JP2020182119A - 弾性波フィルタ、分波器および通信装置 - Google Patents

弾性波フィルタ、分波器および通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】小型化可能な弾性波フィルタを提供する。【解決手段】圧電基板3と、前記圧電基板3上にてフィルタの直列腕を構成している複数の電極指15を含む共振子1であって、第1共振部23と、この第1共振部23の弾性波の伝播方向の両側において前記第1共振部23と縦結合する、前記第1共振部23とは周波数設計の異なる第2共振部25および第3共振部27と、前記第1共振部23,前記第2共振部25および前記第3共振部27の並びの両側に位置する1対の反射器9とを含む共振子1と、を備える弾性波フィルタF1である。【選択図】図2

Description

本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)等の弾性波を利用する弾性
波フィルタ、分波器および通信装置に関する。
弾性波を利用した共振子型フィルタとして、複数の共振子をラダー型に接続したラダー型フィルタが知られている(例えば特許文献1)。ラダー型フィルタは、入力側と出力側とを接続する直列腕と、直列腕の互いに異なる位置と基準電位部とを互いに並列に接続する複数の並列腕とを有している。直列腕は、入力側と出力側との間で互いに直列に接続された複数の直列腕共振子を有している。複数の並列腕それぞれは、前記複数の直列腕共振子のいずれかの入力側または出力側と、基準電位部とを接続する並列腕共振子を有している。直列腕共振子および並列腕共振子は、例えば、圧電基板と、圧電基板の主面上に設けられたIDT(InterDigital Transducer)電極と、その両側に配置された1対の反射器
とを有している。
特許文献1では、ラダー型フィルタにおいて、並列腕共振子と同等の共振周波数を有するとともに直列腕共振子に並列に接続される付加共振子を追加することを提案している。特許文献1では、このような付加共振子を設けることによって、減衰特性が向上することを示している。また、特許文献1では、直列共振子と付加共振子とで、両者の間に位置する反射器を共用する態様を開示している。
特開2007−74459号公報
特許文献1の技術では、減衰特性は向上する一方で、ラダー型フィルタの基本的な構成に付加共振子を追加することから、その分だけフィルタが大型化する。従って、小型化可能な高い減衰特性を備える弾性波共振子、およびそれを用いた弾性波フィルタ、分波器および通信装置が提供されることが望ましい。
本開示の一態様に係る弾性波フィルタは、圧電基板と、前記圧電基板上にてフィルタの直列腕を構成している複数の電極指を含む共振子とを含む。この共振子は、第1共振部と、第2共振部と、第3共振部と、反射器とを含む。第2共振部および第3共振部は、第1共振部の弾性波の伝播方向の両側において前記第1共振部と縦結合する、前記第1共振部とは周波数設計の異なるものである。一対の反射器は、前記第1共振部,前記第2共振部および前記第3共振部の並びの両側に位置する。
本開示の一実施態様に係る分波器は、アンテナ端子と、送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、を有しており、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方は、上記の弾性波フィルタを含んでいる。
本開示の一実施態様に係る通信装置は、アンテナと、前記アンテナに前記アンテナ端子が接続されている上記の分波器と、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続され
ているICと、を有している。
上記の構成によれば、弾性波フィルタ、分波器および通信装置を小型化できる。
第1実施形態の弾性波フィルタに用いられる、共振子の構成を示す平面図である。 図2(a),図2(b)は、図1に示す共振子の周波数特性を示す線図である。 フィルタF1の構成を示す平面図である。 図4(a)および図4(b)は、図3に示すフィルタのフィルタ特性を示す図である。 フィルタF2の構成を示す平面図である。 図6(a)および図6(b)は、図5に示すフィルタF2のフィルタ特性を示す線図である。 図7(a)および図7(b)は、比較例に係るフィルタのフィルタ特性を示す線図である。 図8(a),図8(b)は、変形例に係るフィルタのフィルタ特性を示す線図である。 図9(a)および図9(b)は、フィルタ特性を示す線図である。 分波器の一実施形態を示すブロック図である。 通信装置の一実施形態を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一または類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
同一または類似する構成については、「第1櫛歯電極11A」、「第2櫛歯電極11B」のように、同一名称に対して互いに異なるアルファベットを付して呼称することがあり、また、この場合において、単に「櫛歯電極11」といい、これらを区別しないことがある。
<第1実施形態>
(基本形のSAW共振子の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る弾性波フィルタ(SAWフィルタ)51(図3)に用いられる共振子1の構成を示す平面図である。
共振子1(SAWフィルタ51)は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下の説明では、便宜的に、D1軸、D2軸およびD3軸からなる直交座標系を定義し、D3軸の正側(図1の紙面手前側)を上方として、上面等の語を用いることがあるものとする。なお、D1軸は、後述する圧電基板3の上面(紙面手前側の面。通常は主面。)に沿って伝搬するSAWの伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電基板3の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電基板3の上面に直交するように定義されている。
共振子1は、いわゆる1ポートSAW共振子を構成しており、例えば、模式的に示す第1端子31Aおよび第2端子31Bの一方から所定の周波数の電気信号が入力されると共振を生じ、その共振を生じた信号を第1端子31Aおよび第2端子31Bの他方から出力する。
このような1ポートSAW共振子としての共振子1は、例えば、圧電基板3上に設けられた共振子電極部5とを有している。共振子電極部5は、IDT電極7と、IDT電極7の両側に位置する1対の反射器9とを有している。
圧電基板3は、例えば、圧電性を有する単結晶からなる。単結晶は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)単結晶またはタンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶である。カット角は、利用するSAWの種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、圧電基板3は、回転YカットX伝搬のものである。すなわち、圧電結晶のX軸は圧電基板3の上面(D1軸)に平行であり、Y軸は、圧電基板3の上面の法線に対して所定の角度で傾斜している。なお、圧電基板3は、比較的薄く形成され、裏面(D3軸負側の面)に無機材料または有機材料からなる支持基板が直接的または間接的に貼り合わされたものであってもよい。
IDT電極7および反射器9は、圧電基板3上に設けられた層状導体によって構成されている。IDT電極7および反射器9は、例えば、互いに同一の材料および厚さで構成されている。これらを構成する層状導体は、例えば、金属である。金属は、例えば、AlまたはAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、Al−Cu合金である。層状導体は、複数の金属層が積層されて構成されてもよい。層状導体の厚さは、SAW共振子1に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。一例として、層状導体の厚さは50nm〜400nmである。
IDT電極7は、第1櫛歯電極11A(視認性をよくする便宜上ハッチングを付す)および第2櫛歯電極11Bを有している。各櫛歯電極11は、バスバー13と、バスバー13から互いに並列に延びる複数の電極指15と、複数の電極指15の間にてバスバー13から突出する複数のダミー電極17とを有している。1対の櫛歯電極11は、複数の電極指15が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。すなわち、1対の櫛歯電極11の2本のバスバー13は互いに対向して配置され、第1櫛歯電極11Aの電極指15と第2櫛歯電極11Bの電極指15とはその幅方向に基本的に交互に配列されている。また、一方の櫛歯電極11の複数のダミー電極は、その先端が他方の櫛歯電極11の電極指15の先端と対向している。
バスバー13は、例えば、概ね一定の幅でSAWの伝搬方向(D1軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、一対のバスバー13は、SAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)において互いに対向している。なお、バスバー13は、幅が変化していたり、SAWの伝搬方向に対して傾斜していたりしてもよい。
各電極指15は、例えば、概ね一定の幅でSAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。複数の電極指15は、例えば、SAWの伝搬方向に配列されており、また、互いに同等の長さである。なお、IDT電極7は、複数の電極指15の長さ(別の観点では交差幅)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。
電極指15の本数は、SAW共振子1に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。なお、図1等は模式図であることから、電極指15の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多く(例えば100本以上)の電極指15が配列されてよい。後述する反射器9のストリップ電極21についても同様である。
複数の電極指15のピッチp(電極指ピッチ)は、例えば、互いに隣り合う2本の電極指15(または後述するストリップ電極21)の中心間距離である。ピッチpは、基本的に、圧電基板3上を伝搬するSAWのうち共振させたい周波数と同等の周波数を有するSAWの波長λの半分(p=λ/2)とされている。
複数のダミー電極17は、例えば、概ね一定の幅でSAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に直線状に突出する長尺状に形成されている。その先端と複数の電極指15の先端とのギャップは、例えば、複数のダミー電極17間で同等である。複数のダミー電極17の幅、本数およびピッチは、複数の電極指15と同等である。
なお、IDT電極7は、ダミー電極17を有さないものであってもよい。以下の説明では、ダミー電極17の説明および図示を省略する。
反射器9は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器9は、互いに対向する1対のバスバー19と、1対のバスバー19間において延びる複数のストリップ電極21とを有している。
バスバー19およびストリップ電極21の形状は、ストリップ電極21の両端が1対のバスバー19に接続されていることを除いては、IDT電極7のバスバー13および電極指15と同様とされてよい。
なお、特に図示しないが、圧電基板3の上面は、IDT電極7および反射器9の上から、SiO等からなる保護膜によって覆われていてもよい。保護膜は、単にIDT電極7等の腐食を抑制するためのものであってもよいし、温度補償に寄与するものであってもよい。また、保護膜が設けられる場合等において、IDT電極7および反射器9の上面または下面には、SAWの反射係数を向上させるために、絶縁体または金属からなる付加膜が設けられてもよい。
また、SAW共振子1を含むSAW装置では、例えば、特に図示しないが、圧電基板3の上面の振動を許容してSAWの伝搬を容易化する空間が圧電基板3上に構成される。この空間は、例えば、圧電基板3の上面に被せられる箱型のカバーを形成することによって、または、回路基板の主面と圧電基板3の上面とをバンプを介在させつつ対向させることによって構成される。
ここで、IDT電極7は、3つの共振部(第1共振部23,第2共振部25,第3共振部27)を有する。これらの共振部23,25,27は弾性波の伝搬方向に沿って配列されており、第2共振部25と第3共振部27との間に第1共振部23が位置している。
これら第2共振部25と第3共振部27とは、それぞれ、第1共振部23と縦結合している。すなわち、第1共振部23,第2共振部25,第3共振部27とで一方のバスバーを共有し、他方のバスバーが分離している。そして、第2共振部25および第3共振部27の分離されている側のバスバーは基準電位に接続されている。なお、第1共振部23,第2共振部25,第3共振部27とで一方のバスバー19も分割し、それぞれに高周波信号が入出力できるよう配線を接続してもよい。
そして、第1共振部23と、第2共振部25および第3共振部27とは周波数設計が異なる。第1共振部23は、SAW共振子1としての共振特性を支配するものであり、SAW共振子1の所望の共振周波数を実現できるように、電極指15の厚み、ピッチ、Duty比を調整
する。
第2共振部25および第3共振部27は、具体的には、第1共振部23よりも共振周波数が高くなるような周波数設計を行なう。このように共振周波数を異ならせるためには、各共振部で電極指15の厚み、ピッチ、Duty比(電極指ピッチに対する電極指15の幅の比)等を変化させてもよい。例えば、第1共振部23のピッチに比べ、第2共振部25,第3共振部27のピッチを小さくしてもよい。
第2共振部25,第3共振部27の第1共振部23に対する割合は、第1共振部23が主となる共振周波数を決定すべく第1共振部23の割合を最も大きくすれば特に制限はない。例えば、第1共振部23を構成する電極指15の本数に対して、第2共振部25,第3共振部27を構成する電極指15の本数をそれぞれ20%以下としてもよい。その場合には、主共振周波数の共振特性の劣化を抑制することができる。さらに10%以下とすると、さらに前述の効果を強めることができる。
また、第2共振部25と第3共振部27とを構成する電極指15の電極指設計(本数、ピッチ、Duty等)は同一としてもよい。その場合には、意図せぬスプリアスの発生を低減することができる。
このように、IDT電極7を分割してそれらを縦結合させることで、共振子1の共振周波数と反共振周波数との間にもう1つ共振を作ることができる。その結果、Δfを小さくすることができるので、これをフィルタ(例えば、後述のSAWフィルタ51)に適用すると、通過帯域の高周波数側において急峻度を向上させることができ、減衰特性を高めることができる。
図2に、このような共振子1の周波数特性を示す。図2において横軸は周波数を、縦軸は図2(a)はインピーダンスの絶対値を、図2(b)は位相をそれぞれ示している。図2中において実線は本開示の共振子1の特性を示し、破線はIDT電極7が1つの共振部で構成される従来の共振子の特性を示している。
共振子1の具体的な電極指設計は以下の通りである。
IDT電極7の電極指交差幅:70.5μm
電極指の膜厚:360nm
第1共振部23:電極指15の本数 150本
電極指15のピッチ 2.35μm
第2共振部25:電極指15の本数 10本
電極指15のピッチ 2.21μm
第3共振部27:電極指15の本数 10本
電極指15のピッチ 2.21μm
反射器9のストリップ電極21の厚み:360nm
ストリップ電極21の本数:30本
ストリップ電極21のピッチ:2.35μm
図2からも明らかなように本開示の共振子1は、共振周波数と反共振周波数との間にもう1つ共振を作ることができ、この間に位置する共振を用いることでΔf(共振周波数と反共振周波数との差)を小さくすることができる。また、図2(b)中に矢印で示すように、高周波数側の肩特性がよいため、損失の少ない狭Δf共振子を提供することができる。さらに、本開示のSAW素子1は、反共振周波数の周波数を高くすることができる。これは、以下のメカニズムによるものと推察される。すなわち、共振周波数は、IDT電極7の中央、すなわち、第1共振部23の振動の割合が多いので変化は少ない。これに対して、反共振周波数ではIDT電極7の全体から端部にかけて全体的に振動する。ここで端部に位置する第2共振部25,第3共振部27の周波数が高いため、反共振周波数が高周波数側にシフトする。その結果、SAW素子1をフィルタに適用すると、通過帯域の高周波数側の特性を向上させることができる。
次に、このような共振子をフィルタF1を構成する直列共振子として用いる例について説明する。
図3にフィルタF1であるラダー型フィルタ51を示す。ラダー型フィルタ51は、入出力端子P1,P2との間に、直列に接続される直列共振子S1,S2とこれと基準電位との間に接続される並列共振子P1,P2とを有する。これら直列共振子S1,S2と、並列共振子P1,P2とがラダー型に接続されている。
なお、直列共振子Sの数や並列共振子Pの数は所望のフィルタ特性に応じて適宜増減させることができる。また、直列共振子Sや並列共振子Pの電極指15本数やピッチ,Duty等も適宜自由に設定することができる。
ここで、直列共振子S2に上述の共振子1を用いる。具体的には共振子1の第1端子31Aを直列共振子S1と電気的に接続し、第2端子31Bを入出力端子P2に電気的に接続している。なお、直列共振子S2以外の共振子(直列共振子S1,並列共振子P1,P2)は、IDT電極7が1つの共振部で構成されている。以下、このようなIDT電極7が1つの共振部で構成されている共振子を「従来型共振子」という。
このようなラダー型フィルタ51のフィルタ特性を図4に示す。図4において横軸は周波数を、縦軸は透過特性を示し、図4(b)は図4(a)の要部拡大図である。図4中において、ラダー型フィルタ51の特性を線LE1で示し、段数および共振子容量等はラダー
型フィルタ51と同様であるが、直列共振子S2を含む全ての共振子を従来型共振子で構成した比較例1に係るフィルタの周波数特性を線LC1で示す。
図4からも明らかなように、ラダー型フィルタ51は比較例1のフィルタに比べて、帯域の高周波数側の肩特性が向上している様子が確認できる。また、通過帯域内の通過特性も維持できていることが確認できる。
以上より、共振子1をラダー型フィルタ51の直列共振子Sに適用することで、フィルタの急峻な減衰特性を実現できる。
また、共振子1は、図2に示すように、共振周波数よりも高周波数側に2つのインピーダンスの極大値をとる。そのうち低周波数側の(共振点に隣接する)インピーダンス極大値は、通過帯域よりも高く、かつ、他の直列共振子Sの反共振周波数よりも低くすること
で、フィルタとしての減衰特性を向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、図5に、入出力端子P1,P2間に、2つの直列共振子S1,S2とその間に位置する縦結合型フィルタ52とが直列に接続されたフィルタF2を示す。ここで、縦結合型フィルタ52はDMS型フィルタであり、直列共振子S1,S2は、上述の共振子1としている。
このような構成のフィルタF2のフィルタ特性を図6に示す。図6において横軸は周波数を、縦軸は透過特性を示しており、図6(b)は図6(a)の要部拡大図である。図6中において、フィルタF2の特性を線LE2で示し、直列共振子S1,S2を従来型共振子
に代えた比較例2に係るフィルタの周波数特性を破線LC2で示す。
図6からも明らかなように、フィルタF2は比較例2のフィルタに比べて、帯域の高周波数側の肩特性が向上している様子が確認できる。また、通過帯域内の通過特性も維持できていることが確認できる。
なお、一般的に共振子のΔfを狭くして急峻性を高める手法として、従来型の共振子に対して並列に容量を付加することが知られている。そこで、フィルタF2の構成において、直列共振子S1,S2を従来型の共振子にするとともに、それぞれに対して並列に付加容量を加えた場合(比較例3という)のフィルタ特性を図7に示す。図7は図6と同様の図であり、線LC3で比較例3のフィルタ特性を示し、線LE2でフィルタF2のフィルタ特性を示している。
図7からも明らかなように、フィルタF2のフィルタ特性は付加容量を用いるフィルタ特性と同等の減衰特性を実現できることが分かった。ただし、付加容量を用いる場合には、単純に新たな部品(または付加容量を構成する新たな電極パターン)が必要となり、装置の大型化を招く虞があった。これに対して、本開示の共振子1を用いる場合には、1つの共振子で減衰特性を向上させることができるので、小型で高い減衰特性を備えるフィルタを実現することができる。
<共振子1の変形例>
上述の例では、共振子1の各共振部23〜27間で電極指15のピッチを異ならせた場合を例に説明したが、その他の手段で周波数設計を異ならせてもよい。
図8に共振部23〜27間で電極指15のDutyを変化させた共振子1Aの周波数特性を示す。具体的には第1共振部23のDutyに比べ第2共振部25,第3共振部27のDutyを小さくしている。図8は図2に相当する図である。図8中に、破線で従来型の共振子(分割なし)の特性を示し、実線で共振子1Aの特性を、一点破線で共振子1の特性をそれぞれ示している。
図8からも明らかなように、Dutyを変えることでも共振子1と同様にΔfを小さくすることができることを確認した。
なお、共振部間でピッチとDutyとの双方を異ならせて周波数設計を異ならせてもよい。
<共振子1の変形例>
共振子1において、第1共振部23に対する第2共振部25および第3共振部27のピッチを89%〜99%まで変化させた。具体的には、第1共振部23のピッチを2.35μmとし、第2,第3共振部25,27のピッチを2.1μm〜2.35μmとした。その結果を図9に示す。
図9(a)は、図3に示すフィルタF1において、共振子1の第1共振部23に対する
第2共振部25および第3共振部27のピッチを89%〜99%まで変化させたときのフィルタ特性の変化の様子を示すものである。図9(b)は図9(a)の部分拡大図である。図9において、横軸は周波数、縦軸は透過特性を示している。図中において、高周波数側の肩特性において減衰がみられる位置を矢印で示すとともに、それを実現するピッチの数字(単位:μm)を示している。
図9からも明らかなように、第2,第3共振部25,27のピッチが第1共振部23の
ピッチに近すぎる(例えば2.3μm)と、十分な減衰を得ることができない。一方で、第2,第3共振部25,27のピッチが第1共振部23のピッチと遠すぎる(例えば2.1μm)と、減衰極が通常のフィルタに近すぎて効果が少なくなる。このため、第2,第3共振部25,27のピッチを2.15〜2.25μm、すなわち、第1共振部23に対する第2共振部25および第3共振部27のピッチを90%以上95%以下とすることで、より急峻性の高いフィルタを実現することができる。
<分波器>
(分波器の構成)
図10は、上述した実施形態に係るフィルタの利用例としての分波器101を示す模式図である。なお、この図の説明では、第1実施形態のフィルタF1(ラダー型フィルタ51)の構成および符号を引用するが、フィルタF1に代えて、他の実施形態のSAWフィルタが用いられてもよい。
分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
送信フィルタ109は、フィルタF1を含む、多段式のラダー型フィルタによって構成されている。
受信フィルタ111は、例えば、互いに直列に接続されたSAW共振子61およびSAWフィルタ63によって構成されている。これらを構成するIDT電極7および反射器9は、例えば、同一の圧電基板3に設けられている。受信フィルタ111が構成される圧電基板3は、送信フィルタ109が構成される圧電基板3と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
受信フィルタ111は、SAW共振子61は、例えば、従来型の共振子の構成である。SAWフィルタ63は、例えば、縦結合多重モード(2重モードを含むものとする)型共振子フィルタであり、SAWの伝搬方向に配列された複数のIDT電極7と、その両側に配置された1対の反射器9とを有している。
なお、上述の例では送信フィルタ109として、フィルタF1を用いた場合を例に説明したが、受信フィルタ111にフィルタF2を用いてもよい。
<通信装置>
図11は、上述した分波器101の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF−IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数の高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101に入力される。分波器101は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して増幅器161に出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増
幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF−IC153によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図11では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図11は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
実施形態では、複数の共振子、複数の共振部は、電極指ピッチ以外のパラメータ(例えば、電極指の材料、電極指の厚さまたはデューティー比)が互いに同一であるものとした。ただし、複数の共振子および複数の共振部は、電極指ピッチ以外の共振周波数に影響を及ぼすパラメータが互いに異なっていてもよい。
共振子1,3…圧電基板,15…電極指,23…第1共振部,25…第2共振部,27…第3共振部,9…反射器,F1…SAWフィルタ(弾性波フィルタ)。

Claims (7)

  1. 圧電基板と、
    前記圧電基板上にてフィルタの直列腕を構成している複数の電極指を含む共振子であって、第1共振部と、この第1共振部の弾性波の伝播方向の両側において前記第1共振部と縦結合する、前記第1共振部とは周波数設計の異なる第2共振部および第3共振部と、前記第1共振部,前記第2共振部および前記第3共振部の並びの両側に位置する1対の反射器とを含む共振子と、
    を備える弾性波フィルタ。
  2. 前記第2共振部および前記第3共振部は前記電極指の数およびピッチが同一である、請求項1に記載の弾性波フィルタ。
  3. 前記第2共振部および前記第3共振部は、前記第1共振部と前記電極指のピッチが異なる、請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
  4. 前記フィルタは、直列共振子と並列共振子とがラダー型に接続されたラダー型フィルタであって、前記共振子は、前記直列共振子に用いられる、請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
  5. 前記フィルタは、直列共振子と縦結合型フィルタとが直列に接続されてなり、前記共振子は、前記直列共振子に用いられる、請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性波フィルタ。
  6. アンテナ端子と、
    送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、
    前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、
    を有しており、
    前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性波フィルタを含んでいる
    分波器。
  7. アンテナと、
    前記アンテナに前記アンテナ端子が接続されている請求項6に記載の分波器と、
    前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続されているICと、
    を有している通信装置。
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