>
実施例及び比較例で得られた脱臭材をそれぞれろ紙とともに、容量1Lのガス非透過性の袋に入れ、アセトアルデヒド(CHCHO,97.03ppm)と窒素(残部)との混合ガス1Lを導入した後、密封した。各袋を室温の実験室内で1時間静置した。その後、袋内のアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフ(FID検出器)を用いて測定し、アセトアルデヒド除去率を算出した。その結果を表1に示す。
<アンモニア除去性能試験>
実施例及び比較例で得られた脱臭材をそれぞれろ紙とともに、容量1Lのガス非透過性の袋に入れ、空気1Lを導入した後、密封した。各袋を室温の実験室内で18時間静置した。その後、袋内のアンモニア(NH)濃度を北川式ガス検知管を用いて測定した。その結果を表1に示す。
表1に示したように、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が99%となるpH10.50のアルギニン水溶液を添着液として用いて、担体にアルギニンと酸化マグネシウム又は酸化亜鉛とを担持させた場合(実施例1〜2)には、溶出試験により測定された、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合は99.5〜99.8%であり、設定したグアニジウムイオンの数の割合にほぼ合致する脱臭材が得られることが確認された。
また、担体に全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が所定の範囲内にあるアルギニンと酸化マグネシウム又は酸化亜鉛とが担持された脱臭材(実施例1〜2)は、担体に全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数が95%未満のアルギニンと炭酸ナトリウムとが担持された脱臭材(比較例2)とほぼ同等のアセトアルデヒド除去性能を有することが確認された。
さらに、担体に全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が所定の範囲内にあるアルギニンと酸化マグネシウム又は酸化亜鉛とが担持された脱臭材(実施例1〜2)は、担体にグリシンが担持された脱臭材(比較例1)及び担体に全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数が95%未満のアルギニンと炭酸ナトリウムとが担持された脱臭材(比較例2)に比べて、袋内のアンモニア濃度が低くなることが確認された。
以上の結果から、担体に、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が所定の範囲内にあるグアニジノ基を有する化合物とアルカリ土類金属化合物及び亜鉛族元素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを担持させることによって、優れたアルデヒド類除去性能を維持したまま、アンモニアの放散量が抑制された脱臭材が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、担体にグアニジノ基を有する化合物を、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が所定の範囲内となるように担持させることができ、優れたアルデヒド類除去性能を有する脱臭材を得ることが可能となる。このような脱臭材は、例えば、ホルムアルデヒドを含む空気と接触させることにより、前記グアニジノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとが反応してイミン化合物が生成するため、効率よく無害化・無臭化することが可能である。また、前記本発明の脱臭材は、アルカリ土類金属化合物及び亜鉛族元素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が前記担体に担持されており、この金属化合物の少なくとも一部が、脱臭材の適性pH域(すなわち、前記グアニジノ基を有する化合物の適性pH域)において、金属イオン〔M2+(Mはアルカリ土類金属元素及び亜鉛族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕を生成するため、前記グアニジノ基を有する化合物のアルカリ加水分解により発生するアンモニアが捕捉され、脱臭材からのアンモニアの放散を抑制することが可能となる。
したがって、本発明の脱臭材は、家屋室内、車室内、工場内等における、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒド、有機酸、硫化水素、ニコチン、その他の各種臭気成分の除去だけでなく、梱包された衣類や家具等における、低級脂肪族アルデヒド、有機酸、硫化水素、ニコチン、その他の各種臭気成分の除去に特に有用である。

Claims (8)

  1. 担体と、該担体に担持されている、グアニジノ基を有する化合物、並びに周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有し、
    溶出試験により測定される、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%であることを特徴とする脱臭材。
  2. 前記グアニジノ基を有する化合物が、アルギニン及びグアニジンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の脱臭材。
  3. 前記金属化合物が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱臭材。
  4. 前記担体が含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であることを特徴とする脱臭材の請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の脱臭材。
  5. 担体と周期表第2族元素を含む化合物及び周期表第12族元素を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物とを含有する混合物に対して、グアニジノ基を有する化合物を含有し、該グアニジノ基を有する化合物の電離平衡状態図に基づいて、全グアニジノ基の数に対するグアニジウムイオンの数の割合が95〜100%となるpHに調整されている添着液を接触させて、前記グアニジノ基を有する化合物を前記担体の外表面及び細孔内表面に担持させるとともに、前記金属化合物の少なくとも一部を金属イオン〔M2+(Mは周期表第2族元素及び周期表第12族元素からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を表す)〕が生成する状態で存在させることを特徴とする脱臭材の製造方法。
  6. 前記グアニジノ基を有する化合物が、アルギニン及びグアニジンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の脱臭材の製造方法。
  7. 前記金属化合物が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5又は6に記載の脱臭材の製造方法。
  8. 前記担体が含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であることを特徴とする脱臭材の請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の脱臭材の製造方法。
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