JP2020190050A - ワイヤロープ、ワイヤロープの端部処理方法、及び、螺旋部材 - Google Patents
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Abstract
Description
この際、ワイヤロープの端末を引留める必要があり、そのために端末にアイを形成する等のワイヤロープの端部処理が行われる。
ワイヤロープの端部処理の方法の一つとして、巻付グリップを用いる方法がある。このような巻付グリップに関する従来技術が特許文献1によって開示されている。
巻付グリップは、その構造上、引張荷重がかかるとワイヤロープを締め付けるため、緩むことがなく、締め直しの必要が無いものである。しかしながら、例えば落石防護柵等の用途において、落石の衝突による作用時間の短い衝撃引張力がかかった場合には、締結効率が低下し、巻付グリップが本来有する限界荷重までその性能を発揮できない場合がある。
作用時間の短い衝撃引張力に対する対策として、巻付グリップの上からさらにワイヤグリップ等の金具で締結するものがある。
U字ボルトやナット等で構成されているワイヤグリップの取り付け作業は、比較的単純な作業といえるが、多数のボルトナットを締める必要があり、作業効率は非常によくない。また、作業者の技量による差が出やすく、均一な施工が難しいという問題がある。さらに、ボルトナットを使用していることから、増し締め等、保守管理においても煩雑な面を有する(緩み止めナットを使用した場合にはコスト高となってしまう)。即ち、巻付グリップの上からさらにワイヤグリップで締結することは、巻付グリップが有している“優れた作業性”や、“締め直し作業が不要”といった利便性を減殺させてしまうものである。
巻付グリップによって端部処理されたワイヤロープであって、少なくとも前記巻付グリップによって巻付けられている範囲において、隣り合うストランド又は素線の間の空隙部分に配された、螺旋部材を備えることを特徴とするワイヤロープ。
前記螺旋部材が、全ての隣り合う前記ストランド又は素線の間の空隙部分に配されていることを特徴とする構成1に記載のワイヤロープ。
前記螺旋部材の一部が、外部に露出していることを特徴とする構成1又は2に記載のワイヤロープ。
前記螺旋部材に、前記ストランド又は素線との間で前記螺旋部材を視覚的に識別させる識別加工が施されていることを特徴とする構成1から3の何れかに記載のワイヤロープ。
前記ワイヤロープの断面視において前記ワイヤロープに外接する円に、前記螺旋部材が収まっていることを特徴とする構成1から4の何れかに記載のワイヤロープ。
前記螺旋部材が、前記ストランド又は素線より柔らかい材料によって形成されており、前記ワイヤロープの断面視において前記ワイヤロープに外接する円に、前記螺旋部材が接触していることを特徴とする構成1から4の何れかに記載のワイヤロープ。
前記ワイヤロープが3×7構造又は1×7構造であることを特徴とする構成1から6の何れかに記載のワイヤロープ。
ワイヤロープの端部処理方法であって、少なくとも巻付グリップによって巻付けられる範囲において、隣り合うストランド又は素線の間の空隙部分に螺旋部材を配するステップと、前記螺旋部材が配されたワイヤロープに対して、前記巻付グリップを巻付けるステップと、を有することを特徴とするワイヤロープの端部処理方法。
前記螺旋部材の一部を外部に露出させることを特徴とする構成8に記載のワイヤロープの端部処理方法。
前記螺旋部材に、前記ストランド又は素線との間で前記螺旋部材を視覚的に識別させる識別加工を施すことを特徴とする構成8又は9に記載のワイヤロープの端部処理方法。
構成1から7の何れかに記載のワイヤロープに使用する前記螺旋部材であって、前記ワイヤロープの撚りピッチと略同一のピッチの螺旋形状を有することを特徴とする螺旋部材。
巻付グリップ付きワイヤロープ100は、ワイヤロープ1に対して巻付グリップ3が巻きつけられたものであり、少なくとも巻付グリップ3によって巻付けられている範囲において、ワイヤロープ1の隣り合うストランドの間の空隙部分に配された下巻ロッド(螺旋部材)2を備えている。
巻付グリップ3は、U字状に折り曲げられてその両端部がらせん状に形成された鋼線によって形成されており、両端部のらせん状部分を、ワイヤロープに巻付けて使用するものである。ワイヤロープ1自体、及び、巻付グリップ3自体は公知の構成であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
下巻ロッド2は、図3に示されるように、螺旋状の部材であり、本実施形態では、ストランド11を構成する素線と同種の材料を用いて形成されている。JIS G 3548「亜鉛めっき鋼線」若しくはJIS G 3522 「ピアノ線」又はこれらと同等以上の線材である。
図4は、ワイヤロープ1に下巻ロッド(螺旋部材)を設けた状態を示す図である。図4に示されるように、下巻ロッド2は、ワイヤロープ1の隣り合うストランド11の間の空隙部分に沿って、螺旋状に配置される。即ち、下巻ロッド2は、ワイヤロープ1の撚りピッチと略同一のピッチの螺旋形状を有しているものである。
本実施形態のごとく、下巻ロッド2がストランドと同種の材料(亜鉛めっき鋼線等)で形成されている場合、ワイヤロープ1の断面視においてワイヤロープ1の外接円Cに、下巻ロッド2が収まる太さであることにより、巻付グリップ3を巻付ける作業の作業性に優れるものである。
なお、下巻ロッドがストランドと同種の材料で形成される場合においても、ワイヤロープの断面視においてワイヤロープに外接する円Cに、下巻ロッドが接触する(少し飛び出す)ような太さとしてもよい。締結力の増加という面では、下巻ロッドが外接円Cにちょうど接するか、僅かに飛び出すぐらいが好ましい。あまり太い下巻ロッドを用いると、巻付グリップの巻付け作業の効率が悪くなるが、作業効率として許容範囲であれば図7(a)に示されるように、ワイヤロープの外接円Cの外側にふくらむような太さの下巻ロッドを用いてもよい。また、例えば、巻付グリップの内径がワイヤロープの外径に対して若干大きいような場合には、ワイヤロープの外接円Cの外側にふくらむような太さの下巻ロッドを用いると好適である。
本実施形態の下巻ロッド2は、少なくとも両端部のEX1、EX2の部分において赤色に着色されており、これにより、一目で下巻ロッド2の有無を認識できるようにされている。
先ず、ワイヤロープ1を施工箇所で必要な長さに合わせてカットする。
次に、ワイヤロープ1の両端部にそれぞれ下巻ロッド2を配置する。なお、下巻ロッド2の長さを調節する必要があれば、長さの調節(カット等)をした上で配置する。前述のごとく下巻ロッド2はワイヤロープ1と略同一のピッチのらせん形状を有しているため、下巻ロッド2の先端位置を決めた後は、これをワイヤロープ1の周りにくるくると回すようにすることで、手で簡単に取り付けることができる。図4に示されるように、ワイヤロープ1の端部(図4では左端)に下巻ロッド2の端部を合わせて取り付けを行う。同じ作業を3回行うことで、3本の下巻ロッド2が、ワイヤロープ1の隣り合うストランド11の間の空隙部分に沿って、螺旋状に配置される。なお、下巻ロッド2の両端のEX1、EX2の部分を、予め赤く着色しておく(下巻ロッド(螺旋部材)2に、ストランド11との間で下巻ロッド2を視覚的に識別させる識別加工を施す)。
最後に、下巻ロッド2が配されたワイヤロープ1に対して、巻付グリップ3を巻付ける。前述のごとく、ワイヤロープ1の端部に下巻ロッド2の端部が合わせてあるため、先端側のEX1(図4)の部分が外部に露出することになる。また、同じく図4に示されるように、巻付グリップ3をHの範囲で巻きつけることにより、下巻ロッド2の他端側のEX2の部分も外部に露出することになる。なお、巻付グリップ3の巻付け作業は、従来通りの作業であるため、ここでの具体的な説明を省略する。
複数のストランドを撚ったものであるワイヤロープは、その構造上、ストランドとストランドの間に隙間ができてしまい、この外側に設けられる巻付グリップとの接触面積が低下する傾向となる。この傾向は特に3×7構造のワイヤロープにおいて顕著となる。即ち、図6(a)からも理解されるように、ワイヤロープの断面視の構造が三角形に近い形状となり、巻付グリップとの接触面積が少ない。巻付グリップは、引張荷重がかかるとワイヤロープを締め付けるため、接触面積の増加が期待できる。即ち、図6(a)で示した一点鎖線T(隣り合うストランドの双方に接する直線)に近い形状まで変形して接触面積が増加することが期待される。しかしながら、当該接触箇所におけるストランドに対する巻付グリップの垂直抗力Nはほとんど得られない。従って、接触面積の増加による摩擦の増加(≒締結力の増加)はあまり望めない。
これに対し、本実施形態の巻付グリップ付きワイヤロープ100では、図6(b)からも理解されるように、下巻ロッド2が隣り合うストランドの双方に接する直線Tよりも飛び出た構造であるため、下巻ロッド2に対する巻付グリップの垂直抗力Nが得られる。従って、下巻ロッド2が配されることによる接触面積の増加によって、摩擦の増加(≒締結力の増加)が得られるものである。
作用時間の短い衝撃引張力がかかった際における締結効率を検証するために行った実験によれば、下巻ロッド2を設けない場合に比べ、下巻ロッド2を設けた場合において、締結効率が向上したことが確認された。同実験は、供試体として、下巻ロッドを設けた巻付グリップ付きワイヤロープと、下巻ロッドを設けない巻付グリップ付きワイヤロープを用意し、当該供試体に対する落下衝撃試験(供試体の一端を櫓に固定し、他端に重錘を取付けて、重錘を落下させる試験)として行った。下巻ロッドを設けない供試体では、巻付グリップが抜けてしまう条件においても、下巻ロッドを設けた供試体では、巻付グリップの抜けは無く、目標値である締結効率95%以上を得られることが確認できた。
また、本実施形態の巻付グリップ付きワイヤロープ100によれば、下巻ロッド2の端部(EX1、EX2)を外部に露出させる構成としているため、下巻ロッド2の取付の有無を外部から視認することができる。さらに、このEX1、EX2の部分を赤色に着色しているため、一瞥にて下巻ロッド2の取付の有無(施工忘れなどの確認)をすることができる。なお、本実施形態では、EX1、EX2の部分を赤色に着色するものを例としたが、ストランドとの間で下巻ロッド2目立たせる(視覚的に識別させる)ものであればよい(例えばテープの貼付等)。なお、下巻ロッド2の両端部を露出させるものを例としているが、一方のみを露出させるものであってもよい。先端側(アイの部分)は他の構造物に締結される箇所であり、隠れやすい(視認し難くなる)傾向となるため、どちらかと言えば、先端側ではなく、他端側において露出させるとよい。
また、螺旋部材として、素線で形成される下巻ロッド2を用いるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、例えばストランドやロープを螺旋部材として用いても良い。
また、摩擦抵抗の増加を目的として、螺旋部材の表面に研削材(巻付グリップの内面に塗布されているものと同様のもの)を塗布してもよい。
図7には、ゴム等のエラストマー性を有する材料(ストランドより柔らかい材料)によって螺旋部材(下巻ロッド2´)を形成した例を示した。
図7の巻付グリップ付きワイヤロープ100´では、図7(a)に示されるように、ワイヤロープの断面視においてワイヤロープに外接する円Cに、螺旋部材(下巻ロッド2´)が接触しているものを例としている。これに対して、巻付グリップ3を巻付けて締め付けると、図7(b)に示されるように、螺旋部材(下巻ロッド2´)が変形し、ストランド11や巻付グリップ3とそれぞれより広い面積で密着するようになる。これにより、締結効率を向上することができる。なお、“ワイヤロープの断面視において前記ストランドに外接する円に、前記螺旋部材が接触している”とは、図7(a)に示されるように、円Cから螺旋部材(下巻ロッド2´)が飛び出しているものの他、円Cに螺旋部材(下巻ロッド2´)が接しているものも含む概念である。
例えば、1×7構造等の素線を撚ったワイヤロープに対しても適用することができる。概念的には、上記の説明において、“ストランド”と記載されている箇所を“素線”にて読み替えればよいものである。
1...ワイヤロープ
11...ストランド
2...下巻ロッド(螺旋部材)
3...巻付グリップ
Claims (11)
- 巻付グリップによって端部処理されたワイヤロープであって、
少なくとも前記巻付グリップによって巻付けられている範囲において、隣り合うストランド又は素線の間の空隙部分に配された、螺旋部材を備えることを特徴とするワイヤロープ。 - 前記螺旋部材が、全ての隣り合う前記ストランド又は素線の間の空隙部分に配されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤロープ。
- 前記螺旋部材の一部が、外部に露出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤロープ。
- 前記螺旋部材に、前記ストランド又は素線との間で前記螺旋部材を視覚的に識別させる識別加工が施されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のワイヤロープ。
- 前記ワイヤロープの断面視において前記ワイヤロープに外接する円に、前記螺旋部材が収まっていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のワイヤロープ。
- 前記螺旋部材が、前記ストランド又は素線より柔らかい材料によって形成されており、前記ワイヤロープの断面視において前記ワイヤロープに外接する円に、前記螺旋部材が接触していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のワイヤロープ。
- 前記ワイヤロープが3×7構造又は1×7構造であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のワイヤロープ。
- ワイヤロープの端部処理方法であって、
少なくとも巻付グリップによって巻付けられる範囲において、隣り合うストランド又は素線の間の空隙部分に螺旋部材を配するステップと、
前記螺旋部材が配されたワイヤロープに対して、前記巻付グリップを巻付けるステップと、
を有することを特徴とするワイヤロープの端部処理方法。 - 前記螺旋部材の一部を外部に露出させることを特徴とする請求項8に記載のワイヤロープの端部処理方法。
- 前記螺旋部材に、前記ストランド又は素線との間で前記螺旋部材を視覚的に識別させる識別加工を施すことを特徴とする請求項8又は9に記載のワイヤロープの端部処理方法。
- 請求項1から7の何れかに記載のワイヤロープに使用する前記螺旋部材であって、前記ワイヤロープの撚りピッチと略同一のピッチの螺旋形状を有することを特徴とする螺旋部材。
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