JP2020190072A - スパンボンド不織布およびそれを用いた成型体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布、およびそのスパンボンド不織布を用いて得られる成型体の製造方法を提供する。【解決手段】130℃雰囲気下で150%伸長時の伸長方向長さに対する、前記伸長後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率が5%以下であり、固有粘度が0.3〜0.7dl/gである樹脂を90質量%以上の含量で含み、且つ前記樹脂よりもガラス転移点温度が高い配向阻害剤を0.02〜8質量%の含量で含むことを特徴とするスパンボンド不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、熱成型用途に適したスパンボンド不織布およびそれを用いた成型体の製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)スパンボンド不織布は、力学的物性が良好で、通気性、通水性もあり、多くの用途で使用されている。このようなスパンボンド不織布を成型体の素材として用いる場合、広い温度域で凹凸等の型に追従することができ、様々な形状に成型できる特性等が求められている。
そこで、スパンボンド不織布の成型性を向上させるための技術が種々提案されている。
例えば、スパンボンド不織布の熱成型性を向上したものとして、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートにスチレン系共重合体を少量添加して、紡糸して得られたウェブをエンボス加工する技術が開示されている。この技術によれば、成型性と意匠性に優れた熱圧着長繊維不織布が得られることが示されている。
特許文献2には、ポリスチレン系ポリマー等を複合成分とした複合繊維からなるスパンボンドウェブを、ニードルパンチ処理やウォータージェット処理等の機械交絡処理することにより、伸度を向上させる技術が開示されている。この技術によれば、伸長性と生産性に優れた不織布が得られることが示されている。
特開2014−91875号公報 特開平11−302959号公報
上述の通り、これまでにもスパンボンド不織布の成型性を向上させる技術は種々提案されている。しかし、熱成型に用いる不織布には、上記特性の他にも様々な特性が求められている。例えば、PET等を主成分とするスパンボンド不織布は、熱成型後に収縮するため、成型体の形状によっては所望の形状が得られ難い場合があり、また、所望の形状を得るために収縮率を考慮して熱成型を行うと手間や誤差の問題がある。そのために熱成型後の収縮の抑制が求められているが、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布は未だ提供されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布、およびそのスパンボンド不織布を用いて得られる成型体の製造方法を提供することにある。
本発明に係るスパンボンド不織布は、130℃雰囲気下で150%伸長時の伸長方向長さに対する、上記伸長後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率が5%以下であることを特徴とする。該構成により、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布を得ることができる。
本発明の上記スパンボンド不織布は、ポリエチレンテレフタレートを含有することが好ましい。
本発明の上記スパンボンド不織布は、ガラス転移点温度が100〜160℃である熱可塑性ポリスチレン系共重合体を含有することが好ましい。
本発明の上記スパンボンド不織布は、上記熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量が0.02〜8質量%であることが好ましい。
本発明の上記スパンボンド不織布は、130℃で1分加熱後の破断伸度が250%以上であることが好ましい。
本発明の上記スパンボンド不織布は、上記不織布の少なくとも片面が、耐磨耗等級が3級以上であることが好ましい。
本発明の上記スパンボンド不織布は、上記不織布の少なくとも片面が、平滑であることが好ましい。
本発明には、上記スパンボンド不織布を熱成型する成型体の製造方法も包含される。
本発明によれば、上記構成により、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布が得られる。更に、上記スパンボンド不織布を用いて熱成型することにより成型体を安定して製造することができる。
本発明者らは、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布を得るために、鋭意検討した。その結果、130℃雰囲気下で150%(2.5倍)伸長時の伸長方向長さに対する、伸長後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率が5%以下のスパンボンド不織布であれば所期の目的が達性できることを見出した。更に、上記スパンボンド不織布を用いて熱成型することにより、安定して成型体が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成要件を説明する前に、まず本発明に到達した経緯を説明する。
本発明者らは、熱成型および熱成型後の意匠性に優れた熱圧着不織布として、高紡糸速度で得られた配向度の高い繊維を用いて得られた不織布を先に出願している(特許文献1)。一般に、高紡糸速度で紡糸した繊維は配向度が高くなり、伸長時応力が高くなる問題がある。特許文献1では、ポリエチレンテレフタレートよりもガラス転移点温度が高いスチレン系共重合体を添加することで、溶融紡糸の冷却の際に、スチレン系共重合体が先に固化して、配向を阻害し結晶性を乱すことによって上記問題を解決している。
一方、低紡糸速度で紡糸すると繊維の配向度が低くなり、伸長時応力を低減できるが、配向度の低い繊維に対して、スパンボンド不織布の製造時に通常行われるエンボス加工を行うと以下の問題が生じる。例えば、ガラス転移点温度以下でエンボス加工した場合、繊維同士の固定が弱くなり、低応力でシートが破断する。また、ガラス転移点温度と結晶化温度との間で加工した場合は、加工熱による収縮によって皺が発生する問題がある。また、結晶化温度以上でエンボス加工した場合、加工温度による結晶化促進で、皺のない繊維同士の接着が強固なシートが得られるが、熱成型時の破断伸度は低くなる。これは、エンボス加工の際に接点に応力が集中し、破断し易くなることが原因と推測される。このように低紡糸速度で紡糸した繊維を用いて、熱成型に好適なスパンボンド不織布を得ることは困難であった。
また、低紡糸速度で紡糸する場合、配向度の低い繊維が得られるため、伸長時応力を低減するために配向を阻害する必要はなく、不必要に配向阻害剤を添加すると、ポリエチレンテレフタレートと阻害剤との延伸性の違いにより、繊維が破断するおそれがあった。そのために従来、低紡糸速度で紡糸する場合は、配向阻害剤を積極的に添加することは無かった。しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、配向を阻害する熱可塑性スチレン系共重合体をPETに添加し、低紡糸速度で紡糸して、得られた繊維ウェブに対して仮圧着を行った後に、面拘束しながら本圧着すれば、驚くべきことに、熱成型後に収縮し難いスパンボンド不織布が得られることを見出した。
以下、本発明のスパンボンド不織布について詳細に説明する。
本発明のスパンボンド不織布は、130℃雰囲気下で150%伸長時の伸長方向長さに対する、伸長後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率が5%以下である。ここで、伸長方向長さとは、後記する実施例に記載の方法で測定される測定線の長さを意味する。なお、150%伸長時とは、伸長前の測定線の長さが2.5倍になった時を意味する。また、伸長方向長さの収縮率とは、下記式で求められる収縮率を意味する。
収縮率(%)=100×(150%伸長時の測定線の長さ−伸長終了後、20℃雰囲気下で30分放置後の測定線の長さ)/(150%伸長時の測定線の長さ)
伸長方向長さの収縮率は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、更により好ましくは1%以下である。一方、伸長方向長さの収縮率の下限は、成型後の歪みを抑制するため、好ましくは0.4%である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする樹脂であることが好ましい。
ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂より機械的強度、耐熱性、保型性等に優れている。このような効果を有効に発揮させるために、ポリエチレンテレフタレートの含有量は、不織布全体を100質量%としたとき、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは94質量%以上である。一方、ポリエチレンテレフタレートの含有量は、熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量を考慮すると、好ましくは99.8質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは98質量%以下である。なお、不織布全体を100質量%としたとき、10質量%以下であれば、ポリエチレンテレフタレート以外のポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルがブレンドされていてもよい。
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、好ましくは0.3〜0.7dl/gである。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度を0.3dl/g以上とすることにより、樹脂が熱劣化しにくくなり、スパンボンド不織布の耐久性を向上することができる。そのためにポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.4dl/g以上である。一方、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度を0.7dl/g以下とすることにより、熱成型後に収縮し難くなる。また、固有粘度が0.7dl/gを超えると、スパンボンド不織布の熱成型時の応力が高くなり、更に耐磨耗性が低下し易くなる。そのためにポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.7dl/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.65dl/g以下、更に好ましくは0.6dl/g以下である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、ガラス転移点温度が100〜160℃である熱可塑性ポリスチレン系共重合体を含有することが好ましい。更に熱可塑性ポリスチレン系共重合体は、ポリエチレンテレフタレートに非相溶であることが好ましい。このような熱可塑性ポリスチレン系共重合体を添加することにより、熱成型後の収縮を抑制し易くすることができる。また、上述のとおりPETよりガラス転移点温度が高いことにより、配向を阻害し、結晶性を乱すことによって、熱成型時の破断伸度が高く、伸長時応力が低い繊維が得られる。そのために熱可塑性ポリスチレン系共重合体のガラス転移点温度は、好ましくは100℃以上である。より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上である。一方、ガラス転移点温度は、紡糸生産性を考慮すると好ましくは160℃以下である。より好ましくは150℃以下である。ガラス転移点温度は、JIS K7122(1987)に従って、20℃/分の昇温速度で測定して求められる値である。
熱可塑性ポリスチレン共重合体は、例えば、ポリスチレン、スチレン・共役ジエンブロック共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、またはスチレン・メタクリル酸エステル共重合体が好ましい。このうち、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、またはスチレン・メタクリル酸エステル共重合体がより好ましく、スチレン・メタクリル酸エステル共重合体が更に好ましい。スチレン・メタクリル酸エステル共重合体として、例えばスチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体が挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて含有しても良い。市販品では、Rohm GmbH&Co.K
GのPLEXIGLAS HW55が挙げられ、少量の添加量で優れた効果を発揮するため特に好ましい。
熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量は、不織布全体を100質量%としたとき、好ましくは0.02〜8質量%である。0.02質量%以上とすることにより、上記添加の効果が得られる。そのために熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量は好ましくは0.02質量%以上である。より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更により好ましくは2質量%以上、最も好ましくは4質量%以上である。一方、熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量が8質量%を超えるとポリエチレンテレフタレートと熱可塑性ポリスチレン系共重合体との延伸性の違いにより、繊維が破断し、操業性が悪化する。そのために、熱可塑性ポリスチレン系共重合体の含有量は好ましくは8質量%以下である。より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の繊維径は、好ましくは5〜80μmである。スパンボンド不織布の熱成型時には繊維径が細くなるが、繊維径を5μm以上とすることにより、熱成型後に収縮し難くなる。更に、繊維径を5μm以上とすることにより、成型体が外力で変化しにくく、成型体の形状が加熱等によって収縮変形しない性質、すなわち成型後の保型性を向上することができる。そのために繊維径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは12μm以上、更により好ましくは20μm以上、最も好ましくは40μm以上である。一方、繊維径を80μm以下とすることにより、スパンボンド不織布の繊維間隔が大きくなり過ぎず、通気性、通液性を好適にすることができるため、様々な用途に用いることができる。そのために繊維径は、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは60μm以下である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、好ましくは機械的交絡処理が施されていない長繊維である。不織布が短繊維で構成されると、各繊維同士のすべりにより、局所的な変型となり、熱成型後の保型性が劣化するが、長繊維で構成されると、熱成型時の変型が不織布全体に影響することにより、熱成型後の保型性を向上することができる。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の複屈折率(Δn)は、好ましくは0.10以下である。複屈折率(Δn)が低いほど、配向結晶化度が低くなり、熱成型時の伸長時応力が低減し、破断伸度が高くなるため、熱成型性が向上する。そのために、複屈折率(Δn)は、好ましくは0.10以下、より好ましくは0.07以下、更に好ましくは0.05以下である。一方、複屈折率(Δn)は、繊維分散性を向上する観点より、好ましくは0.003以上である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の熱圧着前の複屈折率(Δn)は、好ましくは0.02以下である。熱圧着前の複屈折率(Δn)が、0.02を超えると、熱圧着工程での一体化が弱く、不織布が低応力で破断し易くなり、熱成型時の破断伸度が低くなる。そのために、熱圧着前の複屈折率(Δn)は、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下である。一方、熱圧着前の複屈折率(Δn)は、低温で熱圧着し易くする観点より、好ましくは0.003以上である。
本発明のスパンボンド不織布の熱成型後の保型性、および熱成型性を向上させるためには、熱成型時の伸長時応力を低く、破断伸度を高くすることが好ましい。具体的には、130℃で1分加熱後の破断伸度が250%(3.5倍)以上であり、加熱後の20%(1.2倍)伸張時応力が目付:200g/m換算で40N/5cm以下であることが好ましい。
130℃で1分加熱後の破断伸度が250%未満である場合、深絞り成型や複雑な成型加工に追従できない場合がある。更に、熱成型後の保型性が低下する。そのために、上記破断伸度は、好ましくは250%以上である。上記破断伸度は、より好ましくは260%以上、更に好ましくは280%以上、更により好ましくは300%以上である。一方、上記破断伸度は、深絞り成型での追従を考慮すると、好ましくは500%以下、より好ましくは450%以下である。
130℃で1分加熱後の20%伸張時応力は目付:200g/m換算で40N/5cm以下であることが好ましい。上記伸張時応力を目付:200g/m換算で、好ましくは40N/5cm以下とすることにより、熱成型時の型追従性を向上することができる。また、不織布は熱成型後、再加熱されたときに、熱成型時の応力履歴が収縮力として発現するため、熱成型時の応力が高い不織布は、熱成型後の保型性が低下し易くなる。上記伸張時応力を目付:200g/m換算で40N/5cm以下とすることにより、応力履歴が少なくなり、熱成型後の保型性を向上することができる。また、熱成型加工時の圧力や温度を低く設定することができ、省エネルギーに貢献できる。更に、熱成型加工時の温度を低くすることにより、成型後の冷却時間を短縮することができ、成型サイクルタイムを短縮することができ、生産性を向上することができる。上記20%伸張時応力は、目付:200g/m換算で、より好ましくは39N/5cm以下、更に好ましくは38N/5cm以下、更により好ましくは37N/5cm以下、最も好ましくは36N/5cm以下である。一方、上記20%伸張時応力の下限は特に限定されないが、成型後の皺の発生を抑制し易くする観点より、目付:200g/m換算で、好ましくは20N/5cmである。
本発明のスパンボンド不織布は、少なくとも片面は、平滑で耐磨耗等級が好ましくは3級以上である。耐磨耗等級が3級未満の場合、工程通過時に毛羽立ちして工程通過性を阻害し、更に、製品取り扱い時に毛羽立ちして印刷特性を低下させて品位を低下させる。そのために、耐磨耗等級は、好ましくは3級以上、より好ましくは4級以上であり、最も好ましくは5級である。
本発明のスパンボンド不織布の目付は、20〜500g/mであることが好ましい。目付けが20g/m以上であると繊維分散し易くなる。そのために、目付けは、好ましくは20g/m以上、より好ましくは80g/m以上、更に好ましくは150g/m以上である。一方、目付けが500g/m以下であると成型加工し易くなる。そのために、目付けは、好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下、更に好ましくは300g/m以下である。
本発明のスパンボンド不織布を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートと熱可塑性ポリスチレン系共重合体からなるものであっても良いが、物性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤などの改質剤を添加しても良い。
本発明のスパンボンド不織布は、好ましくは面拘束スパンボンド不織布である。面拘束とは、繊維ウェブを厚さ方向に面状に挟んで、面状に圧力をかけることである。面拘束は、例えば、フラットロールと、フェルトベルト、ゴムベルト、スチールベルト等のシート状体によって、繊維ウェブのシート全面をプレス処理することにより行うことができる。そして、本発明では、仮圧着後の繊維ウェブを、面拘束しながら本圧着(熱セット)を行うが、これは、フラットロールと彫刻ロール、又は彫刻ロール同士で圧着を行う部分圧着や、フラットロール同士で線的(線状)に圧着を行う面圧着(いわゆるカレンダー加工)とは異なる。部分圧着の場合は、繊維は部分的に固定されており、圧着部分に変型時の応力が集中して、高い破断伸度が得られにくくなる。更に、部分圧着は、部分的に熱成型圧着部分が存在するので表面が平滑でなく、印刷特性が低下する。また、面圧着の場合は、全体が過剰に圧着されているため、不織布の変形が困難であり、破断伸度が低下する。一方、面拘束しながら圧着を行えば、繊維ウェブの面内方向の熱収縮を抑制することができる。その結果、得られた面拘束スパンボンド不織布は、シート全面で繊維が互いに固定化されており、熱成型後の収縮を抑制し易くすることができる。更に、熱成型時の応力が部分的に集中しにくく、全体に伝播されて、不織布の変形が全面に影響するため、破断伸度に優れる。更に、面拘束スパンボンド不織布は、ニードルパンチ加工や水流交絡加工等の機械的交絡加工が施された不織布よりも、表面の毛羽立ちが少なく、耐磨耗性に優れる。そして、フェルトカレンダー、ゴムベルトカレンダー、スチールベルトカレンダー等を用いて面拘束しながら圧着することにより、特にフラットロールと接する面は、平滑で、耐磨耗性、印刷特性に優れたものになる。
次に、本発明のスパンボンド不織布の製造方法について説明する。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、紡糸速度1900m/分以下で紡糸する工程、および紡糸後に得られた繊維ウェブを仮圧着した後に、面拘束しながら本圧着する工程を含むものである。
以下、本発明のスパンボンド不織布の製造方法について具体的に説明する。
まず、常法に従って所定量のポリエチレンテレフタレートとポリスチレン系共重合体をブレンド乾燥した後に、溶融紡糸機にて低紡糸速度で紡糸を行う。
本発明では、紡糸速度を1900m/分以下に低減することが重要である。紡糸速度が1900m/分を超えると、得られた不織布は熱成型後に収縮し易くなる。更に、配向結晶化度が高くなって、熱成型時の伸長時応力が高くなり、破断伸度が低くなる。そのために、紡糸速度は、1900m/分以下、好ましくは1800m/分以下、より好ましくは1700m/分以下、更に好ましくは1500m/分以下である。紡糸速度の下限は、特に限定されないが生産性などを考慮すると好ましくは500m/分である。
紡糸速度V(m/分)は、単繊維の繊度T(dtex)と設定の単孔吐出量Q(g/分)から下記式に基づき求めることができる。
V=(10000×Q)/T
単孔吐出量Qは、好ましくは0.2〜5g/分である。単孔吐出量Qを上記範囲に制御することにより、紡糸速度を所望の範囲に制御し易くなる。より好ましくは0.5〜4g/分である。
その他の紡糸条件は、特に限定されないが、例えば、オリフィス径0.1〜0.5mmの紡糸口金より紡出し、エジェクタに0.3〜1.5kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、延伸することが好ましい。オリフィス径を上記範囲に制御することにより、所望の繊維径が得られ易くなる。また、乾燥エアの供給圧力を上記範囲に制御することにより、紡糸速度を所望の範囲に制御し易くなると共に、適度に乾燥させることができる。
次いで、吐出糸条を冷却し、下方のコンベア上へ繊維を開繊させつつ捕集して、繊維ウェブ(長繊維フリース)を得れば良い。
得られた繊維ウェブに対して、通常のスパンボンド不織布の製造方法では、フラットロールと彫刻ロールや、彫刻ロール同士の部分圧着を行うエンボス加工等が施される。しかし、本発明のように低紡糸速度で紡糸して得られた繊維ウェブは、低配向であり収縮しやすいため、エンボス加工等を施すと幅入りや皺などの問題が生じる。そのため、本発明では、以下の通り、仮圧着を行って、その後に面拘束しながら本圧着を行うことにより、幅入りや皺等の発生を抑制し易くすることができる。更に、熱成型後の収縮を低減することができる。
仮圧着は、繊維ウェブを、厚さ方向に圧力をかけて圧着することである。仮圧着は、本圧着における面拘束を行い易くするために行うものであり、例えば、2つのフラットロールからなる1対の仮熱圧着ロールを用い、それぞれの表面温度を60〜140℃とし、押し圧を5〜30kN/mとして熱圧着加工を行うことが好ましい。フラットロールの表面温度と押し圧を上記範囲に制御することにより、適度に仮圧着することができ、仮圧着後に行われる面拘束を行い易くなる。フラットロールの表面温度は、より好ましくは70〜120℃である。押し圧は、より好ましくは7〜20kN/mである。
更に、本圧着し易くする目的で、仮圧着後の繊維ウェブに対して、含水率が1〜30質量%となるように水をスプレーにより吹き付ける含水加工を実施してもよい。
次に本圧着を行う。本圧着は、仮圧着後の繊維ウェブを、面拘束しながら、熱セットを行って圧着することである。面拘束は、上述の通り、フラットロールと、フェルトベルト、ゴムベルト、スチールベルト等のシート状体を用いて行うことが好ましい。このうち、フェルトベルトは、表面が繊維状であり繊維ウェブを面内方向に拘束し易いため、特に好ましい。繊維ウェブがシート状体に拘束されていることにより、幅入りや皺などの問題が解決される。更に、面拘束しながら本圧着を行えば、各繊維がシート全面で固定化されるため、熱成型後の収縮を抑制し易くなると共に、破断伸度も向上して、不織布の表面が平滑になり、高い耐磨耗性や印刷特性を有するものになる。
熱セット、および面拘束は、ロールの表面温度を120〜180℃として、押し圧:0.1〜4kgf/cm、加工時間:3〜30秒、加工速度:1〜30m/分の条件で行うことが好ましい。
ロールの表面温度を好ましくは120℃以上とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは130℃以上である。一方、ロールの表面温度を好ましくは180℃以下とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは160℃以下である。
押し圧を好ましくは0.1kgf/cm以上とすることにより、面拘束し易くなる。より好ましくは0.3kgf/cm以上、更に好ましくは0.5kgf/cm以上、更により好ましくは1.0kgf/cm以上、最も好ましくは2.0kgf/cm以上である。一方、押し圧を好ましくは4kgf/cm以下とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは3.5kgf/cm以下、更に好ましくは3kgf/cm以下である。
加工時間を好ましくは3秒以上とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは5秒以上である。一方、加工時間を好ましくは20秒以下とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは15秒以下である。
加工速度を好ましくは1m/分以上とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは5m/分以上である。一方、加工速度を好ましくは30m/分以下とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは20m/分以下である。
このようにして得られた本発明のスパンボンド不織布を熱成型することにより、薬剤用保護材、コーヒーフィルター材等の成型体が得られる。
本発明の成型体の製造方法は、上記スパンボンド不織布を熱成型して成型体を製造するものである。上記スパンボンド不織布を用いることにより、熱成型後の収縮が抑制されるため、安定して成型体を得ることができる。熱成型は、例えば上記スパンボンド不織布を100〜180℃に加熱して、深絞り成型等を行えば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〈固有粘度〉
ポリエチレンテレフタレート樹脂0.1gを秤量し、25mlのフェノール/テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で3回測定し、その平均値を求めた。
〈ガラス転移点温度〉
JIS K7122(1987)に従って、20℃/分の昇温速度で、熱可塑性ポリスチレン系共重合体のガラス転移点温度を求めた。
〈目付〉
JIS L1913 (2000)5.2に従って、不織布の単位面積当たりの質量を測定した。
〈繊維径〉
試料(仮圧着前の長繊維フリース)の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて単繊維の径をn=20で測定し、平均値を求めた。
〈複屈折率(Δn)〉
試料(仮圧着前の長繊維フリース)の任意の場所20点を選択し、単繊維をとりだし、ニコン偏向顕微鏡OPTIPHOT−POL型を用いて、繊維径とレターゼーションを読み取り、複屈折率(Δn)を求めた。
〈繊度(dtex)〉
試料(仮圧着前の長繊維フリース)の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて単繊維径をn=20で測定して、平均単繊維径を求めた。同じ場所5点の繊維を取り出し、密度勾配管を用いて繊維の比重をn=5で測定し、平均比重を求めた。ついで、平均単繊維径より求めた単繊維断面積と平均比重から10000mあたりの繊維重量である繊度[dtex]を求めた。
〈紡糸速度(m/分)〉
紡糸速度V(m/分)は、上記繊度T(dtex)と設定の単孔吐出量Q(g/分)から下記式に基づいて求めた。
V=(10000×Q)/T
〈130℃雰囲気下における150%伸長時の伸長方向長さに対する、伸長終了後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率〉
試料幅50mm、長さ150mmの試料片を不織布から切り出し、試料片の中心に、伸長方向(長さ方向)に50mmの測定線を記入した。測定線がチャック間の中心に位置するようにチャック間距離を50mmとして引張試験機(株式会社オリエンテック製、「テンシロン万能材料試験機」)にセットした。次いで、130℃雰囲気下で1分間予熱して、引張速度100mm/分で伸長し、チャック間距離が125mmの長さになった時、すなわち150%伸長完了時に伸長を停止して、速やかに炉を開放して、固定されたまま1分間冷却後、伸長を終了し、サンプル採取をして、20℃の部屋に放置して、30分±1分経過後、測定線をノギスにて観察して測定線の長さを測定した。1回/1枚の測定で、下記式に基づき収縮率(%)を算出し、計5回の平均値を測定値とした。
収縮率(%)=100×(150%伸長時の測定線の長さ(125mm)−伸長終了後、20℃雰囲気下で30分放置後の測定線の長さ)/(150%伸長時の測定線の長さ(125mm))
〈130℃で1分加熱後の破断伸度、および20%伸張時応力〉
試料幅5cm、長さ20cmの試料片を縦方向および横方向にそれぞれ不織布から5枚ずつ切り出し、チャック間距離5cmで試料をセットし、130℃に加熱した炉に投入して1分経過後に、加熱炉内にてオリエンテック性万能引張試験機を用い、引張速度10cm/分で変型させて歪−応力曲線を得た。破断時の伸度および20%伸張時の応力を読み取り、縦方向と横方向の各5点の平均値を測定値とした。
〈耐磨耗性〉
耐磨耗性は、大栄科学精器製作所製「学振型染色物磨耗堅牢度試験機」を用いて、不織布を試料とし、磨耗布は金巾3号を使用して、加重500gf、磨耗回数100往復で磨耗させて、不織布表面の毛羽立ち、磨耗状態を目視で等級評価した。n=5の平均値を測定値とした。
0級:損傷大、1級:損傷中、2級:損傷小、3級:損傷なし、毛羽発生あり、4級:損傷なし、毛羽発生微小、5級:損傷なし、毛羽なし
〈成型性評価1〉
先端が半丸形状の直径25mmの金属製の円柱状成型体および不織布を130℃、1分間加熱し、変型速度20mm/分の条件で25mm変型させた。変型時に不織布の破れがあったものを×、破れがなかったものを○と判断した。
〈成型性評価2〉
500℃に加熱した赤外線ヒーターで不織布を10秒加熱し、常温の金型で真空成型を行った。金型の形状はカップ型で、開口部は直径50mm、底面部は40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。成型体に破れがなく、角の湾曲半径が1mm以下のものを〇、成型体に破れがなく、角の湾曲半径が1mmを超えるものを△、成型体に破れがあるものを×と判断した。
成型性評価1の評価が〇であり、且つ成型性評価2の評価が〇または△であるものを熱成型性に優れていると判断した。
〈保型性〉
成型性評価1で得られた成型体に95℃の熱湯をかけたときに、形状を保持できたものを〇、形状を保持できなかったものを×とした。
(実施例1)
スパンボンド紡糸設備を用い、固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)に、ガラス転移点温度が122℃のスチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体(Rohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS HW55(以下、「HW55」という)を0.40質量%添加した樹脂を、オリフィス径0.23mmの紡糸口金より単孔吐出量0.75g/分で紡出した。更に、エジェクタに0.6kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、1段階で延伸して、下方のコンベア上へ繊維を開繊させつつ捕集し長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は22.0μm、複屈折率は0.0120、換算紡糸速度は1430m/分であった。
得られた長繊維フリースを、2つのフラットロールからなる1対の仮熱圧着ロールを用い、それぞれの表面温度を80℃とし、押し圧を8kN/mとして仮圧着した後、ロールの表面温度:145℃で、押し圧:3.0kgf/cm、加工時間:9.3秒、加工速度:8.4m/分の条件でフェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例2)
エジェクタに0.75kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同じ条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0147、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例3)
HW55の含有量を0.05質量%としたこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0153、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例4)
HW55の含有量を3.00質量%としたこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0130、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例5)
HW55の含有量を5.00質量%としたこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0110、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例6)
固有粘度0.50dl/gのPETを使用したこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0147、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例7)
固有粘度0.70dl/gのPETを使用したこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は20.6μm、複屈折率は0.0147、換算紡糸速度は1632m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例8)
実施例2と同様の条件で得られた長繊維フリースを、表面温度を80℃とし、押し圧を8kN/mとして仮圧着した後、含水率が3質量%となるように水をスプレーにより吹き付ける含水加工を実施し、実施例1と同様にフェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例9)
オリフィス径0.23mmの紡糸口金より単孔吐出量0.26g/分で紡出したこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は12.0μm、複屈折率は0.0160、換算紡糸速度は1667m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例10)
オリフィス径0.23mmの紡糸口金より単孔吐出量1.13g/分で紡出したこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は25.0μm、複屈折率は0.0140、換算紡糸速度は1669m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(実施例11)
オリフィス径0.45mmの紡糸口金より単孔吐出量3.5g/分で紡出し、エジェクタに0.5kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は50.0μm、複屈折率は0.0040、換算紡糸速度は1288m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(比較例1)
HW55を添加せずに、エジェクタに1.0kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は19.0μm、複屈折率は0.0182、換算紡糸速度は1918m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(比較例2)
HW55を添加せずに、固有粘度0.75dl/gのPETを使用し、エジェクタに1.0kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は19.0μm、複屈折率は0.0186、換算紡糸速度は1918m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、含水率が3質量%となるように水をスプレーにより吹き付ける含水加工を実施し、実施例1と同様にフェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(比較例3)
固有粘度0.75dl/gのPETを使用し、エジェクタに1.0kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は19.0μm、複屈折率は0.0183、換算紡糸速度は1918m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(比較例4)
固有粘度0.75dl/gのPETを使用し、エジェクタに1.0kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例1と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は19.0μm、複屈折率は0.0183、換算紡糸速度は1918m/分であった。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、含水率が3質量%となるように水をスプレーにより吹き付ける含水加工を実施し、実施例1と同様にフェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行い、スパンボンド不織布を得た。
(比較例5)
エジェクタに3.5kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給したこと以外は実施例2と同様の条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は12.3μm、複屈折率は0.0820、換算紡糸速度は4578m/分であった。得られた長繊維フリースを、2つのフラットロールからなる1対の仮熱圧着ロールを用い、それぞれの表面温度を120℃とし、押し圧を8kN/mとして仮圧着した後、彫刻ロールの表面温度:170℃、フラットロールの表面温度:145℃で、線圧:50kgf/cm、加工速度:10.0m/分の条件でエンボス加工を実施し、スパンボンド不織布を得た。
以上のようにして得られたスパンボンド不織布の物性を表1、2に示す。各種評価結果も併せて表1、2に示す。
Figure 2020190072
Figure 2020190072
表1に示すように、熱可塑性スチレン系共重合体(HW55)を添加し、低紡糸速度で紡糸して、更に面拘束しながら本圧着した実施例1〜11は、150%伸長後の収縮率が低く、熱成型後に収縮し難いことがわかる。更に、実施例1〜11は、耐磨耗性、保型性、熱成型性にも優れていた。
これに対して、表2の比較例1〜5は、150%伸長後の収縮率が高く、熱成型後に収縮し易くなっていた。更に、比較例1〜5は、耐磨耗性、保型性、熱成型性のいずれかが劣っていた。
比較例1は、紡糸速度が速く、HW55を添加しなかったため、熱成型後の収縮率が高くなった。更に、破断伸度が低くなり、伸長時応力が高くなって、熱成型性、保型性が低下した。
比較例2は、紡糸速度が速く、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が高く、HW55を添加しなかったため、熱成型後の収縮率が高くなった。更に、伸長時応力が高くなり、熱成型性、保型性が低下した。
比較例3は、紡糸速度が速く、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が高かったため、熱成型後の収縮率が高くなった。更に、伸長時応力が高くなり、熱成型性、保型性、耐磨耗性が低下した。
比較例4は、紡糸速度が速く、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が高かったため、熱成型後の収縮率が高くなった。更に、伸長時応力が高くなり、熱成型性、保型性、耐磨耗性が低下した。
比較例5は、紡糸速度が速く、面拘束による本圧着の代わりに、熱エンボス加工を行ったため、150%伸長前に不織布が破断した。また、伸長時応力が高く、伸度不足となった結果、熱成型性、保型性が低下した。更に、部分的に熱成型圧着部分が存在するため、耐磨耗性が低下した。
なお、上記実施例において、繊維径は、仮圧着前の長繊維フリースについて測定したが、仮圧着および本圧着後もほぼ同じ値を示すことを確認している。

Claims (6)

  1. 130℃雰囲気下で150%伸長時の伸長方向長さに対する、前記伸長後、20℃雰囲気下で30分放置後の伸長方向長さの収縮率が5%以下であり、
    固有粘度が0.3〜0.7dl/gである樹脂を90質量%以上の含量で含み、且つ前記樹脂よりもガラス転移点温度が高い配向阻害剤を0.02〜8質量%の含量で含むことを特徴とするスパンボンド不織布。
  2. 前記樹脂はポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. 前記配向阻害剤は、ガラス転移点温度が100〜160℃の熱可塑性ポリスチレン系共重合体である請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 130℃で1分加熱後の破断伸度が250%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  5. 前記不織布の少なくとも片面は、耐磨耗等級が3級以上である請求項1〜4のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のスパンボンド不織布を熱成型することを特徴とする成型体の製造方法。
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