JP2020160338A - 感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、電子部品 - Google Patents

感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた、現像性を有し、硬化前後の寸法安定性及び硬化後の耐薬品性を有する感光性樹脂組成物と、ドライフィルム、硬化物、電子部品を提供する。【解決手段】(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物を含む、感光性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及び、電子部品に関する。
LSIなどの半導体素子のバッファーコート膜やウエーハレベルパッケージ(WLP)の再配線用の絶縁膜には、アルカリ可溶性樹脂である、感光性のポリイミドやポリベンゾオキサゾール(PBO)等の感光性耐熱樹脂の前駆体を含む感光性樹脂組成物が、広く用いられている。例えば、ウエハ上で現像残渣(スカム)がなく、高感度のパターンニングが可能な感光性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂、ジアゾナフトキノン化合物、フェノール性水酸基を含まずメチロール基を含む化合物を含有する、感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
このような前駆体を含む感光性樹脂組成物を用いてパターン化された硬化絶縁膜を形成する方法としては、例えば、ウエハなどの基材上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成し、該乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射して露光し、次いで現像することによって所望のパターン膜を形成した後、320℃程度の温度にて環化反応させて、硬化する方法が一般的である。
一方で、WLPの再配線では、半導体素子の小型化や配線の高密度化による多層配線化のため、絶縁層と導体回路を交互に多層に積層することが多くなってきている。
このような多層配線の際に、特に耐熱樹脂の前駆体を含む感光性樹脂組成物では、下層となる絶縁層の上層に、上層の絶縁層を形成するための樹脂組成物を重ねて塗布することになり、下層の絶縁層は上層の絶縁層を形成するための樹脂組成物に含まれる溶媒に曝され、下層の絶縁層にクラックが発生し易いという新たな課題があることに、発明者らは気付いた。
また、近年では、回路形成したウエハをダイシングした半導体チップ(ダイ)をエポキシ樹脂の封止材で封止した後に、再配線を形成する、いわゆるチップファースト型ファンアウトウエハレベルパッケージ工法が登場している。そして、かかる工法に用いられる再配線用の絶縁材料としては、エポキシ樹脂の耐熱性の観点から、220℃程度の温度で硬化可能な材料が求められているが、低温での硬化では、誘電特性や靭性といった特性が悪化するという課題もあることに、発明者らは気付いた。
このような課題は、上述した特許文献1の技術では、依然として解決できるものではなかった。
特開2005−37925号公報
そこで、本発明の目的は、220℃程度の温度で硬化可能で、特に硬化物として、耐薬品性、誘電特性、靭性において優れた特性を有する感光性樹脂組成物と、ドライフィルム、硬化物、電子部品を提供することにある。
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討するなかで、ポリベンゾオキサゾール前駆体と2つのアリル基を有する化合物とを組み合せて配合することで、ポリベンゾオキサゾールまたはポリベンゾオキサゾール前駆体とアリル化合物の自己反応による重合体とが相互に絡み合う、いわゆる相互侵入高分子網目構造を形成することに着目し、このような分子構造を形成する感光性樹脂組成物によれば、前記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物を含む、感光性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とする、ドライフィルムを提供する。
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物、又は、前記ライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする、硬化物を提供する。
また、本発明は、前記硬化物を有することを特徴とする電子部品を提供する。
本発明によれば、220℃以下の低温硬化が可能で、特に硬化物として、耐薬品性、誘電特性、靭性において優れた特性を有する感光性樹脂組成物と、ドライフィルム、硬化物、電子部品を提供することができる。
なお、本願において、説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
1.感光性樹脂組成物
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体と、(B)感光剤と、(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物と、を含む、感光性樹脂組成物である。
以下に、本発明の感光性樹脂組成物について詳述する。
1−1.(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む。
この(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する方法は特に限定されず、公知の方法で合成することができる。例えば、アミン成分としてのジヒドロキシジアミン類と、酸成分としてのジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸のジハライドとを反応させて得ることができる。
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(1)で示される繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミドであることが好ましい。
(式1)
Figure 2020160338
(式中、Xは4価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。nは1以上の整数であり、好ましくは10〜50、より好ましくは20〜40である。)
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を上記の合成方法で合成する場合、前記一般式(1)中、Xは、前記ジヒドロキシジアミン類の残基であり、Yは、前記ジカルボン酸の残基である。
前記ジヒドロキシジアミン類としては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
前記ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
前記一般式(1)中、Xが示す4価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、2つのヒドロキシ基と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。前記4価の芳香族基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましく、6〜24であることがより好ましい。前記4価の芳香族基の具体例としては下記の官能基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれうる公知の芳香族基を用途に応じて選択することができる。
Figure 2020160338
前記4価の芳香族基は、前記芳香族基の中でも下記の基であることが好ましい。
Figure 2020160338
前記一般式(1)中、Yが示す2価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で前記一般式(1)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましく、6〜24であることがより好ましい。前記2価の芳香族基の具体例としては下記の基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
Figure 2020160338
(式中、Aは単結合、−CH−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−NHCO−、−C(CF−、−C(CH−からなる群から選択される2価の基を表す。)
前記2価の有機基は、前記芳香族基の中でも下記の基であることが好ましい。
Figure 2020160338
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミド酸の繰り返し構造を2種以上含むことができる。また、上記のポリヒドロキシアミド酸の繰り返し構造以外の構造を含んでいてもよく、例えば、ポリアミド酸の繰り返し構造を含んでいてもよい。
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は5,000〜100,000であることが好ましく、8,000〜50,000であることがより好ましい。ここで、数平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。また、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の質量平均分子量(Mw)は10,000〜200,000であることが好ましく、16,000〜100,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。Mw/Mnは1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の配合量は、組成物固形分全量基準で30〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。
なお、組成物固形分とは、溶媒(特に有機溶媒)以外の組成物を構成する成分、又はその質量や体積を意味する。
1−2.(B)感光剤
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含む。
本発明の(B)感光剤としては、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。これら中でもナフトキノンジアジド化合物が好ましい。
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には例えば、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599,)や、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]―α,α−ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF−428,TKF−528)等を使用することができる。
ここで、ナフトキノンジアジドの付加は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類を、ヒドロキシ化合物やアミノ化合物と反応させればよい。
(B)感光剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)感光剤の配合量は、組成物固形分全量基準で3〜20質量%であることが好ましい。
1−3.(C)分子中に2つのアリル基を有する化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)分子中に2つのアリル基を有する化合物を含む。
この(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、2,2’−ジアリルビスフェノールA、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、等を挙げることができる。そして、この(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物は、220℃以下の低温で自己反応により直鎖状の重合体となることから、組成物中でポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾオキサゾール前駆体との相互侵入高分子網目構造を形成する。その結果、本発明の感光性樹脂組成物は、220℃以下での低温硬化が可能となり、また、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応も妨げ難い。
また、上記の(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物のうち、分子構造としてイソシアヌル環を有する化合物は、反応性に優れ、分子内での分極が小さいことから、誘電率が低く、耐薬品性及び靭性に優れた硬化物となることから好ましい。具体的には、分子構造としてイソシアヌル環を有する化合物として、例えば、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート等を挙げることができる。
これら(C)分子中に2つのアリル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)分子中に2つのアリル基を有する化合物の添加量は、組成物固形分全量基準で0.5〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。このような配合割合にあれば、前述のように、感光性樹脂組成物の220℃以下での低温硬化が可能となり、特に硬化物として、誘電率が低く、耐薬品性及び靭性に優れた、感光性樹脂組成物とすることが可能となる。なお、本発明の効果を阻害しない範囲内で、感光性樹脂組成物は、分子中に1つのアリル基を有する化合物を含んでいてもよい。
1−4.その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物は、さらにその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、溶媒、架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤、増感剤、接着助剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、密着剤を添加することができる。
溶媒としては(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)分子中に2つのアリル基を有する化合物のうち少なくともいずれか一種、及び、他の任意の添加剤を溶解させるものであれば、特に限定されない。溶媒の具体例としては、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶媒の量は、塗布膜厚や粘度に応じて、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、50〜9000質量部の範囲で用いることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤を添加することで、膜の物性や密着性を向上することができる。架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、特に制限されない。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、光感度を向上させるための公知の増感剤や、基材との接着性向上のための公知の接着助剤などを配合することもできる。
さらにまた、本発明の感光性樹脂組成物には、加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、各種着色剤及び繊維等を配合してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型であってもネガ型であってもよいが、ポジ型の場合において、より顕著な効果を得ることができ、好ましい。
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明の感光性樹脂組成物を塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有する。本発明のドライフィルムは、樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持フィルム)に本発明の感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、前記した樹脂層を形成し、好ましくはその上にカバーフィルム(保護フィルム)を積層することにより、製造することができる。カバーフィルムとキャリアフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
本発明のドライフィルムにおいて、キャリアフィルム及びカバーフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
キャリアフィルムとしては、例えば、2〜150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
本発明のドライフィルム上の樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましい。
2.感光性樹脂組成物の硬化物の製造方法
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、その硬化物であるパターン膜は、例えば、ポジ型感光性樹脂組成物の場合、下記のように製造する。
まず、ステップ1として、感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥する、或いはドライフィルムから樹脂層を基材上に転写(ラミネート)することにより塗膜を得る。感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中の(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70〜140℃で1〜30分の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1〜20分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分〜1時間の条件で行うことができる。
基材については、特に制限はなく、シリコンウエハ等の半導体基材、配線基板、各種樹脂や金属などからなる基材に広く適用できる。
次に、ステップ2として、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接、露光する。露光光線は、(B)感光剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には、露光光線は、最大波長が350〜410nmの範囲にあるものが好ましい。上述したように、適宜増感剤を用いると、光感度を調整することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
続いて、ステップ3として、加熱し、未露光部の(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の一部を閉環してもよい。ここで、閉環率は、30%程度である。加熱時間及び加熱温度は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、塗布膜厚及び(B)感光剤の種類によって、適宜変更する。
次いで、ステップ4として、塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独又は組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶媒を使用してもよい。
その後、ステップ5として、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。このとき、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環し、ポリベンゾオキサゾールを得ればよい。加熱温度は、ポリベンゾオキサゾールのパターン膜を硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150〜350℃で5〜120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、200〜300℃である。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
なお、本発明の感光性樹脂組成物がネガ型感光性樹脂組成物の場合、(B)感光剤として、光重合開始剤又は光塩基発生剤を用いて、上記ステップ4において塗膜を現像液で処理することにより、塗膜中の未露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
特に、本発明の感光性樹脂組組成物の硬化塗膜は、220℃程度の温度で硬化しても320℃程度の温度で硬化した硬化塗膜と遜色のない特性を有するため、チップファースト型ファンアウトウエハレベルパッケージ工法に、好適に用いることができる。
3.感光性樹脂組成物の用途
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、又は接着剤、あるいは、表示デバイス、半導体素子、電子部品、光学部品、又は建築材料の形成材料として好適に用いられる。具体的には、表示デバイスの形成材料としては、層形成材料や画像形成材料として、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、絶縁膜、配向膜等に用いることができる。また、半導体素子の形成材料としては、レ絶縁膜、バッファーコート膜のような層形成材料等に用いることができる。さらに、電子部品の形成材料としては、封止材料や層形成材料として、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。さらにまた、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。さらにまた、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、例えば、ポリベンゾオキサゾールからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能することから、特に半導体素子、表示デバイス及び発光素子の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ素子用保護膜、バンプ構造を有する素子の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜等として好適に利用できる。
さらに、電子部品の形成材料としては、封止材料や層形成材料として、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。
さらにまた、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。
さらにまた、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り、すべて質量基準である。
(ポリベンゾオキサゾール前駆体A-1の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0g(27.3mmol)を、N−メチルピロリドン1500g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド8.78g(29.8mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。その後、室温で18時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を700mLのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。析出した個体を回収後、減圧乾燥して、式(2)のカルボキシル基末端のポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。GPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,500、数平均分子量は11,600、PDIは2.54であった。
(式2)
A−1
Figure 2020160338
(実施例1〜9、比較例1〜3の樹脂組成物の作製)
表1の配合に基づいて、各原料を配合し、γ-ブチロラクトン300部に溶解した後、0.2μmフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。
・原料
ポリベンゾオキサゾール前駆体
A−1:前記合成によって得られたポリベンゾオキサゾール前駆体
感光剤
B−1:TKF−428(三宝化学社製、ナフトキノンジアジド化合物)
Figure 2020160338
分子中に2つのアリル基を有する化合物
C−1:ジアリルフタレート
C−2:ジアリルイソフタレート
C−3:ジアリルテレフタレート
C−4:ジアリルイソシアヌレート LADIC(四国化成製)
C−5:ジアリルプロピルイソシアヌレート
C−6:トリアリルイソシアヌレート
Figure 2020160338
密着剤
D−1:KBM−573(信越化学社製)
可塑剤
E−1:ポリエステルアクリレート アロニックスM6250(東亞合成社製)
E−2:エポキシ樹脂 EXA4850−150(DIC社製)
<耐薬品性評価>
得られた実施例1〜9及び比較例1〜3のワニスを、それぞれシリコンウエハ(φ6インチ)上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で、3分乾燥し、膜厚約8μmの塗膜を得た。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で、30分加熱した後、4℃/min.で昇温し、220℃で60分加熱して硬化膜を得た。得られたサンプルをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、酪酸エチルに10分浸漬し、浸漬前後で変化のないものを○、クラックが発生したもの又は自立膜が得られなかったものを×とした。結果を表1に示した。
<誘電率及び誘電正接測定>
得られた実施例1〜9及び比較例1〜3のワニスを、それぞれシリコンウエハ(φ6インチ)上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で、3分乾燥し、膜厚約8μmの塗膜を得た。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で、30分加熱した後、4℃/min.で昇温し、220℃で60分加熱して硬化膜を得た。次にプレッシャークッカー試験(PCT)装置を用いて、121℃、100%RH、60分の条件下で硬化膜を剥離した後、誘電率及び誘電正接を測定した。誘電率及び誘電正接は、RFインピーダンス/マテリアルアナライザー(アジレントテクノロジー社製、Agilent E4991A)を用いて、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定し評価した。その評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示した。
誘電率の評価
◎:3.0未満、
○:3.0以上3.5未満、
×:3.5以上
誘電正接の評価
◎:0.01未満、
○:0.01以上0.015未満、
×:0.015以上
なお、自立膜が得られなかったものについては、「−」とした。
<引張破断伸び評価(靭性評価)>
得られた実施例1〜9及び比較例1〜3のワニスを、それぞれシリコンウエハ(φ6インチ)上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で、3分乾燥し、膜厚約8μmの塗膜を得た。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で、30分加熱した後、4℃/min.で昇温し、220℃で60分加熱して硬化膜を得た。次にプレッシャークッカー試験(PCT)装置を用いて、121℃、100%RH、60分の条件下で硬化膜を剥離した後、破断伸びを測定した。破断伸びは島津製作所社製のEZ−SXを用いて、引張試験より求めた。評価基準として下記に従い評価を行った。また、評価は下記基準に従って行った。結果を表1に示した。
◎:10%以上
○:10%未満、2%以上
×:自立膜を得られなかったもの
Figure 2020160338
以上の結果から、本発明の効果が理解できる。

Claims (4)

  1. (A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)分子中に2つのアリル基を含有する化合物を含む、感光性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の感光性樹脂組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とする、ドライフィルム。
  3. 請求項1に記載の感光性樹脂組成物、又は、請求項2に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする、硬化物。
  4. 請求項3に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。

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