JP2020186797A - 変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】好適な変速制御を実現する。【解決手段】実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、エンジンから回転動力が入力される自動変速機からの出力軸の回転数を取得する取得部と、所定の条件を満たした場合に、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、自動変速機の現在選択されているギア段におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と、に基づいて、第1のイナーシャ相開始時のエンジンの第1の推定エンジン回転数を算出する算出部と、第1の推定エンジン回転数と、予め定められたエンジン回転数閾値と、に基づいて、現在選択されているギア段から次のギア段への変速指示を出力する出力部と、を備える。【選択図】図5
Description
本発明の実施形態は、変速制御装置に関する。
従来から、複数の摩擦係合の要素を選択的に係合させることによって複数の変速段を成立させる有段式の自動変速機が提案されている。当該自動変速機においては、アクセル開度と車速に基づいて変速タイミングを決める手法が一般的に用いられている。
近年、例えば、目標となるエンジン回転数で、変速が完了するよう制御を行う技術が提案されている。当該技術においては、タービン回転数やエンジン回転数に基づいて適切なタイミングで変速指示を行うことで、目標となるエンジン回転数で変速を完了させることができる。
しかしながら、例えば、変速中や、複数変速における変速と変速との間に、タービン回転数やエンジン回転数が不安定となる状況等が存在する。このため、タービン回転数やエンジン回転数に基づいた変速指示では、目標となるエンジン回転数で変速制御が完了するのが難しいという状況が生じていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、好適な変速制御を実現する変速制御装置を提供することを目的とする。
実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、エンジンから回転動力が入力される自動変速機からの出力軸の回転数を取得する取得部と、所定の条件を満たした場合に、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、自動変速機の現在選択されているギア段におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と、に基づいて、第1のイナーシャ相開始時のエンジンの第1の推定エンジン回転数を算出する算出部と、第1の推定エンジン回転数と、予め定められたエンジン回転数閾値と、に基づいて、現在選択されているギア段から次のギア段への変速指示を出力する出力部と、を備える。
よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、エンジン回転数や、入力軸のタービン回転数とかかわらずに、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出できる。このため、変速制御時にエンジン回転数や入力軸のタービン回転数が不安定な場合でも、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出することで、適切なタイミングで変速指示を出力し、好適な変速制御を実現できる。
また、実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、算出部は、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御がされている間に、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、次のギア段のギア比と、次のギア段から次々ギア段への変速制御を開始してから第2のイナーシャ相が開始されるまでの第2の時間と、に基づいて、次のギア段から次々ギア段に変速制御する際の第2のイナーシャ相開始時のエンジンの第2の推定エンジン回転数を算出し、出力部は、次のギア段への変速制御の後処理が終わる前に、第2の推定エンジン回転数と、予め定められたエンジン回転数閾値と、に基づいて、次のギア段から次々ギア段への変速指示を出力する。よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、変速制御中においても変速指示を出力できるので、好適な変速制御を実現できる。
また、実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、取得部は、さらに、アクセル開度を取得し、所定の条件は、アクセル開度に関する条件である。よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、アクセル開度が所定の条件を満たしている場合には、適切なタイミングで変速指示を出力できるので、好適な変速制御を実現できる。
また、実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、取得部は、さらに変速制御においてギア段を締結するために用いられている油圧を取得し、所定の条件は、所定の自然数をNとしたとき、ギア段N+1からギア段Nに切り替えている間において、さらに、ギア段Nからギア段N+1に切り替えられる際に、次のギア段をギア段N+1として、ギア段N+1を締結する油圧が、あらかじめ定められたトルク保持圧より低い場合である。よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、ダウン変速からアップ変速を行う場合でも、適切なタイミングで変速指示を出力できるので、好適な変速制御を実現できる。
また、実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、算出部は、さらに、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、現在選択されているギア段におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と、に基づいて、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御する際の第1のイナーシャ相開始時のエンジンの第1の推定エンジン回転数を算出するとともに、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、次のギア段におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と第1のイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでの第3の時間と次のギア段から次々ギア段への変速制御を開始してから第2のイナーシャ相が開始されるまでの第2の時間との合計時間と、に基づいて、次々ギア段への変速制御する際の第2のイナーシャ相開始時の第2の推定エンジン回転数を算出し、出力部は、さらに、第1の推定エンジン回転数が予め定められたエンジン回転数閾値を超えないよう変速制御を行う場合の第1の制御開始時刻と、第2の推定エンジン回転数が予め定められたエンジン回転数閾値を超えないよう変速制御を行う場合の第2の制御開始時刻と、のうちいずれか早い時刻に、変速指示を出力する。よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、第1の制御開始時刻と、第2の制御開始時刻のうちいずれか早い時刻に変速指示が開始されるので、予め定められたエンジン回転数閾値を超えないよう、好適な変速制御を実現できる。
また、実施形態の自動変速機の変速制御装置は、例えば、算出部は、出力軸の回転数と、出力軸の回転数の増加率と、次のギア段におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と第1のイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでの第3の時間と次のギア段から次々ギア段への変速制御を開始してから第2のイナーシャ相が開始されるまでの第2の時間と次のギア段でロックアップ制御に要する第4の時間との合計時間と、に基づいて、第2のイナーシャ相開始時のエンジンの第2の推定エンジン回転数を算出する。よって、上述した変速制御装置によれば、例えば、ロックアップ制御を行う場合でも、好適なタイミングで変速指示が出力されるので、好適な変速制御を実現できる。
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成および当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の車両100の構成の例示的な図である。図1に示されるように、車両100は、駆動系構成として、エンジン1と、自動変速機2と、差動機構3と、車輪4,5と、を備えている。エンジン1から出力された動力は、自動変速機2および差動機構3を介して車輪4,5に伝達される。なお、本実施形態では、車両100は、駆動源としてエンジン1のみを備えた例が示されているが、これに限定されない。例えば、車両100は、動力源としてエンジン1とモータとを備えたハイブリッド車であってもよいし、駆動源としてモータのみを備えた電気自動車であってもよい。
図1は、第1の実施形態の車両100の構成の例示的な図である。図1に示されるように、車両100は、駆動系構成として、エンジン1と、自動変速機2と、差動機構3と、車輪4,5と、を備えている。エンジン1から出力された動力は、自動変速機2および差動機構3を介して車輪4,5に伝達される。なお、本実施形態では、車両100は、駆動源としてエンジン1のみを備えた例が示されているが、これに限定されない。例えば、車両100は、動力源としてエンジン1とモータとを備えたハイブリッド車であってもよいし、駆動源としてモータのみを備えた電気自動車であってもよい。
車両100は、制御系構成として、エンジン制御装置6と、変速制御装置7と、油圧制御装置8と、を備えている。エンジン制御装置6は、エンジン1と通信可能に接続され、エンジン1を制御する。変速制御装置7は、油圧制御装置8と通信可能に接続され、油圧制御装置8を制御する。油圧制御装置8は、変速制御装置7の制御に応じて、自動変速機2における油の圧力である油圧を制御する。すなわち、変速制御装置7は、油圧制御装置8を制御することにより、自動変速機2を制御する。油は、作動油とも称される。
車両100は、検出系構成として、アクセル開度センサ11と、車速センサ12と、エンジン回転センサ14と、入力回転センサ15と、出力回転センサ16と、を備えている。
<各構成>
エンジン1は、シリンダー内で燃料を爆発燃焼させ、その熱エネルギによって回転動力(トルク)を発生する内燃機関である。エンジン1は、自動変速機2に連結された出力シャフト1aを有しており、出力シャフト1aから出力された回転動力は、自動変速機2に入力される。
エンジン1は、シリンダー内で燃料を爆発燃焼させ、その熱エネルギによって回転動力(トルク)を発生する内燃機関である。エンジン1は、自動変速機2に連結された出力シャフト1aを有しており、出力シャフト1aから出力された回転動力は、自動変速機2に入力される。
自動変速機2は、エンジン1と差動機構3との間の動力伝達経路上に設けられている。自動変速機2は、エンジン1の回転を減速して差動機構3に伝達することができる。
図2は、実施形態の自動変速機2の例示的な断面図であって、回転中心軸の片側の図である。図2に示されるように、自動変速機2は、トルクコンバータ20と、変速機構21と、ケース22と、を備えている。トルクコンバータ20および変速機構21は、ケース22に収容されている。ケース22は、車両100の車体(不図示)に支持されている。
トルクコンバータ20は、エンジン1の出力シャフト1aと変速機構21の入力シャフト2aとの間の動力伝達経路上に設けられている。トルクコンバータ20は、流体の力学的作用を利用して、トルクの増幅作用を発生させる。トルクコンバータ20は、流体伝動装置とも称される。
トルクコンバータ20は、ポンプインペラ24と、タービンランナ25と、ステータ26と、ワンウェイクラッチ27と、ロックアップクラッチ28と、を有している。
ポンプインペラ24は、エンジン1の出力シャフト1aと一体に回転する。ポンプインペラ24は、回転することによりタービンランナ25に向けて油を送り出す。
タービンランナ25は、変速機構21の入力シャフト2aと一体に回転する。また、タービンランナ25は、ポンプインペラ24と相対的に回転可能である。タービンランナ25は、ポンプインペラ24から送り出された油を受けて回転する。また、タービンランナ25は、ロックアップクラッチ28が結合状態となることによりポンプインペラ24と一体に回転する。
ステータ26は、タービンランナ25から送り出された油を整流してポンプインペラ24に還流することにより、トルク増幅作用を発生させる。ステータ26は、ワンウェイクラッチ27を介してケース22に固定されている。ステータ26は、ワンウェイクラッチ27によって一方向の回転のみが許容されている。
ロックアップクラッチ28は、ポンプインペラ24とタービンランナ25とを結合させる結合状態と、ポンプインペラ24とタービンランナ25とを遮断する遮断状態とに、油圧制御装置8によって制御される油圧に応じて変化する。ロックアップクラッチ28が結合状態の場合には、エンジン1の出力シャフト1aと変速機構21の入力シャフト2aとの回転速度差が無くなる。ロックアップクラッチ28は、結合状態で、出力シャフト1aの回転を変速機構21の入力シャフト2aに伝達する。
トルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ28が遮断状態の場合に、出力シャフト1aからトルクが入力されるポンプインペラ24と、入力シャフト2aにトルクを出力するタービンランナ25との回転差によりトルクの増幅作用を発生させる。
変速機構21は、複数の動力伝達経路に応じた複数の変速段を構成する。変速機構21は、動力伝達経路を切り替えることにより、変速段を切り替える。変速機構21は、動力伝達経路を構成する部材として、入力シャフト2aと、複数の遊星ギヤG1〜G3と、複数の摩擦結合部C1〜C3,B1,B2と、出力シャフト2bと、を備えている。
遊星ギヤG1は、サンギヤS1と、リングギヤR1と、ダブルピニオンギヤP1と、キャリアCa1と、を有している。サンギヤS1は、入力シャフト2aと一体に回転する。リングギヤR1は、サンギヤS1の外周側に位置し、摩擦結合部C3に接続されている。ダブルピニオンギヤP1は、サンギヤS1とリングギヤR1との間に介在している。キャリアCa1は、ダブルピニオンギヤP1を回転可能に支持するとともに、ケース22に固定されている。
遊星ギヤG2は、サンギヤS2と、リングギヤR2と、ピニオンギヤP2と、キャリアCa2と、を有している。サンギヤS2は、摩擦結合部C1と接続されている。リングギヤR2は、サンギヤS2の外周側に位置し、摩擦結合部C3および摩擦結合部B1と接続されている。ピニオンギヤP2は、サンギヤS2とリングギヤR2との間に介在している。キャリアCa2は、ピニオンギヤP2を回転可能に支持し、摩擦結合部C2および摩擦結合部B2と接続されている。
遊星ギヤG3は、サンギヤS3と、リングギヤR3と、ピニオンギヤP3と、キャリアCa3と、を有している。サンギヤS3は、摩擦結合部C1と接続されている。リングギヤR3は、サンギヤS3の外周側に位置し、摩擦結合部B2と接続されている。また、リングギヤR3は、遊星ギヤG2のキャリアCa2と接続され、当該キャリアCa2と一体に回転する。ピニオンギヤP3は、サンギヤS3とリングギヤR3との間に介在している。キャリアCa3は、ピニオンギヤP3を回転可能に支持する。また、キャリアCa3は、出力シャフト2bと接続され、出力シャフト2bと一体に回転する。
摩擦結合部C1〜C3,B1,B2は、変速機構21の二つの結合対象を摩擦によって結合した結合状態と、当該二つの結合対象を遮断した遮断状態と、を切り替えることができる。結合状態は、二つの結合対象を摩擦によって接続した接続状態でもあり、遮断状態は、二つの結合対象を分離した分離状態でもある。遮断状態は、開放状態とも称される。また、摩擦結合部C1〜C3は、クラッチと称され、二つの結合対象として二つの回転要素の結合および遮断を切り替える。摩擦結合部B1,B2は、ブレーキと称され、二つの結合対象として回転要素と固定要素との結合および遮断を切り替える。図2の例では、入力シャフト2aおよび遊星ギヤG1〜G3の構成要素が、摩擦結合部C1〜C3,B1,B2による結合および遮断の対象となる回転要素の一例である。また、ケース22が、摩擦結合部B1,B2による結合および遮断の対象となる固定要素の一例である。
具体的に、図2の例では、摩擦結合部C1は、入力シャフト2aおよび遊星ギヤG1のサンギヤS1と、遊星ギヤG2および遊星ギヤG3のサンギヤS2,S3との、結合および遮断を切り替える。摩擦結合部C2は、入力シャフト2aおよび遊星ギヤG1のサンギヤS1と、遊星ギヤG2のキャリアCa2および遊星ギヤG3のリングギヤR3との、結合および遮断を切り替える。摩擦結合部C3は、遊星ギヤG1のリングギヤR1と遊星ギヤG2のリングギヤR2との、結合および遮断を切り替える。摩擦結合部B1は、遊星ギヤG2のリングギヤR2とケース22との、結合および遮断を切り替える。また、摩擦結合部B2は、遊星ギヤG2のキャリアCa2および遊星ギヤG3のリングギヤR3と、ケース22との、結合および遮断を切り替える。
図3は、実施形態の自動変速機2の各変速段における複数の摩擦結合部C1〜C3,B1,B2の作動状態の一例を示す図である。変速機構21は、互いに変速比(変速比=入力シャフト2aの回転数/出力シャフト2bの回転数)が異なる複数の変速段を構成する。具体的には、変速機構21は、前進1速〜6速および後進の変速段を構成する。換言すると、変速機構21は、前進6段、後進1段の変速段を構成する。前進1速から前進6速の順で変速段の変速比が小さくなる。これらの変速段は、摩擦結合部C1〜C3,B1,B2の結合状態と遮断状態との組み合わせによって切り替えられる。図3では、前進1速〜6速の変速段が「1速」〜「6速」、後進の変速段が「R」、摩擦結合部C1〜C3,B1,B2が「C1」〜「C3」,「B1」,「B2」で示されている。図3には、前進1速〜6速および後進の各変速段に対応した横行で、○印が付与された摩擦結合部C1〜C3,B1,B2が結合状態、無印の摩擦結合部C1〜C3,B1,B2が遮断状態である。
1速の変速段では、摩擦結合部C1,B2が結合状態で、摩擦結合部C2,C3,B1が遮断状態である。2速の変速段では、摩擦結合部C1,B1が結合状態で、摩擦結合部C2,C3,B2が遮断状態である。3速の変速段では、摩擦結合部C1,C3が結合状態であり、摩擦結合部C2,B1,B2が遮断状態である。4速の変速段では、摩擦結合部C1,C2が結合状態であり、摩擦結合部C3,B1,B2が遮断状態である。5速の変速段では、摩擦結合部C2,C3が結合状態であり、摩擦結合部C1,B1,B2が遮断状態である。6速の変速段では、摩擦結合部C2,B1が結合状態であり、摩擦結合部C1,C3,B2が遮断状態である。後進の変速段では、摩擦結合部C3,B2が結合状態であり、摩擦結合部C1,C2,B1が遮断状態である。
自動変速機2は、摩擦結合部C1〜C3,B1,B2の切り替えの制御によって回転要素や固定要素が接続される組み合わせを切り替えることにより、変速段を切り替える。具体的に、変速段の切り替えの制御は、変速制御装置7が、油圧制御装置8を介して行なう。以後、摩擦結合部C1〜C3,B1,B2の総称として摩擦結合部CBを用いる場合がある。
図4は、実施形態の自動変速機2の摩擦結合部CBの構成の例示的な断面図である。図4に示されるように、摩擦結合部CBは、複数の内側摩擦板31と、複数の外側摩擦板32と、ピストン33と、リターンスプリング34と、を有している。
内側摩擦板31は、中心軸を中心とした円環状に形成されている。内側摩擦板31は、自動変速機2における二つの構成要素のうち一方と相対回転不能に結合されるとともに、当該構成要素の一方に対して中心軸の軸方向に移動可能に設けられている。中心軸の軸方向の内側摩擦板31の移動は、規定の範囲内に制限されている。
外側摩擦板32は、中心軸を中心とした円環状に形成されている。外側摩擦板32は、自動変速機2における二つの構成要素のうち他方と相対回転不能に結合されるとともに、当該構成要素の他方に対して中心軸の軸方向に移動可能に設けられている。中心軸の軸方向の外側摩擦板32の移動は、規定の範囲内に制限されている。
複数の内側摩擦板31と複数の外側摩擦板32とは、中心軸の軸方向に交互に位置されている。複数の内側摩擦板31と複数の外側摩擦板32とは、摩擦板群35を構成している。摩擦板群35の軸方向の両端には、例えば、内側摩擦板31が位置されている。
ピストン33は、摩擦板群35と軸方向に対向する位置に設けられている。すなわち、ピストン33は、摩擦板群35の軸方向の一端に位置する内側摩擦板31と中心軸の軸方向に対向する。ピストン33は、中心軸の軸方向に移動可能に設けられている。また、ピストン33は、当該ピストンに対して摩擦板群35とは反対側に設けられた油室41と面している。ピストン33は、油室41に供給された油の圧力によって摩擦板群35に向かう方向に押される。
リターンスプリング34は、ピストン33を中心軸の軸方向に沿った方向であって摩擦板群35から離れる方向に押す。リターンスプリング34は、弾性部材の一例である。
このような構成の摩擦結合部CBでは、ピストン33が摩擦板群35と離間した状態から、油室41の油圧によるピストン33を押す力が、リターンスプリング34がピストン33を押す力よりも大きくなると、ピストン33が摩擦板群35に向かう方向に移動し、摩擦板群35の軸方向の一端に位置する内側摩擦板31と接触し、当該内側摩擦板31を押す。これにより、複数の内側摩擦板31と複数の外側摩擦板32とが摩擦によって一体となり、自動変速機2における二つの結合対象が結合される。一方、ピストン33と摩擦板群35とが接触した状態から、油室41中の油圧によるピストン33を押す力が、リターンスプリング34がピストン33を押す力よりも小さくなると、ピストンが34が摩擦板群35から離れる方向に移動し、摩擦板群35の軸方向の一端に位置する内側摩擦板31と離れる。これにより、複数の内側摩擦板31と複数の外側摩擦板32との間に摩擦が発生せず、自動変速機2における二つの結合対象が遮断(分離)される。
図1に戻って、油圧制御装置8は、変速制御装置7の制御に応じて、油圧ポンプ(不図示)から導入された油の通路(油路)の切り替えおよび油圧の調整をし、油を自動変速機2における選択された摩擦結合部C1〜C3,B1,B2やロックアップクラッチ28に向けて出力する。油圧制御装置8は、油路の切り替えや油圧の調整を行なう複数のソレノイドバルブを有している。例えば、図4に示されるように、油圧制御装置8は、摩擦結合部CBの油室41の油圧を調整するソレノイドバルブ42を有している。ソレノイドバルブ42は、例えば、各摩擦結合部CBのそれぞれに設けられている。ソレノイドバルブ42は、油室41と連通した油路43に設けられている。ソレノイドバルブ42は、例えば、リニアソレノイドバルブである。油圧制御装置8は、変速制御装置7に通信可能に接続されており、変速制御装置7によって制御される。
アクセル開度センサ11は、アクセルペダルやアクセルレバー等のアクセル部材(不図示)の操作量に対応するアクセル開度を検出する。車速センサ12は、車両100の速度を検出する。
エンジン回転センサ14は、エンジン1の回転数、すなわち出力シャフト1aの回転数を検出する。以後、エンジン1の回転数をエンジン回転数とも称する。なお、エンジン回転数は、エンジン回転センサ14から取得する手法に制限するものではなく、例えば、エンジン制御装置6から取得してもよい。
入力回転センサ15は、自動変速機2の入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数を検出する。以後、タービンランナ25の回転数をタービン回転数とも称する。出力回転センサ16は、自動変速機2の出力シャフト(出力軸)2bの回転数を検出する。これらのセンサ(アクセル開度センサ11、車速センサ12、エンジン回転センサ14、入力回転センサ15、出力回転センサ16)は、変速制御装置7と通信可能に接続されている。
エンジン制御装置6は、例えばECU(Electric Control Unit)として構成される。ECUは、例えば、MCU(Micro Controller Unit)や、電源回路、ドライバ(コントローラ)、入出力変換回路、入出力保護回路等(いずれも図示されず)を有する。ECUは、回路基板に実装された電子部品(図示されず)で構成される。回路基板は、ケース(図示されず)に収容される。MCUは、CPU(Central Processing Unit)や、主記憶装置(メモリ)、インタフェース(入出力装置)、通信装置、バス等(いずれも不図示)を有する。主記憶装置は、例えば、ROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)等を含む。MCUにおいて、CPUは、主記憶装置等にインストールされたプログラムにしたがって演算処理を実行し、エンジン1の各部を制御する。
変速制御装置7は、例えばECUとして構成される。ECUの構成は、例えば、エンジン制御装置6と同様の構成を有している。変速制御装置7のCPUは、主記憶装置等にインストールされたプログラムにしたがって演算処理を実行し、油圧制御装置8の各部を制御する。次に変速制御装置7がプログラムを実行することで実現される各種構成について説明する。
図5は、本実施形態の変速制御装置7のソフトウェア構成を例示した図である。図5に示されるように、変速制御装置7は、取得部501と、変速点制御部502と、算出部503と、出力部504と、学習部505と、を備える。また、変速制御装置7は、不揮発性の記憶装置を備え、当該不揮発性の記憶装置上に、パラメータ記憶部506を備える。
取得部501は、車両100に設けられた各種センサからの各種の情報を取得する。例えば、取得部501は、出力回転センサ16から出力シャフト(出力軸)2bの回転数を取得する。また、取得部501は、入力回転センサ15から入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数(タービン回転数)を取得する。また、取得部501は、アクセル開度センサ11からアクセル開度を取得する。さらに、取得部501は、油圧制御装置8から、自動変速機2のギア段を締結している油圧の情報を取得する。
取得部501は、入力回転センサ15からの入力シャフト2aの回転数、及び出力回転センサ16からの出力シャフト2bの回転数による回転比率から、現在選択されているギア段のギア比を算出する。そして、取得部501は、算出された(換言すれば、現在選択されているギア段の)ギア比を含んだ、現在選択されているギア段の情報を、パラメータ記憶部506に記憶する。本実施形態は、ギア段のギア比の算出するタイミングを制限するものではなく、例えば、変速制御が行われる毎に算出してもよい。
変速点制御部502は、アクセル開度及び車速に基づいてギア段を切り替えるための変速線が示された変速マップを備え、当該変速マップに基づいて、取得部501により取得された、アクセル開度及び現在の車速に基づいて自動変速機2に対してギア段を選択する変速点(ギア段の切り替わり点)制御を行う。
出力部504は、変速点制御部502で選択されたギア段に切り替えるための命令を、油圧制御装置8に出力する。具体的には、出力部504は、摩擦結合部CBに作用させる油圧の目標値、すなわち油室41の油圧の目標値である指示油圧を油圧制御装置8に出力する。なお、油圧制御装置8は、変速制御装置7に設けられてもよい。
算出部503は、所定条件を満たした場合に行われる変速制御のための演算処理を行う。本実施形態の変速制御は、目標とするギア段に切り替えを行う際に、実際のエンジン回転数が、目標エンジン回転数(後述する目標エンジン回転数の範囲の上限)を超えないよう変速制御を行う。なお、目標エンジン回転数の範囲は、エンジン1の性能や、アクセル開度、現在の車速等に応じて、その都度、実施態様に応じた適切な値が設定されるものとする。
変速制御を行う過程は、トルク相とイナーシャ相との組み合わせとして表現することができる。トルク相は、変速前半の制御であって、次段位のクラッチが締結しはじめてトルクを分担し、前段クラッチの分担トルクがゼロになる状態までをいう。トルク相では、締結による出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化は生じない。イナーシャ相は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数が変速開始時のギア比に応じた回転数から変速終了時のギア比に応じた回転数まで変化する状態までをいう。アップシフトの場合、イナーシャ相では、締結によって、出力シャフト(出力軸)2bの回転数が減少し始める。このため、アップシフトの場合、目標エンジン回転数を超えないように制御を行うためには、変速制御装置7がイナーシャ相開始時の出力シャフト(出力軸)2bの回転数を適切な値になるよう制御を行うことで、目標エンジン回転数を超えないよう制御できる。
算出部503は、平滑化部511を備えている。平滑化部511は、取得部501が取得した出力シャフト(出力軸)2bの回転数に対して、平滑化処理を行う。これにより、取得部501が取得した出力シャフト(出力軸)2bの回転数からノイズを取り除くことができる。
そして、算出部503は、所定条件を満たした場合に、出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の増加率と、現在選択されているギア段におけるギア比と、現在変速を開始してからイナーシャ相が開始されるまでの予測時間(以下、イナーシャ相開始予測時間とも称す)と、スリップ量と、に基づいて、イナーシャ相開始時における、エンジン回転数の推定値(以下、推定エンジン回転数と称す)を算出(推定)する。回転数の増加率は、取得部501が時間の経過とともに複数回取得した、出力シャフト(出力軸)2bの回転数から導出できる。なお、スリップ量とは、現在のトルクコンバータ20の係合度合いに応じたスリップ量を示している。具体的には、算出部503は、推定エンジン回転数を、下記の式(1)から算出する。
推定エンジン回転数=現在の出力シャフト2bの回転数×ギア比+出力シャフト2bの回転数の増加率×ギア比×イナーシャ相開始予測時間+スリップ量……(1)
以下に示す例では、推定エンジン回転数の算出を開始するための所定の条件が、アクセル開度が所定の条件を満たした場合とする。例えば、アクセル開度が、所定時間以上継続的に、所定値以上となっている場合が考えられる。
また、算出部503は、取得部501が時間の経過とともに取得した、出力シャフト(出力軸)2bの複数の回転数と、ギア段のギア比と、に基づいて、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数(タービン回転数)と、当該回転数の増加率と、を算出できる。
本実施形態では、パラメータ記憶部506は、ギア段毎に、変速制御が開始してからイナーシャ相が開始するまでの予測時間(以下、イナーシャ相開始予測時間とも称す)を記憶している。このように、イナーシャ相開始予測時間は、各ギア段毎に異なって定められてもよい。具体的には、ギア段毎のクラッチ容量に比例させる、ギア段毎のギア部品のイナーシャに比例させる、又はギア段ごとのギア比に比例させる、とよい。これらによって推定エンジン回転数の精度が向上することで、より適切なタイミングで変速指示を出力し、好適な変速制御を実現でき得る。
算出部503は、現在のタービン回転数(出力シャフト2bの回転数×ギア比)に、タービン回転数の増加率(出力シャフト2bの回転数の増加率×ギア比)にイナーシャ相開始予測時間を乗算した値と、スリップ量と、を加算することで、現在変速制御を開始した場合のイナーシャ相開始時における、推定エンジン回転数を算出できる。算出部503は、所定時間ごとに、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する。換言すれば、算出部503が推定エンジン回転数を算出する際に、式(1)の代わりに、下記の式(2)でも算出できることを示している。
推定エンジン回転数=現在のタービン回転数+タービン回転数の増加率×イナーシャ相開始予測時間+スリップ量……(2)
そして、出力部504は、算出部503により算出された、イナーシャ相開始時における、推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲(予め定められたエンジン回転数閾値の一例)内となる場合に、現在選択されているギア段から次のギア段への変速指示を出力する。本実施形態は、目標エンジン回転数の範囲(予め定められたエンジン回転数閾値の一例)内となる場合に変速指示を出力する手法に制限するものではなく、例えば、範囲として下限値のみ設定し、現在変速制御を開始した場合のイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が下限値を超えたと判断された際に、変速指示を出力するようにしてもよい。
図6は、本実施形態の現在のアクセル開度に基づいた変速制御を行う場合における、入力シャフト2aの回転数、及び出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化を例示した図である。図6に示される例では、アクセル開度が、所定時間以上、継続的に所定値以上となっているため、エンジン1の回転数が、目標エンジン回転数の上限R11を超えないように変速制御が実施される。なお、図6は、アクセル開度が継続的に所定値以上となっているため、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の増加率が略一定で現在以降も継続されると推定される例とする。
線601は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化を示した線である。線602は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化に、自動変速機2の第1ギア段のギア比を乗算した値を示した線であり、線603は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化に、自動変速機2の第2ギア段のギア比を乗算した値を示した線であり、線604は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化に、自動変速機2の第3ギア段のギア比を乗算した値を示した線である。また、線613を実際のエンジン回転数とする。
図6に示されるように、現在選択されているギア段が第1ギア段の場合、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化の予測に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値を示した線602に沿って、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数(タービン回転数)611が変化すると推定される。そして、タービン回転数611にスリップ量を加算することで、推定エンジン回転数612が推定される。
具体的には、図6に示される推定エンジン回転数612は、算出部503によって上記の式(1)又は式(2)から算出できる。
そして、算出部503は、所定時間ごとに、第1ギア段から第2ギア段への変速制御を現在から開始した場合のイナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出する。そして、出力部504が、算出された推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の下限R12を超えたか否かを判定する。そして、出力部504が、時刻t1において、第1ギア段から第2ギア段への変速を開始した場合のイナーシャ相開始時の時刻t2での推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の下限R12を超えたと判定する。そこで、出力部504は、時刻t1において、第1ギアから第2ギアへの変速指示を出力する。そして、第1ギアから第2ギアへの変速制御を行った場合、実際のエンジン回転数613の最大値が、目標エンジン回転数の下限R12と、上限R11との範囲内に含まれている。これにより、適切なエンジン回転数613による変速制御が実現できたことが確認できる。
イナーシャ相が開始した場合、エンジン回転及びタービン回転は、変速前のギア比から変速後のギア比に応じた回転数への変動が行われるため、エンジン回転数及びタービン回転数が不安定となる。このため、従来は、変速制御が完了するまでの間、次以降の変速制御のための演算ができないという問題が生じていた。
これに対して、本実施形態の算出部503は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2のギア段のギア比を乗算した値を用いて、推定エンジン回転数を算出することとした。これにより、本実施形態の算出部503は、第1のギア段(現在選択されているギア段)から第2のギア段(次のギア段)への変速制御がされている間、例えば、時刻t2〜時刻t3の間でも、上記の式(1)から、第2ギア段(次のギア段)から第3ギア段(次々ギア段)に変速制御を開始した場合のイナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出する。
そして、出力部504が、時刻t3において、第2ギアから第3ギアへの変速開始した場合のイナーシャ相開始時の時刻t4での推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の下限R12を超えると判定する。そこで、出力部504が、時刻t3において、第1ギアから第2ギアへの変速制御の後処理が終わる前であっても、当該変速制御の後処理を切り上げて、第2ギアから第3ギアへの変速を開始するよう指示を出力する。これによって、第2ギアから第3ギアへの変速制御を行った場合に、実際のエンジン回転数613が、目標エンジン回転数の下限R12と、上限R11との範囲内に含まれるよう制御できる。
同様に、出力部504が、時刻t5において、第3ギアから第4ギアへの変速開始した場合のイナーシャ相開始時の時刻t6での推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の下限R12を超えると判定する。そこで、出力部504は、時刻t5において、第3ギアから第4ギアへの変速を開始するよう指示を出力する。これによって、第3ギアから第4ギアへの変速制御を行った場合に、実際のエンジン回転数613が、目標エンジン回転数の下限R12と、上限R11との範囲内に含まれるよう制御できる。
図6に示される例は、アクセル開度が継続的に所定値以上となっている場合について説明した。しかしながら、本実施形態は、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を行うための条件を、アクセル開度に基づいた条件に制限するものではない。次に、ダウン変速制御(例えば、第2ギアから第1ギアへの変速制御)中に、アクセル開度が所定値以上となったため、アップ変速制御(例えば、第1ギアから第2ギアへの変速制御)が必要となった場合について説明する。
通常の変速点制御においては、第1ギアから第2ギアに切り替える条件である12変速点の条件を満たした場合に、ダウン変速制御後に、すぐにアップ変速制御が行われていた。その場合、イナーシャ相開始時のエンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内に収まらないことがあり、適切なタイミングで変速指示を出力できないような状況が生じていた。
そこで、本実施形態においては、通常の変速点制御において、アップ変速制御が可能と判定された場合でも、取得部501が取得した、ダウン変速制御において解放されるギア段側の油圧(以下、解放圧とも称す)に基づいた条件で、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を行うこととした。これにより、ダウン変速制御後に、適切なタイミングまでダウン後の変速段が維持される。例えば、解放圧が予め定められたトルク保持圧より低いと判定された場合に、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を行うことが考えられる。当該変速制御を行うことで、イナーシャ相開始時のエンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内に収まるよう、適切なタイミングで変速指示を出力できる。
また、解放圧が予め定められたトルク保持圧より高いと判定された場合には、ダウン変速制御中であっても、当該変速制御を中断し、ダウン前のギア段を維持しても良い。結果として、ダウン変速制御とアップ変速制御を短時間で実行できる。なお、トルク保持圧は、実施の態様に応じて適切な値が設定されるものとする。
図7は、本実施形態のダウン変速制御後にアップ変速制御を行う際に、解放圧がトルク保持圧より低い場合における、入力シャフト2aの回転数、及び出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化を例示した図である。
線701は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の変化を示した線である。線703は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線702は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第2ギアのギア比を乗算した値を示した線である。
そして、線704は、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数(タービン回転数)であって、線705は、推定エンジン回転数とし、線706は、実際のエンジン回転数とする。
本実施形態の取得部501は、油圧制御装置8から、変速制御においてギア段を締結するために用いられている油圧を取得している。
図7に示されるように、ダウン制御実施中の時刻t20〜時刻t21においては、エンジン回転数が12変速線より高くなっている。このため、通常の変速点制御であれば、12変速線に従って、即座に、アップ変速判断が開始される。しかしながら、本実施形態の取得部501は、取得した第1のギア段の油圧が、予め定められたトルク保持圧より低いと判断する。この場合は、12変速線に従った通常の変速点制御を行わずに、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を行う。
このため、算出部503は、所定時間ごとに、上記の式(1)に基づいて、第1ギア段から第2ギア段に変速制御を開始した場合のイナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出する。
そして、出力部504は、時刻t22において、算出部503によって算出された、第1ギア段から第2ギア段に変速制御を開始した場合のイナーシャ相開始時の時刻t23での推定エンジン回転数705が、目標エンジン回転数の下限R22以上になると判定する。このため、出力部504は、時刻t22において、第1ギアから第2ギアへの変速指示を出力する。これによって、実際のエンジン回転数706は、目標エンジン回転数の範囲内(目標エンジン回転数の下限R22以上であり目標エンジン回転数の上限R21以下)になるよう制御できる。
学習部505は、出力部504によって変速指示が行われた後の変速制御において、実際のエンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内に収まったか否かに基づいて、イナーシャ相開始予測時間の学習を行う。
パラメータ記憶部506は、学習部505による学習結果による、イナーシャ相開始予測時間を記憶する。
次に、変速制御装置7における全体的な処理手順について説明する。図8は、本実施形態の変速制御装置7における全体的な処理手順を示したフローチャートである。
取得部501は、車速センサ12からの車速と、アクセル開度と、入力シャフト2aの回転数と、出力シャフト2bの回転数と、タービン回転数と、を取得する(S801)。そして、取得部501は、入力シャフト2aの回転数、及び出力シャフト2bの回転数からギア比を算出し、当該ギア比を含めたギア段に関する情報を、パラメータ記憶部506に格納する。
次に、変速点制御部502は、変速マップに基づいて、アクセル開度と、現在の車速と、に基づいて自動変速機2に対してギア段を選択する変速点制御を行う(S802)。
そして、取得部501は、変速制御においてギア段を締結するために用いられている油圧の情報を取得する(S803)。
取得部501は、変速制御の条件を満たしたか否かを判定する(S804)。満たしていないと判定した場合(S804:No)、再びS801から処理を行う。変速制御の条件とは、例えば、アクセル開度が継続的に所定値以上出力されている場合や、ダウン変速制御の後アップ変速制御を行う際において、解放するギア段の油圧が、予め定められたトルク保持圧より低い場合などが考えられる。
そして、取得部501が、変速制御の条件を満たしたと判定した場合(S804:Yes)、変速点制御部502は、変速点制御を停止する(S805)。
そして、取得部501は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数、及び、パラメータ記憶部506から、現在選択されているギア段の情報(例えばギア比)を取得する(S806)。算出部503は、取得部501が取得した、出力シャフト(出力軸)2bの回転数、回転数の増加率、ギア段の情報(ギア比)、及びイナーシャ相開始予測時間に基づいて、現在から変速制御を開始した場合にイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S807)。回転数の増加率は、取得部501が取得した今回の出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、取得部501が取得した今までの出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、の違いから算出される。また、イナーシャ相開始予測時間、及びギア比は、パラメータ記憶部506から読み込む。
そして、出力部504は、推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の下限を超えたか否か、換言すれば、目標エンジン回転数の範囲に含まれたか否かを判定する(S808)。そして、目標エンジン回転数の範囲内ではないと判定した場合(S808:No)、再びS806から処理を行う。
一方、出力部504は、推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内であると判定した場合(S808:Yes)、出力部504が、変速制御の指示を出力することで、変速制御が開始される(S809)。
そして、変速制御が終了した後、学習部505が、今回の変速制御中における実際のエンジン回転数に基づいたイナーシャ相開始予測時間の学習を行う(S810)。
本実施形態においては、上述した処理手順によって、目標エンジン回転数の範囲内で収まるような(換言すれば、目標エンジン回転数の範囲の上限より低く、当該範囲の下限より高いエンジン回転数による)変速制御を実現できる。
次に、S807における推定エンジン回転数の算出処理の手順について説明する。図9は、本実施形態の算出部503における、推定エンジン回転数の算出処理の手順を示したフローチャートである。
まず、平滑化部511が、取得部501が取得した、出力シャフト(出力軸)2bの時間経過に伴う回転数について平滑化処理を行う(S901)。
次に、算出部503は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、現在選択されているギア段のギア比を乗算して、入力シャフト2aの回転数(タービン回転数)を算出する(S902)。
そして、算出部503は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の増加率に、現在選択されているギア段のギア比を乗算して、タービン回転数の増加率を算出する(S903)。
さらに、算出部503は、トルクコンバータ20の係合度合いに基づいて、スリップ量を算出する(S904)。トルクコンバータ20の係合度合いは、具体的には、タイビン回転数の増加率を用いることで算出可能とする。
次に、算出部503は、現在のタービン回転数、タービン回転数の増加率、イナーシャ相開始予測時間、及びスリップ量に基づいて、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S905)。具体的に算出部503は、上記の式(2)に、現在のタービン回転数、タービン回転数の増加率、イナーシャ相開始予測時間、及びスリップ量を代入して、推定エンジン回転数を算出する。なお、イナーシャ相開始予測時間は、パラメータ記憶部506から読み出される。
上述した処理手順によって、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が算出される。これによって、実際のエンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内になるように変速制御を行うことができる。
しかしながら、算出部503によって算出される、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数は、推定値であるため、誤差が生じる場合がある。そこで、本実施形態では図8のS810において、学習部505が学習を行うことで誤差を低減させる制御を実現している。
図10は、本実施形態の学習部505における、イナーシャ相開始予測時間の学習処理の手順を示したフローチャートである。
まず、学習部505は、取得部501により取得されたエンジン回転センサ14による実際のエンジン回転数から、変速制御中における最大エンジン回転数を特定する(S1001)。そして、学習部505は、変速制御中の最大エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の上限より大きいか否かを判断する(S1002)。
学習部505は、変速制御中の最大エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の上限を超えていると判断した場合(S1002:Yes)、イナーシャ相開始時間補正値として“正の所定値A”を設定する(S1003)。“正の所定値A”は、正の実数であればよく、実施態様に応じて適切な値が設定される。
一方、学習部505は、変速制御中の最大エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の上限を超えていないと判断した場合(S1002:No)、変速制御中の最大エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の下限より小さいか否かを判定する(S1004)。
学習部505は、変速制御中の最大エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲の下限より小さいと判断した場合(S1004:Yes)、イナーシャ相開始時間補正値として“負の所定値B”を設定する(S1005)。“負の所定値B”は、負の実数であればよく、実施態様に応じて適切な値が設定される。
一方、学習部505は、目標エンジン回転数の範囲の下限より小さくないと判断した場合(S1004:No)、目標エンジン回転数の範囲内に収まっていると判断し、イナーシャ相開始時間補正値として“0”を設定する(S1006)。
そして、学習部505は、現在のイナーシャ相開始予測時間に、イナーシャ相開始時間補正値を加算する(S1007)。つまり、目標エンジン回転数の上限を超えていると判断された場合には、イナーシャ相開始予測時間を長くする制御を行い、目標エンジン回転数の下限より小さいと判断された場合には、イナーシャ相開始予測時間を短くする制御を行う。
そして、学習部505は、算出されたイナーシャ相開始予測時間を、パラメータ記憶部506を更新する(S1008)。これにより、推定エンジン回転数が、実際のエンジン回転数により近い値に修正できる。
本実施形態においては、タービン回転数やエンジン回転数が不安定になったとしても、出力軸の回転数とギア比とに基づいた推定エンジン回転数がイナーシャ相開始時に、目標エンジン回転数の範囲内に含まれるように変速制御を行う。これにより、実際のエンジン回転数も目標エンジン回転数の範囲内に含まれるよう、好適な変速制御を実現できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、現在が第1ギア段の場合でも、第2ギア段を介して、第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時で、目標エンジン回転数の範囲に含まれるよう変速制御を行う場合について説明する。なお、変速制御装置7の構成は、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
第2の実施形態では、現在が第1ギア段の場合でも、第2ギア段を介して、第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時で、目標エンジン回転数の範囲に含まれるよう変速制御を行う場合について説明する。なお、変速制御装置7の構成は、第1の実施形態と同様として説明を省略する。
図11は、第2の実施形態のギア段ごとの推定エンジン回転数に基づいて算出された変速開始時刻を例示した図である。
線1101は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数を示した線である。線1104は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値にスリップ量を加算した推定エンジン回転数を示した線であり、線1103は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第2ギアのギア比を乗算した値にスリップ量を加算した推定エンジン回転数を示した線であり、線1102は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第3ギアのギア比を乗算した値にスリップ量を加算した推定エンジン回転数を示した線である。
任意の時間からイナーシャ相開始予測時間後における推定エンジン回転数は、上記の式(1)で示したように“任意の時間の出力シャフト2bの回転数×ギア比+出力シャフト2bの回転数の増加率×ギア比×イナーシャ相開始予測時間+スリップ量”で表される。“任意の時間の出力シャフト2bの回転数×ギア比+出力シャフト2bの回転数の増加率×ギア比×イナーシャ相開始予測時間”は、任意の時間からイナーシャ相開始予測時間後のタービン回転数、換言すれば任意の時間からイナーシャ相開始予測時間後の“出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値”と一致する。このため、線1102、線1103、線1104は、任意の時間において変速制御を開始した場合に、式(1)から導出される、イナーシャ相開始予測時間後における、ギア段毎の推定エンジン回転数と一致する。
本実施形態においては、算出部503は、例えば、アクセル開度が所定の条件を満たした場合に、線1104に基づいた、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時の時刻t33における推定エンジン回転数の算出とともに、線1103に基づいた、第2ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時の時刻t34での推定エンジン回転数の算出を開始する。
時刻t31において変速制御を開始した場合に、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時の時刻t33での推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数となる。一方、時刻t32において変速制御を開始した場合に、第1ギア段から、第2ギア段を介して、第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時の時刻t34での推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数となる。時刻t31が、時刻t32より速いため、時刻t31において、変速制御が開始される。
第1ギア段から第2ギア段への変速制御における第1のイナーシャ相開始予測時間1111は、第1の実施形態と同様とする。一方、本実施形態にかかる、第1ギア段から、第2ギア段を介して、第3ギア段への変速制御における第2のイナーシャ相開始予測時間1112は、パラメータ記憶部506に予め記憶されている。
第1ギア段から第3ギア段への変速制御における第2のイナーシャ相開始予測時間1112は、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間と、第2ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間と、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相経過予測時間と終了処理時間と、の和から算出した値とする。
つまり、本実施形態の算出部503は、上記の式(1)から、出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の増加率と、現在選択されているギア段(例えば第1ギア)におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段(例えば第2ギア)へのイナーシャ相開始予測時間と、スリップ量と、に基づいて、次のギア段(例えば第2ギア)への変速制御におけるイナーシャ相開始時の第1の推定エンジン回転数を算出する。当該算出とともに、算出部503は、上記の式(1)に、出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、出力シャフト(出力軸)2bの回転数の増加率と、次のギア段(例えば第2ギア)におけるギア比と、現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間と次のギア段への変速制御におけるイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでのイナーシャ相経過予測時間且つ終了処理時間と次のギア段から次々ギア段(第3ギア)へのイナーシャ相開始予測時間との合計時間(イナーシャ相開始予測時間として用いる)と、スリップ量と、を代入して、次々ギア段(例えば第3ギア)への変速制御におけるイナーシャ相開始時の第2の推定エンジン回転数の算出も行う。
そして、出力部504は、(第2ギア段へのイナーシャ相開始時の)第1の推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内に収まるよう(少なくとも目標エンジン回転数の範囲の上限を超えないよう)変速制御を開始する場合の第1の変速制御開始時刻と、(第3ギア段へのイナーシャ相開始時の)第2の推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内に収まるよう(少なくとも目標エンジン回転数の範囲の上限を超えないよう)変速制御を開始する場合の第2の変速制御開始時刻と、のうちいずれか早い時刻に、ギア段の変速制御を開始するよう指示を出力する。
図12は、車両100に荷物が積載されていない場合における、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を例示した図である。図12で示された例では、車両100に荷物が積載されていないため、車両100の加速が比較的早い場合とする。
線1201は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数を示した線である。線1204は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1203は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第2ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1202は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第3ギアのギア比を乗算した値を示した線である。
図12に示す例では、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1221、第2ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1222、及び第1ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1223とする。
図12に示される例では、線1203に従って算出された推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の下限値を超える時刻からイナーシャ相開始予測時間1223前の第2の変速制御開始時刻t41が、線1204に従って算出された推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内になる時刻からイナーシャ相開始予測時間1221前の第1の変速制御開始時刻t43より早い時間になる。なお、線1205は、第1の変速制御開始時刻t43に変速制御を開始した場合に第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時までの推定エンジン回転数を示している。
このため、本実施形態の出力部504は、第2の変速制御開始時刻t41に第2ギア段への変速制御を行う指示を出力する。さらに、出力部504は、時刻t42に第3ギア段への変速制御を行う指示を出力する。当該変速制御に従って、油圧制御装置8は、第1ギア段の解放制御1251、第2ギア段の締結制御及び解放制御1252、並びに第3ギア段の締結制御1253を行う。
当該制御に従って、時間の経過とともに、図12に示されるように、タービン回転数1211、及び、エンジン回転数1212が変化する。これにより、第3ギア段の変速制御時のイナーシャ相開始時において、目標エンジン回転数の範囲内になるようにエンジン回転数1212を制御することができる。
図12で示される例では、エンジン回転数1212で示されるように、第2ギア段への変速制御時のイナーシャ相開始時において、推定エンジン回転数は、目標エンジン回転数の範囲より小さくなるが、第3ギア段への変速制御時のイナーシャ相開始時において、推定エンジン回転数は、目標エンジン回転数の範囲内になる。
仮に、図12で示されるような、エンジン回転数が増加している場合、第2ギア段への変速制御時のイナーシャ相開始時において、推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内になるよう制御すると、第3ギア段への変速制御時のイナーシャ相開始時において、推定エンジン回転数は、目標エンジン回転数の上限より大きくなる可能性がある。
そこで、本実施形態においては、上述した制御を行うことで、目標エンジン回転数の範囲に収まるよう制御することを可能とした。
図13は、車両100に荷物が積載されている場合における、目標エンジン回転数に基づいた変速制御を例示した図である。図13で示された例では、車両100に荷物が積載されているため、車両100の加速が比較的遅い場合とする。
線1301は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数を示した線である。線1304は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1303は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第2ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1302は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第3ギアのギア比を乗算した値を示した線である。
図13に示す例では、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1361、第2ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1362、及び第1ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1363とする。
図13に示される例では、線1304に従って算出された推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内になる時刻からイナーシャ相開始予測時間1361前の第1の変速制御開始時刻t51が、線1303に従って算出された推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内になる時刻からイナーシャ相開始予測時間1363前の第2の変速制御開始時刻t52より早い時間になる。
このため、本実施形態の出力部504は、第1の変速制御開始時刻t51に第2ギア段への変速制御を行う指示を出力する。さらに、出力部504は、時刻t53に第3ギア段への変速制御を行う指示を出力する。当該変速制御に従って、油圧制御装置8は、第1ギア段の解放制御1351、第2ギア段の締結制御1352、並びに第3ギア段の締結制御1353を行う。
当該制御に従って、時間の経過とともに、図13に示されるように、タービン回転数1311、及び、エンジン回転数1312が変化する。これにより、第2ギア段の変速制御のイナーシャ相開始時、及び第3ギア段の変速制御時のイナーシャ相開始時において、目標エンジン回転数の範囲内になるようにエンジン回転数1312を制御できる。
次に、変速制御装置7における全体的な処理手順について説明する。図14は、本実施形態の変速制御装置7における全体的な処理手順を示したフローチャートである。
本実施形態の変速制御装置7においては、図8のS801〜S805と同様の制御を行うことで、変速点制御を停止まで行われる(S1401〜S1405)。
そして、取得部501は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数、及び、パラメータ記憶部506から、現在選択されているギア段の情報(例えばギア比)を取得する(S1406)。そして、算出部503は、現在変速制御を開始した場合に、ギア段N+1へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S1407)。なお、本実施形態では、現在選択されているギア段Nとし、ギア段Nから変速制御でギア段N+1に切り替えられるものとする。
出力部504は、算出されたギア段N+1へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内か否かを判定する(S1408)。範囲内と判定した場合(S1408:Yes)、変速進行フラグ=“1段”と設定し(S1409)、S1413の処理に移行する。変速進行フラグは、実行された変速制御を示すフラグで、S1414の学習時に用いられる。
一方、出力部504は、算出されたギア段N+1へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲より小さいと判定した場合(S1408:No)、算出部503は、現在変速制御を開始した場合に、ギア段N+1を介して、ギア段N+2へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S1410)。
出力部504は、算出されたギア段N+2へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲内か否かを判定する(S1411)。範囲内と判定した場合(S1411:Yes)、変速進行フラグ=“2段”と設定し(S1412)、S1413の処理に移行する。
一方、出力部504は、算出されたギア段N+2へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が、目標エンジン回転数の範囲より小さいと判定した場合(S1411:No)、再びS1406から処理を開始する。
S1413においては、出力部504が、変速制御の指示を出力することで、変速制御が開始される。
そして、変速制御が終了した後、学習部505が、今回のイナーシャ相開始時のエンジン回転数に基づいた学習を行う(S1414)。
本実施形態においては、上述した処理手順によって、目標エンジン回転数の範囲内に含まれるような変速制御、換言すれば目標エンジン回転数の範囲内で収まるような(換言すれば、目標エンジン回転数の範囲の上限より低く、当該範囲の下限より高いエンジン回転数による)変速制御を実現できる。
次に、S1408、S1410における推定エンジン回転数の算出処理の手順について説明する。図15は、本実施形態の算出部503における、推定エンジン回転数の算出処理の手順を示したフローチャートである。
本実施形態の算出部503においては、図9のS901〜S904と同様の制御を行うことで、スリップ量の算出まで行われる(S1501〜S1504)。
次に、算出部503は、イナーシャ相開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1505)。
そして、算出部503は、現在のタービン回転数、タービン回転数の増加率、S1405で読み出されたイナーシャ相開始予測時間、及びスリップ量に基づいて、上記の式(2)から、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S1506)。なお、ギア段N+1へのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する場合には、ギア段Nのタービン回転数、ギア段Nのタービン回転数の増加率を用いる。一方、ギア段N+2のイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する場合には、ギア段N+1のタービン回転数、ギア段N+1のタービン回転数の増加率を用いる。
上述した処理手順によって、イナーシャ相開始時における推定エンジン回転数が算出される。これによって、イナーシャ相開始時において、目標エンジン回転数の範囲内になるように変速制御を行うことができる。
次に、S1505におけるイナーシャ相開始予測時間の読み出し処理の手順について説明する。図16は、本実施形態の算出部503における、イナーシャ相開始予測時間の読み出し処理の手順を示したフローチャートである。図16に示されるフローチャートでは、現在選択されているギア段Nとし、現在算出対象のギア段とは、S1408やS1411でイナーシャ相開始時として判定されたギア段とする。
算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+1か否かを判定する(S1601)。現在算出対象のギア段が、ギア段N+1と判定した場合(S1601:Yes)、算出部503は、ギア段Nからギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1602)。
一方、現在算出対象のギア段が、ギア段N+1ではないと判定した場合(S1601:No)、算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2か否かを判定する(S1603)。
算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2であると判定した場合(S1603:Yes)、算出部503は、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1604)。
パラメータ記憶部506は、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間を記憶している。ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間は、ギア段Nからギア段N+1への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間と、ギア段N+1への変速制御におけるイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでのイナーシャ相経過予測時間且つ変速制御の終了処理時間(切り上げ可能な時間だけ短縮してもよい)と、ギア段N+1からギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間との合計時間とする。
算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2でないと判定した場合(S1603:No)、デフォルト値であるイナーシャ開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1605)。
本実施形態では図14のS1414において、学習部505が学習を行うことで誤差を低減させる制御を実現している。本実施形態では、ギア段Nからギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間の誤差を低減させるが、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間はどこに誤差が生じているか把握するのが難しいため、誤差を低減させる補正を行わないこととした。
図17は、本実施形態の学習部505における、イナーシャ相開始予測時間の学習処理の手順を示したフローチャートである。
まず、学習部505は、変速制御中における最大エンジン回転数を特定する(S1701)。そして、学習部505は、変速進行フラグが“1段”か否かを判定する(S1702)。
学習部505は、変速進行フラグが“1段”であると判定した場合(S1702:Yes)、図10のS1002〜S1008と同様の制御を行うものとして処理を終了する(S1703〜S1709)。
一方、学習部505は、変速進行フラグが“1段”ではない、換言すれば“2段”であると判定した場合(S1702:No)、イナーシャ相開始時間補正値として“0”を設定し(S1707)、学習部505は、現在のイナーシャ相開始予測時間から、イナーシャ相開始時間補正値“0”を加算、換言すれば補正を行わず(S1708)、補正されていないイナーシャ相開始予測時間で、パラメータ記憶部506を更新し(S1709)、処理を終了する。
本実施形態では、ギア段Nからギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間の誤差のみ低減させることで、誤差の補正精度を向上させることができる。
(第2の実施形態の変形例1)
上述した実施形態においては、ギア段Nからギア段N+2への変速制御を行う際に、ギア段N+1への変速制御が完了した後、ギア段N+2への変速制御が開始するまでの間、特に制御を行わなかった。しかしながら、ギア段N+1への変速制御が完了した後、ギア段N+2への変速制御が開始するまでの間、どのような制御を行ってもよい。
上述した実施形態においては、ギア段Nからギア段N+2への変速制御を行う際に、ギア段N+1への変速制御が完了した後、ギア段N+2への変速制御が開始するまでの間、特に制御を行わなかった。しかしながら、ギア段N+1への変速制御が完了した後、ギア段N+2への変速制御が開始するまでの間、どのような制御を行ってもよい。
そこで、第2の実施形態の変形例1では、ギア段N+1への変速制御が完了した後、ギア段N+2への変速制御が開始するまでの間にロックアップ制御を行う場合について説明する。
図18は、第2の実施形態の変形例1にかかる変速制御において、第2ギア段から第3ギア段に変速制御が開始されるまでの間にロックアップ制御を行った場合を例示した図である。
線1801は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数を示した線である。線1804は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第1ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1803は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第2ギアのギア比を乗算した値を示した線であり、線1802は、出力シャフト(出力軸)2bの回転数に、自動変速機2の第3ギアのギア比を乗算した値を示した線である。
図18に示す例では、第1ギア段から第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1841、第2ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1842、及び第1ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1843とする。
第1ギア段から、第2ギア段を介した第3ギア段への変速制御においてはロックアップ制御が含まれている。ロックアップ制御とは、トルクコンバータ20を介して接続されているエンジン1の回転と、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転と、をロックアップクラッチ28で締結する制御をいう。当該制御を行われると、エンジン1の回転数と、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)の回転数と、が一致することになる。
図18に示される例では、線1803に従って算出された推定エンジン回転数が目標エンジン回転数の範囲内になる時刻から、イナーシャ相開始予測時間1843前の時刻t61が、変速制御の開始時となる。
本実施形態の出力部504は、時刻t61に第2ギア段への変速制御を行う指示を出力する。さらに、出力部504は、時刻t62に第3ギア段への変速制御を行う指示を出力する。当該変速制御に従って、油圧制御装置8は、第1ギア段の解放制御1821、第2ギア段の締結制御1822及び解放制御1824、並びに第3ギア段の締結制御1825を行う。
さらに本実施形態の出力部504は、第2ギアへの変速制御が完了した後、ロックアップ制御の指示を出力する。これにより、油圧制御装置8は、エンジン1の回転と、入力シャフト2a(トルクコンバータ20のタービンランナ25)との間のトルクコンバータ20の締結制御1823を開始する。当該制御によって、ロックアップ制御後には、エンジン回転数1812とタービン回転数1811とが一致する。
当該ロックアップ制御のため、第1ギア段から第3ギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始予測時間1843は、第2の実施形態より長くなる。
つまり、第1ギア段から第3ギア段のイナーシャ相開始予測時間1843は、第1ギア段から第2ギア段への変速制御へのイナーシャ相開始予測時間1831と、第2ギア段への変速制御におけるイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでのイナーシャ相経過予測時間且つ変速制御の終了処理時間(切り上げ可能な時間だけ短縮してもよい)1832と、ロックアップ制御時間1833と、第2ギア段から第3ギア段へのイナーシャ相開始予測時間1834との合計時間とする。
本変形例の処理は、ロックアップ制御を行う以外、第2の実施形態の処理とほぼ同様とするが、S1505におけるイナーシャ相開始予測時間の読み出し処理のみ異なる。そこで、本変形例のイナーシャ相開始予測時間の読み出し処理の手順について説明する。図19は、本変形例の算出部503における、イナーシャ相開始予測時間の読み出し処理の手順を示したフローチャートである。
算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+1か否かを判定する(S1901)。現在算出対象のギア段が、ギア段N+1と判定した場合(S1901:Yes)、算出部503は、ギア段Nからギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1902)。
一方、現在算出対象のギア段が、ギア段N+1ではないと判定した場合(S1901:No)、算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2か否かを判定する(S1903)。
算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2であると判定した場合(S1903:Yes)、算出部503は、ギア段N+1において、ロックアップ制御を行うか否かを判定する(S1904)。ロックアップ制御を行わないと判定した場合(S1904:No)、算出部503は、パラメータ記憶部506から、ロックアップ制御時間が加えられていない、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間を読み出す(S1906)。ロックアップ制御時間が加えられていない、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間は、第2の実施形態と同様とする。
一方、算出部503は、ギア段N+1において、ロックアップ制御を行うと判定した場合(S1904:Yes)、算出部503は、パラメータ記憶部506から、ロックアップ制御時間が加えられている、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間を読み出す(S1905)。ロックアップ制御時間が加えられた、ギア段Nからギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間は、上述した通りとする。
一方、S1903において、算出部503は、現在算出対象のギア段が、ギア段N+2でないと判定した場合(S1903:No)、デフォルト値であるイナーシャ開始予測時間を、パラメータ記憶部506から読み出す(S1907)。
本実施形態においては、ロックアップ制御を行う場合でも、第2の実施形態と同様の制御を実現できる。
(第2の実施形態の変形例2)
本変形例は、次のギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数をより正確に推定するための処理を行う例とする。
本変形例は、次のギア段への変速制御におけるイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数をより正確に推定するための処理を行う例とする。
本変形例においては、変速段ごとにギア比に準じた係数を設定し、加速度に対して係数を乗算することで、推定エンジン回転数の算出精度を高めることとしている。
つまり、第1ギア段から、第2ギア段を介して、第3ギア段まで変速制御を行う場合に、第2ギア段で走行している間は、ギア比係数α=第2ギア係数GP2/第1ギア係数GP1を用いて、推定エンジン回転数を算出する。なお、第2ギア係数GP2、第1ギア係数GP1は、ギア段毎に予め定められた係数とする。ギア比係数αは、設計的にはギア比に相当するが、ギア比毎のロス率が異なるため、実施態様に応じた値となる。
図20は、本変形例の算出部503が算出する推定エンジン回転数の算出処理の手順を示したフローチャートである。
本実施形態の算出部503においては、図9のS901〜S904と同様の制御を行うことで、スリップ量の算出まで行われる(S2001〜S2004)。
次に、算出部503は、算出対象のギア段が、ギア段N+1(なお、現在選択されているギア段Nとする。)であるか否かを判定する(S2005)。
そして、算出対象のギア段が、ギア段N+1と判定した場合(S2005:Yes)、算出部503は、ギア段Nのタービン回転数、ギア段Nのタービン回転数の増加率、ギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間、及びスリップ量に基づいて、N+1段ギアへのイナーシャ相開始時における推定エンジン回転数を算出する(S2006)。
一方、算出対象のギア段が、ギア段N+1ではないと判定した場合(S2005:No)、算出部503は、算出対象のギア段が、ギア段N+2であるか否かを判定する(S2007)。
算出部503は、算出対象のギア段が、ギア段N+2であると判定した場合(S2007:Yes)、ギア比係数αを考慮して、ギア段N+2へのイナーシャ相開始時のエンジン回転数を算出する(S2008)。
具体的には、算出部503は、下記の式(3)からギア段N+2へのイナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出する。
ギア段N+2への推定エンジン回転数=ギア段N+1のタービン回転数(現在のタービン回転数)+ギア段N+1のタービン回転数の増加率×ギア段N+1へのイナーシャ相開始予測時間+ギア段N+1のタービン回転数の増加率×ギア段N+1のイナーシャ相経過予測時間且つ変速制御の終了処理時間×ギア比係数α+ギア段N+1のタービン回転数の増加率×ギア段N+2へのイナーシャ相開始予測時間×ギア比係数α+スリップ量……(3)
一方、算出対象のギア段が、ギア段N+2ではないと判定した場合(S2007:No)、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数としてデフォルト値を設定して(S2009)、処理を終了する。
本変形例においては、上述した制御を行うことで、ギア比を考慮した制御が行われるためより高い精度で推定エンジン回転数を算出できる。これによって、より適切な変速制御を実現できる。
上述した実施形態及び変形例では、エンジン回転数閾値の例として、目標エンジン回転数の範囲を設定した例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、目標エンジン回転数の範囲を設定する手法に制限するものではない。例えば、目標エンジン回転数の上限値のみ設定し、当該上限値を超えないよう変速制御を行ってもよい。
上述した実施形態及び変形例においては、出力シャフト(出力軸)2bの回転数と、ギア比と、に基づいて、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数を算出した。
当該算出手法では、従来のようなエンジン回転数やタービン回転数に基づいた、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数の算出と比べて、変速制御前や変速制御中にかかわらず、推定エンジン回転数の算出が可能となる。このため、エンジン回転数が、目標となるエンジン回転数の範囲内になるよう公的な変速制御を実現できる。
従来のようなエンジン回転数やタービン回転数に基づいた、イナーシャ相開始時の推定エンジン回転数の算出では、タービン回転数やエンジン回転数が安定するまでの次の変速制御のための推測を行うことが難しかった。これに対して、当該算出手法では、変速制御前や変速制御中にかかわらず、推定エンジン回転数の算出が可能となる。このため、エンジン回転数が、目標となるエンジン回転数の範囲内になるよう公的な変速制御を実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…エンジン
2…自動変速機
7…変速制御装置
8…油圧制御装置
100…車両
501…取得部
502…変速点制御部
503…算出部
504…出力部
505…学習部
506…パラメータ記憶部
511…平滑化部。
2…自動変速機
7…変速制御装置
8…油圧制御装置
100…車両
501…取得部
502…変速点制御部
503…算出部
504…出力部
505…学習部
506…パラメータ記憶部
511…平滑化部。
Claims (6)
- エンジンから回転動力が入力される自動変速機からの出力軸の回転数を取得する取得部と、
所定の条件を満たした場合に、前記出力軸の回転数と、前記出力軸の回転数の増加率と、前記自動変速機の現在選択されているギア段におけるギア比と、当該現在選択されているギア段から次のギア段への変速制御を開始してから第1のイナーシャ相が開始されるまでの第1の時間と、に基づいて、第1のイナーシャ相開始時の前記エンジンの第1の推定エンジン回転数を算出する算出部と、
前記第1の推定エンジン回転数と、予め定められたエンジン回転数閾値と、に基づいて、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速指示を出力する出力部と、
を備える変速制御装置。 - 前記算出部は、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速制御がされている間に、前記出力軸の回転数と、前記出力軸の回転数の増加率と、前記次のギア段のギア比と、前記次のギア段から次々ギア段への変速制御を開始してから第2のイナーシャ相が開始されるまでの第2の時間と、に基づいて、前記次のギア段から当該次々ギア段に変速制御する際の第2のイナーシャ相開始時の前記エンジンの第2の推定エンジン回転数を算出し、
前記出力部は、前記次のギア段への変速制御の後処理が終わる前に、前記第2の推定エンジン回転数と、前記予め定められたエンジン回転数閾値と、に基づいて、前記次のギア段から前記次々ギア段への変速指示を出力する、
請求項1に記載の変速制御装置。 - 前記取得部は、さらに、アクセル開度を取得し、
前記所定の条件は、前記アクセル開度に関する条件である、
請求項1又は2に記載の変速制御装置。 - 前記取得部は、さらに変速制御においてギア段を締結するために用いられている油圧を取得し、
前記所定の条件は、所定の自然数をNとしたとき、ギア段N+1からギア段Nに切り替えている間において、さらに、当該ギア段Nから当該ギア段N+1に切り替えられる際に、前記次のギア段を当該ギア段N+1として、当該ギア段N+1を締結する油圧が、あらかじめ定められたトルク保持圧より低い場合である、
請求項1又は2に記載の変速制御装置。 - 前記算出部は、さらに、前記出力軸の回転数と、前記出力軸の回転数の増加率と、前記現在選択されているギア段におけるギア比と、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速制御を開始してから前記第1のイナーシャ相が開始されるまでの前記第1の時間と、に基づいて、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速制御する際の前記第1のイナーシャ相開始時の前記エンジンの前記第1の推定エンジン回転数を算出するとともに、
前記出力軸の回転数と、前記出力軸の回転数の増加率と、前記次のギア段におけるギア比と、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速制御を開始してから前記第1のイナーシャ相が開始されるまでの前記第1の時間と前記第1のイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでの第3の時間と前記次のギア段から次々ギア段への変速制御を開始してから第2のイナーシャ相が開始されるまでの第2の時間との合計時間と、に基づいて、当該次々ギア段への変速制御する際の第2のイナーシャ相開始時の第2の推定エンジン回転数を算出し、
前記出力部は、さらに、前記第1の推定エンジン回転数が前記予め定められたエンジン回転数閾値を超えないよう変速制御を行う場合の第1の制御開始時刻と、前記第2の推定エンジン回転数が前記予め定められたエンジン回転数閾値を超えないよう変速制御を行う場合の第2の制御開始時刻と、のうちいずれか早い時刻に、変速指示を出力する、
請求項1に記載の変速制御装置。 - 前記算出部は、前記出力軸の回転数と、前記出力軸の回転数の増加率と、前記次のギア段におけるギア比と、前記現在選択されているギア段から前記次のギア段への変速制御を開始してから前記第1のイナーシャ相が開始されるまでの前記第1の時間と前記第1のイナーシャ相が開始されてから変速制御が終了するまでの前記第3の時間と前記次のギア段から前記次々ギア段への変速制御を開始してから前記第2のイナーシャ相が開始されるまでの前記第2の時間と前記次のギア段でロックアップ制御に要する第4の時間との合計時間と、に基づいて、前記第2のイナーシャ相開始時の前記エンジンの前記第2の推定エンジン回転数を算出する、
請求項5に記載の変速制御装置。
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JPS60131326A (ja) * | 1983-12-21 | 1985-07-13 | Nissan Motor Co Ltd | 自動変速機の変速シヨツク軽減装置 |
JP2004316845A (ja) * | 2003-04-18 | 2004-11-11 | Toyota Motor Corp | 車両用自動変速機の変速制御装置 |
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Patent Citations (2)
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