JP3843892B2 - 板状炭酸カルシウム球状複合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な板状構造を有した炭酸カルシウムの球状複合体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から各種の多孔質物質が提案され、それぞれの特性を生かして種々の分野で使用されている。これらの多孔質物質のなかでも無機成分を構成成分とするものとしては、ゼオライト、活性炭、珪酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの多孔質物質といわれている化合物には、それぞれ一長一短があり、いまだに充分に満足しうるものは得られていない。一般に多孔質物質は、球形に近い一次粒子をバインダーなどを使用して球形に凝集させたものが殆どであって、その細孔径は一次粒子径よりも小さいのが普通である。また、その細孔は一次粒子の凝集間隙や製造時の水、有機溶媒またはバインダーの蒸発に伴う空隙から形成されたものであるので、細孔径を1μm以上にすることは困難であった。また、これらの多孔質物質の殆どが、粒子の形状、細孔の大きさなどが固定されており、それぞれの用途にみあった最適な品質にする自由度が殆どないのが現状である。本発明者らは、先に「板状炭酸カルシウムの製造方法」(特開平2−18451)および「板状塩基性炭酸カルシウムの製造方法」(特開平3−285816)を発明したので、これらの知見をもとに、従来多孔質物質の対象として検討されたことのない炭酸カルシウムが、合成条件を変化させることによりその形態を制御できることを見出し、多孔質物質の基材として採用し、製造条件により細孔径および細孔容積を変えることのできる板状炭酸カルシウムの球状複合体を得ようとしたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで前記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第1は、径が0.2〜10μm、厚さが0.02〜2μmである板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子が球状に凝集した、細孔容積が0.1〜3ml/gである板状カルサイトの球状複合体である。
【0005】
本発明の第2は、径が0.2〜10μm、厚さが0.02〜2μmである板状構造を有した塩基性炭酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムである一次粒子が、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上が球状に凝集した板状炭酸カルシウムの球状複合体を二酸化炭素と加熱下で接触させ、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上を炭酸カルシウムに変化させた、細孔容積が0.1〜3ml/gである板状カルサイトの球状複合体である。
【0006】
本発明の第3は、水酸化カルシウム水懸濁液(以下「石灰乳」という)と二酸化炭素を反応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS/cm降下したときに炭酸化反応を終了させることを特徴とする板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法である。
【0007】
本発明の第4は、石灰乳と二酸化炭素を反応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS/cm降下したときに炭酸化反応を止めた後、さらに縮合リン酸化合物および炭酸化率が70%以下の石灰乳を添加し、二酸化炭素を反応させることおよび炭酸化反応を終了させることを特徴とする板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の板状炭酸カルシウムの球状複合体は、図1に示したような板状構造を有した炭酸カルシウムの単一結晶が一次粒子を形成し、図2に示すように層状に凝集して球状複合体を形成したり、または図3に示すように放射状に凝集して球状複合体を形成して、表面に細孔を多数形成させた板状炭酸カルシウムの球状複合体であって、その粒径は凡そ1〜100μmであって、3〜50μmのものが、使用上扱いやすく好ましい。
【0009】
本発明の細孔とは、板状炭酸カルシウムの球状複合体における板状構造を有した炭酸カルシウムなどの一次粒子間の間隙をいい、その細孔容積は水銀圧入法により測定される。この場合、細孔容積が0.1ml/g未満であれば、粉体の粒子間隙であって細孔ではない。また、3ml/gを越えると板状炭酸カルシウムの球状複合体の強度を保つことができず実用的ではない。従って、水銀圧入法による細孔容積が0.1〜3ml/gであることが好ましい。
【0010】
本発明でいう複合物は、その複合形態や割合によって物性が変わるものであって、例えば、X線回折における解析や解析強度比によって異なり、示差熱分析にあっては、複合形態や割合によってそれぞれの分解温度により減量と熱量が示され、その値は複合割合により決まる。
【0011】
本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法において、水酸化カルシウム水懸濁液すなわち石灰乳の濃度は1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%が望ましい。石灰乳の濃度が1重量%未満では基本構造である板状構造が生成でき難くなり、さらに15重量%を越えると均一な板状炭酸カルシウムの球状複合体の生成が困難になる。
【0012】
本発明でいう縮合リン酸化合物とは、通常ポリリン酸化合物といわれる化合物で、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラリン酸などを例示できるが、それらのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩であってもよい。これらは1種類で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。縮合リン酸化合物の添加量は、水酸化カルシウムに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。一般に縮合リン酸化合物の添加量が水酸化カルシウムに対して10重量%を越えると、層状体または放射状体の板状炭酸カルシウムの間隙幅が小さくなり、細孔容積も小さくなり、本発明の目的を達成することはできない。一方、縮合リン酸化合物の添加量が水酸化カルシウムに対して0.01重量%未満であると、板状炭酸カルシウムを層状体または放射状体に凝集させることができず、本発明の板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造は困難となる。
【0013】
本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法においては、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で水酸化カルシウムの炭酸化を行うことによって、基本構造である板状構造を有する炭酸カルシウムを生成することができる。生成した炭酸カルシウムの粒子の形状と電気伝導度とは密接な関係があるので、電気伝導度を測定することにより炭酸カルシウムの生成を制御することができる。すなわち、電気伝導度の降下が2mS/cm未満であると、一次粒子である板状構造が充分に成長していない状態にあり、炭酸化率60%以下であると、生成球状複合体の均一性が損なわれる。また、電気伝導度の降下が10mS/cmを越えると、一次粒子である板状構造の間隙が少なく、細孔容積も少なくなり、炭酸化率も66.7%を越えることになる。
【0014】
板状炭酸カルシウムの球状複合体の粒子径を大きくし、複合体の粒度分布の幅が狭くなるように、炭酸化反応を止めたのち、縮合リン酸化合物および炭酸化率70%以下の石灰乳を添加する。ここで炭酸化率とは、乳液中の炭酸カルシウムのモル(mol)数と石灰乳中のカルシウムのモル(mol)数の百分率であって、数1で示される式によって計算された値である。
【0015】
【数1】
【0016】
本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法において、縮合リン酸化合物の存在下で水酸化カルシウムの炭酸化反応を行う場合、炭酸化反応を止めた後、さらに縮合リン酸化合物および炭酸化率が70%以下の石灰乳を添加し、二酸化炭素を反応させることを2回以上繰り返すことにより、板状炭酸カルシウムの球状複合体の粒子径を大きく制御できると同時に粒子径分布が狭くそろった板状炭酸カルシウムの複合体を得ることができる。ここで炭酸化率は通常10%未満であって、70%を越えると板状炭酸カルシウムの球状複合体の結晶成長に使用できる水酸化カルシウムの量が少なくなり、球状複合体を成長させての粒子径制御ができ難くなると同時に、成長した球状複合体の粒子径が不揃いとなるので、好ましくない。繰り返し回数は通常2〜10回であるが、好ましくは2〜5回である。このときの反応温度は、10〜40℃程度の範囲、好ましくは20〜40℃の範囲である。この反応温度を越えると、基本構造である板状構造とならず本発明の目的を達成しない。縮合リン酸化合物の添加時期については、炭酸化前から炭酸化率30%、好ましくは炭酸化前から炭酸化率20%までに添加することが望ましい。これらの添加時期を過ぎると、基本構造である板状構造の放射状または層状の球状凝集体とならず本発明の目的を達成しない。繰り返して炭酸化を行う場合、添加する石灰乳の混合割合は、生成している炭酸カルシウムに対し、10:1〜1:10、好ましくは4:1〜1:4が望ましい。生成している炭酸カルシウムの混合割合が増加すると基本構造の板状構造が均一に成長せず、放射状または層状の球状凝集体と成り難く、さらに添加する石灰乳の混合割合が増加すると基本構造の成長が大きく成りすぎるために、放射状または層状の球状凝集体の均一性がなくなり本発明の目的を達成できない。
【0017】
板状構造を有した一次粒子が、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上が球状に凝集した板状炭酸カルシウムの球状複合体を二酸化炭素と加熱下で接触させ、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上を炭酸カルシウムに変化させた板状炭酸カルシウムの球状複合体にする場合、この炭酸化速度は、炭酸化温度、二酸化炭素濃度と反応時間により異なるが、固体と気体の直接反応は通常反応速度が遅いので、塩基性炭酸カルシウムの分解温度以上または水酸化カルシウムの分解温度以上で炭酸カルシウムの分解温度以下で行うのが望ましい。すなわち、その温度は300〜800℃、好ましくは400〜700℃である。また、二酸化炭素の濃度は、10〜100容量%、好ましくは50〜100容量%である。
【0018】
上述のごとくして、得られた板状炭酸カルシウムの球状複合体は、従来の炭酸カルシウムや炭酸カルシウム系複合体に比べて、比表面積が大きく、かつ粒子表面が、図2および図3にみられるように、多孔質となっているので、その特性を利用した種々の用途を有している。直接その物質を使用すると毒性など問題がある場合、すなわち農薬などを本発明の板状炭酸カルシウムの球状複合体に担持させることにより、任意の濃度に調整し、かつ飛散を防ぐことができる。また、香料、消臭剤などの揮発性の物質を担持させることにより、持続性のある徐放剤として利用できる。例えば、触媒、医薬、化粧料、農薬、微生物、過酸化物、植物成長剤、オレフィン吸収剤、紫外線吸収剤、香料、芳香剤、消臭剤などの各種物質の担持体として、利用することができ、このとき吸着された物質をすみやかに放出することがないので、その徐放性を利用し、担持された物質の徐放剤としての用途がある。さらに、物質の吸着性を利用して、乾燥剤、吸液剤、防臭剤としての用途並びに塗料、シーラント、接着剤、塩化ビニールペーストなどの増粘剤としての用途がある。その他、濾過助剤、粉体の成形助剤および吸液用成形体、潤滑油用キャリヤー、製紙用原料としても利用できる。
【0019】
【実施例】
以下実施例にもとづいて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(実施例1)
6重量%で15℃の石灰乳800mlを攪拌しながら25容量%の二酸化炭素ガス(以下単に「炭酸ガス」という)を1200ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始と同時にヘキサメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶解した液を石灰乳に添加した。反応開始より50分後に電気伝導度が反応前より6.0mS/cm降下したので炭酸ガスの導入を停止した。この時の石灰乳の炭酸化率は61%であった。この石灰乳から固形物を通常の方法で濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥固形物を粉末X線回折の結果、図4に示すとおりカルサイトと塩基性炭酸カルシウムであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.2μm、粒子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し10μmの球状粒子を形成していた。この乾燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%炭酸ガスを50ml/分で20時間炭酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果、図5に示すとおりカルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかった。走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.2μm、粒子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約10μmの球状粒子を形成していた。このものは水銀圧入法(以下同じ)による細孔容積は0.84ml/gであった。また、BET法による比表面積(以下同じ)は7m2 /g、JIS K−6223によるDOP(フタル酸ジオクチル、以下同じ)の吸油量(以下同じ)は90ml/100gであった。
【0020】
(実施例2)
6重量%で15℃の石灰乳800mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始1分前にヘキサメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶解した液を石灰乳に添加した。反応開始より50分後に電気伝導度が反応前より4.3mS/cm降下したので炭酸ガスの導入を停止した。この時の石灰乳の炭酸化率は65%でA液とした。6重量%で20℃の石灰乳800mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始2分後にヘキサメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶解した液を石灰乳に添加した。反応開始より30分後に炭酸ガスの導入を停止した。この石灰乳の炭酸化率は34%でB液とした。
A液800mlとB液800mlを混合し、石灰乳温度を25℃とし、攪拌しながら炭酸ガスを2400ml/分で導入した。反応開始より20分後に電気伝導度が反応前より6.5mS/cm降下したので、炭酸ガスの導入を停止し、石灰乳を濾過、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥品は、X線回折の結果、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.25μm、大きさ3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約15μmの球状粒子を形成していた。
この乾燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%炭酸ガスを50ml/分で20時間炭酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果は、カルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかった。走査型電子顕微鏡の写真を図2に示した。観察の結果、厚さ0.25μm、粒子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約15μmの球状粒子を形成していた。このものの細孔容積は0.67ml/gであった。また、比表面積は6m2 /g、DOPの吸油量は110ml/100gであった。
【0021】
(実施例3)
6重量%で20℃の石灰乳800mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入と同時にピロリン酸ナトリウム0.56gを水25mlに溶解した液を石灰乳に添加した。反応開始より85分で石灰乳のpHが7.0になったので炭酸ガスの導入を停止し、石灰乳を濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥品は、粉末X線回折の結果、すべてがカルサイトであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.2μm、粒子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約10μmの球状粒子を形成していた。このものの細孔容積は0.79ml/g、比表面積は約10m2 /g、DOPの吸油量は60ml/100gであった。
【0022】
(実施例4)
実施例2のA液400mlにヘキサメタリン酸ナトリウム0.18gを含む6重量%の石灰乳(以下「C液」という)400mlを注加し、石灰乳温度20℃に調整後、炭酸ガスを600ml/分で導入し、45分後に電気伝導度が反応前より7.0mS/cm降下したので、炭酸ガスの導入を停止した。この石灰乳400mlに新たにC液400mlを注加し、上記の条件下で炭酸化を行い、同様に電気伝導度が反応前より7.0mS/cm降下した時点で炭酸ガスの導入を停止した。このような反応を5回繰り返したところ、この石灰乳の炭酸化率は69%であり、この石灰乳を濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥品は、粉末X線回折の結果、図6に示すとおりカルサイト、塩基性炭酸カルシウムおよび消石灰であり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.3μm、粒子径3.5μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約27μmの球状粒子を形成していた。この乾燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%炭酸ガスを100ml/分で20時間炭酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果、カルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかった。走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.3μm、粒子径3.5μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約27μmの球状粒子を形成していた。
【0023】
(実施例5)
6重量%で15℃の石灰乳1600mlを攪拌しながら、25容量%の炭酸ガスを3600ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始と同時にヘキサメタリン酸ナトリウム0.96gを水50mlに溶解した液を添加した。反応開始より40分後に電気伝導度が反応前より4.1mS/cm降下したので、炭酸ガスの導入を停止した。このときの乳液の炭酸化率は65%であった。この乳液から固形物を通常の方法で濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥固形物を粉末X線回折の結果、カルサイトと塩基性炭酸カルシウムであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.15μm、粒子径1μmの板状構造をしたものが、放射状に凝集し、5μmの球状粒子を形成していた。この乾燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%炭酸ガスを100ml/分で20時間炭酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果、カルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかった。走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.15μm、粒子径1μmの板状構造をしたものが、放射状に凝集し、約5μmの球状粒子を形成していた。このものは、細孔容積0.6ml/gであった。また、BET法による比表面積は、5m2 /g、DOPも吸油量は60ml/100gであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明の製造条件によって、石灰乳と二酸化炭素の反応により生成される炭酸カルシウムは、板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子が球状に凝集した比表面積が大きく、多孔質である板状炭酸カルシウムの球状複合体であって、一次粒子間に間隙を有するため、直接その物質を使用すると問題がある場合、すなわち農薬などを本発明の板状炭酸カルシウムの球状複合体に担持させることにより、任意の濃度に調整し、かつ飛散を防ぐことができる。また、香料、消臭剤などの揮発性の物質を担持させることにより、持続性のある徐放剤として利用できる。さらに、物質の吸着性を利用して、乾燥剤、吸液剤、防臭剤としての用途並びに塗料、シーラント、接着剤、塩化ビニールペーストなどの増粘剤としての用途があり、その他、濾過助剤、粉体の成形助剤および吸液用成形体、潤滑油用キャリヤー、製紙用原料としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板状構造をした炭酸カルシウム
【図2】層状に凝集した球状複合体
【図3】放射状に凝集した球状複合体
【図4】実施例1におけるカルサイトと塩基性炭酸カルシウムのX線回折
【図5】実施例1におけるカルサイトのX線回折
【図6】実施例4におけるカルサイト、塩基性炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムのX線回折
【符号の説明】
A.板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子
1.板状構造を有した炭酸カルシウムの単一結晶
Claims (4)
- 径が0.2〜10μm、厚さが0.02〜2μmである板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子が球状に凝集した、細孔容積が0.1〜3ml/gである板状カルサイトの球状複合体。
- 径が0.2〜10μm、厚さが0.02〜2μmである板状構造を有した塩基性炭酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムである一次粒子が、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上が球状に凝集した板状炭酸カルシウムの球状複合体を二酸化炭素と加熱下で接触させ、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、および塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、のいずれか1種または2種以上を炭酸カルシウムに変化させた、細孔容積が0.1〜3ml/gである板状カルサイトの球状複合体。
- 水酸化カルシウム水懸濁液(以下「石灰乳」という)と二酸化炭素を反応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS/cm降下したときに炭酸化反応を終了させることを特徴とする板状カルサイトの球状複合体の製造方法。
- 石灰乳と二酸化炭素を反応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS/cm降下したときに炭酸化反応を止めた後、さらに縮合リン酸化合物および炭酸化率が70%以下の石灰乳を添加し、二酸化炭素を反応させることおよび炭酸化反応を終了させることを特徴とする板状カルサイトの球状複合体の製造方法。
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