(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る発振装置10の構成を示すブロック図である。図2は、図1の誤差周波数検出部12の構成を示すブロック図である。図3は、図1の補正信号発生部14と信号合成部16の構成を示すブロック図である。
第1実施形態に係る発振装置10は、発振周波数が制御不可である発振器11と、発振器11の発振信号LS1(以下、一次信号ともいう)を、一次信号LS1の周波数f1の所定周波数に対する差に応じて周波数変換し、二次信号LS2を発生する二次信号発生部20とを有する。発振周波数が制御不可である発振器11とは、電圧に応じて発振周波数を可変可能なVCO(Voltage-Controlled Oscillator:電圧制御発振器)等ではなく、典型的にはSAW発振器である。以下、発振周波数が制御不可な発振器11はSAW発振器11と記載する。なお、発振周波数が制御不可である発振器11は、サファイア、ダイヤモンド等を振動子とする発振器であってもよい。
既に述べたように、SAW発振器11から出力される一次信号の周波数f1は物理的な衝撃等の種々の要因により、予め決められているSAW発振器11の固有の周波数f0に対してその周波数f0の0.01%程度の範囲内で変動する(式(1))。ここでは、SAW発振器11の固有周波数(公称周波数)f0に対する、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1の誤差周波数をferrと表記する。理想的には、誤差周波数ferrはゼロである。
f1=f0+ferr (1)
これに対して、式(2)に示すように、目標周波数ftgtは、固有周波数f0に対して周波数fsシフトした周波数である。周波数fs(以下、シフト周波数fsともいう)は、好適にはSAW発振器11から出力された一次信号の周波数f1の±5%程度の範囲から選択された周波数である。換言すると、SAW発振器11は、目標周波数ftgtが固有周波数f0から固有周波数f0の±5%程度の範囲に収まる発振器が使用される。なお、目標周波数ftgtは固有周波数f0であってもよい。
ftgt =f0+fs (2)
二次信号発生部20は、SAW発振器11の一次信号LS1に対してフィードフォワード処理を実行し、一次信号LS1の周波数f1又はそれに応じた周波数の基準周波数frefに対する誤差周波数ferrを検出し、その誤差周波数ferrに応じて一次信号LS1から目標周波数ftgtの二次信号LS2を発生する。
二次信号発生部20は、一次信号LS1の周波数f1又はそれに応じた周波数の、SAW発振器11の固有周波数f0に対する誤差周波数ferrを検出する誤差周波数検出部12、誤差周波数ferrに応じた周波数の補正信号LScorを発生する補正信号発生部14、一次信号LS1に補正信号LScorを合成する信号合成部16、及び信号合成部16の後段に設けられる、目標周波数ftgtを中心とした通過帯域を有するBPF18を有する。誤差周波数検出部12と補正信号発生部14とは、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)等のデジタル信号処理を行うためのマイクロプロセッサに実装される。なお、DSPに代えてCPU(Central Processing Unit)などを用いるような構成としてもよい。ただし、発振装置10は一次信号LS1に対するフィードフォワード処理がなされるため、誤差周波数検出部12と補正信号発生部14とには高速な処理が求められる。それに対応するためにDSPを用いることが好ましい。
誤差周波数検出部12は、アナログーデジタル変換部(ADC)121、乗算器122、NCO(Numerically Controlled Oscillator)123、基準周波数出力部124、ローパスフィルタ(LPF)125、及び誤差周波数演算部126を有する。誤差周波数検出部12による誤差周波数ferrの算出には、より具体的には、基準周波数frefのN倍(Nは任意の数)が固有周波数f0となる、あるいは、基準周波数frefの周波数の1/Nが固有周波数f0となる、といったように、基準周波数frefを利用する。
ADC121は、SAW発振器11から出力される一次信号LS1をデジタル一次信号LS1´に変換する。なお、SAW発振器11の固有周波数f0が後述の基準周波数frefより高いため、ADC121はアンダーサンプリングにより一次信号LS1をデジタル一次信号LS1´に変換することを想定する。
基準周波数出力部124は、典型的には、基準周波数frefの波形を示すデジタル基準信号LSrefを発生する。デジタル基準信号LSrefは、例えば水晶発振器の発振信号等をデジタル変換した信号である。基準周波数出力部124により発生されたデジタル基準信号LSrefはNCO123に入力される。なお、先に述べたように、発振装置10は、無線送受信回路において用いられるローカル信号を得ることを目的としている。そのため、発振装置10の二次信号LS2の目標周波数ftgtは、数百メガヘルツから数ギガヘルツといった、高い周波数帯である。一方で、基準周波数frefは、目標周波数ftgtよりも低い、数十メガヘルツ程度でよい。数十メガヘルツ程度であれば、水晶発振器により基準周波数frefの発振信号を安定して出力することができる。
NCO123は乗算器122とともに、ADC121により変換されたデジタル一次信号LS1´に対してPLL回路を構成する。乗算器122は、デジタル一次信号LS1´に対してNCO123の出力信号を乗算する。乗算器122の出力信号は、NCO123に帰還されるとともに、LPF125を介して誤差周波数演算部126に入力される。これにより、NCO123は、基準周波数frefにより動作し、デジタル一次信号LS1´の周波数と位相とを表す周波数信号を出力する。NCO123は基準周波数frefにより動作し、発振器出力の周波数は基準周波数を元に検出される。
LPF125は、乗算器122の出力信号に含まれる高い周波数のノイズを除去するか、又は減衰する。一般的に、PLL回路のループ帯域はできるだけ広いほうが好ましい。ループ帯域が広いほどNCO123は忠実にSAW発振器11の出力に追従するが、その一方で高いオフセット周波数にてノイズを生じる。従来の位相同期回路でも耐衝撃性を高めるためにループ帯域を広くすると高いオフセット周波数でノイズを生じる。ただし、従来の位相同期回路はフィードバック制御係であり、LPF挿入により制御が不安定になるため、高いオフセット周波数のノイズを除去するためのLPFを挿入することは難しい。
誤差周波数演算部126は、デジタル基準信号とデジタル一次信号とに基づいて、誤差周波数ferrを演算する。具体的には、誤差周波数演算部126は、デジタル基準信号とデジタル一次信号に基づいて、一次信号LS1の周波数f1の値を特定し、固有周波数f0の値に対して、特定した周波数の値を減算する。それにより、誤差周波数ferrが演算される。式(3)に示すように、誤差周波数ferrは、SAW発振器11の固有周波数f0とSAW発振器11から実際に出力された一次信号の周波数f1との差である。
ferr=f0−f1 (3)
また、誤差周波数演算部126は、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて、補正周波数fcorを演算する。なお、誤差周波数演算部126による補正周波数fcorの演算処理は、後述の補正信号発生部14にて行われてもよい。シフト周波数fsは、目標周波数ftgtに対するSAW発振器11の固有周波数f0の周波数差を表す。式(4)に示すように、補正周波数fcorは、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとの和で表せる。補正周波数fcorは、目標周波数ftgtに対するSAW発振器11から実際に出力された一次信号LS1の周波数の周波数差を表す。誤差周波数ferrは固有周波数f0の0.01%程度の範囲内であり、シフト周波数fsは周波数f0の5%程度の範囲内である。例えば、固有周波数f0が1ギガヘルツ程度のとき、補正周波数fcorは、数十メガヘルツ程度である。
fcor=ferr+fs=(f0−f1)+(ftgt−f0)=ftgt−f1 (4)
補正信号発生部14は、基準周波数出力部141、デジタル補正信号発生部143及びデジタルーアナログ変換部(DAC)145を有する。典型的には、補正信号発生部14の基準周波数出力部141は、誤差周波数検出部12の基準周波数出力部124と共用される。実際には、図24に示すように、補正信号発生部14の基準周波数出力部141と誤差周波数検出部12の基準周波数出力部124とを共通化した基準周波数出力部19が、誤差周波数検出部12と補正信号発生部14とが実装されるDSPのクロック端子に接続される。基準周波数出力部19で発生された基準周波数のデジタル基準信号(クロック)が、DSPに実装されている各構成要素に供給される。
デジタル補正信号発生部143は、誤差周波数ferrに応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号LScorを発生する。SAW発振器11の固有周波数f0が目標周波数ftgtに対してシフトしている場合、デジタル補正信号発生部143は、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorの波形を示すデジタル補正信号LScorを発生する。DAC145は、デジタル補正信号LScorをアナログ補正信号LScor´に変換する。
デジタル補正信号発生部143は、典型的にはNCOからなる。デジタル補正信号発生部143は、基準周波数frefにより駆動し、補正周波数fcorに応じたデジタル補正信号LScorを発生する。デジタル補正信号発生部143は、2つの出力端子を備える。デジタル補正信号発生部143は補正周波数fcorに応じた、位相が90度異なる2つの正弦波をそれぞれ示すデジタル補正信号LScor1、LScor2を出力する。
DAC145は、ここでは2つのDAC146,147から構成される。DAC146は、デジタル補正信号LScor1をアナログ補正信号LScor1´に変換する。DAC147は、デジタル補正信号LScor2をアナログ補正信号LScor2´に変換する。
信号合成部16は、90度移相器161と乗算器163、165と加算器167とを有する。信号合成部16は、典型的には直交変調器もしくはIQ変調器で構成される。90度移相器161は、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の位相を90度変化させた一次信号LS11を発生する。乗算器163は一次信号LS1に対してDAC146から出力されたアナログ補正信号LScor1´を乗算し、乗算信号LS21を発生する。乗算器165は、位相が90度変化された一次信号LS11に対してDAC147から出力されたアナログ補正信号LScor2´を乗算し、乗算信号LS22を発生する。加算器167は、乗算器163から出力された乗算信号LS21と乗算器165から出力された乗算信号LS22とを加算し、二次信号LS2を発生する。
例えば、デジタル補正信号発生部143により、位相0度のデジタル補正信号LScor1と、位相90度のデジタル補正信号LScor2とが発生されるよう設定したとき、信号合成部16から出力された二次信号LS2は、図4に示すようなスペクトル分布を示す。すなわち信号合成部16から出力された二次信号LS2の周波数f2は、SAW発振器11の一次信号の周波数f1よりも、補正周波数fcor分低い周波数にシフトされる。一方、デジタル補正信号発生部143により、位相90度のデジタル補正信号LScor1と、位相0度のデジタル補正信号LScor2とが発生されるよう設定したとき、信号合成部16から出力された二次信号LS2は、図6示すようなスペクトル分布を有する。すなわち信号合成部16から出力された二次信号LS2の周波数f2は、SAW発振器11の一次信号の周波数f1よりも、補正周波数fcor分高い周波数にシフトされる。周波数f2は、目標周波数ftgtに等価である。
二次信号LS2の周波数を一次信号LS1の周波数f1よりも高い周波数にシフトさせるか、又は一次信号LS1の周波数f1よりも低い周波数にシフトさせるかは、補正周波数fcorの符号に従って選択される。補正周波数fcorの符号が負のとき、デジタル補正信号発生部143から信号合成部16にかけて実行される処理により、二次信号LS2の周波数f2は、一次信号LS1の周波数f1よりも低い周波数にシフトされる。補正周波数fcorの符号が正のとき、デジタル補正信号発生部143から信号合成部16にかけて実行される処理により、二次信号LS2の周波数f2は一次信号の周波数f1よりも高い周波数にシフトされる。
なお、図4、図6に示すように、信号合成部(IQ変調器)16の製造誤差等により、信号合成部16から目標周波数ftgt(=f2)以外の周波数の意図しない信号成分が出力される。周波数f1の信号は、SAW発振器11のローカルリーク信号である。周波数f1を挟んで目標周波数ftgt(=f2)の反対に洗われる信号は、信号合成部16から出力されるイメージ信号である。これらはSAW発振器11のスペクトル純度を劣化させる要因となる。そのため、これらの信号成分を減衰させるために、信号合成部16の後段にはBPF18が設けられる。BPF18は、目標周波数ftgtの信号成分を通過させ、目標周波数ftgt以外の他の周波数の信号成分を減衰させるための性能を備える。これにより、図4に示すような周波数スペクトル分布を有する二次信号LS2は、BPF18を通過させることで、図5に示すような周波数スペクトル分布を示す。同様に、図6に示すような周波数スペクトル分布を有する二次信号LS2は、BPF18を通過させることで、図7に示すような周波数スペクトル分布を示す。
第1実施形態のように、固有周波数f0を目標周波数ftgtに対して周波数シフトさせたSAW発振器11を用い、補正周波数fcorを数十メガヘルツ程度と大きくすることで、二次信号LS2の周波数f2(目標周波数ftgt)をローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とに対して離間させ、これにより誘電体共振タイプのバンドパスフィルタで容易にローカルリークとイメージ周波数を除去できる。
なお、ローカルリーク信号の信号強度とイメージ信号の信号強度とが二次信号LS2の信号強度に対して十分小さい場合や、ローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とが二次信号LS2の周波数f2に対して十分離間されているような場合など、信号合成部16から発生されるローカルリーク信号とイメージ信号とを無視してもよい場合は、BPF18は省略することができる。
図8は、二次信号発生部20によるSAW発振器11から出力された一次信号LS1の補正処理を示すフローチャートである。ADC121により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1がデジタル一次信号LS1´に変換される(S11)。デジタル一次信号LS1´と基準周波数信号LSrefとに基づいて、誤差周波数ferrが検出される(S12)。誤差周波数ferrに応じた、具体的には誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorの波形を示すデジタル補正信号LScorがデジタル補正信号発生部143により発生される(S13)。DAC145により、デジタル補正信号LScorがアナログ補正信号LScor´に変換される(S14)。信号合成部16により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1に対して、アナログ補正信号LScor´が合成される(S15)。S15の処理の結果、二次信号発生部20により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1から二次信号LS2が発生される。二次信号LS2は、目標周波数ftgtを持つものとなる。
以上のようにして、第1実施形態に係る発振装置10は、SAW発振器11から出力された一次信号LS1に補正周波数fcorの補正信号を合成し、それにより目標周波数ftgtを持つ二次信号LS2を出力することができる。第1実施形態に係る二次信号発生部20による処理により、SAW発振器11のもつスペクトル純度を活かしながら周波数を安定化させることができる。
また、第1実施形態係る発振装置10の二次信号発生部20は、SAW発振器11のような周波数を意図して可変させることが困難な発振器の発振周波数を、シフト周波数fsを変化させることで、意図して可変することを実現する回路といえる。その周波数可変幅が大きいとき、SAW発振器11の発振信号のスペクトル純度が補正信号発生部14で発生される補正信号により悪化する。そのため、シフト周波数fsは、発振器の固有周波数の±5%程度の範囲が適用である。しかしながら、シフト周波数fsは、この範囲内でしか可変させてはいけない訳ではなく、SAW発振器11のスペクトル純度を劣化させてもよいのであれば、上記範囲よりも大きく可変させることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態に係る発振装置10を組み込んだ無線送受信回路に関する。第2実施形態に係る無線送受信回路は、発振装置10により発生された二次信号とベースバンド出力信号とを乗算し、送信信号を生成し、発振装置10により発生された二次信号と受信信号とを乗算しベースバンド入力信号を生成する。
図9は、第2実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る無線送受信回路はアンテナ70とRFフロントエンド回路30とベースバンド処理部40とを備える。RFフロントエンド回路30は、アンテナ70によって受信した受信信号RSrcvをベースバンド入力信号BSinに変換する。また、RFフロントエンド回路30は、ベースバンド出力信号BSoutをアンテナ70によって送信する送信信号RSsndに変換する。ベースバンド処理部40は、ベースバンド入力信号BSinを復調しシステム71への入力データDinを生成する。また、ベースバンド処理部40は、システム71から出力された出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを生成する。
RFフロントエンド回路30は、一次信号を出力するSAW発振器11と、一次信号LS1から二次信号LS2を発生する二次信号発生部20と、アンテナ70による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ39と、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)31と、BPF31通過後の受信信号RSrcvに対して二次信号LS2nを乗算し、ベースバンド入力信号BSinを生成する乗算器33と、ベースバンド入力信号BSinをデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部(ADC)35と、ベースバンド出力信号BSoutをアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部(DAC)34と、二次信号LS2とアナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSoutとを乗算し、送信信号RSsndを生成する乗算器32とを有する。なお、第1実施形態で説明したように、二次信号LS2の周波数f2は目標周波数ftgtに等価である。
ベースバンド処理部40は、ベースバンド入力信号BSinを復調し、システム71への入力データDinを出力する復調部41と、システム71からの出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを出力する変調部42とを有する。システム71は、無線通信によるデータの送受信を要求する、任意のシステムである。例えば、第2実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話やスマートフォン端末などに用いる場合には、システム71は、OS(Operating System、基本ソフトウェア)による入出力や、それを介した種々のアプリケーションプログラムであり得る。あるいは、第2実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話等の基地局に用いる場合には、それを管理するシステムであり得る。
図10は、第2実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図10では、アンテナ70により受信した受信信号RSrcvを復調し、入力データDinを得るまでの処理手順が記されている。受信信号RSrcvにBPF31を適用することにより、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号のみが抽出される(S21)。乗算器33によってBPF31通過後の受信信号RSrcvに対して二次信号LS2が乗算され、ベースバンド入力信号BSinが生成される(S22)。ベースバンド入力信号BSinがデジタル信号に変換される(S23)。ベースバンド入力信号BSinが復調され、システム71への入力データDinが生成される(S24)。以上のようにして、第2実施形態に係る無線送受信回路によって、受信信号RSrcvの復調処理が行われ、システム71への入力データDinを得ることができる。
図11は、第2実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図11では、システム71の出力データDoutを変調し、送信信号RSsndを得るまでの処理手順が記されている。システム71から出力された出力データDoutが変調され、ベースバンド出力信号BSoutが生成される(S31)。DAC34によってベースバンド出力信号BSoutがアナログ信号に変換される(S32)。アナログ信号へと変換されたベースバンド出力信号BSoutと、発振装置10から出力された二次信号LS2とが乗算器32により乗算され、アンテナ70からの送信信号RSsndが生成される(S33)。以上のようにして、第2実施形態に係る無線送受信回路によって、システム71からの出力データDoutの変調処理が行われ、送信信号RSsndを得ることができる。なお、図10の受信処理と、図11に示す送信処理は、送受信切り替えスイッチ39を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
無線送受信回路において、受信信号をベースバンド入力信号にダウンコンバートするために受信信号に対して乗算されるローカル信号のスペクトル純度が低い場合、ダウンコンバートによりビットエラー率が上がってしまう。同様に、ベースバンド出力信号を送信信号にアップコンバートするためにベースバンド出力信号に対して乗算されるローカル信号のスペクトル純度が低い場合、アップコンバートによりビットエラー率が上がってしまう。第2実施形態に係る無線送受信回路のように、第1実施形態に係る発振装置10をローカル信号の発生源として用いることで、スペクトル純度が高く、周波数が安定したローカル信号によりアップコンバート/ダウンコンバート処理を行うことができるため、アップコンバート/ダウンコンバート処理が要因となるビットエラー率の低下を抑えられる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る無線送受信回路は第2実施形態に係る無線送受信回路の回路構成の規模を縮小したものである。図12は、第3実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。なお、同実施形態において、第2実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。第3実施形態に係る無線送受信回路は、アンテナ70とRFフロントエンド回路50とベースバンド処理部60とを備える。RFフロントエンド回路50は、SAW発振器11と、送受信切り替えスイッチ39と、BPF31と、乗算器33と、ADC35と、DAC34と、乗算器32とを有する。ベースバンド処理部60は復調部41と変調部42とを有する。RFフロントエンド回路50は、第2実施形態のRFフロントエンド回路30と同様に動作する。ベースバンド処理部60は、第2実施形態のベースバンド処理部40と同様に動作する。
第3実施形態に係る無線送受信回路において、第2実施形態に係る無線送受信回路の二次信号発生部20の機能がベースバンド処理部60に組み込まれている。ベースバンド処理部60は、SAW発振器11の固有周波数f0とSAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1との誤差である、誤差周波数ferrを検出する誤差周波数検出部43と、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorに応じたデジタル補正信号LScorを生成するデジタル補正信号発生部45と、ベースバンド入力信号BSinに対してデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部46と、ベースバンド出力信号BSoutにデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部47とを備える。デジタル信号合成部46、47は、第1実施形態の信号合成部16をデジタル演算で実現したものであり、乗算器とフィルタとで構成される。
式(5)、(6)に示すように、デジタル信号合成部46により、ベースバンド入力信号BSinに対してデジタル補正信号LScorが乗算された信号には、ベースバンド入力信号BSinの周波数とデジタル補正信号LScorの周波数との差で表される周波数成分と和で表される周波数成分との2つの周波数成分が含まれる。2つの周波数成分のうち一方が、フィルタにより除去されるか、又は信号レベルが低下される。
BSin−LScor (5)
BSin+LScor (6)
デジタル信号合成部47は、ベースバンド出力信号BSoutの周波数を補正周波数fcorだけ低い周波数にシフトさせるか、又は補正周波数fcorだけ高い周波数にシフトさせる。これにより、RFフロントエンド回路50において、ベースバンド出力信号BSoutに対して一次信号LS1を乗算した際に、誤差周波数ferrが補正され、さらに必要であればシフト周波数が補正された送信信号RSsndを得ることができる。
図13は、第3実施形態に係る無線送受信回路による誤差検出処理の手順を示すフローチャートである。図13のフローチャートでは、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1と固有周波数f0との間に発生する誤差を検出する手順を記している。誤差周波数検出部43により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1がデジタル変換される(S41)。誤差周波数検出部43により、目標周波数ftgtに対するデジタル信号に変換された一次信号LS1の周波数f1の周波数差fcorが検出される(S42)。周波数差fcorが補正信号の周波数(補正周波数)となる。デジタル補正信号発生部45により、周波数差fcorに応じた周波数の正弦波を示すデジタル補正信号LScorが生成される(S43)。なお、第3実施形態に係る無線送受信回路による誤差検出処理は、第1実施形態に係る発振装置10の二次信号発生部20により、一次信号からデジタル補正信号を生成するまでの処理と同様である。このようにして生成したデジタル補正信号LScorは、後に説明する復調処理及び変調処理における補正処理に利用する。
図14は、第3実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図14では、アンテナ70により受信した受信信号RSrcvを復調し、入力データDinを得るまでの処理手順が記されている。受信信号RSrcvにBPF31を適用することにより、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号のみが抽出される(S51)。乗算器33によってBPF適用後の受信信号RSrcvと一次信号LS1とが合成され、ベースバンド入力信号BSinが生成される(S52)。なお、一次信号LS1を受信信号RSrcvのダウンコンバートに用いているため、この時点においては、ベースバンド入力信号BSinには、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間に生じる誤差成分が含まれている。ベースバンド入力信号BSinがデジタル信号に変換される(S53)。デジタル信号合成部46により、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSinとデジタル補正信号LScorとが合成される(S54)。これにより、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間に生じる誤差成分が補正される。デジタル信号合成部46から出力されたデジタル信号が復調部41により復調され、システム71への入力データDinが生成される(S55)。
図15は、第3実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図15では、システム71の出力データDoutを変調し、送信信号RSsndを得るまでの処理手順が記されている。システム71から出力された出力データDoutが変調され、ベースバンド出力信号BSoutが生成される(S61)。なお、この時点においては、ベースバンド出力信号BSoutには、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間の誤差周波数が含まれていない。デジタル信号合成部47により、ベースバンド出力信号BSoutとデジタル補正信号LScorとが合成される(S62)。これにより、ベースバンド出力信号BSoutに誤差周波数に応じた補正信号が含められる。具体的には、一次信号LS1の周波数f1が目標周波数ftgtよりも小さかった場合(ftgt>f1)には、デジタル信号合成部47の乗算処理により、ベースバンド出力信号BSoutの周波数は補正周波数fcorだけ高い周波数にシフトされる。一次信号LS1の周波数f1が目標周波数ftgtよりも大きかった場合(ftgt<f1)には、デジタル信号合成部47の乗算処理により、ベースバンド出力信号BSoutの周波数は補正周波数fcorだけ低い周波数にシフトされる。
DAC34によってベースバンド出力信号BSoutがアナログ信号に変換される(S63)。アナログ信号へと変換されたベースバンド出力信号BSoutに対して一次信号LS1が乗算器32により乗算され、アンテナ70からの送信信号RSsndが生成される(S64)。一次信号LS1に含まれる誤差周波数が、ステップS62においてベースバンド出力信号BSoutに含められたデジタル補正信号により補正され、送信信号RSsndは誤差の影響を受けないものとなる。なお、図14の受信処理と、図15に示す送信処理は、送受信切り替えスイッチ39を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
第3実施形態に係る無線送受信回路は、二次信号発生部20の機能をベースバンド処理部60に組み込んだ構成であっても、第2実施形態に係る無線送受信回路と同様の効果を得られる。第3実施形態に係る無線送受信回路は、第2実施形態に係る無線送受信回路に用いられた発振装置10のアナログ処理部とデジタル処理部とを分離し、それぞれをRFフロントエンド回路50とベースバンド処理部60とに組み込んだ。このような構成にすることで、発振装置10においてデジタル補正信号をアナログ信号に変換するDACと、ベースバンド出力信号BSoutをアナログ信号に変換するためのDACとを単一のDACで兼用させることができる。それにより、第3実施形態に係る無線送受信回路は、第2実施形態に比べて、回路の小規模化や省電力化ができる。
また、ベースバンド処理部60はDSPによって実現され、デジタル演算を行う。そのため、ベースバンド処理部60内に誤差補正用のデジタル信号合成部46、47などの機能の追加を、DSP内の論理的な処理ブロックの追加によって簡単に実現できる。そのため、アナログ素子としての乗算器などを追加する場合と比較して、回路規模や消費電力、生産コストの増加を抑えることができる。さらに、乗算器32、33、ADC35、DAC34、復調部41、変調部42、誤差周波数検出部43などを単一のIC(Integrated Circuit、集積回路)として構成すれば、無線送受信回路を更に小規模化することができる。なお、第3実施形態に係る無線送受信回路は携帯電話やスマートフォン端末などのような端末装置から、携帯電話等の基地局のような設備まで、種々の無線通信機器に用いることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る無線送受信回路は、2系統の送受信回路を備え、MIMO技術に対応する。
図16は、第4実施形態に係る無線送受信回路を示すブロック図である。なお第4実施形態において、第2、第3実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。図16に示すように、第4実施形態に係る無線送受信回路は、無線信号の送受信を行う2つのアンテナ400、500と、RFフロントエンド回路200と、ベースバンド処理部300とを有する。RFフロントエンド回路200は、アンテナ400,500で受信した受信信号RSrcv1、RSrcv2をベースバンド入力信号BSin1、BSin2にそれぞれ変換する。また、RFフロントエンド回路200は、ベースバンド出力信号BSout1、BSout2をアンテナ400、500によって送信する送信信号RSsnd1、RSsnd2にそれぞれ変換する。ベースバンド処理部300は、ベースバンド入力信号BSin1、BSin2を復調し、それぞれのデータを統合することによりシステム600への入力データDinを生成する。ベースバンド処理部300は、システム600から出力された出力データDoutを分割し、分割したそれぞれのデータを変調することにより、ベースバンド出力信号BSout1、BSout2を生成する。
RFフロントエンド回路200において、SAW発振器210は第1、第2送受信系統で共用される。RFフロントエンド回路200の第1送受信系統は、アンテナ400による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ201と、受信信号RSrcv1より必要な周波数帯の信号を抽出するBPF271と、BPF271通過後の受信信号RSrcv1に対してSAW発振器210から出力された一次信号LS1を乗算し、ベースバンド入力信号BSin1を出力する乗算器231と、ベースバンド入力信号BSin1をデジタル信号に変換するADC251と、ベースバンド出力信号BSout1をアナログ信号に変換するDAC261と、アナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSout1に対して一次信号LSoutを乗算する乗算器241とを有する。
同様に、RFフロントエンド回路200の第2送受信系統は、アンテナ500による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ202と、受信信号RSrcv2より必要な周波数帯の信号を抽出するBPF272と、BPF272通過後の受信信号RSrcv2に対して一次信号LS1を乗算し、ベースバンド入力信号BSin2を出力する乗算器232と、ベースバンド入力信号BSin2をデジタル信号に変換するADC252と、ベースバンド出力信号BSout2をアナログ信号に変換するDAC262と、アナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSout2に対して一次信号LS1を乗算する乗算器242とを有する。
ベースバンド処理部300において、デジタル補正信号を生成するための誤差周波数検出部330とデジタル補正信号発生部340とは、第1、第2送受信系統で共用される。誤差周波数検出部330は、SAW発振器210の固有周波数f0に対する一次信号LS1の周波数f1の周波数誤差である、誤差周波数ferrを検出し、さらに誤差周波数ferrにシフト周波数を加算して補正周波数fcorを算出する。デジタル補正信号発生部340は、補正周波数fcorに応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号LScorを生成する。生成されたデジタル補正信号LScorは、後に説明する復調処理及び変調処理における補正処理に利用される。
具体的には、ベースバンド処理部300の第1送受信系統は、ベースバンド入力信号BSin1を復調し、入力データDin1を生成する復調部311と、出力データDout1を変調し、ベースバンド出力信号BSout1を生成する変調部321と、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSin1にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部361と、ベースバンド出力信号BSout1にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部371とを有する。
同様に、ベースバンド処理部300の第2送受信系統は、ベースバンド入力信号BSin2を復調し、入力データDin2を生成する復調部312と、出力データDout2を変調し、ベースバンド出力信号BSout2を生成する変調部322と、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSin2にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部362と、ベースバンド出力信号BSout2にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部372とを有する。
ベースバンド処理部300は、アンテナ400、500によって発生した混信による影響を取り除くために、復調部311、312によって復調された入力データDin1、Din2の入力を受け付け、それぞれの入力データから混信データを分離する混信データ分離部380と、混信データ分離部380から出力された混信による影響を排した入力データDin1、Din2を統合し、システム600への入力データDinを生成するデータ統合部390と、システム600からの出力データDoutを2つの出力データDout1、Dout2に分割するデータ分割部310とを有する。
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、RFフロントエンド回路200でSAW発振器210から出力される一次信号LS1の周波数を補正しない。目標周波数ftgtに対する一次信号LS1の周波数の周波数差を補正するデジタル補正信号LScorは、ベースバンド処理部300内において、復調処理前の信号と変調処理後の信号とにそれぞれ合成される。したがって、受信処理においては、一次信号の周波数を補正するための補正信号が、受信信号に対して一次信号が乗算され、ダウンコンバートされた後のベースバンド信号に対して乗算される。一方、送信処理においては、一次信号の周波数を補正するための補正信号が、一次信号が乗算され、アップコンバートされる前のベースバンド出力信号に対して乗算される。
図17は、第4実施形態に係る無線送受信回路のRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図17では、アンテナ400,500でRF信号を受信し、受信信号RSrcv1、RSrcv2を復調し、復調した受信信号RSrcv1、RSrcv2を統合し、入力データDinを得るまでの手順が記されている。
第1送受信系統により、アンテナ400によって受信した受信信号RSrcv1が入力データDin1に復調される(S71)。ステップS71の受信処理は、第3実施形態の図16を参照して説明した処理と同様の処理を、BPF271、乗算器231、ADC251、デジタル信号合成部361、復調部311を用いて行うものである。なお、ここでの復調処理は、図14を参照して説明したように、ベースバンド処理部300に入力されたベースバンド入力信号BSin1とデジタル補正信号LScorとを乗算した後に行われる。これにより、SAW発振器210から出力された一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの誤差に影響されず、入力データDin1を生成することができる。
第2送受信系統により、アンテナ500によって受信した受信信号RSrcv2が入力データDin2に復調される(S72)。この処理は、ステップS71の処理を、BPF272、乗算器232、ADC252、デジタル信号合成部362、復調部312を用いて行うものである。
入力データDin1、入力データDin2が混信データ分離部380にそれぞれ入力され、アンテナ400、500による混信の影響が排される(S73)。混信データ分離部380から出力された混信の影響が排された入力データDin1、入力データDin2がデータ統合部390により統合され、システム600への入力データDinが生成される(S74)。生成された入力データDinはシステム600に入力される。
図18は、第4実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図18では、システム600から出力された出力データDoutを分割、変調し、送信信号RSsnd1、RSsnd2を得るまでの手順が記されている。
データ分割部310により、システム600から出力された出力データDoutが第1送受信系統より出力するための出力データDout1と、第2送受信系統より出力するための出力データDout2へと分割される(S81)。第1送受信系統により、出力データDout1が送信信号RSsnd1に変調される(S82)。ステップS82の送信処理は、第3実施形態で図15を参照して説明した処理と同様の処理を、変調部321、デジタル信号合成部371、DAC261、乗算器241を用いて行うものである。なお、ここでの変調処理においては、図15を参照して説明したように、変調部322によって出力データDout2が変調された後に、その変調後の出力データDout2とデジタル補正信号LScorとを乗算することによって、ベースバンド出力信号BSoutに予め一次信号LS1の周波数f1を補正する補正信号成分を含めておく。これにより、ベースバンド出力信号BSoutとローカル発振器の出力としての一次信号LS1とを乗算した際に、誤差周波数を補正した上で、必要であれば周波数をシフトさせることができる。
第2送受信系統により、出力データDout2が送信信号RSout2に変調される(S83)。ステップS83は、ステップS82の処理が、変調部322、デジタル信号合成部372、DAC262、乗算器242を用いて行われるものである。図17の受信処理と図18の送信処理は、送受信切り替えスイッチ201,202を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
以上のように、第4実施形態に係る無線送受信回路を用いることにより、SAW発振器の高いスペクトル純度を用いることによる通信の大容量化に加え、複数の送受信系統を用いることによる通信の大容量化を図ることができる。第4実施形態においては2つの送受信系統を有する構成を例示したが、無線送受信回路が更に多くの送受信系統を備える構成としてもよい。これにより、通信容量をより大容量にすることができる。なお、第4実施形態に係る無線送受信回路は携帯電話やスマートフォン端末などのような端末装置から、携帯電話等の基地局のような設備まで、種々の無線通信機器に用いることができる。また、変調部321、322において位相の制御を行い、アンテナ400、500から電波を送信する方向や距離などを制御する、ビームフォーミングが可能な構成としてもよい。このような構成とすれば、第4実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話等の基地局設備に適用した場合にも、より効果的に電波を搬送することができる。
(第5実施形態)
第1実施形態に係る発振装置10では、目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることができる。目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることで、目標周波数ftgtのSAW発振器11を用いる場合に比べて、補正周波数fcorを意図的に大きくし、一次信号LS1と補正信号LScorとの合成後の二次信号LS2に含まれるローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とを目標周波数ftgtから離間させることができる。それにより、二次信号にローカルリーク信号とイメージ信号とが含まれた状態であっても、二次信号LS2の周波数スペクトルの純度の劣化を抑制することができる。また、安価なBPF18でも、二次信号LS2からローカルリーク信号とイメージ信号とを除去することが期待できる。このように、あえて目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることで、安価なBPF18を使用でき、又はBPF18を省略することができる。
しかしながら、第1実施形態に係る発振装置10は、目標周波数ftgtを可変可能なローカル発振器として使用することもできる。発振器から出力される信号の周波数と固有周波数との間の誤差を補正しなくてもよい場合、例えばそれほど高いスペクトル純度の発振信号が要求されない場合であれば、第1実施形態に係る発振装置10の構成は簡略化されてもよい。
図19は、第5実施形態に係る発振装置910の構成を示すブロック図である。第5実施形態に係る発振装置910は、発振周波数が制御不可である発振器911と二次信号発生部920とを有する。ここでは、発振周波数が制御不可である発振器911はSAW発振器とする。SAW発振器911は一次信号を出力する。二次信号発生部920は、SAW発振器911から出力された一次信号から二次信号を発生する。二次信号の周波数は、一次信号のそれとは異なる。
二次信号発生部920は、チャンネル信号出力部914と信号合成部916とを有する。チャンネル信号出力部914は、周波数の異なる複数のチャンネル信号を選択的に出力する。チャンネル信号出力部914は、第1実施形態の補正信号発生部14と同様の構成を備える。すなわち、チャンネル信号出力部914は、CPU等のシステムから指示されたチャンネルに応じた周波数とSAW発振器911の固有周波数との間の周波数差を示すデジタルチャンネル信号を生成し、生成したデジタルチャンネル信号をアナログチャンネル信号に変換する。信号合成部916は、SAW発振器911から出力された一次信号とチャンネル信号出力部914から出力されたアナログチャンネル信号とを合成し、二次信号を発生する。信号合成部916により発生された二次信号の周波数は、システムから指示されたチャンネルに対応する周波数を有する。
以上説明した第5実施形態に係る発振装置910により、発振周波数が制御不可であった発振器、例えばSAW発振器から出力される信号の周波数を意図した周波数にシフトすることができる。
なお、本実施形態において、スペクトル純度の高い信号を出力するSAW発振器11の特性を活かすために、シフト周波数fsは固有周波数f0の5%以内が理想的である。目標周波数ftgtがSAW発振器11の固有周波数f0の2倍、3倍・・であるとき、シフト周波数fsが固有周波数f0の5%よりも大きく、補正信号が支配的になってしまい、発振装置10から出力された二次信号のスペクトル純度が、発振装置10内のSAW発振器11から出力された一次信号のスペクトル純度に比べて大きく低下してしまう。しかしながら、目標周波数ftgtが固有周波数f0に対して大きく離間している場合であっても、SAW発振器11を含めたSAW発振ユニットを以下のように構成することで、SAW発振器11の特性を大きく劣化させることなく、かつ安定した周波数の出力信号を出力する発振装置10を提供することができる。
図20、図21、図22は、第1実施形態に係る発振装置の構成の他の第1、第2、第3例をそれぞれ示すブロック図である。もちろん、図20、図21,図22の構成は、他の実施形態に対してもそれぞれ適用することができる。
図20は、SAW発振器11が逓倍器51とともにSAW発振ユニットを構成する例である。逓倍器51は入力信号の周波数を逓倍率αで逓倍した周波数の出力信号を出力する。図20に示すように、逓倍器51は、図1の発振装置10のSAW発振器11の後段に配置され、SAW発振器11の出力信号の周波数を逓倍率αで逓倍して出力する。例えば、目標周波数ftgtが10GHz、SAW発振器11の固有周波数f0が1GHzであれば、10倍の逓倍器51を用いることで、SAW発振ユニットを固有周波数が10GHzの発振器として動作させることができる。もちろん、SAW発振ユニットの固有周波数は目標周波数ftgtに対してシフトされていても、そのシフト周波数は二次信号発生部20により補正することができる。そのため、目標周波数ftgtが10.1GHzであっても、固有周波数f0が1GHzのSAW発振器11と逓倍率αが10倍の逓倍器51とを組み合わせて使用することができる。SAW発振ユニットの出力信号のスペクトル純度は逓倍器51の逓倍率の増加に伴って劣化してしまう。しかしながら、逓倍器51に入力される信号(SAW発振器11の出力信号)のスペクトル純度が高い。そのため、図20に示す構成によれば、SAW発振ユニットの出力信号のスペクトル純度を、SAW発振器11の出力信号のそれに比べて大きく劣化させることなく、例えば水晶発振器を用いたPLL回路の出力信号のそれに比べて高くすることができる。
図21は、SAW発振器11がSAW発振器11と注入同期するVCO52とともにSAW発振ユニットを構成する例である。図21に示すように、VCO52は、図1の発振装置10のSAW発振器11の後段に配置される。具体的には、VCO52はSAW発振器11が実装された基板上に実装されるか、その配線の一部がSAW発振器11の出力端子に接続されるか、又はSAW発振器11と電磁結合する位置に配置される。これにより、VCO52はSAW発振器11と注入同期し、SAW発振器11の出力信号につられた周波数の一次信号を発生する。SAW発振器11には、目標周波数ftgtをN(整数)で除算した固有周波数f0で発振するものが用いられる。VCO52は、目標周波数ftgtで共振するように調整されている。例えば、目標周波数ftgtが10GHzであれば、1GHzで共振するSAW発振器11と10GHzで共振するように調整されたVCO52とを組み合わせることで、SAW発振ユニットを固有周波数が10GHzの発振器として動作させることができる。もちろん、固有周波数f0は目標周波数ftgtに対してシフトされていても、そのシフト周波数は二次信号発生部20により補正することができる。そのため、目標周波数ftgtが10.1GHzであっても、固有周波数f0が1GHzのSAW発振器11と10GHzで共振するように調整されたVCO52とを組み合わせて使用することができる。VCO52から出力される信号の位相雑音特性は、SAW発振器11の位相雑音特性に依存する。注入同期を積極的に活用することで、SAW発振ユニットはVCO52とSAW発振器11との両方の特性を備える。また、図21のSAW発振ユニットはPLL回路に比べて構成がシンプルであり、位相雑音を劣化させる要因となる位相比較器等が不要となる。そのため、図21に示す構成によれば、SAW発振ユニットの出力信号のスペクトル純度を、SAW発振器11の出力信号のそれに比べて大きく劣化させることなく、例えば水晶発振器を用いたPLL回路の出力信号のそれに比べて高くすることができる。
図22は、SAW発振器11が、位相比較器53、ループフィルタ54、VCO55及び分周器56とともにSAW発振ユニットを構成する例である。図22に示すSAW発振ユニットは、SAW発振器11を基準信号の発生源としたPLL発振回路である。SAW発振器11の基準信号とVCO55から出力され分周器56で分周された信号とが位相比較器53に入力され、これらの周波数差に応じたパルス信号がループフィルタ54に入力される。位相比較器53から出力されたパルス信号は、ループフィルタ54で直流電圧に変換され、VCO55に制御電圧として入力される。VCO55は入力された制御電圧に応じた周波数の信号を出力する。例えば、目標周波数ftgtが10GHz、SAW発振器11の固有周波数f0が1GHzであれば、1/10の分周器56を用いることで、SAW発振ユニットを固有周波数10GHzの発振器として動作させることができる。もちろん、SAW発振ユニットの固有周波数が目標周波数ftgtに対してシフトされていても、そのシフト周波数を二次信号発生部20により補正することができる。そのため、目標周波数ftgtが10.1GHzであっても、固有周波数f0が1GHzのSAW発振器11を基準信号の発生源としたPLL回路を発振器として使用することができる。基準信号の発生源として水晶発振器よりも高い周波数で共振するSAW発振器11を用いることで、例えば、分周器56の分周比を小さくすることができる。また、ループフィルタ54を省略することができるか、又は低いフィルタ性能のものにすることができる。つまり、図22に示すSAW発振ユニットは、水晶発振器を用いたPLL回路に比べて位相雑音の劣化要因となる位相比較器53、ループフィルタ54、分周器56のそれぞれの影響を抑制し、その結果、そのスペクトル純度を、SAW発振器11の出力信号のそれに比べて大きく劣化させることなく、例えば水晶発振器を用いたPLL回路の出力信号のそれに比べて高くすることができる。
また、本実施形態に係る発振装置10において、ADC121はアンダーサンプリング方式により一次信号をデジタル信号に変換する。しかしながら、ADC121がナイキスト・サンプリング方式で一次信号をデジタル信号に変換できるように発振装置10を構成してもよい。図23は、本発明の第1実施形態に係る発振装置の構成の他の第4例を示すブロック図である。図23に示すように、発振装置10はダウンコンバート用の信号を発生する発振器57と、一次信号に対してダウンコンバート用信号を乗算する第3乗算器58とをさらに備える。第3乗算器58は、ADC121の前段に配置され、一次信号をダウンコンバートする。第3乗算器58により低い周波数帯にダウンコンバートされた一次信号はADC121に入力される。ADC121以降のデジタル信号処理は、誤差周波数を検出するために行われる。一次信号のスペクトル純度が高いため、誤差周波数検出部12は直流成分も含めた全帯域を対象にデジタル信号処理を行うわけではなく、ダウンコンバート後の一次信号の中心周波数に近い周波数成分のみに対して処理を行う。したがって、ダウンコンバート用信号は、中心周波数から離れた周波数において雑音が多くても支障がない。すなわち、ダウンコンバート用信号には高いスペクトル純度は要求されない。したがって、発振器57には、PLL回路等の任意の発振器を適用することができる。本実施形態に係る発振装置10において、一次信号の周波数は数GHz〜数十GHzに及ぶことが想定される。例えば、図2の発振装置10において、周波数10GHzの一次信号をナイキスト・サンプリング方式でアナログ−デジタル変換するためには、ADC121には少なくとも20GHzの高い処理性能が求められる。一方、図23の発振装置10において、一次信号の周波数が10GHzであっても、周波数が9.9GHzのダウンコンバート用信号で一次信号を周波数が100MHzの信号にダウンコンバートすることで、ADC121は少なくとも200MHz程度の処理性能を備えるものであれば、ナイキスト・サンプリング方式で一次信号をデジタル信号に変換することができる。これにより、図2に示す構成に比べて、発振器と乗算器とが追加部品として必要となるが、アパーチャタイムの優れたADCを使用する必要がなくなるため、コスト的に優位になるかもしれない。また、アンダーサンプリング方式では処理が困難である信号、例えば、SAW発振器と他の信号とを同時に取り込んでADCを共用したい場合など広い周波数帯域を持っている信号を処理対象とする場合は、図2の構成に比べて図23の構成は優位である。
なお、発振装置10により発生される信号の周波数の周波数シフトの範囲を広げ、且つそのシフト範囲における周波数分解能を向上させるために、図25に示すように発振装置10を構成することができる。図25は、第1実施形態に係る発振装置10の他の第6例の構成を示すブロック図である。図26は、図25の発振装置10の周波数シフト部80を示すブロック図である。図27は、第1、第2分数分周器831,832に入力される信号と第1、第2分数分周器831,832各々から出力される信号との一例を示す図である。図28は、第1、第2分数分周器831,832各々から出力される信号の周波数スペクトルを示す図である。
図25に示すように、第6変形例に係る発振装置10は、図2に示す発振装置10における、SAW発振器11の後段の分岐ノードと信号合成部16との間に、周波数シフト部80を介在して構成される。既に説明したように、図2に示す発振装置10は、SAW発振器11の出力信号に含まれる誤差周波数を誤差周波数検出部12で検出し、検出した誤差周波数に応じた補正信号を補正信号発生部14により発生され、これにより、SAW発振器11の出力信号に含まれる誤差周波数を補正することができる。補正信号発生部14により発生される補正信号に、SAW発振器11の出力周波数をSAW発振器11の公称周波数の5%の範囲で周波数をシフトさせる信号を含めることができる。図2に示す発振装置10の出力信号の周波数シフト範囲は、例えば、公称周波数が1GHzであれば、1GHz±50MHz程度であり、決して広いとは言えない。しかしながら、補正信号はNCOにより発生されるため、その周波数分解能は高い。
一方、後述の周波数シフト部80は、SAW発振器11の出力信号の周波数を(N±2×F/M)倍した周波数の信号を出力することができる。変数N,変数F及び変数Mは、いずれも整数である。そのため、周波数シフト部80の出力信号の周波数をシフト可能な範囲は広い。しかしながら、周波数シフト部80の出力信号の周波数分解能は変数Mに依存し、例えば、SAW発振器11の出力信号の周波数が1GHz、変数Mが100であれば、周波数シフト部80の出力信号の周波数分解能は10MHzであり、決して高くない。このように、図2に示す、周波数シフト範囲は広くはないが、周波数分解能の高い発振装置10に、周波数シフト範囲は広いが、周波数分解能の低い周波数シフト部80を組み込むことにより、周波数シフトの範囲を広くし、且つその範囲内における周波数分解能を高くすることができる。
周波数シフト部80は、複数の逓倍器85(2逓倍器85−2、・・・・、n逓倍器85−n)と、選択部81と、信号合成部82と、分周器83とを有する。
複数の逓倍器85は、SAW発振器11の出力信号の周波数を逓倍する。
分周器83は、複数の逓倍器85のうち一、典型的には逓倍率が2の2逓倍器85−2の出力信号を所定の分周比(F/M)で分周する。具体的には、分周器83は、第1、第2分数分周器831,832からなる。第1、第2分数分周器831,832は、入力したSAW発振器11の出力信号の周波数f1を2逓倍した周波数f1×2を分周比(F/M)で分周した周波数(f1×2×F/M)の信号をそれぞれ発生する。第1、第2分数分周器831、832は、第2分数分周器832の出力信号の位相が、第1分数分周器831の出力信号の位相に対して略90度シフトするように設定される。
例えば、分周比が2/9に設定されているとする。図27(a)に示すように、第1、第2分数分周器831,832に入力される信号の9クロック分の時間長が第1、第2分数分周器831、832の出力信号の周波数の2周期の時間長に対応する。したがって、入力信号の1クロックが位相80度に対応する。分周比が2/9であるため、第1、第2分数分周器831,832は図27の(b)、(c)に示す信号をそれぞれ出力する。第1、第2分数分周器831、832の出力信号は、図28に示すように、周波数f1×4/9を有する。図27(b)、(c)に示すように、第2分数分周器832の出力信号は、第1分数分周器831の出力信号に対して、入力信号の1クロック分、つまり位相が80度遅延される。
なお、分周比F/Mは、所定の条件の範囲内において、任意に設定することができる。具体的には、変数Fは、変数Mより小さい。また、分周比F/Mが1/4より小さい範囲で、変数F、Mは設定される。これは、第1、第2分数分周器831,832のそれぞれの出力信号の位相差を90度確保する必要であるためである。変数Mが大きいほど、周波数シフト部80の出力信号の周波数分解能を向上させることができる。一方で、分周器83は、その入力信号の周波数を変数Mで除算した周波数の間隔でスプリアスを発生する。したがって、変数Mが大きいほど、分周器83により発生されるスプリアスの周波数が中心周波数に接近する。このスプリアスは、後段のBPF18で除去することができる。しかしながら、中心周波数にスプリアスが接近しすぎていると、スプリアスの除去が困難となるか、又はBPF18の性能を向上せざるを得ない。そのため、変数Mは、分周器83に入力される信号の周波数に応じて、その上限値が決められる。例えば、スプリアスが発生する周波数間隔が数10MHz以上となるように、分周器83に入力される信号の周波数が2GHzであれば、変数Mの上限値は100程度まで許容する。
選択部81は、複数の逓倍器85のうち一の逓倍器を選択的に信号合成部82に接続する。
信号合成部82は、逓倍器85の出力信号に分周器83の出力信号を合成する。信号合成部82の出力信号は後段の信号合成部16に入力される。信号合成部82は、乗算器823,825と、加算器827とを有する。信号合成部82は、既に説明した信号合成部16と同様に構成され、動作する。
例えば、図26に示すように、信号合成部82は、逓倍率がnのn逓倍器85−nに接続され、分周器83は逓倍率が2の2逓倍器85−2に接続され、分周器83の分周比が(2/9)であるとき、信号合成部82には、n逓倍器85−nにより発生された周波数f1×nの信号と、分周器83により発生された周波数f1×4/9の信号とが入力される。これにより、信号合成部82は、周波数がf1×n±f1×4/9の信号を発生する。信号合成部82の出力信号は、信号合成部16に入力される。なお、信号合成部82の出力信号には、SAW発振器11の公称周波数に対するSAW発振器11の出力信号の周波数の差の影響が含まれる。信号合成部16は、信号合成部82の出力信号に対して補正信号を合成する。これにより、信号合成部82の出力信号に含まれる誤差周波数の影響が除去される。
以上説明した周波数シフト部80は、SAW発振器11の出力信号の周波数f1を(N±2×F/M)倍した周波数の信号を出力することができる。変数Nは、信号合成部82に接続される逓倍器の逓倍率に対応する。したがって、逓倍率の異なる複数の逓倍器を用意することで、周波数のシフト範囲を拡大することができる。また、分周比F/Mは少なくとも1/4未満にする必要がある。そのため、SAW発振器11の出力信号の周波数f1を2逓倍する2逓倍器85−2を分周器83に接続することで、分周器83による周波数のシフト範囲を最大で±f1×1/2にすることができる。これにより、周波数シフト部80の出力信号の周波数を、その周波数シフト範囲において、周波数分解能で連続的に変化させることができる。しかしながら、周波数シフト範囲でシフト可能な周波数の抜けを許容するのであれば、逓倍器を介さずに、分周器83をSAW発振器11に接続してもよい。この周波数シフト部80を、図2に示す発振装置10に組み込むことで、周波数シフト範囲が広く、且つ周波数分解能が高い発振装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。