JP2020197700A - 光学部材及び光学部材の製造方法 - Google Patents

光学部材及び光学部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反射防止性能に優れ、かつ、長期にわたって防曇性が持続することのできる、光学部材および光学部材の製造方法を提供する。【解決手段】基材10の上に、基材側から多孔質層20と、多層からなる反射防止層30と、をこの順に有しており、前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率nと前記最も屈折率の高い層を構成する化合物の理論密度における屈折率n0との比n/n0が0.85以上0.95以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、防曇性能および光学性能に優れた光学部材及び光学部材の製造方法に関する。
ガラスやプラスチック等の透明な基板は、基板表面が露点温度以下になると、微細な水滴が基材表面に付着することで透過光が散乱し透明性が損なわれ、いわゆる「曇り」の状態となる。光学部品に生じるこのような曇りを防ぐため、光学部品の表面の水に対する濡れ性を向上させて水滴の発生を抑える技術が開発されている。
また、光学部品には、防曇性能だけでなく、光反射防止性能が求められる場合が多い。特許文献1には、吸水性ポリマー層(吸水層)の上に、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した反射防止コーティングを設け、反射防止コーティングにレーザーで吸水性ポリマー層まで達する孔が形成された光学要素が開示されている。このような光学要素は、反射防止コーティングによって高い光反射防止性能を有するとともに、反射防止コーティングに設けた孔を通じて凝縮水が吸水性ポリマー層に吸収されるため、防曇性能も有する。
特表2009−527780号公報
特許文献1に開示の光学要素は、反射防止コーティングに、水分が通る孔が20μm程度の間隔で設けられている。そのため、外部と吸水性ポリマー層との間の水分の移動経路が制限され、吸水性層に吸収された水分が外部に放出されにくい状態となっている。従って、防曇性能が求められる環境に繰り返し曝されているうちに、吸水層に保持される水分量が吸水層の吸水能力を超えてしまい、防曇性能を維持できなくなってしまう。
吸水性層に吸収された水分が外部に放出されやすくするためには、反射防止コーティングに設ける孔の密度を高める必要がある。しかし、レーザーを用いて孔を形成しているため、孔の密度を高めようとすると、光学要素の製造に必要な時間とコストが増大してしまう。
本発明は、上記課題を解決するものであり、反射防止性能に優れ、かつ、長期にわたって防曇性が持続することのできる、光学部材および光学部材の製造方法を提供するものである。
本発明の光学部材は、基材の上に、基材側から多孔質層と、多層からなる反射防止層と、をこの順に有しており、前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率nと、前記最も屈折率の高い層を構成する化合物の理論密度における屈折率nとの比n/nが、0.85以上0.95以下である、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる光学部材の製造方法は、粒子とバインダーを形成する成分と溶媒とを含む液を基板上に供給して多孔質層を形成する工程と、前記多孔質層の上に、多層からなる反射防止層を形成する工程と、を有しており、前記反射防止層を形成する工程において、前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率nと前記最も屈折率の高い層を構成する化合物の理論密度における屈折率nとの比n/nが、0.85以上0.95以下となるように、前記最も屈折率の高い層を蒸着法にて形成する、ことを特徴とする。
本発明によれば、反射防止性能に優れ、長期にわたって防曇性を持続することが可能な、光学部材および光学部材の製造方法を実現することができる。
本発明にかかる光学部材の一実施態様を示す概略図である。 本発明にかかる光学部材の一実施態様であって、下地層を有する光学部材の概略図である。 本発明にかかる光学部材の一実施態様であって、多孔質層が粒子を含む光学部材の概略図である。 本発明にかかる光学部材の一実施態様であって、低屈折率層が柱状構造体を有する光学部材の概略図である。 本発明の第三実施形態にかかる光学部材の断面SEM写真を示す図である。 本発明にかかる光学部材の一実施態様であって、親水性ポリマー層を有する光学部材の概略図である。 実施例1の光学部材の反射特性を示す図である。 実施例1、比較例1〜2の光学部材の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示す図である。 実施例8と比較例10の反射率特性を示す図である。 比較例9と比較例10の反射率特性を示す図である。 実施例8の光学部材の耐久試験前後の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示す図である。 比較例10の光学部材の耐久試験前後の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示す図である。 本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[光学部材]
図1は、本発明の透明部材の一実施形態を示す模式図である。
本発明の光学部材100は、基材10の上に、基材側から順に、水分保持層20と反射防止層30とを有している。反射防止層30は、互いに屈折率の異なる複数の層が積層された積層体となっている。そして、反射防止層30に含まれる層のうち、少なくとも最も屈折率の高い層は、空孔を含み、層を構成する化合物の理論密度よりも密度の低い状態となっている。
このような構成により、本発明の光学部材100を結露が発生するような環境に暴露しても、曇りが発生しない。そのため本発明の光学部材100は、窓ガラス、鏡、レンズ、透明フィルムなど、幅広い用途に用いることができる。
(基材)
基材10の材質には、ガラス、樹脂などを用いることが可能である。また、その形状は限定されることはなく、平面、曲面、凹面、凸面、フィルム状であっても良い。
ガラスには、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウムなどを含有する無機ガラスを用いることができる。ガラスの基材は、研削研磨、モールド成形、フロート成形などで成形することができる。
樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリビニルアルコールなどを用いることができる。
基材10の強度や平坦性の向上、基材1に接する膜の密着性の向上、あるいは、反射防止や防眩性などの機能を持たせたりする目的で、基材1の表面を洗浄したり、研磨したり、接着層やハードコート層や屈折率調節層を設けたりしてもよい。
(水分保持層)
水分保持層20は、水分を吸着して保持できるものであればよいが、強度が高く、吸水しても膨潤しないことから、吸水性ポリマー層よりも多孔質層、特に無機の多孔質層が好適である。水分保持層20が無機の多孔質層であると、吸水しても光学部材100を介して得られる像に歪みが発生しない。そのため、撮像系や投影系の光学レンズ、光学ミラー、光学フィルター、アイピース、屋外カメラや監視カメラ用の平面カバーやドームカバーなど、光学用途に特に適している。
多孔質層に含まれる空孔は、三次元的に互いに連通している状態が好ましい。このような空孔を有していれば、反射防止層30を介して侵入した水分を膜に含まれる空孔全体を利用して保持することが可能となり、高い保水性能を発現することができる。
多孔質層に含まれる空孔の平均孔径は、窒素ガス吸着法による細孔分布測定で得られる値が、3nm以上50nm以下であることが好ましい。平均孔径が3nm以上であれば、水分保持層20の中で空気や水分の移動が円滑に行われ、十分な防曇性能を発現することが可能性となる。平均孔径が50nm以下であれば、光の散乱原因となる孔径が100nmを超える空孔が少ないため、透明性を維持することができる。より好ましい孔径は5nm以上20nm以下である。
多孔質層(水分保持層20)に含まれる空孔の量は、窒素ガス吸着法によって細孔容積として求めることができる。細孔容積は0.1cm/g以上1.0cm/g以下であることが好ましい。細孔容積が0.1cm/g以上であると、防曇性を得るために十分な量の水の量を、水分保持層20で保持することができる。細孔容積が1.0cm/g以下であれば、骨格の硬度が低下することなく十分な耐擦傷性が得られる。より好ましい細孔容積は0.3cm/g以上0.6cm/g以下である。
水分保持層20の層厚は、要求される防曇性に応じて適宜設計することができるが、0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。層厚が0.2μm以上5μm以下であれば、汎用的な光学部材に求められる、低い製造コストと防曇性能とを両立させることができる。
水分保持層20の製造方法としては、低コストに形成できるという点でウェット法が好適である。水分保持層20を、金属酸化物を含む無機多孔質層とする場合は、膜を形成する液として、ゾル−ゲル法などで金属酸化物前駆体や、金属酸化物粒子の分散液が用いられる。
(反射防止層)
反射防止層30は、互いに屈折率が異なる複数の層からなる透明な積層体であり、光学部材の光入出射界面における反射を抑える反射防止性能と、外部と水分保持層20との間の水分の移動を可能にする透湿性とを有している。反射防止層30としては、高屈折率層と中屈折率層と低屈折率層の中から、設計に応じて適切な組み合わせを選択して積層した、積層体が用いられる。反射防止層30と空気との屈折率差を低減して反射を抑制するためには、反射防止層30の空気との界面、即ち基材から最も離れた位置に低屈折率層が設けるのが好ましい。本発明において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層という呼称は、反射防止層が複数の層を含む場合に、層間の相対的な屈折率の大小を表す。目安としては、屈折率1.8以上の層が高屈折率層、屈折率1.4以上1.8未満の層が中屈折率層、屈折率1.4未満の層が低屈折率層に相当するが、これに限定されるものではない。なお、本発明において、透明とは、可視光(400nm〜760nm)の透過率が70%以上の状態を指し、屈折率として、ナトリウムd線(波長589.3nm)における値(nd)を示す。
反射防止層30に含まれる各層の厚さは、10nm以上200nm以下が好ましい。この範囲で各層の厚さを設計することによって、広い波長域の可視光の反射を低減することが可能となる。広い波長域での反射率を抑えるためには、積層数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
膜の屈折率は、膜を構成する化合物の組成と密度によって決まる。これは、膜内の空孔に、nd=1.0の空気が存在することによって、膜全体としての屈折率が低下するためである。つまり、同じ組成であれば、緻密な膜ほど屈折率は高くなり、密度の低い膜ほど屈折率は低くなる。
反射防止層30を構成する各層は、一般的には基材を数百℃程度に加熱しながら蒸着する方法によって成膜され、理論密度に近い状態になっている。これは、形成した膜について計測した屈折率が、理論密度(成膜原料の公称値)と実質的に同じであることで確認することができる。
理論密度の状態に近い高屈折率層は、密度の高い緻密な膜になっていると推測され、実際の膜で水分の透過を抑制することが確認される。反射防止層30が理論密度に近い状態の高屈折率層を含んでいると、外部と水分保持層20との間の水分の移動が高屈折率層によって妨げられ、防曇性能が得られなくなってしまう。
なお、低屈折率層、低屈折率層は、用いられる材料にも依るが、理論密度の状態に近い膜であっても、水分がある程度透過することが確認されている。
そこで、本発明では、反射防止層30に含まれる層のうち、少なくとも最も屈折率の高い層(高屈折率層)を、内部に空孔を有し水分が通りやすい構造の膜とする。最も屈折率の高い層が空孔を有することで、理論密度における屈折率よりも屈折率は低下してしまうが、空孔率を調整すれば、反射防止層の設計に必要な高い屈折率と、反射防止層に必要な透湿性とを両立させることができる。
膜内に空孔を有する層は、いわゆる無加熱蒸着や斜方蒸着、酸素などの気体の導入圧力や基板の温度を制御した成膜法など、蒸着条件を適宜調整することによって形成することができる。無加熱蒸着とは基材を加熱しないで蒸着を行う成膜方法であり、斜方蒸着とは蒸着粒子が飛来する方向に対して基材の被成膜面を斜めにして成膜を行う成膜方法である。
このような蒸着法によって形成される膜に含まれる空孔は非常に微細であるため、SEMなどの簡易的な観察法を用いて、空孔の存在を確認するのは難しい。そこで、反射防止層30に含まれる各層に空孔がどの程度存在するかは、評価対象の層と、評価対象の層と実質的に同じ組成の理論密度の状態の標準サンプルとの、スパッタエッチングのレートを比較することによって確認することができる。
まず、評価対象となる層をスパッタエッチングする条件を設定する。エッチングの条件は、評価対象の層を複数回に分けてエッチングできるように、表面に衝突させるイオンの加速電圧やエッチング時間を決める。
設定したエッチング条件で1回エッチングした後、X線光電子分光法(XPS)によって元素分析を行うことにより、エッチングされた部分の組成を同定し、エッチング部分がどの層に含まれるかを確認する。このようなエッチングと元素分析を交互に行い、層が切り替わるまでのエッチング回数と層の物理的な厚さとから、1回あたりのエッチング厚を算出する。これをエッチングレートRとする。エッチング条件は、評価対象となる層、つまり高屈折率層のエッチングレートRが2〜10nmとなるように設定するのが好ましい。
層の物理的な厚さは、電子ビーム加工装置で光学部材上の積層膜の断面が露出するように薄片化し、走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察によって求めることができる。
標準サンプルには、評価対象の層と実質同じ組成で、かつ、理論密度と実質的に同じ屈折率が得られるように真空成膜法にて成膜した膜か、評価対象の層と実質的に同じ組成の膜の成膜に用いられるスパッタリングターゲットを用いる。標準サンプルについても、評価対象の層と同じエッチング条件にてエッチングを行い、エッチングレートRを求める。
エッチングレートRとエッチングレートRの比R/Rが1未満であれば、評価対象の層は、標準サンプル、すなわち理論密度の状態よりも空孔を多く含んでいることがわかる。
/Rは、0.75以上0.90以下が好ましく、0.80以上0.90以下がより好ましい。R/Rが0.75以上であれば、材料本来の屈折率を大きく損なうことがなく、強度を保つのに十分な骨格が形成できる。R/Rが0.90以下であれば、透湿性を発現するのに必要な空孔を含むことができる。
反射防止層30に含まれる各層に空孔がどの程度存在するかは、評価対象の層の屈折率nと、評価対象の層を構成する化合物の理論密度における屈折率(理論的屈折率)nとを比較することによっても確認することができる。ここで屈折率nと理論的屈折率nは光の波長589nmにおける屈折率である。
評価対象の層の屈折率nは分光エリプソメータでの測定結果や反射率を光学解析することによって確認する。光学解析に必要な層の厚さは、電子ビーム加工装置で光学部材上の断面が露出するように薄片化し、走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察することで層の物理的な厚さを求めるとよい。評価対象の層と実質的に同じ組成の理論密度の状態における屈折率は、評価対象の層と実質同じ組成、かつ、理論密度と実質的に同じ屈折率が得られるように真空成膜法にて成膜した膜を形成して計測した屈折率を用いてもよい。あるいは、高屈折率層をエッチングしてX線光電子分光法(XPS)によって元素分析を行って、層を構成する化合物の組成を明らかにし、その公称値を理論密度における屈折率として用いてもよい。
評価対象の層の屈折理nと理論的屈折率nの比n/nが1未満であれば、評価対象の層は、標準サンプルよりも空孔を多く含んでいることがわかる。
屈折率比n/nは、0.85以上0.95以下が好ましく、0.90以上0.95以下が好ましい。屈折率比n/nが0.85以上であれば、材料本来の屈折率を大きく損なうことがなく、強度を保つのに十分な骨格が形成できる。屈折率比n/nが0.95以下であれば、透湿性を発現するのに必要な空孔を含むことができる。
このように、本発明にかかる反射防止層30は、高屈折率層を、理論密度に近い緻密な状態ではなく、微細な空孔を有する疎な状態にして用いる。従って、高屈折率層を含んでいても、外部と水分保持層20との間の水分の移動を妨げることがない。
従って、本発明にかかる光学部材は、外部と水分保持層20との間で水分が移動することができるため、湿度に応じて水分を水分保持層20に保持あるいは水分保持層20に保持した水分を放出することができ、高い防曇性を、繰り返し発揮することができる。
本発明において、低屈折率層には、フッ化マグネシウム(MgF、nd=1.38)、フッ化カルシウム(CaF、nd=1.43)などの無機材料を含む膜を用いることができる。
中屈折率層には、酸化ケイ素(SiO、nd=1.46)、酸化アルミニウム(Al、nd=1.77)などの無機材料を含む膜を用いることができる。
高屈折率層には、酸化ジルコニウム(ZrO、nd=2.13)、酸化チタン(TiO、nd=2.52〜2.72)、酸化タンタル(Ta、nd=2.17)、酸化ニオブ(Nb、nd=2.32)、酸化ハフニウム(Hf、nd=1.91)などの無機材料を含む膜が挙げられる。高屈折率層には、これらから選択した2種類の金属酸化物、あるいは、これらから選択した少なくとも1種類の金属酸化物と他の金属酸化物と混合して屈折率を調整してもよい。
これらの金属酸化物層は、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法やディップコート、スピンコート等の湿式成膜法を用いることができる。蒸着やスパッタリング等の真空成膜法は、成膜時に導入するガスや成膜方法によって、層の屈折率や応力を調整することができるため、好ましい。
なお、反射防止層30が反射防止機能を維持するためには、水分が吸着することによる屈折率の変化は小さい方が好ましい。空孔への水分の吸着がケルビン式に従うとすると、多孔質内で水分の凝縮が進み吸着が生じるときの湿度は、空孔が大きくなるに従って高湿度側に移動する。反射防止層30の空孔は水分保持層の空孔に比べて小さいため、低湿度環境で水分を吸着し始める。さらに、本発明に係る反射防止層30は空孔が小さいため、それ自体の水分保持量が少なく、たとえ水を吸着しても屈折率が大きく変化することがない。そのため、反射防止層30が空孔を含んでいても、空孔内に水が吸着することによる屈折率変化は生じない。従って、本発明の反射防止層30は、広い湿度範囲で屈折率が安定し、反射防止層としても優れた特性を有している。
(他の層)
光学部材の反射防止効果をより高めるため、図2に示すように、水分保持層20と基材10との間に下地層40を設け、水分保持層20と基材1との界面で生じる反射を低減する構成も好ましい。
下地層40としては、水分保持層20と基材10との間の屈折率を有する単膜を設けるとよい。あるいは、互いに屈折率の異なる複数の層からなる積層体を設けるのも好ましい。下地層40内での干渉を利用して、より反射を低減することができる。
下地層40は、蒸着法やスパッタリング法などの真空成膜法や、ゾル−ゲル液や粒子の分散液などを用いたウェット成膜法で形成することができる。
[第一実施形態]
図3は、水分保持層20として、粒子21の堆積によって形成された多孔質層を用いた実施形態を示す模式図である。図に示すように、水分保持層20の上に、中屈折率層32と高屈折率層33を交互に2層ずつと、低屈折率層31とが順に積層され、合計5層からなる反射防止層30を有している。水分保持層20に含まれる空孔22は、互いに連結し、基材10との界面から反射防止層30との界面まで連通している。
空孔22の平均孔径は、窒素ガス吸着法による細孔分布測定で得られる値が、3nm以上50nm以下であることが好ましい。平均孔径が3nm以上であれば、水分保持層20へ空気や水分の移動が円滑に行われ、十分な防曇性能を得ることが可能性である。平均孔径が50nm以下であれば、光の散乱の原因となる孔径が100nm超の空孔が少ないため、透明性を維持することができる。より好ましい孔径は5nm以上20nm以下である。
多孔質層(水分保持層20)に含まれる空孔22の量は、窒素ガス吸着法によって細孔容積として求めることができる。細孔容積は0.1cm/g以上1.0cm/g以下であることが好ましい。細孔容積が0.1cm/g以上であると、防曇性を得るために十分な量の水の量を、水分保持層20で保持することができる。細孔容積が1.0cm/g以下であれば、骨格の硬度が低下することなく十分な強度が得られる。より好ましい細孔容積0.3cm/g以上0.6cm/g以下である。
製造コストが低いため、多孔質層20は粒子の分散液から成膜した層を用いることが好ましい。
粒子21の形状は球状、鎖状、円盤状、楕円状、棒状、針状、角型など様々な形状から適宜選択して使用できる。成膜性に優れ、十分な膜硬度を得ながら空孔率を上げられる点で、球状または鎖状が特に好ましい。また、互いに形状が異なる複数種類の粒子を混合して使用しても良い。
鎖状の粒子とは、複数個の粒子が鎖状(数珠状ともいう)に、直線または屈曲しながら連なった粒子の集合体である。鎖状粒子を形作る粒子の形状は、個々の粒子を明確に観察できる状態でもよいし、互いに融着して形が崩れていてもよく、膜となってもその鎖状に連なった構造が維持される。そのため、他の形状の粒子を用いた時に比較して粒子間の空隙を広げることができ、細孔容積の大きな水分保持層20を形成できる。
粒子21が球状、円盤状、楕円状の場合、その平均粒子径は5nm以上100nm以下が好ましい。平均粒子径が5nm以上であれば、成膜時の圧縮応力を解放でき水分保持層20にクラックが発生しにくい。平均粒子径が100nm以下であれば、粒子の大きさに伴う光の散乱が発生しにくいため、透明性が高い膜が得られる。より好ましい平均粒子径は10nm以上60nm以下である。
粒子21が鎖状、棒状、針状の場合、粒子21は短径と長径を持った形状の粒子であり、短径の平均は5nm以上40nm以下であることが好ましく、8nm以上30nm以下であることがより好ましい。酸化ケイ素粒子の短径の平均が5nm未満の場合には、粒子21の表面積が増え過ぎて雰囲気中の水分や化学物質の取り込みによる信頼性低下の可能性が高まる。また、短径の平均が40nm以下であれば、粒子の大きさに伴う散乱が発生しにくいため好ましい。一方、長径/短径の比が3以上12以下であることが好ましい。長径/短径の比が3以上だと、細孔容積を大きくする効果を得易く、12以下であれば平均空孔径が大きくなることによって発生する光の散乱を抑制することができ、高い透明性を得ることができる。より好ましい長径/短径の比は4以上10以下である。
ここで粒子21の平均粒子径とは、平均フェレ径である。この平均フェレ径は透過電子顕微鏡像によって観察したものを画像処理によって測定することができる。画像処理方法としては、image Pro PLUS(メディアサイバネティクス社製)など市販の画像処理を用いることができる。所定の画像領域において、必要であれば適宜コントラスト調整を行い、粒子測定によって各粒子の平均フェレ径を測定し、平均値を算出し求めることができる。
粒子21は、酸化ケイ素や酸化ジルコニウムを主成分とする単一の金属酸化物の粒子であってもよいし、元素の一部をAl、Ti、Zn、Zr、Bなどの他の元素で置き換えたり、有機基を結合させたりしてもよい。
水分保持層20の強度(耐擦傷性)を高めるためには、粒子21同士を結合させるのが好ましい。粒子21同士を結合させる方法としては、バインダーを用いて粒子を物理的に結合させる方法や、粒子21の表面に処理を施して粒子同士を化学的に結合させる方法が挙げられる。
以下、図3の光学部材の製造方法について説明する。
本発明にかかる光学部材100の製造方法は、基材10の上に、水分保持層20を形成する工程、反射防止層30を成膜する工程と、を含む。
水分保持層20を形成する工程は、前述の平均空孔径や空孔率が得られるのであれば、特に限定されるものではなく、真空成膜法でも、ウェット成膜法でもよい。真空成膜法で堆積する場合は、酸素などの気体の導入圧力や基材の温度を制御したり、斜方蒸着法を用いたりすることで、空孔を有する膜を形成することができる。ウェット法で水分保持層20を形成する場合は、ゾル−ゲル法などで合成した金属酸化物前駆体や金属酸化物粒子を含む分散液によって基板上に塗膜を形成し、15℃から200℃で乾燥させることによって形成可能である。金属酸化物前駆体や金属酸化物粒子を含む分散液に限定されず、ポリマー粒子を含む溶液を用いてもよい。
水分保持層20を形成するためのゾル−ゲル液や粒子を含む分散液もしくはポリマー粒子を含む分散液に用いることができる溶媒は、原料が均一に溶解し、かつ反応物が析出しない溶媒であれば良い。例えば水を用いることができる。また、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、シクロペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2―ペンタノール、2−メチル−1―ペンタノール、2−エチルブタノール、2,4−ジメチル−3―ペンタノール、3−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールなどの1価のアルコール類。エチレングリコール、トリエチレングリコールなどの2価以上のアルコール類を用いることができる。また、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1―エトキシ−2−プロパノール、1―プロポキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類を用いることができる。また、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類を用いることができる。また、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。これらの中から選択した2種類以上の溶媒を混ぜて使用することもできる。
水分保持層20を形成するために用いる液体の基材への濡れ性を改善したり、膜厚均一性を高めたり、水分保持層20の基材などへの密着性を改善したりする目的で、添加物を加えることができる。添加物の例としては、界面活性剤、レベリング剤、密着促進剤、酸触媒などが挙げられ、添加量は水分保持層4を形成するために必要な成分に対して2重量部以下であることが好ましい。
水分保持層20を、金属酸化物前駆体や金属酸化物粒子を含む分散液を用いて形成する方法としては、スピンコート法、スプレー法、ブレードコート法、ロールコート法、スリットコート法、印刷法やディップコート法などが挙げられる。凹面などの立体的に複雑な形状を有する光学部材を製造する場合は、膜厚の均一性の観点からスピンコート法やスプレー法が好適である。
水分保持層20を形成するための液体を基材10の上に供給した後に、乾燥および/または硬化が行われる。乾燥および硬化は、溶媒を除去したり、バインダー自体の反応あるいはバインダーと粒子との反応を進めたりするために行われる。乾燥および/または硬化の温度は、15℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥および硬化の温度が15℃未満だと溶媒が残留して耐摩耗性が低下する場合がある。また、乾燥および/または硬化の温度が200℃を超えると、バインダーの硬化が進み過ぎて、バインダーに割れが発生しやすくなる場合がある。乾燥および/または硬化の時間は、5分以上24時間以下が好ましく、15分以上5時間以下がより好ましい。乾燥および硬化の時間が5分未満だと、部分的に溶媒が残留して部分的に曇りやすくなる場合があり、24時間を超えると膜にクラックが入りやすくなる場合がある。
酸化ケイ素粒子を分散した液体は、分散液の製造が容易で、液の安定性が比較的高いため、水分保持層20の形成に適している。以下、水分保持層20を、酸化ケイ素粒子を分散した液体を用いて形成する例について、詳細に説明する。
水分保持層20の形成に用いる、酸化ケイ素粒子が分散した液体は、水熱合成法などの湿式法で作製した球状や鎖状の酸化ケイ素粒子の分散液に、水や溶媒を添加して希釈する方法で調整することができる。あるいは、同様に湿式法で作成された酸化ケイ素粒子の分散液の溶媒を蒸留や限外濾過で所望の溶媒に置換する方法、フュームドシリカなど乾式法で合成した酸化ケイ素粒子を超音波やビーズミルなどで水や溶媒に分散する方法、等で調製することができる。鎖状の酸化ケイ素粒子を用いる場合、鎖状以外に、真円状、楕円上、円盤状、棒状、針状、角型などの形状の粒子を適宜混合して使用しても良い。粒子7全体に対して鎖状以外の形状の粒子を混合できる割合は、基材や積層する膜との屈折率を考慮して適宜決めることが可能である。
酸化ケイ素粒子同士を結合させるために加えるバインダーは、酸化ケイ素化合物が好ましい。酸化ケイ素化合物の好適な例は、ケイ酸エステルを加水分解・縮合することにより得られる酸化ケイ素オリゴマーである。
酸化ケイ素化合物の添加量は、酸化ケイ素粒子に対して1質量%以上30質量%以下が好ましい。酸化ケイ素化合物の量が1質量%以上であれば、膜として必要な強度が得られ、30質量%以下であれば、光学部材に求められる防曇性能を発揮するのに必要な量の空孔22を膜中に形成することができる。より好ましい酸化ケイ素化合物の量は4質量%以上20質量%以下である。
酸化ケイ素オリゴマーを添加する方法は、予め水や溶媒中で調製した酸化ケイ素オリゴマー溶液を酸化ケイ素粒子の分散液に混ぜる方法や、酸化ケイ素オリゴマーの原料を酸化ケイ素粒子の分散液に混ぜてから酸化ケイ素オリゴマーに転換する方法が挙げられる。酸化ケイ素オリゴマーは、溶媒中または分散液中で、ケイ酸メチル、ケイ酸エチルなどのケイ酸エステルに水や酸または塩基を加えて加水分解および縮合させることによって調製される。ケイ酸エステルに添加する酸としては、塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸などを用いることができる。塩基としては、アンモニアや各種アミン類の中から、溶媒への溶解性やケイ酸エステルの反応性を考慮して選択するとよい。バインダー溶液を調製する際には、80℃以下の温度で加熱することも可能である。
バインダー溶液に含まれる酸化ケイ素縮合物の重量平均分子量としては、ポリスチレン換算で500以上3000以下が好ましい。重量平均分子量が500未満であると、硬化後のクラックが入りやすく、また塗液としての安定性が低下する場合がある。また、重量平均分子量が3000を超えると、バインダー溶液の粘度が上昇して大きなボイドが発生しやすくなる傾向がある。
酸化ケイ素粒子同士を化学的に結合させる場合、活性を高めたシラノール基を介して酸化ケイ素粒子同士を結着させる方法を用いることができる。具体的には、酸化ケイ素粒子の表面を強酸などで処理する方法や酸化ケイ素粒子の表面にシラノール基を付着させる方法が挙げられる。
酸化ケイ素粒子の分散液に用いることができる溶媒は、原料が均一に溶解し、かつ反応物が析出しない溶媒であれば良い。前述した、1価のアルコール類、2価以上のアルコール類、エーテルアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。さらに、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類や、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類、あるいは、クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類を用いることもできる。また、これらの中から選択した2種類以上の溶媒を混ぜて使用することもできる。
図3の反射防止層30に含まれる高屈折率層33は、エッチングレートRが、理論密度の状態におけるエッチングレートRとの比R/Rが、0.75以上0.90以下となるように形成されている。あるいは、屈折率nが、層を構成する化合物の理論密度における屈折率nに対して、屈折率比n/nが0.85以上0.95以下となるように形成されている。
高屈折率層33は、層を構成する化合物のペレットを原料とする蒸着法によって成膜する際に、蒸着条件を適宜調整することによって所望の密度に形成することができる。具体的には、基材を加熱しない無加熱蒸着や、酸素などの気体の導入圧力や基板の温度を制御した成膜法や、蒸着粒子が飛来する方向に対して基材を斜めにして成膜を行う斜方蒸着などを行うと良い。
低屈折率層31や中屈折率32は、理由はよくわからないが、先に例示した酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化カルシウムなどは、10nm以上200nm以下の層厚であれば、通常の加熱蒸着法で成膜しても水分の透過を妨げないことが確認されている。低屈折率層31には、他の材料に比べて特に低い屈折率を示すフッ化マグネシウムの層を用いるのが好ましい。
[第二実施形態]
高屈折率層33を無加熱蒸着や斜方蒸着で形成する場合、タクトタイムや生産コストを考慮すると、他の層も同様の蒸着法で連続成膜するのが効率的である。低屈折率層(フッ化マグネシウム層)31を、高屈折率層33と同様の条件で形成すると、低屈折率層31の密度も低下する。低屈折率層31は、外力を受けて最も傷付きやすい光学部材100の最表面に設けられるため、低屈折率層31の密度が低いと、光学部材100の耐擦傷性が低下してしまうと懸念される。
本実施例では、光学部材100の最表面に設けるフッ化マグネシウム層31の強度を高め、反射防止性と防曇性に優れ、かつ、耐擦傷性にも優れる光学部材の構成について説明する。以下、第一実施形態との差異点を中心に説明し、同様の点は説明を省略する場合がある。
図4に本実施形態にかかる光学部材100の概略断面図を示す。本実施形態にかかる光学部材100は、フッ化マグネシウム層31は、フッ化マグネシウム層31の基材10側に設けられた隣接する層との界面に、複数の柱状構造体34を有している。柱状構造体33は、フッ化マグネシウム層の他部分に比べて密度が高い領域である。
柱状構造体34の高さは、フッ化マグネシウム層31の膜厚に対して27%以上40%以下であることが好ましい。柱状構造体34の高さをこの範囲にすることで、膜強度と散乱が小さく透明性に優れた膜を得ることができる。
フッ化マグネシウム層31bは、柱状構造体34の平均ピッチが大きいほどフッ化マグネシウム膜の強度が低下する。従って、光学部材の最表層として必要な膜強度とを得るためには、柱状構造体34の平均ピッチが60nm以下であることが好ましい。
柱状構造体34の高さおよび平均ピッチは、フッ化マグネシウム層31の断面を二次電子顕微鏡像で観察し画像処理することによって測定することができる。図5は、図3と同様の構成を有する、本実施例にかかる光学部材100の断面SEM像である。柱状構造体34はSEM像において他の部分よりも明度の高い部分として観察され、他の部分よりも電気低効率も他の部分よりも低く密度が高いことがわかる。このようなSEM像の画像処理方法としては、Image−Pro PLUS(メディアサイバネティクス社製)など市販の画像処理ソフトを用いることができる。
実験により、柱状構造体34のピッチと高さは、フッ化マグネシウム層31が形成される面の表面粗さと成膜条件によって制御することができるという知見が得られた。反射防止層は水分保持層の表面形状に倣って形成されることから、フッ化マグネシウム層31が形成される表面の形状は、水分保持層20の表面形状によって制御することができる。
水分保持層20の表面形状は、表面粗さ(算術平均粗さ)が12nm以上15nm以下であることが好ましい。表面粗さが12nm以上15nm以下であることにより、フッ化マグネシウム層31中に所望のピッチで柱状構造体34が成長しやすくなり、膜の強度が向上する。さらに、所望形状の柱状構造体34をより成長しやすくするためには、水分保持層3の表面における最大高低差が、14nm以上18nm以下であることが好ましい。
水分保持層20の表面粗さと最大高低差は、水分保持層20とその上に配置される層との界面を、透過電子顕微鏡像によって観察したものを画像処理によって測定することができる。画像処理方法としては、Image−Pro PLUS(メディアサイバネティクス社製)など市販の画像処理ソフトを用いることができる。
水分保持層20の表面粗さは成膜方法によって制御することができる。水分保持層20を、粒子を含む多孔質層とする場合、粒子の形状や塗布液の溶媒の種類を適切に選択することによって、その表面粗さや最大高低差が所望の範囲となるように制御することができる。
[第三実施形態]
光学部材が用いられる光学機器の設計によっては、反射防止層30の表面が大気に曝され、膜の表面にシロキサン系の有機物が付着し、水の接触角が高くなることがある。反射防止層30の表面における水の接触角が高くなると、光学部材で保持可能な水分量を超える水分が表面に存在する場合に、光学部材の表面で水滴を形成し、曇りの原因になる。
そこで、本実施例では、図6に示すように、反射防止層30の表面に親水ポリマー層50を設け、光学部材表面の水に対する接触角の上昇を抑制する。
(親水性ポリマー層)
親水性ポリマー層50には、親水性を有する官能基を含む化合物であれば、特に限定されることなく用いることができるが、中でも両性イオン性親水基を有するポリマーが特に好ましい。両性イオン性親水基の存在により、表面の親水性がより高まるとともに電気抵抗が低くなるため、汚染物が帯電付着しにくくなる。その結果、長期にわたって高い親水性を維持することが可能となる。光学部材の表面に親水性ポリマー層が存在することにより、光学部材で保持できなかった水分は、光学部材の表面で水滴にならず水膜となるため、曇りの発生を抑制することができる。
両性イオン性親水基としては、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホルコリン基、スルホン基、ホスホネート基、カルボン酸無水物を好適に用いることができる。また、両性イオン性親水基を有するポリマーの有機骨格は、特に限定されるものではない。
親水性ポリマー層50と反射防止層30との密着性を高めるためには、親水性ポリマー層50に接する反射防止層30の化学組成を選択することが好ましい。例えば、親水性ポリマー層50を形成するための溶液に含まれるシランカップリング剤のシラノール基と反応させるためには、反射防止層30の親水層を形成する面に酸化ケイ素を用いることが好ましい。
一般に、多層からなる反射防止層の反射防止性能を高めるためには、空気に接する層の屈折率を低くすることが好ましい。しかしながら、親水性ポリマー層50の形成に用いられる化合物は、シランカップリング剤や親水性ポリマーが一般的であり、屈折率が1.4を超える化合物が多い。そこで、反射防止層30の反射防止性能に影響を与えずに、シロキサン系の有機物が表面に付着するのを抑制して親水性を維持するため、親水性ポリマー層50の層厚は、1nm以上20nm以下であることが好ましい。
親水性ポリマー層がこの程度の厚さであれば、反射防止層の各層の屈折率や膜厚を設計することで、親水層を形成しても高い反射防止性能を実現することが可能である。
親水性ポリマー層の層厚は、X線光電子分光装置を用いて、次の手法によって計測することができる。
光学素子の表面にX線ビームを照射し、検出される光電子ピークの強度から、親水性ポリマー由来の元素濃度を測定する。親水性ポリマー由来の元素は、例えば親水性ポリマーの親水基がスルホベタイン基であれば硫黄を、ホスホルコリン基であればリンを、カルボベタイン基であれば窒素を用いて測定することができる。続いて、光学素子の表面の任意の所定領域に、イオンビームで一定時間エッチングした後、エッチングした領域内にX線ビームを照射し、親水性ポリマー由来の元素濃度を測定する。親水性ポリマー由来の元素濃度を測定とエッチングのセットを複数回繰り返し、表面からの溝の深さDを物理的に測定する。エッチング回数と溝の深さDとから、1回のエッチング工程で親水性ポリマー層50がエッチングされる層厚を算出できる。
1回のエッチング工程でエッチングされる層厚を算出したエッチング条件で、光学素子の表面に形成された親水性ポリマー層50に対して、親水性ポリマー由来の元素が検出できなくなるまで、エッチングと親水性ポリマー由来の元素濃度測定を繰り返し行う。親水性ポリマー由来の元素の検出強度が消失した時点のエッチング回数に、1回のエッチング工程でエッチングされる層厚を乗じた値を、本発明では親水性ポリマー層50の層厚とする。
親水性ポリマー層50は、両性イオン性親水性を有する官能基を含む化合物を含む溶液を、公知のウェット法を用いて前記反射防止層の上に供給し、硬化して形成することができる。ウェット法には、スピンコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スリットコート法、印刷法やディップコート法などが挙げられる。
親水性を有する官能基を含む化合物は、両性イオン性親水基を有するポリマーが特に好ましい。親水性ポリマーが有する好ましい主鎖構造としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、等を用いることができる。
親水性ポリマーの溶液の溶媒には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどの中から、用いる親水性ポリマーとの相溶性の高い溶媒を選択して用いることが好ましい。
[第四実施形態]
図13は、本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であり、本発明の光学機器の一例であるレンズ鏡筒(交換レンズ)が結合された一眼レフデジタルカメラの構成を示している。
本発明の光学機器とは、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置、交換レンズ等、本発明の光学部材を含む光学系を備える機器のことをいう。あるいは本発明の光学部材を通過した光によって画像を生成する機器のことをいう。
また、本発明の撮像装置とは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のカメラシステムや、携帯電話機等の本発明の光学素子を通過した光を受光する撮像素子を備える電子機器のことをいう。なお、電子機器に搭載されるモジュール状の形態、例えばカメラモジュールを撮像装置とする場合もある。
図13において、カメラ本体202と光学機器であるレンズ鏡筒201とが結合されているが、レンズ鏡筒201はカメラ本体202対して着脱可能ないわゆる交換レンズである。
被写体からの光は、レンズ鏡筒201の筐体220内の撮影光学系の光軸上に配置された複数のレンズ203、205などからなる光学系を通過し、撮像素子に受光される。本発明にかかる光学部材は、筐体内の最も曇りが生じやすいレンズ203として特に好適であるが、ファインダレンズ212や、ミラー207、208や撮像素子210のカバーガラスなどの各種光学系を構成する光学部材のいずれにも用いることができる。ここで、レンズ205は内筒204によって支持されて、フォーカシングやズーミングのためにレンズ鏡筒201の外筒に対して可動支持されている。
撮影前の観察期間では、被写体からの光は、カメラ本体の筐体221内の主ミラー207により反射され、プリズム211を透過後、ファインダレンズ212を通して撮影者に撮影画像が映し出される。主ミラー207は例えばハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー208によりAF(オートフォーカス)ユニット213の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。また、主ミラー207は主ミラーホルダ240に接着などによって装着、支持されている。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー207とサブミラー208を光路外に移動させ、シャッタ209を開き、撮像素子210にレンズ鏡筒201から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り206は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
図13のように、本発明にかかる光学部材を用いて撮像装置の光学系を構成することで、外部環境の変化によって光学系に曇りが発生するのを抑制することができ、優れた像を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
(1)水分保持層形成用の粒子分散液の調製
(1−1)酸化ケイ素粒子分散液1の調製
鎖状の酸化ケイ素粒子の2−プロパノール(IPA)分散液(日産化学工業株式会社製IPA−ST−UP、平均粒径12nm・固形分濃度15質量%)500gに1−プロポキシ−2−プロパノールを加えながらIPAを留去して、固形分濃度17.3質量%の鎖状酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液433.3gを調製した。
別の容器に、ケイ酸エチル62.6gと1−プロポキシ−2プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/lの希塩酸54gをゆっくり加えて室温で90分間攪拌した。その後、40℃で1時間加熱して、固形分濃度11.8質量%酸化ケイ素オリゴマー溶液を調製した。
前記鎖状酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液に、前記酸化ケイ素オリゴマー溶液25.4gをゆっくり加えてから室温で2時間攪拌して酸化ケイ素粒子塗工液1を調製した。
塗工液を動的光散乱法による粒度分布測定(マルバーン社製 ゼータサイザーナノZS)により、単径が11nm、長径が77nmの鎖状酸化ケイ素粒子が分散していることを確認した。
(1−2)酸化ケイ素粒子分散液2の調製
鎖状の酸化ケイ素粒子の水分散液(扶桑化学工業株式会社製 PL−1、平均粒径15nm・固形分濃度12質量%)500gに1−プロポキシ−2−プロパノールを加えながら水を留去して、固形分濃度17.3質量%の鎖状の酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液433.3gを調製した。
別の容器に、ケイ酸エチル62.6gと1−プロポキシ−2−プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/lの希塩酸54gをゆっくり加えて室温で90分間攪拌した。その後、40℃で1時間加熱し、固形分濃度11.8質量%酸化ケイ素オリゴマー溶液を調製した。
前記鎖状酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液に、前記酸化ケイ素オリゴマー溶液20.3gをゆっくり加えてから室温で2時間攪拌して鎖状酸化ケイ素粒子分散液2を調製した。
(1−3)酸化ケイ素粒子分散液3の調製
球状の酸化ケイ素粒子のメタノール分散液(日産化学工業株式会社製 MA−ST―M、平均粒径22nm・固形分濃度40質量%)200gに1−メトキシ−2−プロパノールを加えながらメタノールを留去して、固形分濃度17.3wt%の球状の酸化ケイ素粒子の1−メトキシ−2−プロパノール分散液462.2gを調製した。
別の容器に、ケイ酸エチル62.6gと1−メトキシ−2−プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/lの希塩酸54gをゆっくり加えて室温で90分間攪拌した。その後、40℃で1時間加熱し、固形分濃度11.8質量%酸化ケイ素オリゴマー溶液を調製した。
前記鎖状酸化ケイ素粒子の1−メトキシ−2−プロパノール分散液に、前記酸化ケイ素バインダー溶液27.1gをゆっくり加えてから室温で2時間攪拌して球状酸化ケイ素粒子分散液3を調製した。
(1−4)酸化ケイ素粒子分散液4の調製
1−プロポキシ−2−プロパノールに代えて2−へプタノンを用いること以外は、酸化ケイ素粒子分散液2と同様にして鎖状の酸化ケイ素粒子分散液4を調整した。
(1−5)酸化ケイ素粒子分散液5の調製
球状の酸化ケイ素粒子の2−プロパノール(IPA)分散液(日産化学工業株式会社製IPA−ST−UP、平均粒径45nm・固形分濃度40wt%、)200gに1−プロポキシ−2−プロパノールを加えながらIPAを留去して、固形分濃度17.3wt%の球状酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液462.2gを調製した。
別の容器に、ケイ酸エチル62.6gと1−プロポキシ−2−プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/lの希塩酸54gをゆっくり加えて室温で90分間攪拌した。その後、40℃で1時間加熱し、固形分濃度11.8wt%酸化ケイ素オリゴマー溶液を調製した。
前記球状酸化ケイ素粒子の1−プロポキシ−2−プロパノール分散液に、前記酸化ケイ素オリゴマー溶液27.1gをゆっくり加えてから室温で2時間攪拌して球状酸化ケイ素粒子分散液5を調製した。
(2)下地層形成用の酸化ケイ素粒子分散液6の調製
球状の酸化ケイ素粒子の1−メトキシ−2−プロパノール(以下、PGME)分散液(日産化学工業株式会社製 PGM−ST、平均粒径12nm・固形分濃度30質量%、)370gに1−エトキシ−2−プロパノールを加えて、固形分濃度5.5質量%の球状酸化ケイ素粒子の1−エトキシ−2−プロパノール分散液2018.2gを調製した。
別の容器に、ケイ酸エチル62.6gと1−エトキシ−2−プロパノール36.8gの溶液に、0.01mol/lの希塩酸54gをゆっくり加えて室温で90分間攪拌してから、40℃で1時間加熱し、固形分濃度11.8質量%酸化ケイ素オリゴマー溶液を調製した。
前記球状酸化ケイ素粒子の1−エトキシ−2−プロパノール分散液に、前記酸化ケイ素バインダー溶液94.1gをゆっくり加えてから室温で2時間攪拌して酸化ケイ素粒子塗工液6を調製した。
塗工液を動的光散乱法による粒度分布測定(マルバーン社製 ゼータサイザーナノZS)により、粒径が15nmの球状の酸化ケイ素粒子が分散していることを確認した。
(3)膜厚の測定
基板に形成した反射防止層にカーボン膜及びPt−Pd膜をコート後、電子ビーム加工装置(FIB−SEM;FEI製Nova600)装置内で薄片化し、走査型透過電子顕微鏡(STEM;日立製S−5500)観察を実施した。
(4)屈折率の計測
分光エリプソメータを用い、波長380nmから800nmまで計測した。屈折率の代表値としてndを示す。屈折率の測定には、(3)で測定した膜厚の値を用いた。
理論的屈折率は、層を構成する化合物と実質同じ組成を有するペレットを用いて、石英基板の上に、基板加熱温度:250℃、成膜時真空度:1×10−2Pa、成膜速度:4Å/秒の条件で成膜した膜の屈折率を分光エリプソメータにて計測した。層を構成する化合物の特定は以下の手順で行った。反射防止層に、FIB−SEM加工装置(FEI製Quanta200)を用いて、2mm×2mmの矩形領域に加速電圧1000VのArイオンビームを照射し、30秒間のエッチングを繰り返し行った。30秒間エッチングする毎に、エッチングする層の組成に応じて検出元素を選択してXPSによる元素分析を行い、それぞれの層に含まれる化合物を特定した。
(5)エッチングレートの測定
反射防止層に含まれる複数の層のうち、最も高屈折率の高い層について、エッチングレートRを調べた。FIB−SEM加工装置(FEI製Quanta200)を用いて、2mm×2mmの矩形領域に加速電圧1000VのArイオンビームを照射し、30秒間のエッチングを繰り返し行った。30秒間エッチングする毎に、エッチングする層の組成に応じて検出元素を選択してXPSによる元素分析を行い、層が切り替わるタイミングを検出した。パスエネルギーを55.0eV、ステップを0.050eVとした。そして、エッチングレートを測定する層の組成の理論密度状態において、同じエッチング条件でのエッチングレートRを計測し、R/Rを算出した。
(6)防曇性評価
防曇性評価装置(共和界面科学株式会社製 AFA−2)を用いて、25℃に保持した透明基板を15℃まで冷却しながら25℃で70%RHの雰囲気に放置し、透過像を1秒毎に300秒まで記録した。透過像から圧縮防曇指数解析を行い、圧縮防曇指数の時間変化プロットした。
得られたプロットから圧縮防曇指数が初期値から低下し始めるまでの時間を読み取り、以下の基準で防曇性を評価した。圧縮防曇指数が初期値から低下し始めるまでの時間が長いほど、防曇性に優れる。
A:100秒以上
B:80秒以上100秒未満
C:80秒未満
(7)反射率評価
反射率測定機(オリンパス株式会社製 USPM−RU)を用いて波長380nmから780nmの絶対反射率を測定し、波長400〜700nmの反射率の平均値(平均反射率)を求め、以下の基準で判定を行った。平均反射率が小さいほど反射性能に優れる。
A:平均反射率が0.5%未満、
B:平均反射率が0.5%以上1.0%未満
C:平均反射率が1.0%以上
(8)総合評価
(6)防曇性評価と(7)反射率の評価の結果をふまえ、各光学部材の特性を総合的に判定した。判定基準を下記に示す。総合評価Aを示すものが防曇性を有する光学部材として最も好適であり、総合評価Cを示すものは防曇性を有する光学部材としては適さない。
A:防曇性と反射率の評価が共にA
B:防曇性の評価がA、かつ、反射率の評価がBもしくはC
C:防曇性の評価がBもしくはC
(実施例1〜4)
40mm角、厚さ3mmの平板ガラス基板(株式会社オハラ製S−BSL7、nd=1.52)上に、酸化ケイ素粒子分散液2を適量滴下し、4000rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中にて140℃で30分間加熱して硬化することで下地層を形成した。下地層の上に酸化ケイ素粒子分散液1を適量滴下し、1500rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中にて140℃で30分間加熱して硬化することで水分保持層を形成した。続いて、酸化ケイ素を含む層、酸化ジルコニウムと酸化チタンとを含む層、フッ化マグネシウムを含む層の組み合わせからなる反射防止層を、反射防止性能を考慮した設計に基づいて成膜した。成膜の際、所望の屈折率が得られるように、基材の温度、および到達真空圧力、各層の成膜時の圧力を調整した。
反射防止層は、基材10側から中屈折率層32と高屈折率層33を交互に積層し、最表面に低屈折率層31を形成した。各層の成膜は、基材10を加熱しない状態で回転をさせながら、以下に示す化合物のペレットを坩堝で加熱することで蒸着を行った。なお、基板10は積極的に加熱していないが、坩堝の熱により、多少温度が上昇する場合もある。
中屈折率層32:酸化ケイ素(キヤノンオプトロン株式会社製SiOE型式)
高屈折率層33:酸化ジルコニウムと酸化チタンとの混合物
(日亜化学工業株式会社製OH−5)
低屈折率層31:フッ化マグネシウム(稀産金属株式会社製MgF
各実施例にかかる光学部材の層構成を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様の平板ガラス基板のみを、比較例1とした。
(比較例2)
下地層および水分保持層は形成せず、実施例1と同様の平板ガラス基板の上に、表1の層構成となるように、屈折率が互いに異なる複数の層を成膜して光学部材を得た。
(比較例3)
実施例1と同様にして、下地層および水分保持層を形成し、光学部材を得た。実施例1とは、反射防止層を有していない点で異なっている。
(比較例4〜5)
比較例4は、反射防止層を表1の層構成とし、比較例5は、反射防止層を表1の膜構成9とした点を除き、実施例1と同様にして光学部材を作製した。
作製した実施例および比較例の各層構成と評価結果を、それぞれ表1と表2にまとめて示す。各層の屈折率比を算出する際に用いた理論的屈折率nは、以下の通りである。
酸化ケイ素:1.46
酸化ジルコニウムと酸化チタンとの混合物:2.12
フッ化マグネシウム:1.38
(実施例1〜4及び比較例1〜5の評価)
測定結果の例として、図7に実施例1の光学部材について測定した反射特性を示す。平均反射率は0.4%であり、優れた反射防止特性を示すことがわかる。また、図8に、実施例1、比較例1〜2の光学部材の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示す。実施例1の光学部材は防曇性評価では111秒以下では曇ることはなかったが、比較例1、2は、100秒未満で曇り始めることがわかる。各実施例および比較例の評価結果を表2にまとめて示す。
比較例1のガラス基材のみの光学部材は、防曇性評価において68秒で曇りを生じる。比較例2のガラス基材に金属酸化膜からなる反射防止層だけを設けた光学部材は、防曇性評価も68秒であった。この結果から、金属酸化膜からなる反射防止層のみを有する光学部材は、防曇性が改善されていないことがわかる。
比較例3の、酸化ケイ素からなる多孔質膜だけが設けられた光学部材は、曇り始めるまでの時間が91秒に延長され、防曇性が改善されているが、平均反射率が1.1%と高い。それに対して、実施例1〜5の光学部材は、いずれも防曇性評価において、100秒で曇り始めることはなく、比較例3よりも防曇性に優れている。加えて、反射率も低いことが確認された。
比較例4のように、屈折率比n/nが1.00である高屈折率層は、高屈折率層を構成する化合物の理論屈折率に近く、緻密な状態であるため、光学部材表面の水分が透過できず、水分保持層に保持されない。従って、光学部材の表面が曇り始めるまでの時間が、酸化ケイ素からなる多孔質層のみが設けられた比較例3より短くなった。一方、屈折率比n/nが0.81である比較例5は、防曇性は得られるが、高反射防止層の空孔が多すぎるために高反射防止層に適した屈折率が得られず、反射率が高くなってしまった。また、膜が疎になり、膜が弱い部分があった。
実施例1〜4、比較例1〜5の結果から、各反射防止層に含まれる高屈折率層の屈折理nと高屈折率層の理論的屈折率nとの比n/nが0.85以上、0.95以下の場合に、防曇性および反射防止に優れ、光学部材に適した特性が得られることがわかった。
(実施例5〜7、比較例6〜8)
第二実施形態にかかる光学部材を評価するため、表3に示す実施例5〜7、比較例6〜8の光学部材を作製した。用いた基材、水分保持層4や反射防止層5の形成方法は、実施例1〜4と同様に行った。表3において、反射防止層に含まれる層数が5層のものは、実施例1と同様の層構成とし、3層のものは実施例4と同様の構成とした。
各実施例、比較例で得られた光学部材について、下記の方法で評価を行った。結果は表3にまとめて示す。
(10)柱状構造体の高さおよび平均ピッチの測定
作製した光学部材にカーボン膜及びPt−Pd膜をコート後、電子ビーム加工装置(FIB−SEM;FEI製Nova600)装置内で薄片化した。作製した薄片について、走査型透過電子顕微鏡(STEM;日立製S−5500)を用いて観察を実施し、二次電子画像を取得した。得られた二次電子画像から各層の膜厚を測定した。
作製した光学部材にカーボン膜及びPt−Pd膜をコート後、電子ビーム加工装置(FIB−SEM;FEI製Nova600)装置内で薄片化した。作製した薄片について、走査型透過電子顕微鏡(STEM;日立製S−5500)を用いて、フッ化マグネシウム膜とその直下の層が映るように10万倍の倍率で、二次電子画像を得た。
得られた二次電子画像からフッ化マグネシウム膜の厚みに対して27%以上の高さを持つ柱状構造体を数え、その高さの平均を柱状構造体の高さとした。また、フッ化マグネシウムの境界の長さを27%以上の高さを持つ柱状構造体の数で割った数値を平均ピッチとした。
(11)水分保持層の表面粗さおよび最大高低差の測定
作製した光学部材にカーボン膜及びPt−Pd膜をコート後、電子ビーム加工装置(FIB−SEM;FEI製Nova600)装置内で薄片化した。作製した剥片について、走査型透過電子顕微鏡(STEM;日立製S−5500)を用いて水分保持層とその直上の層が映るように10万倍の倍率で、二次電子画像を得た。
得られた二次電子画像の水分保持層とその直上の層の境界から算術平均粗さRaと最大高低差を計算した。算術平均粗さRaを表面粗さとした。
(12)強度評価
シルボン紙を膜の表面に204g/cm2の荷重で10往復させ、目視で傷を確認し下記の基準で評価した。
A:キズなし
B:キズあり
(実施例5〜7及び比較例6〜8の評価)
実施例5から7および比較例6から8の光学部材の評価結果の比較より、柱状構造体ピッチが60nm以下であると柱状構造体1本あたりにかかる力が分散し膜全体として強度が上昇することが分かる。また水分保持層の表面粗さが大きいほど、柱状構造体が成長しピッチが小さくなることが分かる。比較例1の光学部材は柱状構造体ピッチが大きいため柱状構造体1本あたりにかかる力が大きくなり、膜強度が減少していることが分かる。
以上のことより、本発明の要件を満たす実施例の光学部材は、比較例の光学部材に対して、強度に優れることが示された。表には示していないが、実施例5〜7に対して(7)防曇性評価を行ったところ、いずれもA評価が得られた。
(実施例8)
第三実施形態に対応する実施例として、親水性ポリマー層を有する光学部材を作製した。
スルホベタイン基を有したアクリルポリマーの水溶液であるLAMBIC−771W(大阪有機化学工業社製)5gに純水95gを加えて希釈し、室温で10分間撹拌し、親水性ポリマー塗工液を調整した。
40mm角、厚さ3mmの平板石英基板(nd=1.47)上に、酸化ケイ素粒子分散液2を適量滴下し、4000rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中で140℃30分間加熱硬化することで下地層を形成した。下地層の上に酸化ケイ素粒子分散液1を適量滴下し、1500rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中で140℃30分間加熱硬化することで水分保持層を形成した。その後、実施例1と同様の方法にて、酸化ケイ素膜、酸化ジルコニウムと酸化チタンを混合した膜、フッ化マグネシウム膜を、反射率性能を考慮した屈折率および膜厚となるように成膜した(表5)。
その後、親水性ポリマー塗工液を適量滴下し、3500rpmで30秒スピンコートした後、水を適量滴下し、3500rpmで30秒スピンコートした。
(実施例9)
スルホン酸基を有したポリマー水溶液にした点を除き、実施例8と同様にして光学部材を作製した。
(実施例10)
ホスホン酸ナトリウムから成る構造を有したポリマー水溶液にした点を除き、実施例8と同様にして光学部材を作製した。
(実施例11)
無水コハク酸から成る構造を有したポリマー水溶液にした点を除き、実施例8と同様にして光学部材を作製した。
(比較例9)
(親水性ポリマー塗工液の成膜2)
40mm角、厚さ3mmの平板石英基板(nd=1.47)上に、酸化ケイ素粒子分散液2を適量滴下し、4000rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中で140℃30分間加熱硬化することで下地層を形成した。下地層の上に酸化ケイ素粒子分散液1を適量滴下し、1500rpmで30秒スピンコートした後、熱風循環オーブン中で140℃30分間加熱硬化することで水分保持層を形成した。その後、実施例1と同様の方法にて、酸化ケイ素膜、酸化ジルコニウムと酸化チタンを混合した膜、フッ化マグネシウム膜を、反射率性能を考慮した層厚で成膜した。
その後、親水性ポリマー塗工液を適量滴下し、2000rpmで30秒スピンコートし、厚さ25nmの親水性ポリマー層を形成した。
(比較例10)
親水性ポリマー層を設けない点を除いて、実施例8と同様に光学部材を作製し、比較例10とした。ここでは比較例として記載しているが、第一実施形態の実施例に含まれるもので、組み込まれる光学機器の設計次第で、実施例1〜4と同様に優れた反射防止性と防曇性とを示す光学部材として用いることができる。
(比較例11)
シラン変性イミンを有したポリマー水溶液にした点を除き、実施例8と同様にして光学部材を作製した。
(比較例12)
ヒドロキシル基を有したポリマー水溶液にした点を除き、実施例8と同様にして光学部材を作製した。
(親水性ポリマー層の層厚評価)
実施例8および比較例9について、親水性ポリマー層の層厚を以下の手順で評価した。
親水性ポリマー層の層厚の計測には、X線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製 QuanteraII)を用いた。膜厚測定の際、加速電圧100VのArイオンビームで2mm×2mm角の領域を15秒間エッチングしながら同様の分析を40回繰り返し、親水性ポリマー由来の元素の検出強度を測定した。40回エッチング後の表面からの溝の深さを測定したところ約40nmの深さであることが確認され、1回のエッチング工程で1nmの深さにエッチングされることが分かった。そこで、親水性ポリマー層の表面から複数回エッチングを行い、親水性ポリマー由来の元素の検出強度が消失した時点のエッチング回数に1nmを乗じて親水性ポリマー膜の厚さを得た。
実施例8の親水性ポリマー層の層厚は3nm、比較例9の親水性ポリマー層の層厚は25nmであった。表4に実施例8の光学部材の構成を示しておく。
(実施例8と比較例9、10の評価)
図9に実施例8と比較例10の反射率特性を示し、図10に比較例9と比較例10の反射率特性を示す。これら結果から、親水性ポリマー層が20nmよりも厚いと反射防止効果が大きく損なわれるが、3nm程度の層厚であれば、反射防止特性に影響しないことが確認できた。
(13)接触角評価
全自動接触角計(共和界面科学株式会社製 DM−701)を用い、23℃50%RHで純水またはヘキサデカン2μlの液滴を接触した時の接触角を測定した。
純水の接触角は以下の基準で評価した。接触角が低いほど、親水性に優れる。
A:20°未満
B:20°以上60°未満
C:60°以上
(14)防曇性評価
防曇性評価装置(共和界面科学株式会社製 AFA−2)を用いて、25℃に保持した透明基板を15℃まで冷却しながら25℃で70%RHの雰囲気に放置し、透過像を1秒毎に300秒まで記録した。透過像から圧縮防曇指数解析を行い、圧縮防曇指数の時間変化プロットした。得られたプロットから圧縮防曇指数が初期値から低下し始めるまでの時間を読み取り、以下の基準で防曇性を評価した。圧縮防曇指数が初期値から低下し始めるまでの時間が長いほど、防曇性に優れる。
A:100秒以上
B:80秒以上100秒未満
C:80秒未満
図11に実施例8の光学部材の耐久試験前後の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示し、図12に比較例10の光学部材の耐久試験前後の加湿時間に対する圧縮防曇指数の変化を示す。耐久試験は大気中に1週間放置することで行った。表面に親水性ポリマー層を有する実施例8の光学部材は、耐久試験前後で高い防曇性能を維持していた。一方、表面に親水性ポリマー層を有さない比較例10の光学部材は、耐久試験前は優れた防曇性能を示したが、耐久試験後は防曇性能の低下が確認された。これは、反射防止層の表面に親水性ポリマー層50を設けることによって、光学部材100で吸収できなかった水分が、表面で水滴にならずに水膜になったことによる。
表5には実施例8から11と比較例10から12による耐久試験後の接触角の変化と防曇性の評価を示した。親水性ポリマー層を有する実施例8から11、比較例10から12の接触角は、いずれも耐久試験前は60°以下であり、親水性を示し、実施例8から11は、耐久試験の後も接触角60°以下であった。特に、実施例8は耐久試験前後ともに15°以下となり、高い親水性を維持していた。
また、実施例8から11は防曇性評価において80秒を超えても光学部材上に曇りは見られなかった。それに対して、両イオン性親水基を有する親水性ポリマー層を有さない比較例10から12は、耐久試験後に親水性が失われ、防曇性評価においても15℃まで冷却した光学部材を25℃70%RHの雰囲気に放置して80秒以内に曇り始め視認性が徐々に悪化した。
本発明の光学部材は、窓ガラス、鏡、レンズ、透明フィルムなど一般的な用途から、撮像系や投影系の光学レンズ、光学ミラー、光学フィルター、アイピース、屋外カメラや監視カメラ用の平面カバーやドームカバーなど光学部品に利用することが可能である。
100 光学部材
10 基材
20 多孔質層(水分保持層)
30 反射防止層

Claims (24)

  1. 基材の上に、基材側から多孔質層と、多層からなる反射防止層と、をこの順に有しており、
    前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率nと、前記最も屈折率の高い層を構成する化合物の理論密度における屈折率nとの比n/nが、0.85以上0.95以下である、ことを特徴とする光学部材。
  2. 前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率が、1.8以上である、ことを特徴する請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記反射防止層が、屈折率1.4以上1.8未満の層を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の光学部材。
  4. 前記反射防止層が、屈折率が1.4未満の層を含む、ことを特徴とする請求項2または3に記載の光学部材。
  5. 前記屈折率が1.4未満の層は、前記反射防止層において、前記基材から最も離れた位置に設けられている、ことを特徴とする請求項4に記載の光学部材。
  6. 前記屈折率が1.4未満の層は、隣接する層との界面に、前記屈折率が1.4未満の層の層厚に対して27%以上の高さの複数の柱状構造体を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の光学部材。
  7. 前記複数の柱状構造体の平均ピッチが、60nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学部材。
  8. 前記多孔質層に含まれる空孔の平均空孔径が、3nm以上50nm以下である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学部材。
  9. 前記多孔質層に含まれる空孔の平均空孔径が5nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光学部材。
  10. 前記多孔質層に含まれる空孔の細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学部材。
  11. 前記多孔質層に含まれる空孔の細孔容積が0.3cm/g以上0.6cm/g以下である請求項10に記載の光学部材。
  12. 前記多孔質層が、複数の金属酸化物粒子を含む、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光学部材。
  13. 前記金属酸化物粒子が、酸化ケイ素粒子である、ことを特徴とする請求項12に記載の光学部材。
  14. さらに、前記基材と前記多孔質層との間に下地層を有する、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光学部材。
  15. 前記下地層が、前記基材と前記多孔質層との間の屈折率を有する層か、互いに屈折率が異なる複数の層からなる積層体である、ことを特徴とする請求項14に記載の光学部材。
  16. さらに、前記反射防止層の表面に、厚さ1nm以上20nm以下の両性イオン性親水基を有する親水性ポリマー層を備える、ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光学部材。
  17. 前記両性イオン性親水基が、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホルコリン基、スルホン基、ホスホネート基、カルボン酸無水物のいずれかである、ことを特徴とする請求項16に記載の光学部材。
  18. 筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系を備える光学機器であって、
    前記レンズが請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光学部材であることを特徴とする光学機器。
  19. 筐体と、該筐体内に複数のレンズからなる光学系と、該光学系を通過した光を受光する撮像素子と、を備える撮像装置であって、
    前記レンズが請求項1乃至17のいずれか1項に記載の光学部材であることを特徴とする撮像装置。
  20. 光学部材の製造方法であって、
    粒子とバインダーを形成する成分と溶媒とを含む液を基板上に供給して多孔質層を形成する工程と、
    前記多孔質層の上に、多層からなる反射防止層を形成する工程と、
    を有しており、
    前記反射防止層を形成する工程において、前記反射防止層に含まれる層のうち最も屈折率の高い層の屈折率nと前記最も屈折率の高い層を構成する化合物の理論密度における屈折率nとの比n/nが、0.85以上0.95以下となるように、前記最も屈折率の高い層を蒸着法にて形成する、ことを特徴とする光学部材の製造方法。
  21. 前記最も屈折率の高い層は、無加熱蒸着または斜方蒸着によって成膜される、ことを特徴とする請求項20に記載の光学部材の製造方法。
  22. 前記粒子が酸化ケイ素粒子、前記バインダーを形成する成分が酸化ケイ素化合物を含む溶液である、ことを特徴とする請求項20または21に記載の光学部材の製造方法。
  23. さらに、前記反射防止層の上に、両性イオン性親水性を有する官能基を含む化合物を含む溶液を供給して、親水性ポリマー層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項20乃至22のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
  24. 前記両性イオン性親水性を有する官能基が、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホルコリン基、スルホン基、ホスホネート基、カルボン酸無水物のいずれかであることを特徴とする請求項23に記載の光学部材の製造方法。
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