≪第1実施形態≫
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は車両に搭載された車両制御装置を例示して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置100を含む車両システム200の一例を示す構成図である。本実施形態の車両システム200は、車両に搭載されている。車両システム200は、車両が自動的に車線変更を行うためのシステムである。
図1に示すように、本実施形態に係る車両システム200は、周辺環境センサ群10と、車両センサ群20と、ナビゲーションシステム30と、地図データベース40と、HMI50と、アクチュエータ制御装置60と、車両制御アクチュエータ群70と、ウィンカー80と、車両制御装置100とを含む。これらの装置又はシステムは、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
周辺環境センサ群10は、自車両の周辺の状態(外部状態)を検出するセンサ群であって、自車両に設けられている。図1に示すように、周辺環境センサ群10としては、例えば、レーダー11、撮像装置12が挙げられるが、これらに限定されない。
レーダー11は、自車両の周辺に存在する物体を検出する。レーダー11としては、例えば、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダー、レーザレンジファインダーなどが挙げられるが、これらに限定されない。レーダー11は、例えば、電波を自車両の周辺に送信し、物体で反射された電波を受信することで、物体を検出する。具体的には、レーダー11は、物体が存在する方向及び物体までの距離を検出する。また、レーダー11は、物体が存在する方向及び物体までの距離の時間変化に基づいて、自車両に対する物体の相対速度(移動方向を含む)を検出する。レーダー11により検出された検出結果は、車両制御装置100に出力される。
本実施形態では、レーダー11は自車両を中心としたときの全方位を検出対象としている。例えば、レーダー11は、自車両の前方、側方、及び後方それぞれに備えられ、自車両の前方に存在する物体を検出する前方レーダー、自車両の側方に存在する物体を検出する側方レーダー、及び自車両の後方に存在する物体を検出する後方レーダーで構成される。なお、自車両が備えるレーダー11の数及び種別は特に限定されない。
撮像装置12は、自車両の周辺に存在する物体を撮像する。撮像装置12としては、例えば、CCD又はCMOSの撮像素子を備えるカメラが挙げられるが、これに限定されない。撮像装置12により撮像された撮像画像は、車両制御装置100に出力される。
本実施形態では、撮像装置12は自車両を中心としたときの全方位を撮像対象としている。例えば、撮像装置12は、自車両の前方、側方、及び後方それぞれに備えられ、自車両の前方に存在する物体を撮像する前方カメラ、自車両の側方に存在する物体を撮像する側方カメラ、自車両の後方に存在する物体を検出する後方カメラで構成される。なお、自車両が備える撮像装置12の数及び種別は特に限定されない。
周辺環境センサ群10が検出する物体としては、例えば、自転車、バイク、自動車(以降、他車両ともいう)、路上障害物、交通信号機、路面標示(車線境界線を含む)、横断歩道が挙げられる。例えば、自車両の進行方向に沿って走行する他車両が自車両の周辺に存在する場合、レーダー11は、自車両の位置を基準として他車両が存在する方向及び他車両までの距離と、自車両に対する他車両の相対速度を検出する。また、撮像装置12は、他車両の車種、他車両の大きさ、及び他車両の形状が特定可能な画像を撮像する。
また、例えば、自車両が複数の車線のうち特定の車線を走行している場合、レーダー11は、自車両が走行している車線と、この車線の側方に位置する車線とを区切っている車線境界線を検出するとともに、自車両から車線境界線までの距離を検出する。また、撮像装置12は、車線境界線の種別が特定可能な画像を撮像する。なお、自車線の両側に車線境界線が存在する場合、レーダー11は、それぞれの車線境界線について、自車両から車線境界線までの距離を検出する。また、以降の説明においては、自車両が走行している車線を自車線、自車線の側方に位置する車線を隣接車線ともいう。
車両センサ群20は、自車両の状態(内部状態)を検出するセンサ群である。図1に示すように、車両センサ群20としては、例えば、車速センサ21、加速度センサ22、ジャイロセンサ23、操舵角センサ24、アクセルセンサ25、ブレーキセンサ26が挙げられるが、これらに限定されない。
車速センサ21は、ドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、計測結果に基づいて自車両の走行速度を検出する。車速センサ21は、例えば、自車両の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフトに設けられている。加速度センサ22は、自車両の加速度を検出する。加速度センサ22には、自車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、自車両の横加速度を検出する横加速度センサが含まれる。ジャイロセンサ23は、自車両が回転する速度、すなわち、単位時間あたりの自車両の角度の移動量(角速度)を検出する。操舵角センサ24は、ステアリングホイールの操舵角を検出する。操舵角センサ24は、例えば、自車両のステアリングシャフトに設けられている。アクセルセンサ25は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセルペダルの位置)を検出する。アクセルセンサ25は、例えば、アクセルペダルのシャフト部分に設けられている。ブレーキセンサ26は、ブレーキペダルの踏み込み量(ブレーキペダルの位置)を検出する。ブレーキセンサ26は、例えば、ブレーキペダルのシャフト部分に設けられている。
車両センサ群20により検出された検出結果は、車両制御装置100に出力される。検出結果には、例えば、自車両の車速、加速度(前後加速度及び横加速度を含む)、角速度、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み量が含まれる。
ナビゲーションシステム30は、自車両の現在位置の情報に基づいて、自車両の現在位置から目的地までの経路を示して自車両の乗員(運転者を含む)を誘導するシステムである。ナビゲーションシステム30には、地図データベース40から地図情報が入力されるとともに、自車両の乗員からHMI50を介して目的地の情報が入力される。ナビゲーションシステム30は、これらの入力情報に基づいて自車両の走行経路を生成する。そして、ナビゲーションシステム30は、自車両の走行経路の情報を車両制御装置100に出力するとともに、HMI50を介して自車両の乗員に自車両の走行経路の情報を提示する。これにより、乗員には現在位置から目的地までの走行経路が提示される。
図1に示すように、ナビゲーションシステム30は、GPS31と、通信装置32と、ナビコントローラ33とを備える。
GPS31は、現在の自車両の位置を示す位置情報を取得する(Global Positioning System, GPS)。GPS31は、複数の衛星通信から送信される電波を受信機で受信することで、自車両の位置情報を取得する。また、GPS31は、周期的に複数の衛星通信から送信される電波を受信することで、自車両の位置情報の変化を検出することができる。
通信装置32は、外部から自車両の周辺状況を取得する。通信装置32は、例えば、自車両の外部に設けられたサーバ又はシステムと通信可能な装置である。通信装置32は、他車両に搭載された通信装置と通信してもよい。
例えば、通信装置32は、道路に設けられた情報発信装置(ビーコン)又はFM多重放送等により、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System, VICS(登録商標)、以下同じ)から道路交通情報を取得する。道路交通情報には、例えば、車線単位の渋滞情報、事故情報、故障車情報、工事情報、速度規制情報、車線規制情報などが含まれる。なお、道路交通情報には、上記の各情報が必ず含まれているわけではなく、少なくとも何れか一つの情報が含まれていればよい。
また、例えば、通信装置32は、他車両に搭載された通信装置と通信可能な機能を有している場合には、他車両の車速情報及び他車両の位置情報を取得する。このような自車両と他車両で行われる通信は、車車間通信と称されている。通信装置32は、車車間通信により、他車両の車速等の情報を自車両の周辺情報として取得してもよい。
なお、通信装置32は、VICSから、他車両の位置、車速、進行方向を含む情報を自車両の周辺情報として取得してもよい。
ナビコントローラ33は、自車両の現在位置から目的地までの走行経路を生成するコンピュータである。例えば、ナビコントローラ33は、走行経路を生成するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。
ナビコントローラ33には、GPS31から自車両の現在位置の情報が入力され、通信装置32から道路交通情報が入力され、地図データベース40から地図情報が入力され、HMI50から自車両の目的地の情報が入力される。例えば、自車両の乗員がHMI50を介して自車両の目的地を設定したとする。ナビコントローラ33は、自車両の位置情報、自車両の目的地の情報、地図情報、及び道路交通情報に基づいて、現在位置から目的地までの経路であって車線単位の経路を、自車両の走行経路として生成する。ナビコントローラ33は、生成した走行経路の情報を、車両制御装置100に出力するとともに、HMI50を介して自車両の乗員に提示する。
なお、本実施形態では、自車両の走行経路は、自車両が現在位置から目的地に到着可能な経路であればよく、その他の条件については限定されない。例えば、ナビコントローラ33は、乗員により設定された条件に従って、自車両の走行経路を生成してもよい。例えば、乗員が有料道路を優先的に使用して目的地まで到着するような設定を行った場合、ナビコントローラ33は、地図情報に基づいて、有料道路を使用した走行経路を生成してもよい。また、例えば、ナビコントローラ33は、道路交通情報に基づいて、自車両の走行経路を生成してもよい。例えば、目的地までの最短経路の途中で渋滞が発生している場合、ナビコントローラ33は、迂回経路を探索し、探索された複数の迂回経路のうち所要時間が最短となる経路を、走行経路として生成してもよい。
地図データベース40は、地図情報を格納している。地図情報には、道路情報と交通規則情報が含まれている。道路情報及び交通規則情報は、ノードと、ノード間を接続するリンク(道路リンクともいう)により定義される。リンクは車線レベルで識別される。
道路情報は、車両が走行可能な道路に関する情報である。各道路リンクには、例えば、道路の種別、道路幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接車線への進入の可否)、車線変更の可否その他の道路に関する情報が紐づけられているが、道路リンクに紐づけられる情報はこれらに限定されない。その他にも、各道路リンクには、例えば、信号機の設置位置、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報が紐づけられている。
交通規則情報は、車両が走行時に遵守すべき交通に関する規則である。交通規則としては、例えば、経路上における一時停止、駐車/停車禁止、徐行、制限速度、車線変更禁止が挙げられるが、これらに限定されるものではない。各道路リンクには、道路リンクで定義される区間における交通規則の情報が紐づけられている。例えば、車線変更禁止区間における道路リンクには、車線変更禁止の情報が紐づけられている。なお、交通規則の情報は、道路リンクだけでなく、例えば、ノード又は地図上の特定の地点(緯度、経路)に紐づけられていてもよい。
また、交通規則情報には、交通規則に関する情報だけでなく、信号機に関する情報が含まれていてもよい。例えば、信号機が設置されている交差点の道路リンクには、信号機が現在表示している色の情報、及び/又は信号機の表示が切り替わる周期の情報が紐づけられていてもよい。信号機に関する情報は、例えば、通信装置32によって、VICSから取得されたり、あるいは、道路上に設けられた情報発信装置(例えば、光ビーコン)から取得されたりする。信号機の表示情報は、時間の経過とともに変化する。そのため、交通規則情報は所定の周期毎に更新される。
なお、地図データベース40に格納される地図情報は、自動運転に適した高精度地図情報でもよい。高精度地図情報は、例えば、自車両の外部に設けられたサーバ又はシステムとの通信により取得される。また、高精度地図情報は、周辺環境センサ群10を用いてリアルタイムに取得した情報(例えば、レーダー11により検出された物体の情報、撮像装置12により撮像された自車両の周辺の画像)に基づいて、随時生成されてもよい。
ここで、本実施形態における自動運転について説明する。本実施形態では、自動運転とは、運転主体が運転者のみで構成された運転形態以外を示す。例えば、運転主体に運転者とともに、運転操作を支援するコントローラ(図示しない)が含まれている場合、又は運転者に代わり運転操作を実行するコントローラ(図示しない)が含まれている場合が自動運転に該当する。
また、本実施形態では、車両システム200が地図データベース40を備える構成を例に挙げて説明するが、車両システム200の外部に設けられていてもよい。例えば、地図情報は、可搬型の記憶装置(例えば、外付けHDD、フラッシュメモリ)に予め記憶されていてもよい。この場合、車両制御装置100と地図情報を記憶する記憶装置とを電気的に接続することで、記憶装置が地図データベース40として機能する。
HMI50は、自車両の乗員と車両システム200との間で情報の出力及び入力を行うためのインターフェースである(Human Machine Interface, HMI)。HMI50としては、例えば、文字又は画像情報を表示するディスプレイと、音楽又は音声など音を出力するスピーカが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
HMI50を介した情報の授受について説明する。例えば、目的地を設定するために、乗員がHMI50に対して目的地を入力すると、目的地の情報は、HMI50からナビゲーションシステム30に出力される。これにより、ナビゲーションシステム30は、自車両の目的地の情報を取得することができる。また、例えば、ナビゲーションシステム30が目的地までの走行経路を生成すると、走行経路の情報は、ナビゲーションシステム30からHMI50へ出力される。そして、HMI50は、走行経路の情報をディスプレイ及び/又はスピーカから出力する。これにより、自車両の乗員には、目的地までの走行経路の情報が提示される。目的地までの走行経路の情報としては、例えば、ルートの案内、目的地までの所要時間が挙げられるが、これらに限定されない。
また、例えば、自車両を車線変更させるために、乗員がHMI50に対して車線変更の実行指令を入力すると、車線変更の実行指令は、HMI50から車両制御装置100に出力される。これにより、車両制御装置100は、車線変更の制御処理を開始することができる。また、例えば、車両制御装置100が車線変更のための目標軌跡を設定すると、目標軌跡の情報は、車両制御装置100からHMI50へ出力される。そして、HMI50は、目標軌跡の情報をディスプレイ及び/又はスピーカから出力する。これにより、自車両の乗員には、車線変更のための目標軌跡の情報が提示される。車線変更のための目標軌跡の情報としては、例えば、隣接車線上で特定された進入位置、車線変更する際の目標軌跡が挙げられるが、これらに限定されない。なお、目標軌跡及び進入位置については後述する。
アクチュエータ制御装置60は、自車両の走行を制御する。アクチュエータ制御装置60は、ステアリング制御機構、アクセル制御機構、ブレーキ制御機構、エンジン制御機構等を備えている。アクチュエータ制御装置60には、後述する車両制御装置100から制御信号が入力される。アクチュエータ制御装置60は、車両制御装置100からの制御信号に応じて、車両制御アクチュエータ群70を制御することで、自車両の自動運転を実現する。例えば、アクチュエータ制御装置60に自車両を自車線から隣接車線へ移動させるための制御信号が入力されると、アクチュエータ制御装置60は、制御信号に応じて、自車両の移動に必要な操舵角、移動速度に応じたアクセル踏み込み量又はブレーキ踏み込み量を算出する。アクチュエータ制御装置60は、算出した各種パラメータを車両制御アクチュエータ群70に出力する。
なお、各機構の制御は、完全に自動で行われてもよいし、運転者の運転操作を支援する態様で行われてもよい。各機構の制御は、運転者の介入操作により中断又は中止させることができる。アクチュエータ制御装置60による走行制御方法は、上記の制御方法に限られず、その他の周知の方法を用いることもできる。
車両制御アクチュエータ群70は、自車両を駆動するための各種アクチュエータである。図1に示すように、車両制御アクチュエータ群70としては、例えば、ステアリングアクチュエータ71、アクセル開度アクチュエータ72、ブレーキ制御アクチュエータ73が挙げられるが、これらに限定されない。
ステアリングアクチュエータ71は、アクチュエータ制御装置60から入力される信号に応じて、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータ72は、アクチュエータ制御装置60から入力される信号に応じて、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータ73は、アクチュエータ制御装置60から入力される信号に応じて、自車両のブレーキ装置の制動動作を制御する。
ウィンカー80は、点滅を行うランプを内部に有しており、自車両の運転者が方向指示スイッチ(図示しない)を操作すると、橙色で点灯する。ウィンカー80は、自車両が右左折する際又は車線変更する際に、その方向を周囲に示すための装置である。ウィンカー80は、例えば、自車両の前端及び後端の左右に一体的に設けられる。
また、本実施形態では、ウィンカー80には車両制御装置100から制御信号が入力される。制御信号は、ウィンカーを作動するための信号であり、消灯しているウィンカー80を点滅させる信号(点滅信号ともいう)、点滅しているウィンカー80を消灯させる信号(消灯信号ともいう)が挙げられる。例えば、ウィンカー80に左側ウィンカーを点滅させる点滅信号が入力されると、ウィンカー80は、左側ウィンカーを点灯させる。その後、ウィンカー80に左側ウィンカーを消灯させる消灯信号が入力されると、ウィンカー80は、左側ウィンカーを消灯させる。このように、ウィンカー80は、自車両の運転者に加えて、車両制御装置100により制御される。
次に、車両制御装置100について説明する。本実施形態の車両制御装置100は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成されている。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。図1に示す制御装置101はCPU(プロセッサ)に相当する。図1に示す記憶装置110はROM及びRAMに相当する。
なお、本実施形態では、制御装置101により実行されるプログラムが記憶装置110に予め記憶されている構成を例に挙げて説明するが、プログラムが記憶される場所は記憶装置110に限定されない。例えば、プログラムは、コンピュータが読み取ることができ、かつ、可搬型のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、ディスクメディア、フラッシュメモリなど)に記憶されていてもよい。この場合、制御装置101は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体からダウンロードしたプログラムを実行する。言い換えると、車両制御装置100が動作回路のみを備え、プログラムを外部からダウンロードする構成であってもよい。
図1に示すように、制御装置101は、機能ブロックとして、情報取得部102と、車線変更箇所特定部103と、車線変更準備部104と、車線変更制御部105を含んでいる。これらのブロックは、ROMに確立されたソフトウェアによって、後述する各機能を実現する。なお、本実施形態では、制御装置101が有する機能を、4つの機能ブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明しているが、制御装置10の機能は必ずしも4つのブロックで分ける必要なく、3つ以下の機能ブロック、あるいは、5つ以上の機能ブロックで分けてもよい。また、制御装置10が有する機能は、以下で説明する機能ブロックの機能に限らず、例えばナビゲーションシステムの制御機能等も有している。
情報取得部102の機能について説明する。情報取得部102は、周辺環境センサ群10、車両センサ群20、ナビゲーションシステム30、地図データベース40、HMI50のそれぞれから、各種情報を取得する。
情報取得部102は、周辺環境センサ群10により検出された、自車両の周辺情報(自車両の外部情報ともいう)を取得する。自車両の周辺情報には、レーダー11により検出された検出結果、及び撮像装置12により撮像された撮像画像が含まれる。また、情報取得部102は、車両センサ群20により検出された、自車両の状態を示す情報(自車両の内部情報ともいう)を取得する。自車両の内部情報には、自車両の車速、加速度、角速度、アクセルペダルの踏み込み量、及びブレーキペダルの踏み込み量が含まれる。また、情報取得部102は、ナビゲーションシステム30から、自車両の現在位置、自車両の走行経路、及び道路交通情報を取得する。また、情報取得部102は、地図データベース40から、地図情報(道路情報及び交通規則情報を含む)を取得する。
車線変更箇所特定部103は、ナビゲーションシステム30から、自車両の現在位置及び自車両の走行経路を取得し、自車両の現在位置及び走行経路に基づき、車線変更箇所を特定する。車線変更箇所は、走行経路に走行する際に、自車線から隣接車線に車両を移動させる必要がある箇所を示している。車線変更箇所特定部103は、自車両の走行経路を参照し、走行経路において車線が変更されている箇所を特定する。
車線変更箇所特定部103は、自車両の走行経路から、交差点等、進行方向を切り替える地点や、インターチェンジなど、車両の進行方向とは異なる方向に進路を変える地点を目標地点として特定する。次に、車線変更箇所特定部103は、目標地点で自車両の進行方向を変えるために、自車線から隣接車線に車両を移動する必要がある箇所を、車線変更箇所として特定する。
例えば、現在位置の先にある交差点で右折するような走行経路が設定されており、自車両が複数車線のうち最も左側の車線を走行している場合には、自車両は右折に備えて、左側の車線から右側の車線に移動する必要がある。このようなシーンにおいて、車線変更箇所特定部103は、右折を必要とする交差点を目標地点として特定する。車線変更箇所特定部103は、走行経路上で、右折すべき交差点(目標地点)から所定距離、前の位置を車線変更箇所として特定する。車線変更箇所は、例えば、走行経路上で、目標地点から数100m手前の箇所に設定される。車線変更箇所は、必ずしも点で設定される必要はなく、所定の区間でされてもよい。他の例として、車線変更箇所は、高速道路上に設けられた分岐点手前の所定区間、自車両の目的地の手前にある所定区間が挙げられる。高速道路上に設けられた分岐点には、各方面への分岐点と、本線と出口との分岐点が含まれる。なお、本実施形態では、車線変更箇所が区間で特定する場合に、区間の長さは特に限定されない。
本実施形態では、車線変更箇所特定部103により車線変更箇所が特定され、自車両が当該車線変更箇所に到達した時、又は、乗員により車線変更の実行指令が入力された時に、自車両が自動的に車線変更する車線変更処理を、以下で説明する機能で実行する。
車線変更準備部104は、自車両の現在位置が車線変更箇所に到達した場合に、自車両の車線変更を行うための準備制御を実行する。準備制御は、進入位置の特定、車線変更候補エリアの特定、ウィンカー作動位置の設定、車速制御、及び、ウィンカーの作動を含む。
車線変更準備部104は、自車両の周辺情報に基づいて、自車両が走行する自車線に対して隣接する隣接車線上に位置し、自車両の進入先の位置を示す進入位置を特定する。例えば、車線変更準備部104は、レーダー11により検出された結果及び撮像装置12により撮像された撮像画像に基づいて、隣接車線上において車両の進行方向に沿った距離が所定距離以上、空いている場所を進入位置として特定する。
また、車線変更準備部104は、進入位置を特定すると、進入位置の前後に位置する他車両のうち、前方の他車両を前方車両として特定し、後方の他車両を後方車両として特定する。言い換えると、車線変更準備部104は、隣接車線に位置する複数の他車両のうち、進入位置に対して前方に位置する前方車両と、この進入位置に対して後方に位置する後方車両とをそれぞれ特定する。例えば、車線変更準備部104は、レーダー11により検出された検出結果及び撮像装置12により撮像された撮像画像から、進入位置に対して隣接車線の前方に位置する複数の他車両のうち、進入位置に対して最も近くに位置する他車両を、前方車両として特定する。また、車線変更準備部104は、進入位置に対して隣接車線の後方に位置する複数の他車両のうち、進入位置に対して最も近くに位置する他車両を、後方車両として特定する。なお、進入位置の後方に他車両が走行していない場合には、車線変更準備部104は前方車両のみ特定すればよい。
車線変更準備部104は、少なくとも前方車両を特定すると、隣接車線上で、前方車両の後方に位置する所定範囲を、車線変更の候補エリア(以下、車線変更候補エリアとも称す)として特定する。後方車両が、前方車両の後方で走行している場合には、車線変更準備部104は、前方車両と後方車両との間の範囲を、車線変更候補エリアとして特定する。前方車両の後方に、別の他車両が走行していない場合には、車線変更準備部104は、走行経路に沿う方向で所定の長さになるように、車線変更候補エリアを設定する。
車線変更準備部104は、隣接車線上を走行する車両に対して、車線変更の意図を伝えるために、ウィンカー作動位置を設定し、ウィンカー80の点灯タイミングを制御する。また、車線変更準備部104は、隣接車線上を走行する車両に対して、車線変更の意図を伝えるために、自車両の車速変化位置を設定し、自車両の車速を制御する。以下、それぞれの制御について説明する。
車線変更準備部104は、自車両の車速、前方車両の車速、及び前方車両の位置に基づき、ウィンカー作動位置を設定する。ウィンカー作動位置は、前方車両に対して車線変更の意思を伝えるために、ウィンカーの点滅を開始する位置を表している。ウィンカー作動位置は、車線変更候補エリアを特定する際に、前方車両の位置に対する相対的な位置で表される。ウィンカー作動位置は、自車線上に設定される。ウィンカー作動位置は、隣接車線上を走行している前方車両のドライバーが、自車両のウィンカーを目視できる範囲に設定される。また、ウィンカー作動位置は、当該前方車両のドライバーにとってウィンカーの点滅を見やすい位置に設定される。
車線変更準備部104は、ウィンカー作動位置に対して、自車両の進行方向に所定距離、離れた位置に、車速変化位置を設定する。所定距離は、例えば自車両の全長の長さである。所定距離は、他車両の全長でもよい。車速変化位置は、車線変更の意図を伝える先となる前方車両よりも前方の位置で、さらにウィンカー作動位置よりも前方の位置に設定される。車速変化位置は、ウィンカー作動位置と同様に、前方車両に対する相対的な位置で表される。なお、車速変化位置は、前方車両の位置からウィンカー作動位置までの距離に対して一定比率を乗じた長さ分、前方車両の位置よりも前方の位置としてもよい。
車線変更準備部104は、自車両が前方車両の周囲を走行している状態から、自車両の位置が車速変化位置に到達するように、自車両の車速を制御する。例えば、自車両と前方車両が並走している状態で、自車両の位置が、車速変化位置よりも後方を走行している場合には、車線変更準備部104は、自車両の車速が前方車両の車速よりも大きくなるように、車速を制御する制御信号をアクチュエータ制御装置60に出力する。
車線変更準備部104は、自車両の現在位置が車速変化位置に到達した場合には、前方車両に対する自車両の相対速度が負になるように、自車両の車速を変更する。前方車両に対する自車両の相対速度が負になっているため、自車両は前方車両に対して相対的に後退する。前方車両のドライバーは、自車両の動きから、自車両が前方のスペースに進入しないことを認識できる。
車線変更制御部105は、自車両が前方車両に対して相対的に後退し、自車両の位置がウィンカー作動位置に到達した場合には、ウィンカー80を作動させて、ウィンカーの点滅を開始する。このとき、ウィンカー80の点滅は、前方車両のドライバーが認識できる範囲内で開始する。そのため、前方車両のドライバーは、自車両が前方車両の後方に進入しようしていることを認識できる。すなわち、前方車両のドライバーは、前方車両の前方の位置から自車両が後退していること、及び、ウィンカーの点滅が作動していることを認識することで、自車両の車線変更の意図を把握できる。
自車両が前方車両に対して相対的に後退して、自車両が車線変更候補エリアの隣で走行する状態になると、車線変更制御部105は、車線変更候補エリアの長さを計測し、車線変更候補エリアの長さと、所定の判定閾値とを比較する。車線変更候補エリアの長さは、走行経路に沿う方向の長さである。判定閾値は、車線変更可能であると判定するための閾値であって、予め設定されている。例えば、判定閾値は、車両の前後にそれぞれ所定の長さ(例えば6m)を確保できる長さに設定される。なお、判定閾値は、隣接車線上の他車両の車速及び/又は自車両の車速等に応じて変化させてもよい。
車線変更候補エリアの長さが判定閾値以上である場合には、車線変更制御部105は、自車両の現在位置を始点とし、車線変更後方範囲内の進入位置を終点として、自車両が車線変更するための目標軌跡を生成する。車線変更制御部105は、目標軌跡に沿って自車両が走行する際の車速及び操舵角を設定する。走行制御部108は、設定された車速及び操舵角に応じた制御信号を、アクチュエータ制御装置60に出力する。そして、自車両の位置が進入位置に到達した場合には、車線変更制御部105は、ウィンカー80の点滅を終了して、車線変更制御を終える。
次に、図2を参照して、制御装置101の制御フローを説明する。図2は、本実施形態に係る車両制御装置により実行される制御処理のフローチャートを示す。なお、以下の各制御フローは、完全に自動で行われてもよいし、運転者の運転操作を支援する態様で行われてもよい。
ステップS1にて、制御装置101は、周辺環境センサ群10から、自車両の外部情報(周辺情報)を取得する。また、制御装置101は、自車両の内部情報を取得する。なお、制御装置101は、ステップS2以降の制御処理を実行している間、自車両の外部情報及び内部情報を所定の周期で取得する。走行状態は、車両の位置、車両の車速等で表される。
ステップS2にて、制御装置101は、自車両の走行経路に基づき、車線変更箇所を特定する。ステップS3にて、制御装置101は、自車両の現在位置と車線変更箇所とを比較し、自車両が車線変更箇所に到達したか否かを判定する。自車両の現在位置が車線変更箇所に到達していない場合には、制御装置101はステップS3の制御処理を繰り返し実行する。自車両の現在位置が車線変更箇所に到達した場合には、制御装置101は、ステップS4以降の制御処理を実行する。
ステップS4にて、制御装置101は、自車両の周辺情報から、隣接車線上に、自車両の進入位置を特定し、進入位置の前方に位置する他車両を前方車両として特定する。ステップS5にて、制御装置101は、隣接車線上で、前方車両の後方に車線変更候補エリアを特定する。
ステップS6にて、制御装置101は、自車線上で、前方車両より前方に位置する所定範囲内に、ウィンカー作動位置を設定する。また、制御装置101は、ウィンカー作動位置の前方に、車速変化位置を設定する。
ステップS7にて、制御装置101は、自車両の現在位置、自車両の車速、前方車両の現在位置、前方車両の車速、及び、車速変化位置に基づき、自車両の現在位置が車線変更位置に近づくように、自車両の車速を制御する。例えば、自車両が前方車両より後方に位置し、自車両の車速が前方車両の車速より低い場合には、制御装置101は、自車両の車速が前方車両の車速より高くなるように、車速を制御する。また他の例として、自車両が前方車両より前方に位置し、自車両の車速が前方車両の車速より低い場合には、制御装置101は、自車両の車速が現在の車速を維持するように自車両の車速を制御する。
ステップS8にて、制御装置101は、自車両の現在位置と車速変化位置とを比較し、自車両の現在位置が車速変化位置に到達したか否かを判定する。自車両の現在位置が車速変化位置に到達していない場合には、制御装置101はステップS8の制御処理を繰り返し実行する。
ステップS9にて、制御装置101は、前方車両に対する自車両の相対速度を負にする速度で、自車両を自車線上で走行させる。ステップS10にて、制御装置101は、自車両の現在位置とウィンカー作動位置とを比較し、自車両の現在位置がウィンカー作動位置に到達したか否かを判定する。自車両の現在位置がウィンカー作動位置に到達していない場合には、制御装置101はステップS10の制御処理を繰り返し実行する。
自車両の現在位置がウィンカー作動位置に到達した場合には、ステップS11にて、制御装置101は、ウィンカー80を作動させてウィンカー80の点滅を開始する。
ステップS12にて、制御装置101は、車線変更候補エリアの長さ(M)を計測する。ステップS13にて、制御装置101は、車線変更候補エリアの長さ(M)と所定の判定閾値(Mth)を比較し、車線変更候補エリアの長さ(M)が判定閾値(Mth)以上であるか否かを判定する。車線変更候補エリアの長さ(M)が判定閾値(Mth)以上である場合には、ステップS14にて、制御装置101は、車線変更制御部105の機能により車線変更を開始する。すなわち、前方車両に対する自車両の相対速度が負になり、自車両のウィンカー80が、前方車両のドライバーから目視できる範囲内で作動することで、自車両が進入位置に進入する意図が前方車両のドライバーに伝わり、前方車両のドライバーは車速を高くする。前方車両の車速の増加に伴い車線変更候補エリアの長さ(M)が長くなり、前方車両の後方に車線変更に適した十分なスペースができるため、自車両は進入位置に向けて自車線から隣接車線に移動できる。
一方、車線変更候補エリアの長さ(M)が判定閾値(Mth)未満である場合には、ウィンカー80の点滅開始時点からの経過時間と所定時間とを比較し、経過時間が所定時間を経過しているか否か判定する。経過時間が所定時間を経過した場合には、制御装置101は、ステップS4の制御処理を実行する。すなわち、ウィンカー点滅開始時から所定時間経過し、車線変更候補エリアの長さ(M)が判定閾値(Mth)以上にならない場合には、制御装置101は、新たな進入位置を特定するために、車線変更更準備部104の機能にて、車線変更の準備制御を実行する。経過時間が所定時間を経過していない場合には、制御装置101は、ステップS12の制御を実行する。すなわち、制御装置101が、ステップS12からステップS15の制御ループを繰り返し実行する。
図3及び図4を参照して、制御装置101の制御処理と、自車両及び他車両の走行シーンとの関係を説明する。図3は、自車両の走行シーンの一例を示しており、(a)から(d)の順番に、走行シーンが移り変わる。なお、図3に示す車両は走行中の車両であって、図3は車両の位置を相対的な位置で表している。図4は、隣接車線上を走行する他車両の車速に対するウィンカー作動位置の上限の特性を示すグラフである。
制御装置101は、自車両の走行経路に基づき、変更箇所Sを特定する。図3(a)に示すように、自車両Xが車線変更箇所Sを通過すると、制御装置101は、周辺環境センサ群10から自車両Xの周辺情報を取得する。制御装置101は、周辺情報から、隣接車線上に自車両Xの進入位置Pを特定する。制御装置101は、進入位置Pの前方に位置する前方車両A、及び、進入位置Pの後方に位置する後方車両Bをそれぞれ特定する。
制御装置101は、前方車両Aと後方車両Bとの間のエリアを、車線変更候補エリアとして特定する。制御装置101は、自車線上で、前方車両Aより前方の位置に、ウィンカー作動開始範囲Wを設定する。ウィンカー作動開始範囲Wは、前方車両Aの前端を基準点Oとする相対的な位置で表される。また、ウィンカー作動開始範囲Wは、走行経路に沿う方向で、ウィンカー作動位置の上限βMAXからウィンカー作動位置の下限βMIXまで範囲である。ウィンカー作動開始範囲Wの幅(走行経路の対して垂直方向の長さ)は、例えば車両の車幅に相当する。ウィンカー作動位置の上限βMAX及びウィンカー作動位置の下限βMIXは基準点Oから、走行経路に沿う方向の長さで表される。
図4に示すように、ウィンカー作動位置の上限βMAXは前方車両の車速に応じて設定され、例えば下記式(1)、(2)の関係で表される。
[数1]
βMAX=VA/3.6×0.5(VA≧20km/h) (1)
β=k (VA<20km/h) (2)
ただし、VAは車両Aの車速である。kは所定の係数であり、図4の例ではk=3(m)である。式(1)の右辺において、前方車両Aの車速VAを1m当たりの分速に単位換算した値に対して乗算される値(乗数)0.5秒は、前方車両Aが自車両Xに追従できない距離を、走行時間で表した値である。複数車両が並走状態で一定の時間走行している場合には、車両のドライバーは並走状態を避けたいという心理が無意識に発生し、一方の車両のドライバーは他方の車両に追従しないよう、加速又は減速を行う。式(1)の値0.5秒は、このようなドライバーの心理を踏まえた経験則から決められる値である。なお、式(1)の乗数は必ずしも0.5秒である必要なく、例えば0.4秒又は0.6秒でもよい。
図4のグラフは、式(1)、(2)の関係を表している。式(1)、(2)及び図4に示すように、車速VAが所定の速度閾値(図4の例では20km/h)より低い場合には、ウィンカー作動位置の上限βMAXは一定の長さに設定される。また、車速VAが所定の速度閾値(図4の例では20km/h)以上である場合には、ウィンカー作動位置の上限βMAXは、車速VAに対して比例した値となる。
ウィンカー作動位置の下限βMINは、前方車両Aのドライバーが自車両Xの前端に設置されたウィンカー80の点滅を確認できる最小距離に応じて設定される。最小距離は、0.5m、1m等に設定される。
なお、ドライバーの視点の位置や高さは車種によって異なる。そのため、制御装置101は、前方車両Aの車種に応じて、ウィンカー作動位置の下限βMINを設定してもよい。制御装置101は、自車両の周辺情報に基づき、前方車両Aの車種を特定する。例えば、前方車両Aの車種がセダンタイプである場合には、制御装置101はウィンカー作動位置の下限βMINを1mとし、前方車両Aの車種が1BOXタイプである場合には、制御装置101はウィンカー作動位置の下限βMINを0.5mとする。
図3(a)に示すように、制御装置101は、ウィンカー作動位置の下限βMINからウィンカー作動位置の上限βMAXの範囲を、ウィンカー作動開始範囲Wとする。また制御装置101は、ウィンカー作動開始範囲W内にウィンカー作動位置Qを設定する。ウィンカー作動位置Qは、ウィンカー作動開始範囲Wの中心点に設定する。なお、ウィンカー作動位置Qは、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度に応じて、ウィンカー作動開始範囲W内で設定してもよい。後述するように、自車両Xが前方車両Aの前方を走行している状態から、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度が負になり、自車両Xは前方車両Aに対して相対的に後退する。このとき、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度が負側に高いほど、自車両Xは速い速度で前方車両Aに向かって後退する。そのため、自車両Xのウィンカーの点滅を、前方車両Aのドライバーに早く見せるために、制御装置101は、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度が負側に高いほど、ウィンカー作動位置Pを、より前方の位置に設定する。
図3(a)に示すように、制御装置101は、基準点Oから、ウィンカー作動位置の上限βMAXに自車両Xの全長Lを加えた長さの位置に車速変化位置Rを設定する。車速変化位置Rはウィンカー作動開始範囲Wよりも前方の位置に設定され、車速変化位置Rから基準点Oまでの長さは、L+βMAXとなる。
制御装置101は、自車両Xが前方車両Xの位置に対して相対的に前方に位置するように、自車両Xの車速を制御する。
図3(b)に示すように、自車両Xは、自車線上で前方車両Xより前方を走行し、自車両Xの位置が車速変化位置Rに到達する。自車両Xの位置及び他車両Aの位置が、図3(b)に示すような位置関係になると、制御装置101は、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度が負になるように、自車両Xの車速を制御する。
図3(c)に示すように、前方車両Aに対する自車両Xの相対速度が負になることで、自車両Xは前方車両Aに対して相対的に後退する。言い換えると、自車両Xが、前方車両Aの前方の位置から、走行経路に沿う方向で前方車両Aに近づくように、自車両Xが移動する。自車両Xがウィンカー作動位置Qに到達すると、制御装置101はウィンカー80を作動させる。これにより、ウィンカー80の点滅が、ウィンカー作動位置Qから開始する。このとき、前方車両Aのドライバーは、自車両Xが前方車両Aの後方に相対的に後退していること、及び、自車両Xのウィンカー80の点滅が開始したこと、を確認することで、自車両Xが前方車両Aの後方の位置で車線変更するという意図を把握できる。
図3(d)に示すように、前方車両Aのドライバーは、自車両Xの車線変更の意図を把握し、車速を高くする。これにより、車線変更候補エリアが進入位置Pに対して前方側に広がる。また、後方車両Bのドライバーは、自車両Xのウィンカー80が点滅した状態で後退していることから、自車両Xが後方車両Bの前方の位置で車線変更するという意図を把握できる。後方車両Bのドライバーは、自車両Xの車線変更の意図を把握し、車速を低くする。これにより、車線変更候補エリアが進入位置Pに対して後方側に広がる。
制御装置101は、車線変更候補エリアの長さ(M)と判定閾値(Mth)を比較する。図3(d)の例では、車線変更候補エリアの長さ(M)は、前方車両Aと後方車両Bとの間の車間距離に相当する。そして、車線変更候補エリアの長さ(M)が判定閾値(Mth)以上である場合には、制御装置101は、進入位置Pに向かって自車両を移動させる。
上記のように、本実施形態では、自車両に設けられたセンサから自車両の周辺情報を取得し、自車両の周辺情報に基づいて、自車両が走行する自車線(第1車線)に対して隣接する隣接車線(第2車線)上に位置し、自車両の進入先の位置を示す進入位置を特定し、隣接車線上で、進入位置の前方に位置する前方車両を特定し、自車線上で、前方車両より前方に位置する所定範囲内に、ウィンカー作動位置を設定する。そして、本実施形態では、自車両が自車線上で前方車両よりも前方で走行している状態から、前方車両に対する自車両の相対速度を負にする速度で自車両を自車線上で走行させて、当該相対速度が負になった後に、ウィンカー作動位置で自車両のウィンカー80を作動させる。これにより、本実施形態では、前方車両に対して、自車両の車線変更の意図を伝わり易くすることができる。また、車線変更の意図が前方車両のドライバーに伝わることで、前方車両の後方のスペースが広くなり、自車両が隣接車線に進入しやすい道路環境をつくることができる。
また本実施形態では、自車両がウィンカー作動位置に位置する場合に、自車両の前端が前方車両の前端より所定距離前方に位置するように、ウィンカー作動位置が設定されている。これにより、ウィンカーの点滅が、前方車両のドライバーが目視できる範囲内で開始されるため、自車両の車線変更の意図を伝わり易くすることができる。
また本実施形態では、自車両が前記ウィンカー作動位置に位置する場合に、自車両の後端が前方車両の前端より後方に位置するように、ウィンカー作動位置が設定されている。これにより、前方車両のドライバーは、自車両の前方の一部分が見えている状態で、ウィンカーの点滅開始を見ることができるため、前方車両の後方位置で、自車両が車線変更するという意図を、前方車両のドライバーに伝えることができる。また、自車両が前方車両の前方の位置に進入するという誤解が生じることを防止できる。
また本実施形態では、前方車両に対する自車両の相対速度が負側に大きいほど、他車両の前端からウィンカー作動位置までの長さが長くなるように、ウィンカー作動位置が設定される。これにより、自車両が後方車両に後退する速度が速いほど、ウィンカーの作動タイミングが早くなるため、方車両に対して、自車両の車線変更の意図を伝わり易くすることができる。
また本実施形態では、ウィンカー作動位置で自車両のウィンカーを作動させた後に、前方車両から後方車両までの車間距離が所定の判定閾値より長いか否かを判定し、車間距離が所定の判定閾値より長いと判定された場合に、自車両を自車線から隣接車線に移動させる。これにより、前方車両の後方車両の間に、車線変更に適したスペースが確保したことを確認した上で、車線変更を実行することができる。
なお本実施形態の変形例として、制御装置101は、前方車両の全長に基づき、ウィンカー作動位置を設定してもよい。例えば、制御装置101は、前方車両の全長が長いほど、ウィンカー作動開始範囲内で、より後方の位置に、ウィンカー作動位置を設定する。これにより、前方車両のドライバーがウィンカーの点滅を容易に確認できる。
例えば、本明細書では、本発明に係る車両制御装置を、車両制御装置100を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係る第1車線を、自車線を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係る第2車線を、隣接車線を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。