以下、本発明の一実施例に係る流路切換弁について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る流路切換弁の縦断面図である。図2は、図1の流路切換弁の一部分解斜視図である。図3は、図1の流路切換弁が有する弁体を説明する図である。図3(a)は、弁体を下方から見た斜視図である。図3(b)は、弁体を下方から見た底面図である。図4は、図1の流路切換弁の動作を説明する図であり、弁体の摺動面を下方から見た底面図である。図4(a)は、弁体の第1〜第4分岐溝とシート部材の第1〜第4出口ポートとが対向した状態を模式的に示す図である。図4(b)〜(d)は、図4(a)の状態から弁体を時計方向に30度、60度および90度回転させた状態を模式的に示す図である。図5は、図1の流路切換弁が有する弁体の変形例を説明する図であり、弁体を下方から見た底面図である。図5(a)は、第1〜第4分岐溝を時計方向に順に配置した構成を示し、図5(b)は、第1〜第4分岐溝を反時計方向に順に配置した構成を示す。
本実施例の流路切換弁1は、例えば、空気調和機のサイクルシステムにおいて、圧縮機から吐出される冷媒の流れを1つとし、または、2つもしくは4つに分岐させて、圧縮機に接続される熱交換器の数を切り換えるために用いられるものである。
各図に示すように、流路切換弁1は、弁本体5と、ガイド20と、回転弁体である弁体30と、弁体駆動部50と、を有している。
弁本体5は、全体的に見て円柱状であり、上部から下部に向かうにしたがって段階的に径が大きくなるように形成されている。
弁本体5の上面である円形の弁座面5aには、中央に入口ポート10が開口して設けられている。入口ポート10は、弁座面5aにおいて、弁体30の回転軸である軸線L上に配置されている。また、弁座面5aには、軸線Lを中心とする円周方向に90度間隔で配置された第1出口ポート11、第2出口ポート12、第3出口ポート13および第4出口ポート14が開口して設けられている。これら、第1〜第4出口ポート11〜14は、軸線Lを中心として仮想的に配置した仮想円VC(図3(b)において二点鎖線で示す)上に配置されている。
弁本体5の下面5bには、中央に入口孔15が開口して設けられている。また、下面5bには、入口孔15を中心として円周方向に90度間隔で配置された4つの出口孔16が開口して設けられている。入口孔15は、入口ポート10に通じている。4つの出口孔16は、それぞれ第1〜第4出口ポート11〜14に通じている。入口孔15および4つの出口孔16は、それぞれに銅管6が挿入される。各銅管6は、弁本体5に固着される。
ガイド20は、内径が弁座面5aの径と同一の円環状に形成されている。ガイド20は、弁本体5の上部と嵌合されており、ガイド20の内側に弁座面5aが配置される。ガイド20の上端面には、柱状のストッパ21が立設されている。
弁体30は、本体部31と、鍔部32と、突部33、33と、を一体に有している。本体部31は、円柱状に形成されている。本体部31の外径は、弁座面5aの径と同一である。本体部31の下部はガイド20と嵌合されている。本体部31の下面である円形の摺動面31aは、弁座面5aと摺動可能に接している。本体部31は、弁座面5aおよび摺動面31aの中心を通る軸線L周りに回転可能でかつ軸線L方向(回転軸方向)に移動可能に配置されている。鍔部32は、本体部31の外周面の上端に径方向外方に突出して設けられている。鍔部32は、平面視で略C字状に形成されている。鍔部32は、周方向を向く端面32a、32aを有している。端面32a、32aは、ガイド20のストッパ21に突き当たることにより、ストッパ21とともに弁体30の回転範囲を規制する。突部33、33は、本体部31の上面31bに上方に突出して設けられている。突部33、33は、略四角柱状に形成されている。突部33、33は、本体部31の中心を挟んで対向するように配置されている。
図3に示すように、摺動面31aには、第1分岐溝41、第2分岐溝42、第3分岐溝43、第4分岐溝44、第1円弧溝45および第2円弧溝46が設けられている。
第1〜第4分岐溝41〜44は、摺動面31aの中央(入口ポート10に対応する箇所)から仮想円VCに対応する箇所まで半径方向に延びており、90度間隔で配置されている。第1分岐溝41と第2分岐溝42とは、摺動面31aの中央から互いに反対方向に延びている。
本実施例において、図3(b)に示すように、時計方向に順に第1分岐溝41、第3分岐溝43、第2分岐溝42および第4分岐溝44を配置している。この配置以外にも、図5(a)に示すように、時計方向に順に第1〜第4分岐溝41〜44を配置してもよい。または、図5(b)に示すように反時計方向に順に第1〜第4分岐溝41〜44を配置してもよい。
第1円弧溝45は、第1分岐溝41の先端に連設され、当該先端から仮想円VCに沿って一方向D1(図3において反時計方向)に延びるように円弧形に形成されている。第2円弧溝46は、第2分岐溝42の先端に連設され、当該先端から仮想円VCに沿って一方向D1に延びるように円弧形に形成されている。
第1円弧溝45および第2円弧溝46について、図3(b)を参照して説明する。図3(b)は、弁体30を摺動面31a側から見た図(底面図)である。図3(b)において、第1出口ポート11、第2出口ポート12、第3出口ポート13および第4出口ポート14を破線で示し、それぞれを順に6時、12時、9時および3時の位置に配置している。また、複数の仮想出口ポートVPを一点鎖線で示し、それぞれを1時、2時、4時、5時、7時、8時、10時および11時の位置に仮想的に配置したとする。第1出口ポート11、第2出口ポート12、第3出口ポート13および第4出口ポート14、ならびに、複数の仮想出口ポートVPは同一の径を有し、それぞれが仮想円VC上に等間隔(30度間隔)で配置されている。そして、第1分岐溝41の先端を6時の位置にある第1出口ポート11と対向させ、かつ、第2分岐溝42の先端を12時の位置にある第2出口ポート12と対向させる。この状態において、第1円弧溝45は、5時の位置にある1つの仮想出口ポートVPと対向するように形成され、第2円弧溝46は、10時および11時の位置にある2つの仮想出口ポートVPと対向するように形成されている。
第1円弧溝45は、第1分岐溝41の先端と第1出口ポート11とが対向する状態(図4(a))から弁体30が一方向D1と反対の他方向D2に30度回転された状態(図4(b))において第1出口ポート11と対向する。すなわち、第1円弧溝45と第1出口ポート11とは対向状態になる。また、第1円弧溝45は、第1分岐溝41の先端と第1出口ポート11とが対向する状態(図4(a))から弁体30が他方向D2に60度回転された状態(図4(c))において第1出口ポート11と対向しない。すなわち、第1円弧溝45と第1出口ポート11とは非対向状態になる。
第2円弧溝46は、第2分岐溝42の先端と第2出口ポート12とが対向する状態(図4(a))から弁体30が他方向D2に30度および60度回転された状態(図4(b)、(c))において第2出口ポート12と対向する。すなわち、第2円弧溝46と第2出口ポート12とは対向状態になる。また、第2円弧溝46は、第2分岐溝42の先端と第2出口ポート12とが対向する状態(図4(a))から弁体30が時計方向に90度回転された状態(図4(d))において第2出口ポート12と対向しない。すなわち、第2円弧溝46と第2出口ポート12とは非対向状態になる。
本体部31は、摺動面31aの中心から上面31bまで貫通する軸孔47が設けられている。軸孔47は、後述する駆動軸54が挿入される。また、本体部31は、第1〜第4分岐溝41〜44の先端から上面31bまで貫通する4つの均圧孔48が設けられている。
弁体駆動部50は、弁体30を軸線L周りに回転するように回転駆動する。弁体駆動部50は、キャン51と、ローター52と、ステーター53と、駆動軸54と、ばね部材としての板ばね55と、を有している。
キャン51は、上端が塞がれた円筒状に形成されている。キャン51の下端51aには弁本体5が嵌め込まれている。キャン51の下端51aは弁本体5に溶接されている。ローター52は、キャン51の内側に回転可能に配置されている。ステーター53は、キャン51の外側に配置されている。ローター52とステーター53とでステッピングモーターを構成している。駆動軸54は、ローター52に同軸に固着されている。駆動軸54の上端は、軸受56によって回転可能に支持されている。駆動軸54の下端は、弁体30の軸孔47によって支持されている。
板ばね55は、駆動軸54の回転を弁体30に伝達するとともに、弁体30を弁座面5aに向けて押すように構成されている。板ばね55は、円板状に形成されている。板ばね55は、中央の貫通孔55aに挿通された駆動軸54に溶接により固着されている。板ばね55は、円弧状のばね部55b、55bと、切り欠き部55c、55cと、が周縁部に設けられている。ばね部55b、55bは、それぞれの先端部分が弁体30の本体部31の上面31bに接するように弾性変形可能に曲げられている。ばね部55b、55bは、弁体30の上面31bに接しており、弁体30を下方に向けて押している。これにより、弁体30の摺動面31aが弁座面5aに押し付けられている。切り欠き部55c、55cは、弁体30の突部33、33が内側に嵌められている。
次に、本実施例の流路切換弁1の動作について、図4を参照して説明する。なお、図4において、軸孔47および均圧孔48の記載を省略している。
図4(a)に示す状態では、第1分岐溝41の先端と第1出口ポート11とが対向し、第2分岐溝42の先端と第2出口ポート12とが対向し、第3分岐溝43の先端と第3出口ポート13とが対向し、第4分岐溝の先端と第4出口ポート14とが対向している。この状態において、入口ポート10は第1〜第4出口ポート11〜14と接続され、入口ポート10からの冷媒の流れは4つに分岐する。
図4(a)に示す状態から弁体30を他方向D2に30度回転させて図4(b)に示す状態にする。この状態では、第1円弧溝45と第1出口ポート11とが対向し、第2円弧溝46と第2出口ポート12とが対向し、第3出口ポート13および第4出口ポート14は弁体30の摺動面31aによって塞がれる。これにより、入口ポート10は第1出口ポート11および第2出口ポート12と接続され、入口ポート10からの冷媒の流れは2つに分岐する。
図4(b)に示す状態から弁体30を他方向D2に30度回転させて図4(c)に示す状態にする。この状態では、第2円弧溝46と第2出口ポート12とが対向し、第1出口ポート11、第3出口ポート13および第4出口ポート14は弁体30の摺動面31aによって塞がれる。これにより、入口ポート10は第2出口ポート12とのみ接続されており、入口ポート10からの冷媒の流れは分岐せずに1つの流れとなる。
図4(c)に示す状態から弁体30を他方向D2に30度回転させて図4(d)に示す状態にする。第1分岐溝41の先端と第3出口ポート13とが対向し、第2分岐溝42の先端と第4出口ポート14とが対向し、第3分岐溝43の先端と第2出口ポート12とが対向し、第4分岐溝44の先端と第1出口ポート11とが対向する。これにより、入口ポート10は第1〜第4出口ポート11〜14と接続され、入口ポート10からの冷媒の流れは4つに分岐する。
このように、流路切換弁1では、弁体30の回転位置に応じて、入口ポート10からの冷媒の流れを1つとし、または、2つもしくは4つに分岐させることができる。
以上より、本実施例の流路切換弁1によれば、弁座面5aには、軸線L上に配置された入口ポート10と、軸線Lを中心とする仮想円VC上に90度間隔で配置された第1〜第4出口ポート11〜14と、が設けられている。弁体30の摺動面31aには、摺動面31aの中央から仮想円VCに対応する箇所まで延びかつ90度間隔で配置された第1〜第4分岐溝41〜44と、第1分岐溝41の先端に連設され、仮想円VCに沿って一方向D1に延びる第1円弧溝45と、第2分岐溝42の先端に連設され、仮想円VCに沿って一方向D1に延びる第2円弧溝46と、が設けられている。第1円弧溝45は、第1分岐溝41の先端と第1出口ポート11とが対向する状態から弁体30が他方向D2に30度回転された状態において第1出口ポート11と対向し、かつ、第1分岐溝41の先端と第1出口ポート11とが対向する状態から弁体30が他方向D2に60度回転された状態において第1出口ポート11と対向しないように形成されている。そして、第2円弧溝46は、第2分岐溝42の先端と第2出口ポート12とが対向する状態から弁体30が他方向D2に30度および60度回転された状態において第2出口ポート12と対向し、かつ、第2分岐溝42の先端と第2出口ポート12とが対向する状態から弁体30が他方向D2に90度回転された状態において第2出口ポート12と対向しないように形成されている。このようにしたことから、弁体30の回転位置に応じて、1つの入口ポート10を、第1〜第4出口ポート11〜14のうちの1つ、2つまたは4つに接続することができる。そのため、複数の流路切換弁を組み合わせることなく、簡易な構成で冷媒の流れを1つとし、または、2つもしくは4つに分岐可能とする小型の流路切換弁を実現することができる。
また、弁体30は、軸線L方向に移動可能に配置されるとともに、板ばね55によって弁座面5aに向けて押されている。このようにすることで、第1〜第4分岐溝41〜44や第1円弧溝45、第2円弧溝46の詰まりにより、入口ポート10の冷媒圧力が上昇した場合に、弁体30が軸線L方向に移動して、弁座面5aと摺動面31aとに隙間を設けることができる。そのため、弁座面5aと摺動面31aとの隙間に冷媒が流れて、溝の詰まりによる冷媒圧力の上昇を抑制できる。
図6に、本実施例の流路切換弁1の第1変形例に係る流路切換弁1Aを示す。図6は、図1の流路切換弁の第1変形例の構成を示す縦断面図である。この流路切換弁1Aは、ローター52に弁体30Aが直接的に取り付けられた構成を有している。流路切換弁1Aは、板ばね55に代えてコイルばね57を有している。コイルばね57は、駆動軸54を介して弁体30Aを弁座面5aに向けて押している。この流路切換弁1Aの弁体30Aの摺動面31aにも、上述した実施例と同一の第1〜第4分岐溝41〜44、第1円弧溝45および第2円弧溝46が設けられている。
図7に、本実施例の流路切換弁1の第2変形例に係る流路切換弁1Bを示す。図7は、図1の流路切換弁の第2変形例の構成を示す縦断面図である。この流路切換弁1Bは、不思議遊星歯車機構60を有している。不思議遊星歯車機構60は、太陽ギヤ61と、複数の遊星ギヤ62と、固定ギヤ63と、出力ギヤ64と、を有している。太陽ギヤ61は、駆動軸54の下端に取り付けられている。複数の遊星ギヤ62は、キャリア65に回転可能に支持され、太陽ギヤ61と噛み合うとともに、太陽ギヤ61の回転に伴って太陽ギヤ61のまわりを公転するように設けられている。固定ギヤ63は、複数の遊星ギヤ62と噛み合う内歯車であり、キャン51に固定されている。出力ギヤ64は、複数の遊星ギヤ62と噛み合う内歯車である。出力ギヤ64は、固定ギヤ63と歯数が異なる。出力ギヤ64は、弁体30Bが一体に設けられている。出力ギヤ64は、弁本体5に軸線L周りに回転可能に支持されている。流路切換弁1Bは、板ばね55に代えて円錐台形状の複数のコイルばね66を有している。複数のコイルばね66は、キャリア65と出力ギヤ64(弁体30B)との間に配置されている。複数のコイルばね66は、弁体30Bを弁座面5aに向けて押している。コイルばね66は、円錐台形状を有することで座屈を抑制できる。この流路切換弁1Bの弁体30Bの摺動面31aにも、上述した実施例と同一の第1〜第4分岐溝41〜44、第1円弧溝45および第2円弧溝46が設けられている。この流路切換弁1Bは、小型で比較的高いトルクを得られる不思議遊星歯車機構60を有し、不思議遊星歯車機構60の出力ギヤ64に弁体30Bを一体化しているので、より効果的に小型化できる。
これら流路切換弁1A、1Bにおいても、上述した本実施例の流路切換弁1と同様の作用効果を奏する。
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。本発明の実施例において、入口ポートおよび出口ポートとの用語を用いているが、これら用語は流体の流れる向きが互いに反対であることを示すために便宜上用いているものであって、本発明の流路切換弁は、出口ポートに流体を流入し、入口ポートから流体を流出する構成も含むものである。