以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施形態では、バルブタイミング制御装置を吸気側に適用したものを示しているが、排気側に適用することも可能である。
〔第1実施形態〕
図1は本実施形態におけるバルブタイミング制御装置を示す一部縦断面図、図2は本実施形態に供される減速機構の構成部材を示す分解斜視図、図3は本実施形態に供される電動モータの構成部材を示す分解斜視図、図4は電動モータ側のカバーを外した状態を示す背面図、図5は図1のA−A線断面図である。
バルブタイミング制御装置は、図1及び図2に示すように、駆動回転体であるタイミングスプロケット1(以下、スプロケット1という。)と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持されたカムシャフト2と、スプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構3と、を備えている。
スプロケット1は、全体が金属材である鉄系金属によって環状一体に形成されており、円環状のスプロケット本体1aと、このスプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、外周に巻回された図外のタイミングチェーンを介して内燃機関のクランクシャフトから回転力を受ける歯車部1bと、を備えている。
なお、スプロケット1の外周には、内燃機関の本体である図外のシリンダブロックとシリンダヘッド01に結合された図外のチェーンケースが設けられている。
スプロケット本体1aの前端側には、後述する減速機構13の一部を構成する円環状の内歯車5が一体に設けられている。この内歯車5は、スプロケット本体1aに回転軸方向から一体に結合されていると共に、内周に波形状の複数の内歯5aが形成されている。
スプロケット本体1aは、その内周面とカムシャフト2の回転軸方向の一端部2aに固定された従動回転体である後述する従動部材9の外周面との間に滑り軸受機構6が設けられている。この滑り軸受機構6は、従動部材9(カムシャフト2)の外周でスプロケット1を相対回転可能に軸受けしている。
さらに、スプロケット本体1aの内歯車5と軸方向で反対側の後端面には、保持プレート8が固定されている。この保持プレート8は、図1及び図2に示すように、金属材である鉄系金属の板材によって円環状に形成され、外径がスプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されている。また、保持プレート8は、中央に中央孔8aが貫通形成されて、この中央孔8a側の内周部8bが滑り軸受機構6の後述する軸受凹部10のカムシャフト2側の一端開口を覆うように配置されている。この内周部8bは、中央孔8aの孔縁となる部位が、内歯車5の内歯5aの歯底面よりも内側に位置している。
また、保持プレート8は、中央孔8aの内周縁の所定位置に、径方向内側、つまり中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部8cが一体に設けられている。このストッパ凸部8cは、ほぼ逆台形状に形成されて、先端面が後述するアダプタ4の後述するストッパ凹溝4bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。
アダプタ4は、例えば鉄系金属板によって円盤状に形成されている。また、アダプタ4は、外径が保持プレート8の中央孔8aの内径よりも僅かに小さく形成されて、中央孔8aに嵌合している。また、アダプタ4は、中央に従動部材9の円筒部9cが挿入される挿入孔4aが貫通形成されていると共に、外周面の所定位置にストッパ凹溝4bが設けられている。このストッパ凹溝4bは、アダプタ4の外周に沿って所定範囲の円弧状に形成されており、これによって、スプロケット1に対する従動部材9(カムシャフト2)の最大進角側、あるいは最大遅角側の相対回転位置を機械的に規制するようになっている。
なお、アダプタ4の挿入孔4aの近傍には、カムシャフト2内から供給された潤滑油を減速機構13内に導入する導入通路孔4cが貫通形成されている。
図6は図3のB矢視図である。
また、スプロケット1の内歯車5側の前端面には、プレート部材であるフロントプレート15が設けられている。このフロントプレート15は、図1、図2及び図6に示すように、例えば鉄系金属板を円環状にプレス成形で打ち抜き形成されたもので、中央には後述する偏心軸21が挿入配置される挿入孔15aが貫通形成されている。
内歯車5を含むスプロケット本体1aとフロントプレート15の各外周部には、複数(本実施形態では6本)のボルト7が挿通する6つのボルト挿通孔1c、15bが周方向のほぼ等間隔位置にそれぞれ貫通形成されている。また、保持プレート8は、前記各ボルト挿通孔1c、15bに対応する位置に各ボルト7の先端部の雄ねじ部7aが螺着する6つの雌ねじ孔8dが形成されている。
なお、図2に示すように、スプロケット本体1aの2つのボルト挿通孔1cと保持プレート8の対応する2つの雌ねじ孔8dの各側部には、位置決め用のピン28bが挿入する位置決め用の小孔1d、8eがそれぞれ設けられている。これらによって、保持プレート8が、スプロケット1に対して周方向及び軸方向の位置決めがなされるようになっている。
カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有している。また、カムシャフト2は、回転軸方向の位相変更機構3側の一端部2aに軸受02を介して軸方向の位置決めを行うフランジ部2bが一体に設けられている。
また、カムシャフト2は、一端部2aの先端面から内部軸心方向に沿って形成された挿入孔2cを有している。この挿入孔2cは、後述するカムボルト14の軸部14bが挿入されると共に、先端側の内周面にカムボルト14の雄ねじ部14cが締結される雌ねじ部2dが形成されている。また、カムシャフト2の一端部2a内には、潤滑油を通流させる後述の潤滑油供給通路の一部を構成する油供給通路34が軸方向に沿って設けられている。また、カムシャフト2の一端部2aの挿入孔2cの先端側には、円筒溝が軸方向に沿って設けられている。
さらに、カムシャフト2の一端部2aは、図外の位置決め用のピンを介して従動部材9との回転方向の位置決めがされている。
従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、図1〜図4に示すように、円盤状本体9aを有している。この円盤状本体9aは、中央位置にカムボルト14の軸部14bが挿入されるボルト挿入孔9bが貫通形成されている。また、このボルト挿入孔9bの孔縁には、カムシャフト2方向へ突出した円筒部9cが一体に設けられている。
円盤状本体9aは、外周面に滑り軸受機構6の一部を構成するジャーナル部11が一体に設けられている。ボルト挿入孔9bは、内径がカムシャフト2の挿入孔2cの内径よりも大きく形成されている。円筒部9cは、軸方向のカムシャフト2と反対側の端面がカムボルト14の頭部14aの着座面になっている。
また、従動部材9は、円筒部9cの先端部がカムシャフト2の一端部2aの円筒溝に軸方向から嵌合した状態で、カムボルト14によってカムシャフト2に軸方向から締結固定されている。
滑り軸受機構6は、図1及び図2に示すように、スプロケット本体1aの内周面に形成された円環状の軸受凹部10と、円盤状本体9aの外周面に設けられ、軸受凹部10の内部に配置された前記ジャーナル部11と、を有している。
軸受凹部10は、スプロケット本体1aの保持プレート8側の一方側面から内歯車5まで延びることなく、カムシャフト2側に寄ったスプロケット本体1aの内周面側のみに形成されている。また、軸受凹部10は、図1に示すように、スプロケット1の回転軸心から径方向に沿った断面形状がほぼ矩形状に形成されていると共に、その一部が各歯車部1bの形成位置と軸方向でオーバーラップするように配置されている。
さらに、軸受凹部10は、円環状の底面に滑り軸受面10aが形成されている。また、軸受凹部10は、軸方向で保持プレート8と反対側の他端側に有する内側面10bが滑り軸受面10aから径方向へほぼ直角に切欠されている。また、軸受凹部10は、前述したように、カムシャフト2側の他端部が開口されて外部に解放され、この解放された他端開口が保持プレート8の内周部8bの内側面によって覆われている。
ジャーナル部11は、円盤状本体9aの外周面から径方向外側へ突出して、断面形状が軸受凹部10の断面形状とほぼ相似形の矩形状に形成されている。また、このジャーナル部11は、軸受凹部10が各歯車部1bと軸方向でオーバーラップしていることから、同じく一部がスプロケット1の各歯車部1bと軸方向でオーバーラップ配置されている。
さらに、ジャーナル部11は、環状の外周面が軸受凹部10の滑り軸受面10a全体に摺動可能になっている。
また、ジャーナル部11は、軸方向のフロントプレート15側の一端面が軸受凹部10の内側面10bに摺動可能になっている。この内側面10bは、スプロケット1の傾動時においてジャーナル部11の一端面に当接して一方のスラスト移動を規制するようになっている。
また、ジャーナル部11は、軸方向の保持プレート8側の他端面が保持プレート8の内周部8bの内側面に摺動可能になっている。この保持プレート8の内側面が、スプロケット1の傾動時においてジャーナル部11の他端面に当接して他方のスラスト移動を規制するようになっている。
カムボルト14は、図1及び図2に示すように、ほぼ円柱状の頭部14aと、この頭部14aに一体に固定された軸部14bと、この軸部14bの外周面に形成されて、カムシャフト2の雌ねじ部2dに螺着する雄ねじ部14cと、を有している。
頭部14aは、先端部に六角レンチなどの工具が挿入される六角形の工具溝14dが形成されている。また、頭部14aは、外周面全体に高周波焼き入れなどの熱処理が施されて、硬度が頭部14aの他の部位よりも高くなっている。この他の部位とは、例えば、軸部14bが結合された頭部14aの軸方向の側面である座面14eである。また、頭部14aの高硬度の外周面には、ニードルベアリング25の各ニードルローラ25aが転動可能に支持されている。座面14eは、雄ねじ部14cをカムシャフト2の雌ねじ部2dにねじ込んで締結した際に、円筒部9cのボルト挿入孔9bの孔縁に有する端面に着座するようになっている。
軸部14bは、頭部14aとの付け根部、つまり、頭部14aの軸方向の座面14e中央に、大径な中間軸部14fが一体に設けられている。この中間軸部14fは、外径が軸部14bの雄ねじ部14cの外径よりも大きく形成されていると共に、従動部材9のボルト挿通孔9dの内径よりも僅かに小さく形成されている。これによって、中間軸部14fは、ボルト挿通孔9d内周面に微小クリアランスをもって挿入嵌合して、従動部材9とカムシャフト2との同軸性を確保するようになっている。
すなわち、中間軸部14fは、カムボルト14によって従動部材9をカムシャフト2に結合する際において、ボルト挿通孔9dに挿入嵌合することによって従動部材9とカムシャフト2の同軸性を確保するようになっている。したがって、中間軸部14fのボルト挿通孔9dに対する挿入嵌合とは、従動部材9とカムシャフト2との同軸性を確保するために機械的な嵌め合いであるいわゆる中間嵌めに近い状態であることをいう。
また、中間軸部14fは、その軸方向の長さが円筒部9cの内周面の一部を除くボルト挿通孔9dの軸方向の長さとほぼ同一に設定されている。また、軸部14bの雄ねじ部14cとの結合箇所には、テーパ部が設けられている。このテーパ部は、外周面が中間軸部14fの外周面から雄ねじ部14cに掛けて所定角度で下り傾斜状に形成されている。
位相変更機構3は、図1〜図3に示すように、従動部材9の前端側に配置された電動モータ12と、この電動モータ12からオルダム継手を介して伝達された回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構13と、から主として構成されている。
図7は電動モータ12の正面図、図8は図1のC−C線断面図である。
電動モータ12は、いわゆるブラシレスの直流型モータであって、図1、図2及び図7に示すように、チェーンケースに固定される有底円筒状のモータハウジング16と、このモータハウジング16の内周面に固定されてコイルなどからなるステータ(固定子)17と、ステータ17の内周側に配置されたモータ出力軸18と、該モータ出力軸18の外周に固定されたロータ19と、モータハウジング16のスプロケット1と反対側に設けられた制御機構20と、を有している。
モータハウジング16は、例えば鉄系金属板をカップ状に折曲形成されて、内部にステータ17などを収容するステータ収容空間Sが形成されている。また、減速機構13側の底壁16aのほぼ中央にモータ出力軸18が挿通する貫通孔16bが形成されている。この貫通孔16bは、底壁16aの中央を筒状に折曲された筒部16cの内側に形成されている。
また、モータハウジング16は、後端部の開口端の外周には径方向外側に突出したフランジ部16dが一体に設けられている。このフランジ部16dは、円周方向の約120°位置に3つのブラケット片16eが一体に設けられている。また、この3つのブラケット片16eには、3つのボルト29が挿入されるボルト挿入孔16fがそれぞれ貫通形成されている。
各ボルト29は、モータハウジング16と制御機構20の後述するケーシング40とを共締め固定すると共に、これらを機関本体の一部となる図外のチェーンケースに固定するようになっている。つまり、各ボルト29は、軸部29aの先端側外周の雄ねじ部29bがチェーンケースに有する雌ねじ部に締結して、モータハウジング16とケーシング40をチェーンケースに固定するようになっている。
なお、ボルト挿入孔16fやボルト29などを、3つ以上に増加することも可能である。
ステータ17は、鉄心17aの外周に複数相のコイル17bが巻き付けられてモールドされている。
モータ出力軸18は、例えば鉄系金属材によって円柱状に形成されて、回転軸方向の減速機構13側の一端部18aが後述のオイルシール38を介して貫通孔16bから突出している。一端部18aは、この外周面と貫通孔16bの内周面(筒部16cの内周面)との間に設けられたオイルシール38によって減速機構13との間がシールされている。このオイルシール38は、一般的な構造であって、外周面が貫通孔16bの内周面に圧入されている一方、内周のシール片がバックアップスプリングによってモータ出力軸18の一端部18a外周面に摺動可能に当接している。
一方、モータ出力軸18の他端部18bは、制御機構20の後述するケーシング40に設けられた軸受(転がり軸受)である複数(本実施形態では2つ)の第1、第2ボールベアリング45,46によって回転可能に支持されている。この第1、第2ボールベアリング45,46の配置などについては後述する。
また、モータ出力軸18の一端部18aは、図7に示すように、一端部18aの外面には接線方向に沿って形成された二面幅部18c、18dを有している。また、一端部18aの先端縁側には、二面幅部18c、18dに対して直交する方向から切り欠かれた一対の嵌着溝18e、18fが形成されている。この両嵌着溝18e、18fには、後述する中間部材30のカムボルト14側への移動を規制するストッパ部材50が径方向から嵌着固定されている。
また、モータ出力軸18は、図1にも示すように、一端部18aがカムボルト14の頭部14aに回転軸方向から僅かな隙間をもって近接配置されている。また、一端部18aは、ストッパ部材50を含めた全体が工具溝14dの内部に軸方向から挿入可能になっている。
ストッパ部材50は、Cリング状に形成されて、自身の弾性力によって拡径方向及び縮径方向へ弾性変形可能になっている。
また、モータ出力軸18の一端部18aには、中間部材30が設けられている。この中間部材30は、減速機構13に接続される継手であるオルダム継手の一部を構成するものであって、図7に示すように、モータ出力軸18の一端部18aに固定される筒状基部31を有している。この筒状基部31は、円形状の外面の両側、つまり円周方向の180°位置に二面幅状の一対の平面部31a、31bを有しており、これによって、外形がほぼ長円状に形成されている。
また筒状基部31の中央位置には、モータ出力軸18の一端部18aの二面幅部18c、18dが挿入される貫通孔32が形成されている。
この貫通孔32は、円形状の内周面にモータ出力軸18の回転軸から径方向に沿った二面幅状の一対の対向面32a、32bが形成されている。これによって、貫通孔32は、筒状基部31の外形と相似形の径方向に長い長円形状に形成されている。したがって、中間部材30は、長円状の貫通孔32を介してモータ出力軸18の一端部18aに対して径方向(図7中、上下方向)へ移動可能になっている。
筒状基部31は、一対の平面部31a、31bの長手方向(図6の上下方向)のほぼ中央位置に、一対の突出部である2つの伝達キー33a、33bが設けられている。各伝達キー33a、33bは、ほぼ矩形板状に形成されて、筒状基部31の2つの平面部31a、31bから径方向外側に向かって突出している。
ロータ19は、外形が多角形状(8角形)に形成され、多角外面に複数(本実施形態では8枚)の矩形板状の永久磁石19aがそれぞれ固定されている。
図8は図1のC−C線断面図である。
減速機構13は、図1に示すように、電動モータ12とは軸方向から分離独立して設けられ、各構成部材が保持プレート8とフロントプレート15との間のスプロケット1の内部に収容配置されている。
具体的に説明すれば、減速機構13は、図1、図2及び図8に示すように、スプロケット本体1aの内部に一部が配置された入力軸である円筒状の偏心軸21と、該偏心軸21の外周に設けられたベアリングであるボールベアリング22と、該ボールベアリング22の外周に設けられ、内歯車5の各内歯5a内に転動自在に保持された複数のローラ23と、従動部材9の円盤状本体9aの外周側に一体に設けられ、複数のローラ23を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する保持器24と、から主として構成されている。
偏心軸21は、図1、図2、図6及び図8に示すように、カムボルト14の頭部14aの外周に設けられた軸受であるニードルベアリング25の外周に配置された偏心軸部21aと、該偏心軸部21aの電動モータ12側に一体に有する円筒状の連結部21bと、を有している。
偏心軸部21aは、軸方向の長さがニードルベアリング25の軸方向の長さよりも長い円筒状に形成されている。また、偏心軸部21aは、周方向全体の肉厚tが厚薄変化して軸心Xがカムボルト14の軸心Yに対して僅かに偏心している(図2、図8参照)。
連結部21bは、均一な肉厚でほぼ真円状に形成されていると共に、偏心軸部21aよりも僅かに肉厚に形成されている。この連結部21bは、スプロケット本体1aの内部からフロントプレート15の挿入孔15aを介して電動モータ12方向へ突出している。この連結部21bは、中間部材30と共にオルダム継手を構成している。
つまり、連結部21bは、内部に中間部材30の筒状基部31が軸方向から嵌合可能な二面幅状の嵌合孔21cが形成されている。
連結部21bは、嵌合孔21cの内周面の円周方向のほぼ180°の位置に、二面幅を構成する三日月状の一対の凸部21f、21gが設けられている。したがって、嵌合孔21cの内周面が大径部であり、一対の凸部21f、21gが小径部として構成されている。また、一対の凸部21f、21gの図6中のほぼ中央位置には、筒状基部31の2つの伝達キー33a、33bが回転軸方向から嵌合可能な一対のキー溝21d、21eが形成されている。この各キー溝21d、21eは、各伝達キー33a、33bと相似形の矩形状に形成されて、その深さが各伝達キー33a、33bの幅とほぼ同じ長さに設定されている。
一対の凸部21f、21gは、後述する潤滑油供給機構から減速機構13内に供給された潤滑油をオルダム継手に対する過剰な供給を抑制する抑制部として機能するようになっている。
ニードルベアリング25は、図8に示すように、カムボルト14の頭部14aの外周面を転動する複数のニードルローラ25aと、偏心軸部21aの内周面に形成された段差面に固定されて、内周面にニードルローラ25aを転動可能に保持する複数の溝部を有する円筒状のシェル25bと、を有している。
ボールベアリング22は、図1、図8に示すように、ニードルベアリング25の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置されている。また、ボールベアリング22は、内輪22aと、外輪22b、該両輪22a、22bとの間に介装されたボール22cと、該ボール22cを保持するケージ22dと、から構成されている。
内輪22aは、外輪22bよりも肉厚幅が大きく形成されて偏心軸部21aの外周面に圧入固定されている。これに対して、外輪22bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪22bは、軸方向の電動モータ12側の一端面がフロントプレート15の内側面に微小クリアランスを介して非接触状態になっている。また、外輪22bの軸方向の他端面も、これに対向する従動部材9の円盤状本体9aの背面に微小なクリアランスを介して非接触状態になっている。
外輪22bは、外周面に各ローラ23の外周面が転動可能に当接している。また、外輪22bの外周面と保持器24の内面との間には、円環状のクリアランスが形成されている。したがって、ボールベアリング22は、クリアランスを介して全体が偏心軸部21aの偏心回転に伴って径方向へ偏心動可能になっている。
保持器24は、円筒状に形成されて、円盤状本体9aの外周部に一体に設けられている。つまり、この保持器24は、図1及び図8に示すように、円盤状本体9aのジャーナル部11の基部側からフロントプレート15方向へ直線状に突出している。保持器24の先端面24aとフロントプレート15の内側面との間には、所定のクリアランスが形成されている。
また、保持器24は、複数のローラ23をそれぞれ転動自在に保持するほぼ長方形状の複数のローラ保持孔24bが軸方向に沿って形成されている。この複数のローラ保持孔24bは、保持器24の円周方向の等間隔位置に設けられ、先端部側が閉塞されて前後方向に細長い長方形状に形成されている。また、ローラ保持孔24bは、その全体の数(ローラ23の数)が内歯車5の内歯5aの全体の歯数よりも少なくなっており、これによって、所定の減速比を得るようになっている。
各ローラ23は、鉄系金属によって形成され、ボールベアリング22の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ内歯車5の内歯5aに嵌入している。また各ローラ23は、各ローラ保持孔24bの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向へ揺動運動するようになっている。
また、前述した減速機構13とオルダム継手は、潤滑油供給機構を介して内部に潤滑油が供給されるようになっている。
すなわち、潤滑油供給機構は、図1に示すように、カムシャフト2の内部軸方向に形成された前記油供給通路34と、アダプタ4の内周部に幅方向に貫通形成されて、一端が油供給通路34に連通した導入通路孔4cと、円盤状本体9aに幅方向に貫通形成されて、一端が導入通路孔4cに連通し、他端が減速機構13のニードルベアリング25方向へ指向した供給孔9dと、油供給通路34に潤滑油を供給するオイルポンプ36と、を有している。
オイルポンプ36は、一般的なトロコイドあるいはベーンポンプであって、吐出通路36aが機関内部に潤滑油を供給する図外のメインオイルギャラリーに連通していると共に、分岐した油供給通路34に連通している。また、オイルポンプ36は、吸入通路36bがオイルパン37に連通している。
制御機構20は、アルミ合金材によってボックス状に形成されたケーシング40を有している。このケーシング40は、図1及び図3、図4に示すように、モータハウジング16側に配置された四角形状の仕切壁40aと、該仕切壁40aの外周縁から立ち上がった四角形枠状の周壁40bと、を有している。また、仕切壁40aと周壁40bで囲まれた内側には、基板収容空間S1が形成されている。
仕切壁40aは、中央に円筒状の筒状部41が一体に設けられていると共に、内面の四隅部に4つの小径な円柱ボス部42が一体に設けられている。この各円柱ボス部42は、先端部に四角形の回路基板43を固定する4本のビス44が螺着する雌ねじ孔42aがそれぞれ形成されている。
回路基板43は、図1、図3及び図4に示すように、基板収容空間S1内に収容配置されて、内部には電動モータ12へ給電するバスバーなどの導電回路(図外)が配設されている。また、回路基板43の一側部には、後述するコネクタ47の複数の端子片48と半田付けによって結合されるホール端子が設けられている。また、回路基板43は、中央に筒状部41が挿通可能な筒状部挿通孔43aが貫通形成されていると共に、四隅には各ビス44が挿入される小径な4つのビス挿入孔43bがそれぞれ貫通形成されている。
また、基板収容空間S1は、内部に回路基板43の他に、この回路基板43と導通して電動モータ12の駆動を制御する回転位置検出センサやアルミ電解コンデンサ及びノーマルコイル、コモンコイル、複数のセラミックコンデンサなどの複数の電子部品(図外)が収容配置されている。
筒状部41は、軸方向の一端部41aと他端部41bが仕切壁40aを中心としてステータ収容空間Sと基板収容空間S1にそれぞれ臨んでいる。つまり、一端部41aが、ステータ収容空間Sに配置され、他端部41bが、基板収容空間S1に配置されている。また、筒状部41は、内部にベアリング保持孔41cが内部軸方向に沿って形成されている。他端部41bの先端内周には、径方向内側へ突出した円環状の突起部41dが一体に設けられている。この突起部41dは、第1、第2ボールベアリング45、46を一端部41a側から筒状部41内に圧入した際にその最大圧入量を規制するものである。
筒状部41は、軸方向の全体の長さが突起部41dを除いて第1、第2ボールベアリング45,46がベアリング保持孔41c内に収容保持される長さに設定されている。
第1、第2ボールベアリング45,46は、筒状部41内において軸方向に沿って並列に配置されて、モータ出力軸18の他端部18bの外周面に一緒に圧入される各内輪45a、46aと、筒状部41のベアリング保持孔41cの内周面に圧入される各外輪45b、46bと、内外輪45a〜46bの間にケージを介して転動可能に保持される複数のボール45c、46cと、を有している。また、各ボールベアリング45,46は、内部にグリースが封入されたシールド型か、あるいは軸方向の両端部がゴムシール部材でシールされたシール型になっている。
ここで、減速機構13側の第1ボールベアリング45は、第2ボールベアリング46よりも耐荷重が高くなっている。この耐荷重が高くなっているとは、例えば、後述する第2実施形態のように第1ボールベアリング45の外径を大きくするとか、内輪45aや外輪45bに熱処理を施す、あるいは負荷容量を上げる、さらには各ボール45cの数を多くするなどである。
そして、第1ボールベアリング45は、筒状部41の一端部41aのベアリング保持孔41c内においてステータ収容空間S側に位置している。一方、第2ボールベアリング46は、筒状部41の他端部41bのベアリング保持孔41c内において基板収容空間S1側に位置している。
これによって、モータ出力軸18は、一端部18aがオイルシール38に摺動可能になっているものの他端部18bが2つの第1、第2ボールベアリング45,46によって筒状部41内において回転可能に支持されている。つまり、モータ出力軸18は、全体が第1、第2ボールベアリング45,46によって片持ち状態に支持されている。
また、仕切壁40aは、モータハウジング16側の外面に周壁40bから外側に一部が突出したフランジ部40cが一体に設けられている。このフランジ部40cは、外周面の円周方向のほぼ120°の角度位置に複数(本実施形態では3つ)のボス部40dが設けられている。この各ボス部40dは、モータハウジング16の各ボス部16eと対応した位置に設けられて、各ボルト29が挿入されるボルト挿入孔40eがそれぞれ貫通形成されている。
また、フランジ部40cのモータハウジング16側の一側面とモータハウジング16のフランジ部16dとの間には、合成ゴム製のシールリング39が介装されている。このシールリング39は、フランジ部40cの一側面に形成されたシール溝内に嵌着保持されて、外側面がモータハウジング16のフランジ部16dに軸方向から弾性的に当接している。これによって、外部とステータ収容空間Sとの間がシールされている。
周壁40bは、図3の下部片の中央部位に矩形状の切欠部40fが形成されており、この切欠部40fには、信号と給電を兼ねたコネクタ47が装着固定されている。このコネクタ47は、合成樹脂材によってボックス状に形成され、図1に示すように、内部に複数の端子片48が配置されている。この各端子片48は、基板収容空間S1内に位置する各一端部48aが回路基板43の導通回路のホール端子と半田付けによって結合されている。各端子片48の各他端部48bは、一部が図外のコントロールユニットに雌端子を介して電源であるバッテリーに接続されている。また、他の一部が、回転位置検出センサで検出された回転角信号などの情報信号をコントロールユニットに出力するようになっている。
また、周壁40bは、モータハウジング16と反対側の外周にカバー部材49を保持する細長い第1保持溝40gが切欠部40fを除く全体に形成されている。また、コネクタ47の外側の第1保持溝40gと対応する位置には、該第1保持溝40gと連続した第2保持溝47aが形成されている。
カバー部材49は、例えば鉄系金属板によって四角形状に形成されており、ケーシング40方向へ湾曲状に折曲された外周部49aが、第1、第2保持溝40g、47aに軸方向から嵌合してケーシング40とコネクタ47に固定されるようになっている。
コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類からの情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、これに基づいて機関制御を行っている。また、コントロールユニットは、前記各情報信号や回転位置検出センサなどからの信号に基づいて、電動モータ12のコイル17bに通電してモータ出力軸18の回転制御を行う。これによって、減速機構13によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
〔本実施形態の作用効果〕
以下、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の作用及び効果について説明する。
まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転すると、この回転力が内歯車5に伝達される。この内歯車5の回転力が、各ローラ23から保持器24及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2の駆動カムが各吸気弁を開閉作動させる。
機関始動後の所定の機関運転時には、コントロールユニットからの制御電流が電動モータ12の各コイル17bに通電されてモータ出力軸18が正逆回転駆動される。このモータ出力軸18の回転力が、オルダム継手を介して偏心軸21に伝達されて減速機構13の作動によりカムシャフト2に対し減速された回転力が伝達される。
これによって、カムシャフト2が、タイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換される。したがって、各吸気弁は、開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御されるのである。
このように、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ連続的に変換されることによって、機関の燃費や出力などの機関性能の向上が図れる。
そして、本実施形態では、モータ出力軸18の他端部18b側に並列に配置された第1、第2ボールベアリング45,46のうち、第2ボールベアリング46が、筒状部41の他端部41bを介して基板収容空間S1内に配置されている。このため、基板収容空間S1のデッドスペースを有効に活用できる。この結果、バルブタイミング制御装置の軸方向の長さを短くすることが可能になる。
特に、本実施形態では、回路基板43に設けられた筒状部挿通孔43aに筒状部41の他端部41b側を軸方向から挿入して、第2ボールベアリング46を基板収容空間S1内に配置した。このため、基板収容空間S1のデッドスペースをさらに有効に利用できるので、装置全体の軸方向の長さを効果的に短くすることが可能になる。
また、本実施形態では、各ボールベアリング45,46を、仕切壁40aに直接支持させるのではなく、筒状部41を介して支持するようになっている。このため、支持スペースを確保するために仕切壁40a全体の肉厚を大きくする必要がなく薄肉化が図れるので、ケーシング40の軽量化が図れる。
第1、第2ボールベアリング45,46は、それぞれ独立した軸受であるから、モータ出力軸18に対する負荷に応じて、少なくとも一方を耐荷重の高いものなどや低いものなどに任意に変更することが可能になる。
そして、本実施形態では、第1ボールベアリング45が、第2ボールベアリング46よりも耐荷重が高くなっている。これは、第2よりも第1ボールベアリングの方が、回転中におけるモータ出力軸18の振れの影響を受けやすいことから、この振れに対する強度を高くしたものである。これによって、モータ出力軸18の振れを抑制して異音の発生を抑えることができると共に、第1ボールベアリング45の耐久性が向上する。
また、第2ボールベアリング46が、基板収容空間S1内に配置されていることから、各ボールベアリング45,46の基板収容空間S1内での放熱性が良好になる。したがって、各ボールベアリング45,46の耐久性が向上する。また、各ボールベアリング45,46は、前記放熱性の向上によって内部に封入されたグリースや、ゴムシール部材の熱による劣化を抑制できる。
さらに、各ボールベアリング45,46は、放熱性が高いアルミ合金材のケーシング40(筒状部41)によって支持されていることから、さらに放熱効果が促進される。したがって、各ボールベアリング45,46の耐久性がさらに向上させることができる。
また、第1、第2ボールベアリング45,46は、モータハウジング16には設けられず、ケーシング40の仕切壁40a(筒状部41)にのみ設けられている。このため、モータハウジング16と仕切壁40a(筒状部41)の芯合わせ、つまり、モータ出力軸18との関係での同軸性の位置合わせ作業が容易になる。
すなわち、2つのボールベアリング45,46が、従来技術のように、モータハウジング16とケーシング40の両方に設けられている場合は、モータ出力軸18との関係で各々のボールベアリング45,46の同軸性を確保するための作業(芯合わせ作業)が必要になる。
しかし、本実施形態では、各ボールベアリング45,46が、ケーシング40(仕切壁40a)側にのみ設けられていることから両者45,46の芯合わせ作業が不要になる。
さらに、本実施形態では、潤滑油供給機能によって、オルダム継手や減速機構13の内部を効果的に潤滑することができる。
すなわち、オイルポンプ36の駆動によって吐出通路36aに吐出された潤滑油は、一部がメインオイルギャラリーから機関内部に供給されるが、他の一部が油供給通路34に供給される。油供給通路34に供給された潤滑油は、導入通路孔4cと供給孔9dを通ってニードルベアリング25に噴射供給される。その後、潤滑油の一部が遠心力などによって減速機構13のボールベアリング22や保持器24の各ローラ23などに供給される。また、軸受凹部10の滑り軸受面10aとジャーナル部11の外周面の間に供給される。
このため、ニードルベアリング25やボールベアリング22、各ローラ保持孔24bと各ローラ23との間、並びに軸受凹部10の内面とジャーナル部11の外面全体の潤滑性が良好になる。
また、ニードルベアリング25を潤滑した潤滑油は、筒状基部31の内周面とモータ出力軸18の一端部18aとの間や、各伝達キー33a、33bと偏心軸21のキー溝21d、21eとの間などの摩擦発生部位に供給されて、これら摩擦発生部位全体を効果的に潤滑する。これによって、オルダム継手は、潤滑性能が向上して常時円滑な作動が得られる。
に供給される。
したがって、減速機構13に対する潤滑性がさらに促進されると共に、従動部材9とスプロケット1との間の軸受に対する潤滑性も良好になる。
また、本実施形態では、カムボルト14の頭部14aの外周面に高周波焼き入れを施して高硬度にしたことから、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、機関駆動中に発生するカムシャフト2の正負の交番トルクによって減速機構13に逆入力がカムボルト14に作用して、頭部14aの外周面に径方向への荷重が入力される。これによって、頭部14aの外周面にニードルベアリング25が干渉するおそれがある。しかし、頭部14aの外周面は硬度が高いことから、損傷の発生を抑制できる。
一方、頭部14aの座面14eは、硬度が外周面よりも低いことから、高い靱性によりカムボルト14の締結力を十分に確保することができる。
また、電動モータ12のモータ出力軸18の一端部18a(ストッパ部材50を含む)が、カムボルト14の工具溝14dの内部に回転軸方向から挿入可能になっている。このため、機関の振動などによってモータ出力軸18やカムシャフト2(従動部材9)などが回転軸方向へ移動した際に、モータ出力軸18の一端部18aが工具溝14d内に入ってこの移動を吸収できる。これにより、モータ出力軸18とカムボルト14との軸方向の距離を可及的に短くすることが可能になる。
この結果、バルブタイミング制御装置は、全体の軸方向の長さを短くできるので装置の小型化が図れ、エンジンルーム内への搭載性が向上する。
また、中間部材30は、貫通孔32の各対向面32a、32bとモータ出力軸18の一端部18aの二面幅部18c、18dを介して、モータ出力軸18に対して径方向への移動が可能になっている。また、偏心軸21は、2つのキー溝21d、21eと中間部材30の2つの伝達キー33a、33bを介して中間部材30の径方向移動と直交する径方向の移動が可能になっている。
このため、オルダム継手としての製造誤差や、モータ出力軸18や偏心軸21の回転時における径方向の誤差を効果的に吸収することができる。この結果、モータ出力軸18の回転力を従動部材9に効率良く伝達することが可能になる。
また、本実施形態では、回転駆動中においてスプロケット1に、従動部材9に対する傾き方向の力(スラスト荷重)が発生すると、このスラスト荷重をジャーナル部11によって受け止めることができる。したがって、スプロケット1の傾動を抑制することが可能になる。
〔第2実施形態〕
図9は本発明の第2実施形態を示し、基本構造は第1実施形態と同じであるが、異なるところは、第1ボールベアリング45の全体の外径を大きくしたものである。
すなわち、仕切壁40aの筒状部41の一端部41a側の外径が他端部41bよりも大きく形成されていると共に、一端部41a側のベアリング保持孔41cの内径も大きく形成されている。他端部41b側の外径やベアリング保持孔41cの内径は、第1実施形態のものと同じである。
回転中のモータ出力軸18の振れの影響を受けやすい第1ボールベアリング45は、内輪45aと外輪45b及びボール45cの全体の外径が第2ボールベアリング46よりも大きく形成されている。
これによって、第1ボールベアリング45は、第2ボールベアリング46よりも耐荷重が高くなっている。
したがって、この実施形態によれば、第1ボールベアリング45によるモータ出力軸18の振れに対する強度が確保されて、第1ボールベアリング45の耐久性の向上が図れる。
〔第3実施形態〕
図10及び図11は第3実施形態を示し、基板収容空間S1内において回路基板43の配置をカバー部材49側に移動させたものである。
すなわち、仕切壁40aの内面四隅に設けられた4つの円柱ボス部42を、カバー部材49側へ所定量だけ延長して設けた。この各円柱ボス部42は、先端部の内部軸方向に各ビス44がねじ込まれる雌ねじ孔が形成されている。
回路基板43は、四角形状の外形などは第1、第2実施形態のものと同じであるが、中央には筒状部挿通孔43aが存在していない。したがって、回路基板43は、第1、第2実施形態のものに比較して筒状部挿通孔43aが存在しない分、使用面積を大きく取ることができる。この結果、回路基板43の全体の大きさを小さくすることが可能になる。
なお、電子部品などは、回路基板43の仕切壁40a側に配置されている。また、コネクタ47の端子片48の一端部48aは、回路基板43の前方への配置移動に伴って前方へ延びている。
また、回転位置検出センサの被検出部をモータ出力軸18の他端部18bに配置し、検出回路を回路基板43の仕切壁40a側の側面に配置することが可能である。このようにすることで、検出回路を回路基板43上に配置でき、かつ被検出部を小型化して回転慣性力を低減できる。
他の構成は第1実施形態と同じであるから、これと同一の作用効果が得られる。
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、軸受としては転がり軸受の他に、滑り軸受などであっても良い。また、転がり軸受としては、ボールベアリングの他にニードルベアリングなどであって良い。また、2つの軸受の一方をボールベアリング、他方をニードルベアリングとしても良い。
また、軸受は、単一でも良く、さらに3つ以上とすることも可能である。単一の場合は、外輪や内輪の軸方向の長さを延ばして、転動体としての複数のボールを横並列に設ける複列玉軸受を用いることも可能である。また、単一の場合において、内輪が二つに分離しているアンギュラ玉軸受であって、ボールが内輪及び外輪と4点で接触する4点接触玉軸受を用いることも可能である。
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、本発明における好ましい態様としては、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、前記駆動回転体に対して相対回転可能に設けられ、カムシャフトに固定される従動回転体と、前記駆動回転体と従動回転体との間に設けられ、入力軸が回転することによって前記駆動回転体に対して前記従動回転体を相対回転させる減速機構と、
前記カムシャフトの回転軸方向に前記減速機構と並んで配置される電動モータであって、モータハウジングと、前記モータハウジングの内部に固定されたステータと、前記ステータの内側に配置されたロータと、前記ロータに固定されて前記減速機構の入力軸に回転力を伝達するモータ出力軸と、前記モータハウジングの前記モータ出力軸の回転軸方向の前記減速機構と反対側に配置されて、少なくとも回路基板を収容する基板収容空間を有するケーシングと、前記モータ出力軸の回転軸方向の一端部に複数設けられ、前記ケーシングを介して前記基板収容空間に少なくとも一部が配置されて、前記モータ出力軸を軸支する軸受と、を有する前記電動モータと、
を備えている。
この発明の態様によれば、モータ出力軸の一端部に並置された複数の軸受の一部を、ケーシング内の基板収容空間内に配置したことによって、前記基板収容空間の軸方向のデッドスペースを有効に活用できる。このため、バルブタイミング制御装置の軸方向の長さを短くできることから全体の小型化が図れる。
また、軸受の少なくとも一部を基板収容空間内に配置したことによって、該基板収容空間での放熱性が良好になり、軸受の耐久性が向上する。
さらに好ましくは、前記軸受は、前記モータ出力軸の回転軸方向において前記ロータを挟んで前記減速機構と反対側に配置されている。
さらに好ましくは、前記軸受は、内部にグリースが封入されたシールド型、または軸方向の両端開口をゴム製のシールで覆ったシール型である。
この発明の態様によれば、軸受の放熱性が高くなるので、内部に封入されたグリースや、ゴムシールの熱による劣化を抑制できる。
さらに好ましくは、前記モータハウジングは、有底筒状に形成されて、内部に前記ステータが収容されるステータ収容空間を有し、
前記ケーシングは、モータハウジングの軸方向の一端開口を覆い、前記ステータ収容空間と前記基板収容空間を仕切る仕切壁を有し、
前記仕切壁に前記軸受が固定されている。
この発明の態様によれば、複数の軸受は、モータハウジングには設けられずケーシングの仕切壁にのみ設けられていることから、モータハウジングと仕切壁の芯合わせ、つまり同軸性の位置合わせ作業が容易になる。すなわち、複数の軸受が、モータハウジングとケーシング(仕切壁)の両方に設けられている場合には、その各々の軸受の同軸性を確保するための作業が必要になるが、本実施形態では、各軸受が仕切壁のみに設けられていることから、その芯合わせが不要になる。したがって、作業の負荷が軽減される。
さらに好ましくは、前記仕切壁は、前記基板収容空間に軸方向に沿って突出する筒状部を有し、前記筒状部の内側に前記軸受が固定されている。
この発明の態様によれば、筒状部を形成することによって仕切壁の全体の肉厚を薄くすることができるので、軽量化が図れる。
さらに好ましくは、前記回路基板は、幅方向に貫通した貫通孔を有し、
前記筒状部は、前記貫通孔に挿入配置されている。
筒状部の一部を回路基板の貫通孔に挿入配置したことによって、基板収容空間を有効に利用できると共に、軸方向の小型化が図れる。
さらに好ましくは、前記筒状部は、一部が前記ステータ収容空間の内部に軸方向から突出している。
筒状部の一部をステータ収容空間内に配置することによって、仕切壁の肉厚を薄くしつつ複数の軸受を固定可能になる。これによって、軽量化が図れる。
さらに好ましくは、前記軸受は、モータ出力軸の回転軸方向で隣接した単列の第1転がり軸受と単列の第2転がり軸受である。
軸受は、独立した第1、第2転がり軸受であることから、モータ出力軸に対する負荷に応じて耐荷重を変えることが可能になる。
さらに好ましくは、前記第1転がり軸受は、前記モータ出力軸の回転軸方向において前記第2転がり軸受よりも前記減速機構寄りに配置されており、かつ、前記第2転がり軸受よりも耐荷重が高くなっている。
ここで、耐荷重が高いとは、第1転がり軸受の外径を大きくするとか、熱処理を施す、あるいは負荷容量を上げる、さらに、各転動体であるボールの数を多くするなどであって、これによって、モータ出力軸の振れに対する強度を向上させることが可能になる。
さらに好ましくは、前記第1転がり軸受は、全体の外径が前記第2転がり軸受よりも大きく設定してある。
第1転がり軸受の耐荷重性を高くすることによって、モータ出力軸の振れに対する強度が高くできる。
さらに好ましくは、前記第1転がり軸受は、前記モータ出力軸の回転軸方向において前記第2転がり軸受よりも前記減速機構に近い位置に配置され、前記第1転がり軸受は、前記ステータ収容空間に配置され、前記第2転がり軸受は、前記基板収容空間に配置されている。
また、別の好ましい態様として、クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、前記駆動回転体に対して相対回転可能に設けられ、カムシャフトに固定される従動回転体と、前記駆動回転体と従動回転体との間に設けられ、入力軸が回転することによって前記駆動回転体に対して前記従動回転体を相対回転させる減速機構と、
前記カムシャフトの回転軸方向に前記減速機構と並んで配置される電動モータであって、モータハウジングと、前記モータハウジングの内部に固定されたステータと、前記ステータの内側に配置されたロータと、前記ロータに固定されて前記減速機構の入力軸に回転力を伝達するモータ出力軸と、前記モータハウジングの前記モータ出力軸の回転軸方向の前記減速機構と反対側に配置されて、少なくとも回路基板を収容する基板収容空間を有するケーシングと、前記モータ出力軸を軸支する軸受と、を有する前記電動モータと、を備え、前記軸受は、前記モータ出力軸の回転軸方向の一端部に設けられ、前記ケーシングを介して前記基板収容空間に少なくとも一部が配置された複列玉軸受けまたは4点接触玉軸受のみである。
複列玉軸受や4点接触玉軸受であれば、単一の軸受を用いることができるので、部品点数の削減に寄与する。