JP2019063432A - 脱臭材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より高い脱臭性能を有する脱臭材を得ることが可能な脱臭材の製造方法を提供すること。【解決手段】含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、アルカリを添加することによりpHが(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整されている脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させ、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させることを特徴とする脱臭材の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、脱臭材の製造方法に関し、より詳しくは、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を用いた脱臭材の製造方法に関する。
従来から、家屋室内、車室内、工場内等における臭気成分(特に、悪臭物質)の除去を目的として、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物等の多孔性担体を利用した高活性の脱臭材が提案されている。特に、悪臭物質として、シックハウス症候群等に関連して注目されるホルムアルデヒドやタバコ臭の主要成分の一つであるアセトアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒドの除去性能に優れた脱臭材が提案されている。
例えば、特許3700909号公報(特許文献1)には、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)が、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合して、大きな結晶又は塊でない分子状態で高分散担持されている脱臭材が記載されており、その製造方法として、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)を溶液状態で接触させ、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の細孔中への前記脂肪族アミノカルボン酸溶液の浸入を促進する均一担持処理を行ったもとで、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させる方法が記載されており、前記均一担持処理として、
(1)予め減圧雰囲気下で細孔内が脱気された前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を含浸させ、及び/又は、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対する前記脂肪族アミノカルボン酸溶液の含浸を加圧雰囲気下に行う方法、
(2)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を浸漬した前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を煮沸する方法、
(3)超臨界流体を溶媒として含浸する方法、
のいずれかの処理を行うことが記載されている。
(1)予め減圧雰囲気下で細孔内が脱気された前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を含浸させ、及び/又は、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対する前記脂肪族アミノカルボン酸溶液の含浸を加圧雰囲気下に行う方法、
(2)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を浸漬した前記脂肪族アミノカルボン酸溶液を煮沸する方法、
(3)超臨界流体を溶媒として含浸する方法、
のいずれかの処理を行うことが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の脱臭材の製造方法において、均一担持処理を施して含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の細孔中への脂肪族アミノカルボン酸の浸入を促進させても、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が効率よく進行しない場合があり、必ずしも十分に高い脱臭性能を有する脱臭材は得られていなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、より高い脱臭性能を有する脱臭材を得ることが可能な脱臭材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させ、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させる脱臭材の製造方法において、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHを特定の範囲内に調整することによって、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が効率よく進行し、より高い脱臭性能を有する脱臭材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の脱臭材の製造方法は、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、アルカリを添加することによりpHが(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整されている脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させ、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させることを特徴とする。
本発明の脱臭材の製造方法において、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHは11.5以下であることが好ましい。
また、本発明の脱臭材の製造方法において、前記アルカリが炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、及び水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物がセピオライトであることが好ましく、前記脂肪族アミノカルボン酸がグリシンであることが好ましい。
なお、本発明の脱臭材の製造方法によって、より高い脱臭性能を有する脱臭材が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の脱臭材の製造方法において、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させると、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位している結晶水に、脂肪族アミノカルボン酸中の配位結合基(前記結晶水と交換可能な基、例えば、カルボキシル基)が置換することによって、前記金属イオンに脂肪族アミノカルボン酸が分子毎に配位結合する。その結果、溶媒である水を除去する際に脂肪族アミノカルボン酸が塊状に凝集したり結晶化したりすることが抑制され、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面に脂肪族アミノカルボン酸を分子状態で高分散担持することが可能となる。このとき、アルカリを添加して前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHを(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整すると、前記脂肪族アミノカルボン酸のカルボキシル基(−COOH)は、アルカリによって中和されてカルボキシレート(−COO−)の状態となり、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位している結晶水と効率よく置換し、より多くの量の脂肪族アミノカルボン酸が分子状態で高分散担持されると推察される。このように、多くの量の脂肪族アミノカルボン酸を分子状態で高分散担持させることによって、脂肪族アミノカルボン酸と臭気成分との接触頻度が多くなり、脱臭材の脱臭性能が向上すると推察される。
本発明によれば、より高い脱臭性能を有する脱臭材を得ることが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の脱臭材の製造方法は、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、アルカリを添加することによりpHが(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整されている脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させ、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させる方法である。
先ず、本発明に用いられる含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物、脂肪族アミノカルボン酸、及びアルカリについて説明する。
〔含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物〕
本発明に用いられる含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、含水珪酸マグネシウムを主成分として含有し、結晶水を配位した金属イオンを表面に有する多孔性担体である。ここで、「多孔性担体」とは、多数の細孔を有する担体を意味し、「表面」とは、多孔性担体の外表面及び/又は細孔内表面を意味する。また、「結晶水を配位した」という概念には、金属イオンに元々配位していた結晶水が既に他の任意の置換性原子団により置換されており、前記置換性原子団が前記脂肪族アミノカルボン酸により置換され得る状態にある場合も包含される。
本発明に用いられる含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、含水珪酸マグネシウムを主成分として含有し、結晶水を配位した金属イオンを表面に有する多孔性担体である。ここで、「多孔性担体」とは、多数の細孔を有する担体を意味し、「表面」とは、多孔性担体の外表面及び/又は細孔内表面を意味する。また、「結晶水を配位した」という概念には、金属イオンに元々配位していた結晶水が既に他の任意の置換性原子団により置換されており、前記置換性原子団が前記脂肪族アミノカルボン酸により置換され得る状態にある場合も包含される。
本発明に用いられる含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物においては、ケイ素及びマグネシウムの一部が他の金属元素(例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、ナトリウム)に置換されていてもよい。また、表面に存在する金属イオンは主としてマグネシウムイオンであるが、置換性の結晶水を配位するものであれば、他の金属イオン(例えば、アルミニウムイオン、鉄イオン、ニッケルイオン)が少量(例えば、2mol%以下)含まれていてもよい。
このような含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物としては、例えば、セピオライト、シロタイル、ラフリナイト、ファルコンドアイト、パリゴルスカイト等が挙げられる。また、通称でマウンテンコルク、マウンテンレザー、マウンテンウッド、海泡石、アタパルジャイトと呼ばれているものも該当する。これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物のうち、水に懸濁させた場合に、懸濁液がアルカリ性(例えば、pH9以上)を示すという観点から、セピオライトが好ましい。
また、このような含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の大きさ、形状としては特に制限はないが、通常、0.05〜0.6μm程度の直径を有する繊維状であり、一辺が0.6〜1nm程度の長方形断面の細孔(チャンネル)が繊維の長さ方向に平行に存在している。また、細孔内外にはマグネシウムに配位した置換可能な結晶水が存在している。なお、前記細孔は、それ自身が雰囲気中の臭気成分や水蒸気を吸着する機能を有している。
これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、そのまま使用してもよいが、適当な温度(例えば、800℃以下の温度)で仮焼した後、使用してもよい。また、使用時の形状としては特に制限はなく、例えば、粉末状、粒状、板状等が挙げられるが、細孔が残留する程度に粉砕したものが好ましく、長さが10μm以下、アスペクト比が100以下の微結晶の集合体がより好ましい。含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を粉砕する方法としては特に制限はなく、例えば、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、ピンミル、叩解機等を用いて、湿式粉砕又は乾式粉砕する方法が挙げられる。
また、これらの含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は、単独で使用してもよいが、パルプ、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、活性炭、ゼオライト等の基材形成材料と混合して、シート状、顆粒状、ビーズ状、ペレット状、ハニカム成形品等の所望の形状の基材を成形してもよい。前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物と前記基材形成材料との混合割合としては、粘土鉱物:基材形成材料(質量比)=20:80〜80:20が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。粘土鉱物:基材形成材料が前記下限未満になると、脱臭性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の強度が低下する傾向にある。
〔脂肪族アミノカルボン酸〕
本発明に用いられる脂肪族アミノカルボン酸は、ジアミノ化合物以外の脂肪族アミノカルボン酸である。この脂肪族アミノカルボン酸が前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に担持されると、配位結合基である脂肪族アミノカルボン酸のカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシレート(−COO−)が含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の金属イオンに配位結合し、脱臭官能基である脂肪族アミノカルボン酸のアミノ基がフリーの状態となる。このとき、脱臭官能基であるアミノ基(特に、第1級アミノ基)においては電子の局在化状態が強まり、臭気成分に対する反応性が強化され、高い脱臭性能が得られる。
本発明に用いられる脂肪族アミノカルボン酸は、ジアミノ化合物以外の脂肪族アミノカルボン酸である。この脂肪族アミノカルボン酸が前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に担持されると、配位結合基である脂肪族アミノカルボン酸のカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシレート(−COO−)が含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の金属イオンに配位結合し、脱臭官能基である脂肪族アミノカルボン酸のアミノ基がフリーの状態となる。このとき、脱臭官能基であるアミノ基(特に、第1級アミノ基)においては電子の局在化状態が強まり、臭気成分に対する反応性が強化され、高い脱臭性能が得られる。
このような脂肪族アミノカルボン酸としては、例えば、グリシン(pK2=9.78)、アラニン(pK2=9.87)、バリン(pK2=9.74)、ロイシン(pK2=9.74)、イソロイシン(pK2=9.76)、アスパラギン酸(pK2=9.90)、グルタミン酸(pK2=9.13)が挙げられる。なお、pK2は双生イオンと陰イオンとの間の解離定数である。これらの脂肪族アミノカルボン酸は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの脂肪族アミノカルボン酸のうち、分子サイズが小さく、水に対する溶解度が大きいという観点から、グリシンが好ましい。
〔アルカリ〕
本発明に用いられるアルカリとしては、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHを(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内に調整できるものであれば特に制限はないが、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらのアルカリは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるアルカリとしては、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHを(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内に調整できるものであれば特に制限はないが、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらのアルカリは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
〔脱臭材の製造方法〕
次に、本発明の脱臭材の製造方法について説明する。本発明の脱臭材の製造方法においては、先ず、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を調製する。前記脂肪族アミノカルボン酸の濃度としては、10〜200g/Lが好ましく、50〜150g/Lがより好ましい。前記脂肪族アミノカルボン酸の濃度が前記下限未満になると、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物への前記脂肪族アミノカルボン酸の担持量が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記置換反応に至る前に前記脂肪族アミノカルボン酸が大きな結晶として析出する傾向にある。
次に、本発明の脱臭材の製造方法について説明する。本発明の脱臭材の製造方法においては、先ず、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を調製する。前記脂肪族アミノカルボン酸の濃度としては、10〜200g/Lが好ましく、50〜150g/Lがより好ましい。前記脂肪族アミノカルボン酸の濃度が前記下限未満になると、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物への前記脂肪族アミノカルボン酸の担持量が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記置換反応に至る前に前記脂肪族アミノカルボン酸が大きな結晶として析出する傾向にある。
次に、調製した前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液に前記アルカリを添加して、pHが(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整する。なお、pK2は、脂肪族アミノカルボン酸の双生イオンと陰イオンとの間の解離定数である。前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHが前記下限未満になると、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が進行しにくく、前記脂肪族アミノカルボン酸の担持量が減少し、脱臭性能が低下する。他方、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHが前記上限を超えると、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は溶解して構造が崩壊するため、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が進行せず、前記脂肪族アミノカルボン酸の担持量が減少し、脱臭性能が低下する。また、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の表面積が減少するため、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物による臭気成分の吸着能が低下し、脱臭性能が低下する。前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHとしては、前記置換反応が進行しやすく、脱臭性能が向上するという観点から、(pK2+0.3)〜(pK2+1.2)の範囲内となるように調整することが好ましい。
また、本発明の脱臭材の製造方法においては、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHが11.5以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましい。前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHが前記上限を超えると、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物は溶解して構造が崩壊するため、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が進行せず、前記脂肪族アミノカルボン酸の担持量が減少し、脱臭性能が低下する傾向にある。また、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の表面積が減少するため、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物による臭気成分の吸着能が低下し、脱臭性能が低下する傾向にある。
次に、このようにしてpHを調整した前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に接触させる。これにより、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液が含浸し、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水と前記脂肪族アミノカルボン酸との置換反応が進行し、前記金属イオンに前記脂肪族アミノカルボン酸のカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシレート(−COO−)が配位結合することによって、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に前記脂肪族アミノカルボン酸が大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持される。
前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に接触させる方法としては特に制限はなく、例えば、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に噴霧する方法、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液に浸漬する方法等が挙げられる。また、接触処理の際の温度としては、室温〜40℃が好ましい。
その後、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を含浸した前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を乾燥して、溶媒である水を除去することによって、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に前記脂肪族アミノカルボン酸が分子状態でかつ均一に高分散担持される。乾燥温度としては、60〜150℃が好ましく、また、乾燥時間としては0.1〜5時間が好ましい。
また、本発明の脱臭材の製造方法においては、前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面に前記脂肪族アミノカルボン酸を分子状態でかつ均一に高分散担持させる方法として、下記の均一担持処理を行なってもよい。また、下記(1)及び(2)の方法を併用することが好ましい。
(1)予め減圧(好ましくは、20Torr以下)雰囲気下で細孔内が脱気された前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を含浸させる方法(負圧法)。これにより、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、細孔内表面の金属イオンにおいても前記脂肪族アミノカルボン酸が十分に置換、担持される。
(2)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対する前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液の含浸を加圧(好ましくは、10気圧以上)雰囲気下に行う方法(正圧法)。これにより、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、細孔内表面の金属イオンにおいても前記脂肪族アミノカルボン酸が十分に置換、担持される。
(3)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を浸漬した前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を煮沸する方法。
(1)予め減圧(好ましくは、20Torr以下)雰囲気下で細孔内が脱気された前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を含浸させる方法(負圧法)。これにより、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、細孔内表面の金属イオンにおいても前記脂肪族アミノカルボン酸が十分に置換、担持される。
(2)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対する前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液の含浸を加圧(好ましくは、10気圧以上)雰囲気下に行う方法(正圧法)。これにより、前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液は細孔内へ良好に浸入し、細孔内表面の金属イオンにおいても前記脂肪族アミノカルボン酸が十分に置換、担持される。
(3)前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物を浸漬した前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液を煮沸する方法。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材であるパルプと、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であるセピオライト(近江鉱業株式会社製「P150」、平均直径:0.1μm、平均アスペクト比:20)と、水とを、パルプとセピオライトとの質量比が50:50となるように混合した。得られたスラリー状混合物を連続式抄紙機により抄紙し、セピオライト紙を作製した。このセピオライト紙の坪量は120g/m2であった。
基材であるパルプと、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物であるセピオライト(近江鉱業株式会社製「P150」、平均直径:0.1μm、平均アスペクト比:20)と、水とを、パルプとセピオライトとの質量比が50:50となるように混合した。得られたスラリー状混合物を連続式抄紙機により抄紙し、セピオライト紙を作製した。このセピオライト紙の坪量は120g/m2であった。
一方、脂肪族アミノカルボン酸であるグリシン(pK2=9.78)10gをイオン交換水100mlに溶解した後、得られたグリシン水溶液に炭酸ナトリウムを徐々に添加してpHを10.29に調整した。
次に、25℃の温度条件下でスプレーを用いて、このグリシン水溶液をA4サイズに裁断した前記セピオライト紙にグリシンの担持量が1m2当たり7.4gとなるように含浸させた後、105℃で1時間乾燥させることにより、脱臭材を得た。
(比較例1)
グリシン水溶液のpHを9.71に調整した以外は実施例1と同様にして脱臭材を得た。
グリシン水溶液のpHを9.71に調整した以外は実施例1と同様にして脱臭材を得た。
(比較例2)
炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムを用い、グリシン水溶液のpHを8.25に調整した以外は実施例1と同様にして脱臭材を得た。
炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムを用い、グリシン水溶液のpHを8.25に調整した以外は実施例1と同様にして脱臭材を得た。
<脱臭性能試験>
実施例1及び比較例1〜2で得られた各脱臭材について、種々の量の脱臭材をそれぞれ容量5Lのガス非透過性の袋に入れ、さらに、トリオキサン触媒分解方式によりホルムアルデヒドを発生させるホルムアルデヒド標準ガス発生器(エステック社製「TU−2001」)を用いて濃度650ppmのホルムアルデヒドを含む空気5Lを入れて密封した。各袋を25℃に保持した恒温恒湿槽内で24時間静置した後、袋内のホルムアルデヒド濃度をガス検知管で測定して脱臭材単位質量当たりのホルムアルデヒド吸着量を求め、これをホルムアルデヒド濃度に対してプロットして、各脱臭材について、吸着等温線を求めた。得られた吸着等温線にFreundlich型の吸着等温式:
q=aCn
(式中、qはホルムアルデヒド吸着量[mg/g−脱臭材]を表し、Cはホルムアルデヒド濃度[ppm]を表し、a及びnは定数である)を当てはめて定数a及びnを求め、ホルムアルデヒド平衡濃度が0.1ppmの場合のホルムアルデヒド平衡吸着量を算出した。その結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1〜2で得られた各脱臭材について、種々の量の脱臭材をそれぞれ容量5Lのガス非透過性の袋に入れ、さらに、トリオキサン触媒分解方式によりホルムアルデヒドを発生させるホルムアルデヒド標準ガス発生器(エステック社製「TU−2001」)を用いて濃度650ppmのホルムアルデヒドを含む空気5Lを入れて密封した。各袋を25℃に保持した恒温恒湿槽内で24時間静置した後、袋内のホルムアルデヒド濃度をガス検知管で測定して脱臭材単位質量当たりのホルムアルデヒド吸着量を求め、これをホルムアルデヒド濃度に対してプロットして、各脱臭材について、吸着等温線を求めた。得られた吸着等温線にFreundlich型の吸着等温式:
q=aCn
(式中、qはホルムアルデヒド吸着量[mg/g−脱臭材]を表し、Cはホルムアルデヒド濃度[ppm]を表し、a及びnは定数である)を当てはめて定数a及びnを求め、ホルムアルデヒド平衡濃度が0.1ppmの場合のホルムアルデヒド平衡吸着量を算出した。その結果を表1に示す。
表1に示したように、pH10.29のグリシン水溶液を用いて作製した脱臭材(実施例1)は、pH9.71(比較例1)又はpH8.25(比較例2)のグリシン水溶液を用いて作製した脱臭材に比べて、ホルムアルデヒド平衡吸着量が多く、ホルムアルデヒド除去性能に優れていることが確認された。
<耐アルカリ性試験>
濃度が0mol/L、0.001mol/L、0.005mol/L、及び0.01mol/LのNaOH水溶液を調製し、それぞれpH値を測定した。各濃度のNaOH水溶液100mlをそれぞれ容量200mlのポリ容器に入れ、それぞれにセピオライト1gを添加してマグネチックスターラーで3時間撹拌した後、撹拌を止めて93時間静置した。その後、ろ過によりセピオライトを回収し、乾燥して残存したセピオライトの質量を測定した。セピオライトの添加量と残存量とから、質量減少率を求めた。その結果を表2に示す。
濃度が0mol/L、0.001mol/L、0.005mol/L、及び0.01mol/LのNaOH水溶液を調製し、それぞれpH値を測定した。各濃度のNaOH水溶液100mlをそれぞれ容量200mlのポリ容器に入れ、それぞれにセピオライト1gを添加してマグネチックスターラーで3時間撹拌した後、撹拌を止めて93時間静置した。その後、ろ過によりセピオライトを回収し、乾燥して残存したセピオライトの質量を測定した。セピオライトの添加量と残存量とから、質量減少率を求めた。その結果を表2に示す。
表2に示したように、NaOH水溶液のpHが11.09以下の場合にはセピオライトは全く溶解しなかったが、pHが11.81以上になると、セピオライトは溶解することがわかった。この結果から、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物として、セピオライトを用いる場合には、脂肪族アミノカルボン酸水溶液のpHを11.5以下に調整する必要があることがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に脂肪族アミノカルボン酸を分子レベルで高度に分散した状態で担持させることができ、高い脱臭性能を有する脱臭材を得ることが可能となる。このような脱臭材は、例えば、ホルムアルデヒドを含む空気と接触させることにより、分子レベルで担持された高活性な脂肪族アミノカルボン酸とホルムアルデヒドとが反応してイミン化合物が生成するため、効率よく無害化・無臭化することが可能である。
したがって、本発明により得られる脱臭材は、家屋室内、車室内、工場内等の空気中に、又は、煙草の煙中に含まれるホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒドの除去に特に有効であるが、これらに限定されるものではなく、例えば、有機酸、硫化水素、ニコチン、その他の各種臭気成分の除去にも適用することができる。
Claims (5)
- 含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物に対して、アルカリを添加することによりpHが(pK2+0.2)〜(pK2+1.7)の範囲内となるように調整されている脂肪族アミノカルボン酸(ジアミノ化合物を除く)の水溶液を接触させ、前記脂肪族アミノカルボン酸を前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物の外表面及び細孔内表面の金属イオンに配位した結晶水との置換によって前記外表面及び細孔内表面の金属イオンに結合させて、大きな結晶又は塊でない分子状態でかつ均一に高分散担持させることを特徴とする脱臭材の製造方法。
- 前記脂肪族アミノカルボン酸の水溶液のpHが11.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の脱臭材の製造方法。
- 前記アルカリが炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、及び水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱臭材の製造方法。
- 前記含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物がセピオライトであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の脱臭材の製造方法。
- 前記脂肪族アミノカルボン酸がグリシンであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の脱臭材の製造方法。
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JP2020199020A (ja) * | 2019-06-07 | 2020-12-17 | 株式会社豊田中央研究所 | 脱臭材及びその製造方法 |
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