JP2020183425A - 改善されたα−Vβ−8抗体 - Google Patents

改善されたα−Vβ−8抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】インテグリンαvβ8に特異的な抗体を作製する方法。【解決手段】活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害する組換え抗体を作製する方法であって、β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合する抗体を同定するステップと;グリコシル化部位を導入するため、前記重鎖CDR2配列を組換え的に修飾するステップと;前記抗体を発現させるステップと、を含み、ここで前記抗体は、β8への結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法。該抗体はインテグリンαvβ8に特異的な抗体であり、結合時、活性型成熟TGFβペプチドの放出を誘導するαvβ8の能力が阻害される。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本願は、2014年6月17日に出願された米国特許出願第62/013,114号明細書の利益を主張するものであり、その全内容は参照により援用される。
多機能性サイトカイントランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)は、無脊椎動物種および脊椎動物種における発生および成体期の間での免疫、内皮、上皮、および間葉系細胞に影響を与える。TGF−βは、T細胞、心臓、肺、血管、および口蓋の発生における役割を果たす。TGF−β1が欠損したマウスは、卵黄嚢脈管形成における欠陥のために子宮が死滅するか、または重篤な多臓器自己免疫を伴って成人期まで生存する。TGF−βシグナル伝達メディエーターSmad2の遺伝的欠失は、それが初期のパターン形成および中胚葉形成において必須であることを示す。Smad3欠損マウスは、生存可能であり、繁殖性があるが、四肢奇形、免疫調節不全、大腸炎、結腸がん、および肺胞拡張を呈する。成体組織内では、TGF−β経路は、環境ストレスに応答して恒常性を維持するように、免疫、間葉、および上皮細胞相互作用に関与する。
TGF−βによって媒介される恒常性経路は、慢性の反復性損傷に応答して撹乱される。TGF−βは、上皮創傷治癒を遅延させる、損傷に応答する主要な線維形成促進性サイトカインである。TGF−βは、線維芽細胞の動員、線維芽細胞の収縮力、および細胞外マトリックスの沈着を誘導することにより、上皮増殖および遊走を阻害し、アポトーシスを促進し、間葉区画を拡大する。アデノウイルス組換えTGF−β1の齧歯類肺への気管内移入により、気道周囲および肺間質における線維芽細胞の蓄積ならびにI型およびIII型コラーゲンの発現が顕著に増加する。抗TGF−β抗体を中和することにより、ブレオマイシンまたは放射線誘発肺線維症が遮断され得る。
TGF−β活性の増加は、主にTGF−β1によって媒介される、線維性肺疾患、糸球体硬化、および心臓血管の再狭窄における役割を果たし得る。ヒトにおけるTGF−β1の機能は、TGF−β1自体またはそのシグナル伝達エフェクターのいずれかを含む遺伝性障害によって示される通り、複雑である。TGF−β経路の活性を高める突然変異は、骨代謝の異常(すなわちカムラチ・エンゲルマン疾患)、結合組織の異常(すなわちマルファン症候群)、および大動脈瘤異常(すなわちロイス・ディーツ症候群)をもたらす。TGF−β経路の活性低下をもたらす突然変異はがんと相関する。しかし、TGF−βがまた腫瘍の成長および転移を増強し得ることから、がんにおける腫瘍サプレッサーとしてのTGF−βの役割は単純ではない。
TGF−βのその複数の本質的機能にもかかわらず、汎TGF−β中和抗体の単一用量または短期間投与は十分に耐容性がある。齧歯類では、器官線維症またはがん細胞の成長および転移を阻害する用量で副作用は認められない。この治療はまた、実験的線維症を有効に阻害する。中和汎TGF−β抗体を用いる単一用量での第I/II相臨床試験が、転移性腎細胞がん、メラノーマ、巣状分節性糸球体硬化症、および特発性肺線維症に対して進行中である。
一部のTGF−βアイソフォームは、哺乳類において広範に発現される(TGF−β1〜3)が、TGF−βの潜伏関連ドメイン(LAP)であるプロペプチドとの非共有結合相互作用により活性型で維持される。TGFβのシグナル伝達においては、TGFβは、TGFβ活性化と称される過程により、その不活性複合体から放出される必要がある。潜
在型TGF複合体は、3つの構成成分、すなわち活性(成熟)TGFβ二量体、LAP(潜伏関連ペプチド)およびLTBP(潜在型TGFβ結合タンパク質)を含む。LAPは、TGFβ前駆体タンパク質のN末端を表す、2つのジスルフィド結合により結合された二量体である。成熟TGFβタンパク質は、その前駆体のC末端を表し、約25kDのジスルフィド結合二量体を形成する。TGFβとLAPとの間の結合はゴルジ内部でタンパク分解性に切断されるが、TGF−βプロペプチドは非共有結合相互作用によりTGFβに結合されたままである。TGFβおよびLAPの複合体は、小潜在型複合体(SLC)と称される。それは、潜伏性をもたらすLAPおよびTGFβの会合体である。LAP−TGFβ結合は可逆的であり、単離された精製成分は、不活性SLCを形成するように組換えることが可能である。SLCとより大きい複合体の双方は、両方とも不活性であることから、本明細書中で潜在型TGF−βと称される。
一般に、インテグリンは、接着分子であり、細胞の細胞外マトリックスタンパク質への付着を媒介する。インテグリンαvβ8は、TGF−βのLAPに結合し、TGF−β1および3の活性化を媒介する(Μu et al.(2002)J.Cell Biol.159:493)。TGF−βのインテグリンαvβ8媒介性活性化は、TGF−βのインビボ活性化(すなわち成熟TGF−βポリペプチドの放出)に要求され、それ故、αvβ8はTGF−β機能のゲートキーパーである。インテグリンαvβ8は、正常上皮(例えば気道上皮)、間葉細胞、および神経細胞組織において発現される。TGF−βのインテグリンαvβ8媒介性活性化は、COPD、肺線維症、関節炎、炎症性腸疾患、肝線維症および腎線維症、炎症性脳自己免疫疾患および脱髄性疾患(例えば、MS、横断性脊髄炎、デビック病、ギラン・バレー症候群)、神経炎症、腎臓疾患、ならびにがんの成長および転移を生じ得る(例えば、国際公開第2013/026004号パンフレットを参照)。
本明細書に提供されるのは、抗体の結合が活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、潜在型TGFβのαvβ8発現細胞上でのαvβ8への接着を有意に阻害しないような、インテグリンαvβ8に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル、組換え、および/または化学修飾)であり、ここで抗体は37E1B5抗体の重鎖CDR2配列(例えば配列番号7)を含まない。一部の実施形態では、抗体は、β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、結合時、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて低減するようなβ8における立体構造変化を引き起こす。一部の実施形態では、抗体は、配列番号16の配列を含むエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体のCDR内の少なくとも1つのアミノ酸はグリコシル化される。一部の実施形態では、CDRは、軽鎖CDR1、CDR2、CDR3、および重鎖CDR1、CDR2、CDR3から選択される。CDRは、任意の公知の方法、例えば、Kabat、Chothia、IMGT、またはAbMに従って決定され得る。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、抗体の重鎖CDR2内に存在する。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、配列番号1〜6のいずれか1つの中のアミノ酸位置10に対応する位置に存在する。
本明細書の記載は以下の発明の開示を包含する。
[1]αvβ8に特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、αvβ8発現細胞上でのαvβ8への潜在型TGFβの接着を有意に阻害せず;
β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、また結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて低減させるようなβ8における立体構造変化を引き起こし;かつ、
配列番号7の重鎖CDR2配列を含まず、また少なくとも1つのグリコシル化アミノ酸を含む重鎖CDR2を含む、
モノクローナル抗体。
[2]αvβ8に特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、αvβ8発現細胞上でのαvβ8への潜在型TGFβの接着を有意に阻害せず;
β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、また結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて低減させるようなβ8における立体構造変化を引き起こし;かつ、
前記重鎖CDR2配列内に異種グリコシル化アミノ酸を含むように修飾される、
モノクローナル抗体。
[3]前記抗体が配列番号7の重鎖CDR2配列を含まない、[2]に記載の抗体。
[4]前記グリコシル化アミノ酸が、配列番号1〜6のいずれか1つの中のアミノ酸位置10に対応する位置にある、[1]〜[3]のいずれかに記載の抗体。
[5]前記抗体が配列番号16を含むエピトープに結合する、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体。
[6]β8に結合時、前記抗体は、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて少なくとも5°低減させる、[1]〜[5]のいずれかに記載の抗体。
[7]配列番号1〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含み、ここで位置12のAsnはThrまたはSerと置換される、[1]〜[6]のいずれかに記載の抗体。
[8]前記抗体が、
配列番号8、18、および19からなる群から選択される重鎖可変領域配列からの重鎖
CDR1およびCDR3配列;
配列番号9、23および24からなる群から選択される軽鎖可変領域配列からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;および
位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号1〜3からなる群から選択される重鎖CDR2配列
を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の抗体。
[9]前記抗体が、配列番号8からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号9からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号1〜3からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[8]に記載の抗体。
[10]前記抗体が、配列番号18からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号23からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号1〜3からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[8]に記載の抗体。
[11]前記抗体が、配列番号19からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号24からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号1〜3からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[8]に記載の抗体。
[12]前記抗体が、
配列番号10、20、21、および22からなる群から選択される重鎖可変領域配列からの重鎖CDR1およびCDR3配列;
配列番号11、25、26、および27からなる群から選択される軽鎖可変領域配列からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに
位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列
を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の抗体。
[13]前記抗体が、配列番号10からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号11からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[12]に記載の抗体。
[14]前記抗体が、配列番号20からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号25からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[12]に記載の抗体。
[15]前記抗体が、配列番号21からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号26からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[12]に記載の抗体。
[16]前記抗体が、配列番号22からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号27からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに位置12のAsnがThrまたはSerと置換された、配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含む、[12]に記載の抗体。
[17]前記抗体がヒト化されている、[1]〜[16]のいずれかに記載の抗体。
[18]前記抗体が、Fab、およびF(ab)、または一本鎖Fv(scFv)である、[1]〜[17]のいずれかに記載の抗体。
[19]活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害する組換え抗体を作製する方法であって、
β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合する抗体を同定するステップと;
グリコシル化部位を導入するため、前記重鎖CDR2配列を組換え的に修飾するステッ
プと;
前記抗体を発現させるステップと、を含み、ここで前記抗体は、β8への結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法。
[20]活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するグリコシル化抗体を作製する方法であって、
β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、かつ前記重鎖CDR2配列内でグリコシル化され得るアミノ酸を含む抗体を同定するステップと;
前記抗体を発現させるステップと;
前記アミノ酸を化学的にグリコシル化するステップと、を含み、ここで前記抗体は、β8への結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を、化学的グリコシル化を伴わない前記抗体に接触したβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法。
[21]前記抗体が配列番号16を含むエピトープに結合する、[19]または[20]に記載の方法。
[22]前記抗体は、β8に結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて少なくとも5°低減させる、[19]〜21のいずれかに記載の方法。
[23]グリコシル化された前記アミノ酸が配列番号1〜6のいずれか1つの中のアミノ酸位置10に対応する、[19]〜[22]のいずれかに記載の方法。
さらに提供されるのは、抗体の結合が活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、潜在型TGFβのαvβ8発現細胞上でのαvβ8への接着を有意に阻害しないような、インテグリンαvβ8に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル、組換え、および/または化学修飾)であり、ここで抗体は、β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、結合時、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて低減するようなβ8における立体構造変
化を引き起こし;また抗体は、抗体のCDR内の少なくとも1つのアミノ酸中に異種グリコシル化アミノ酸を含むように修飾される。CDRは、任意の公知の方法、例えば、Kabat、Chothia、IMGT、またはAbMに従って決定され得る。一部の実施形態では、CDRは、軽鎖CDR1、CDR2、CDR3、および重鎖CDR1、CDR2、CDR3から選択される。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、抗体の重鎖CDR2内に存在する。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、配列番号1〜6のいずれか1つの中のアミノ酸位置10に対応する位置に存在する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号16の配列を含むエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7の重鎖CDR2配列を含まない。
一部の実施形態では、抗体は、β8への結合時、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べてまたはCDR(例えば重鎖CDR2)内にグリカンが欠如した抗体と比べて少なくとも5°(例えば、少なくとも6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°もしくはそれより大きい)低減させる。
一部の実施形態では、抗体は、14E5抗体またはその変異体(例えば、2A8、2A10、2C6)の重鎖および軽鎖CDR配列を含み、ここでCDR内の少なくとも1つのアミノ酸は、グリコシル化アミノ酸を導入するように修飾される。一部の実施形態では、抗体は、11E8抗体またはその変異体(例えば、2B8、2A4)の重鎖および軽鎖CDR配列を含み、ここでCDR内の少なくとも1つのアミノ酸は、グリコシル化アミノ酸を導入するように修飾される。一部の実施形態では、抗体は、修飾37E1B5抗体の重鎖および軽鎖CDR配列を含み、ここで配列番号7の位置10のAsnは置換され、また重鎖CDR2は異なる位置にグリコシル化アミノ酸を導入するように修飾される。
一部の実施形態では、抗体は、配列番号8、18、および19からなる群から選択される重鎖可変領域配列からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号9、23および24からなる群から選択される軽鎖可変領域配列からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに配列番号1〜3からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含み、ここで(配列番号1〜3の)位置12のAsnはThrまたはSerと置換される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号10、20、21、および22からなる群から選択される重鎖可変領域配列からの重鎖CDR1およびCDR3配列;配列番号11、25、26、および27からなる群から選択される軽鎖可変領域配列からの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列;ならびに配列番号4〜6からなる群から選択される重鎖CDR2配列を含み、ここで位置12のAsnはThrまたはSerと置換される。同様に、CDRは、任意の公知の方法(例えば、Kabat、Chothia、IGMT、またはAbM)に従って決定され得る。
一部の実施形態では、抗体はヒト化されている。一部の実施形態では、抗体は、Fab、およびF(ab)、または一本鎖Fv(scFv)である。
さらに提供されるのは、個体におけるTGFβシグナル伝達を低下させる(TGFβ活性を低下させる、活性型成熟TGFβの放出を低下させる)方法であって、上記の抗体を個体に投与するステップを含み、それにより個体におけるTGFβシグナル伝達を低減する、方法である。一部の実施形態では、個体は、炎症性腸疾患(IBD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節炎、肝線維症、肺線維性疾患、炎症性脳自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄性疾患、神経炎症、腎臓疾患、腺がん、扁平上皮がん、グリオーマ、および乳がんからなる群から選択される少なくとも1つの状態(疾患、障害)を有し、低下したTGFβシグナル伝達は状態の寛解をもたらす。
さらに提供されるのは、活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害する、インテグリン
αvβ8に特異的な組換え抗体を作製するための方法であって、抗体のCDR内にグリコシル化アミノ酸を導入するため、β8に結合する抗体(例えばモノクローナル抗体)を組換え的に修飾するステップと、(例えば、細胞株中で発現させるかまたは化学的に合成することにより)抗体を作製するステップと、を含み、ここで抗体は、β8への結合時、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法である。一部の実施形態では、抗体は、β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合する。一部の実施形態では、エピトープは配列番号16のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、組換え修飾は、グリコシル化部位をCDR内に導入する(例えば、同部位の酵素認識およびグリコシル化を可能にする)ことを含む。一部の実施形態では、組換え修飾は、CDR内にグリコシル化可能なアミノ酸(例えば、Asn、Ser、Thr、Tyr)を導入することを含む。一部の実施形態では、組換え修飾は、非天然グリコシル化アミノ酸をCDR内に導入することを含む。一部の実施形態では、CDRは重鎖CDR2である。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸位置10に対応する(例えば、CDR配列が配列番号1〜6のいずれか1つに最適に整列される場合)。一部の実施形態では、抗体は、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて少なくとも5°(例えば、少なくとも6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°もしくはそれより大きく)低減させる。
さらに提供されるのは、活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害する、インテグリンαvβ8に特異的なグリコシル化抗体を作製し、β8に結合しかつCDR内でグリコシル化され得るアミノ酸(例えば、Asn、Ser、Thr、Tyr)を含む抗体(例えばモノクローナル抗体)を作製し、かつアミノ酸を化学的にグリコシル化するための方法であり、ここで抗体は、β8への結合時、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす。一部の実施形態では、その作製は、抗体を細胞株中で発現させるかまたは抗体を化学的に合成することを含む。一部の実施形態では、抗体は、β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合する。一部の実施形態では、エピトープは配列番号16のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CDRは重鎖CDR2である。一部の実施形態では、グリコシル化アミノ酸は、配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸位置10に対応する(例えば、CDR配列が配列番号1〜6のいずれか1つに最適に整列される場合)。一部の実施形態では、抗体は、β8のヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を抗体に接触していないβ8と比べて少なくとも5°(例えば、少なくとも6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°もしくはそれより大きく)低減させる。
11E8および14E5抗体ならびにそれらの変異体の重鎖および軽鎖可変領域配列の整列化を示す。配列は、上から下へ、配列番号10、18、19、10、20〜22、9、23、24、11、25〜27と名付けられる。表示されるCDRおよびフレームワーク領域は、Kabat付番に対応する。 A)PNGaseFで脱グリコシル化された37E1B5(De−glycoB5)と比べての37E1B5(B5);およびCDR2内の操作されたグリカンを有する2A10(NYT−2A10)と比べての2A10を用いたβ8発現およびモックトランスフェクト293細胞の染色。B)37E1B5、脱グリコシル化37E1B5、グリコシル化2A10(NYT2A10)、または親2A10(2.5ug/ml)で処理されたβ8発現293細胞のTGFβバイオアッセイ。結果は、重鎖CDR2のグリコシル化が機能遮断能力と相関することを示す(***<0.001,**p<0.01.n=4)。 A)αvβ3に対する相同性モデリング(Modeller)により作製されたβ8サブユニットの広げられた閉構造のリボンダイアグラム(PyMOL V1.1r1)(PDB 3IJE;Dong et al.(2012)Biochem.51:8814)。αvβ3(紫)上に重ねた赤のαおよびαヘリックスを有するモデル化されたβ8(緑)。α1ヘリックス上のB5エピトープの原子(R133、F137、F138)が表される。PDB 3ZDXに基づくモデル化されたRGDトリペプチド(Askari et al.(2010) J Cell Biol 188:891)は、MIDAS Ca2+陽イオンと複合したリガンド結合ポケットに結合された状態で示される。リガンド結合ポケットの端部(A115)からB5エピトープのR133にかけての距離は28Åである(点線矢印で表される)。ヘッド、ハイブリッドおよびPsiドメインが表される。αvサブユニットおよびレッグドメインは含まれていない。B)Fabを有しないクラスプ(clasped)および非クラスプ(unclasped)αvβ8の、SEC精製αvβ8−B5またはαvβ8−クローン68 Fab複合体と比べてのハイブリッド−ヘッドドメイン角度を測定した画像解析。個別の角度は、ヘッドおよびハイブリッドドメインが十分に解像された場合でのクラス平均から測定される。N=15、24、10、15、37および30であり、各々、クラスプ単独(黒四角)、クラスプ+B5 Fab(白の上向き三角)、クラスプ+クローン68 Fab(黒菱形)、非クラスプ単独(白の下向き三角)、非クラスプ+B5 Fab(黒丸)、非クラスプ+クローン68 Fab(白四角)のクラス平均からの測定値。分散分析およびテューキーのポスト検定による、**P<0.01、***P<0.001。各群の下のグラフ内部の挿入図は、代表的なEMクラス平均である。平均ヘッド−ハイブリッドドメイン角度(±平均値の標準誤差)が顕微鏡写真の下に示される。バー=10nm。下の漫画は、表示されるヘッド(βI)およびハイブリッドドメインとの結合されたFabおよび測定された角度を表す。 標識された、野生型2A10およびグリコシル化変異体NYT−2A10 Fabと複合されたαvβ8の陰性EM染色。>10の個別のタンパク質複合体のクラス平均が示される。ヘッド−ハイブリッド角度測定値を図示するため、角度が下層としての顕微鏡写真上に重ねられる。このデータの定量値が右グラフ上に示され、各データポイントは陰性EM顕微鏡写真のクラス平均からの測定値を表す。
発明の詳細な説明
I.導入
37E1B5抗体は、インテグリンαvβ8のβ8サブユニットに特異的である。37E1B5は、その標的への結合時、活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するが、潜在型TGFβのαvβ8発現細胞上でのαvβ8への接着を有意に阻害しないという固有の特性を有する(国際公開第2011/103490号パンフレットおよび国際公開第2013/026004号パンフレット(これらの開示はそれら全体が援用される)を参照)。
本開示は、重鎖CDR2内のグリコシル化部位を除去する単一のアミノ酸置換を有する37E1B5が、抗原結合を保持しても、TGFβ活性化を遮断する能力を失うことを示し、これは置換されたアミノ酸がTGFβ遮断機能に要求され、かつ/またはそのアミノ酸でのグリカンがTGFβ遮断機能に要求されることを示す。発明者は、37E1B5を化学的に脱グリコシル化することによりアミノ酸配列を保存し、また抗原結合が維持されても、TGFβ遮断機能が失われることを再び見出した。これにより、37E1B5の生物学的機能が重鎖CDR2内でのグリコシル化に依存し、かつTGFβ活性化を遮断する機能的能力が抗原(β8)に結合するその能力から脱共役されることが確立される。
同時に実施した構造試験によると、重鎖CDR2のグリコシル化を伴う37E1B5
Fabがβ8における立体構造変化を誘導することが示された。その変化は、同じエピトープに結合してもTGFβ活性化を遮断しない、別のβ8抗体のクローン68から調製されるFabであるによって誘導されない。しかし、他の抗体の重鎖CDR2内でのグリコシル化は、典型的には抗体の所望される活性を低下させる、例えば親和性を低下させることが示されている(米国特許第5714350号明細書)。
グリカンがTGFβを活性化するその能力を失わせるようなαvβ8の立体構造変化を誘導するか否かを試験するため、発明者は、37E1B5の場合と重複するβ8サブユニット上のエピトープに結合する完全に無関係の抗体の重鎖CDR2にグリカンを導入した。2A10抗体(14E5の変異体)が選択された。無関係の抗体は、無関係の配列を有する6つのCDRを有する(例えば、配列番号12および13と比べての配列番号21および26を参照)。意外にも、2A10の重鎖CDR2のグリコシル化は、その活性を、抗体がαvβ8に誘導されるTGFβ活性化を阻害し得るように変化させた。さらに、グリコシル化された2A10抗体は、非グリコシル化2A10抗体によるものではなく、37E1B1により誘導される場合と同様のβ8における立体構造変化を誘導した。
本結果は、エピトープ相互作用を媒介する抗体の領域内にグリカンを導入することにより抗体活性を修飾するためのよりグローバルな機構を提供する。
II.定義
特に定義されない限り、本明細書で用いられる科学技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Lackie,DICTIONARY
OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier(4th ed.2007);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照のこと。本明細書に記載される意味と類似するかまたは等価な任意の方法、デバイスおよび材料は、本発明の実行において用いることができる。以下の定義は、本明細書で頻用される特定の用語の理解を容易にするために提示され、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
用語「抗αvβ8抗体」、「αvβ8特異抗体」、「αvβ8抗体」、および「抗αvβ8」は、αvβ8に特異的に結合する抗体を指すように本明細書中で同義的に用いられる。同様に、抗β8抗体(および同様の用語)は、β8に特異的に結合する抗体を指す。本明細書に記載の抗αvβ8抗体および抗β8抗体は、αvβ8発現細胞上で発現されるタンパク質に結合する。
「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかでのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマー、ならびにその相補鎖を指す。用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの直鎖状配列を指す。用語「ヌクレオチド」は、典型的には、ポリヌクレオチドの単一単位、すなわち単量体を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはその修飾バージョンであり得る。本明細書中で検討されるポリヌクレオチドの例として、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA(siRNAを含む)、ならびに一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。
用語「相補的(complementary)」または「相補性(complementarity)」は、あるポリヌクレオチド中の核酸が第2のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成する能力を指す。例えば、配列A−G−Tは、配列T−C−Aに対して相補的である。相補性は、核酸のほんの一部が塩基対合により一致する場合、部分的で
あり得るか、またはすべての核酸が塩基対合により一致する場合、完全であり得る。
核酸ハイブリダイゼーション技術を用いる特定のDNAおよびRNAの測定に関する種々の方法は当業者に公知である(Sambrook,Id.を参照)。一部の方法は、電気泳動分離(例えば、DNAを検出するためのサザンブロット、およびRNAを検出するためのノーザンブロット)を含むが、DNAおよびRNAの測定はまた、電気泳動分離の不在下で実施され得る(例えば、定量PCR、ドットブロット、またはアレイ)。
用語「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、アミノ酸ポリマーまたは2つ以上の相互に作用するか結合されるアミノ酸ポリマーのセットを意味するように交換可能に用いられる。同用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣物である場合のアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含有するもの、および非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸に類似的に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γカルボキシグルタミン酸、およびO−リン酸化セリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチルメチオニンスルホニウムを指す。かかる類似体は、修飾R基(例えばノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有しても、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持し得る。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然アミノ酸に類似的に機能する構造を有する化合物を指す。
アミノ酸は、本明細書中で、その一般的に公知の3文字記号により、または国際純正応用化学連合−国際生化学連合生化学命名法委員会(IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨された1文字記号により参照してもよい。同様に、ヌクレオチドは、その一般的に認められた1文字コードにより参照してもよい。
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸および核酸配列の双方に適用される。特定の核酸配列に関連して、保存的に修飾された変異体は、同一のアミノ酸配列または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一であるまたは関連する、例えば天然に隣接する配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されるすべての位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく記載される対応するコドンの他方に変更され得る。かかる核酸変異は、保存的に修飾された変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、核酸のサイレント変異を述べている。当業者は、特定の状況において、核酸中の各コドン(通常メチオニンに対してただ1つのコドンであるAUG、および通常トリプトファンに対してただ1つのコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を生成するように修飾され得ることを理解するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現生成物に対して記述される配列内に潜在しているが、実のプローブ配列に対しては潜在していない。
アミノ酸配列に関しては、当業者は、コードされる配列内での単一のアミノ酸または小さい百分率のアミノ酸を改変、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ま
たはタンパク質配列に対する個別の置換、欠失または付加が、改変があるアミノ酸と化学的に類似したアミノ酸との置換をもたらす場合には「保存的に修飾された変異体」であることを理解するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。かかる保存的に修飾された変異体は、本発明の多形性変異体、種間相同体、および対立遺伝子に追加的なものであり、それらを排除しない。以下のアミノ酸、すなわち1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)は、典型的には相互に保存的置換である(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照)。
用語「同一の」または「パーセント同一性」は、2つ以上の核酸、または2つ以上のポリペプチドとの関連で、デフォルトパラメータを有するBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて、あるいはマニュアル整列化および目視検査により測定されるときに、同じであるか、あるいは同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸の特定の百分率(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域にわたって比較され、最大一致について整列されるとき、特定の領域にわたり、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはより大きい同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTでのNCBIウェブサイトを参照のこと。次いで、かかる配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、ヌクレオチド試験配列の相補体を指すか、またはそれに適用してもよい。同定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列を含む。下記のように、そのアルゴリズムは、ギャップなどを説明し得る。典型的には、抗体エピトープ、すなわち少なくとも約25のアミノ酸長もしくはヌクレオチド長である配列を含む領域にわたり、または50〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長である領域にわたり、または参照配列の全長にわたり、同一性が存在する。
用語「組換え」は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関連して用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然核酸もしくはタンパク質の改変によって修飾されていること、あるいは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態で見出されない遺伝子を発現するか、あるいは別の方法で異常に発現されるか、過小発現されるか、または全く発現しない天然遺伝子を発現する。
用語「異種」は、核酸の一部に関連して用いられる場合、核酸が天然に相互に同じ関係の中で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には、新規の機能的核酸を作製するために配列される無関係の遺伝子からの2つ以上の配列、例えば1つの供給源からのプロモーターと別の供給源からのコード領域を有するように、組換え生成される。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然に相互に同じ関係の中で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す(例えば融合タンパク質)。
「異種グリコシル化アミノ酸」は、親抗体中のアミノ酸と異なるアミノ酸(例えば組換え的に導入されたもの)または親抗体中でグリコシル化されていないアミノ酸(例えばグリコシル化部位の欠損によるもの)を指す。前者の場合、グリコシル化され得るアミノ酸(Arg、Ser、Thr、またはCysなど)または(グリコシル化された)非天然アミノ酸は、親抗体中のアミノ酸と置換され得る。後者の場合、親抗体は、酵素的に認識されたグリコシル化部位を導入するため、組換え的に修飾され得るか、または親抗体は、グ
リカンを導入するため、化学修飾され得る。
用語「抗体」は、抗原、例えばβ8、特定の細胞表面マーカー、または任意の所望される標的に特異的に結合しかつそれを認識する、免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域を含むポリペプチド、またはその断片を指す。典型的には、「可変領域」は、抗体(またはその機能的等価物)の抗原結合領域を有し、結合の特異性および親和性において最も重要である。Paul,Fundamental Immunology(2003)を参照のこと。
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体を含む。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一対からなり、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する、約100〜110もしくはそれを超えるアミノ酸の可変領域を画定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は各々、これらの軽鎖および重鎖を指す。
「アイソタイプ」は、重鎖定常領域によって画定される抗体のクラスである。免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、各々順に、アイソタイプクラスのIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、または特異的な抗原結合活性を含む幾つかの十分に特徴づけられた断片のいずれかとして存在し得る。かかる断片は、様々なペプチダーゼを用いた消化により作製され得る。ペプシンは、F(ab)’、すなわちそれ自体がジスルフィド結合によりVH−CH1に連結された軽鎖であるFabの二量体を生成するように、ヒンジ領域内のジスルフィド結合より下で抗体を消化する。F(ab)’は、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を破壊し、それによりF(ab)’二量体をFab’単量体に変換するため、緩やかな条件下で還元され得る。Fab’単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993)を参照。様々な抗体断片がインタクトな抗体の消化の観点で定義されるが、当業者は、かかる断片が化学的にまたは組換えDNA法を用いることにより新規に合成可能であることを理解するであろう。したがって、抗体という用語はまた、本明細書で用いられるとき、全抗体の修飾により作製される抗体断片、あるいは組換えDNA法を用いて新規に合成される抗体断片(例えば一本鎖Fv)またはファージディスプレイライブラリを用いて同定される抗体断片(例えば、McCaffertyetal.,Nature 348:552−554(1990)を参照)のいずれかを含む。
「モノクローナル抗体」は、抗原上の所与のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を有する抗体のクローン調製物を指す。「ポリクローナル抗体」は、異なる結合特異性および親和性を有するが、単一の抗原に対して産生される抗体の調製物を指す。
本明細書で用いられるとき、「V領域」は、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、フレームワーク3、CDR3、およびフレームワーク4のセグメントを含む抗体可変領域ドメインを指す。これらのセグメントは、B細胞分化の間での重鎖および軽鎖のV領域遺伝子の再編成の結果としてのVセグメント内に含まれる。
本明細書で用いられるとき、「相補性決定領域(CDR)」は、軽鎖および重鎖可変領域によって確立される4つの「フレームワーク」領域を中断する、各鎖内の3つの超可変領域を指す。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、典
型的には、CDR1、CDR2、およびCDR3(N末端を起点に順に付番される)と称され、また典型的には、特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、V CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメイン内に位置する一方、V CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存される。抗体のフレームワーク領域、すなわち軽鎖および重鎖成分の組み合わされたフレームワーク領域は、CDRを三次元空間で位置づけ、整列させるのに役立つ。
CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当該技術分野で周知の様々な定義、例えば、Kabat、Chothia、国際免疫遺伝学(international
ImMunoGeneTics)データベース(IMGT)、およびAbMを用いて決定され得る(例えば、Johnson et al.,上記;Chothia&Lesk,(1987)J.Mol.Biol.196,901−917;Chothia et
al.(1989)Nature 342,877−883;Chothia et al.(1992)J.Mol.Biol.227,799−817;Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol1997,273(4))。抗原結合部位の定義についても、以下に、すなわち、Ruiz et al.Nucleic Acids Res.,28,219-221(2000);およびLefranc Nucl
eic Acids Res.Jan1;29(1):207−9(2001);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732−745(1996);およびMartin et al,Proc.Natl Acad.Sci.USA,86,9268-9272(1989);Martin,et al,Metho
ds Enzymol.,203:121-153,(1991);Pedersen
et al,Immunomethods,1,126,(1992);およびRees
et al,In Sternberg M.J.E.(ed.)、Protein Structure Prediction.Oxford University Press,Oxford,141-1721996)に記載されている。
「キメラ抗体」は、(a)定常領域またはその一部が、抗原結合部位(可変領域、CDR、またはその一部)が異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える完全に異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬など)に連結されるように改変、置換または交換されるか;あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるまたは改変された抗原特異性を有する可変領域(例えば、異種由来のCDRおよびフレームワーク領域)を用いて改変、置換または交換される抗体分子である。
抗体は、抗原上の「エピトープ」に結合する。エピトープは、抗原上の特異抗体が結合する相互作用部位であり、幾つかのアミノ酸または幾つかのアミノ酸、例えば5もしくは6、もしくはそれより多い、例えば20以上のアミノ酸の一部、またはそれらアミノ酸の一部を含み得る。場合によっては、エピトープは、非タンパク質成分、例えば、炭水化物、核酸、または脂質に由来するものを含む。場合によっては、エピトープは、三次元成分である。したがって、例えば標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続アミノ酸、またはタンパク質フォールディングにより近接化されたタンパク質の異なる部分由来のアミノ酸(例えば不連続エピトープ)からなり得る。同じ事が三次元構造を形成する他のタイプの標的分子に当てはまる。
用語「特異的に結合する」は、非標的化合物よりも少なくとも2倍高い親和性、例えば、少なくとも4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、25倍、50倍、もしくは100倍高い親和性で標的に結合する分子(例えば抗体または抗体断片)を指す
。例えば、β8に特異的に結合する抗体は、典型的には、非β8標的(例えば、異なるインテグリンサブユニット、例えばβ6)よりも少なくとも2倍高い親和性でβ8に結合することになる。
細胞型に対して「結合する」という用語(例えば、線維化細胞、肝細胞、軟骨細胞などに結合する抗体)は、典型的には、ある薬剤がそれら細胞の純粋な集団内の細胞の大部分に結合することを示す。例えば、所与の細胞型に結合する抗体は、典型的には、指定される細胞の集団内の細胞の少なくとも2/3(例えば、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%)に結合する。当業者は、いくらかの変動性が結合性を判定する方法および/または閾値に応じて生じることになることを理解するであろう。
本明細書で用いられるとき、一次抗体の存在下での二次抗体と標的との結合が一次抗体の不在下での二次抗体の結合と比べて検出可能に低下する場合、一次抗体またはその抗原結合部分は、標的への結合に対して二次抗体またはその抗原結合部分と「競合する」。あるいは、一次抗体の標的への結合が二次抗体の存在下で同じく検出可能に低下する場合についても該当し得るが、その必要はない。すなわち、二次抗体は、一次抗体の標的への結合を、その一次抗体が二次抗体の標的への結合を阻害することなく阻害し得る。しかし、各抗体が他方の抗体のその同族のエピトープまたはリガンドへの結合を、同程度か、より大きい程度か、またはより小さい程度に、検出可能に阻害する場合、抗体は、それら各々の1つもしくは複数のエピトープへの結合に対して相互に「交差競合する」と言われる。競合および交差競合抗体の双方が本発明によって包含される。用語「競合者」抗体は、当業者により判定可能であるとき、一次または二次抗体に適用され得る。場合によっては、競合者抗体(例えば一次抗体)の存在により、二次抗体の標的への結合が少なくとも10%、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくはそれより大きく、例えば二次抗体の標的への結合が一次(競合者)抗体の存在下で検出不能である程度に低下する。
用語「アゴニスト」、「アクチベーター」、「インデューサー」などの用語は、活性または発現を対照と比べるときに増加させる分子を指す。アゴニストは、例えば、標的に結合するか、標的の活性に対して刺激するか、増加させるか、活性化するか、活性化を増強するか、感作させるかまたは上方制御する薬剤である。発現または活性は、対照における場合よりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%100%もしくはそれより大きく増加し得る。場合によっては、活性化は、対照と比べて、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、もしくはそれより高い。
用語「阻害剤」、「リプレッサー」または「アンタゴニスト」または「ダウンレギュレーター」は、対照と比べるとき、検出可能により低い発現または活性レベルをもたらす物質を交換可能に指す。阻害された発現または活性は、対照における場合よりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくはそれ未満であり得る。場合によっては、阻害は、対照と比べて、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、もしくはそれより高い。
「対照」試料または値は、試験試料と比較するため、対照、通常は公知の対照として役立つ試料を指す。例えば、試験試料は、試験条件から、例えば試験化合物の存在下で採取され、また公知の条件から、例えば試験化合物の不在下で(負の対照)、または公知の化合物の存在下で(正の対照)、試料と比較され得る。対照はまた、幾つかの試験または結果から収集される平均値を表し得る。当業者は、対照が幾つものパラメータの評価用に設計可能であることを理解するであろう。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば半減期)または治療的尺度(例えば利益および/または副作用の比較)に基づく治療効果を比較
するために工夫され得る。対照は、インビトロでの用途のために設計され得る。当業者は、対照が所与の状況下で有用であることを理解し、対照値との比較に基づいてデータを分析することができるであろう。対照はまた、データの有意性を判定するのに有用である。例えば、所与のパラメータに対する値が対照において幅広く変動する場合、試験試料中の変動は有意であると考えられないことになる。
「標識」または「検出可能部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理学的手段により検出可能な組成物である。例えば、有用な標識として、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般に用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質または他の実体(例えば放射標識を標的ペプチドと特異的に反応するペプチドまたは抗体に組み込むことにより検出可能にできるもの)が挙げられる。抗体を標識に結合させるための当該技術分野で公知の任意の方法は、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoに記載の方法を用いて利用してもよい。
「標識」分子(例えば、核酸、タンパク質、または抗体)は、リンカーもしくは化学結合を介して共有結合的に、あるいは標識へのイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を介して非共有結合的に結合され、分子の存在が分子に結合した標識の存在を検出することにより検出可能である、分子である。
III.αvβ8に特異的な抗体
インテグリンβ8は、Mould et al.(2006)BMC Cell Biol.7:24に開示のように、他のβインテグリンサブユニットと一般的なドメイン構造を共有する。ヘッド領域は、タンパク質の「ニー(knee)」でのハイブリッドドメインおよびPSIドメインが後続するA−ドメインを含む。ニーにはEGFリピートのレッグが後続し、それにβテールドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが後続する。さらなる詳細は、SwissProtエントリP26012にて利用可能である。
本明細書に提供されるのは、インテグリンαvβ8に特異的に結合するが、他のインテグリン(例えば、αvβ6、αvβ3など)に有意に結合しない抗体である。本開示の抗体は、β8内部、例えばβ8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内部の特異的なエピトープまたはエピトープ領域に、抗体結合がαvβ8が活性TGFβの放出を媒介する能力に干渉する程度に結合する。一部の実施形態では、抗体結合は、β8内に立体構造変化を引き起こす。一部の実施形態では、本抗体は、β8エピトープと相互作用する領域、例えば、CDR1、CDR2、CDR3、および/またはそれらの任意の組み合わせの中でグリコシル化される。エピトープは、立体構造(非線状)または非立体構造エピトープであり得る。かかる抗体は、β8単独に結合し得る(すなわちエピトープはβ8内部に位置する)か、あるいは両サブユニットの一部を含む非線状エピトープ、またはαvおよびβ8の相互作用に依存するエピトープに結合し得る。
本抗体は、上記のαvβ8に特異的な抗体、ならびにヒト化、キメラ、および/またはそれらの標識化バージョン、およびαvβ8結合断片および/もしくはその変異体を含む。ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4は、ヒト化またはキメラ抗体に用いることができる。一部の抗体は、約10、10、10、1010、1011、もしくは1012−1以上の結合親和性で(例えば、マイクロモル(10−6)、ナノモル(10−9)、ピコモル(10−12)、またはより低い範囲のKdで)αvβ8に特異的に結合する。
一部の実施形態では、抗体は、β8に結合し、TGFβ活性化を、例えば抗体の不在下
でのTGFβ活性化と比べて阻害する。一部の実施形態では、抗体は、αvβ8を発現する細胞のTGFβへの接着を低下させない、すなわち抗体は、αvβ8媒介性のTGFβへの細胞接着を低下させない。一部の実施形態では、抗体はグリコシル化され、またグリコシル化抗体は、TGFβ活性化を、例えば抗体の不在下でのTGFβ活性化と比べて、または非グリコシル化抗体の存在下でのTGFβ活性化と比べて阻害する。
一部の実施形態では、抗体は、配列番号16を含むかまたは配列番号16内にあるβ8上のエピトープに結合し得る。所与の抗原に対して産生される抗体の結合部位、すなわちエピトープは、当該技術分野で公知の方法を用いて測定され得る。例えば、競合アッセイ(例えば競合ELISA)は、公知のエピトープと抗体を用いて実施され得る。その試験抗体が抗原結合に対して競合する場合、それは同じエピトープの少なくとも一部を共有する可能性が高い。エピトープはまた、抗原のドメイン交換または選択的突然変異誘発を用いて局在化され得る。すなわち、抗原の各領域または各アミノ酸は、「交換」され得るか、あるいは試験抗体と相互作用しないことが知られているアミノ酸または成分と置換され得る。所与の領域またはアミノ酸の置換が、試験抗体の置換された抗原への結合を置換されていない抗原と比べて低下させる場合、その領域またはアミノ酸はエピトープに関与する可能性が高い。
Informal Sequenceリストは、かかる抗体の例を提示し、国際公開第2011/103490号パンフレットおよび国際公開第2013/026004号パンフレットに開示される通りの37E1B5、11E8、14E5の重鎖および軽鎖可変領域を示す。CDR1〜3(Kabat)は、太字下線で示される。11E8および14E5抗体の変異体は図1に示される。
IV.TGFβ活性の検出
TGFβ活性に対する抗体の効果を判定するため、幾つかのTGFβバイオアッセイが利用可能である。例えば、TGFβ活性化は、共培養アッセイ下で試験され得る。αvβ8を発現する試験細胞が、TMLC細胞、すなわちルシフェラーゼ遺伝子を駆動するTGF−β応答性プロモーター断片が安定的に遺伝子導入されたミンク肺上皮細胞と共培養される(Abe et al.(1994)Annal Biochem 216:276)。TMLC細胞は、TGFβ活性化のバックグラウンドが非常に低い場合のTGFβに対して高い応答性を示す。それ故、TMLC細胞は、読み取りとして発光を用いて活性TGFβの存在について試験するため、他の細胞株または無細胞画分との共培養下で用いることができる。アッセイは、対照TGFβ遮断抗体(例えば、10μg/ml、1D11;R&D Systems)の存在下または不在下で実施され得る。
腫瘍組織内で活性TGFβを測定するため、等重量の腫瘍組織は、ミンスされ、滅菌DME中、4℃で30分間インキュベートされ得る。活性TGFβを含有する上清は、4℃で遠心分離(20g)後、採取され得る。次に、SLCを活性化するため、ペレットは、無血清DME中、80℃で20分間インキュベートされ得、その後、上清は採取され得る。次に、活性または熱活性化(潜在型)TGFβを含有する上清が、1D11の存在下または不在下で予め蒔かれたTMLC細胞に添加される。プロテアーゼ阻害剤アッセイにおいては、阻害剤は共培養の開始時に添加される。各阻害剤の最大投与量は、TMLC細胞が組換え活性TGFβに応答する能力を阻害しない最高濃度と規定される。培養細胞からの可溶性TGFβ活性を測定するため、細胞は、37E1または10D5の存在下または不在下で、100μlの完全培地中、37℃で穏やかに回転しながら1時間インキュベートされる。無細胞上清が、遠心分離(20g)により4℃で5分間採取され、次いで1D11の存在下または不在下で予め蒔かれたTMLC細胞に添加される。可溶性受容体アッセイにおいては、細胞の一晩培養物から得られる馴化培地が用いられる。相対ルシフェラーゼ単位は、TMLCレポーター細胞の活性−バックグラウンド活性と定義される。
V.抗体を作製し、修飾するための方法
本明細書に記載されるような好適な抗体、例えば組換えまたはモノクローナル抗体の調製および使用においては、当該技術分野で公知の多数の技術を用いることができる(例えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975);Kozbor et al.,Immunology Today 4:72(1983);Cole et al.,pp.77−96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985);Coligan,Current Protocols
in Immunology(1991);Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988);およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986)を参照)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子は細胞からクローン化され得、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子はハイブリドーマからクローン化され得、組換えモノクローナル抗体を産生するのに用いることができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーもまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製され得る。重鎖および軽鎖遺伝子産物のランダム組換えにより、異なる抗原特異性を有する大規模な抗体プールが作製される(例えば、Kuby,Immunology(3rd ed.1997)を参照)。一本鎖抗体または組換え抗体を作製するための技術(米国特許第4,946,778号明細書、米国特許第4,816,567号明細書)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を作製するため、適用可能である。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳類などの他の生物は、ヒト化またはヒト抗体を発現させるため、用いることができる(例えば、米国特許第5,545,807号明細書;米国特許第5,545,806号明細書;米国特許第5,569,825号明細書;米国特許第5,625,126号明細書;米国特許第5,633,425号明細書;米国特許第5,661,016号明細書、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−13(1994);Fishwild
et al.,Nature Biotechnology 14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照)。あるいは、ファージまたは酵母ディスプレイ技術は、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーのFab断片を同定するため、用いることができる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Marks et al.,Biotechnology 10:779−783(1992);Lou et al.(2010)PEDS23:311を参照)。抗体はまた、二重特異性にする、すなわち2つの異なる抗原を認識可能にすることができる(例えば、国際公開第93/08829号パンフレット、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655−3659(1991);およびSuresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照)。抗体はまた、ヘテロ結合体(heteroconjugates)、例えば2つの共有結合された抗体、または免疫毒素であり得る(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、国際公開第91/00360号パンフレット;国際公開第92/200373号パンフレット;および欧州特許第03089号明細書を参照)。
本開示との関連で、組換え抗体は、親モノクローナル(またはポリクローナル)抗体から、(例えば化学的または酵素的に)グリコシル化可能なアミノ酸または(酵素をグリコシル化することによって認識される)グリコシル化部位が可変領域、例えばCDR内部に
組み込まれるように作製され得る。グリコシル化は、N−結合型、O−結合型、リン酸−結合型、またはC−結合型であり得る。N−結合型グリコシル化は、典型的にはAsnで生じる。基準のN−結合型グリコシル化部位は、Asn−Xaa−Ser/Thr/Cys(式中、XaaはProでない)である。O結合型−グリコシル化は、Ser、Thr、およびTyr残基、ならびにヒドロキシリジンおよびヒドロキシプロリンで生じ、O−GlcNAcトランスフェラーゼによりなされ得る。リン酸−結合型は、リン酸化セリンで生じ得る。C−結合型はTrpで生じ得、基準のC−結合型部位は、Trp−Ser/Thr−Xaa−Cysである。
抗体は、グリコシル化アミノ酸が翻訳後プロセシングまたはインビトロ操作の間ではなく抗体の翻訳の間に導入されるように組換え作製され得る。非天然アミノ酸を導入するためのシステムは、例えば、Chin(2011)EMBO 30:2307;Kaya et al.(2009)ChemBioChem10:2858;Wang et al.(2006)Annu Rev Biophys Biomol Rev 35:225に開示されている。
抗体は、原核生物および真核生物発現系を含む幾つもの発現系を用いて作製され得る。一部の実施形態では、発現系は、哺乳類細胞発現系、例えばハイブリドーマ、またはCHO細胞発現系である。多数のかかる系は、商用供給業者から広範に入手可能である。抗体がVおよびV領域の双方を含む場合の実施形態では、VおよびV領域は、単一のベクターを用いて、例えばジシストロン発現単位で、または異なるプロモーターの制御下で発現させてもよい。他の実施形態では、VおよびV領域は、別々のベクターを用いて発現させてもよい。本明細書に記載される通りのVまたはV領域は、任意選択的にN末端にメチオニンを含んでもよい。
本明細書に記載される通りの抗体はまた、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、またはdABとしての様々なフィーマットで作製され得る。抗体断片は、インタクトな抗体の酵素、例えば((Fab’)断片を作製するための)ペプシンまたは(Fab断片を作製するための)パパインを用いた消化;またはデノボ合成を含む種々の方法により得られ得る。抗体断片はまた、組換えDNA法を用いて合成され得る。一部の実施形態では、抗β8抗体は、β8に特異的に結合するF(ab’)断片を含む。本発明の抗体はまた、ヒト定常領域を含み得る。例えば、Fundamental Immunology(Paul ed.,4d ed.1999);Bird,et al.,Science 242:423(1988);およびHuston,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879(1988)を参照。
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化する(primatizing)ための方法もまた、当該技術分野で公知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、移入残基と称されることが多く、典型的には移入可変ドメインから取得される。ヒト化は、本質的には、Winterと同僚らの方法(例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534−1536(1988)およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照)に従い、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより実施され得る。かかるヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、ここで実質的にインタクトに満たないヒト可変ドメインは非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。事実、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基とおそらくは一部のFR残基が齧歯類抗体中の類似部位に由来する残基によって置換されている場合の
ヒト抗体である。
場合によっては、本抗体または抗体断片は、インビボで半減期の延長を提供するため、別の分子、例えばポリエチレングリコール(ペグ化)または血清アルブミンに結合され得る。抗体断片のペグ化の例が、Knight et al.Platelets 15:409,2004(アブシキシマブの場合);Pedley et al.,Br.J.cancer 70:1126,1994(抗CEA抗体の場合);Chapman et al.,Nature Biotech.17:780,1999;およびHumphreys,et al.,Protein Eng.Des.20:227,2007)に提示されている。抗体または抗体断片はまた、下記のように標識され得るかまたは治療薬に結合され得る。
抗体結合の特異性は、抗体および環境中の他の材料または概して無関係の分子に対する解離定数と比べての抗体の標的(例えばβ8)に対する比較解離定数(Kd)の観点で規定され得る。典型的には、抗体の無関係の材料に対するKdは、標的に対するKdよりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍以上になる。
抗体に対する所望される親和性、例えば、高い(pM〜低nM)、中程度(低nM〜100nM)、または低い(約100nM以上)は、抗体が診断または治療用に用いられているか否かに応じて異なり得る。例えば、中程度の親和性を有する抗体は、所望される組織への局在化において、高親和性を有する抗体と比べてより有効であり得る。したがって、異なる親和性を有する抗体は、診断および治療用途に用いることができる。
標的化部分は、典型的には、約1000nM未満、例えば、250nM未満、100nM、50nM、20nMもしくはそれ未満のKdで結合することになる。一部の実施形態では、親和性剤(affinity agent)のKdは、15未満、10、5、もしくは1nMである。一部の実施形態では、Kdは1〜100nM、0.1〜50nM、0.1〜10nM、もしくは1〜20nMである。解離定数(Kd)の値は、周知の方法により決定され得、たとえ複合混合物に対しても、例えば、Caceci et al.,Byte(1984)9:340−362に開示されたような方法により計算され得る。
抗体または任意の標的化剤の標的に対する親和性は、例えば、Ernst et al.Determination of Equilibrium Dissociation Constants,Therapeutic Monoclonal Antibodies(Wiley & Sons ed.2009)にレビューされているような当該技術分野で公知の方法に従って決定され得る。
定量ELISA、および同様のアレイに基づく親和性の方法を用いることができる。ELISA(酵素結合免疫吸着シグナル伝達アッセイ)は抗体に基づく方法である。場合によっては、目的の標的に特異的な抗体が、基質に添加され、標的を含有することが疑われる試料と接触される。次に、表面は、未結合物質を除去するために洗浄される。標的の結合は、例えば、標識化抗体を用いる第2のステップ、標的の直接標識、または抗原結合時に検出可能な標識による一次抗体の標識を用いる種々の方法で検出され得る。場合によっては、抗原は、基質に添加され(例えば、タンパク質に対して高親和性を有する基質、またはストレプトアビジン−ビオチン相互作用を用いる)、標識抗体(または他の標的化部分)を用いて検出される。元のELISA法を並べ替えたものが幾つか開発されており、それらは当該技術分野で公知である(レビューとしてLequin(2005) Clin.Chem.51:2415−18を参照)。
Kd、Kon、およびKoffはまた、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、例えばBiacore T100システムを用いての測定として、測定され得る。SPR技術は、例えば、Hahnfeld et al.Determination of Kinetic Data Using SPR Biosensors,Molecular Diagnosis of Infectious Diseases(2004)にレビューされている。典型的なSPR実験では、一方の相互作用物(標的または標的化剤)がフローセル内のSPR活性のある金コーティングしたスライドグラス上で固定化され、他方の相互作用物を含有する試料が表面を横切って流れるように導入される。光が表面上で所与の頻度で輝く時、金の光反射率に対する変化が結合性、および結合の動力学を示す。
結合親和性はまた、ビオチン化相互作用物をストレプトアビジン(SA)センサーチップに固定することにより測定され得る。次に、他方の相互作用物がチップと接触され、例えば、Abdessamad et al.(2002)Nuc.Acids Res.30:e45に記載のように検出される。
VI.実施例
実施例1
37E1B5のCDR2内のグリカンは、β8への結合でなく、完全なTGFβ遮断活性のために必要である。発明者は、重鎖CDR2内のグリコシル化部位(配列番号7内のアミノ酸位置)を破壊するための単一のアミノ酸置換を有する37E1B5変異体について試験した。その抗体は、TGFβの活性化および放出を遮断することができなかった。
しかし、基準のグリコシル化部位の存在は、グリコシル化がその部位で生じることを必ずしも示さない。それ故、37E1B5変異体の活性における変化は、グリコシル化の欠乏、または置換されたアミノ酸によるもののいずれかであり得た。
発明者は、ペプチド−N−グリコシダーゼF(PNGase F)を用いて37E1B5を脱グリコシル化し、それによりアミノ酸配列を保存した(重鎖CDR2は配列番号7によって表される)。図2Aに示すように、37E1B5(B5)および脱グリコシル化37E1B5(de−glyco B5)は、β8に等しい親和性で結合する。しかし、図2Bは、脱グリコシル化37E1B5がTGFβ活性化を遮断しないことを示す。結果は、37E1B5の重鎖CDR2内のグリコシル化が抗体のTGFβ活性化を遮断する能力に影響することを示す。
発明者は、グリコシル化部位を無関係の抗体2A10のCDR2の重鎖内に操作した(図1を参照)。2A10抗体は、14E5モノクローナル抗体の変異体であり、37E1B5の場合と重複するエピトープに結合するが、αvβ8によるTGFβ活性化を阻害しない。2A10および37E1B5抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列は各々、38%および44%の同一性を共有する。
グリコシル化部位を、2A10 CDR2重鎖に、配列番号2の位置12でのAsnをThrと置換することにより導入した。この結果、配列番号2の位置10のAsnでグリコシル化がなされる。
意外にも、発明者は、グリコシル化および非グリコシル化形態の37E1B5の結果に類似した結果をグリコシル化および非グリコシル化形態の2A10の場合に認めた。すなわち、2A10のグリコシル化が、2A10抗体の機能を、αvβ8によるTGFβ活性化を阻害し得るように変換した。図2Aは、非グリコシル化2A10(2A10)および
グリコシル化2A10(NYT−2A10)がβ8に等しい親和性で結合することを示す。しかし、図2Bは、非グリコシル化2A10がTGFβ活性化を遮断しない一方で、グリコシル化2A10が遮断することを示す。その結果は、グリコシル化が、β8結合抗体のTGFβ活性化を遮断する能力においてよりグローバルな役割を有することを示す。
実施例2
発明者は、37E1B5のFabおよび抗体クローン68のFabを用いて構造試験を実施した。クローン68は、37E1B5の場合と重複するβ8上のエピトープに結合するが、TGFβの活性化および放出を阻害しない。
β8のヘッドおよびハイブリッドドメインのリボンダイアグラムを図3Aに示す。同図は、RGDに結合されたβ8の正常な配向性(左上)、および37E1B5のエピトープ内に含まれるアミノ酸(右)を示す。
図3Bは、TGFβを遮断するFab 37E1B5が、結合時、β8ヘッド−ハイブリッドドメイン角度のわずかな内向き屈曲を引き起こすことを示す。この変化は、抗体対照なし、または非遮断抗体68 Fabの場合には認められない。37E1B5依存性屈曲が、β8のクラスプ形態および非クラスプ形態の双方で生じた。その結果は、37E1B5のTGFβ阻害活性が抗体への結合時のβ8における立体構造変化によって媒介されることを示す。
実施例3
これまでの結果を組み合わせると、β8特異抗体がαvβ8媒介性のTGFβの活性化を阻害する能力が、重鎖CDR2のグリコシル化により、また抗体の結合時でのβ8における立体構造変化を誘導する能力により影響されることが示される。
グリコシル化がβ8における立体構造変化に関与するか否かを判定するため、発明者は、グリコシル化および非グリコシル化2A10抗体Fabの構造分析を実施した。37E1B5と同様、2A10の重鎖CDR2内のグリカンは、β8のヘッド−ハイブリッド角度における立体構造変化を誘導する。図4はその結果を示す。グリコシル化2A10(NYT2A10 Fab)は、β8のヘッド−ハイブリッド角度においてグリコシル化37E1B5と同様の低減を誘導する。その結果は、β8のヘッドおよび/またはハイブリッド領域に結合する抗体のグリコシル化が、β8における立体構造変化を誘導し、かつTGFβを活性化するその能力を阻害し得ることを示す。
VII.Informal Sequenceリスト
11E8抗体の重鎖CDR2(配列番号1)
Asp Ile Leu Pro Gly Ser Gly Thr Thr Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys
11E8mut94および14E5(2A10)抗体の重鎖CDR2(配列番号2)
Asp Ile Leu Pro Gly Ser Gly Thr Thr Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Glu
11E8mut39の重鎖CDR2(配列番号3)
His Thr Leu Pro Gly Ser Gly Thr Thr Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys
14E5抗体の重鎖CDR2(配列番号4)
His Ile Leu Pro Gly Ser Val Ile Thr Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys
14E5mut68抗体の重鎖CDR2(配列番号5)
Asp Ile Leu Pro Gly Ser Gly Thr Thr Asn
Tyr Asn Glu Lys Phe Lys
14E5(2C6)抗体の重鎖CDR2(配列番号6)
His Ile Leu Pro Gly Ser Ala Ile Thr Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys
37E1B5およびヒト化37E1B5抗体の重鎖CDR2(配列番号7)
Glu Ile Asn Pro Asp Ser Ser Thr Ile Asn Tyr Thr Ser Ser Leu Lys
11E8抗体の重鎖可変領域(配列番号8)
11E8抗体の軽鎖可変領域(配列番号9)
14E5抗体の重鎖可変領域(配列番号10)
14E5抗体の軽鎖可変領域(配列番号11)
37E1B5抗体の重鎖可変領域(配列番号12)
37E1B5抗体の軽鎖可変領域(配列番号13)
ヒト化37E1B5抗体の重鎖可変領域(配列番号14)
ヒト化37E1B5抗体の軽鎖可変領域(配列番号15)
例示的なインテグリンβ8エピトープ(配列番号16)
Ser Arg Lys Met Ala Phe Phe
完全長ヒトインテグリンβ8(配列番号17)

Claims (5)

  1. 活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害する組換え抗体を作製する方法であって、
    β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合する抗体を同定するステップと;
    グリコシル化部位を導入するため、前記重鎖CDR2配列を組換え的に修飾するステップと;
    前記抗体を発現させるステップと、を含み、ここで前記抗体は、β8への結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法。
  2. 活性型成熟TGFβペプチドの放出を阻害するグリコシル化抗体を作製する方法であって、
    β8のヘッドおよび/またはハイブリッドドメイン内のエピトープに結合し、かつ前記重鎖CDR2配列内でグリコシル化され得るアミノ酸を含む抗体を同定するステップと;
    前記抗体を発現させるステップと;
    前記アミノ酸を化学的にグリコシル化するステップと、を含み、ここで前記抗体は、β8への結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を、化学的グリコシル化を伴わない前記抗体に接触したβ8と比べて低減させるような立体構造変化を引き起こす、方法。
  3. 前記抗体が配列番号16を含むエピトープに結合する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記抗体は、β8に結合時、β8の前記ヘッドおよびハイブリッドドメインの間の角度を前記抗体に接触していないβ8と比べて少なくとも5°低減させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記グリコシル化されるアミノ酸が、配列番号1〜6のいずれか1つにおけるアミノ酸位置10に対応する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
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