JP2020191169A - 放熱構造体およびそれを備えるバッテリー - Google Patents

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Abstract

【課題】熱源の種々の形態に順応可能であって、放熱効率に優れ、かつ複数の熱源各々における放熱性の均一化を高めることが可能であって、さらに柔軟に圧縮変形しかつ復元可能である放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供する。【解決手段】本発明は、熱源からの放熱を高める1または2以上の放熱部材8を備え、放熱部材8は、熱源からの熱を伝えるための筒状、断面U字状あるいはスパイラル状の熱伝導シート20と、熱伝導シート20の内方に備えられ、熱伝導シート20に比べて熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材21と、クッション部材21の変形に伴い熱伝導シート20が過度に変形しないように熱伝導シート20に加わる応力を緩和させるシートであって、熱伝導シート20とクッション部材21との間に配置される応力緩和シート23と、を備える放熱構造体1、およびそれを備えるバッテリー30に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、放熱構造体およびそれを備えるバッテリーに関する。
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等から構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車が普及してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などが必要となる。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が重要である。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
バッテリーの速やかな放熱を実現するには、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属製の筐体に水冷パイプを配置し、当該筐体にバッテリーセルを多数配置し、バッテリーセルと筐体の底面との間に密着性のゴムシートを挟んだ構造が採用されている。このような構造のバッテリーでは、バッテリーセルは、ゴムシートを通じて筐体に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。
特開2008−243999
しかし、上述のような従来のバッテリーにおいて、ゴムシートは、アルミニウムやグラファイトと比べて熱伝導性が低いため、バッテリーセルから筐体に効率よく熱を移動させることが難しい。また、ゴムシートに代えてグラファイト等のスペーサを挟む方法も考えられるが、複数のバッテリーセルの下面が平らではなく段差を有することから、バッテリーセルとスペーサとの間に隙間が生じ、伝熱効率が低下する。かかる一例にもみられるように、バッテリーセルは種々の形態(段差等の凹凸あるいは非平滑な表面状態を含む)をとり得ることから、バッテリーセルの種々の形態に順応可能であって高い伝熱効率を実現することの要望が高まっている。加えて、熱源からの押圧の増減に対応して、柔軟に圧縮変形しかつ復元可能であることも望まれている。上記の課題は、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源からの放熱についても通じる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源の種々の形態に順応可能であって、放熱効率に優れ、かつ柔軟に圧縮変形しかつ復元可能である放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供することを目的とする。
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源からの放熱を高める1または2以上の放熱部材を備え、前記放熱部材は、前記熱源からの熱を伝えるための筒状、断面U字状あるいはスパイラル状の熱伝導シートと、前記熱伝導シートの内方に備えられ、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材と、前記クッション部材の変形に伴い前記熱伝導シートが過度に変形しないように前記熱伝導シートに加わる応力を緩和させるシートであって、前記熱伝導シートと前記クッション部材との間に配置される応力緩和シートと、を備える。
(2)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記応力緩和シートと前記熱伝導シートとの間、および前記応力緩和シートと前記クッション部材との間の少なくともいずれか1つの間に接着剤を介在させている。
(3)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記クッション部材は、柱状若しくは筒状の部材であって、前記応力緩和シートは、前記クッション部材の外側面を覆う筒状の部材であって、前記熱伝導シートは、前記応力緩和シートの外側面を覆っている。
(4)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記クッション部材は、柱状若しくは筒状の部材であって、前記応力緩和シートおよび前記熱伝導シートは、帯状の積層シートを成し、前記クッション部材の外側面をスパイラル状に巻きながら前記クッション部材の長さ方向に進行するように覆っている。
(5)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記放熱部材は、前記クッション部材、前記応力緩和シートおよび前記熱伝導シートを積層させた帯状の積層シートがスパイラル状に巻回しながら進行する形態を有する。
(6)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記応力緩和シートは、ポリエステルのシートである。
(7)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記放熱部材を2以上備え、前記放熱部材を、その長さ方向と直交する方向に並べた状態で固定可能な部材であって、前記放熱部材の前記長さ方向の少なくとも一端部を固定する固定部材を、さらに備える。
(8)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記固定部材は、前記放熱部材の長さ方向と直交する方向に並んだ2以上の前記放熱部材を囲むように形成される。
(9)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記固定部材は、その厚さが、前記熱源からの押圧により変形した前記放熱部材の厚さより薄くなるよう形成される。
(10)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記放熱部材を2以上備え、2以上の前記放熱部材を前記長さ方向と直交する方向に並べた状態で連結する連結部材を備え、前記連結部材は、糸で構成される。
(11)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記熱伝導シートの表面に、当該表面に接触する熱源から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する。
(12)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記熱伝導性オイルは、シリコーンオイルと、前記シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。
(13)一実施形態に係るバッテリーは、冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、前記バッテリーセルと前記筐体との間に、上述のいずれかの放熱構造体を備える。
本発明によれば、熱源の種々の形態に順応可能であって、放熱効率に優れ、かつ柔軟に圧縮変形しかつ復元可能である放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供できる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る放熱構造体の平面図(1A)、(1A)に示す放熱構造体を矢印C方向から見た側面図(1B)および(1A)に示す放熱構造体を矢印D方向から見た側面図(1C)をそれぞれ示す。 図2は、図1(1A)における領域BのA−A線断面であって、放熱部材の外側面上から押圧を受ける前後の断面図(2A)および放熱部材のA−A線拡大断面図(2B)をそれぞれ示す。 図3は、本発明の第2実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。 図4は、放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。 図5は、本発明の第3実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す。 図6は、本発明の第4実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す。 図7は、変形例1,2に係る放熱構造体の放熱部材の斜視図を示す。 図8は、本発明の実施形態に係るバッテリーの縦断面図(8A)および熱源の一例であるバッテリーセルの一部を放熱構造体上に載せる前後の縦断面図(8B)をそれぞれ示す。 図9は、放熱構造体の上に、バッテリーセルの側面を接触させるように横置きにしたときの断面図、その一部拡大図および充放電時にバッテリーセルが膨張した際の一部断面図をそれぞれ示す。
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
1.放熱構造体およびその製造方法
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る放熱構造体の平面図(1A)、(1A)に示す放熱構造体を矢印C方向から見た側面図(1B)および(1A)に示す放熱構造体を矢印D方向から見た側面図(1C)をそれぞれ示す。図2は、図1(1A)における領域BのA−A線断面であって、放熱部材の外側面上から押圧を受ける前後の断面図(2A)および放熱部材のA−A線拡大断面図(2B)をそれぞれ示す。
(1)概略構成
第1実施形態に係る放熱構造体1は、熱源からの放熱を高める2以上の放熱部材8を備える。放熱部材8は、1つのみでも良い。放熱部材8は、熱源からの熱を伝えるためのスパイラル状の熱伝導シート20と、熱伝導シート20の内方に備えられるクッション部材21と、熱伝導シート20とクッション部材21との間に配置される応力緩和シート23と、を備える。クッション部材21は、この実施形態では、筒状の部材であって、その長さ方向に貫通する貫通路(「中空部」と称しても良い)22を備える。ただし、後述するように、クッション部材21は、柱状部材であって、貫通路22を備えていなくとも良い。クッション部材21は、熱伝導シート20に比べて熱源の表面形状に合わせて変形容易である。応力緩和シート23は、クッション部材21の変形に伴い熱伝導シート20が過度に変形しないように熱伝導シート20に加わる応力を緩和させるシートである。応力緩和シート23は、この実施形態では、クッション部材21の外側面を覆う筒状の部材である。熱伝導シート20は、かかる形態の応力緩和シート23の外側面を覆っている。なお、放熱部材は、「伝熱部材」と称しても良い。
放熱構造体1は、2以上の放熱部材8をその長さ方向と直交する方向に並べた状態(横並びの状態ともいう)で固定可能な部材であって、放熱部材8の長さ方向の両端部を固定する枠部材(固定部材の一例)10を、さらに備える。枠部材10は、2以上の放熱部材8を横並びの状態にした集合体の略外周を囲う部材である。ただし、枠部材10は、2以上の放熱部材8の長さ方向の少なくとも一端部を固定する部材であっても良い。この実施形態において、枠部材10は、薄い板若しくはフィルム状の枠の内部に、枠部材10の厚さ方向に貫通する開口部11を備えている。放熱部材8は、開口部11上に浮いた状態で、枠部材10の片面に固定されている。枠部材10は、好ましくは、その厚さが、熱源からの押圧により変形した放熱部材8の厚さよりも薄くなるよう形成されている。このため、放熱部材8における開口部11と反対側の方向から熱源によって開口部11側に押圧すると、放熱部材8は、その厚さ方向(Z方向)の一部を開口部11に沈み込ませるように撓むことができる。放熱部材8同士の隙間Lは、放熱部材8の上方(すなわち、放熱部材8を固定している枠部材10の面の上方)からの押圧によって放熱部材8の直径Dが80%になるまで扁平状態になっても放熱部材8同士が接触しないほどの距離である。ただし、放熱部材8同士の隙間Lを過度に大きくすると、絶縁体としての空気が大量に存在し、熱源から冷却部位への熱伝達を妨げる可能性もある。このため、隙間Lは、放熱部材8の直径Dが80%になるまで扁平状態になっても放熱部材8同士が接触しない最短の距離に設定する方が好ましい。
放熱構造体1は、複数の放熱部材8をその長さ方向と直交する方向に並べた状態で連結する糸7(連結部材の一例)を備える。この実施形態では、連結部材としての糸7は、放熱部材8の長さ方向の両端部を枠部材10の対向両辺(図1のY方向にある両辺)上に載せた状態で、放熱部材8を枠部材10に固定する。また、糸7は、放熱部材8の長さ方向略中間位置にて複数の放熱部材8を連結して、放熱部材8のならぶ延長線上に位置する対向両辺(図1のX方向にある両辺)に固定する。
次に、放熱構造体1の各構成要素について説明する。
(2)熱伝導シート
熱伝導シート20は、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは90質量%以上を炭素から構成されるシートである。例えば、熱伝導シート20に、樹脂を焼成して成るグラファイト製のフィルムを用いることもできる。ただし、熱伝導シート20は、炭素と樹脂とを含むシートであっても良い。その場合、樹脂は、合成繊維でも良く、その場合には、樹脂として好適にはアラミド繊維を用いることができる。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート20は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。熱伝導シート20は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
熱伝導シート20を炭素と樹脂とを備えるシートとする場合には、当該樹脂が熱伝導シート20の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、熱伝導シート20は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート20の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。熱伝導シート20は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。熱伝導シート20は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
熱伝導シート20は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート20の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート20は、好ましくは、グラファイトの帯状の板であり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート20は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02〜3mmが好ましく、0.03〜0.5mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート20の熱伝導率は、その厚さが増加するほど低下するため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
(3)クッション部材
クッション部材21の重要な機能は、変形容易性と回復力である。回復力は、クッション部材21の弾性変形性に依る。変形容易性は、熱源の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすいパッケージに収めるようなバッテリーセルの場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、クッション部材21の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。後述の応力緩和シート23は、クッション部材21の回復力を助ける機能をも有する。
クッション部材21は、スパイラル状に巻回される熱伝導シート20の筒内に備えられる筒状部材である。クッション部材21の長さ方向に形成されている貫通路22は、この実施形態では、クッション部材21の長さ方向に貫通している。ただし、貫通路22の長さ方向の両端の少なくとも一方を閉塞しても良い。当該両端を閉塞すると、貫通路22は、閉塞空間となる。
クッション部材21は、放熱部材8に接触する熱源が平坦でない場合でも、熱伝導シート20と熱源との接触を良好にする機能を有する。さらに、貫通路22は、クッション部材21の変形を容易にし、加えて放熱構造体1の軽量化に寄与する。クッション部材21は、熱源等からの熱伝導シート20に加わる荷重によって熱伝導シート20が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。クッション部材21は、熱伝導シート20に比べて弾性変形しやすく、熱源等からの押圧及びその開放による変形に起因して、割れや亀裂が入りにくい。このため、クッション部材21は、熱伝導シート20に亀裂が生じる事態を抑制することができる。この実施形態では、クッション部材21は、熱伝導シート20に比べて低熱伝導性の部材である。なお、後述の応力緩和シート23も、クッション部材21と同様、熱伝導シート20の破損を低減する保護部材として機能する。
クッション部材21は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材21は、熱伝導シート20を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッション部材21は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材21は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材21は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。さらに、クッション部材21の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。クッション部材21は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
(4)応力緩和シート
応力緩和シート23は、この実施形態では、クッション部材21の外側面を覆うと共に、スパイラル状の熱伝導シート20の内方に配置される筒状部材である。応力緩和シート23は、好ましくは、ポリエステルのシートである。ただし、ポリエステル以外の樹脂(例えば、ポリカーボネート)製のシートを応力緩和シート23として用いても良い。応力緩和シート23の厚さは、好適には、0.002〜0.2mm、さらに好適には、0.002〜0.05mmである。応力緩和シート23の材料として、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から成る。ただし、PET以外のポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などを用いることができる。
この実施形態では、応力緩和シート23とクッション部材21との間、および応力緩和シート23と熱伝導シート20との間には、接着剤24および接着剤25が介在する。ここでいう「接着剤」は、接着性を有する液状物若しくは半固体状物が硬化した後の接着層若しくは硬化層を意味する。接着剤24の両側の部材が互いに固定可能であれば、接着剤24は必ずしも要しない。同様に、接着剤25の両側の部材が互いに固定可能であれば、接着剤25は必ずしも要しない。
筒状の応力緩和シート23は、放熱部材8が熱源と冷却部位との間において扁平に潰れた際に、熱伝導シート20がクッション部材21の変形に伴って過度に潰れないようにする機能を有する。また、筒状の応力緩和シート23は、クッション部材21よりも高い弾性力によって、潰れた状態の放熱部材8への押圧が低下したときにクッション部材21が元の形状に回復するのを補助する。熱伝導シート20、応力緩和シート23およびクッション部材21から成る三層構造(ここでは、接着剤24,25の各層を除く。)は、好ましくは、硬度あるいは弾性係数の観点で傾斜材料を構成している。一方、応力緩和シート23の弾性係数は、クッション部材21の弾性係数と近い値にすることもできる。
(5)連結部材
連結部材の一例である糸7は、2以上の放熱部材8を連結して、放熱部材8の自由な動きを規制する部材である。糸7は、好ましくは、120℃程度の高温に耐え得る糸であって、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維、金属繊維等の繊維からなる撚糸で構成されることが好ましい。糸7は、放熱部材8が熱源等の加重を受けて扁平形状になっても、それを許容するだけの柔軟性あるいは輪の空間領域を備えるのが好ましい。2以上の放熱部材8は、この実施形態では、放熱部材8の貫通路22に糸7を到達するように縫って連結されている。糸7によって放熱部材8を縫って連結するには、手で縫っても、あるいはソーイングマシンを使って縫っても良い。糸7の縫い方は、特に限定されず、手縫い、本縫い、千鳥縫い、単環縫い、二重環縫い、縁かがり縫い、扁平縫い、安全縫い、オーバーロック等の如何なる縫い方でも良い。また、JIS L 0120の規定する表示記号によれば、好適な縫い方として、「101」、「209」、「301」、「304」、「401」、「406」、「407」、「410」、「501」、「502」、「503」、「504」、「505」、「509」、「512」、「514」、「602」および「605」の各種縫い目を構成する縫い方を例示できる。また、糸7の長さ方向に複数の輪をつくり、その輪の中に放熱部材8を通して、放熱部材8同士を連結しても良い。なお、糸7以外の連結部材を用いて、放熱部材8同士を連結、あるいは放熱部材8を枠部材10等の固定部材に固定しても良い。糸7以外の連結部材としては、一本の長尺部材の長さ方向に沿って配列される複数本の突出部を備えたものを例示できる。放熱部材8は、貫通路22に突出部を挿入して連結部材により連結可能である。
(6)熱伝導性オイル
熱伝導性オイルは、好ましくは、シリコーンオイルと、シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。熱伝導シート20は、微視的に、隙間(孔あるいは凹部)を有する。通常、当該隙間には空気が存在し、熱伝導性に悪影響を及ぼす可能性が有る。熱伝導性オイルは、その隙間を埋めて、空気に代わって存在することになり、熱伝導シート20の熱伝導性を向上させる機能を有する。
熱伝導性オイルは、熱伝導シート20の表面、少なくとも熱源等と熱伝導シート20とが接触する面に備えられている。本願において、熱伝導性オイルの「オイル」は、非水溶性の常温(20〜25℃の範囲の任意の温度)で液状若しくは半固形状の可燃物質をいう。「オイル」という文言に代え、「グリース」あるいは「ワックス」を用いることもできる。熱伝導性オイルは、熱源から熱伝導シート20に熱を伝える際に熱伝導の障害にならない性質のオイルである。熱伝導性オイルには、炭化水素系のオイル、シリコーンオイルを用いることができる。熱伝導性オイルは、好ましくは、シリコーンオイルと、シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。
シリコーンオイルは、好ましくは、シロキサン結合が2000以下の直鎖構造の分子から成る。シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルと、変性シリコーンオイルとに大別される。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルを例示できる。変性シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイルを例示できる。反応性シリコーンオイルは、例えば、アミノ変性タイプ、エポキシ変性タイプ、カルボキシ変性タイプ、カルビノール変性タイプ、メタクリル変性タイプ、メルカプト変性タイプ、フェノール変性タイプ等の各種シリコーンオイルを含む。非反応性シリコーンオイルは、ポリエーテル変性タイプ、メチルスチリル変性タイプ、アルキル変性タイプ、高級脂肪酸エステル変性タイプ、親水性特殊変性タイプ、高級脂肪酸含有タイプ、フッ素変性タイプ等の各種シリコーンオイルを含む。シリコーンオイルは、耐熱性、耐寒性、粘度安定性、熱伝導性に優れたオイルであるため、熱伝導シート20の表面に塗布して、熱源等と熱伝導シート20との間に介在させる熱伝導性オイルとして特に好適である。熱伝導性オイルは、好ましくは、油分以外に、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーを含む。金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ベリリウム、タングステンなどを例示できる。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、キュービック窒化ホウ素、ヘキサゴナル窒化ホウ素などを例示できる。炭素としては、ダイヤモンド、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブなどを例示できる。
熱伝導性オイルは、熱源と熱伝導シート20との間に介在する他、熱伝導シート20と冷却部位との間に介在する方が好ましい。熱伝導性オイルは、熱伝導シート20の全面に塗布されていても、熱伝導シート20の一部分に塗布されていても良い。熱伝導性オイルを熱伝導シート20に存在させる方法は、特に制約されることなく、スプレーを用いた噴霧、刷毛等を用いた塗布、熱伝導性オイル中への熱伝導シート20の浸漬など、如何なる方法によるものでも良い。なお、熱伝導性オイルは、放熱構造体1にとって必須の構成ではなく、好適に備えることのできる追加的な構成である。これは、第2実施形態以降でも同様である。
(7)固定部材
枠部材10に代表される固定部材の材料には、特に制約はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂あるいは電子線硬化性樹脂を好適に用いることができる。固定部材は、複数の放熱部材8を固定するために用いられ、熱源と、冷却部材若しくは冷却部材に近接する冷却部位との間に放熱構造体1を配置しやすくする機能を持つ。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る放熱構造体について説明する。第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、上述の放熱構造体1と同様、2以上の放熱部材8を備える。放熱構造体1aが放熱構造体1と異なる主な部分は、固定部材の形態である。放熱構造体1aの固定部材は、放熱部材8の長さ方向の両端を固定する2本のバー10aである。放熱部材8の両端は、糸7を用いてバー10aに固定されている。糸7は、放熱構造体1とは異なり、放熱部材8の長さ方向の略中間部の固定には用いられていない。
次に、本発明の上記各実施形態に係る放熱構造体の製造方法について説明する。
図4は、放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。図4では、放熱部材の実際の長さより短く描いている。図5以後の図でも同様である。
まず、中空のクッション部材21を成形する。次に、クッション部材21の外側面に応力緩和シート23を巻く。この際、クッション部材21の外側面および応力緩和シート23の内側の面の少なくとも1つの面に、未硬化状態の接着剤を塗布するのが好ましい。次に、帯状の熱伝導シート20を、応力緩和シート23の外側面上にスパイラル状に巻く。この際、応力緩和シート23の外側面および熱伝導シート20の内側の面の少なくとも1つの面に、未硬化状態の接着剤を塗布するのが好ましい。
クッション部材21の外側面に応力緩和シート23を巻く際に未硬化状態の接着剤を用いない製造方法としては、以下のような方法を例示できる。例えば、クッション部材21が完全には硬化していない未硬化状態で、応力緩和シート23をクッション部材21の外側面に巻く。その後、加温により、クッション部材21を完全に硬化させる。
帯状の熱伝導シート20を、応力緩和シート23の外側面上にスパイラル状に巻いた後、熱伝導シート20がクッション部材21の両端からはみ出した部分があれば、そのはみ出した部分をカット若しくはクッション部材21ごとカットする。最後に、熱伝導シート20の表面に、熱伝導性オイルを塗布する。
熱伝導シート20のクッション部材21の両端からはみ出した部分をカットするカット工程および熱伝導性オイルを塗布する塗布工程は、上述のタイミングで行うことに限定されない。例えば、カット工程は、少なくとも応力緩和シート23の外側面に熱伝導シート20を巻いた後であれば、いつ行ってもよい。
放熱構造体1,1aは、上述の製造方法により製造された2以上の放熱部材8を、熱伝導シート20の巻回しながら進行する方向(放熱部材8の長さ方向)と直交する方向に並べた状態で、糸7で連結し、固定部材に糸7で縫い付けることにより製造される。より具体的には、放熱構造体1,1aは、複数の放熱部材8を並べた状態で、糸7を用いて手縫い若しくはソーイングマシンで縫い付けることにより連結される。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る放熱構造体およびその製造方法について説明する。上述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
第3実施形態に係る放熱構造体は、放熱部材8の構成を、第1および第2実施形態に係る放熱構造体1,1aと異にする。第3実施形態に係る放熱構造体において、放熱部材8を構成するクッション部材21は、筒状の部材である。ただし、クッション部材21を柱状に構成しても良い。また、応力緩和シート23および熱伝導シート20は、帯状の積層シート26を成し、クッション部材21の外側面をスパイラル状に巻きながらクッション部材21の長さ方向に進行するように覆っている。熱伝導シート20は、放熱部材8の最外層をなす。
図5は、本発明の第3実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す。
まず、中空のクッション部材21を成形する。次に、帯状の積層シート26を製造する。帯状の積層シート26の製造において、熱伝導シート20と応力緩和シート23との間に接着剤を介在させても良い。次に、応力緩和シート23側がクッション部材21の外側面に向くように、帯状の積層シート26を、クッション部材21の外側面に巻いていく。この際、クッション部材21の外側面および帯状の積層シート26の内側の面の少なくとも1つの面に、未硬化状態の接着剤を塗布するのが好ましい。
クッション部材21の外側面に帯状の積層シート26を巻く際に未硬化状態の接着剤を用いない製造方法としては、以下のような方法を例示できる。例えば、クッション部材21が完全には硬化していない未硬化状態で、帯状の積層シート26をクッション部材21の外側面に巻く。その後、加温により、クッション部材21を完全に硬化させる。
帯状の積層シート26を、クッション部材21の外側面上にスパイラル状に巻いた後、積層シート26がクッション部材21の両端からはみ出した部分があれば、そのはみ出した部分をカット若しくはクッション部材21ごとカットする。最後に、熱伝導シート20の表面に、熱伝導性オイルを塗布する。
積層シート26のクッション部材21の両端からはみ出した部分をカットするカット工程および熱伝導性オイルを塗布する塗布工程は、上述のタイミングで行うことに限定されない。例えば、カット工程は、少なくともクッション部材21の外側面に積層シート26を巻いた後であれば、いつ行ってもよい。放熱部材8を固定部材に固定する方法は、上述の各実施形態と同様である。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る放熱構造体およびその製造方法について説明する。上述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
第4実施形態に係る放熱構造体は、放熱部材8の構成を、第1および第2実施形態に係る放熱構造体1,1aと異にする。第4実施形態に係る放熱構造体において、放熱部材8aは、クッション部材21、応力緩和シート23および熱伝導シート20を積層させた帯状の積層シート27がスパイラル状に巻回しながら進行する形態を有する。熱伝導シート20は、放熱部材8aの最外層をなし、クッション部材21は放熱部材8aの最内層をなす。
図6は、本発明の第4実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す。
まず、帯状の積層シート27を製造する。帯状の積層シート27の製造において、熱伝導シート20と応力緩和シート23との間、および/または応力緩和シート23とクッション部材21との間に接着剤を介在させても良い。次に、帯状の積層シート27を、スパイラル状に巻回しながら一方向に進行させて、長尺状の放熱部材8aを製造する。
クッション部材21と応力緩和シート23との間に接着剤を介在させない製造方法としては、以下のような方法を例示できる。例えば、クッション部材21が完全には硬化していない未硬化状態で、応力緩和シート23をクッション部材21の上に貼る。その後、加温により、クッション部材21を完全に硬化させる。
帯状の積層シート27をスパイラル状に巻回した後、積層シート27の両端をカットして形状を整えても良い。最後に、熱伝導シート20の表面に、熱伝導性オイルを塗布する。放熱部材8aを固定部材に固定する方法は、上述の各実施形態と同様である。放熱部材8aは、その長さ方向に貫通する貫通路22を備えている。貫通路22は、上述の各実施形態における放熱部材8と異なり、放熱部材8aの外側面方向にも貫通している。放熱部材8aは、その全体がスパイラル状であるため、上述の放熱部材8に比べて、放熱部材8aの長さ方向に伸縮容易である。
(変形例)
図7は、変形例1,2に係る放熱構造体の放熱部材の斜視図(7A,7B)を示す。
(7A)に示す変形例1に係る放熱構造体を構成する放熱部材8bは、熱源からの熱を伝えるための筒状の熱伝導シート20bと、熱伝導シート20bの内方に備えられるクッション部材21と、熱伝導シート20bとクッション部材21との間に配置される応力緩和シート23と、を備える。クッション部材21は、筒状の部材であって、貫通路22を備える。熱伝導シート20bおよび応力緩和シート23は、ともに筒状の形態を有する。このように、放熱構造体を構成する放熱部材8bにおいて、熱伝導シート20bは、スパイラル状に巻回されていなくとも良い。
また、(7B)に示す変形例2に係る放熱構造体を構成する放熱部材8cは、上記の放熱部材8bと異なり、貫通路22を有していない。すなわち、クッション部材21は、長尺の柱状部材である。このように、放熱構造体を構成する放熱部材8cにおいて、熱伝導シート20bがスパイラル状に巻回されておらず、かつクッション部材21が柱状部材であっても良い。また、熱伝導シート20bは、応力緩和シート23の外側面を完全に覆わず、長さ方向にスリットの入った断面U字状のシートでも良い。さらに、クッション部材21および/または応力緩和シート23も、長さ方向にスリットの入った断面U字状のシートでも良い。ここでいう「断面」は、放熱部材の長さ方向と直角に切断した面を意味する。「U字状」は、閉じた環状あるいは枠状ではなく、環あるいは枠の一部を開口した形状を意味する。
2.バッテリー
次に、本発明の実施形態に係るバッテリーについて説明する。
図8は、本発明の実施形態に係るバッテリーの縦断面図(8A)および熱源の一例であるバッテリーセルの一部を放熱構造体上に載せる前後の縦断面図(8B)をそれぞれ示す。
この実施形態において、バッテリー30は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(単に、セルと称しても良い。)40を備える。バッテリー30は、一方に開口する有底型の筐体31を備える。筐体31は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル40は、筐体31の内部34に配置される。バッテリーセル40の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル40は、好ましくは、筐体31内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体31の底部32には、冷却部材35の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ33が備えられている。冷却部材は、冷却媒体あるいは冷却剤と称しても良い。
バッテリーセル40は、底部32との間に、放熱構造体1を挟むようにして筐体31内に配置されている。このような構造のバッテリー30において、バッテリーセル40は、放熱構造体1を通じて筐体31に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。このように、バッテリー30は、冷却部材35を流す構造を持つ筐体31内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル40を備え、バッテリーセル40と筐体31(ここでは、底部32)との間に放熱構造体1を備える。なお、冷却部材35は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材35は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。また、放熱構造体1は、11個のバッテリーセル40を載置しているが、バッテリーセル40の個数は11個に限定されない。また、放熱部材8の個数についても、特に限定されない。
放熱構造体1を構成する複数の放熱部材8は、バッテリーセル40を載置していない状態では略円筒形状を有しているが、バッテリーセル40を載置するとその重さで圧縮され扁平の形態(断面楕円形状)になる。なお、本願では、「縦断面」とは、バッテリー30の筐体31の内部34における上方開口面から底部32へと垂直に切断する方向の断面を意味する。
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
図9は、放熱構造体の上に、バッテリーセルの側面を接触させるように横置きにしたときの断面図、その一部拡大図および充放電時にバッテリーセルが膨張した際の一部断面図をそれぞれ示す。
先述の各実施形態では、バッテリーセル40を縦にしてその下端に放熱構造体1を接触せしめている状況について説明したが、バッテリーセル40の配置形態は、これに限定されない。図9に示すように、バッテリーセル40の側面を放熱構造体1の各放熱部材8,8a,8b,8cに接触させるように、バッテリーセル40を配置しても良い。バッテリーセル40は、充電および放電の際に温度上昇する。バッテリーセル40の容器自体が柔軟性に富む材料にて形成されていると、バッテリーセル40の特に側面が膨らむ可能性がある。そのような場合でも、放熱構造体1を構成している各放熱部材8,8a,8b,8cがバッテリーセル40の外面の形状に合わせて変形できるので、充放電時にも放熱性を高く維持できる。
例えば、熱源は、バッテリーセル40のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。放熱構造体1は、バッテリー30以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
また、放熱構造体1,1aを構成する複数の放熱部材8,8a,8b,8cは、その長さ方向の一方の端部のみが固定部材(例えば、バー10a)に固定されていても良い。また、放熱部材8,8a,8b,8cは、枠部材10を構成する4つの辺と糸7により固定されても良い。また、枠部材10は、平面視にて四角い枠形状の部材ではなく、楕円、円、三角若しくは五角以上の多角形の外形であってその内側に開口部分を有していても良い。また、枠部材10のバッテリーセル40側の面を、放熱部材8,8a,8b,8cのバッテリーセル40側の面と同じ位置にするように、枠部材10と放熱部材8,8a,8b,8cとを固定しても良い。さらに、放熱部材8,8a,8b,8cの高さ方向(バッテリーセル40から底部32に向かう方向)の中位置に枠部材10を固定しても良い。また、放熱構造体1,1aは、枠部材10あるいはバー10aのような固定部材を備えていなくとも良い。
バッテリー30は、放熱部材8,8a,8b,8cのいずれを備えた放熱構造体を配置したものでも良い。また、放熱構造体は、放熱部材8,8a,8b,8cの内の2種類以上を含むように構成されても良い。放熱部材8,8a,8b,8cの形状は、円筒あるいは円柱以外に、楕円筒、楕円柱、三角以上の角筒若しくは角柱のような他の形状でも良い。
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
1,1a・・・放熱構造体、7・・・糸(連結部材の一例)、8,8a,8b,8c・・・放熱部材、10・・・枠部材(固定部材の一例)、10a・・・バー(固定部材の一例)、20,20b・・・熱伝導シート、21・・・クッション部材、22・・・貫通路、23・・・応力緩和シート、24,25・・・接着剤、26,27・・・積層シート、30・・・バッテリー、31・・・筐体、35・・・冷却部材、40・・・バッテリーセル(熱源の一例)。

Claims (13)

  1. 熱源からの放熱を高める1または2以上の放熱部材を備え、
    前記放熱部材は、
    前記熱源からの熱を伝えるための筒状、断面U字状あるいはスパイラル状の熱伝導シートと、
    前記熱伝導シートの内方に備えられ、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材と、
    前記クッション部材の変形に伴い前記熱伝導シートが過度に変形しないように前記熱伝導シートに加わる応力を緩和させるシートであって、前記熱伝導シートと前記クッション部材との間に配置される応力緩和シートと、
    を備えることを特徴とする放熱構造体。
  2. 前記応力緩和シートと前記熱伝導シートとの間、および前記応力緩和シートと前記クッション部材との間の少なくともいずれか1つの間に接着剤を介在させている請求項1に記載の放熱構造体。
  3. 前記クッション部材は、柱状若しくは筒状の部材であって、
    前記応力緩和シートは、前記クッション部材の外側面を覆う筒状の部材であって、
    前記熱伝導シートは、前記応力緩和シートの外側面を覆っている請求項1または2に記載の放熱構造体。
  4. 前記クッション部材は、柱状若しくは筒状の部材であって、
    前記応力緩和シートおよび前記熱伝導シートは、帯状の積層シートを成し、前記クッション部材の外側面をスパイラル状に巻きながら前記クッション部材の長さ方向に進行するように覆っている請求項1または2に記載の放熱構造体。
  5. 前記放熱部材は、前記クッション部材、前記応力緩和シートおよび前記熱伝導シートを積層させた帯状の積層シートがスパイラル状に巻回しながら進行する形態を有する請求項1または2に記載の放熱構造体。
  6. 前記応力緩和シートは、ポリエステルのシートである請求項1から5のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  7. 前記放熱部材を2以上備え、
    前記放熱部材を、その長さ方向と直交する方向に並べた状態で固定可能な部材であって、前記放熱部材の前記長さ方向の少なくとも一端部を固定する固定部材を、さらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  8. 前記固定部材は、前記放熱部材の長さ方向と直交する方向に並んだ2以上の前記放熱部材を囲むように形成される請求項7に記載の放熱構造体。
  9. 前記固定部材は、その厚さが、前記熱源からの押圧により変形した前記放熱部材の厚さより薄くなるよう形成される請求項7または8に記載の放熱構造体。
  10. 前記放熱部材を2以上備え、
    2以上の前記放熱部材を前記長さ方向と直交する方向に並べた状態で連結する連結部材を備え、
    前記連結部材は、糸で構成される請求項1から9のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  11. 前記熱伝導シートの表面に、当該表面に接触する熱源から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する請求項1から10のいずれか1項に記載の放熱構造体。
  12. 前記熱伝導性オイルは、シリコーンオイルと、前記シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む請求項11に記載の放熱構造体。
  13. 冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、前記バッテリーセルと前記筐体との間に、請求項1から12のいずれか1項に記載の放熱構造体を備えるバッテリー。

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