JP2020194734A - 電極付き透光性導電膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜に光耐久性の顕著な改善効果を付与することができ、かつ前記透光性導電膜とそれに接続される電極との間の密着性向上および電気抵抗低減に有効な技術を提供する。【解決手段】透光性導電膜Aと、前記透光性導電膜Aの表面の一部に付着している電極Bとで構成され、前記透光性導電膜Aは、ベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分および樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有するものであり、前記電極Bは、導電性フィラーを含有する導電体である、電極付き透光性導電膜。【選択図】図1
Description
本発明は、銀ナノワイヤを含有する透光性導電膜と、その表面の一部に付着している導電性フィラー含有電極とで構成される電極付き透光性導電膜に関する。
本明細書では、太さが200nm程度以下の微細な金属ワイヤを「ナノワイヤ(nanowire(s)」と呼ぶ。なかでも銀ナノワイヤは、透光性導電回路を形成するための導電材料として有望視されている。銀ナノワイヤを導電材料として用いた透光性導電回路は、パソコン、テレビ等の大型電子機器や、カーナビゲーション、携帯電話、電子辞書等の小型電子機器のディスプレイに用いられる透明電極材としての応用が検討されている。
銀ナノワイヤを用いた透光性導電回路は以下のような手順で作製することが一般的である。まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などに代表される透光性基材の上に銀ナノワイヤを含有する塗工液(以下「銀ナノワイヤインク」という。)を塗布したのち、銀ナノワイヤインクの液状媒体成分を揮発除去させ、銀ナノワイヤが集積して導電ネットワークを構成している「銀ナノワイヤ導電構造体」を形成させる。次に、前記の銀ナノワイヤ導電構造体の上から透光性樹脂を含有する塗料を塗布する。この塗料は「オーバーコート剤」と呼ばれることもある。オーバーコート剤は銀ナノワイヤ導電構造体を構成している銀ナノワイヤの間隙を埋めており、オーバーコート剤の溶剤成分を揮発除去させると、オーバーコート剤の樹脂成分を主体とする非導電材料と、銀ナノワイヤとが一体化した「透光性導電膜」が得られる。透光性導電膜の表面には導電ネットワークを形成している金属ナノワイヤの一部が露出している。オーバーコート剤の樹脂として紫外線硬化型樹脂が適用されることもある。その場合は溶剤成分の揮発除去に加えて、紫外線硬化処理が行われる。その後、フォトレジスト法などにより前記の透光性導電膜による回路パターンが形成され、導電回路が得られる。
導電回路を形成している透光性導電膜の表面の一部には、通常、導電ペーストなどを用いた配線が接続される。透光性導電膜に接続させる配線部材を本明細書では「電極」と呼んでいる。透光性導電膜の表面に露出している銀ナノワイヤと、電極中に含有される導電性フィラーとが接触することにより、透明導電膜と電極との間の導通が確保される。
銀ナノワイヤを含有する透光性導電膜は、太陽光など、紫外線や可視光を含む波長域の光を照射すると経時劣化により導電性が低下しやすいという問題を有している。ワイヤを構成している銀原子が周囲の樹脂中へ移動する現象(マイグレーション)が紫外線や可視光域の光のエネルギーによって促進され、ワイヤが次第に痩せ細っていくことが、上記経時劣化の主要因であると考えられる。最終的にはワイヤが断裂して導通が得られなくなる場合もある。光の照射によって引き起こされる導電膜の経時劣化が起こりにくい性質を、本明細書では「光耐久性」と呼ぶ。銀ナノワイヤを用いた導電膜には、光耐久性の改善が強く求められている。
特許文献1には、銀ナノワイヤ等の金属繊維が接触する樹脂層に金属錯体化合物を含有させることによって、光耐久性を改善させる技術が開示されている。また、アミン添加剤や紫外線吸収剤の使用も光耐久性の向上に有効であるとされる。アミン添加物として種々のアミノ基含有シラン化合物が列挙されている(特許文献1の段落0095〜0098)。紫外線吸収剤としてベンゾフェノン化合物やベンゾトリアゾール化合物などが挙げられている(同段落0102)。導電性繊維の繊維径は1〜50nmが好ましいとの記載があるが(段落0039)、銀ナノワイヤに関して実際に光耐久性の改善効果が確認されているのは、直径40nmのものである(段落0149)。
特許文献2には、塗工用の銀ナノワイヤ組成物(インク)に、シランカップリング剤を含有させることができると記載されている。これにより、基板との密着性、塗膜の耐摩耗性、耐水性、耐アルコール性が向上するという。シランカップリング剤の反応性官能基の具体例としてエポキシ基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、メルカプト基が挙げられている(段落0049)。また、ベンゾトリアゾールなどの腐食防止剤を含有させてもよいことが記載されている(段落0056)。しかし、発明者らの調査によれば、銀ナノワイヤを含有する透光性導電膜の樹脂中に上記のような官能基を有するシランカップリング剤を混合したり、ベンゾトリアゾールを混合したりする手法は、光耐久性を改善するための有効な手段とはならない。
一方、銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜の工業的普及を図るためには、透光性導電膜と、その表面に接続されている電極との密着性、すなわち、両部材の接着強度を向上させることが重要である。この密着性が良好であるほど透光性導電膜を用いた導電パネルの耐久性に関する信頼性が向上する。さらに、透光性導電膜と電極の接続箇所における電気抵抗が小さいことも重要である。
特許文献1に開示の技術によれば、銀ナノワイヤを含む導電膜と、金属錯体化合物等を含有する樹脂層の積層によって、光耐久性が向上するという。しかし発明者らの調査によれば、この手法では直径が例えば30nm未満といった細い銀ナノワイヤに対して、光耐久性の安定した改善効果が十分に得られない。また、樹脂中に金属錯体化合物を含有させると透明性が低下しやすく、着色の問題も生じやすい。特に、銀ナノワイヤの直径が30nm未満と細い場合は、光耐久性を改善するために必要な金属錯体化合物の添加量が多くなり、透明性低下や着色の問題がより顕著となる。使用環境や樹脂の種類によっては、金属錯体の反応性や触媒作用によって樹脂層の経時劣化が進行することも懸念される。
最近では、平均直径が30nm未満の細い銀ナノワイヤを安定して製造する技術も確立されつつある。直径が細い銀ナノワイヤを使用すると、導電膜の「導電性−ヘイズバランス」を調整するための自由度が拡大し、よりクリアで優れた導電性を呈する透明導電膜を得る上で有利となる。ただし、上述のように、銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜の工業的普及を図るためには、透光性導電膜と電極との間の密着性向上や電気抵抗(接触抵抗)低減も重要となる。
本発明は、銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜に光耐久性の顕著な改善効果を付与することができ、かつ前記透光性導電膜とそれに接続される電極との間の密着性向上および電気抵抗低減に有効な技術を提供しようというものである。
上記課題は、透光性導電膜Aと、前記透光性導電膜Aの表面の一部に付着している電極Bとで構成され、
前記透光性導電膜Aは、ベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分および樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有するものであり、
前記電極Bは、導電性フィラーを含有する導電体である、
電極付き透光性導電膜によって達成される。
前記透光性導電膜Aは、ベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分および樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有するものであり、
前記電極Bは、導電性フィラーを含有する導電体である、
電極付き透光性導電膜によって達成される。
前記透光性導電膜Aにおける前記シランカップリング剤成分/前記樹脂成分の含有量比は例えば質量割合で0.01〜5.0とすることができる。また、前記銀ナノワイヤは、平均直径が30nm未満、平均長さが6.0μm以上であることが好ましい。前記銀ナノワイヤは、ビニルピロリドン構造単位を有する有機保護剤が表面に付着しているものであることが好ましい。前記電極Bの導電体は、導電性フィラーとして例えば銀フィラーを含有するものを適用することができる。
以下において、ベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤を「ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤」と呼ぶ。
本明細書において、銀ナノワイヤの平均長さ、平均直径、平均アスペクト比は、以下の定義に従う。
本明細書において、銀ナノワイヤの平均長さ、平均直径、平均アスペクト比は、以下の定義に従う。
[平均長さ]
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。
[平均直径]
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。したがって、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写したTEM画像において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径と定義する。
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。したがって、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写したTEM画像において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径と定義する。
[平均アスペクト比]
上記の平均直径をDM、平均長さをLMとして下記(1)式により平均アスペクト比AMを算出することができる。ただし、(1)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
AM=LM/DM …(1)
上記の平均直径をDM、平均長さをLMとして下記(1)式により平均アスペクト比AMを算出することができる。ただし、(1)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
AM=LM/DM …(1)
本発明によれば、銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜に可視光や紫外線に対する「光耐久性」を付与することができる。特に、平均直径が例えば30nm未満といった細い銀ナノワイヤにも有効であるので、「導電性−ヘイズバランス」に優れる導電膜の構築に有利である。また、金属錯体化合物を使用しなくても光耐久性の優れた改善効果が得られるので、導電膜の透明性低下や着色の問題も回避できる。さらに、その透光性導電膜と、それに接続される電極との間の密着性の改善および電気抵抗の低減も実現される。本発明は銀ナノワイヤを用いた透光性導電膜の工業的普及に寄与しうる。
図1に、本発明の電極付き透光性導電膜の断面構造を模式的に例示する。PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などに代表される透光性基材101の表面上に透光性導電膜Aが存在する。透光性基材101は、PETなどの透明板上にコーティングされた透光性の有機または無機材料層であっても構わない。透光性導電膜Aは、非導電材料102と銀ナノワイヤ103を含有している。銀ナノワイヤ103は近接するワイヤ同士の交点で電気的に接続しており、透光性導電膜Aの中で導電ネットワークを形成している。非導電材料102は透光性樹脂成分と後述するシランカップリング剤成分を主体とするものであり、導電ネットワークを形成している個々の銀ナノワイヤ103の間隙を埋めている。透光性導電膜Aは銀ナノワイヤ103と非導電材料102とが一体化した構造を有している。透光性導電膜Aの表面(透光性基材101と反対側の表面)には銀ナノワイヤ103の一部が非導電材料102から露出している。
透光性基材101の表面上に透光性導電膜Aを形成する一般的な手順を簡単に説明する。透光性基材の上に銀ナノワイヤを含有する塗工液(銀ナノワイヤインク)を塗布したのち、銀ナノワイヤインクの液状媒体成分を揮発除去させ、銀ナノワイヤが集積して導電ネットワークを構成している「銀ナノワイヤ導電構造体」を形成させる。前記の銀ナノワイヤ導電構造体の上から非導電材料102の主成分である透光性樹脂と後述するシランカップリング剤を含有する塗料(オーバーコート剤)を塗布したのち、オーバーコート剤の溶剤成分を揮発除去させる。前記溶剤成分の揮発除去後に残る非導電材料102の成分量をオーバーコート剤の塗布厚さ等の調整により適正化することによって、銀ナノワイヤ103の一部が非導電材料102から露出した状態の透光性導電膜Aを形成させることができる。一般的に、透光性導電膜Aの厚さは50〜500nmの範囲で設定することができる。非導電材料102の成分である樹脂として紫外線硬化型樹脂が適用されることもある。その場合は溶剤成分の揮発除去に加えて、紫外線硬化処理が行われる。その後、フォトレジスト法などにより透光性導電膜Aによる回路パターンが形成される。以上の手順は例示であり、これに限定されるものではない。
透光性導電膜Aの一部表面上には電極Bが存在している。電極Bは導電性フィラー104を含有する導電体であり、例えば導電性フィラーと樹脂の混合物からなる。導電性フィラー104は、例えば金、銀、銅、カーボンなどから選ばれる1種以上の導電粒子が適用できる。その粒子形状は球状あるいは扁平状が一般的である。球状粒子と扁平状粒子の混合粒子を採用してもよい。平均粒子サイズは要求特性に応じてナノオーダーからミクロンオーダーの範囲で選択できる。電極Bの構成材料のうち、導電性フィラー104の残部に樹脂を使用する場合、その樹脂としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂等が適用でき、具体的にはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。電極Bを構成する導電性フィラー104と樹脂の混合比は、質量割合で導電性フィラー:樹脂=95:5〜80:20の範囲であることが好ましい。
透光性導電膜Aと電極Bが接している部分において、銀ナノワイヤ103と導電性フィラー104が接触し、電極Bによって透光性導電膜Aと外部との電気的接続が確保される。電極Bは、例えば銀ペーストなどの導電塗料によって形成させることができる。銀ペーストの場合、導電性フィラー104は銀フィラーである。導電性フィラーは電極B中で一部または全部が焼結した状態となっていても構わない。
従来、透光性導電膜Aを構成する非導電材料102には防錆剤、紫外線吸収剤、金属錯体化合物などの添加剤が必要に応じて適宜添加されている。しかし、従来の添加剤を使用しても上述の課題を達成することは困難である。そこで本発明では、非導電材料102として、ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤、および樹脂を構成要素とする材料を適用する。
電極Bが表面に付着した状態にある透光性導電膜Aを、本明細書では「電極付き透光性導電膜」と呼んでいる。この電極付き透光性導電膜が導電パネルとして機器に実装されるまでの間に、通常、透光性導電膜Aの透光性基材101と反対側の表面(銀ナノワイヤ103が露出している面)は透光性の保護材料で被覆される。なお、図1においては、説明の便宜のため、銀ナノワイヤ103および導電性フィラー104の形状、サイズ、存在形態や、透光性導電膜Aの膜厚は、誇張して模式的に描いてある。
[透光性樹脂]
上記の透光性導電膜を構成する非導電材料は、透光性樹脂を主成分として含有する。透光性樹脂としては、例えば(メタ)アクリレート基を1つまたは複数含有するアクリルモノマーやアクリルオリゴマーを混合して構成されたアクリル系樹脂、あるいはポリオールとイソシアネート基を含有する化合物を反応させて作成されたウレタン系樹脂等が適用できる。
上記の透光性導電膜を構成する非導電材料は、透光性樹脂を主成分として含有する。透光性樹脂としては、例えば(メタ)アクリレート基を1つまたは複数含有するアクリルモノマーやアクリルオリゴマーを混合して構成されたアクリル系樹脂、あるいはポリオールとイソシアネート基を含有する化合物を反応させて作成されたウレタン系樹脂等が適用できる。
上記アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリレート基を1つまたは複数含有するアクリルモノマーの例として、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばグリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1,5−ペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジ(メタ)アクリレート];多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート];水酸基含有両末端エポキシアクリレート;多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリレート基を1つまたは複数含有するアクリルオリゴマーの例としては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合させたオリゴマーに、エポキシ基を有するアクリルモノマーを反応させることで製造したオリゴマーや、分子中にエポキシ基を有するオリゴマーに(メタ)アクリル酸を反応させて製造したオリゴマー等が挙げられる。
上記ポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコールや単量体グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
上記イソシアネート基を含有する化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。
[ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤]
本発明に適用する透光性導電膜を構成する非導電材料は、上記の透光性樹脂成分の他に、ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤成分を含有する。ここで、「ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤」は、ベンゾトリアゾール基を官能基に持つケイ素化合物で構成されるシランカップリング剤である。図2にベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤を構成するケイ素化合物の構造式を例示する。図2に示したものはトリメトキシ型のシランカップリング剤である。「Me−」はメチル基、「−R−」の部分は有機基である。「−R−」は例えばアルキレン基とアミド結合を構造内に含む。「−R−」を挟んでSiと反対側にはベンゾトリアゾール基を有している。
本発明に適用する透光性導電膜を構成する非導電材料は、上記の透光性樹脂成分の他に、ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤成分を含有する。ここで、「ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤」は、ベンゾトリアゾール基を官能基に持つケイ素化合物で構成されるシランカップリング剤である。図2にベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤を構成するケイ素化合物の構造式を例示する。図2に示したものはトリメトキシ型のシランカップリング剤である。「Me−」はメチル基、「−R−」の部分は有機基である。「−R−」は例えばアルキレン基とアミド結合を構造内に含む。「−R−」を挟んでSiと反対側にはベンゾトリアゾール基を有している。
ベンゾトリアゾールは銅などの金属の防錆剤として使用され、また紫外線吸収作用を有するとされる物質である。しかし、銀ナノワイヤの周囲を埋める非導電材料にベンゾトリアゾールを含有させても、十分な光耐久性の向上効果は得られなかった。ところが、ベンゾトリアゾール基を持つシランカップリング剤を適用すると、顕著な光耐久性の向上効果が得られるのである。特に平均直径が30nm未満といった非常に細い銀ナノワイヤを使用した導電構造体に対して極めて有効である。その理由については現時点で必ずしも明確ではないが、以下のようなことが考えられる。銀ナノワイヤと接触する非導電材料中のシランカップリング剤成分が樹脂成分よりも優先的に銀ナノワイヤの表面に取り付くことによって、銀ナノワイヤの表面近傍にはベンゾトリアゾール基が豊富に存在する。そのベンゾトリアゾール基の防錆作用や紫外線吸収作用が銀ナノワイヤの変質を抑制する。また、銀ナノワイヤはその表面に取り付いているシランカップリング剤成分によって樹脂成分との直接の接触が阻害され、マイグレーションの抑制作用も得られる。
また、ベンゾトリアゾール基を持つシランカップリング剤を適用すると、透光性導電膜と電極との間の密着性向上および電気抵抗低減の効果が得られることがわかった。その理由については現時点で不明である。
非導電材料中のベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤成分の含有量は、前記シランカップリング剤成分/前記樹脂成分の含有量比において、質量割合で0.01〜5.0の範囲とすることができ、0.03〜4.0の範囲とすることがより好ましい。シランカップリング剤成分の方が樹脂成分よりもかなり多い場合でも効果が得られる。
[銀ナノワイヤ]
銀ナノワイヤは、導電性と視認性に優れた透光性導電膜を形成する観点から、できるだけ細くて長い形状であるものが好ましい。例えば、平均直径が30nm未満、平均長さが6.0μm以上のものを使用することが特に好ましい。平均直径があまり細いと非常に長期間の使用を考慮した光耐久性の確保には不利となる。平均直径は通常は15nm以上の範囲で設定すればよく、20nm以上に管理してもよい。平均アスペクト比は200以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましい。
銀ナノワイヤは、導電性と視認性に優れた透光性導電膜を形成する観点から、できるだけ細くて長い形状であるものが好ましい。例えば、平均直径が30nm未満、平均長さが6.0μm以上のものを使用することが特に好ましい。平均直径があまり細いと非常に長期間の使用を考慮した光耐久性の確保には不利となる。平均直径は通常は15nm以上の範囲で設定すればよく、20nm以上に管理してもよい。平均アスペクト比は200以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましい。
このような細くて長い銀ナノワイヤは、有機保護剤存在下のアルコール溶媒中において溶媒であるアルコールの還元力を利用して銀をワイヤ上に析出させる公知の手法(アルコール溶媒還元法)において、合成条件に改善を加えることによって得ることができる。工業製品として流通している銀ナノワイヤあるいはその分散液を入手して、使用してもよい。有機保護剤としてはビニルピロリドン構造単位を有するものが適用できる。図3にビニルピロリドン構造単位を示す。具体的には、PVPや、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが使用できる。銀ナノワイヤの表面には通常、合成時に使用した有機保護剤が付着しており、その有機保護剤が液中分散性を担っている。
上記のビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーでは、アルコールを添加した水系溶媒中における分散性を、PVPよりも向上させることができる。そのようなコポリマーとしては、親水性モノマーの構造単位を有するものであることが重要である。ここで、親水性モノマーとは、25℃の水1000gに1g以上溶解する性質を持つモノマーを意味する。具体的には、ジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩モノマー、アクリレート系またはメタクリレート系のモノマー、マレイミド系のモノマーなどが挙げられる。例えば、アクリレート系またはメタクリレート系のモノマーは、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。また、マレイミド系モノマーとしては、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミドが挙げられる。
透光性導電膜中における銀ナノワイヤの含有量は、用途に応じて広い範囲で設定可能である。透光性導電膜の総質量に占める金属銀の質量割合において例えば1〜99質量%の範囲で調整することができ、2〜50質量%の範囲に管理してもよい。
[実施例1]
(銀ナノワイヤ合成)
アルコール溶媒としてプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、銀化合物として硝酸銀、塩化物として塩化リチウム、臭化物として臭化カリウム、アルミニウム塩として硝酸アルミニウム九水和物、アルカリ金属水酸化物として水酸化リチウム、有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量75,000)を用意した。
(銀ナノワイヤ合成)
アルコール溶媒としてプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、銀化合物として硝酸銀、塩化物として塩化リチウム、臭化物として臭化カリウム、アルミニウム塩として硝酸アルミニウム九水和物、アルカリ金属水酸化物として水酸化リチウム、有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量75,000)を用意した。
常温にて、プロピレングリコール(和光純薬工業社製、特級)8016g中に、塩化リチウム(アルドリッチ社製)含有量が10質量%であるプロピレングリコール溶液4.84g、臭化カリウム(和光純薬工業社製)0.10g、水酸化リチウム(アルドリッチ社製)0.52g、硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化成社製)含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液5.40g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー83.87gを添加して溶解させ、溶液Aとした。
プロピレングリコール89.74gのアルコール溶媒中に、純水13.73g、硝酸銀67.96gを添加して、27℃で撹拌して溶解させ、銀含有液(溶液B)を得た。
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から85℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して85℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
プロピレングリコール89.74gのアルコール溶媒中に、純水13.73g、硝酸銀67.96gを添加して、27℃で撹拌して溶解させ、銀含有液(溶液B)を得た。
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から85℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して85℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
(洗浄)
常温まで冷却された上記反応液にアセトンを20倍量添加し15分撹拌した。その後24時間静置した。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。その濃縮物に1280gの純水を添加し、12時間撹拌後に、アセトンを、濃縮物および1280gの純水の合計質量に対し20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。上記純水分散、アセトン添加、静置、上澄み除去の操作を10回実施し、濃縮物を得た。この濃縮物を「洗浄後の濃縮物」と呼ぶ。
常温まで冷却された上記反応液にアセトンを20倍量添加し15分撹拌した。その後24時間静置した。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。その濃縮物に1280gの純水を添加し、12時間撹拌後に、アセトンを、濃縮物および1280gの純水の合計質量に対し20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。上記純水分散、アセトン添加、静置、上澄み除去の操作を10回実施し、濃縮物を得た。この濃縮物を「洗浄後の濃縮物」と呼ぶ。
(前処理)
クロスフロー循環洗浄を行うための前処理として、重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)を純水中に溶解させた水溶媒を用いて、再分散処理を施した。すなわち、上記PVP濃度が0.5質量%である水溶媒を用意し、この水溶媒約8kgと上記洗浄後の濃縮物200gを混合し、金属銀濃度(銀ナノワイヤと不純物の銀ナノ粒子を含む液中銀濃度)が0.53質量%となる銀ナノワイヤ分散液を調製した。この溶液のPVP濃度は0.49質量%である。
クロスフロー循環洗浄を行うための前処理として、重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)を純水中に溶解させた水溶媒を用いて、再分散処理を施した。すなわち、上記PVP濃度が0.5質量%である水溶媒を用意し、この水溶媒約8kgと上記洗浄後の濃縮物200gを混合し、金属銀濃度(銀ナノワイヤと不純物の銀ナノ粒子を含む液中銀濃度)が0.53質量%となる銀ナノワイヤ分散液を調製した。この溶液のPVP濃度は0.49質量%である。
得られた銀ナノワイヤ分散液を、銀濃度が0.08質量%となるように純水で希釈して、約52kgの銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液を「クロスフロー元液」と呼ぶ。
(クロスフロー循環洗浄)
上記の前処理を受けたクロスフロー元液を、図4に示す管路構成を有する装置のタンクに収容したのち、連続的に管路を循環させる方法でクロスフローろ過に供した。ただし、本例では図4の符号3で表示される箇所に9本の管状フィルタを並列に配置し、それぞれの管状フィルタに液を分岐させて処理した。クロスフローろ過フィルタとして使用した管状フィルタは、多孔質セラミックで管壁が形成されており、寸法は長さ500mm、外径12mm、内径9mmである。セラミックの材質はSiC(炭化ケイ素)であり、Micromeritics社製、水銀ポロシメーターを用いて測定した水銀圧入法による平均細孔直径は3.5μmであった。
水銀圧入法による細孔分布測定の詳細条件は以下の通りである。
・測定装置:オートポアIV9510型
・測定範囲:φ100〜0.01μm、
・水銀接触角:130°
・水銀表面張力:485dyne/cm、
・前処理:300℃×1h(大気中)
・測定試料質量:3.5g
測定精度を十分に確保するため、0.1〜40μmの測定範囲では105点の測定データを採取した。ここでいう平均細孔直径はメディアン径である。
上記の前処理を受けたクロスフロー元液を、図4に示す管路構成を有する装置のタンクに収容したのち、連続的に管路を循環させる方法でクロスフローろ過に供した。ただし、本例では図4の符号3で表示される箇所に9本の管状フィルタを並列に配置し、それぞれの管状フィルタに液を分岐させて処理した。クロスフローろ過フィルタとして使用した管状フィルタは、多孔質セラミックで管壁が形成されており、寸法は長さ500mm、外径12mm、内径9mmである。セラミックの材質はSiC(炭化ケイ素)であり、Micromeritics社製、水銀ポロシメーターを用いて測定した水銀圧入法による平均細孔直径は3.5μmであった。
水銀圧入法による細孔分布測定の詳細条件は以下の通りである。
・測定装置:オートポアIV9510型
・測定範囲:φ100〜0.01μm、
・水銀接触角:130°
・水銀表面張力:485dyne/cm、
・前処理:300℃×1h(大気中)
・測定試料質量:3.5g
測定精度を十分に確保するため、0.1〜40μmの測定範囲では105点の測定データを採取した。ここでいう平均細孔直径はメディアン径である。
循環させる液状媒体の初期PVP濃度(クロスフロー元液を構成する水溶媒中におけるPVPの質量割合)は770ppmである。タンクに新たな液状媒体を補給しながら循環を行った。上記の管状フィルタ9本を循環流路内に並列に設置した。この管状フィルタ1本あたりに導入される液の流量を13L/minとして循環させた。管状フィルタに導入される液の流速は3495mm/sであった。また、管状フィルタの入り側の管路における圧力(図5の上流側圧力計4で計測される圧力)は0.025MPaであった。補給する液状媒体は重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)を純水中に溶解させた水溶媒であり、補給する水溶媒中のPVP濃度(水溶媒中におけるPVPの質量割合)は50ppmとした。タンクは、ジャケット付タンクであり、ジャケットに冷却水を流すことにより、循環中の液温の上昇を抑制した。また、補給する純水は冷却して10〜15℃の温度の冷却純水を使用した。その結果、循環中の液温は20〜30℃の範囲であった。このようにして5時間のクロスフロー循環洗浄を行った。循環中に補給した液状媒体の総量は約214Lであった。管状フィルタ1本当たりの平均ろ液量は79mL/minであった。
(クロスフロー濃縮)
5時間のクロスフロー循環洗浄に引き続き、液状媒体の補給を止めた状態でクロスフローろ過による循環を行い、ろ液の排出により液量が減少していくことを利用して銀ナノワイヤ分散液の濃縮を行い、銀ナノワイヤが水溶媒中に分散している水系銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液中の金属銀濃度をICP発光分光分析法(装置:アジレント・テクノロジー株式会社製 ICP発光分光分析装置720−ES)によって測定したところ、銀ナノワイヤの濃度は金属銀換算で0.335質量%であった。この溶液を「分散液A」と呼ぶ。
5時間のクロスフロー循環洗浄に引き続き、液状媒体の補給を止めた状態でクロスフローろ過による循環を行い、ろ液の排出により液量が減少していくことを利用して銀ナノワイヤ分散液の濃縮を行い、銀ナノワイヤが水溶媒中に分散している水系銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液中の金属銀濃度をICP発光分光分析法(装置:アジレント・テクノロジー株式会社製 ICP発光分光分析装置720−ES)によって測定したところ、銀ナノワイヤの濃度は金属銀換算で0.335質量%であった。この溶液を「分散液A」と呼ぶ。
(銀ナノワイヤの寸法形状)
平均長さLMを以下のようにして測定した。ナノワイヤ分散液を2−プロパノールで銀濃度が0.002%となるように希釈し、Si製の基板上に6μL乗せた後、160℃で1分間乾燥させることにより、SEM観察用サンプルを得た。得られたサンプルを走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JSM−IT100 InTouchScope)により、加速電圧5kV、倍率1,000倍で観察を行った。無作為に選んだ3以上の視野について、視野内で全長が確認できるすべてのワイヤを測定対象として、ソフトウェア(ドクターカンバス)を用いて、上述の定義に従って平均長さLMを求めた。
平均直径DMを以下のようにして測定した。ナノワイヤ分散液をTEM用の観察台にとり、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JEM-1011)により、加速電圧100kV、倍率40,000倍で明視野像の観察を行って観察画像を採取し、正確に直径を測定するために採取された元画像を2倍のサイズに拡大した上で、ソフトウェア(Motic Image Plus2.1S)を用いて、上述の定義に従って平均直径DMを求めた。
測定の結果、平均長さLMは16μm、平均直径DMは23.3nmであった。
平均長さLMを以下のようにして測定した。ナノワイヤ分散液を2−プロパノールで銀濃度が0.002%となるように希釈し、Si製の基板上に6μL乗せた後、160℃で1分間乾燥させることにより、SEM観察用サンプルを得た。得られたサンプルを走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JSM−IT100 InTouchScope)により、加速電圧5kV、倍率1,000倍で観察を行った。無作為に選んだ3以上の視野について、視野内で全長が確認できるすべてのワイヤを測定対象として、ソフトウェア(ドクターカンバス)を用いて、上述の定義に従って平均長さLMを求めた。
平均直径DMを以下のようにして測定した。ナノワイヤ分散液をTEM用の観察台にとり、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JEM-1011)により、加速電圧100kV、倍率40,000倍で明視野像の観察を行って観察画像を採取し、正確に直径を測定するために採取された元画像を2倍のサイズに拡大した上で、ソフトウェア(Motic Image Plus2.1S)を用いて、上述の定義に従って平均直径DMを求めた。
測定の結果、平均長さLMは16μm、平均直径DMは23.3nmであった。
(増粘剤水溶液の調製)
重量平均分子量が910,000のHEMC(ヒドロキシエチルメチルセルロース;巴工業社製)を用意した。撹拌機で強撹拌してある99℃の熱湯中にHEMCの粉体を投入し、その後、強撹拌を24時間継続し、10℃まで冷却した。冷却後の液を100μm目開きの金属メッシュで濾過することによりゼリー状の不溶成分を除去し、HEMCが溶解している水溶液を得た。この水溶液を「増粘剤水溶液」と呼ぶ。増粘剤水溶液中の増粘剤濃度を以下の手順で確認した。増粘剤水溶液約100gを計量し、120℃の乾燥機内で3時間加熱し、乾燥後残分の重量を計量することで増粘剤濃度を測定した。測定の結果、増粘剤水溶液の濃度は0.982質量%であった。
重量平均分子量が910,000のHEMC(ヒドロキシエチルメチルセルロース;巴工業社製)を用意した。撹拌機で強撹拌してある99℃の熱湯中にHEMCの粉体を投入し、その後、強撹拌を24時間継続し、10℃まで冷却した。冷却後の液を100μm目開きの金属メッシュで濾過することによりゼリー状の不溶成分を除去し、HEMCが溶解している水溶液を得た。この水溶液を「増粘剤水溶液」と呼ぶ。増粘剤水溶液中の増粘剤濃度を以下の手順で確認した。増粘剤水溶液約100gを計量し、120℃の乾燥機内で3時間加熱し、乾燥後残分の重量を計量することで増粘剤濃度を測定した。測定の結果、増粘剤水溶液の濃度は0.982質量%であった。
(銀ナノワイヤ塗工液の調製)
上記クロスフローろ過によって得られた分散液A2174g、純水792g、増粘剤水溶液367gを加え、直径170mmの6枚傾斜羽を使用して150rpmで2時間撹拌した。その後、2−プロパノールの60%水溶液を667g加え、150rpmで12時間撹拌した。得られた溶液を「銀ナノワイヤ塗工液」と呼ぶ。上記増粘剤の混合量は、塗工液総量の0.09質量%となるように調整している。この銀ナノワイヤ塗工液の金属銀濃度をICP発光分光分析法によって測定したところ、銀ナノワイヤ含有量は金属銀換算で0.183質量%であった。
上記クロスフローろ過によって得られた分散液A2174g、純水792g、増粘剤水溶液367gを加え、直径170mmの6枚傾斜羽を使用して150rpmで2時間撹拌した。その後、2−プロパノールの60%水溶液を667g加え、150rpmで12時間撹拌した。得られた溶液を「銀ナノワイヤ塗工液」と呼ぶ。上記増粘剤の混合量は、塗工液総量の0.09質量%となるように調整している。この銀ナノワイヤ塗工液の金属銀濃度をICP発光分光分析法によって測定したところ、銀ナノワイヤ含有量は金属銀換算で0.183質量%であった。
(非導電材料元液の調製)
透光性導電膜を構成する非導電材料の調合のために、以下の樹脂塗料と添加剤を用意した。
樹脂塗料:フォルシード307C(中国塗料株式会社製、樹脂成分比率50%)
添加剤:ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤:X−12−1214A(信越化学工業株式会社製)
上記樹脂塗料の樹脂成分75質量部に対し、上記添加剤を25質量部混合して非導電材料の液を得た。すなわち、添加剤成分/樹脂成分の含有量比(本例ではシランカップリング剤成分/樹脂成分の含有量比)は質量割合で0.33となる。この液を「非導電材料元液」と呼ぶ。
透光性導電膜を構成する非導電材料の調合のために、以下の樹脂塗料と添加剤を用意した。
樹脂塗料:フォルシード307C(中国塗料株式会社製、樹脂成分比率50%)
添加剤:ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤:X−12−1214A(信越化学工業株式会社製)
上記樹脂塗料の樹脂成分75質量部に対し、上記添加剤を25質量部混合して非導電材料の液を得た。すなわち、添加剤成分/樹脂成分の含有量比(本例ではシランカップリング剤成分/樹脂成分の含有量比)は質量割合で0.33となる。この液を「非導電材料元液」と呼ぶ。
(非導電材料塗工液の作製)
酢酸ブチルとメチルイソブチルケトンを質量比7:3の割合で混合した希釈用溶媒を作製した。この希釈用溶媒を用いて上記非導電材料元液の含有量が0.8質量%となるように希釈した。この希釈後の溶液を「非導電材料塗工液」と呼ぶ。
酢酸ブチルとメチルイソブチルケトンを質量比7:3の割合で混合した希釈用溶媒を作製した。この希釈用溶媒を用いて上記非導電材料元液の含有量が0.8質量%となるように希釈した。この希釈後の溶液を「非導電材料塗工液」と呼ぶ。
(銀ナノワイヤ導電構造体の形成)
厚さ100μm、寸法150mm×200mmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、ルミラーU40)を用意した。上記の銀ナノワイヤ塗工液を、ダイコーター塗工機(ダイ門社製、New卓ダイS−100)によりPETフィルム基材上に塗布し、面積100mm×100mmの塗膜を形成した。塗工条件は、ウェット厚:12μm、ギャップ:40μm、速度:10mm/s、タイマー:1.5s、塗工長:100mmとした。塗布後、120℃で1分間乾燥させ、「銀ナノワイヤ導電構造体」を形成した。
厚さ100μm、寸法150mm×200mmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、ルミラーU40)を用意した。上記の銀ナノワイヤ塗工液を、ダイコーター塗工機(ダイ門社製、New卓ダイS−100)によりPETフィルム基材上に塗布し、面積100mm×100mmの塗膜を形成した。塗工条件は、ウェット厚:12μm、ギャップ:40μm、速度:10mm/s、タイマー:1.5s、塗工長:100mmとした。塗布後、120℃で1分間乾燥させ、「銀ナノワイヤ導電構造体」を形成した。
(透光性導電膜の形成)
PETフィルム基材上に形成された上記の「銀ナノワイヤ導電構造体」の面上に、上記の「非導電材料塗工液」を、ダイコーター塗工機(ダイ門社製、New卓ダイS−100)により塗布し、面積100mm×130mmの塗膜を形成した。塗工条件は、ウェット厚:13μm、ギャップ:80μm、速度:50mm/s、タイマー:1.5s、塗工長:130mmとした。塗布後、120℃で1分間乾燥させて、乾燥塗膜を形成させた。PETフィルム基材(寸法150mm×200mm)の、何も塗工されていない部分を切り落とし、中央部に上記乾燥塗膜を有する寸法110mm×210mmのPETフィルム基材を得た。このPETフィルム基材上の乾燥塗膜にUV硬化処理を施し、樹脂を硬化させた。UV硬化処理は、ヘレウス社製のイナートボックス(ETC−QN−G)に上記PETフィルム基材を入れ、10kPa、2分の条件でN2置換を行い、ヘレウス社製のUV照射装置(LC6B)にて、照射強度500mW/cm2、積算強度400mJ/cm2の条件で行った。このようにして、上記添加剤成分(本例ではベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分)および上記樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有する透光性導電膜を形成した。この透光性導電膜を供試材として以下の各種試験を行った。
PETフィルム基材上に形成された上記の「銀ナノワイヤ導電構造体」の面上に、上記の「非導電材料塗工液」を、ダイコーター塗工機(ダイ門社製、New卓ダイS−100)により塗布し、面積100mm×130mmの塗膜を形成した。塗工条件は、ウェット厚:13μm、ギャップ:80μm、速度:50mm/s、タイマー:1.5s、塗工長:130mmとした。塗布後、120℃で1分間乾燥させて、乾燥塗膜を形成させた。PETフィルム基材(寸法150mm×200mm)の、何も塗工されていない部分を切り落とし、中央部に上記乾燥塗膜を有する寸法110mm×210mmのPETフィルム基材を得た。このPETフィルム基材上の乾燥塗膜にUV硬化処理を施し、樹脂を硬化させた。UV硬化処理は、ヘレウス社製のイナートボックス(ETC−QN−G)に上記PETフィルム基材を入れ、10kPa、2分の条件でN2置換を行い、ヘレウス社製のUV照射装置(LC6B)にて、照射強度500mW/cm2、積算強度400mJ/cm2の条件で行った。このようにして、上記添加剤成分(本例ではベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分)および上記樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有する透光性導電膜を形成した。この透光性導電膜を供試材として以下の各種試験を行った。
(光耐久性試験)
PETフィルム基材上に形成した上記の透光性導電膜(供試材)に対し、耐光性試験機(卓上キセノン耐光性試験機、アトラス・サンテストXLS+、株式会社東洋精機製作所)を用いてキセノンランプによる光の照射を行った。昼光フィルタを使用しており、放射照度の制御範囲は300〜800nmの範囲で250〜765W/m2である。試験条件は、ブラックパネル温度60℃、照射強度550W/m2(波長300〜800nmの分光放射照度の積算値)、照射時間は240時間とした。光照射試験前、および照射時間時t(h)後のシート抵抗測定値から、下記(2)式により定まるシート抵抗変化率A(t)(%)を求めた。この透光性導電膜のシート抵抗(表面抵抗)は、渦電流式抵抗率測定器(ナプソン社製、EC−80P)により、PETフィルム基材の透光性導電膜とは反対側の面から測定した。
A(t)=(R(t)−R(0))/R(0)×100 …(2)
ここで、
R(0):光照射試験前のシート抵抗(Ω/sq)、
R(t):t時間の光照射試験直後のシート抵抗(Ω/sq)、
である。ここではt=240(h)ある。
このシート抵抗変化率が10%以下であれば優れた光耐久性を有していると評価できる。
PETフィルム基材上に形成した上記の透光性導電膜(供試材)に対し、耐光性試験機(卓上キセノン耐光性試験機、アトラス・サンテストXLS+、株式会社東洋精機製作所)を用いてキセノンランプによる光の照射を行った。昼光フィルタを使用しており、放射照度の制御範囲は300〜800nmの範囲で250〜765W/m2である。試験条件は、ブラックパネル温度60℃、照射強度550W/m2(波長300〜800nmの分光放射照度の積算値)、照射時間は240時間とした。光照射試験前、および照射時間時t(h)後のシート抵抗測定値から、下記(2)式により定まるシート抵抗変化率A(t)(%)を求めた。この透光性導電膜のシート抵抗(表面抵抗)は、渦電流式抵抗率測定器(ナプソン社製、EC−80P)により、PETフィルム基材の透光性導電膜とは反対側の面から測定した。
A(t)=(R(t)−R(0))/R(0)×100 …(2)
ここで、
R(0):光照射試験前のシート抵抗(Ω/sq)、
R(t):t時間の光照射試験直後のシート抵抗(Ω/sq)、
である。ここではt=240(h)ある。
このシート抵抗変化率が10%以下であれば優れた光耐久性を有していると評価できる。
(ヘイズの測定)
上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材について、日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH 5000によりヘイズを測定した。ヘイズの値(%)はPET基材の影響を除去するために、[基材+透光性導電膜のヘイズ値]−[基材のみのヘイズ値]の値を用いた。ここで、「基材+透光性導電膜のヘイズ値」は基材フィルムとその上に形成されている透光性導電膜からなる物体のヘイズ値(%)、「基材のみのヘイズ値」は、透光性導電膜を形成する前の基材フィルムのヘイズ値(%)である。
この[基材+透光性導電膜のヘイズ値]−[基材のみのヘイズ値]の値が3.0以下であれば優れたヘイズ特性を有していると評価できる。
上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材について、日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH 5000によりヘイズを測定した。ヘイズの値(%)はPET基材の影響を除去するために、[基材+透光性導電膜のヘイズ値]−[基材のみのヘイズ値]の値を用いた。ここで、「基材+透光性導電膜のヘイズ値」は基材フィルムとその上に形成されている透光性導電膜からなる物体のヘイズ値(%)、「基材のみのヘイズ値」は、透光性導電膜を形成する前の基材フィルムのヘイズ値(%)である。
この[基材+透光性導電膜のヘイズ値]−[基材のみのヘイズ値]の値が3.0以下であれば優れたヘイズ特性を有していると評価できる。
(電極の密着性試験)
電極用材料として、銀ペースト(PHOENIX MATERIALS社製、PA−LTP−AW−02A)を用意した。この銀ペーストは、導電性フィラーとして長径1〜5μm程度のフレーク銀粉および粒径100〜500nm程度の球状銀粉を含み、樹脂成分としてフェノール樹脂を含み、その他の成分としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸を含むものである。
電極と透光性導電膜の間の密着性を評価するために以下の方法で碁盤目剥離試験を行った。上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材の表面上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を使用して上記銀ペーストからなる膜(平均厚さ10μm、面積15mm×15mm)を印刷し、85℃で60分乾燥させた。この乾燥銀ペースト膜は電極を模擬した導電膜である。得られた乾燥銀ペースト膜の表面に、カッター刃で長さ10mmを超える切り込み線11本を1mm間隔で平行に形成した。次に、前記11本の切り込み線と直交する切り込み線11本を1mm間隔で平行に形成した。切り込み線を形成する際には、コーテック株式会社製のクロスカットガイドを用いた。このようにして、1辺1mmの正方形のマス目100個を有する格子パターンを形成した。JIS Z1522:2009に従うセロハン粘着テープを用意し、JIS K5600−5−6:1999に準拠して、100個のマス目からなる格子パターンを覆うように前記セロハン粘着テープを貼付した後、引き剥がしを行い、粘着テープを剥がした後の試料表面を3Dマイクロスコープで観察し、樹脂層の表面に透明導電膜が50%以上の面積率で残っているマス目の数(以下「残存マス目数」という)をカウントし、マス目100個に占める残存マス目数を求めた。この試験において残存マス目数が100個(全マス残存)であれば、当該透光性導電膜と電極との間の密着性(接合力)は良好と判断される。基材と透光性導電膜との間での膜の剥離は認められなかった(以下の各例において同じ。)。なお、前記のセロハン粘着テープとしては、ニチバン社製CT405AP−24(幅24mm)を用いた。
電極用材料として、銀ペースト(PHOENIX MATERIALS社製、PA−LTP−AW−02A)を用意した。この銀ペーストは、導電性フィラーとして長径1〜5μm程度のフレーク銀粉および粒径100〜500nm程度の球状銀粉を含み、樹脂成分としてフェノール樹脂を含み、その他の成分としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸を含むものである。
電極と透光性導電膜の間の密着性を評価するために以下の方法で碁盤目剥離試験を行った。上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材の表面上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を使用して上記銀ペーストからなる膜(平均厚さ10μm、面積15mm×15mm)を印刷し、85℃で60分乾燥させた。この乾燥銀ペースト膜は電極を模擬した導電膜である。得られた乾燥銀ペースト膜の表面に、カッター刃で長さ10mmを超える切り込み線11本を1mm間隔で平行に形成した。次に、前記11本の切り込み線と直交する切り込み線11本を1mm間隔で平行に形成した。切り込み線を形成する際には、コーテック株式会社製のクロスカットガイドを用いた。このようにして、1辺1mmの正方形のマス目100個を有する格子パターンを形成した。JIS Z1522:2009に従うセロハン粘着テープを用意し、JIS K5600−5−6:1999に準拠して、100個のマス目からなる格子パターンを覆うように前記セロハン粘着テープを貼付した後、引き剥がしを行い、粘着テープを剥がした後の試料表面を3Dマイクロスコープで観察し、樹脂層の表面に透明導電膜が50%以上の面積率で残っているマス目の数(以下「残存マス目数」という)をカウントし、マス目100個に占める残存マス目数を求めた。この試験において残存マス目数が100個(全マス残存)であれば、当該透光性導電膜と電極との間の密着性(接合力)は良好と判断される。基材と透光性導電膜との間での膜の剥離は認められなかった(以下の各例において同じ。)。なお、前記のセロハン粘着テープとしては、ニチバン社製CT405AP−24(幅24mm)を用いた。
(電極対間の電気抵抗測定試験)
電極と透光性導電膜の間の電気抵抗を評価するために以下の方法で電気抵抗測定試験を行った。上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材の表面上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を使用して上記銀ペーストからなる膜(平均厚さ10μm、面積1.0mm×0.5mm)を2箇所に印刷し、85℃で60分乾燥させた。2箇所の乾燥銀ペースト膜の間隔は1.0mmである。これらの2箇所の乾燥銀ペースト膜を「電極対」と呼ぶ。図5に電気抵抗測定試験用の電極対の配置を示す。図5中に符号Aで示した領域は「透光性導電膜A」が試料表面に現れている部分、符号Bで示した領域は透光性導電膜Aの表面上に存在する「電極B」が試料表面に現れている部分を意味する。
電極と透光性導電膜の間の電気抵抗を評価するために以下の方法で電気抵抗測定試験を行った。上記と同一条件でPETフィルム基材上に作製された透光性導電膜供試材の表面上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を使用して上記銀ペーストからなる膜(平均厚さ10μm、面積1.0mm×0.5mm)を2箇所に印刷し、85℃で60分乾燥させた。2箇所の乾燥銀ペースト膜の間隔は1.0mmである。これらの2箇所の乾燥銀ペースト膜を「電極対」と呼ぶ。図5に電気抵抗測定試験用の電極対の配置を示す。図5中に符号Aで示した領域は「透光性導電膜A」が試料表面に現れている部分、符号Bで示した領域は透光性導電膜Aの表面上に存在する「電極B」が試料表面に現れている部分を意味する。
上記の電気抵抗測定用試料について、デジタルマルチメータ(アドバンテスト社製、AD7451)により電極対の間の電気抵抗を測定した。この電気抵抗値は透光性導電膜と電極の界面に生じる接触抵抗を反映したものである。この試験による抵抗値が35Ω以下であれば、電極との間の接触抵抗が十分に小さい透光性導電膜であると評価できる。
以上の結果を表1に記載する(以下の各例において同じ。)。
以上の結果を表1に記載する(以下の各例において同じ。)。
非導電材料としてベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤成分を含む透光性導電膜としたことにより、優れた光耐久性を有し、かつ親水性の高いHEMCを増粘剤として用いたにもかかわらず電極との密着性が良好であった。透光性導電膜と電極の間の接触抵抗も低かった。
[比較例1]
非導電材料元液の調製において、添加剤を何も加えなかったこと以外、実施例1と同様の条件で試験を行った。すなわち、添加剤成分/樹脂成分の含有量比は質量割合で0となる。樹脂塗料の種類は実施例1と共通である。得られた透光性導電膜は電極との密着性に劣り、電極との接触抵抗も高かった。
非導電材料元液の調製において、添加剤を何も加えなかったこと以外、実施例1と同様の条件で試験を行った。すなわち、添加剤成分/樹脂成分の含有量比は質量割合で0となる。樹脂塗料の種類は実施例1と共通である。得られた透光性導電膜は電極との密着性に劣り、電極との接触抵抗も高かった。
[比較例2]
非導電材料元液の調製において、添加剤をメタクリル基含有シランカップリング剤:KBM−5803(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との接触抵抗が高かった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をメタクリル基含有シランカップリング剤:KBM−5803(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との接触抵抗が高かった。
[比較例3]
非導電材料元液の調製において、添加剤をフェニル基含有シランカップリング剤:KBM−103(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性の改善効果が不十分であり、電極との密着性が悪かった。電極との接触抵抗の改善も不十分であった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をフェニル基含有シランカップリング剤:KBM−103(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性の改善効果が不十分であり、電極との密着性が悪かった。電極との接触抵抗の改善も不十分であった。
[比較例4]
非導電材料元液の調製において、添加剤をエポキシ基含有シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との密着性が不十分であった。電極との接触抵抗の改善も不十分であった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をエポキシ基含有シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との密着性が不十分であった。電極との接触抵抗の改善も不十分であった。
[比較例5]
非導電材料元液の調製において、添加剤をビニル基含有シランカップリング剤:KBM−1083(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との密着性が悪かった。電極との接触抵抗も高かった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をビニル基含有シランカップリング剤:KBM−1083(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は電極との密着性が悪かった。電極との接触抵抗も高かった。
[比較例6]
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBM−603(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBM−603(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
[比較例7]
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBM−903(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBM−903(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
[比較例8]
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBE−903(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBE−903(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪く、ヘイズも大きかった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
[比較例9]
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBE−9103P(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪かった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
非導電材料元液の調製において、添加剤をアミン系シランカップリング剤:KBE−9103P(信越化学工業株式会社製)としたことを除き、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた透光性導電膜は光耐久性が非常に悪かった。この透光性導電膜は実用性に乏しいため、電極を形成して行う試験(密着性、接触抵抗の評価)は行わなかった。
1 タンク
2 ポンプ
3 クロスフロー濾過フィルタ
4 上流側圧力計
5 下流側圧力計
6 クロスフロー循環洗浄前の銀ナノワイヤ分散液
7 補給する液状媒体
10 循環流路
30 濾液
101 透光性基材
102 非導電材料
103 銀ナノワイヤ
104 導電性フィラー
A 透光性導電膜
B 電極
2 ポンプ
3 クロスフロー濾過フィルタ
4 上流側圧力計
5 下流側圧力計
6 クロスフロー循環洗浄前の銀ナノワイヤ分散液
7 補給する液状媒体
10 循環流路
30 濾液
101 透光性基材
102 非導電材料
103 銀ナノワイヤ
104 導電性フィラー
A 透光性導電膜
B 電極
Claims (5)
- 透光性導電膜Aと、前記透光性導電膜Aの表面の一部に付着している電極Bとで構成され、
前記透光性導電膜Aは、ベンゾトリアゾール基を持つケイ素化合物からなるシランカップリング剤成分および樹脂成分を含む非導電材料と、銀ナノワイヤとを含有するものであり、
前記電極Bは、導電性フィラーを含有する導電体である、
電極付き透光性導電膜。 - 前記透光性導電膜Aにおける前記シランカップリング剤成分/前記樹脂成分の含有量比が質量割合で0.01〜5.0である請求項1に記載の電極付き透光性導電膜。
- 前記銀ナノワイヤは、平均直径が30nm未満、平均長さが6.0μm以上のものである請求項1または2に記載の電極付き透光性導電膜。
- 前記銀ナノワイヤは、ビニルピロリドン構造単位を有する有機保護剤が表面に付着しているものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極付き透光性導電膜。
- 前記電極Bの導電体は、導電性フィラーとして銀フィラーを含有するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極付き透光性導電膜。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019100550A JP2020194734A (ja) | 2019-05-29 | 2019-05-29 | 電極付き透光性導電膜 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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ID=73547993
Family Applications (1)
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JP2019100550A Pending JP2020194734A (ja) | 2019-05-29 | 2019-05-29 | 電極付き透光性導電膜 |
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JP (1) | JP2020194734A (ja) |
-
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- 2019-05-29 JP JP2019100550A patent/JP2020194734A/ja active Pending
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