JP2020169364A - 液体処理システム及び吸着システム - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理液に接液する接液部の構造材が局部腐食を発生し難く、長寿命で信頼性が高い液体処理システム及び吸着システムを提供する。【解決手段】液体処理システムは、被処理液の性質、状態又は成分量の調整を行う液体処理システムであって、被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤(例;硝酸イオン、モリブデン酸イオン等。)を被処理液に注入する抑制剤注入装置(10)を備える。吸着システム(1)は、被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、被処理液に含まれる物質を吸着する吸着材を有する吸着塔(11〜14)と、金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を前記被処理液に注入する抑制剤注入装置(10)と、を備える。【選択図】図9

Description

本発明は、接液部を構成する金属材料のすきま腐食が抑制される液体処理システム及び吸着システムに関する。
SUS304、SUS316L等のステンレス鋼は、耐食性と経済性とを兼ね備えた汎用的な材料であり、原子炉施設、化学施設等の種々の分野で、耐食性材料として使用されている。ステンレス鋼は、表面に酸化形成される緻密な不動態皮膜によって高い耐食性を示すだけでなく、ニッケル等の高価な金属元素の節約や、強度を保った薄肉化が可能であるため、経済性にも優れた材料となる。
ステンレス鋼は、一般的に耐食性に優れた材料であるが、塩化物イオンの存在下、高温条件下、酸性条件下等においては、孔食、すきま腐食等の局部腐食を生じることがある。また、化学組成や熱影響等によっては、粒界腐食を生じることがあるし、応力等の原因因子の重畳によって、応力腐食割れを生じることもある。そのため、装置・機器にステンレス鋼を用いる場合、重大な損傷等が生じないように、腐食に対する対策が必要となる。
特に、塩化物イオンを含む液体を取り扱う液体処理システムでは、液体が接液する接液部、取り分け、スケールが付着し易い機器、配管等の溶接部や熱影響部、すきまが形成され易いフランジの接続部、スラッジの溜まり部の境界付近等で、すきま腐食が発生・進展し易いことが知られている。そのため、このような液体処理システムに関して、すきま腐食に対する防止策が求められている。
従来、装置・機器の接液部の腐食を抑制するために、金属材料に接液する液体に化学物質を注入する種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、ステンレス鋼のすきま腐食抑制方法であって、水系中の塩化物イオンのモル濃度以上のモル濃度で塩化物イオン以外のアニオンを水系中に共存させる方法が記載されている。特許文献1では、アニオンとして、硫酸イオンが用いられている。塩化物イオン濃度は、0.01ミリモル/リットルから10ミリモル/リットル未満の範囲とされている。
また、特許文献2には、Cl濃度が100ppm以上で、且つ、CaCOに換算したMアルカリ度Yppmが、Cl濃度をXppmとして次式:Y<−0.02X+40で示される範囲を外れる場合において、Mアルカリ度を調節して次式を満足する水質に維持する雑用水給水用ステンレス鋼配管の防食方法が記載されている。
また、特許文献3には、各種海水を取り扱う施設において、その取り扱う海水に過酸化水素を含む溶液を添加することにより、その海水に触れるステンレス鋼部材表面に不動態被膜を修復又は維持するステンレス鋼部材の防食方法が記載されている。特許文献3では、過酸化水素と過酢酸と酢酸との混合液等の添加によって、すきま腐食が防止された結果が得られている。
また、特許文献4には、純水にNaMoO及びNaNOを添加して腐食抑制液を作製し、腐食抑制液に脱気を施し、炭素鋼と接する塩化物イオンを含む水溶液に腐食抑制液を注入して腐食抑制剤含有液とする炭素鋼の腐食抑制方法が記載されている。特許文献4では、腐食抑制剤含有液に含まれるNaMoOが50〜5000ppmの範囲、NaNOが50〜500ppmの範囲とされている。
また、特許文献5には、塩化物イオン及びオゾンを含む水溶液中における耐食金属材料のすきま腐食防止方法であって、水溶液中に塩化物イオンのモル濃度に対してモル濃度比で0.2以上のモル濃度の硝酸イオンを共存させる方法が記載されている。特許文献5では、耐食金属材料として、SUS304、SUS316L、SUS317L等のオーステナイト系ステンレス鋼が試験されている。
また、特許文献6には、放射線が照射される湿潤環境におけるステンレス鋼の局部腐食抑制方法であって、ステンレス鋼に接触する水分において、水分中に含まれる塩化物イオンのモル濃度に対して、1倍以上のモル濃度の硝酸イオンを共存させる方法が記載されている。特許文献6では、SUS304、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼が硝酸ナトリウムの溶液に浸漬されて試験されている。
また、特許文献7には、放射線が照射される湿潤環境におけるステンレス鋼の局部腐食抑制方法であって、ステンレス鋼に接触する水分のpHを12.5以上にする方法が記載されている。特許文献7では、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の添加によって、すきま腐食の発生が防止されている。
特許文献8には、蒸発濃縮部によって濃縮された放射性廃液から塩素イオンを除去する放射性廃液処理装置が記載されている。特許文献8では、濃縮された放射性廃液に含まれる腐食の要因となる塩素を、塩素ガスを発生させる電解処理や、塩化銀を生成させる沈殿処理によって除去している。
特開2009−270131号公報 特開平10−219484号公報 特開2010−280947号公報 特開2015−025155号公報 特開2015−067859号公報 特開2017−218656号公報 特開2018−040038号公報 特開2013−148365号公報
特許文献1〜7に記載されているように、金属材料に接液する液体にアニオン等の化学物質を注入することによって、金属材料の腐食の防止が図られている。しかし、種々の液体処理システムの中には、高濃度の塩化物イオンを含有する液体や、放射性物質を含有する液体を取り扱う装置があり、これらの因子によって腐食の感受性が高くなるため、金属材料の腐食が依然として懸念されている。
従来の技術では、取り扱う液体中に高濃度の塩化物イオンが存在しており、且つ、pHが低い酸性条件である場合に、接液部を構成する金属材料の局部腐食、特に、すきま腐食の発生・進展を十分に抑制することができないという問題がある。
接液部を構成する金属材料の局部腐食を防ぐ方法としては、特許文献8に記載されているように、腐食を促進する塩化物イオン等の化学物質を除去する方法が考えられる。しかし、このような方法では、脱イオン装置、塩化物等を分離する濾過装置、化学物質を除去し易くする化学成分調整装置等の新たな追加が必要であり、装置コストが嵩むことが問題となる。
また、接液部を構成する金属材料の局部腐食を防ぐその他の方法としては、電気防食を行う方法や、犠牲陽極を用いる方法も考えられる。しかし、このような方法では、液体処理システムの接液部を構成する構造材が複雑になり、装置コストが嵩むし、廃棄物が発生して運用コストが高くなる問題もある。
各種の液体を取り扱う液体処理システムにおいて、接液部を構成する金属材料が腐食すると、金属材料の補修・交換が必要になるし、液体の漏洩等の危険もあり、システムの信頼性が損なわれる。そのため、実用的且つ簡便な手段で接液部を構成する金属材料の局部腐食が十分に抑制されるシステムが求められている。
そこで、本発明は、被処理液に接液する接液部の構造材が局部腐食を発生し難く、長寿命で信頼性が高い液体処理システム及び吸着システムを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、塩化物イオンが存在する酸性条件下では、硫酸イオンとは異なり、硝酸イオン、モリブデン酸イオン等の特定の無機イオンがステンレス鋼の局部腐食を抑制する効果を示し、これら特定の無機イオンが塩化物イオンに対して特定の濃度以上である場合に有効性が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するために本発明に係る液体処理システムは、被処理液の性質、状態又は成分量の調整を行う液体処理システムであって、前記被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、前記金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を前記被処理液に注入する抑制剤注入装置を備える。
また、本発明に係る吸着システムは、被処理液に含まれる物質を吸着によって除去する吸着システムであって、前記被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、被処理液に含まれる物質を吸着する吸着材を有する吸着塔と、前記金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を前記被処理液に注入する抑制剤注入装置と、を備える。
本発明によれば、被処理液に接液する接液部の構造材が局部腐食を発生し難く、長寿命で信頼性が高い液体処理システム及び吸着システムを提供することができる。
ステンレス鋼で作製したすきま付き溶接試験片の腐食試験で得られた電流−時間分極曲線である。 溶接試験片の形状を示す図である。 すきま付き溶接試験片を示す縦断面図である。 すきま付き溶接試験片の腐食試験に用いた試験装置を示す図である。 S32750のすきま腐食を抑制するのに必要な硝酸カリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。 S32750のすきま腐食を抑制するのに必要なモリブデン酸ナトリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。 SUS316Lのすきま腐食を抑制するのに必要な硝酸カリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。 SUS316Lのすきま腐食を抑制するのに必要なモリブデン酸ナトリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。 液体処理システムの一例である吸着システムの構成を示す図である。 液体処理システムの一例である廃液処理システムの構成を示す図である。 すきま腐食の監視に用いるすきま腐食モニタ装置の構成を示す図である。 吸着システムの被処理液に硝酸カリウムを注入したときの腐食電流、硝酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。 吸着システムの被処理液に硫酸ナトリウムを注入したときの腐食電流、硫酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。 吸着システムの被処理液にモリブデン酸ナトリウムを注入したときの腐食電流、モリブデン酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る液体処理システム、及び、吸着システムについて説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
本実施形態に係る液体処理システムは、液体に各種の処理を行い、液体(被処理液)の性質、状態、成分量等の調整を行う装置である。この液体処理システムは、被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、後記する特定の抑制剤が被処理液に注入されることによって、装置・機器の接液部を構成する金属材料について、局部腐食の発生・進展が抑制されるものである。
被処理液に施す処理としては、例えば、加熱や冷却、蒸発や凝縮、加圧や減圧、濃縮や希釈、溶解や凝固・析出、気−液混合や液−液混合や固−液混合、pH調整や粘度調整や成分濃度調整、成分の添加や分離・除去等の各種の処理が挙げられる。液体処理システムは、これらの処理のうち、一種を行う装置であってもよいし、複数種を行う装置であってもよい。
液体処理システムの具体例としては、原子炉施設で発生する放射性廃液や放射性物質で汚染された汚染土壌の洗浄によって発生する放射性廃液を処理する廃液処理システム、放射性物質を含む汚染水を処理する汚染水処理システム、液中の物質を分離・除去する吸着システム、海水淡水化システム、海水濃縮システム、海水ポンプや、その他の原子炉施設海水系システム等が挙げられる。
すきま腐食を抑制する対象となる接液部としては、被処理液に浸漬される部位、被処理液が当たる部位、被処理液の飛沫、液滴等が付着する部位、被処理液の蒸気が接触する部位等のいずれであってもよい。
すきま腐食を抑制する対象となる接液部を構成する金属材料は、システム内の装置・機器を構成する構造材や部品材であってもよいし、装置・機器に接続される配管等であってもよい。装置・機器としては、被処理液を物理的又は化学的に処理する各種の処理装置自体や、処理装置や配管に付随又は内蔵される、ポンプ、バルブ、センサ、タンク、プール等が挙げられる。
接液部を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼が挙げられる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等が挙げられる。ステンレス鋼としては、次の数式(1)で表される耐孔食指数(Pitting Resistance Equivalent:PRE)が、18以上である耐食性材料が好ましい。
PRE=%Cr+3.3×%Mo+16×%N・・・(1)
ここで、金属材料のすきま腐食を抑制するために被処理液に注入する抑制剤について説明する。
図1は、ステンレス鋼で作製したすきま付き溶接試験片の腐食試験で得られた電流−時間分極曲線である。図2は、溶接試験片の形状を示す図である。図3は、すきま付き溶接試験片を示す縦断面図である。図4は、すきま付き溶接試験片の腐食試験に用いた試験装置を示す図である。
図1には、すきまを形成したすきま付き試験片を、塩酸でpH3.5に調整した水溶液(塩化物イオン濃度:20000ppm)に浸漬して、電極電位:200mVに分極させて保持したときの電流値の時間変化を示す。下側の曲線は、硝酸カリウムの濃度を0.1Mとした結果、上側の曲線は、硝酸カリウムを非添加(0M)とした結果である。
すきま付き試験片は、図2に示す溶接試験片(welded metal)100を、二相系ステンレス鋼であるS32750を用いて作製し、その試験片にすきまを形成することによって作製した。図2の左側は、溶接試験片100の正面図であり、右側は、溶接試験片100の側面図である。図3は、図2に示す溶接試験片100にすきまを形成した状態の側面図である。
溶接試験片100は、幅(W)が20.0mm、厚さ(t)が2mmの2枚の鋼板100a,100bを、I型開先で突合せ溶接することにより、長さ(L)が50.0mmとなるように作製した。溶接部120の長さ(ビード幅)(X)と、被溶接鋼板の長さ(l)は、最大で15mmとした。
溶接金属は、耐孔食指数(PRE)が高く、局部腐食に対する耐性が高い、UNS_S32750を用いた。S32750の化学組成は、C:≦0.030、Si:≦0.80、Mn:≦1.20、P:≦0.035、S:≦0.020、Ni:6.0〜8.0、Cr:24.0〜26.0、Mo:3.0〜5.0、Cu≦:0.50、N:0.24〜0.32である。PRE(=%Cr+3.3×%Mo+16×%N)≧41である。
溶接試験片100は、溶接部120を設けた下部側の長さ30.0mmの部分が試験溶液に接触するように、上部側の長さ20.0mmの部分を、耐薬品性であるPTFE製の絶縁テープで被覆した。試験片の表面は、受け入れままとして、研磨、不動態化処理等は行わず、アセトンによる洗浄のみを施した。
図3に示すように、すきま付き試験片150は、溶接試験片100の表面に印象材130ですきまを形成することによって作製した。印象材130としては、ビニルシリコーン製の歯科用印象材(ジーシー社製)を用いた。
はじめに、溶接部120の表面に印象材130を押し付けて、溶接ビードの表面の型を採り、印象材130を溶接試験片100から一旦剥がした。そして、印象材130の周囲を除去して、長さが20.0mm、幅が20.0mmの型採り部分のみを切り出した。続いて、切り出した印象材130を溶接ビードの表面に再び型合わせし、溶接試験片100と印象材130の周りに絶縁テープを巻き付けた。そして、印象材130の上下をフッ素樹脂製のケーブルタイで固定して、溶接試験片100の表面と印象材130との間にすきまを形成した。
腐食試験は、図4に示すように、恒温浴200、電解槽210、電極槽220、試験電極201、対極202、基準電極203、及び、ポテンシオスタット250を組み合わせた測定装置を用いて行った。
試験電極201としては、すきま付き溶接試験片(図3参照)に導線を接続したものを用いた。対極202としては、白金電極を用いた。基準電極203としては、銀−塩化銀電極を用いた。電解槽210には、槽内の試験溶液に不活性ガスをバブリングして脱気するために、通気管230を取り付けた。電解槽210と電極槽220とは、塩橋240を介して接続して恒温浴200に入れた。
対極202は、電解槽210に入れて試験溶液に浸漬させた。基準電極203は、電極槽220に入れて試験溶液に浸漬させた。試験溶液の温度は、40℃とした。電解槽210に不活性ガスを通気して試験溶液を脱気した後、不活性ガスの供給を停止し、すきま付き溶接試験片で作製した試験電極201を電解槽210に入れて試験溶液に浸漬させた。
試験電極201と対極202との間の電位差は、ポテンシオスタット250で200mVに保持した。ポテンシオスタット250によって、2000時間にわたって腐食電流の測定を行い、すきま付き試験片についての電流−時間分極曲線を得た。
図1に示すように、硝酸カリウムを非添加(0M)とした場合には、電圧を印加して1〜2分後に、電流値の立ち上がりが確認された。図に矢印で示す電流値の反転上昇は、すきま腐食の発生によるものであり、その後の電流値の漸進的な上昇は、すきま腐食が進展していることを示しているといえる。
これに対し、硝酸カリウムの濃度を0.1Mとした場合には、電流値の立ち上がりが確認されなかった。この結果は、試験溶液への硝酸カリウムの添加によって、S32750のすきま腐食が抑制されたことを示しているといえる。
Figure 2020169364
Figure 2020169364
表1は、二相系ステンレス鋼であるS32750について、すきま腐食を抑制するのに必要な無機イオンの濃度を、腐食試験によって調べた結果を示している。表2は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lについて、すきま腐食を抑制するのに必要な無機イオンの濃度を、腐食試験によって調べた結果を示している。
表1及び表2に示す結果は、所定の耐食性材料を用いてすきま付き溶接試験片(図3参照)を作製し、図4に示す測定装置を用いて電流−時間分極曲線を得て、すきま腐食の発生及び抑制を調べたものである。必要濃度は、すきま腐食を抑制するのに必要な抑制剤の最小の濃度を意味する。この必要濃度は、電流−時間分極曲線上で観測される電流値の反転上昇(図1の矢印参照)の有無に基づいて求めたものである。
すきま腐食を抑制するための抑制剤としては、硝酸カリウムの水溶液、又は、モリブデン酸ナトリウムの水溶液を用いた。腐食試験は、試験溶液の塩化物イオンの濃度(塩素濃度)とpHを変えて、種々の条件で行った。試験電極と対極との間の電位差は200mVの定電圧に維持し、2000時間にわたって腐食電流の測定を行って必要濃度を求めた。
図5は、S32750のすきま腐食を抑制するのに必要な硝酸カリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。図6は、S32750のすきま腐食を抑制するのに必要なモリブデン酸ナトリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。図7は、SUS316Lのすきま腐食を抑制するのに必要な硝酸カリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。図8は、SUS316Lのすきま腐食を抑制するのに必要なモリブデン酸ナトリウムの濃度と塩素濃度との関係を示す図である。
表1〜2、及び、図5〜8に示すように、すきま腐食を抑制するのに必要な最小の濃度(必要濃度)は、すきまが形成される金属材料の種類や、液体のpHや、塩化物イオンの濃度(塩素濃度)や、注入する抑制剤の種類によって異なることが分かる。塩化物イオンの濃度が高いほど、抑制剤の必要濃度も高くなっている。また、pHが3.0〜6.0の範囲では、pHが6.0〜8.0の範囲と比較して抑制剤の必要濃度が高くなっている。
従来、すきま腐食を抑制する方法としては、特許文献1に記載されているように、金属材料に接液する液体中に硫酸イオンを存在させる方法が知られている。すきま内はプラスに帯電しており、電荷を中和するためにマイナス電荷がすきま内に泳動するが、すきま腐食を起こす原因物質である塩化物イオンは、マイナス電荷を持っているため、塩化物イオンがすきま内に移動して、すきま腐食が引き起こされる。これに対し、硫酸イオンのように、塩化物イオン以外のアニオンを共存させると、相対的にすきま内に移動する塩化物イオンが減少し、すきま腐食が抑制される。
本発明者らが、各種の無機イオンについて、すきま腐食を抑制するのに必要な濃度を腐食試験によって調べたところ、硝酸イオンやモリブデン酸イオンでは、すきま腐食を抑制する高い効果が確認されたが、硫酸イオンでは、すきま腐食を抑制する十分な効果が確認されなかった。高い酸化力を有する硝酸イオンや、表面への吸着性・沈殿性が高いモリブデン酸イオンは、硫酸イオンと比較して不動態皮膜を形成し易い性質があるため、すきま腐食の抑制に有効であると考えられる。
したがって、金属材料のすきま腐食を抑制するために被処理液に注入する抑制剤としては、硝酸イオンを含有する液体、モリブデン酸イオンを含有する液体、硝酸塩、モリブデン酸塩等が好ましい。抑制剤を形成する対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられるが、特に制限されるものではない。対カチオンとしては、溶解性や入手性等の観点から、ナトリウムイオンが好ましい。
また、構造材を形成する金属材料に接液する被処理液は、塩化物イオンの濃度が、20000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以上20000ppm以下であることがより好ましい。塩化物イオンの濃度が20000ppm以下であると、被処理液のpHが3.0前後と低い場合であっても、すきま腐食を少量の抑制剤で確実に抑制することができる。また、塩化物イオンの濃度が5000ppm以上であると、すきま腐食の感受性が増大し、抑制剤がより有効に利用されることになる。
次に、すきま腐食を抑制するための抑制剤を用いる液体処理システムの具体例について説明する。
図9は、液体処理システムの一例である吸着システムの構成を示す図である。
図9には、抑制剤を用いる液体処理システムの一例として、放射性物質を含む汚染水を処理する多段式の吸着システムを例示する。図9に示すように、吸着システム1は、供給管5と、pH調整剤注入装置10と、複数の吸着塔11,12,13,14と、抑制剤注入装置20と、センサユニット30と、除去塔(除去装置)40と、を備えている。
吸着システム1は、汚染水(被処理液)に含まれる放射性物質を吸着によって分離・除去する装置である。被処理液としては、原子炉施設で発生した汚染水、除染時に発生した汚染水等が処理される。汚染水は、濾過処理、炭酸塩沈殿処理、鉄共沈処理等の前処理をされた後に、供給管5を通じて吸着塔11に送られ、直列状に備えられた複数の吸着塔11〜14によって、順次、吸着処理されて処理液が回収される。
吸着塔11〜14は、それぞれ、所定の放射性核種を除去するための吸着材を内蔵している。吸着材としては、除去の対象となる放射性核種に応じて、適宜の吸着材が用いられる。吸着システム1で除去の対象となる放射性核種としては、Cs−134、Cs−137、Sr−89、Sr−90、I−129、Co−60、Sb−125、Ru−106、H−3(T)等がある。
吸着材の具体例としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂、ゼオライト、活性炭、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、チタン酸塩、珪チタン酸塩、水酸化鉄、フェロシアン化合物等が挙げられる。
吸着塔11〜14は、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂等の陽イオン交換型の吸着材を少なくとも備えていることが好ましい。このような吸着材を備えている場合、被処理液が酸性条件に調整されるため、すきま腐食の感受性が増大し、抑制剤がより有効に利用されることになる。
吸着塔11〜14の配列の具体例としては、第1吸着塔11にキレート樹脂、第2吸着塔12に酸化マグネシウム、第3吸着塔13にイオン交換樹脂、第4吸着塔14にゼオライトを内蔵した配列等が挙げられる。キレート樹脂によると、錯体化によってMn、Fe、Co等が捕捉される。酸化マグネシウムによると、水和反応によってトリチウム(T)等が捕捉される。イオン交換樹脂によると、イオン交換によってCe、Sr等の各種のイオンが捕捉される。ゼオライトによると、分子篩・イオン交換によってCe、Sr、I等が捕捉される。
吸着システム1において、吸着塔11の上流の供給管5には、被処理液のpHを低下させるためのpH調整剤を注入するpH調整剤注入装置10が備えられている。pH調整剤注入装置10は、pH調整剤を貯蔵するタンク、pH調整剤を被処理液に注入するポンプ等を備えている。被処理液は、pH調整剤を注入されることによって、吸着処理に適したpHに調整される。例えば、キレート樹脂の反応に必要なpH3.5等の酸性条件に調整されてから、吸着塔11〜14に送られる。
吸着システム1に備えられる各吸着塔や、吸着塔の内蔵物や、吸着塔に接続する配管は、主要部が金属材料によって形成される。金属材料としては、ステンレス鋼が用いられることが多く、耐食性に優れた二相系ステンレス鋼や、オーステナイト系ステンレス鋼が一般的に用いられる。
吸着システム1に備えられる吸着塔の壁部の内面、吸着材の支持部の表面、吸着塔内の仕切部の表面、吸着塔に接続する配管の内面等は、被処理液に接液する接液部であるため、金属材料の腐食を防止すべき部位である。特に、被処理液が酸性条件に調整される場合や、被処理液の塩化物イオンの濃度が高い場合や、被処理液に放射性物質が含まれる場合には、金属材料のすきま腐食の感受性が高くなるため、接液部を構成する金属材料について、すきま腐食の発生・進展が懸念される。
そのため、吸着システム1には、金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を被処理液に注入する抑制剤注入装置20が、吸着塔11の上流の供給管10に備えられている。抑制剤注入装置20は、抑制剤を貯蔵するタンク、抑制剤を被処理液に注入するポンプ等を備えることができる。被処理液は、抑制剤を注入されてから、吸着塔11〜14に向けて送られ、被処理液の通液に伴う、すきま腐食の発生・進展が抑制される。
なお、図9において、抑制剤注入装置20は、吸着塔11の上流の供給管10に備えられているが、抑制剤注入装置20は、吸着塔11〜14同士を接続する配管や、吸着塔14の下流の配管や、吸着塔11〜14の内部に備えてもよい。
また、図9において、抑制剤注入装置20は、供給管10のpH調整剤注入装置10の上流側に備えられているが、抑制剤注入装置20は、pH調整剤注入装置10の下流側に備えてもよい。但し、pHを低下させるpH調整剤を被処理液に注入すると、すきま腐食の発生・進展が促進されるため、抑制剤注入装置20は、pH調整剤注入装置10の上流側に備えることが好ましい。
吸着システム1において、吸着塔11の上流の供給管5のうち、抑制剤の薬注位置及びpH調整剤の薬注位置の下流の区間には、被処理液の性質について計測を行うセンサユニット30を備えることができる。センサユニット30としては、被処理液のpHを計測するpHセンサ、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度を計測する塩素センサ、被処理液に注入した抑制剤の濃度を計測するイオンセンサ等を備えることができる。
塩素センサやイオンセンサとしては、例えば、計測するイオン種に応じて、隔膜式のイオン選択電極を備えるイオンセンサを用いることができる。但し、被処理液のイオン強度や妨害イオンの濃度によっては、正確な濃度の計測が困難になる場合がある。このような場合、予め求めておいた誤差範囲を反映したデータベースを用いて計算する方法や、選択係数を用いて補正する方法等を用いることができる。
抑制剤注入装置20は、被処理液に注入する抑制剤の量が、一定的(定流量)に制御されてもよいし、可変的に制御されてもよい。また、抑制剤注入装置20は、抑制剤を被処理液に連続的に注入してもよいし、間欠的に注入してもよい。通常、抑制剤は、吸着処理時に被処理液に注入するが、吸着システム1の保守時、例えば、残液を除去するために行われる吸着塔11〜14への通水時等に注入してもよい。
抑制剤注入装置20は、被処理液をセンサユニット30で計測することによって、被処理液のpHと塩化物イオンの濃度とに基づいて予め規定された量の抑制剤を注入するように制御することが好ましい。センサユニット30による計測は、任意のサンプリング間隔で行うことができる。
抑制剤の注入量は、センサユニット30による計測の結果に応じて、必要濃度の抑制剤が被処理液中に存在した状態になるように制御することができる。塩化物イオン濃度毎の抑制剤の必要濃度をデータとして含むデータベースや、塩化物イオン濃度に対する抑制剤の必要濃度の量的関係を示す関係式等を予め腐食試験を行って用意しておき、これらを用いて可変的に注入量を制御することができる。
抑制剤注入装置20をpHと塩化物イオンの濃度とに基づいて予め規定された量を注入するように制御すると、過不足が少ない抑制剤で確実にすきま腐食の発生・進展を抑制しつつ、抑制剤の添加量を抑制することができる。そのため、すきま腐食の防止に要するコストを削減することができる。また、被処理液に混入する抑制剤の成分の量が少なくなるため、吸着塔や除去塔の負荷が軽減される。また、被処理液が放射性物質を含む液体である場合には、最終的な放射性物質の廃棄量が少なく抑えられる。
具体的には、被処理液に接液する接液部の金属材料が二相系ステンレス鋼であり、被処理液が、pHが6.0未満である場合、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.16以上に調整されるか、又は、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.1以上に調整されることが好ましい。
このような場合、抑制剤の注入量や金属材料の腐食を抑制する観点からは、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比や、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比は、1.0未満がより好ましく、0.5未満が更に好ましく、0.2未満が更に好ましい。
また、被処理液に接液する接液部の金属材料が二相系ステンレス鋼であり、被処理液が、pHが6.0以上8.0以下である場合、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.02以上に調整されるか、又は、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.007以上に調整されることが好ましい。
このような場合、抑制剤の注入量や金属材料の腐食を抑制する観点からは、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比や、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比は、1.0未満がより好ましく、0.5未満が更に好ましく、0.2未満が更に好ましく、0.1未満が更に好ましく、0.05未満が更に好ましい。
一方、被処理液に接液する接液部の金属材料がオーステナイト系ステンレス鋼であり、被処理液が、pHが6.0未満である場合、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.46以上に調整されるか、又は、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.2以上に調整されることが好ましい。
このような場合、抑制剤の注入量や金属材料の腐食を抑制する観点からは、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比や、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比は、2.0未満がより好ましく、1.5未満が更に好ましく、1.0未満が更に好ましい。
また、被処理液に接液する接液部の金属材料がオーステナイト系ステンレス鋼であり、被処理液が、pHが6.0以上8.0以下である場合、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.2以上に調整されるか、又は、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.1以上に調整されることが好ましい。
このような場合、抑制剤の注入量を抑制する観点からは、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比や、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比は、2.0未満がより好ましく、1.0未満が更に好ましく、0.5未満が更に好ましく、0.2未満が更に好ましい。
吸着システム1において、吸着塔11〜14の下流には、抑制剤が注入された被処理液から、注入された抑制剤の成分を除去するために、除去塔40を備えることができる。被処理液に抑制剤が注入されると、抑制剤の成分であるアニオン、カチオン等の濃度が上昇する。除去塔40を備えると、このような抑制剤の成分が吸着塔11〜14で分離・除去されない場合であっても、処理液が放流される以前に、抑制剤の成分を分離・除去することができる。
除去塔40としては、抑制剤の成分として硝酸イオンを用いる場合、イオン交換法、吸着法、膜分離法、触媒脱膣法等を利用した装置を用いることができる。イオン交換体としては、イオン選択性や反応効率の観点から、疎水性が高いイオン交換基を有する短繊維の樹脂が好ましく用いられる。吸着材としては、例えば、ゼオライト、活性炭等を用いることができる。硝酸イオンは、白金触媒、銅担持触媒、低結晶性鉄粉等でアンモニア性窒素に還元してから処理してもよい。
また、除去塔40としては、抑制剤の成分としてモリブデン酸イオンを用いる場合、イオン交換法、吸着法、膜分離法等を利用した装置を用いることができる。イオン交換体としては、例えば、四級アンモニウム等を交換基として有する強塩基性陰イオン交換樹脂、一級アンモニウムや二級アンモニウム等を交換基として有する弱塩基性陰イオン交換樹脂、ポリアミン等を交換基として有するキレート型陰イオン交換樹脂等を用いることができる。
以上の吸着システム1によると、吸着塔に送られる被処理液に、すきま腐食を抑制するための抑制剤を注入することができる。そのため、吸着塔等に送られる被処理液が酸性条件となるように調整されたとしても、接液部を構成する金属材料について、すきま腐食の発生・進展を抑制することができる。また、すきま腐食が抑制されるため、引張応力等が加わったとしても、応力腐食割れが発生し難くなる。システム内の装置・機器の損傷や、被処理液の漏洩等が長期間にわたって低減するようになり、装置・機器の補修・交換が軽減される。よって、被処理液に接液する接液部の構造材が局部腐食を発生し難く、長寿命で信頼性が高い吸着システムを提供することができる。抑制剤によって局部腐食が抑制されるため、構造材に極端に高い耐食性が要求されなくなり、汎用金属材料の使用が可能になるため、コストを削減することができる。
図10は、液体処理システムの一例である廃液処理システムの構成を示す図である。
図10には、抑制剤を用いる液体処理システムの一例として、放射性廃液を処理する廃液処理システムを例示する。図10に示すように、廃液処理システム2は、油分除去装置21と、濾過装置22と、第1蒸発濃縮装置23と、吸着装置24と、保管槽25と、塩素除去装置26と、塩素回収装置27と、第2蒸発濃縮装置28と、pH調整剤注入装置10と、抑制剤注入装置20と、センサユニット30と、除去塔(除去装置)40と、を備えている。
廃液処理システム2は、放射性廃液(被処理液)に含まれる放射性物質を分別し、放射性廃液を濃縮・減容・低線量化して回収する装置である。放射性廃液としては、原子炉施設で発生する高レベル放射性廃液や、放射性物質で汚染された汚染土壌の洗浄によって発生する廃液等が処理される。放射性廃液は、油分除去装置21、濾過装置22、第1蒸発濃縮装置23、塩素除去装置26、除去塔40、第2蒸発濃縮装置28に順に送られ、水、塩素分等の再利用可能な物質が回収されると共に容積が減容されて、揮発性が低い放射性物質が濃縮された濃縮廃液が回収される。
油分除去装置21は、被処理液に含まれる油分、粗大な浮遊物や懸濁物等を分離・除去する。油分除去装置21としては、例えば、加圧浮上分離装置、油水分離セパレータ等が用いられる。油分等と共に一部の放射性物質が分離・除去された被処理液は、濾過装置22に送られる。
濾過装置22は、被処理液に残留している微小な浮遊物や懸濁物等を濾過の原理で分離・除去する。濾過装置22としては、膜分離装置、砂濾過装置等が用いられる。微小な浮遊物や懸濁物等と共に一部の放射性物質が分離・除去された被処理液は、第1蒸発濃縮装置23に送られる。
第1蒸発濃縮装置23は、放射性物質を含む被処理液を蒸発させて、液体の被処理液を減容し、揮発性が低い放射性物質を被処理液中に濃縮する。放射性物質の大半は、不揮発性であるため、被処理液が蒸発しても液相に残って濃縮される。蒸発濃縮装置としては、例えば、蒸気圧縮式の装置等が用いられる。被処理液から蒸発した蒸気は、凝縮されて凝縮液(凝縮水)となり、吸着装置24に送られる。一方、放射性物質が濃縮された被処理液は、保管槽25に送られる。
吸着装置25は、被処理液から分離された凝縮液に含まれる放射性物質を分離・除去する。吸着装置25としては、吸着材として、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂、ゼオライト、活性炭、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、チタン酸塩、珪チタン酸塩、水酸化鉄、フェロシアン化合物等を備えた装置や、前記の吸着システム1と同様の構成の装置が用いられる。放射性物質が分離・除去された凝縮液は、海洋等に放流されるか再利用される。
保管槽25は、濃縮された被処理液を一時的に保管する。廃液処理システム2には、二段の蒸発濃縮装置23,28が備えられている。第一段目の第1蒸発濃縮装置23で減容された被処理液は、保管槽25に一時的に保管され、所定の段階で第2蒸発濃縮装置28に向けて払い出され、更に濃縮・減容される。保管槽25に保管されている被処理液は、はじめに、塩素除去装置26に送られる。
塩素除去装置26は、被処理液に含まれる塩化物イオンを分離・除去する。塩素除去装置26としては、例えば、電解装置等が用いられる。電解装置では、塩化物イオンを含む被処理液が、水素ガスと次亜塩素酸とが発生するように電気分解される。次亜塩素酸は、酸の注入によって酸性条件に調整されて、塩素ガスに変換される。塩素ガスは、塩素回収装置27に送られる。一方、塩素分が分離・除去された被処理液は、除去塔40に送られ、除去塔40から第2蒸発濃縮装置28に送られる。
塩素回収装置27は、被処理液から分離された塩素分である塩素ガスを固定化して回収する。塩素ガスは、例えば、洗浄塔等で塩酸に変換する方法や、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で沈殿させて塩化物や次亜塩素酸塩等に変換する方法によって回収される。また、塩素除去装置26に残留した塩化物イオンは、硝酸銀や硫酸銀で沈殿させて塩化銀に変換する方法によって回収される。
第2蒸発濃縮装置28は、第1蒸発濃縮装置23と同様に、放射性物質を含む被処理液を蒸発させて、液体の被処理液を減容し、揮発性が低い放射性物質を更に濃縮する。蒸発濃縮装置としては、真空蒸発圧縮型の装置等が用いられる。放射性物質が濃縮された被処理液は、濃縮廃液として回収され、固化体化されて貯蔵される。
廃液処理システム2において、塩素除去装置26の上流には、被処理液のpHを低下させるためのpH調整剤を注入するpH調整剤注入装置10が備えられている。pH調整剤注入装置10は、pH調整剤を貯蔵するタンク、pH調整剤を被処理液に注入するポンプ等を備えている。被処理液は、pH調整剤を注入されて、被処理液に含まれる塩素分を塩素ガスに変換するのに適したpHに調整される。
廃液処理システム2に備えられる各装置・機器や、装置・機器の内蔵物や、装置・機器に接続する配管は、主要部が金属材料によって形成される。金属材料としては、ステンレス鋼が用いられることが多く、耐食性に優れた二相系ステンレス鋼や、オーステナイト系ステンレス鋼が一般的に用いられる。
廃液処理システム2に備えられる各装置・機器の壁部の内面、装置・機器の内蔵物の表面、装置・機器に接続する配管の内面等は、被処理液に接液する接液部であるため、金属材料の腐食を防止すべき部位である。特に、被処理液が酸性条件に調整される場合や、被処理液の塩化物イオンの濃度が高い場合や、被処理液に放射性物質が含まれる場合には、金属材料のすきま腐食の感受性が高くなるため、接液部を構成する金属材料について、すきま腐食の発生・進展が懸念される。
そのため、廃液処理システム2には、金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を被処理液に注入する抑制剤注入装置20が、第1蒸発濃縮装置23の下流、且つ、保管槽25の上流の区間に備えられている。抑制剤注入装置20は、抑制剤を貯蔵するタンク、抑制剤を被処理液に注入するポンプ等を備えることができる。被処理液は、抑制剤を注入されてから、第2蒸発濃縮装置28に向けて送られ、被処理液の通液に伴う、すきま腐食の発生・進展が抑制される。
図10に示すように、抑制剤注入装置20を、第1蒸発濃縮装置23の下流、且つ、保管槽25の上流の区間に備えると、塩化物イオンを含む放射性廃液が濃縮されて、被処理液の塩化物イオンの濃度が高くなった場合であっても、保管槽25を含む第1蒸発濃縮装置23の下流において、すきま腐食の発生・進展を抑制することができる。
図10に示すように、pH調整剤注入装置10は、保管槽25の下流、且つ、塩素除去装置26の上流の区間に備えることが好ましい。このような配置によると、pH調整剤として塩素等を用いる場合であっても、濃縮された被処理液が保管されている間に、保管槽25の壁部の内面、保管槽25の内蔵物の表面等が、高濃度の塩化物イオンやpHが低い酸性条件に晒されるのを避けることができる。そのため、濃縮された被処理液を長期間にわたって保管するような場合であっても、保管槽25において、すきま腐食の発生・進展を抑制することができる。
廃液処理システム2において、第1蒸発濃縮装置23の下流、且つ、塩素除去装置26の上流の区間のうち、抑制剤の薬注位置及びpH調整剤の薬注位置の下流の区間には、被処理液の性質について計測を行うセンサユニット30を備えることができる。センサユニット30としては、吸着システム1と同様に、pHセンサ、塩素センサ、イオンセンサ等を備えることができる。
抑制剤注入装置20は、被処理液に注入する抑制剤の量が、一定的(定流量)に制御されてもよいし、可変的に制御されてもよい。また、抑制剤注入装置20は、抑制剤を被処理液に連続的に注入してもよいし、間欠的に注入してもよい。
抑制剤注入装置20は、被処理液をセンサユニット30で計測することによって、被処理液のpHと塩化物イオンの濃度とに基づいて予め規定された量の抑制剤を注入するように制御することが好ましい。センサユニット30による計測は、任意のサンプリング間隔で行うことができる。抑制剤の注入量は、吸着システム1と同様に、センサユニット30による計測の結果に応じて制御することができる。
廃液処理システム2において、抑制剤の薬注位置及びpH調整剤の薬注位置の下流の区間には、吸着システム1と同様に、抑制剤が注入された被処理液から、注入された抑制剤の成分を除去するために、除去塔40を備えることができる。除去塔40を備えると、このような抑制剤の成分を、濃縮される被処理液から分離・除去することができる。
以上の廃液処理システム2によると、蒸発濃縮された被処理液に、すきま腐食を抑制するための抑制剤を注入することができる。そのため、放射性廃液を発生する放射性物質の塩素化処理、原子炉施設等における海水の利用等が原因で、塩化物イオンを含む放射性廃液が処理に供され、濃縮によって被処理液の塩化物イオンの濃度が高くなったり、被処理液が酸性条件となるように調整されたりしたとしても、接液部を構成する金属材料について、すきま腐食の発生・進展を抑制することができる。また、すきま腐食が抑制されるため、引張応力等が加わったとしても、応力腐食割れが発生し難くなる。システム内の装置・機器の損傷や、被処理液の漏洩等が長期間にわたって低減するようになり、装置・機器の補修・交換が軽減される。よって、被処理液に接液する接液部の構造材が局部腐食を発生し難く、長寿命で信頼性が高い液体処理システムを提供することができる。抑制剤によって局部腐食が抑制されるため、構造材に極端に高い耐食性が要求されなくなり、汎用金属材料の使用が可能になるため、コストを削減することができる。
次に、金属材料のすきま腐食を監視するために用いるすきま腐食モニタ装置について、図を参照しながら説明する。
図11は、すきま腐食の監視に用いるすきま腐食モニタ装置の構成を示す図である。
図11に示すように、すきま腐食モニタ装置300は、すきま付き金属電極310と、対極320と、参照電極330と、ポテンシオスタット340と、を備えている。
すきま腐食モニタ装置300は、接液部を構成する金属材料に発生するすきま腐食を、すきま付き金属電極310に流れる腐食電流によって検出するための装置である。
すきま腐食モニタ装置300は、吸着システム1や廃液処理システム2をはじめとする液体処理システム中の接液部、すなわち、各装置・機器の壁部の内面、装置・機器の内蔵物の表面、装置・機器に接続する配管の内面等に設置することができる。
図11に示すように、すきま付き金属電極310、対極320、及び、参照電極330は、接液部を構成する構造材301を貫通するように固定される。各電極の先端側は、被処理液が存在する内部空間302に露出し、被処理液に接液する状態で支持される。各電極の基端側は、構造材301の外部空間303において、六角ボルトナット等の締結具350で固定される。各電極と構造材301や締結具350との間は、不図示の絶縁材によって電気的に絶縁される。
すきま付き金属電極310としては、監視の対象とする金属材料と同じ材料で形成された金属電極を用いる。金属電極には、すきま形成材351を装着することによって、すきまを形成する。すきま形成材351が装着された先端側を、構造材301の内部空間302に露出させて、すきま腐食を引き起こす被処理液に接触させる。
すきま形成材351としては、適宜の部材を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の絶縁物を、電極の表面を被覆する形態で用いて、すきまを形成することができる。或いは、チタン製のボルトナット、チタン製のワッシャ等を、電極の表面に締結する形態で用いて、すきまを形成することもできる。或いは、図3と同様の方法で作製したすきま付き試験片を用いてもよい。
対極320としては、例えば、白金電極を用いることができる。参照電極330としては、例えば、銀−塩化銀電極を用いることができる。対極320の先端や、液絡352が設けられた参照電極330の先端側を、構造材301の内部空間302に露出させて、すきま腐食を引き起こす被処理液に接触させる。
ポテンシオスタット340は、すきま付き金属電極310の電極電位を維持すると共に、電流測定機能によって、すきま付き金属電極310と対極320との間を流れる腐食電流を計測する。電極間を流れる電流値の信号は、例えば、前記の抑制剤注入装置20を制御する制御機に出力することができる。電極間を流れる電流値が所定の閾値を超えたときに、すきま腐食が発生したとして、被処理液に対する抑制剤の注入を開始することができる。
ポテンシオスタット340としては、対極接地型の装置、及び、作用極設置型の装置のいずれを用いることもできるが、対極接地型の装置を用いることが好ましい。対極接地型の装置であると、すきま付き金属電極310やシステム回路の接地・絶縁の状態に大きく左右されることなく、正しい電位を測定することができる。
このような、すきま腐食モニタ装置300によると、接液部を構成する構造材に発生するすきま腐食を、腐食電流の変化によって簡便に検出することができる。吸着システム1や廃液処理システム2をはじめとする液体処理システム中の接液部、すなわち、各装置・機器の壁部の内面、装置・機器の内蔵物の表面、装置・機器に接続する配管の内面等に、簡単な構造によって設けることができるため、各箇所で発生するすきま腐食を適時に検出して、抑制剤の注入量・注入頻度を削減することができる。そのため、被処理液への抑制剤の成分の混入の防止や、抑制剤の節約を図ることができる。
次に、接液部を構成する構造材の腐食試験を、液体処理システムの一例である吸着システム内で行った結果を示す。
図12は、吸着システムの被処理液に硝酸カリウムを注入したときの腐食電流、硝酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。
図12には、図9に示す吸着システムにおいて、被処理液を処理する際に、pH調整剤として塩酸と、すきま腐食を抑制するための抑制剤として硝酸カリウムの溶液とを注入した場合の腐食電流、硝酸イオンの濃度、塩化物イオンの濃度、及び、pHの時間変化を示す。
腐食電流は、吸着システム内にすきま腐食モニタ装置(図11参照)を設置し、すきま付き金属電極を参照電極に対して200mVに分極させて保持したときに、すきま付き金属電極と対極との間に流れた電流である。すきま付き金属電極としては、S32750で形成された金属電極を用いた。
図12に示すように、初期の被処理液の塩化物イオンの濃度は、20000ppm前後で推移した。また、被処理液のpHは、3.5前後で推移した。腐食試験を開始して第3日目までは、すきま腐食モニタ装置によって、5〜7mAの比較的大きな電流が計測された。第3日目までは、塩素濃度が高い酸性条件の下で、S32750のすきま腐食が進行して、腐食電流が観測されたものと考えられる。
続いて、第3日目に、硝酸カリウムの注入を開始し、硝酸イオンの濃度を0.1Mに調整した。その結果、電流値が低下をはじめ、第5日目以降に略0mAになった。この結果から、S32750のすきま腐食の進行が、硝酸カリウムの注入によって停止したことが分かる。第9〜10日目に、塩化物イオンの濃度が5000ppm前後に低下した時点で、硝酸イオンの濃度を段階的に必要濃度(表1参照)まで下げていったところ、電流値の上昇は計測されず、すきま腐食が抑制され続けることが確認された。
図13は、吸着システムの被処理液に硫酸ナトリウムを注入したときの腐食電流、硫酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。
図13には、図9に示す吸着システムにおいて、被処理液を処理する際に、pH調整剤として塩酸と、すきま腐食を抑制するための抑制剤として硫酸ナトリウムの溶液とを注入した場合の腐食電流、硫酸イオンの濃度、塩化物イオンの濃度、及び、pHの時間変化を示す。その他の条件は、抑制剤として硝酸カリウムの溶液を注入した場合と同様である。
図13に示すように、初期の被処理液の塩化物イオンの濃度は、20000ppm前後で推移した。また、被処理液のpHは、3.5前後で推移した。腐食試験を開始して第3日目までは、すきま腐食モニタ装置によって、5〜7mAの比較的大きな電流が計測された。第3日目までは、塩素濃度が高い酸性条件の下で、S32750のすきま腐食が進行して、腐食電流が観測されたものと考えられる。
続いて、第3日目に、硫酸ナトリウムの注入を開始し、硫酸イオンの濃度を0.1Mに調整した。その結果、電流値の低下は計測されなかった。第9〜10日目に、塩化物イオンの濃度が5000ppm前後に低下した時点で、硫酸イオンの濃度を0.5Mまで上昇させたところ、依然として電流値の低下は計測されなかった。この結果から、酸性条件の下では、S32750のすきま腐食の進行が、硫酸ナトリウムによって抑制されないことが分かる。
図14は、吸着システムの被処理液にモリブデン酸ナトリウムを注入したときの腐食電流、モリブデン酸イオンの濃度、被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度、及び、被処理液のpHの時間変化を示す図である。その他の条件は、抑制剤として硝酸カリウムの溶液を注入した場合と同様である。
図14に示すように、初期の被処理液の塩化物イオンの濃度は、180000〜20000ppm前後で推移した。また、初期の被処理液のpHは、3.5前後で推移した。腐食試験を開始して第3日目までは、すきま腐食モニタ装置によって、5〜7mA前後の比較的大きな電流が計測された。第3日目までは、塩素濃度が高い酸性条件の下で、S32750のすきま腐食が進行して、腐食電流が観測されたものと考えられる。
続いて、第30日目に、モリブデン酸ナトリウムの注入を開始し、モリブデン酸イオンの濃度を0.05Mに調整した。その結果、電流値が低下をはじめ、第50日目以降に略0mAになった。この結果から、S32750のすきま腐食の進行が、モリブデン酸ナトリウムの注入によって停止したことが分かる。第60日目に、塩酸の注入を停止してpHが上昇した時点で、モリブデン酸イオンの濃度を1/10に低下させたところ、電流値の上昇は計測されず、すきま腐食が抑制され続けた。その後、第100〜110日目に、再び塩酸を注入してpHを低下させると、電流値の上昇が計測され、すきま腐食の発生・進展が続いた。第130〜140日目に、塩化物イオンの濃度を5000ppm前後に低下させると、電流値が再び低下し、すきま腐食の進行が停止することが確認された。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記の抑制剤注入装置20は、吸着システム1や廃液処理システム2の所定の位置に備えられているが、抑制剤注入装置は、液体処理システムに備えられる、被処理液を物理的又は化学的に処理する各種の処理装置の内部や、その処理装置に被処理液を供給する配管をはじめ、金属材料のすきま腐食を抑制する必要がある適宜の箇所に備えることができる。
また、前記の吸着システム1においては、計4段の吸着塔11〜14が直列状に備えられているが、被処理液に含まれる物質を吸着によって除去する吸着システムは、吸着塔の段数や種類が、特に制限されるものではない。また、吸着塔の配列順や、段毎の塔数が、特に制限されるものではない。吸着塔は、吸着材の種類毎に多段化することもできるし、除去の対象に応じて、適宜の配列順とすることもできる。
また、前記の廃液処理システム2においては、油分除去装置21と、濾過装置22と、第1蒸発濃縮装置23と、吸着装置24と、保管槽25と、塩素除去装置26と、塩素回収装置27と、第2蒸発濃縮装置28と、が備えられているが、放射性廃液を処理する廃液処理システムは、装置・機器の構成や数が、特に制限されるものではない。また、吸着塔の配列順や、段毎の塔数が、特に制限されるものではない。被処理液を濃縮させる蒸発濃縮装置を備える限り、蒸発濃縮装置を二段以上の適宜の段数に多段化してもよいし、放射性物質の分別・回収等を追加したり、省略したりすることもできる。
1 吸着システム(液体処理システム)
2 廃液処理システム(液体処理システム)
5 供給管
10 pH調整剤注入装置(pH調整装置)
11 第1吸着塔
12 第2吸着塔
13 第3吸着塔
14 第4吸着塔
20 抑制剤注入装置
21 油分除去装置
22 濾過装置
23 第1蒸発濃縮装置
24 吸着装置
25 保管槽
26 塩素除去装置
27 塩素回収装置
28 第2蒸発濃縮装置
30 センサユニット
40 除去塔(除去装置)
100 溶接試験片
100a 鋼板
100b 鋼板
120 溶接部
130 印象材
150 すきま付き試験片
200 恒温浴
201 試験電極
202 対極
203 基準電極
210 電解槽
220 電極槽
230 通気管
240 塩橋
250 ポテンシオスタット
300 すきま腐食モニタ装置
301 構造材
302 内部空間
303 外部空間
310 すきま付き金属電極
320 対極
330 参照電極
340 ポテンシオスタット
350 締結具
351 すきま形成材
352 液絡

Claims (14)

  1. 被処理液の性質、状態又は成分量の調整を行う液体処理システムであって、前記被処理液に接液する接液部の少なくとも一部が金属材料で形成されており、前記金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を前記被処理液に注入する抑制剤注入装置を備える液体処理システム。
  2. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記抑制剤は、硝酸イオン、又は、モリブデン酸イオンを含有する液体である液体処理システム。
  3. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記液体処理システムは、前記被処理液のpHを低下させるためのpH調整剤を注入するpH調整剤注入装置を備える液体処理システム。
  4. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記被処理液は、塩化物イオンを含む液体である液体処理システム。
  5. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記被処理液は、放射性物質を含む液体である液体処理システム。
  6. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記被処理液から注入された前記抑制剤の成分を除去する除去装置を備える液体処理システム。
  7. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記被処理液のpHを計測するpHセンサと、
    前記被処理液に含まれる塩化物イオンの濃度を計測する塩素センサと、を備え、
    前記抑制剤注入装置は、前記被処理液のpHと塩化物イオンの濃度とに基づいて予め規定された量の前記抑制剤を注入する液体処理システム。
  8. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記金属材料は、二相系ステンレス鋼であり、
    前記抑制剤が注入された被処理液は、
    pHが6.0未満であり、且つ、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.16以上に調整されるか、又は、
    pHが6.0未満であり、且つ、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.1以上に調整される液体処理システム。
  9. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記金属材料は、二相系ステンレス鋼であり、
    前記抑制剤が注入された被処理液は、
    pHが6.0以上8.0以下であり、且つ、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.02以上に調整されるか、又は、
    pHが6.0以上8.0以下であり、且つ、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.007以上に調整される液体処理システム。
  10. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記金属材料は、オーステナイト系ステンレス鋼であり、
    前記抑制剤が注入された被処理液は、
    pHが6.0未満であり、且つ、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.46以上に調整されるか、又は、
    pHが6.0未満であり、且つ、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.2以上に調整される液体処理システム。
  11. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記金属材料は、オーステナイト系ステンレス鋼であり、
    前記抑制剤が注入された被処理液は、
    pHが6.0以上8.0以下であり、且つ、硝酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.2以上に調整されるか、又は、
    pHが6.0以上8.0以下であり、且つ、モリブデン酸イオンのモル濃度と塩化物イオンのモル濃度との比が0.1以上に調整される液体処理システム。
  12. 請求項1に記載の液体処理システムであって、
    前記液体処理システムは、前記被処理液を濃縮させる蒸発濃縮装置と、
    前記被処理液のpHを低下させるためのpH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、を備え、
    前記抑制剤注入装置は、前記蒸発濃縮装置によって濃縮された前記被処理液に前記抑制剤を注入し、
    前記pH調整剤注入装置は、前記抑制剤が注入された前記被処理液に前記pH調整剤を注入する液体処理システム。
  13. 被処理液に含まれる物質を吸着によって除去する吸着システムであって、被処理液に含まれる物質を吸着する吸着材を有する吸着塔と、前記金属材料のすきま腐食を抑制するための抑制剤を前記被処理液に注入する抑制剤注入装置と、を備える吸着システム。
  14. 請求項13に記載の吸着システムであって、
    前記吸着システムは、
    被処理液を前記吸着塔に供給する供給管と、
    前記被処理液のpHを低下させるためのpH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、を備え、
    前記抑制剤注入装置は、前記供給管を流される前記被処理液に前記抑制剤を注入し、
    前記pH調整剤注入装置は、前記抑制剤が注入された前記被処理液に前記pH調整剤を注入する吸着システム。
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