JP2020164493A - 筋肉炎症抑制用組成物及び腸管炎症抑制用組成物 - Google Patents

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一弥 戸田
Kazuya Toda
一弥 戸田
徹哉 久原
Tetsuya Kuhara
徹哉 久原
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Abstract

【課題】 筋肉炎症及び腸管炎症の産生を抑制する物質を提供すること。【解決手段】 インドール−3−乳酸を有効成分として含む筋肉炎症抑制及び腸管炎症抑制用組成物;好適には、前記インドール−3−乳酸が、ビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分由来である。好適には、さらにプレバイオティクスを含む。好適には、前記組成物が、経口摂取用である。好適には前記組成物が医薬組成物又は飲食品組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、筋肉炎症抑制用組成物及び腸管炎症抑制用組成物に関する。
筋肉で起きる炎症や炎症性疾患として、例えば、運動等で発生する筋繊維の炎症、炎症性筋疾患等が知られている。さらに、筋肉炎症が、サルコペニアの発症にも関わっているとの報告もある(非特許文献1)。
運動に伴い骨格筋(筋繊維)が損傷すること(運動誘発性骨格筋損傷ともいう)によって、炎症性サイトカインや活性酸素の産生等が生じて筋肉炎症が起こることが知られている。この炎症性サイトカインとして、例えば、TNF−α(Tumor Necrosis Factor-α)やIL−6(Interleukin-6)等が知られている。このような炎症が、筋肉疲労や筋肉痛の原因になるとも考えられている。
筋肉炎症を抑制する技術として、例えば、特許文献1では、黒ショウガ抽出物を有効成分とするTNF−α遺伝子発現抑制剤又はIL−6遺伝子発現抑制剤を有効成分とする運動誘発性骨格筋損傷に起因する筋肉炎症抑制剤が提案されている。
また、腸管で起きる炎症や炎症性疾患として、潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)、クローン病(Crohn disease)、過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome)、ループス腸炎、消化管ベーチェット病、虚血性大腸炎、上腸間膜動脈血栓症、ウイルス・細菌感染性腸炎(出血性大腸炎等)、上皮性や非上皮性消化管腫瘍等が知られている。
腸管炎症を抑制する技術として、例えば、特許文献2では、低温殺菌処理することで得られたホエイタンパク濃縮物を含む腸管炎症抑制剤が提案されている。
特開2017−031120号公報 特開2011−51914号公報
Londhe P., et al., Inflammation induced loss of skeletal muscle. Bone. 80, 131-142 (2015).
上述のように、炎症部位が異なることによって、組織状態はもちろん、炎症の発生原因や炎症の症状や疾患も異なる場合もある。このため、一方の炎症部位で炎症抑制物質が効いても、他方の炎症部位では同じ炎症抑制物質が効かない場合もある。また、炎症部位によっては副作用等の観点から同じ炎症抑制物質が使用できないこともある。
このため、筋肉炎症と腸管炎症とでは、炎症部位の組織状態や機構状態も異なるが、筋肉炎症及び腸管炎症のいずれでも利用できる炎症抑制物質が望ましい。
そこで、本技術は、筋肉炎症及び腸管炎症を抑制する技術を提供することを主な目的とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、筋芽細胞を利用した筋肉炎症モデル及び結腸細胞を使用した腸管炎症モデルのそれぞれにおいて、インドール−3−乳酸が筋肉炎症及び腸管炎症共に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の通りである。
本技術は、インドール−3−乳酸を有効成分として含む筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用の組成物を提供するものである。
前記インドール−3−乳酸が、ビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分由来であってもよい。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ビフィダムからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌を含んでもよい。
さらにプレバイオティクスを含んでもよい。
前記プレバイオティクスが、ヒトミルクオリゴ糖及び/又は水溶性食物繊維であってもよい。
前記組成物が、経口摂取用であってもよい。
前記組成物が医薬組成物又は飲食品組成物であってもよい。
本技術によれば、筋肉炎症及び腸管炎症を抑制する技術を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
本技術は、インドール−3−乳酸を有効成分として含む、筋肉炎症抑制用及び/又は腸管炎症抑制用の組成物を提供するものである。
本技術における「筋肉炎症」は、筋肉内において炎症性サイトカインが発現することにより引き起こされることが好適であるが、これに限定されるものではなく、また当該炎症性サイトカインは筋肉組織から分泌されるものが好適である。
本技術における「腸管炎症」は、腸管内において炎症性サイトカインが発現することにより引き起こされることが好適であるが、これに限定されるものではなく、また当該炎症性サイトカインは、大腸組織から分泌されるものが好適である。
前記炎症性サイトカインとして、例えば、IL−1やIL−6、TNF−α等が挙げられる。
<1.インドール−3−乳酸>
本技術で使用されるインドール−3−乳酸(Indole-3-lactic Acid)(以下、「ILA」ともいう)は、3−(3−インドリル)乳酸とも呼ばれ、トリプトファン代謝系のなかのインドール化合物の1種であり、市販品を入手可能である。また、インドール−3−乳酸は、トリプトファン代謝系にある化合物であるため、安全性が高く、長期にわたり投与又は摂取できる。
本技術で使用されるインドール−3−乳酸は、塩の形態でもよい。当該塩としては特に限定されず、例えばナトリウム、カリウム等の一価金属の塩(例えば、アルカリ金属塩)、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の多価金属の塩(例えば、アルカリ土類金属塩);アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等の有機塩等が挙げられる。このうち1種又は2種以上のものを使用してもよい。
本技術で使用されるインドール−3−乳酸は、有機合成、酵素反応、発酵法など公知の製造方法にて得ることもでき、このとき適宜公知の分離精製方法を用いて純度を高めてもよい。また、トリプトファン代謝系を利用して得ることができ、例えば、トリプトファン代謝系の酵素を利用したり、トリプトファン代謝系を有する細菌を利用して、トリプトファンを経由してインドール−3−乳酸を製造することも可能であるが、本技術はこれに限定されない。より具体手な一例として、トリプトファン代謝系を有する細菌を培養してインドール−3−乳酸を含む生産物又は菌体成分を得、この生産物又は菌体成分を利用したり、さらにインドール−3−乳酸の純度を高めるために分離精製した分離物や精製物を利用したりすることができる。当該細菌は、インドール−3−乳酸を生成可能な細菌であればよく、例えばビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌等のなかからインドール−3−乳酸を生産する能力を有する細菌を選択することができる。好適には、大量生産性及び安全性等の観点から、前記インドール−3−乳酸が、ビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分由来のものであることが好ましい。
<1−1.本技術のインドール−3−乳酸の製造方法>
本技術のインドール−3−乳酸の製造方法として、インドール乳酸化合物の生産能力を有するビフィドバクテリウム属細菌(以下、「本技術のビフィドバクテリウム属細菌」ともいう)を用いることによってインドール乳酸化合物(より好適にはインドール−3−乳酸)を製造することができる。
<1−2.本技術のビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分由来物>
本技術のインドール−3−乳酸は、特定のビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分に含まれているため、この生産物又は菌体成分由来を用いることが、大量生産性及び安全性等の観点から、好適である。
なお、本技術のインドール−3−乳酸を製造する際には、インドール−3−乳酸の純度又は回収率を高めるために、必要に応じて、分離精製や酵素処理等の公知の製造方法を適宜組み合わせることができる。例えば、酵素処理、有機合成処理、遠心分離法、沈殿法、膜分離法、イオン交換法、電気透析法、ゲルろ過法、等電点法、晶析法等が挙げられ、これらからなる群から選択される1種又は2種以上を使用することができる。
本技術のビフィドバクテリウム属細菌を用いる製造方法において、例えば、トリプトファン代謝系の各種酵素を適宜利用して、培養物中に含まれる中間生成物からインドール−3−乳酸に変換して、インドール−3−乳酸を調製することが可能であり、また、菌体を破砕等により菌体内のインドール乳酸化合物を回収し、これからインドール−3−乳酸の生産率を高めてもよい。
本技術の製造方法は、安全性が高いビフィドバクテリウム属細菌を用いるので、インドール−3−乳酸をより安全に提供することができる。
本技術のビフィドバクテリウム属細菌を用いれば、工場等の生産工程で、インドール−3−乳酸又はこれを含む組成物を良好に製造することができる。これにより、組成物(例えば、生産物、飲食品組成物等)中のインドール−3−乳酸を高含有にしたり、生産物からインドール−3−乳酸を効率よく回収したりすることができる。
また、本技術のビフィドバクテリウム属細菌を経口摂取することで、消化管内等の体内でインドール−3−乳酸を生産させることが可能である。生産されたインドール−3−乳酸は血中移行しやすいことから、容易に体内に取り込むことも可能である。
本技術において、インドール−3−乳酸の生産能力が高いビフィドバクテリウム属細菌を用いることが好ましく、培地中にインドール−3−乳酸を、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは2μg/mL以上、さらに好ましくは3μg/mL以上で生産することができる、ビフィドバクテリウム属細菌を用いることが、好適である。
なお、インドール乳酸化合物の測定は、後記実施例に示す〔インドール−3−乳酸(ILA)の測定方法〕(例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS))を参考にして行うことが可能である。
本技術のビフィドバクテリウム属細菌は、乳幼児の腸内に多く見られる細菌であり、ヒト乳幼児常在細菌叢由来の細菌が好適であるが、本技術において、ヒト乳幼児常在細菌叢由来の細菌に限定されるものではない。
一方で、後記実施例に示すように、成人の常在腸内細菌叢及び非ヒトの腸内細菌叢に多くみられるビフィドバクテリウム属細菌は、インドール乳酸化合物の生産性が非常に低く、これらはインドール乳酸化合物生産能力を有しないあるいはほとんど有しないビフィドバクテリウム属細菌と考えられる。
本技術のビフィドバクテリウム属細菌のうち、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(Bifidobacterium longum subsp. longum);ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis);ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve);ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)等が挙げられる。これら細菌群から選択される1種又は2種以上の細菌を、安全性及びインドール乳酸化合物の生産性の観点から、用いることが好ましい。
ビフィドバクテリウム・ロンガムとして、例えば、(1)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムATCC 15707、(2)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621(ATCC BAA-999;BB536)等が挙げられる。
ビフィドバクテリウム・インファンティスとして、例えば、(3)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスATCC 15697、
(4)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623(LMG 23728;M-63)等が挙げられる。
ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、例えば、(5)ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC 15700、(6)ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175、(7)ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622(M-16V)等が挙げられる。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムとして、例えば、(8)ビフィドバクテリウム・ビフィダムATCC 29521、(9)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02429、(10)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02431、(11)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02433、(12)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02432等が挙げられる。
中でも下記からなる群から選択される1種又は2種以上のビフィドバクテリウム属細菌を使用することができ、適宜単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
(1)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムATCC 15707は、米国の保存機関であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国、20110 バージニア州 マナサス ユニバーシティ・ブルバード 10801)に、ATCC 15707の受託番号で寄託されている(ATCC 2015 [08/17])。
(2)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621(ATCC BAA-999;BB536)は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2018年1月26日にNITE BP−02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。ビフィドバクテリウム・ロンガムNITE BP-02621は、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999と同一細菌であり、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999は、米国の保存機関であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国、20110 バージニア州 マナサス ユニバーシティ・ブルバード 10801)に、ATCC BAA−999の受託番号で寄託されている。また、当該菌株は、森永乳業株式会社から市販品(BB536)として入手可能である。
(3)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスATCC 15697は、米国の保存機関であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国、20110 バージニア州 マナサス ユニバーシティ・ブルバード 10801)に、ATCC 15697の受託番号で寄託されている(ATCC 2018 [07/20])。
(4)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623(LMG 23728;M-63)は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2018年1月26日にNITE BP−02623の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623とビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスLMG 23728は同一細菌であり、ビフィドバクテリウム・インファンティスLMG 23728は、ベルギーの保存機関であるBelgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM)(ベルギー、B−1000 ブリュッセル シアンス通り(ウェーテンスカップ通り)8)に、BCCM LMG23728の受託番号で寄託されている。また、当該菌株は、森永乳業株式会社から市販品(M-63)として入手可能である。
(5)ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC 15700は、米国の保存機関であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国、20110 バージニア州 マナサス ユニバーシティ・ブルバード 10801)に、ATCC 15700の受託番号で寄託されている(ATCC 2018 [02/01])。
(6)ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許生物寄託センター(IPOD)(NITE−IPOD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、2009年8月25日に、FERM BP-11175の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたさものである。
(7)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02622(M-16V)は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2018年1月26日にNITE BP−02622の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。また、当該菌株は、森永乳業株式会社から市販品(M-16V)として入手可能である。
(8)ビフィドバクテリウム・ビフィダムATCC 29521、は、米国の保存機関であるAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国、20110 バージニア州 マナサス ユニバーシティ・ブルバード 10801)に、ATCC 29521の受託番号で寄託されている(ATCC 2017 [04/12])。
(9)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02429は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2017年2月21日にNITE BP-02429の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
(10)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02431は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2017年2月21日にNITE BP-02431の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
(11)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02433は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2017年2月21日にNITE BP-02433の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
(12)ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-02432は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、2017年2月21日にNITE BP-02432の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。
なお、上述の菌株は、上記寄託株に制限されず、同寄託株と実質的に同質の菌株であってもよい。実質的に同質の菌株とは、同じ属種に分類される菌株であって、本件寄託株と同程度以上の本技術のインドール−3−乳酸生産能力を有する菌株を意味する。
また、実質的に同質の菌株とは、一致し、かつ好ましくは上記寄託株と同一の菌学的性質を有する。さらに本技術の菌株は、本技術の効果が損なわれない限り、当該寄託株又はそれと実質的に同質の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。当該変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択は、公知の方法を利用して行えば良い。
なお、上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、例えば、上記(2)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムNITE BP-02621(ATCC BAA-999;BB536)にはNITE BP-02621の受託番号で、(4)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623(LMG 23728;M-63)にはNITE BP-02623の受託番号で、及び、(7)ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP-02622(M-16V)にはNITE BP-02622の受託番号で、上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含され、また、各菌株もこの定義と同様である。
菌株について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、本件寄託株と同等以上の本技術で用いるインドール−3−乳酸を得られる株を意味する。上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。
実質的に同一の菌株、派生株は下記のような株が挙げられる。
(1)RAPD法(Randomly Amplified Polymorphic DNA)、PFGE法(Pulsed-field gel electrophoresis)により同一の菌株と判定される菌株(Probiotics in food/Health and nutritional properties and guidelines for evaluation 85 Page43に記載)
(2)当該寄託株由来の遺伝子のみ保有し、外来由来の遺伝子を持たず、DNAの同一性が95%以上(好適には98%以上)である菌株
(3)当該菌株から育種された株(遺伝子工学的改変、突然変異、自然突然変異を含む)、同一の形質を有する株
<1−3.インドール−3−乳酸の製造に用いられる培地>
本技術の製造方法に用いられる培地として、ビフィドバクテリウム属細菌が培養可能な培地であれば特に限定されず、通常用いられる培地を用いてもよく、必要により培地組成を適宜修正して用いてもよい。例えば、乳原料及びプレバイオティクス(より好適には糖類)からなる群から選択される1種以上を含む培地を使用してもよく、任意の原料を培地に含ませることにより、効率よくインドール−3−乳酸を製造することができる。当該乳原料は、後述する乳成分(より好適には乳タンパク質)を使用することができ、当該プレバイオティクスは、後述する糖類(より好適にはオリゴ糖)等を使用することができる。
培地成分としては、特に限定されないが、窒素成分及び炭素成分を培地に含むことが好ましく、当該窒素成分及び炭素成分として、例えば、炭素源、窒素源及び有機成分等が培地に含まれていることが好ましい。
供給源として、例えば、タンパク質分解物(動物、植物、微生物(酵母、細菌)等由来)、アミノ酸(例えば、L−システイン等)を用いることが、生産性の観点から好適である。当該タンパク質分解物として、微生物の培養に使用可能なものが好ましく、例えば、ペプトン、牛肉エキス、酵母エキス、脱脂大豆等が挙げられる。当該分解は、一般的なタンパク質分解手段を用いることができ、例えば、タンパク質分解酵素(例えばペプシン等)、酸、アルカリ等の群から選択された単独又は組み合わせによる加水分解が挙げられる。
例えば、供給源は、培地中に好適には1〜60質量%(より好適には30〜50質量%)含有させることがより好適である。
また、本技術の培地成分における、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。
また、窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。
また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。
また、当該培地には、還元剤(例えば、L−システイン等)を用いてもよく、当該培地中に還元剤を0.01〜0.1質量%含有させてもよい。
また、本技術に用いられる具体的な公知培地として、例えば、MRS(de Man,Rogosa Sharpe)培地、ABCM(anaerobic bacterial culture medium)培地、RCA(Reinforced clostridial agar)培地、BL(Blood Liver)培地、TOSプロピオン酸培地、GAM(Gifu Anaerobic Medium)培地、EG(Eggerth-Gagnon)培地等が挙げられる。本技術のインドール乳酸化合物を得る際に、これら公知培地を好適に用いることができ、また、これら公知培地は市販品を入手して使用してもよく、適宜液体培養として用いてもよい。
<1−4.培養方法及び培養工程>
本技術における培養方法及び培養工程は、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法及び工程を必要により適宜修正して用いることができる。
本技術の培養方法は、一般的にビフィドバクテリウム属細菌を増殖させる一般的な培養条件を用いることが可能である。
本技術の培養方法において、本技術のビフィドバクテリウム属細菌の使用量は、特に限定されないが、培地中に、好ましくは1×10〜1×1012CFU/g(又はcells(個)/g)、より好ましくは1×10〜1×1011CFU/g(又はcells(個)/g)、さらに好ましくは1×10〜1×1010CFU/g(又はcells(個)/g)になるように調整することが好適である。なお、CFUはColony forming unitを示す。
また、本技術の培養方法において、例えば、培養温度は25〜50℃でよく、30〜40℃であることが好ましい。培養は、嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス、窒素ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。
本技術の生産物を得る際の培養時間は、特に限定されず、通常の培養時間(例えば12〜72時間程度)で行った後に生産物を回収してもよく、また公知の菌末製造等のための菌体を得るための培養時間と同じであってもよい。
上述のような培養方法により培養した培養後の培地には、本技術のビフィドバクテリウム属細菌が生産したインドール乳酸化合物が含まれる。当該培養後の培地には、生菌及び/又は死菌の菌体が通常含まれる。
本技術において、前記培養方法及び培養工程を、本技術のインドール乳酸化合物の生産方法及び生産工程として使用することも可能であり、また培養物を本技術の生産物として使用することも可能である。当該生産物として、例えば、培地、飲食品組成物、発酵飲食品、発酵乳等が挙げられるが、これに限定されない。
また、本技術の培養方法及び培養工程は、例えば、連続方式及びバッチ方式が挙げられる。例えば、連続方式を採用する培養槽に連続的に培地を流入させ、生産されたインドール乳酸化合物を含む培地を流出させることによる連続方式でインドール乳酸化合物を製造することができる。また、バッチ方式を採用する培養槽で培地中にインドール乳酸化合物を製造することもできる。また、培養工程において、本技術のビフィドバクテリウム属細菌を固定化(例えば、担体結合法等)してもよい。
また、インドール乳酸化合物(インドール−3−乳酸及び/又はその誘導体)は、ビフィドバクテリウム属細菌内の酵素やトリプトファン代謝系によってインドール−3−乳酸に変化させることも可能と考える。このため、本技術の製造方法において、目的の化合物に変化させる酵素又は微生物を単数又は複数用いることも可能である。この変化工程は、培養工程中又は培養工程後のいずれでもよく、また生産物中からインドール乳酸化合物を分離精製した後であってもよい。
また、菌体内に存在するインドール乳酸化合物を回収する場合、菌体を破壊する手段、例えば、破砕や超音波等の物理的手段;酸、アルカリ、酵素等の化学的手段からなる群から選択される1種又は2種以上を使用することができる。
また、培養後の培地から菌体を分離し、生産されたインドール−3−乳酸を含む培養後の培地を得ることも可能である。
培養後の培地から細菌を分離する工程としては、細菌を除くことができる公知の分離手段を採用することができる。これにより、菌体成分と上清を分離することができる。
当該分離手段として、例えば、膜及び/又はろ過助剤によるろ過、遠心分離等が挙げられる。ろ過助剤は、珪藻土、活性白土等が挙げられる。膜は、除菌可能な膜であれば特に限定されず、例えば、平膜(メンブランフィルタ、ガラス繊維フィルタ等)及び中空糸膜(ホローファイバー)のいずれでもよい。
さらに分離した上清を濃縮し、イオン交換、電気透析、ゲルろ過、等電点で晶析することにより、濃縮されたインドール乳酸化合物又は分離精製されたインドール乳酸化合物を製造することもできる。
<1−5.インドール−3−乳酸を含む組成物の製造方法>
本技術のビフィドバクテリウム属細菌を用いてインドール乳酸化合物を生産させることを経て、インドール−3−乳酸を含む組成物を得ることができる。上述した生産物を本技術の組成物として使用することも可能であり、当該生産物は菌体を除いた生産物が好適である。当該生産物は、本技術の効果を損なわない限り、加熱、凍結乾燥、他成分の混合等の種々の追加操作を行ってもよい。
本技術のインドール−3−乳酸を含む組成物の製造方法(以下、「本技術の組成物の製造方法」ともいう)により、インドール乳酸化合物を含む組成物(好適には飲食品組成物)を効率よく安全に製造することができる。
本技術の組成物の製造方法において、上述した「本技術のインドール−3−乳酸の製造方法」等と重複する構成の説明については適宜省略する。
本技術の組成物の製造方法において、上述した培養方法及び培養工程を用いることが好適である。
また、本技術の組成物の製造方法は、インドール−3−乳酸の含有量を高める製造工程を含むことが好ましい。また、本技術において製造されたインドール−3−乳酸を、組成物(飲食品組成物等)の製造工程のいずれかで添加してもよい。これにより、一般的な組成物(飲食品組成物等)のインドール−3−乳酸の含有量よりも、より高い含有量の本技術の組成物を得ることができる。
本技術の組成物中のインドール−3−乳酸を高い含有量にすることで、インドール−3−乳酸の回収率やインドール−3−乳酸の摂取量を向上させることができる。
本技術の組成物の製造方法において、インドール−3−乳酸を、本技術の組成物中に、0.01〜5.0質量%になるように含有させることが好適であり、より好ましくは0.1〜3.0質量%であり、さらに好ましくは、0.2〜1質量%である。
また、本技術の組成物の製造方法によって、一般的な組成物のインドール−3−乳酸の含有量と比較し、本技術の組成物中のインドール−3−乳酸の含有量を0.01質量%以上含有させることが好適であり、より好適は0.02質量%以上、さらに好適には0.03質量%以上であり、また、1質量%程度まで含有させることが可能である。
なお、本技術において、一般的な組成物(飲食品組成物等)とは、本技術を用いない通常の組成物をいい、上記本技術によるインドール−3−乳酸の増強量は、「本技術の組成物中のインドール−3−乳酸含有量(%)−本技術を用いない組成物のインドール−3−乳酸含有量(%)」の算出値より求めることができる。
また、本技術の組成物の製造方法において、インドール−3−乳酸を、本技術の組成物中に、好ましくは0.1μg/mL以上、より好ましくは1μg/mL以上、さらに好ましくは10μg/mLになるように含有させることが好適である。
本技術の組成物中に、本技術のビフィドバクテリウム属細菌を含ませる場合、当該細菌の含有量は特に限定されず、本技術の組成物中に、好ましくは生菌として0.1〜10質量%、より好ましくは1〜10質量%になるように含有させてもよい。
また、前記組成物中、本技術のビフィドバクテリウム属細菌(生菌又は死菌)を含ませる場合、その含有量は、特に限定されないが、好ましくは1×10〜1×1012CFU/g(又はcells(個)/g)、より好ましくは1×10〜1×1011CFU/g(又はcells(個)/g)、さらに好ましくは1×10〜1×1010CFU/g(又はcells(個)/g)になるように含有させてもよい。
本技術の組成物の製造方法において、本技術の組成物には、本技術の効果を損なわない範囲内で、適宜、任意成分を含有させることができる。当該任意成分として、例えば、糖類、糖アルコール類、多糖類、pH調整剤、脂肪酸エステル類、矯味矯臭剤、香料、賦形剤等が挙げられる。このとき、本技術の組成物の形態は、固体、液体、半固体、粉体等特に限定されない。
当該インドール−3−乳酸を含む組成物として、例えば、生産物自体又はこれら生産物を含む組成物等が挙げられるが、これに限定されない。
当該生産物として、例えば、菌体を含む生産物、培養後の培地から細菌を除いた培養上清、培養後の培地から分離精製されたインドール−3−乳酸等が挙げられるが、このうち、菌体を除いた生産物が好適である。当該生産物は、本技術の効果を損なわない限り、加熱、凍結乾燥、他成分の混合等の種々の追加操作を行ってもよい。
本技術の組成物の製造方法として、上述で得られたインドール−3−乳酸を含む生産物と、プレバイオティクスとを混合する工程を含んでもよい。さらに、前記混合工程において、さらに乳成分を混合することが好適である。
本技術の製造工程において、プレバイオティクス及び/又は乳成分を混合する場合、当該製造工程のいずれの工程であってもよい。例えば、前記乳成分を配合する場合、前記混合工程と同時期に、又はこの前工程若しくはこの後工程のいずれでもよい。乳成分は粉体が好適である。本技術において、粉体状の組成物を製造する場合には、生産効率の観点から、粉体同士の材料を混合して粉体状の組成物を得ることが好適であるが、本技術は、これに限定されず、これら材料を混合後に公知の乾燥を行って粉体状の組成物を得ることも可能である。
また、本技術の組成物の製造方法において、飲食品組成物を製造することが好適である。本技術のビフィドバクテリウム属細菌は、摂取可能で安全性が高いので、製造段階での取扱も容易であり、また、細菌の培養技術(好適には発酵乳技術)を適用しやすく、また、要望に応じて乳成分又は植物系等のプレバイオティクスなどを適宜使用できるので、飲食品組成物の製造に有利である。また、本技術の製造方法では、インドール−3−乳酸に起因するような健康を意識した飲食品組成物を提供することも可能である。
なお、本技術の発酵飲食品を製造する場合、本技術の製造方法の製造工程において、ビフィドバクテリウム属細菌を用いた発酵工程を含んでもよいし、別のラインで製造された発酵物を混合する工程を含んでもよい。
また、本技術の組成物の形態(例えば、タブレット、カプセル剤、錠剤等)に応じて、本技術の製造方法に、当該形態を形成するための工程を含んでもよく、これにより、本技術のインドール−3−乳酸を含む組成物を種々の形態にすることができる。この形成工程において、インドール−3−乳酸を含む組成物と賦形剤等とを混合して混合物を得ることができ、例えば、タブレットの場合、当該混合物を打錠すること;ドリンクの場合、当該混合物を容器に充填すること;カプセル剤の場合、当該混合物をカプセルに充填すること;が挙げられる。
本技術の組成物の製造方法について、第一の実施形態及び第二の実施形態として、説明するが、当該組成物の用途は限定されるものではない。
本技術は、第一の実施形態の製造方法として、下記(a)工程又は下記(b)工程の少なくともいずれかを含む、インドール−3−乳酸を含む組成物の製造方法:
(a)インドール−3−乳酸を含む生産物、及びプレバイオティクスを混合する工程;、又は、(b)インドール−3−乳酸を含む生産物、及び乳成分を混合する工程;を提供することができる。当該(a)混合工程及び(b)混合工程における生産物は、菌体が除かれた生産物が好適である。さらに、前記(a)混合工程において、さらに乳成分を混合することが好適である。
本技術の第一の実施形態の製造方法によって、コストや作業性等の生産効率がよい、インドール−3−乳酸を含む組成物を得ることができる。
また、本技術は、第二の実施形態の製造方法として、下記工程(A)及び(B)を含む、インドール−3−乳酸を含む組成物の製造方法:
(A)培地で本技術のビフィドバクテリウム属細菌を培養し、生産物を得る工程;
(B)前記生産物を乾燥に供し、乾燥物を得る工程;
を提供することができる。当該乾燥は、噴霧乾燥又は凍結乾燥が好適である。
前記(A)工程において、培養後に、本技術のビフィドバクテリウム属細菌を除去することが、インドール−3−乳酸の純度を高めることができるので好適である。また、本技術のビフィドバクテリウム属細菌を除去する前に、破砕等を行い、これにより菌体内のインドール−3−乳酸を生産物中に含ませることができる。菌体の破砕等は、生産物からのインドール−3−乳酸の回収率を高めることができるので好適である。
本技術の第二の実施形態の製造方法によって、生産効率よく、本技術のインドール−3−乳酸を含む組成物を得ることができる。
前記乳成分として、特に限定されないが、例えば、牛乳、水牛乳、羊乳、山羊乳、馬乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、濃縮乳、全脂粉乳、クリーム、バター、バターミルク、練乳及び乳タンパク質等を挙げることができ、これらからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。また、乳タンパク質として、特に限定されないが、例えば、ホエイ、カゼイン、及びこれらの加水分解物等が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。当該加水分解は、一般的なタンパク質分解手段を用いればよい。乳成分のうち、牛乳由来の乳成分が好適である。
前記乾燥の方法として、特に限定されないが、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、UHT殺菌法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、流通蒸気消毒法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、高周波滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法、酸化エチレンガス滅菌法、過酸化水素ガスプラズマ滅菌法、化学的殺菌法(アルコール殺菌法、ホルマリン固定法、電解水処理法)等が挙げられる。
また、本技術の組成物には、本技術の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプロバイオティクス効果を有する成分又はプロバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。ここで、一般的に、プロバイオティクスとは、腸内で有益な働きをする細菌をいう。また、一般的に、腸内で有益な働きをする細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する物質をプレバイオティクスという。
本技術の組成物にプレバイオティクスを含ませる場合、この細菌の増殖を促進させるために、プレバイオティクスを使用又は含有させることが好適であり、このとき、プレバイオティクス100質量部に対して、本技術のビフィドバクテリウム属細菌は1〜1,000,000質量部が好ましく、10〜10,000質量部がより好ましい。
前記プレバイオティクスとして、例えば、食物繊維、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;フィッシュオイル;又は、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)等のオリゴ糖等の成分等が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用してもよい。
また、本技術の組成物は、当該プレバイオティクス成分と、本技術のビフィドバクテリウム属細菌又はその生産物とを配合して製造することができる。
また、本技術で使用できる「ヒトミルクオリゴ糖」としては、2’−フコシルラクトース、3−フコシルラクトース、2’,3−ジフコシルラクトース、ラクト−N−トリオースII、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−ネオフコペンタオース、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト−N−フコペンタオースV、ラクト−N−ネオフコペンタオースV、ラクト−N−ジフコヘキサオースI、ラクト−N−ジフコヘキサオースII、6’−ガラクトシルラクトース、3’−ガラクトシルラクトース、ラクト−N−ヘキサオース及びラクト−N−ネオヘキサオース等の中性ヒトミルクオリゴ糖、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3−フコシル−3’−シアリルラクトース、ジシアリル−ラクト−N−テトラオースなどの酸性ヒトミルクオリゴ糖が使用できる。これらヒトミルクオリゴ糖からなる群より選択される1種又は2種以上を使用してもよい。
本技術で使用できる「食物繊維」としては、ビフィドバクテリウム属細菌及び/又は乳酸菌が資化できる糖質であることが好適であり、植物由来及び/又は細菌由来のものが挙げられる。本技術の糖質として、多糖及び/又はオリゴ糖が好適である。水溶性の食物繊維として、4〜30℃程度の水に溶解性のある多糖及び/又はオリゴ糖が好適である。当該食物繊維として、ヒトの酵素において難消化性のものが好適である。
本技術における食物繊維として、例えば、オリゴ糖(例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸等)、並びに、食物繊維(ポリデキストロース、イヌリン、キシラン、アラビナン、ペクチン、ガラクタン、セルロース、大豆繊維、デキストリン、デキストラン等)等の糖質が使用できる。これら糖質からなる群より選ばれる1種又は2種以上を使用してもよい。
本技術の製造方法で得られたインドール−3−乳酸又はインドール−3−乳酸を含む組成物は、コーティング、包装やカプセル充填等の加工を行ってもよく、また、形態として例えば、固体(例えば、菌粉末、錠剤等)、半固体(包装等)又は液体(例えば、カプセル剤等)等のいずれでもよく、使用時に水に分散しやすい形態が好ましい。
<2.本技術のインドール−3−乳酸の用途>
本技術は、インドール−3−乳酸を有効成分として含む筋肉炎症抑制用及び/又は腸管炎症抑制用の組成物を提供することができる。
本技術のインドール−3−乳酸は、後記〔実施例〕に示すように、筋肉炎症抑制作用及び腸管炎症抑制作用、筋肉内又は腸管内の炎症性サイトカインの発現が増加することを抑制する作用、筋肉細胞のIL−6の増加抑制作用、結腸細胞のTNFαの増加抑制作用、炎症誘発物質に起因する炎症抑制作用等(以下、「筋肉炎症抑制作用・腸管炎症抑制作用等」ともいう)を有する。
炎症誘発物質として、例えば、炎症性サイトカイン、腸内腐敗産物、LPS(リポポリサッカライド)、細菌、ウイルス、インドール、アンモニア、フェノール、花粉等が挙げられるが、これに限定されない。
したがって、本技術のインドール−3−乳酸は、有効成分として筋肉炎症抑制用組成物又は腸管炎症抑制用組成物に含有させることができ、また、上述した各種効能を期待する組成物に含有させることができ、これら各種組成物は製剤としても使用できる。
本技術のインドール−3−乳酸は、インドール−3−乳酸自体を単独としてそのまま用いることが可能であり、又は生理的若しくは薬剤学的に許容される通常の担体若しくは希釈剤と共に混合して用いることもできる。
また、本技術は、インドール−3−乳酸を生産する細菌(例えば、ビフィドバクテリウム属細菌等)を経口摂取して、腸内等の体内でこの細菌にインドール−3−乳酸を産生させて、このインドール−3−乳酸を利用して本技術の効能を発現させてもよい。また、本技術は、インドール−3−乳酸を含む製品を使用して本技術の効能を発現させてもよい。当該製品として、例えば、インドール−3−乳酸を生産する細菌由来の生産物若しくは菌体成分、又はその分離物や精製物等が挙げられ、さらにこれらを添加した飲食品等であってもよい。本技術は、経口摂取又は経口投与が望ましい。
また、本技術のインドール−3−乳酸は、本技術の効能を期待して、医薬、飲食及び飼料等の種々の用途及び種々の組成物に使用できる。
また、本技術は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制作用等の目的のために用いる、インドール−3−乳酸又はその使用を提供することができる。また、本技術のインドール−3−乳酸は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制等を行う方法の有効成分として使用することができる。
また、本技術のインドール−3−乳酸は、上述した本技術の効能を有する又は使用目的の各種製剤又は各種組成物等の製造のために使用することができる。
また、本技術のインドール−3−乳酸又は当該インドール−3−乳酸含有組成物は、筋肉炎症及び/又は腸管炎症によって生じる各種の症状及び疾患に対する予防、改善又は治療に使用することが可能である。
本技術において、筋肉炎症によって生じる各種の症状及び疾患として、例えば、運動等で発生する筋肉組織の炎症、炎症性筋疾患等が挙げられ、これからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
本技術において、筋肉炎症によって発生する症状や疾患として、例えば、筋肉痛、筋肉疲労、サルコペニア等が挙げられ、これからなる群から選択される1種又は2種以上が本技術の対象として好ましい。筋肉痛とは、一般的に運動等によって発生する炎症反応である。また、サルコペニアとは、炎症が筋量減少や同化抵抗性(筋タンパク質合成率低下等)に関わることが知られており、これらはサルコペニアの発症にも関わると考えられている。
本技術において、炎症性筋疾患のうち、多発筋炎が好適であり、この多発筋炎は以下の通りに分類されることが報告されている(Banker と Engel,1986)。当該炎症性筋疾患として、例えば、成人型多発筋炎、成人型皮膚筋炎、小児及び若年型皮膚筋炎、膠原病を伴う皮膚筋炎、膠原病を伴う多発筋炎、悪性腫瘍に伴う皮膚筋炎、及び悪性腫瘍に伴う多発筋炎等が挙げられ、これからなる群から選択される1種又は2種以上が本技術の対象として好ましい。
本技術において、腸管炎症によって生じる各種の症状及び疾患として、例えば、ループス腸炎、消化管ベーチェット病、虚血性大腸炎(循環器系の異常)、上腸間膜動脈血栓症(循環器系の異常)、ウイルス・細菌感染性腸炎(出血性大腸炎等)、上皮性及び非上皮性消化管腫瘍等が挙げられ、これからなる群から選択される1種又は2種以上が本技術の対象として好ましい。
炎症性腸疾患として、例えば、潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)、クローン病(Crohn disease)等が挙げられ、これからなる群から選択される1種又は2種以上が本技術の対象として好ましい。
なお、本技術のインドール−3−乳酸は、適用対象であるヒト若しくは非ヒト動物(好適には霊長類)に使用してもよく、ヒト及びペットが好ましく、より好ましくはヒトである。より好適には炎症性筋や腸管炎症に起因する症状及び疾患を持つヒトである。
また、本技術は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、健康増進、生活習慣病予防(例えば、境界領域の予備軍)等が挙げられる。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;悪化の防止又は遅延;進行の逆転、防止又は遅延をいう。
本技術の筋肉炎症抑制用組成物又は腸管炎症抑制用組成物に含まれるインドール−3−乳酸の量は、特に制限されないが、好ましくは0.0001〜75質量%、より好ましくは0.001〜50質量%である。
本技術の筋肉炎症抑制用組成物又は腸管炎症抑制用組成物におけるインドール−3−乳酸の割合は、摂取者が1回当たりに摂取する筋肉炎症抑制又は腸管炎症抑制用組成物の量と、インドール−3−乳酸の量に応じて決定すればよい。
なお、1回当たりのインドール−3−乳酸の量は、摂取者の性別、年齢、状態、患者であれば疾患の重篤度などに応じて適宜決定すればよい。
本技術のインドール−3−乳酸の使用量は、例えば、0.1〜10000mg/日とすることが好ましく、1〜2000mg/日とすることがより好ましく、10〜1000mg/日とすることがさらにより好ましい。体重1kg当たりの換算量としては、0.01〜1000mg/kg体重/日とすることが好ましく、0.1〜200mg/kg体重/日とすることがより好ましく、1〜100mg/kg体重/日とすることがよりさらに好ましい。
また、本技術のインドール−3−乳酸の用法(投与又は摂取方法、回数及び期間)は特に限定されない。本技術が医薬用、飲食品用、飼料用の場合でも、当該本技術のインドール−3−乳酸の用法と同様にして行うことが好ましい。
本技術のインドール−3−乳酸の1日当たりの投与又は摂取回数は特に制限されず、1日当たりのインドール−3−乳酸の投与量又は摂取量に応じて適宜決定することが可能である。
本技術のインドール−3−乳酸の用法は、経験的に安全性が高いこともあり、ある程度の期間、恒常的に継続的に摂取することが可能であり、好ましい。
本技術において、本技術のインドール−3−乳酸の他に、必要に応じて、任意の成分を組み合わせて使用してもよい。任意成分として、医薬品、飲食品又は飼料等において許容される成分を適宜使用すればよい。任意成分として、例えば、糖類、糖アルコール類、多糖類、pH調整剤、脂肪酸エステル類、矯味矯臭剤、香料、賦形剤等が挙げられる。
本技術の組成物は、公知の製造方法を適宜利用して製造することができる。
[1]医薬組成物
本技術に用いられるインドール−3−乳酸は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制作用等の効能を有するため、筋肉炎症又は腸管炎症に起因する症状又は疾患の予防、改善又は治療に有効な医薬組成物等として利用することができる。
かかる医薬組成物に含まれるインドール−3−乳酸の量は、特に制限されないが、他成分を含む場合、好ましくは0.0001〜75質量%、より好ましくは0.001〜50質量%である。
当該医薬組成物の投与量は、特に限定されず年齢、性別、症状の程度等に応じて決定されるが、有効成分としてのインドール−3−乳酸の投与量として、0.1〜10000mg/日とすることが好ましく、1〜2000mg/日とすることがより好ましく、10〜1000mg/日とすることがさらにより好ましい。体重1kg当たりの換算量としては、0.01〜1000mg/kg体重/日とすることが好ましく、0.1〜200mg/kg体重/日とすることがより好ましく、1〜100mg/kg体重/日とすることがよりさらに好ましい。また、1日の投与量を複数回に分けてもよく、1日1回から3回に分けることが好ましいが、2回に分けることがより好ましい。
なお、本技術の医薬組成物の用法は、上述した「本技術のインドール−3−乳酸の用法」を採用することができる。
投与経路は、例えば経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、経粘膜投与、鼻腔内投与、直腸内投与等が挙げられる。このうち、経口投与(経口摂取)が好ましい。
なお、投与対象は、通常、ヒトであることが好ましいが、ヒト以外の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ等のペット動物、ウシ、ヒツジ、ブタ等の家畜も含むものとする。
投与形態(又は製剤)としては、固体製剤及び液体製剤のいずれの形態でもよく、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、注射剤、粉末剤、噴霧製剤等が挙げられる。
本技術の医薬組成物は、製薬上許容可能な担体を含んでいてもよい。かかる担体には、賦形剤又は希釈剤が含まれ、例えば、デキストラン類、サッカロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、トラガカント、アクリル酸コポリマー、エタノール、生理食塩水、リンゲル液等が挙げられる。
前記担体に加えて、必要に応じて防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、抗酸化剤等の添加剤を加えることができる。これらの添加剤は、製薬の際に使用されるものが好ましい。
本技術のインドール−3−乳酸を有効成分として含む医薬組成物を製造する際は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。
本技術に係る体内筋肉炎症又は腸管炎症に起因する各種症状又は疾患のための予防、改善又は治療用医薬組成物は、他の医薬品と組み合わせて使用してもよい。
[2]飲食品組成物
本技術に用いられるインドール−3−乳酸は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制作用等に用いるためのヒト若しくは動物用の飲食品、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等(以下、「飲食品等」ともいう)の有効成分として、これらに配合して使用可能である。
例えば、本技術に用いられるインドール−3−乳酸は、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品(例えば、乳児用ミルク(例えば、乳児用調製粉乳等))、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販食品や、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等に添加して用いることができる。飲食品の形態は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず用いることができる。
かかる飲食品組成物に含まれるインドール−3−乳酸の量は、特に制限されないが、他成分を含む場合、好ましくは0.0001〜75質量%、より好ましくは0.001〜50質量%である。
本技術の飲食品組成物の摂取量は、特に限定されないが、有効成分としてのインドール−3−乳酸の摂取量として、0.1〜10000mg/日とすることが好ましく、1〜2000mg/日とすることがより好ましく、10〜1000mg/日とすることがさらにより好ましい。体重1kg当たりの換算量としては、0.01〜1000mg/kg体重/日とすることが好ましく、0.1〜200mg/kg体重/日とすることがより好ましく、1〜100mg/kg体重/日とすることがよりさらに好ましい。また、1日の摂取量を複数回に分けてもよく、1日1回から3回に分けることが好ましいが、2回に分けることがより好ましい。
本技術の飲食品組成物の摂取方法は、上述した「本技術のインドール−3−乳酸の用法」を採用することができる。
本技術で定義される飲食品等は、特定の用途(特に保健の用途)や機能が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
本技術の飲食品組成物は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制等に用いるための;筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制等に起因する症状又は疾患(これら予備軍含む)の予防・改善に用いるため;の保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。かかる表示としては、例えば、「筋肉疲労や筋肉痛が気になる方」、「お腹が弱い方」「お腹が気になる方」へ等と表示することが挙げられる。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
〔発酵飲食品及びその製造方法〕
本技術は、上述した筋肉炎症抑制・腸管炎症抑制等に用いる発酵飲食品を提供することができ、また、本技術は、筋肉炎症抑制用及び/又は腸管炎症抑制用のインドール−3−乳酸を含有する発酵飲食品であってもよい。そのような発酵飲食品としては、チーズ、乳酸菌飲料及び発酵乳等が挙げられるが、これに限定されない。
本技術の発酵飲食品の製造方法は、例えば、発酵菌として、乳酸菌スターター及び/又はビフィドバクテリウム属細菌を用いる公知の方法にて製造することができ、本技術はこれに限定されるものではない。
本技術の発酵飲食品の製造方法について、以下に一例を説明するが、これに限定されるものではない。
本技術の発酵飲食品の製造方法は、インドール−3−乳酸を発酵飲食品の原料として使用できる。また、本技術の発酵飲食品の製造方法は、インドール−3−乳酸を生産する細菌(例えば、ビフィドバクテリウム属細菌等)又はこの生産物及び/又は菌体成分由来物を利用してもよい。本技術のインドール−3−乳酸、インドール−3−乳酸を含む生産物及び/又は菌体、インドール−3−乳酸を生産する細菌は、発酵飲食品の発酵工程前、発酵工程中、及び/又は発酵工程後のいずれにおいても使用することができる。
例えば、インドール−3−乳酸を生産するビフィドバクテリウム属細菌を利用した発酵工程を経て、発酵飲食品が製造されてもよい。
上述にて得られた発酵飲食品には、インドール−3−乳酸が含まれており、このインドール−3−乳酸の由来は上清由来でもよいし菌体成分由来でもよく、これにより本技術の効能を良好に発揮することができる。
このように、本技術は、飲食品、飲食品組成物、機能性食品、医薬品等の幅広い分野に使用することができる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔試験例1:筋芽細胞を用いた細胞試験〕
ATCC(American Type Culture Collection)から得たラット筋芽細胞株L6細胞(以下、L6という)を1.5×10 cells/cmになるように12ウェルプレートに播種し、10%Fetal Bovine Serum及び1%Penicillin Streptomycin含有DMEM培地(増殖用培地)にて、37℃、5%CO下で24時間培養した。その後、2%Horse Serum及び1%Penicillin Streptomycin含有DMEM培地(分化誘導用培地)にて培養した。7日後にインドール−3−乳酸(インドール−3−乳酸)を終濃度1μg/mLとなるように分化誘導用培地に添加し、24時間培養した。前記培地にインドール−3−乳酸を添加せずに培養した試料をコントロールとした。
コントロール及びインドール−3−乳酸含む試料を24時間培養後、それぞれにLPS(リポポリサッカライド)(終濃度1μg/mL)又は、PBSを添加し、1時間培養した後、TRIZOL(R) Reagent(インビトロジェン社)を用いてTotal RNAを回収した後、リアルタイムPCR法を用いて筋炎症マーカーであるIL−6と内因性コントロール遺伝子としてGAPDHの発現量を定量解析した。IL−6の発現量はGAPDHの発現量にて補正した。
なお、試験例1及び試験例2において、インドール−3−乳酸(商品名:Indole-3-lactic Acid、東京化成工業社製)及びLPS(商品名:リポポリサッカリド from Escherichia coli O111:B4、Sigma-Aldrich社製)を使用した。
〔試験例2:結腸細胞を用いた細胞試験〕
American Type Culture Collection(ATCC)より入手したヒト大腸癌細胞株HT29細胞(以下、HT29という)を2.63x10 cells/cmになるように12ウェルプレートに播種し、10%Fetal Bovine Serum及び100unit/ml Penicillin、100μg/mL Streptomycin含有DMEM培地にて、37℃、5%CO下で16時間培養した。インドール−3−乳酸を終濃度1−1000 μMとなるように前記培地に添加し、3時間培養した。前記培地にインドール−3−乳酸を添加せずに培養した試料をコントロールとした。
コントロール及びインドール−3−乳酸含む試料を3時間培養後、それぞれに、LPS(終濃度100ng/mL)又は、PBSを添加し、3時間培養した後、TRIZOL(R) Reagent(インビトロジェン社)を用いてTotal RNAを回収した後、TaKaRa PrimeScript(R) RT reagent Kitを用いてcDNAを作製した。このcDNAをサンプルとしてリアルタイムPCR法を用いて炎症マーカーであるTNFαと内因性コントロール遺伝子としてGAPDHの発現量を定量解析した。TNFαの発現量はGAPDHの発現量にて補正した。
L6におけるIL−6発現量は、表1の通りとなり、炎症誘導剤LPS添加によりIL−6発現量は増加し、インドール−3−乳酸添加によりLPS誘導性IL−6発現促進を抑制した。具体的には、コントロールに比してLPS処理群では2.41倍増加し、インドール−3−乳酸処理群では1.82倍まで抑制されることが確認された。
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HT29におけるTNFα発現量は、表1の通りとなり、炎症誘導剤LPS添加によりTNFαの発現量は増加し、インドール−3−乳酸添加によりLPS誘導性TNFα発現促進を抑制した。具体的には、コントロールに比してLPS処理群では12.17倍増加し、インドール−3−乳酸処理群では100ng/mLの濃度で8.41倍まで抑制されることが確認された。
上記の結果から、インドール−3−乳酸は筋芽細胞や結腸細胞で生じる炎症に対しそれぞれ抗炎症活性を有すること、筋肉内のIL−6の増加抑制作用、大腸内のTNFα増加抑制作用、炎症誘発物質に起因する炎症抑制作用が示唆された。すなわち、インドール−3−乳酸は、筋肉炎症抑制作用及び腸管炎症抑制作用の両方があることが示唆された。
〔各菌株の培養方法及び培養上清の調製方法〕
各菌株はMRS broth(Becton Dickinson社製)に0.05% L−cysteine(関東化学社製)を添加した培地で、炭酸ガスを通気しながら嫌気的にAnaero Pack(三菱ガス化学社製)を用いて、16時間、37℃で継代・培養したものを用いた。使用した各菌株は、表3に示す。
培養後の各菌体懸濁液を遠心(5000g,30分,4℃)し、上清を捨てた後、菌体をPBS−C(0.05% L−cysteineを添加したPBS)に再懸濁した。最終的にOD600の値を0.2になるようにPBS−Cで希釈して揃えた菌液を調製した。
この調製菌液を、新たなMRS培地液に対して0.3%になるように接種した。各菌株を接種したMRS培地液を、それぞれ、24時間、37℃で嫌気的に培養した後、菌液を遠心(5000g,5min)して上清菌液を回収した。得られた上清菌液をフィルタ(φ=0.22μm、ミリポア社製)処理をした後、インドール−3−乳酸の測定をするまで、−20℃で保存した。
〔インドール−3−乳酸の測定方法〕
凍結保存した上清菌液を溶解し、上清菌液1容量に対して9倍容量のメタノールを添加し混合した後4℃で10分間静置する。その後、メタノール添加上清菌液を遠心(15000g,10min)して、上清を回収し、蒸発させて残渣を得た。当該残渣を水1mLに溶解してフィルタ(φ=0.22μm、ミリポア社製)処理をした後、LC−MSによる分析を行った。
インドール−3−乳酸の分析は、Accucore RP−MSカラム 100x2.1mm(Thermo社製)をHPLCシステム Prominence(島津製作所社製)に繋げ、TSQ Quantum Discovery MAX(Thermo社製)によるタンデム質量分析で行った。
移動相は、0.2%ギ酸(和光純薬社製)を含む超純水(和光純薬社製)とアセトニトリル(和光純薬社製)を用いて、アセトニトリルの含有量をサンプル注入後15分間に2%から50%まで上昇させた。
サンプル注入後12分前後に溶出するインドール−3−乳酸を、前駆イオンm/z=206.02、プロダクロイオンm/z=130.07、衝突エネルギー19eVで測定し、インドール−3−乳酸の同定及び定量を行った。なお、インドール−3−乳酸誘導体の同定及び測定については、各標品を用いてLC/MSにて行うことが可能である。
各菌株のインドール−3−乳酸の生産量について、表3に示す。表3については、菌株ごとに、上述の培養を3回行って3サンプルを作製し、3サンプルの各インドール−3−乳酸値を測定し、これらのインドール−3−乳酸の平均値を、「平均ILA」として示す。
[製造例1:発酵乳]
牛乳、脱脂乳、クリーム等の乳製品を適宜混合して、(A)乳タンパク質 3.5質量%以上、(B)乳脂肪 3.5質量%以下、(C)炭水化物 5.0質量%以上、及び(D)カルシウム 0.15質量%以上を含む発酵乳原料を調製する。当該発酵乳原料に、ブルガリクス菌及びサーモフィルス菌の混合スターター(クリスチャン・ハンセン社製)を0.02質量%添加し、40℃で発酵させて、乳酸酸度0.80%に達するまで発酵して発酵乳ベースを調製する。
次に、インドール−3−乳酸3.5質量%を水に溶解し、80℃まで加温し、5分間保持して殺菌処理した後に10℃まで冷却してインドール−3−乳酸溶液を調製する。インドール−3−乳酸として、インドール−3−乳酸生産能を有するビフィドバクテリウム属細菌にて製造した、インドール−3−乳酸入りの生産物を使用してもよい。
前記インドール−3−乳酸溶液を、前記発酵乳ベースと前記インドール−3−乳酸溶液の総量に対して3質量%となるように混合して、インドール−3−乳酸入り発酵乳を製造する。
インドール−3−乳酸の1日摂取量が、1〜100mg/kg体重/日になるように、本技術の筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用の発酵乳を毎日継続して摂取する。これにより、体内での筋肉炎症抑制及び/又は腸管炎症抑制効果が期待できる。
[製造例2:発酵乳]
牛乳、脱脂乳、クリーム等の乳製品を適宜混合して、(A)乳タンパク質 3.5質量%以上、(B)乳脂肪 3.5質量%以下、(C)炭水化物 5.0質量%以上、及び(D)カルシウム 0.15質量%以上を含む発酵乳原料を調製する。当該発酵乳原料に、インドール−3−乳酸生産能を有するビフィドバクテリウム属細菌、ブルガリクス菌及びサーモフィルス菌の混合スターター(クリスチャン・ハンセン社製)を0.02質量%添加し、40℃で発酵させて、乳酸酸度0.80%に達するまで発酵して発酵乳ベースを調製する。これを発酵させて、インドール−3−乳酸入りの発酵乳を製造する。
インドール−3−乳酸の1日摂取量が、1〜100mg/kg体重/日になるように、本技術の筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用の発酵乳を毎日継続して摂取する。これにより、体内での筋肉炎症抑制及び/又は腸管炎症抑制効果が期待できる。
[処方例1:筋肉炎症抑制及び腸管炎症抑制用粉末]
インドール−3−乳酸に賦形剤等の各種任意成分を混合して、筋肉炎症抑制及び腸管炎症抑制用粉末を得る。当該粉末は、サプリメントとして使用することができ、また水と混合することで飲料とすることができる。また、当該粉末は、カプセル容器に充填又はカプセル皮膜することで、筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用のカプセル剤とすることができる。当該粉末は、圧縮成形することで、筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用の錠菓とすることができる。当該粉末により、筋肉炎症抑制効果及び/又は腸管炎症抑制効果が期待できる。

Claims (7)

  1. インドール−3−乳酸を有効成分として含む筋肉炎症抑制用又は腸管炎症抑制用の組成物。
  2. 前記インドール−3−乳酸が、ビフィドバクテリウム属細菌の生産物又は菌体成分由来である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びビフィドバクテリウム・ビフィダムからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌を含む、請求項1又は2記載の組成物。
  4. さらにプレバイオティクスを含む、請求項1〜3のいずれかの項に記載の組成物。
  5. 前記プレバイオティクスが、オリゴ糖及び/又は食物繊維である、請求項1〜4のいずれかの項に記載の組成物。
  6. 前記組成物が、経口摂取用である、請求項1〜5のいずれかの項に記載の組成物。
  7. 前記組成物が、医薬組成物又は飲食品組成物である、請求項1〜6のいずれかの項に記載の組成物。
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