JP2020169304A - 湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法および湿式摩擦材 - Google Patents

湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法および湿式摩擦材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れた湿式摩擦材用フェノール樹脂を提供する。【解決手段】本発明のある態様は、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物である。当該湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物は、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、を含む。【化1】(式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法および湿式摩擦材に関する。
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は、従来から、成形品の基材となる材料同士を結合させるバインダーとして広く用いられており、優れた機械的特性や電気的特性、接着性を有することから、様々な分野で使用されている。近年、ブレーキ等の湿式摩擦材用バインダーとしてフェノール樹脂を使用する技術の開発が進められている。
しかし、フェノール樹脂の硬化物は、一般に、機械的特性に優れているものの、堅くてもろいことが知られている。こうした事情に鑑みて、湿式摩擦材用バインダーとして使用するフェノール樹脂については、その硬化物の摩擦性能を向上させるべく、種々の検討結果が報告されている(たとえば、特許文献1)。
特開平9−59599号公報
湿式摩擦材用バインダーとして使用する従来のフェノール樹脂、すなわち、従来の湿式摩擦材用フェノール樹脂に対する要求水準は、ますます高くなってきている傾向にある。本発明者らは、従来の湿式摩擦材用フェノール樹脂に関し、以下のような課題を見出した。
湿式摩擦材用フェノール樹脂の硬化物を湿式摩擦材に用いる場合には、安定した高摩擦係数を発現し良好な摩擦性能を発揮することに加え、高温下で使用しても機械強度が低下せずに、摩擦性能が維持されることが求められている。しかし、従来の湿式摩擦材用フェノール樹脂の硬化物を用いた湿式摩擦材は、高温下で使用したときに機械強度の低下が避けられず、摩擦性能が低下するという課題がある。
そこで、本発明は、硬化物としたときに耐熱性を向上させることができる湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明によれば、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物が提供される。
Figure 2020169304
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
また、本発明によれば、下記式(9)で表される構造単位を有する化合物を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物が提供される。
Figure 2020169304
(式(9)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
また、本発明によれば、下記式(9)で表される化合物を含む湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法であって、
Figure 2020169304
(式(9)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーとを混合する工程と、
Figure 2020169304
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
前記フェノール樹脂と前記ポリマーとを反応させる工程と、
を備える湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上述した湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の硬化物を含む、湿式摩擦材が提供される。
本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物によれば、硬化物としたときの耐熱性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
実施形態に係る湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう。)は、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、を含む。
Figure 2020169304
(式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
本樹脂組成物によれば、当該樹脂組成物の硬化物が発現する耐熱性を向上させることができる。この結果、耐久性に優れ、ひいては、高い摩擦性能を長時間にわたり安定的に発揮する湿式摩擦材を作製することができる。
この理由として、詳細なメカニズムは定かでないが、たとえば、本樹脂組成物の硬化物は、上記式(1)で示される構造単位を含むポリマーとフェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂とがイミド結合を介して結合した構造をとることが考えられる。
以下、本樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(フェノール樹脂)
まず、本樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂について説明する。
本樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂は、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物である。
本樹脂組成物に用いるフェノール樹脂を得る手法は種々存在し限定されるものではないが、フェノール樹脂とアルキルアミン化合物を塩基性触媒存在下で反応させることにより合成することができる。
フェノール類として、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール類、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール類、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。本実施形態で使用されるフェノール類は、後述する有機溶剤に可溶であることが好ましい。
これらのフェノール類の中でも、フェノール、クレゾール類、ビスフェノールAからなる群より選ばれるものが好ましい。これにより、本樹脂組成物を用いた成形品において、機械的強度を高めることができる。
アルキルアミン化合物としては、例えば、2級アルキルアミン化合物として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、3級アルキルアミン化合物として、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。これらを単独で使用または2種以上併用することができる。
これらの中でも、ヘキサメチレンテトラミンを用いることが好ましい。これを用いることで、ホルマリン等のアルデヒド源を用いずに反応させることができる。
フェノール樹脂の合成に用いられる塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、トリエチルアミンなどの第3級アミン、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、などのアルカリ性物質等を単独または2種類以上併用することができる。上記塩基性触媒の使用量としては特に限定されないが、上記フェノール類のモル数1モルに対して、通常、0.01〜0.1モルとすることができる。
塩基性触媒の存在下でフェノール類とアルキルアミン化合物とを反応させる際の反応温度は50〜110℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。
フェノール樹脂を合成する際の各成分の含有割合としては、フェノール樹脂1000質量部に対し、フェノール類を0〜100質量部、好ましくは0〜50質量部、アルキルアミン化合物を0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部、塩基性触媒を0〜20質量部、好ましくは0〜10質量部が適当である。
フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量の下限は3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。一方、フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量の上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量の下限を上記範囲とすることにより、後述するポリマーとの間にアミド結合やイミド結合を形成しやすくし、本樹脂組成物から得られる硬化膜の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。また、フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量の上限を上記範囲とすることにより、本樹脂組成物から得られる硬化膜が硬くなりすぎ、柔軟性が損なわれることを抑制することができる。
フェノール樹脂の分子量としては、たとえば、重量平均分子量(Mw)として100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であることにより、本樹脂組成物および本樹脂組成物から得られる硬化膜の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。
また、フェノール樹脂の分子量としては、たとえば、重量平均分子量(Mw)として100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、20000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記上限値以下であることにより、本樹脂組成物を製造する際の作業性の向上や、本樹脂組成物から含浸紙を得る際の含浸性の向上を図ることができる。
また、この重量平均分子量は、後述するポリマー同様、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに算出することができる。
フェノール樹脂においては、上述したフェノール類のモル数1モルに対して、アルキルアミン化合物のモル数が、0.13〜0.35モルであることが好ましい。より好ましくは0.18〜0.30モルである。
これにより、本樹脂組成物を含浸用に使用した場合に、良好な含浸性を有するとともに、成形品の柔軟性を向上させることができる。
(ポリマー)
本樹脂組成物に含まれるポリマーは、下記式(1)で表される構造単位を含む。
Figure 2020169304
(式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
すなわち、本樹脂組成物に含まれるポリマーは、分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物に由来する構造単位を含む重合体であり、たとえば、不飽和カルボン酸無水物と他のモノマーとの共重合体である。本実施形態において、分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸またはこれらの誘導体を含む群から選択されてもよく、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸からなる群から選択されてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本樹脂組成物に含まれるポリマーが有する、分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物に由来する単位としては、たとえば、下記式(1)に示す分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物由来の単位を用いてもよく、下記式(2)に示す無水マレイン酸由来の単位を用いてもよい。
Figure 2020169304
(式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基である。)
Figure 2020169304
本実施形態において、上記式(1)中、Rx及びRyは、たとえば、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜3の有機基であることが好ましく、それぞれ独立して水素又は炭素数1の有機基であることがより好ましく、Rxが水素かつRyが水素又は炭素数1の有機基であることがさらに好ましく、RxとRyが水素であることが一層好ましい。
本実施形態において、上記式(1)中、Rx及びRyを構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばシクロプロピル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
また、本実施形態に係るポリマーは、分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物の酸無水環がアルコールで開環した第1エステル化物に由来する、下記一般式(a)で示される構造単位を含んでもよい。
Figure 2020169304
(式(a)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基であり、W、Zは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。)
上記式(a)において、Rx,Ryは、上記(1)と同様のものである。また、上記式(a)において、WおよびZは、いずれか一方または両方が、水素または炭素数1〜30の有機基であり、アルコール由来の構造を含むことができる。
本実施形態において、アルコールとして、例えば、炭素数1〜30までのアルコールであることが好ましく、炭素数1〜15までのアルコールであることがより好ましく、炭素数1〜10までのアルコールであることがさらに好ましく、炭素数1〜7までのアルコールであることが一層好ましい。
上述のアルコールとして、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ネオペンタノール、ドデカノールなどの脂肪族アルコール;ベンジルアルコール、フェノール、2,6−ジ−i−プロピルフェノール、4−t−オクチルフェノールなどの芳香族アルコール;シクロヘキサノール、5−ノルボルネン−2−メタノール、などの脂環式アルコールが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物と共重合させる他のモノマーは、本樹脂組成物を適用する用途に応じ適宜選択することができる。
より具体的な例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−エチニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン等のノルボルネン系モノマー;インデン、2−メチルインデン、3−メチルインデン等のインデン系モノマー;1,5,9−シクロドデカトリエン、シス−トランス−トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、トランス−トランス−トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、トランス−シス−シス−1,5,9−シクロドデカトリエン、シス−シス−シス−1,5,9−シクロドデカトリエン等の脂環系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等のアリル系モノマー;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−ノルボルニルマレイミド、N−シクロヘキシルメチルマレイミド、N−シクロペンチルメチルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド;N−アルキルマレイミド、N−シクロアルキルマレイミド、N−アリールマレイミドの他にもN−ヒドロキシマレイミド等のマレイミド系モノマー;等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてよいし、異なる2種類以上を併用してもよい。
上記他のモノマーとして、好ましくは脂環系モノマーのうちノルボルネン型モノマー、スチレン系モノマー、インデン系モノマー、マレイミド系モノマーを用いることができる。すなわち、本実施形態のポリマーは、
下記式(3)で表されるノルボルネン型モノマーに由来する構造単位と、
下記式(4)で表されるスチレン系モノマーに由来する構造単位と、
下記式(5)で表されるインデン系モノマーに由来する構造単位と、
下記式(6)で表されるマレイミド系モノマーに由来する構造単位と、
からなる群より選択される少なくとも1種以上の構造単位をさらに含むことが好ましい。これらは1つを単独で含んでもよいし、異なる2つ以上の単位を含んでもよい。
ポリマーがこれらの単位のいずれか1つを少なくとも含むことにより、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材の耐久性を向上させることができる。
Figure 2020169304
(式(3)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。nは0、1または2である。)
Figure 2020169304
(式(4)中、Raはそれぞれ独立して炭素数1〜30の有機基である。kは0以上5以下の整数である。)
Figure 2020169304
(式(5)中、RからR11はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基である。)
Figure 2020169304
(式(6)中、R12は水素または炭素数1〜10の有機基である。)
本実施形態において、上記式(3)中、R〜Rは、たとえば、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜30の有機基であり、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜10の有機基であることが好ましく、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜3の有機基であることがより好ましく、それぞれ独立して水素または炭素数1の有機基であることがさらに好ましい。また、上記式(3)中、nは、たとえば、0、1または2であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
本実施形態において、上記式(4)中、Raは、たとえば、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜30の有機基であり、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜10の有機基であることが好ましく、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜3の有機基であることがより好ましく、それぞれ独立して水素または炭素数1の有機基であることがさらに好ましい。また、上記式(4)中、kは、たとえば、0以上5以下の整数であり、0以上3以下の整数であることが好ましく、0以上1以下の整数であることがより好ましい。
本実施形態において、上記式(5)中、R〜R11は、たとえば、それぞれ独立して水素又は炭素数1〜3の有機基であり、それぞれ独立して水素又は炭素数1の有機基であることが好ましく、それぞれ独立して水素であることがさらに好ましい。
本実施形態において、上記式(6)中、R12は、たとえば、水素又は炭素数1〜10の有機基であり、水素又は炭素数1〜5の有機基であることが好ましく、水素又は炭素数1〜3の有機基であることがより好ましく、水素または炭素数1の有機基であることがさらに好ましい。
〜R、Raを構成する炭素数1〜30の有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。また、R〜R11を構成する炭素数1〜3の有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。また、R12を構成する炭素数1〜10の有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。また、R〜R、Ra、R〜R11およびR12を構成する有機基は、いずれも酸性官能基を有しないものとすることができる。これにより、ポリマー中における酸価の制御を容易とすることができる。
本実施形態において、R〜R、Raを構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
本実施形態において、R〜R11を構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばシクロプロピル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
本実施形態において、R12を構成する有機基としては、たとえば、水素や、上記のR〜R、Raで例示された有機基のうち、炭素数1〜10の有機基を使用できる。
さらに、R〜R、Ra、R〜R11及びR12を構成するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基が好ましい。R〜R、Ra、R〜R11及びR12の少なくともいずれか1つをハロアルキル基とすることで、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材について、その硬度という点での耐久性と柔軟性とのバランスを向上させることができる。また、ハロアルキルアルコール基とすることで、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材について、柔軟性を維持しつつ、その硬度を向上させることができる。
なお、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材の柔軟性を高める観点からは、R〜R、Ra、R〜R11及びR12のいずれかが水素であることが好ましく、たとえば、式(3)の構造単位を採用する場合にあっては、R〜Rすべてが水素であることが好ましい。たとえば、式(4)の構造単位を採用する場合にあっては、Raが水素であることが好ましい。たとえば、式(5)の構造単位を採用する場合にあっては、R〜R11が水素であることが好ましい。
式(1)の構造単位を有する場合、ポリマーが下記式(7)で示される構造を有する共重合体で構成されることが好ましい。
Figure 2020169304
(式(7)中、l、pおよびmは、ポリマー中におけるモル含有率を示し、かつ、l+p+m≦1、0≦l<1、0≦p<1、および0<m<1の条件を満たし、nおよびqはそれぞれ独立して0、1または2であり、R〜RおよびR13〜R16はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基であり、R13、R14、R15およびR16から選択される1または2以上がアルコール性水酸基を有する有機基であり、Aは下記式(2a)、(2b)、(2c)または(2d)により示される構造単位であり、複数のAのうち、下記式(2c)により示される構造単位を1以上含む。)
Figure 2020169304
(式(2a)および式(2b)中、R17、R18およびR19は、それぞれ独立して炭素数1〜30の有機基である。)
本樹脂組成物において、上述したフェノール樹脂の含有量は、ポリマー100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましく、100質量部以上であることが特に好ましい。
また、本樹脂組成物において、上述したフェノール樹脂の含有量は、ポリマー100質量部に対して、10000質量部以下であることが好ましく、5000質量部以下であることがより好ましく、2500質量部以下であることがさらに好ましく、1000質量部以下であることが特に好ましい。
ポリマーに対するフェノール樹脂の含有量をこのような範囲に設定することにより、ポリマーとフェノール樹脂との間に適度な相互作用をもたらし、一段と耐熱性の向上に資することができる。
ポリマーの分子量を調節するために連鎖移動剤を適宜使用することができる。連鎖移動剤としては、たとえば、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、β−メルカプトプロピオン酸、メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート等のβ−メルカプトプロピオン酸類;2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン等のナフトキノン類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;その他、トリエトキシシラン、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
フェノール樹脂と反応させる前段階にある上記ポリマーは、たとえばGPC(Gel Permeation Chromatography)により得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下におけるピーク面積が、全体の3%以下でもよく、2%以下でもよい。
このように、GPCにより得られる分子量分布曲線の分子量1000以下におけるピーク面積の比率を上記範囲とすることにより、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材について、その硬度という点での耐久性と柔軟性とのバランスを向上させることができる。
なお、ポリマーにおける低分子量成分の量の下限は、特に限定されない。しかし、本実施形態におけるポリマーは、GPCにより得られる分子量分布曲線において分子量1000以下におけるピーク面積は全体の0.01%以上である場合を許容するものである。
フェノール樹脂と反応させる前のポリマーは、たとえば、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が1.4以上4.0以下であることが好ましい。こうすることで、本樹脂組成物の硬化物を含む湿式摩擦材について、使用時の耐熱性や耐久性能を向上させることができる。なお、Mw/Mnは、分子量分布の幅を示す分散度である。また、上述した効果は、同時に上述のようにポリマーの低分子量成分を低減する場合において特に顕著に表れる。また、ポリマーのMw(重量平均分子量)は、たとえば1500以上30000以下である。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、たとえばGPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、たとえば以下のとおりである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8320GPC
カラム:東ソー社製TSK−GEL Supermultipore HZ−M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
また、ポリマー中における低分子量成分量は、たとえばGPC測定により得られた分子量に関するデータに基づき、分子量分布全体の面積に占める、分子量1000以下に該当する成分の面積総和の割合から算出される。
(ポリマーの製造方法)
本実施形態に係るポリマーは分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物と他のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。この製造方法は従来公知の方法を用いればよい。以下、前述の式(3)で示される構造単位を含むポリマーの製造方法を例に挙げて、以下説明する。
(重合工程(処理S1))
はじめに以下の式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、モノマーとなる無水マレイン酸とを用意する。式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーにおいて、n、R〜Rは、上記式(3)のものと同様とすることができる。
Figure 2020169304
式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーとしては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)が挙げられ、さらに、アルキル基を有するものとして、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなど、アルキニル基を有するものとしては、5−エチニル−2−ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
その他、ノルボルネン型モノマーとしては、式(3a)のR、R、R、Rの基の構造中に、架橋性を有する基、あるいはフッ素等のハロゲン原子を含む基などの官能基を含むものを採用することができる。
ノルボルネン型モノマーとしては、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。なかでも、ポリマーとフェノール樹脂との反応性を制御する観点から、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)を使用することが好ましい。
次いで、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを付加重合する。ここでは、ラジカル重合により、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸との共重合体(共重合体1)を形成する。
式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とのモル比(式(3a)で示される化合物のモル数:無水マレイン酸のモル数)は、0.5:1〜1:0.5であることが好ましい。なかでも、分子構造制御の観点から、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーのモル数:無水マレイン酸のモル数=0.8:1〜1:0.8であることが好ましい。
なお、この付加重合に際しては、上述のノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸以外にも共重合できるモノマーを添加してもよい。このようなモノマーとして、分子内にエチレン性二重結合を有する基を含む化合物が挙げられる。ここで、エチレン性二重結合を有する基の具体例としては、アリル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基や、スチリル基やインデニル基のような芳香族ビニル基等が挙げられる。
なお、上記無水マレイン酸に代えて、他の分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物を使用してもよい。
たとえば、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸と、重合開始剤とを溶媒に溶解し、その後、所定時間加熱することで、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを溶液重合する。加熱温度は、たとえば、50〜80℃であり、加熱時間は10〜20時間である。
重合に使用される溶媒としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のうち、いずれか1種以上を使用することができる。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物および有機過酸化物のうちのいずれか1種以上を使用できる。
アゾ化合物としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)が挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。また、有機過酸化物としては、たとえば過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)を挙げることができ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
ラジカル重合開始剤の量(モル数)は、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸との合計モル数の1%〜10%とすることが好ましい。重合開始剤の量を前記範囲内で適宜設定し、かつ、反応温度、反応時間、連鎖移動剤の量を適宜設定することで、得られるポリマーの重量平均分子量(Mw)を適切な範囲に調整することができる。
この重合工程(処理S1)により、上述の式(1)で示される構造単位と、式(3)で示される構造単位とを有する共重合体1を重合することができる。
ただし、共重合体1において、式(3)の構造のRは、複数の構造単位において共通であることが好ましいが、それぞれの構造単位ごとに異なっていてもよい。R〜Rにおいても同様である。
共重合体1は、式(1)で示される構造単位と、式(3)で示される構造単位とが、ランダムに配置されたものであってもよく、また、交互に配置されたものであってもよい。また、式(3a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とがブロック共重合したものであってもよい。ただし、本実施形態で製造されるポリマーを用いた樹脂組成物の硬化物の柔軟性と耐久性とのバランスが良好な状態となるように制御する観点からは、式(1)で示される構造単位と、式(3)で示される構造単位とが交互に配置された構造であることが好ましい。すなわち、共重合体1は、たとえば、ノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸が共重合した場合、以下の式(8)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
Figure 2020169304
(式(8)において、n、R〜Rは、上記式(3)と同じである。すなわち、nは0、1、2のいずれかである。R〜Rは、水素または炭素数1〜30の有機基である。R〜Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。また、bは10以上、200以下の整数である。)
ここで、式(8)の構造のRは、複数の構造単位において共通であることが好ましいが、それぞれの構造単位ごとに異なっていてもよい。R〜Rにおいても同様である。
(低分子量成分除去工程(処理S2))
次に、必要に応じて、共重合体1と、残留モノマーおよびオリゴマー等の低分子量成分とが含まれた有機層に対して、大量の貧溶媒、たとえば、ヘキサンやメタノールを加えて、共重合体1を含むポリマーを凝固沈殿させる。ここで、低分子量成分としては、残留モノマー、オリゴマー、さらには、重合開始剤等が含まれる。次いで、ろ過を行い、得られた凝固物を、乾燥させる。これにより、低分子量成分が除去された共重合体1を主成分(主生成物)とするポリマーを得ることができる。
また、たとえば、前述のポリマーが、前述の式(5)で示される構造単位を含む場合には、下記式(5a)で示されるインデン系モノマーを用いることで、式(3)の構造単位を含むモノマー及びポリマーと同様の方法で製造することができる。
Figure 2020169304
(式(5a)中、R〜R11は式(5)と同じである。)
本樹脂組成物は、前述のフェノール樹脂と、ポリマーとを含むものであるが、ポリマーにおける前述した式(1)で示される構造単位が備える無水物部位に由来するカルボキシル基の少なくとも一部と、フェノール樹脂に備えられる、アルキルアミン化合物に由来するアミノ基の少なくとも一部とがアミド結合を介して結合していることが好ましい。
本樹脂組成物においては、フェノール樹脂が有するアミノ基が無水マレイン酸に付加することにより、以下の式(9)で示されるようなアミック酸が得られる。この式(9)におけるアミド結合に起因し、後述するように、式(1)で表される構造単位を含むポリマーとフェノール樹脂とがイミド結合を介して結合した構造を有する硬化物を形成しやすくなり、当該硬化物の耐熱性の向上に寄与することができる。
なお、上記無水マレイン酸に代えて、他の分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物を使用してもよい。
Figure 2020169304
(式(9)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
上記式(9)で示されるような化合物を含む樹脂組成物の製造方法は、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、上記式(1)で表される構造単位を含むポリマーとを混合する工程と、上記フェノール樹脂と上記ポリマーとを反応させる工程とを備える。なお、上記フェノール樹脂と上記ポリマーとの反応は未加熱であっても進行しうる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、上記式(1)で表される構造単位を含むポリマーとが独立して存在していてもよいが、上述のように、式(9)で示されるようなアミド結合を有する化合物を含むことが好ましい。これにより耐熱性等の効果を発現させることから、各種用途に供する前に、樹脂組成物を加熱等することにより、上述のアミド結合の含有割合を増加させることもできる。
この加熱の条件としては、たとえば、50〜100℃の範囲である。
また、たとえば、プロセス中において加熱工程を経るような用途に用いる場合は、前述のフェノール樹脂とポリマーとを常温下で混合し、加熱に供することなく用いることもできる。
この加熱においては、反応を促進する観点から適宜触媒を加えることができ、たとえば塩基触媒や酸触媒を加えることができる。
塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のヒドロキシ化合物、ピリジンや、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、ジメチルアニリン、ウロトロピン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物、酢酸ナトリウム等の金属塩、アンモニア等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてよいし、反応性をさらに高めるため、2種類以上の塩基触媒を組み合わせてもよい。
また、酸触媒としては、硫酸や塩酸などの鉱酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、フッ化ホウ素エーテラートなどのルイス酸などを用いることができる。
なお、上記無水マレイン酸に代えて、他の分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物を使用してもよい。
また、上述したように本樹脂組成物は、上記の式(1)で示される構造単位を含むポリマーの酸無水物部位と、フェノール樹脂に備えられるアミノ基とが反応してアミド結合を形成した化合物を含むものであってもよい。この場合、本樹脂組成物中において、当該ポリマーの酸無水物(たとえば無水マレイン酸)の全てが開環されていてもよいし、および/または、フェノール樹脂に備えられるアミノ基の全てがアミド結合に寄与していてもよい。これにより、本樹脂組成物の硬化物について、硬度という観点での耐久性を向上させることができる。
また、本樹脂組成物は、その硬化物について、柔軟性を維持しつつ、硬度を向上させる観点から、無機充填剤を含んでいてもよい。かかる無機充填剤の具体例としては、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物及びガラス繊維等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、無機充填剤の含有量は、作業性向上の観点から、本樹脂組成物全量に対し、好ましくは、35質量%以上65質量%以下であり、より好ましくは、40質量%以上60質量%以下である。
また、本樹脂組成物は、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。
また、本樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、硬化助剤、顔料等の添加剤を含有させることができる。
<湿式摩擦材>
本実施形態に係る湿式摩擦材は、上述した有機溶剤を含む本樹脂組成物を、基材に含浸または塗布し、これを焼成・硬化することにより製造される。上記基材の具体例としては、天然繊維、金属繊維、炭素繊維、化学繊維などが挙げられる。これらは、1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上が混合されたものであってもよい。
また、本実施形態に係る湿式摩擦材が湿式ペーパー摩擦材である場合、かかる湿式摩擦材は、一般に、有機溶剤と混合した本樹脂組成物を、金属繊維や炭素繊維及び化学繊維と、カシューダストなどの摩擦調整剤、珪藻土などを充填した紙基材へ含浸し、これを焼成・硬化することにより製造される。
本実施形態に係る湿式摩擦材は、上述した本樹脂組成物の硬化物を含むものである。本樹脂組成物の硬化物は、式(1)で表される構造単位を含むポリマーとフェノール樹脂とがイミド結合を介して結合した構造を有する。イミド結合を有する構造が形成されることにより、当該硬化物は高温下でも良好な機械強度を発揮すると考えられる。
上述したフェノール樹脂と、式(1)で表される構造単位を含むポリマーとがイミド結合を介して結合した構造は下記式(10)で表される。
Figure 2020169304
(式(10)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<フェノール樹脂Aの作製>
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000質量部、ヘキサメチレンテトラミン370質量部(フェノール1モルに対して0.25モル)、メタノール100質量部、アセトン100質量部および50%水酸化ナトリウム水溶液を20質量部添加し、95℃に加熱昇温させ3時間保持した。
その後、アセトン1200質量部を加え、40℃以下に冷却して、フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂A(液状レゾール型フェノール樹脂)2700質量部を得た。
得られた液状レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は300であり、分散度(Mw/Mn)は2.0であった。
また、得られた液状レゾール型フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量は15質量%であった。
<フェノール樹脂Bの作製>
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置中に、1000質量部のフェノールと、上記フェノールとのモル比が1となるように、740質量部のホルマリン水溶液(ホルマリン含有量:37質量%)と、20質量部のトリエチルアミンとを添加し、100℃で30分間撹拌しながら反応させた。次に、91kPaの減圧下、脱水を行いながら、系内の温度が65℃に達したところで、1000質量部のメチルエチルケトン(MEK)を加えて反応物を溶解させてから冷却した。こうすることで、2100質量部のフェノール樹脂B(液状の未変性レゾール型フェノール樹脂、不揮発分(固形分)含有量:45質量%)を得た。
得られた液状の未変性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は200であり、分散度(Mw/Mn)は2.5であった。
また、液状の未変性レゾール型フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量は0.2質量%であった。
<フェノール樹脂Cの作製>
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置中に、1000質量部のフェノールと、540質量部の桐油と、1質量部のp−トルエンスルホン酸とを添加し、60℃で30分間撹拌しながら反応させた。次に、上記フェノールとのモル比が1.2となるように、770質量部のホルマリン水溶液(ホルマリン含有量:37質量%)と、1質量部のトリエタノールアミンと、20質量部のアンモニア水溶液(アンモニア含有量:25質量%)とを添加し、100℃で2時間撹拌しながら反応させた。次に、91kPaの減圧下、脱水を行いながら、系内の温度が70℃に達したところで、280質量部のトルエンと、670質量部のメタノールとを加えて反応物を溶解させてから冷却した。こうすることで、2100質量部のフェノール樹脂C(液状の桐油変性(オイル変性)レゾール型フェノール樹脂、不揮発分(固形分)含有量:45質量%)を得た。
得られた液状の桐油変性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は300であり、分散度(Mw/Mn)は3.0であった。
また、液状の桐油変性レゾール型フェノール樹脂全体に対する窒素の含有量は0.3質量%であった。
<ポリマーA:ノルボルネン−無水マレイン酸共重合体の作製>
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置中に、706gの2−ノルボルネン(7.5mol)と、69gのジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート、0.3mol)とを計量し、メチルエチルケトンに溶解させた。次に、得られた溶解液に対して窒素バブリングを実施することにより、系内の溶存酸素を除去した。その後、撹拌しつつ80℃到達後、無水マレイン酸(735g、7.5mol)メチルエチルケトン溶液、n−ドデシルメルカプタン(243.2g、1.20mol)メチルエチルケトン溶液をそれぞれの口から1時間かけて逐次添加した。その後、8時間さらに熱処理を施した。得られたノルボルネン−無水マレイン酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は3200であり、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
<ポリマーB:インデン−無水マレイン酸共重合体の作製>
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置中に、870gのインデン(7.5mol)と、11.5gのジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート、0.05mol)とを計量し、メチルエチルケトンに溶解させた。次に、得られた溶解液に対して窒素バブリングを実施することにより、系内の溶存酸素を除去した。次いで、溶解液を撹拌しながら加熱して70℃に到達したことを確認後、メチルエチルケトンに溶解させた735gの無水マレイン酸(7.5mol)と、メチルエチルケトンに溶解させた20.2gのn−ドデシルメルカプタン(0.10mol)とを、それぞれの口から5時間掛けて逐次添加し、添加後さらに2時間熱処理を施した。こうすることで、インデン−無水マレイン酸共重合体を得た。なお、得られたインデン−無水マレイン酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は19,000であり、分散度(Mw/Mn)は2.1であった。
<ポリマーC:スチレン−無水マレイン酸共重合体>
スチレン−無水マレイン酸共重合体として、Cray ValleyUSA,LLC社製のSMA−1000−Pを準備した。
かかるスチレン−無水マレイン酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は3600であり、分散度(Mw/Mn)は2.3であった。
<湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の作製>
(実施例1)
1550質量部のフェノール樹脂Aと、300質量部のポリマーAとを、250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加し、その後、メチルエチルケトンをさらに添加することにより樹脂成分の含有量が50質量%となるように調整し、実施例1の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
実施例1の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂A、ポリマーAの含有率は、それぞれ、70質量%、30質量%であった。
(実施例2)
1100質量部のフェノール樹脂Aおよび500質量部のポリマーAを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて実施例2の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
実施例2の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂A、ポリマーAの含有率は、それぞれ、50質量%、50質量%であった。
(実施例3)
650質量部のフェノール樹脂Aおよび700質量部のポリマーAを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて実施例3の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
実施例3の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂A、ポリマーAの含有率は、それぞれ、30質量%、70質量%であった。
(実施例4)
1100質量部のフェノール樹脂Aおよび500質量部のポリマーBを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて実施例4の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
実施例4の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂A、ポリマーBの含有率は、それぞれ、50質量%、50質量%であった。
(実施例5)
1100質量部のフェノール樹脂Aおよび500質量部のポリマーCを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて実施例5の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
実施例5の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂A、ポリマーCの含有率は、それぞれ、50質量%、50質量%であった。
以上説明した実施例1〜5の各湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂Aと上記式(1)で表される構造単位を含むポリマーとを単独で含む他に、上記式(1)で表される構造単位の備える酸無水物部位に由来するカルボキシル基の一部と、フェノール樹脂Aに備えられる、アルキルアミン化合物に由来するアミノ基の一部とがアミド結合を介して結合している化合物を含むことを確認した。
(比較例1)
2220質量部のフェノール樹脂Bを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて比較例1の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
比較例1の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂Bの含有率は、100質量%であった。
(比較例2)
2220質量部のフェノール樹脂Aを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて比較例2の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
比較例2の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂Aの含有率は、100質量%であった。
(比較例3)
1100質量部のフェノール樹脂Cおよび500質量部のポリマーAを250質量部のメチルエチルケトン溶液に添加したことを除き、実施例1と同様な手順にて比較例3の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を得た。
比較例3の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の固形分に対するフェノール樹脂C、ポリマーAの含有率は、それぞれ、50質量%、50質量%であった。
Figure 2020169304
(引張強度測定)
以下の条件にて熱処理前後での引張強度を測定した。
(1)120mm×10mm×厚さ1mmのアラミド繊維基材に上記湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を含浸させてから、190℃のオーブンで30分間乾燥硬化させることで、湿式摩擦材(含浸紙)を試験片として得た。
(2)引張強度試験機を用いて、JIS K6911に準じて、25℃、引張速度1mm/分の条件で引張強度S1を測定する。
(3)250℃の環境下に30分載置した後、再度、引張強度試験機を用いて、JIS K6911に準じて、25℃、引張速度1mm/分の条件で引張強度S2を測定する。
得られた引張強度S1、S2を用いて、S2−S1/S1×100で算出される引張強度変化率(%)を算出した。
表1に示すように、実施例1〜5の湿式摩擦材は、250℃の熱処理後も引張強度が低下せず、耐熱性に優れることが確認された。これに対して、比較例1〜3の湿式摩擦材では250℃の熱処理により引張強度が大幅に低下した。
以上のように、実施例1〜5の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物は硬化物としたときの耐熱性が優れることが確認された。
実施例1〜5の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を化学繊維などの基材に含浸させたり、実施例1〜5の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物に無機充填剤を含めることにより、高い信頼性の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物を作製することができる。

Claims (11)

  1. フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、
    下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、
    を含む、湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
    Figure 2020169304
    (式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
  2. 前記式(1)で表される構造単位の備える酸無水物部位に由来するカルボキシル基の一部と、前記フェノール樹脂に備えられる、前記アルキルアミン化合物に由来するアミノ基一部とがアミド結合を介して結合している化合物をさらに含む、請求項1に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
  3. 前記化合物が下記式(9)で表される構造単位を有する、請求項2に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
    Figure 2020169304
    (式(9)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
  4. 前記ポリマーが下記式(7)で示される構造を有する共重合体である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
    Figure 2020169304
    (式(7)中、l、pおよびmは、ポリマー中におけるモル含有率を示し、かつ、l+p+m≦1、0≦l<1、0≦p<1、および0<m<1の条件を満たし、nおよびqはそれぞれ独立して0、1または2であり、R〜RおよびR13〜R16はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基であり、R13、R14、R15およびR16から選択される1または2以上がアルコール性水酸基を有する有機基であり、Aは下記式(2a)、(2b)、(2c)または(2d)により示される構造単位であり、複数のAのうち、下記式(2c)により示される構造単位を1以上含む。)
    Figure 2020169304

    (式(2a)および式(2b)中、R17、R18およびR19は、それぞれ独立して炭素数1〜30の有機基である。)
  5. 前記フェノール樹脂全体に対する窒素含有量が、3〜30質量%である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
  6. 前記アルキルアミン化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
  7. 前記フェノール樹脂の含有量は、前記ポリマー100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
  8. 前記フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上100000以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
  9. 下記式(9)で表される構造単位を有する化合物を含む、
    湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物。
    Figure 2020169304
    (式(9)中、Rはフェノール樹脂に由来する原子団であり、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
  10. 請求項2に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法であって、
    フェノール類とアルキルアミン化合物との反応物であるフェノール樹脂と、下記式(1)で表される構造単位を含むポリマーとを混合する工程と、
    Figure 2020169304
    (式(1)中、Rx、Ryは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜3の有機基を示す。)
    前記フェノール樹脂と前記ポリマーとを反応させる工程と、
    を備える湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の製造方法。
  11. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用フェノール樹脂組成物の硬化物を含む、湿式摩擦材。
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