JP2020176298A - 蒸着装置 - Google Patents

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Shinichiro Kobayashi
慎一郎 小林
弘 藤本
Hiroshi Fujimoto
弘 藤本
宮崎 浩
Hiroshi Miyazaki
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Abstract

【課題】 本発明は、誘導加熱方式で有機材料を製膜する上で、熱応答性に優れた誘導加熱方式を採用しつつ、製膜速度の制御性を改善した蒸着装置等を提供することを目的とする。【解決手段】 有機材料を基板に製膜する蒸着装置であって、少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、前記容器の周囲に配置されているコイルと、前記コイルに接続しているインバータ部と、前記インバータ部に接続している直流電源とを備え、前記容器は、前記有機材料が堆積する容器底部とは異なる場所で当該容器を支持する支持部材に接続されている、蒸着装置である。【選択図】 図17

Description

本発明は、蒸着装置に関し、特に、有機材料を基板に製膜する蒸着装置に関する。
本願発明者らは、有機材料を基板に製膜する蒸着装置であって、誘導加熱を行うものを提案してきた(特許文献1)。誘導加熱方式は、抵抗加熱方式に比べて熱応答性に優れている。そのため、昇温及び冷却を速やかに行い、精密な温度制御を行うことができる。
国際公開第2002/014575号
しかしながら、本願発明者らは、図19に示すように、約700秒経過後は、蒸着装置内の蒸着材料を入れる容器(るつぼ)の温度が比較的一定であるにも関わらず、単位時間当たりの製膜速度に大きなムラがあることを見出した。
図19は、従来の蒸着装置において誘導加熱方式で製膜した場合の、経過時間に対する温度(℃)、膜厚(Å)及び製膜速度(Å/sec)の変化の一例を示すグラフである。温度がほぼ一定となった700秒経過後にも、製膜速度が大きく変動していることが読み取れる。一見、膜厚が順調に増えているように見えても、製膜速度が大きく変動すれば膜厚を制御することが困難となる。また、膜内の微細構造も乱れやすくなると考えられる。
そこで、本発明は、有機材料を製膜する上で、熱応答性に優れた誘導加熱方式を採用しつつ、製膜速度の制御性を改善した蒸着装置等を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、有機材料を基板に製膜する蒸着装置であって、少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、前記容器の周囲に配置されているコイルと、前記コイルに接続しているインバータ部と、前記インバータ部に接続している直流電源とを備え、前記容器は、前記有機材料が堆積する容器底部とは異なる場所で当該容器を支持する支持部材に接続されている、蒸着装置である。
本発明の第2の観点は、第1の観点の蒸着装置であって、前記支持部材は、断熱性素材である。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の蒸着装置であって、前記容器を支える支柱をさらに備え、前記容器は、前記容器底部と、前記容器底部よりも上部に位置する容器上部とを有し、前記支柱は、前記支持部材を固定し、前記支持部材は、前記容器上部を支持する。
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点の蒸着装置であって、前記支持部材は、前記容器の外面の3点以上に接して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第2ガイドである。
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点の蒸着装置であって、前記支持部材は、前記容器の少なくとも一部に挿入して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第1ガイドであり、前記容器は、前記第1ガイドが挿入されるガイド孔を有する。
本発明の第6の観点は、有機材料を基板に製膜する蒸着装置を用いた蒸着方法であって、前記蒸着装置は、少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、前記容器の周囲に配置されているコイルと、前記コイルに接続しているインバータ部と、前記インバータ部に接続している直流電源とを備え、前記容器は、前記有機材料を支える底部以外の場所で当該容器を支持する支持部材に接続されており、前記蒸着装置が、誘電加熱方式により前記容器を加熱する加熱ステップを含む、蒸着方法である。
本発明の第7の観点は、第6の観点の蒸着方法であって、前記蒸着装置が、前記支持部材として、前記容器の少なくとも一部に挿入して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第1ガイドを備えると共に、前記容器が、前記第1ガイドが挿入されるガイド孔を有するものであり、又は、前記蒸着装置が、前記支持部材として、前記容器の外面の3点以上に接して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第2ガイドを備え、前記加熱ステップにおいて、前記直流電流が、前記インバータ部に大電流を流して前記容器を浮遊させる浮遊ステップを含む。
本発明の第8の観点は、有機材料を基板に製膜する蒸着装置であって、少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、前記容器の周囲に配置されているコイルと、前記コイルに接続しているパワー半導体と、前記パワー半導体に接続している直流電源とを備え、前記パワー半導体は、直流を交流に変換するインバータ部の一部を構成するトランジスタとして機能する、蒸着装置である。
本発明の第9の観点は、第8の観点の蒸着装置であって、前記コイルと前記パワー半導体との間の距離が、前記パワー半導体と前記直流電源との間の距離よりも短い、蒸着装置である。
本発明の第10の観点は、第8又は第9の観点の蒸着装置であって、前記容器を内包するように配置される真空チャンバーをさらに備え、前記コイルは前記真空チャンバーの外部に配置される、蒸着装置である。
本発明の第11の観点は、有機材料を基板に製膜する蒸着装置を用いた有機電子デバイスの生産方法であって、前記蒸着装置は、少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、前記容器の周囲に配置されているコイルと、前記コイルに接続しているパワー半導体と、前記パワー半導体に接続している直流電源を備え、前記パワー半導体は、直流を交流に変換するインバータ部の一部を構成するトランジスタとして機能するものであり、前記パワー半導体が、前記直流電源からの直流を交流に変換する変換ステップと、前記コイルに電流が流れることで前記容器が加熱される加熱ステップとを含む、有機電子デバイスの生産方法である。
本発明の第12の観点は、第8から第10のいずれかの観点の蒸着装置であって、前記交流の周波数を制御する周波数制御部をさらに備える。
本発明の第13の観点は、第12の観点の蒸着装置であって、前記周波数制御部は、小型発振器素子であり、前記コイルと前記小型発振器素子との間の距離が、前記小型発振器素子と前記直流電源との間の距離よりも短い。
本発明の第14の観点は、第13の観点の蒸着装置であって、前記小型発振器素子は、VCO又はDDSである。
本発明の第15の観点は、第8から第10及び第12から第14のうちいずれかの観点の蒸着装置であって、前記パワー半導体を複数備え、複数の前記パワー半導体は、前記コイルの両端の極のハイサイド側に1つずつ、及び、ローサイド側に1つずつが接続されている。
本発明の第16の観点は、第8から第10及び第12から第15のうちいずれかの観点の蒸着装置であって、前記パワー半導体を複数備え、複数の前記パワー半導体は、並列に配置されている。
本発明の第17の観点は、第8から第10及び第12から第16のうちいずれかの観点の蒸着装置であって、前記パワー半導体は、IGBT、GaNパワーFET、SiパワーMOSFET又はSiCパワーMOSFETである。
本発明の第18の観点は、第8から第10及び第12から第17のうちいずれかの観点の蒸着装置であって、前記コイルと直列に接続されたコンデンサを備え、前記コンデンサは、メタライズドフィルムコンデンサ又は大容量パワーフィルムコンデンサである。
本発明の第19の観点は、第8から第10及び第12から第18のうちいずれかの観点の蒸着装置であって、前記コイルと直列に接続されたコンデンサを複数備え、複数の前記コンデンサは、互いに並列に配列されている。
本発明の第20の観点は、第11の観点の有機電子デバイスの生産方法であって、前記蒸着装置は、前記パワー半導体が変換する交流の周波数を制御する周波数制御部をさらに備え、前記変換ステップの前に、前記周波数制御部が、前記周波数を制御する第1周波数制御ステップと、前記加熱ステップの後に、前記周波数制御部が、前記周波数を制御する第2周波数制御ステップとをさらに含む。
本発明の各観点によれば、有機材料と支持部材とが隔離されることになり、支持部材を介する放熱による製膜速度への影響を抑制することができる。そのため、誘導加熱方式による製膜速度の制御性が改善された蒸着装置等を提供することが可能となる。
本発明の第2又は第3の観点によれば、支持部材からの放熱をさらに抑制し、製膜速度の制御性をさらに改善することが可能となる。
本発明の第4、第5及び第7の観点によれば、るつぼを安定的に浮遊させることが可能となる。そのため、るつぼの断熱性を高め、誘導加熱方式による製膜速度の制御性がさらに改善された蒸着装置等を提供することが可能となる。
本発明の第8の観点によれば、パワー半導体と直流電源を用いることにより、大型電源と蒸着チャンバーとの距離が離れていても寄生容量の影響を低減することが可能となる。加えて、交流電流が流れる電気回路を短くし、水晶振動子等のセンサ系に悪影響を及ぼすノイズがのるリスクを低減することが可能となる。また、直流電源よりもはるかに小さいパワー半導体を用いることにより、蒸着チャンバー周りの狭いスペースに容易に設置することが可能になる。
従来、数千度に加熱する無機材料の蒸着装置にパワー半導体が用いられることはあっても、有機材料の蒸着にパワー半導体が用いられることは少なくとも一般的ではなかった。
本発明は、誘導加熱による蒸着装置を提案してきた本発明者らが、誘導加熱方式に本来使用できない直流電源を用いることによりノイズを低減して実用的な蒸着装置を供給できるとの新規の技術的思想に基づき、パワー半導体の有用性に想到したものである。
また、本発明の第9の観点によれば、容器を温めるためのコイルの近くにパワー半導体およびそれを制御する回路を設置して直流を交流に変換することにより、複数の容器に対応する複数の電源ケーブル間に発生する寄生容量が共振周波数に与える影響を低減することが容易となる。加えて、交流電流が流れる電気回路が確実に短くなるため、水晶振動子等のセンサ系に悪影響を及ぼすノイズの低減もさらに容易となる。
本発明の第10の観点によれば、コイルに有機材料等が付着することがなくなるため、清掃が容易となり、蒸着装置のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
本発明の第12の観点によれば、コイルに流れる交流の周波数を制御することにより過熱制御を行うことが可能となる。これにより、るつぼの加熱温度の精密制御及び急速制御といった非線形制御を行うことが可能となる。
本発明の第13の観点によれば、ケーブル量を低減できる。そのため、寄生容量及びノイズの発生及び回路への悪影響を抑制することが容易となる。
本発明の第14の観点によれば、電圧でスイッチング周波数を調整できるため、ファンクションジェネレータを用いる場合に比べて、ケーブルの引き回しや装置を減らすことが可能となる。
本発明の第15の観点によれば、コイルに対して異なる向きに電圧を印加してコイルに常に電流を流すことが可能となる。これにより電流を無駄なく使えるようになり、早く加熱することが可能となる。結果として、各パワー半導体における発熱を抑制し、素子への負担を軽減することが容易となる。
本発明の第16の観点によれば、各パワー半導体に流れる電流が分散される。そのため、パワー半導体での発熱が抑制され、素子への負担軽減が容易となる。
本発明の第17又は第18の観点によれば、スイッチング損失を低減し、発熱及び素子負担を抑制して事故を防止することが容易となる。特に、メタライズドフィルムコンデンサは、コイルの断面積や巻き数等の構造を変更しても、共振周波数が300kHz等の高い周波数となるように柔軟にコンデンサの値を変更できるため、発熱及び素子負担を抑制することが容易である。
本発明の第19の観点によれば、コンデンサでの発熱が抑制され、素子への負担軽減が容易となる。なお、通常はコンデンサもモジュール化されており、特別な意図がなければコンデンサをあえて並列に配列するようなことは考えにくい。誘導加熱蒸着の分野における、いわゆる当業者からすれば非常識な構成といえるが、本願発明者らは、発熱を抑制するには抵抗成分を小さくすることが必要であり、有機材料を蒸着するためであれば上記配列でも蒸着可能であるとの着想に基づいて本観点に想到した。
本発明の第20の観点によれば、共振周波数付近で温度を安定制御できることに加えて、温度を急速制御することも可能となる。このため、例えば、フィードバックにおいて設定値(温度や製膜レート)より実測値が大きく変わった時に急速に設定値に戻すことが可能となる。また、有機材料によっては溶解等により製膜レートが急に変化する場合がある。そういった場合にも急速制御により対応することが可能となる。
実施例1の蒸着装置1の一部の端面図である。 蒸着装置1において、直流電源及びMOSFETを用いた誘導加熱方式の電子回路を例示する図である。 シリコンパワーMOSFETの一例の写真である。 蒸留装置1の縮小モデルにおける直流電源の印加電圧と電流の相関を示す図である。 蒸着装置1の縮小モデルにおける温度の経時変化を示すグラフである。 実施例2の蒸着装置41の一部の端面図である。 るつぼの温度の経時変化と蒸着装置の写真を示す図である。 有機材料を入れたるつぼの温度及び蒸着速度の変化を示す図である。 本発明の蒸着装置で作製した有機EL素子のデバイス特性を示す図である。 直流電源の電圧を変化させたときの(a)るつぼ温度の時間依存性、(b)膜厚計の信号(周波数)の応答の様子を示す図である。 インバータのスイッチング周波数を変化させたときの(a)るつぼ温度の時間依存性、(b)膜厚計の信号(周波数)の応答の様子を示す図である。 コイルに流す交流の周波数と投入エネルギー量との関係を示す図である。 周波数領域と投入エネルギー量との関係を示す図である。 パワー半導体を並列に配置した一例を示す回路図である。 パワー半導体を対称に配列した一例を示す回路図である。 従来の蒸着装置101における電源と蒸着チャンバーの配置の一例を示す図である。 本実施例におけるるつぼの固定方法の一例を示す図であり、(a)るつぼを支えている様子と、(b)るつぼ付近の拡大図である。 本実施例の蒸着装置を用いたときの(a)るつぼ底部の温度の経時変化、及び、(b)製膜速度の経時変化の一例を示す図である。 誘導加熱方式の蒸着装置において、従来のるつぼ周辺の構成を用いて製膜した場合の、経過時間に対する温度、膜厚及び製膜速度の変化の一例を示すグラフである。 誘導加熱方式の蒸着装置において、(a)従来のるつぼ周辺の構成の一例と(b)るつぼを加熱した場合のるつぼ上部及びるつぼ底部の温度の経時変化を示す図である。 るつぼを浮遊させる場合のガイドの構造例を示す図である。
以下、図面を参照して本願発明の実施の形態について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
一般には、有機材料の蒸着装置に抵抗加熱方式が採用されている。図16は、抵抗加熱方式の蒸着装置の模式図である。図16において、抵抗加熱方式の蒸着装置101は、少なくとも真空チャンバー111と、電源115と、ケーブル116とを備える。図16においては、真空チャンバー111の下のスペース120に各種ケーブルや部材が密集しており、大型の部材をさらに収納するスペースは無いことが見てとれる。
しかしながら、誘導加熱に用いられる電源は一般的なもので、縦20cm〜40cm、横45cm、奥行き60cm程度の大きさがある。しかも、重量も大きいものである。そのため、誘導加熱に用いられる大型電源を真空チャンバーの直下などに収納することが困難である。そこで、誘導加熱に用いられる大型電源と蒸着チャンバーは離れて配置される。結果として、有機材料を入れる容器である複数のるつぼにつながる複数の電源ケーブル間に発生する寄生容量が大きくなる。そのため、共振周波数がずれて、容器3に誘導されるパワーが低下する。加えてケーブルが長くなることで外部からのノイズがのりやすくなり加熱の制御性が低下する可能性がある。また、ノイズが原因でセンサ系に悪影響を及ぼす可能性がある。
したがって、精密な加熱制御が困難となる。有機材料の蒸着製膜では、数ナノメートルレベルでの膜厚制御や、1%以下の重量比制御を求められる複数材料の混合処理が必要なため、誘導加熱方式で有機材料を製膜する実用的な蒸着装置を提供することが困難であった。また、大電流に対応できる回路構成とすることが求められる。
まず、図1を参照して、本願発明の基本的な構成例について述べる。図1は、実施例1の蒸着装置1の一部の端面図である。
図1に実施例1の蒸着装置1(本願請求項の「蒸着装置」の一例)の一部の端面図を示す。蒸着装置1は、容器3(本願請求項の「容器」の一例)と、容器保持部5と、コイル7(本願請求項の「コイル」の一例)と、パワー半導体9と、真空チャンバー11と、直流電源15(本願請求項の「直流電源」の一例)と、ケーブル16とを備える。容器3は、有機材料17(本願請求項の「有機材料」の一例)を収容する。容器保持部5は、容器3を保持する。コイル7は、容器3の周囲に巻かれて設置されている。パワー半導体9は、直流電源15とケーブル16で電気的に接続されている。また、パワー半導体9は、コイル7とも接続されている。さらに、容器3と、容器保持部5と、コイル7とは、真空チャンバー11の内部にある。また、パワー半導体9と、直流電源15と、ケーブル16とは、真空チャンバー11の外部にある。
容器3は、少なくとも一部が導体で構成されている。具体的には、金属製の容器が絶縁性材料で被膜されている。そのため、容器3の周囲に配置されたコイル7に交流電流が流れると、容器3の導体部分が誘導加熱により加熱される。また、容器3とコイル7が電気的に接触することを防止できる。コイルを外部冷却やパイプで水冷できればコイルと容器3の間の距離が非常に小さいため冷却効率も向上すると期待される。その結果、誘導加熱方式を用いると、抵抗加熱方式に比べて、熱応答性が良く、容易に温度を調整できる。
真空チャンバー11の底面19は、容器3の出し入れのために取り外せるようになっている。真空チャンバー11の底面19と側面21の間は、Oリング23により密閉されている。このため、図示されていない真空ポンプにより真空チャンバー11の内部を高い真空度で減圧することが可能である。蒸着装置1は、減圧下において容器3を加熱することにより、有機材料17を気化させて図示されていない真空チャンバーの内部に設置された基板に製膜する。
図2に、蒸着装置1において、直流電源及びMOSFETを用いた誘導加熱方式の電子回路を例示する図を示す。
図2を参照して、直流電源15には、シリコンパワーMOSFET31及びシリコンパワーMOSFET33が順に直列に接続されている。シリコンパワーMOSFET33は、シリコンパワーMOSFET31からみて反対側が接地されている。なお、シリコンパワーMOSFET31もシリコンパワーMOSFET33も直流電源15からみて逆方向であるように設置されており、チャネルがない状態で直流電源15からの電流は流れない。
容器3の周囲を巻くように設置されたコイル7は、その一端32がシリコンパワーMOSFET31及びシリコンパワーMOSFET33の間の接点34に電気的に接続されている。また、コイル7の他の一端35は、キャパシタ36(本願請求項における「コンデンサ」の一例)及び抵抗37が順に直列に接続されている。抵抗37は、キャパシタ36からみて反対側が接地されている。コイル7、キャパシタ36、抵抗37は、RLC回路部39をなす。なお、抵抗37には、MOSFETの内部抵抗や、配線及びコイル7の抵抗値が含まれる。
FET駆動回路部41は、シリコンパワーMOSFET31及びシリコンパワーMOSFET33のゲート電極とはそれぞれ電気的に接続されている。FET駆動回路部41は、振動子43からの信号を受けて入力信号45又は入力信号47をシリコンパワーMOSFET31又はシリコンパワーMOSFET33のゲート電極にそれぞれ入力する。
FET駆動回路部41からシリコンパワーMOSFET31に入力信号45が入力されると、シリコンパワーMOSFET31がオン状態となり、直流電源15、シリコンパワーMOSFET31、接点34、コイル7、キャパシタ36、抵抗37の方向に電流が流れる。FET駆動回路部41からシリコンパワーMOSFET33に入力信号47が入力されると、シリコンパワーMOSFET33がオン状態となり、抵抗37、キャパシタ36、コイル7、接点34、シリコンパワーMOSFET33の方向に電流が流れる。入力信号45及び入力信号47を交互に入力することにより、直流電源15からの直流電流を交流に変換してコイル7に供給することができる。すなわち、シリコンパワーMOSFET33が直流電流を交流に変換するインバータ部(本願請求項の「インバータ部」の一例)の一部を構成するトランジスタとして機能する。
また、図3にシリコンパワーMOSFETの一例の写真を示す。図3に示すようにシリコンパワーMOSFETは一般にペンと同程度に小さい。そのため、電源が収まらない真空チャンバー下のスペースにも設置することができる。なお、発振器及び直流電源は、同軸ケーブル又はペア線で上記駆動回路と接続させる。ここで、発振器は、小型化してシリコンパワーMOSFETや駆動回路の隣に設置することも可能である。
このように、本実施例の蒸着装置1は、パワー半導体9と直流電源15を用いることにより、大型直流電源と蒸着チャンバーとの距離が離れていても寄生容量の影響を低減することが可能となる。加えて、交流電流が流れる電気回路を短くし、水晶振動子等のセンサ系に悪影響を及ぼすノイズの低減もさらに容易となる。
また、パワー半導体9は、できるだけコイル7に近い場所に設置されており、直流電源15よりもコイル7に近い場所に設置されている。パワー半導体9は容器3を加熱するためのコイルの近くに設置して直流を交流に変換するインバータ部の一部を構成するトランジスタとして機能することにより、複数のケーブル間に発生する寄生容量が共振周波数に与える影響を低減することが容易となる。加えて、交流電流が流れる回路が確実に短くなるため、水晶振動子等のセンサ系に悪影響を及ぼすノイズが低減される。
図4は、本実施例の蒸着装置1の縮小モデルにおける直流電源の印加電圧と電流の相関を示す図である。横軸は、直流電源15の設定電圧の値を示す。縦軸は、直流電源から供給される電流の値を示す。この縮小モデルは、コイルの材質は銅、巻き数は6、長さは約50mm、コイル半径は約10mmという設定で作製されたものである。
図4に示す通り、本実施例で採用したRLC直列共振回路における共振周波数61.7kHz(四角のマーカー)において、コイルに流れる電流が印加電圧にきれいに比例して増加している。また、共振周波数61.7kHzを外れるとインピーダンスが大きくなり電流が低下する。図4においては、共振周波数よりも大きい70kHz(丸のマーカー)や、共振周波数よりも小さい50kHz(三角のマーカー)において、電流が低下することが示されている。そのため、もし寄生容量の影響で共振周波数が頻繁に変動すると、印加電圧の周波数が共振周波数から容易に外れてしまう。この場合、コイルに流れる電流も変動し、誘導加熱の精密な加熱制御が困難となる。
蒸着装置1においては、寄生容量が低減されているため、RLC直列共振回路の共振周波数の変動が起きにくく、再現性も良い。そのため、従来よりも誘導加熱方式による精密な加熱制御を実施することが可能になる。
比較的低温で気化する有機材料を製膜する蒸着装置においては、無機材料の蒸着に比べて、精密な加熱制御が要求される。本発明の蒸着装置によれば、ノイズが低減されるため、従来よりも精密な加熱制御が可能な蒸着装置を提供することが可能になる。
図5は、蒸着装置1の縮小モデルにおける温度の経時変化を示すグラフである。横軸は経過時間(秒)、縦軸は温度(℃)を示す。また、丸及び四角でプロットされた点は、それぞれコイル及び容器内の温度を示す。
図5を参照して、コイルに電流を流して(Onにして)Offにするまでの約30秒の間に、容器内の温度が速やかに約25℃から約100℃へと上昇したことが分かる。また、電流を切った後は、容器内の温度が100秒程度で約100℃から約45℃へと速やかに冷えていることも見てとれる。
図6に実施例2の蒸着装置61の一部の端面図を示す。蒸着装置61は、容器63と、コイル65と、パワー半導体67と、真空チャンバー69と、直流電源71と、ケーブル73とを備える。蒸着装置61と蒸着装置1との主な相違点は、コイル65が真空チャンバー69の外部に配置される点である。
具体的には、真空チャンバー69は、チャンバー底部75と、チャンバー上部77とを有する。チャンバー底部75は、Oリング79を介してチャンバー上部77と接続されている。有機材料81を収容する容器63が、チャンバー底部75の内部に配置される。また、コイル65が、容器63をチャンバー底部75の外から巻くように配置される。
図6に示されるように、コイル65と容器63とを真空チャンバー69で隔てる構成とすることにより、コイル65に有機材料81が付着することがなくなる。従来、チャンバー内に付着した蒸着材料を拭き取るためには、人が有機溶剤を用いて手作業で拭き取っていた。特に、コイルのような複雑な構造に付着した蒸着材料を拭き取ることに時間も労力も要していた。実施例2の構成とすることにより、清掃が容易となり、蒸着装置61のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
また、従来の抵抗加熱方式の蒸着装置において、抵抗加熱源の代わりに容器63、コイル65、パワー半導体67をユニットとして用意することにより、直流電源を流用しつつ、制御性の高い誘導加熱方式の蒸着装置として利用することも可能となる。
なお、パワー半導体は、シリコンパワーMOSFETでなくともよく、例えば、SiC−MOSFET、GaNパワーFETやIGBTを用いてもよい。
図7は、(a)真空下におけるるつぼの温度の経時変化と、(b)使用した蒸着装置の写真を示す図である。図7(a)の横軸は経過時間(秒)であり、縦軸はるつぼの温度(℃)である。図7(a)に示す通り、本発明の蒸着装置においては、るつぼの温度を10分強で450℃まで上昇させることができた。また、共振点を変化させても加熱可能であることを確認できた。なお、上記は印加電圧を5Vとした場合であり、より高い電圧で温度上昇率を増加させることは可能である。
図8は、(a)α−NPDをるつぼに入れた場合のるつぼの温度の経時変化、(b)α−NPDの蒸着速度の経時変化、(c)Alqをるつぼに入れた場合のるつぼの温度の経時変化、及び、(d)Alqの蒸着速度の経時変化を示す図である。一般に、α−NPDはホール輸送材料、Alqは発光材料として用いられる有機材料である。α−NPDの蒸着では共振周波数を241kHzとし、Alqの蒸着では共振周波数を316kHzとして蒸着を行った。図8に示す通り、α−NPDとAlqのどちらの場合も、一定時間経過後には、一定の蒸着速度で成膜可能であることを確認できた。
図9は、本発明の蒸着装置を用いて作製した有機EL素子のデバイス特性を示す図である。素子構造は、ITO(100nm)/α−NPD(60nm)/Alq(70nm)/LiF(0.8nm)/Al(100nm)とした。本発明の誘導加熱方式による有機EL素子のデバイス特性を円形のマーカーで示し、比較例として従来の抵抗加熱方式によるものを菱形のマーカーで示している。
図9(a)は、横軸が電圧(V)、縦軸が電流密度(mA/cm)である。図9(b)は、図9(a)の縦軸を対数で示した図である。図9(c)は、横軸が電流密度(mA/cm)、縦軸が外部量子効率(%)である。図9(d)は、横軸が電流密度(mA/cm)、縦軸が電流効率(cd/A)である。図9(e)は、横軸が波長(nm)、縦軸が光強度であり、有機EL素子の発光スペクトルを示す図である。図9(f)は、横軸が輝度(cd/m)、縦軸が電流効率(cd/A)である。
図9に示す通り、本発明の蒸着装置においても、従来の抵抗加熱方式と同等のデバイス特性を有する有機EL素子を作製可能であることを確認できた。
図10及び図11は、本発明の蒸着装置がクリスタル振動子(膜厚計)に与える影響を示す図である。図10は、直流電源の電圧を変化させたときの(a)るつぼ温度の時間依存性、(b)膜厚計の信号(周波数)の応答の様子を示す図である。図11は、インバータのスイッチング周波数を変化させたときの(a)るつぼ温度の時間依存性、(b) 膜厚計の信号(周波数)の応答の様子を示す図である。
図10(a)によれば、電圧の変化に対して温度上昇速度が良く対応していることが分かる。温度上昇速度は、電圧値及び電流値にほぼリニアに依存する。また、図10(b)によれば、直流電源の電圧を変化させても膜厚計の周波数変動が最大でも4Hz程度であった。有機物を蒸着した場合、通常、膜厚計の周波数は500-1,000Hz程度変動する。したがって、図10(b)より、直流電源の電圧の変化は、膜厚測定に大きな誤差を与えないことが分かった。電圧が大きいと振動子の変化量が大きいが、輻射熱の影響で変動する。
図11(a)によれば、インバータのスイッチング周波数を変化させることにより温度上昇速度も最大到達温度も異なることが分かる。図11(b)によれば、スイッチング周波数を変化させても膜厚計の周波数変動が最大でも5Hz程度であった。そのため、インバータのスイッチング周波数の変化も、膜厚測定に大きな誤差を与えないことが分かった。
以上より、本発明の蒸着装置によれば、膜厚計にノイズを与えにくく、膜厚計が正常に膜厚を測定可能であることが確認できた。なお、上記実験では空冷用の水を流しておらず、蒸着による輻射熱で図に示すカーブが得られた。水冷すれば膜厚計に及ぼす影響をさらに抑えられるため、より正確に測定可能である。
続いて、図12及び図13を参照して、本実施例では周波数制御による加熱制御について述べる。図12は、コイルに流す交流の周波数と投入エネルギー量との関係を示す図である。図13は、周波数領域と加熱温度との関係を示す図である。
図12に模式的に示すように、ファンクションジェネレータ等の周波数制御部を用いて周波数制御することにより、最大限到達できる温度が変化する。これは、周波数制御によって加熱制御が可能となることを意味する。
さらに、従来の電圧や電流制御では線形制御しかできなかったが、周波数制御により非線形制御が可能となる。具体的には、図13に模式的に示すように、共振周波数付近の周波数領域では、周波数変化に対して最大到達温度が少ししか変化しない。このため、温度を精密に制御することが容易である。他方、共振周波数から離れた周波数領域では、周波数変化に対して最大到達温度が大きく変化する。このため、急速制御が可能となる。
例えば、製膜時には共振周波数付近で蒸着を行うことにより、多少の回路の変化に伴う周波数の変動に対しても加熱温度をほぼ一定に保つことができる。このため、共振周波数付近で温度を精密に制御でき、安定に製膜することが容易となる。また、例えば制御時に設定したい値(温度や製膜レート)よりも値が大きくなってしまった場合に周波数を大きく変化させることで元に戻すことが容易となる。同様の操作は、直流電源の制御でもできるが、外部信号に対応して出力する電源は高価であり、上記の機能を持っていない可能性もある。さらに、蒸着源以外に特殊な装置を必要としない設計とすれば、従来の装置に組み込むことも容易となる。したがって、小型の周波数制御部のみでパワー制御できる点に大きな意義がある。
さらに、以下では、蒸着装置が備える周波数制御部の構成について詳細に述べる。コイルに流す交流の周波数を制御するには、上記のように、周波数安定性のよいファンクションジェネレータを用いてもよい。しかし、本発明の蒸着装置を用いた有機電子デバイスの生産方法にはオーバースペックな面もある。その上、ファンクションジェネレータは比較的大型の装置であり、本発明の課題とした配線やケーブルからのノイズの発生が問題となりうる。
そこで、本実施例では小型化のために小型発振器素子を用いる。小型発振器素子としてVCO(Voltage Control Oscillator)が考えられる。電圧でスイッチング周波数を調整できるため、ファンクションジェネレータを用いる場合に比べて、ケーブルの引き回しや装置を減らすことが可能となる。
さらに、別の小型発振器素子として、DDS(Direct Digital Synthesizer)を用いてもよい。この場合、デジタル制御により、安定に制御することが容易となる。
VCOやDDSといった小型発振器素子を用いることにより、交流発生だけでなく周波数制御のための制御部もチャンバー下部に収納できるほどに小型化が可能となる。特に、パワー半導体と同様に、コイルと小型発振器素子との間の距離が、少なくとも小型発振器素子と直流電源との間の距離よりも短い場所に小型発振器素子を設置し、好ましくはチャンバー下部に設置することにより、ケーブル量を低減できる。そのため、寄生容量及びノイズの発生及び回路への悪影響を抑制することが容易となる。
続いて、図14及び図15を参照して、本発明の蒸着装置に用いられる回路における素子への負担を軽減する構成について述べる。図14は、パワー半導体を並列に配置した一例を示す回路図である。図15は、パワー半導体を対称に配列した一例を示す回路図である。
図14に示すように、インバータとして機能するパワー半導体を並列に配列することにより、各パワー半導体に流れる電流が分散される。そのため、パワー半導体での発熱が抑制され、素子への負担軽減が容易となる。
同様の効果を奏することが、コンデンサを並列に配列することによっても可能である。また、現実のコンデンサには抵抗成分が存在し、共振周波数で交流を流した場合であってもコンデンサが加熱する原因となる。コンデンサを並列に配列することにより、コンデンサの抵抗成分を低減し、コンデンサの発熱を抑制することも可能となる。
さらに、現実のコンデンサには電流を流せる上限値が設定されている。例えば、0.01μFのコンデンサの上限値が2Aで、容量が10倍大きい0.1μFのコンデンサの上限値が4Aといったことがある。この場合、0.01μFのコンデンサを10個並列に配列することにより、同じ0.1μFでも電流を20Aと5倍流せる回路を設計することが可能となる。
さらに、図15(c)に示すように、コイルの片側の極にハイサイド側に1つ及びローサイド側に1つの計2つのパワー半導体(トランジスタ)を配置して電圧を印加する場合、理想的な回路としては、ハイサイド側のパワー半導体がオフ状態の間は電流が流れない時間帯ができてしまう。そこで、図15(a)及び図15(b)に示すように、パワー半導体をコイルの両端の極に2つずつ、すなわちハイサイド側に1つずつ及びローサイド側に1つずつの計4つを対称に配置する構成とする。この場合、コイルに対して異なる向きに電圧を印加してコイルに常に電流を流すことが可能となる。これにより電流を無駄なく使えるようになり、早く加熱することが可能となる。結果として、各パワー半導体における発熱を抑制し、素子への負担を軽減することが容易となる。
さらに、大電流を流したい場合は、パワー半導体やコンデンサといった素子への負担が大きくなる。パワー半導体が過熱して故障すると、コイルに電流が供給されなくなる。もっと悪い場合には、パワー半導体が熱暴走し、FETドライバに大電流が流れ込むことにもなりかねない。この場合、FETドライバ内のコンデンサが破裂し、感電するおそれがある。蒸着装置を大型化する場合や、一般的に蒸着装置よりも径が大きな金属製の筒状容器を用いる昇華生成装置に本発明を応用する場合に特に問題となる。
そこで、パワー半導体にIGBTやGaNパワーFETやSiパワーMOSFETやSiCパワーMOSFETといったOn抵抗が低い素子を用いることや、コンデンサにメタライズドフィルムコンデンサ又は大容量パワーフィルムコンデンサを用いることが考えられる。これにより、スイッチング損失を低減し、発熱及び素子負担を抑制して事故を防止することが容易となる。
続いて、本発明の蒸着装置を用いて蒸着速度を安定させる構成について述べる。本発明者らは、図19に示すように、一見、るつぼの温度が一定になったようでも、製膜速度にムラが生じるのは、るつぼに大きな温度勾配が存在するためではないかと考えた。
図20は、誘導加熱方式の蒸着装置において、(a)従来のるつぼ周辺の構成の一例と(b)るつぼを加熱した場合のるつぼ上部及びるつぼ底部の温度の経時変化を示す図である。
図20(b)に示すように、るつぼ上部131とるつぼ底部133とでは、加熱開始直後から加熱修了に至るまで、数十度もの温度勾配が存在することが分かる。これは、るつぼ底部に接触している銅製の固定冶具135から熱が逃げているためと考えられる。安定して高温としたいるつぼの中でも蒸着材料が堆積するるつぼ底部133の温度が低温となることや、加熱中に放熱するものと接して温度変化が起こりやすいことは望ましくない。
そこで、本実施例では、るつぼ(本願請求項の「容器」の一例)の固定方法を変更した。図17は、本実施例におけるるつぼの固定方法の一例を示す図であり、(a)るつぼを支えている様子と、(b)るつぼ付近の拡大図である。蒸着材料が堆積するるつぼ底部93を固定冶具で固定するのではなく、るつぼ上部91で支持部材95によりるつぼを固定することとした。
具体的には、るつぼは、有機材料が堆積するるつぼ底部93(本願請求項における「容器底部」の一例)と、有機材料を入れる入り口付近であってるつぼ底部93よりも上部に位置するるつぼ上部91とを有する。また、本実施例の蒸着装置は、るつぼを支える2本の支柱97及び97と、支柱に固定されてるつぼ上部を支持する支持部材95(本願請求項の「支持部材」の一例)とを備える。支持部材95は、断熱性素材でできている。このように、るつぼ底部に導電性の冶具が接続されていない。そのため、るつぼ底部から熱がリークすることがない。
図18を参照して、本実施例の構成を使用してるつぼを加熱した場合について説明する。図18は、本実施例の蒸着装置を用いたときの(a)るつぼ底部の温度の経時変化、及び、(b)製膜速度の経時変化の一例を示す図である。
図18に示すように、約600秒経過したタイミングで温度(℃)は徐々に上昇しているものの、製膜を行った約600秒後から約900秒後の間、製膜速度(Å/sec)は2.2〜2.3Å/secで安定している。
るつぼの温度勾配と製膜速度の関係については、以下のように考えられる。るつぼ内で温度差が大きい場合、ある場所で蒸発した有機材料が外に飛び出す前に温度が低い場所にぶつかると付着してしまう。そのため、製膜速度が低下したり不安定になったりする。そこで、るつぼの温度勾配をなくすか、少なくとも底部よりも上部の方が温度がやや高いことが好ましい。
したがって、本実施例の構成を採用することにより、誘導加熱方式で従来以上に膜厚を精密に制御することが可能となる。
なお、蒸着装置や昇華生成装置で使用されるるつぼ等の容器3の素材に磁性材料を用いたり、容器3自体に磁性材料を混入させたり、容器3の中に磁性材料を混入させてもよい。容器3に磁性体を用いた場合、誘導加熱で加熱すると磁性材料が磁化し、磁場が有効的に容器3に入りやすくなり、表面に流れる電流が有効的に増大し、加熱効率が増大すると考えられるためである。
また、実施例5において、るつぼ底部には何も接続されていないのが望ましいが、断熱性の素材でるつぼ底部を支持する構成としてもよい。
さらに、支持部材は、るつぼを吊り下げるものであってもよい。この場合、るつぼに直接触れる部材が少なく、接触箇所も極力小さくできるため、るつぼから周辺の部材へ熱が逃げてるつぼに温度勾配が生じることを抑制することがさらに容易となる。
さらに、るつぼの底部に熱電対(φ1mmくらい)を挿して支える構造とし、接触面積を小さくし、上部は断熱材の筒で位置決めするのみとしてもよい。底部の方は熱電対からわずかに熱が逃げるため、好ましい温度勾配を実現することが容易となる。
さらに、底部を支持する支持部材の素材として断熱材を使い、さらに底部の支持部材が複数の尖端を有しており、それらの先端でるつぼの底部を支持する構成であってもよい。このような構成であれば、るつぼの支持部材とるつぼとの接触面積を小さくすることとるつぼを安定に支持することを両立し、るつぼから支持部材への熱伝導をさらに悪くすることが容易となる。るつぼ上部の位置決めの部材を用いる場合は、位置決め部材の素材を断熱材とし、るつぼとの接触する部位の形状を複数の尖端とすることが好ましい。
さらに、るつぼ自体は早く冷やしたいが、均一に温度が下がることが望ましい。るつぼが断熱性の素材にのみ接触している場合は、ほぼ輻射だけで冷えていくことになるため、放射した熱エネルギーがるつぼに戻ってこないことが望ましい。そのため、るつぼの周りの支持部材は少ない方が好ましく、蒸発源が入っている筒やコイルは、冷やされていて輻射率もなるべく1に近い(黒体)であることが好ましい。
さらに、導電性のるつぼを、非導電性の筒又は容器の内部に入れ、筒又は容器の外から導電性素材のコイルを巻く構成であってもよい。例えば、導電性のるつぼをアルミナ製の筒又は容器の内部に入れ、その筒又は容器の外から銅製のコイルを巻く構成であってもよい。コイルを上記の筒又は容器に接触させて巻くことにより、るつぼ全体を輻射だけでなく固体を通じた熱伝導によっても冷却可能となる。
さらに、るつぼを磁性体(強磁性体)にし、壁面を薄く加工する等の軽量化を施して、コイルに大電流を流すことによる磁力でるつぼを浮遊させることで断熱してもよい(本願請求項における「浮遊ステップ」の一例)。この場合、るつぼがコイル内で安定して浮遊及び着地できるように、蒸着装置がガイドを備えることが好ましい。
図21は、るつぼを浮遊させる場合のガイドの構造例を示す図である。図21において、(a)るつぼ内部にガイドがある構造例、(b)るつぼ外部にガイドがある構造例、(c)るつぼ外部にガイドがある構造の他の例、(d)図21(c)の平面図を示す。ただし、図21(a)〜(c)は、内部構造の理解を容易にするために一部切り欠いた図とした。
図21(a)を参照して、るつぼ151は、内部にガイド孔153(本願請求項における「ガイド孔」の一例)を有する。るつぼ151の下部にある支持板155から上に延びる第1ガイド157(本願請求項における「第1ガイド」の一例)は、ガイド孔153の内部に挿入されており、るつぼ151の水平方向のぶれを阻害する。なお、第1ガイド157は、るつぼ151の内部の途中まで挿入されている構造を示したが、るつぼ151を貫通する構成としてもよい。
図21(b)を参照して、蒸着装置は、るつぼ159の外部にガイド壁161(本願請求項における「第2ガイド」の一例)を備える。ガイド壁161は、筒状の形状をしており、内部をるつぼ159が摺動可能である。また、図21(c)を参照して、蒸着装置は、ガイド壁161の代わりに、るつぼ163の下部にある支持板165から上に延びる複数の第2ガイド167(本願請求項における「第2ガイド」の他の例)を備えてもよい。図21(b)及び(c)において、ガイドがるつぼ外面の3点以上に接して水平方向のぶれを阻害し、安定に浮遊及び着地することを容易としている。
1 蒸着装置、3 容器、5 容器保持部、7 コイル、9 パワー半導体、11 真空チャンバー、15 直流電源、16 ケーブル、17 有機材料、19 真空チャンバーの底面、21 真空チャンバーの側面、23 Oリング、31 シリコンパワーMOSFET、33 シリコンパワーMOSFET、34 接点、36 キャパシタ、37 抵抗、39 RLC回路部、41 FET駆動回路、43 振動子、45 入力信号、47 入力信号、61 蒸着装置、63 容器、65 コイル、67 パワー半導体、69 真空チャンバー、71 直流電源、73 ケーブル、75 チャンバー底部、77 チャンバー上部、79 Oリング、81 有機材料、91 るつぼ上部、93 るつぼ底部、95 支持部材、97 支柱、101 蒸着装置、111 真空チャンバー、115 電源、116 ケーブル、120 スペース、131 るつぼ上部、133 るつぼ底部、135 固定冶具、151 るつぼ、153 ガイド孔、155 支持板、157 第1ガイド、159 るつぼ、161 ガイド壁、163 るつぼ、165 支持板、167 第2ガイド

Claims (7)

  1. 有機材料を基板に製膜する蒸着装置であって、
    少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、
    前記容器の周囲に配置されているコイルと、
    前記コイルに接続しているインバータ部と、
    前記インバータ部に接続している直流電源とを備え、
    前記容器は、前記有機材料が堆積する容器底部とは異なる場所で当該容器を支持する支持部材に接続されている、蒸着装置。
  2. 前記支持部材は、断熱性素材である、請求項1記載の蒸着装置。
  3. 前記容器を支える支柱をさらに備え、
    前記容器は、
    前記容器底部と、
    前記容器底部よりも上部に位置する容器上部とを有し、
    前記支柱は、前記支持部材を固定し、
    前記支持部材は、前記容器上部を支持する、請求項1又は2記載の蒸着装置。
  4. 前記支持部材は、前記容器の外面の3点以上に接して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第2ガイドである、請求項1又は2記載の蒸着装置。
  5. 前記支持部材は、前記容器の少なくとも一部に挿入して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第1ガイドであり、
    前記容器は、前記第1ガイドが挿入されるガイド孔を有する、請求項1又は2記載の蒸着装置。
  6. 有機材料を基板に製膜する蒸着装置を用いた蒸着方法であって、
    前記蒸着装置は、
    少なくとも一部が導体で構成されている前記有機材料を収納する容器と、
    前記容器の周囲に配置されているコイルと、
    前記コイルに接続しているインバータ部と、
    前記インバータ部に接続している直流電源とを備え、
    前記容器は、前記有機材料を支える底部以外の場所で当該容器を支持する支持部材に接続されており、
    前記蒸着装置が、誘電加熱方式により前記容器を加熱する加熱ステップを含む、蒸着方法。
  7. 前記蒸着装置が、前記支持部材として、前記容器の少なくとも一部に挿入して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第1ガイドを備えると共に、前記容器が、前記第1ガイドが挿入されるガイド孔を有するものであり、
    又は、
    前記蒸着装置が、前記支持部材として、前記容器の外面の3点以上に接して前記容器の水平方向のぶれを阻害する第2ガイドを備え、
    前記加熱ステップにおいて、前記直流電流が、前記インバータ部に大電流を流して前記容器を浮遊させる浮遊ステップを含む、請求項6記載の蒸着方法。
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