JP2020158913A - 平滑紙及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】濃色のドットが淡色の背景に分散された水玉模様とは異なる模様を有し、また、表面が平滑な紙を提供すること。【解決手段】少なくとも1種の繊維からなり、非印刷有色模様を有する平滑紙であって、 前記非印刷有色模様が淡色パターン及び濃色パターンを含み、前記濃色パターンが連続している、平滑紙。【選択図】図1

Description

本発明は、有色模様を有する平滑紙、並びに、その製造方法に関する。
木材パルプ等に由来する繊維を主体とし、様々な色及び模様を有するファンシーペーパーが、例えば、高級包装紙、書籍等の表紙・裏表紙、カタログ・パンフレット、カレンダー用紙といった用途に使用されている。
特許文献1には、そのようなファンシーペーパーの1種として、クレーター状の窪みを有する模様紙が開示されており、当該模様紙は、抄紙中に、ワイヤー上の紙料に水滴を当ててクレーター状の窪みを形成し、その後に、サイズプレス工程において着色料を塗布することによって製造される。
特開平6−272198号公報
しかし、特許文献1記載の模様紙では、クレーター状の窪みに着色料が溜まり、当該窪みが背景よりも濃色となるので、得られる模様は濃色のドットが淡色の背景に分散された水玉模様となる。
また、一般に、平滑性を高めることで紙の印刷適性が向上するが、特許文献1記載の模様紙の製造方法では、クレーター状の窪みに着色料を溜めるために当該窪みの形状を少なくともサイズプレス工程完了まで維持する必要があり、模様紙の平滑性を高めることが困難な場合がある。
本発明は、濃色のドットが淡色の背景に分散された水玉模様とは異なる模様を有し、また、表面が平滑な紙を提供することをその課題とする。
本発明の平滑紙は、
少なくとも1種の繊維からなり、非印刷有色模様を有する平滑紙であって、
前記非印刷有色模様が淡色パターン及び濃色パターンを含み、
前記濃色パターンが連続している、平滑紙である。
前記繊維が少なくとも1種の天然繊維を含むことが好ましい。
前記濃色パターンの繊維密度が前記淡色パターンの繊維密度よりも大きい方が好ましい。
前記濃色パターンの明度が前記淡色パターンの明度よりも低い方が好ましい。
前記濃色パターン及び/又は前記淡色パターンの少なくとも一部が曲線によって形成されていることが好ましい。
前記淡色パターンの少なくとも一部が不連続であることが好ましい。この場合、不連続淡色パターンの少なくとも一部は単一閉曲線によって囲まれた閉領域であってもよい。
本発明の平滑紙の有色模様の色は単一色であってもよい。
本発明の平滑紙の表面粗さは4.0μm以下であることが好ましい。
本発明の平滑紙はJIS P8119に準拠した平滑度が10秒以上であることが好ましい。
本発明の平滑紙の坪量は60〜300g/mであることが好ましい。
本発明の製造方法の第一の態様は、
少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して表面の繊維分布を不均一化する工程、
前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含み、
更に、前記湿紙又は紙を着色する工程を含む、製造方法である。
本発明の製造方法の第二の態様は、
少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して表面の繊維分布を不均一化する工程、
前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含み、
前記液滴が少なくとも1種の着色剤を含む、製造方法である。
本発明の製造方法の第三の態様は、
少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の有色繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含む、製造方法である。
前記液滴が水を含むことが好ましい。
本発明の紙は、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している有色模様を有しており、当該有色模様は、濃色のドットが淡色の背景に分散された水玉模様とは異なる。
また、本発明の紙は、クレーター状の窪みを必要としないので、表面が平滑である。したがって、本発明の紙は優れた印刷適性を備えることができる。
更に、特許文献1記載の模様紙のように、湿紙の表面にクレーター状の窪みを形成してそこに着色料を溜めて模様を形成する場合は、プレスされると窪みが変形するので模様の形状が変動するおそれがあるが、本発明ではそのような不都合を回避することができる。
本発明の平滑紙はファンシーペーパーとして好適に使用することができる。本発明の平滑紙は、例えば、高級包装紙、書籍等の表紙・裏表紙、カタログ・パンフレット、カレンダー用紙等の用途に使用することができる。
本発明の平滑紙上の非印刷有色模様の一例の拡大概念図である。
特許文献1に記載の模様紙は、抄紙中の湿紙の表面に、当該湿紙の断面形状を変化させる程の比較的強い勢いで液滴を当てて、クレーター状の窪みを湿紙の表面に形成し、当該窪みに着色料を溜める工程を経て製造されるが、鋭意検討の結果、本発明者らは、クレーター状の窪みを形成することなく、しかも、特許文献1に記載の模様紙の模様とは異なる模様を形成することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
本発明では、抄紙中の湿紙の表面に液滴を散布し、当該散布により表面の繊維分布を不均一化することにより、模様を形成する。形成された模様は、予め着色された繊維を使用したり、また、模様の形成後に繊維を着色したりすることで視認可能である。これにより、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している有色模様を形成することができる。また、本発明では、クレーター状の窪みを形成する等の紙の断面形状を大きく変化させる必要がないので、表面が平滑な紙を得ることができる。
すなわち、本発明の紙は、少なくとも1種の繊維からなり、表面が平滑でありながら、当該表面上の繊維分布が不均一であり、それにより、淡色パターン及び濃色パターンが形成され、当該濃色パターンが連続している有色模様を有する。例えば、本発明の平滑紙は、淡色のドットが濃色の背景に分散された水玉模様を有することができる。
以下、本発明の平滑紙及びその製造方法について説明する。
[平滑紙]
本発明は、少なくとも1種の繊維からなり、非印刷有色模様を有する平滑紙であって、
前記非印刷有色模様が淡色パターン及び濃色パターンを含み、
前記濃色パターンが連続している、平滑紙に関する。
前記繊維は、平滑紙を構成可能なものであれば、特に限定されるものではないが、天然繊維が好ましく、セルロース繊維がより好ましい。セルロース繊維は、安定な親水性表面を持ち、湿潤後も親水性を維持する親水性繊維である。セルロース繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ繊維;楮、三椏、雁皮等の靱皮繊維;藁、竹、ケナフ、バガス等の非木材パルプ繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。セルロース繊維としては木材パルプ繊維が好ましい。セルロース繊維の含有量は、紙(乾燥状態)の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更により好ましく、70〜100質量%が特に好ましい。
前記繊維は前記セルロース繊維以外の他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、例えば、レーヨン、アセテート、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の再生繊維、半合成繊維、合成繊維といった有機繊維、或いは、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維といった無機繊維が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。他の繊維の含有量は、紙の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下が好ましい。
本発明の平滑紙は、前記繊維以外に、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤等の各種の汎用の添加剤を含んでもよい。
前記繊維は少なくとも1種の色を有する。前記繊維が有する色は白色〜黒色の無彩色でもよいが、深緑等の有彩色である方が好ましい。前記繊維の材質自体が着色されたものであってもよいが、前記繊維の表面に着色剤が適用されたものであってもよい。
本発明の平滑紙は非印刷有色模様を有する。前記非印刷有色模様は淡色パターン及び濃色パターンを含み、当該濃色パターンが連続している。ここでの「パターン」とは、模様を形成する視認可能な形状及び面積を有する領域を意味する。したがって、領域を構成しない単なる線分は「パターン」ではない。また、ここでの「非印刷有色模様」とは、『有色模様』が印刷によって形成されるものではないことを意味する。すなわち、本発明の平滑紙の表面には、印刷によるものではない有色濃淡模様が存在しており、当該模様では、色の濃い部分が連続している。
前記非印刷有色模様では、前記濃色パターンの繊維密度が前記淡色パターンの繊維密度よりも大きいことが好ましい。すなわち、本発明の平滑紙の表面において、前記濃色パターンの単位面積当たりの繊維存在量が前記淡色パターンの単位面積当たりの繊維存在量よりも大きいことが好ましい。これにより、本発明の平滑紙の表面における有色模様の濃淡を視覚的に認識することがより容易となる。
また、前記非印刷有色模様では、前記濃色パターンの明度が前記淡色パターンの明度よりも低いことが好ましい。これにより、濃色パターンの方がより濃い色のように見え、また、淡色パターンの方がより淡い色のように見える。
そして、前記非印刷有色模様では、前記濃色パターン及び/又は前記淡色パターンは直線及び/又は曲線によって形成されることができるが、その少なくとも一部が曲線によって形成されることが好ましい。すなわち、前記濃色パターン及び前記淡色パターンの両方、或いは、前記濃色パターン又は前記淡色パターンの一方について、当該パターンの少なくとも一部が曲線によって形成されることが好ましく、また、全部が曲線によって形成されてもよい。なお、前記「曲線」によって形成される領域は本発明における「パターン」であるが、前記「曲線」自体は「パターン」ではない。
更に、前記非印刷有色模様では、前記淡色パターンの少なくとも一部が不連続であることが好ましい。すなわち、一部の淡色パターンは連続してもよいが、一部の淡色パターンは不連続であることが好ましい。なお、淡色パターンの全てが不連続であってもよい。そして、不連続淡色パターンの少なくとも一部は単一閉曲線によって囲まれた閉領域であってもよい。
前記非印刷有色模様の色は特に限定されるものではなく、少なくとも1種類以上の色を適宜使用することができる。2種類以上の色を使用する場合は、例えば、濃色パターンの色と淡色パターンの色が異なっていてもよい。一方、前記非印刷有色模様は単一色であってもよく、この場合は、濃色パターン及び淡色パターンによって色の濃淡で模様を視認することができる。
図1は本発明の平滑紙上の非印刷有色模様の一例の拡大概念図である。図1の非印刷有色模様は、単一色であり、淡色パターン1及び濃色パターン2で構成されている。
図1に示す例では、淡色パターン1は不連続であり、濃色パターン2は連続している。そして、濃色パターン2の繊維密度は淡色パターン1の繊維密度よりも大きい。すなわち、濃色パターン2の領域の方が淡色パターン1の領域よりも単位面積当たりの繊維の存在量が多い。したがって、濃色パターン2は淡色パターン1に比較して色が濃く、図1に示すように、濃色パターン2の明度は淡色パターン1の明度よりも低い。これにより、図1では、濃色パターン2を背景として淡色パターン1が形成する模様を淡色模様として視認することができる。
図1に示す例では、淡色パターン1及び濃色パターン2は曲線によって囲まれている。すなわち、淡色パターン1及び濃色パターン2の両方が曲線によって形成されている。そして、淡色パターン1は、単一閉曲線によって囲まれた閉領域を形成しており、淡色のドットが濃色の背景に分散しているタイプの水玉模様を形成する。但し、図1に示すように、淡色の部分は、完全な円形のドットではなく、また、規則性のないランダムな分散をすることが実際には多い。
図1に示す例では、淡色パターン1と濃色パターン2との境界線の部分の繊維密度は淡色パターン1の繊維密度及び濃色パターン2の繊維密度のいずれよりも大きい。また、図示を省略するが、前記境界線の部分を拡大すると、淡色パターン1側の繊維密度がより高く濃色パターン2側の繊維密度がより低くなっており、境界線中に繊維密度のグラデーションが存在する。これにより、淡色パターン1の輪郭をよりはっきりとさせることができる。
本発明の紙は表面が平滑である。本発明の平滑紙の表面粗さは、JIS B 0610で規定する触針型表面粗さ試験器で測定した算術平均粗さが4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下が更により好ましい。
本発明の紙は、JIS P8119に準拠した平滑度が10秒以上であることが好ましく、15秒以上がより好ましく、20秒以上が更により好ましい。測定に際しては、JIS−P8111(1998年)により、試料を23℃、相対湿度50%で4hr以上前処理して用いることが好ましい。
本発明の平滑紙の坪量は60〜300g/mの範囲であることが好ましく、70〜290g/mがより好ましく、80〜280g/mが更により好ましい。
なお、本発明の平滑紙は、淡色パターン及び濃色パターンを含み濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する限り、その他の模様を備えてもよい。そして、その他の模様は印刷によって形成されてもよい。例えば、本発明の平滑紙の表面の少なくとも一部に、印刷によって、様々な像を形成してもよい。
[平滑紙の製造方法]
本発明は、少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の繊維からなり、非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法にも関する。
前記非印刷有色模様は淡色パターン及び濃色パターンを含み、当該濃色パターンが連続することができる。ここでの「パターン」とは、模様を形成する視認可能な形状及び面積を有する領域を意味する。したがって、領域を構成しない単なる線分は「パターン」ではない。また、ここでの「非印刷有色模様」とは、『有色模様』が印刷によって形成されるものではないことを意味する。すなわち、本発明の製造方法により得られる平滑紙の表面には、印刷によるものではない有色濃淡模様を形成することができ、当該模様では、色の濃い部分が連続することができる。
本発明に係る平滑紙の製造方法は、製紙分野において周知の抄紙機を用いて行なうことができる。抄紙機としては、紙の原料から湿紙を形成するワイヤーパート、湿紙を脱水するプレスパート、脱水された湿紙を加熱するドライヤーパート、及び、加熱した湿紙をプレスするカレンダーパートの少なくとも4つのパートを備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エアクッション式ヘッドボックスやハイドローリック式ヘッドボックスに、長網(フォードリニア)タイプやハイブリッドタイプ、ギャップタイプのフォーマを組み合わせた抄紙機等の公知の種々の抄紙機を用いることができる。
本発明の製造方法の第一の態様は、
ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含み、
更に、前記湿紙又は紙を着色する工程を含む。
前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程は、製紙分野において周知の手段により実施することができる。例えば、繊維、好ましくは天然繊維、より好ましくはセルロース繊維、のスラリーを各種の網上に吐出して湿紙を形成することによって前記工程を実施することができる。
前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程は、液滴を湿紙の表面に散布可能な任意の手段を使用して実施可能であるが、例えば、シャワーノズルから液滴を散布することによって実施することができる。
前記液滴は水を含むことが好ましく、また、水のみからなることがより好ましい。すなわち、前記液滴としては水滴を使用することがより好ましい。
本発明の製造方法では、抄紙中の湿紙の表面に液滴を散布し、当該散布により表面の繊維分布を不均一化することにより、模様を形成する。具体的には、湿紙表面の液滴が当たった部分は繊維が押しのけられ、湿紙表面の繊維分布が不均一化し、典型的には、湿紙表面の液滴が当たった部分は繊維密度が低下する。一方、湿紙表面の液滴が当たらなかった部分の繊維密度は変化しない。したがって、湿紙表面の液滴が当たった部分の繊維密度は液滴が当たらなかった部分の繊維密度よりも小さくなる。これにより、液滴が当たった部分は淡色パターンを構成し、液滴が当たらなかった部分は濃色パターンを構成する。
本発明の製造方法では、湿紙への液滴の当て方を調整することにより、クレーター状の窪みを湿紙に形成することなく、湿紙上に模様を形成することができる。具体的には、例えば、液滴を散布するシャワーノズルの吐出口の形状・数・湿紙との距離、湿紙に対する液滴の進行方向角度、液圧等を制御することにより、湿紙への液滴の当て方を調整することができる。
なお、湿紙表面の液滴が当たった部分において押しのけられた繊維は、当該部分の周囲に堆積して淡色パターンの境界線を構成することができる。また、押しのけられた繊維は淡色パターンに近い方により多くが堆積するので、境界線の部分は、淡色パターン側の繊維密度がより高く、濃色パターン側の繊維密度がより低くなっており、境界線中に繊維密度のグラデーションが存在する。これにより、淡色パターンの輪郭をよりはっきりとさせることができる。
前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程は、例えば、製紙分野において周知のプレスロール、フェルト等を使用して実施することができる。これにより、湿紙の水分率を、例えば、湿紙の質量を基準として、50〜60質量%とすることができる。
前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程は、例えば、製紙分野において周知の、多筒式ドライヤー、ヤンキードライヤー等を使用して実施することができる。これにより、湿紙の水分量が低減され、湿紙は乾燥される。なお、湿紙は完全に乾燥される必要はなく、湿紙の水分量を、例えば、湿紙の質量を基準として5〜10質量%とすることができる。
前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程は、例えば、製紙分野において周知のカレンダーロール等を使用して実施することができる。この工程により、本発明の製造方法では表面が平滑な紙を製造することができる。
前記湿紙又は紙を着色する工程は、例えば、表面に模様が形成された湿紙の表面に、染料、顔料等を含む着色液を塗布することによって実施することができる。
この例では、湿紙の表面上に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程により当該表面上に模様を形成した後に、湿紙を着色するので、原料の繊維として未着色のものを使用することができる。
前記湿紙又は紙を着色する工程は、湿紙の表面上に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程の直後に行う必要はない。例えば、前記湿紙又は紙を着色する工程は、湿紙の表面上に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程の直前に行ってもよい。また、前記湿紙又は紙を着色する工程は、後述する、前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程又は前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程の後に行ってもよい。
一方、前記湿紙又は紙を着色する工程は、例えば、前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程の後に行ってもよい。
特許文献1記載の模様紙のように、湿紙の段階でその表面にクレーター状の窪みがある場合は、当該窪みはカレンダーパートでプレスされて変形するので模様の形状が変動するおそれがあるが、本発明の製造方法により得られる紙では、クレーター状の窪みではなく、繊維分布の不均一性により模様が形成され、当該不均一性はカレンダーパートでプレスされても変動しないので、形状の安定した模様を形成することができる。
本発明の製造方法の第二の態様は、
前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含み、
前記液滴が少なくとも1種の着色剤を含む。前記着色剤としては、公知の、染料、顔料等を使用することができる。
上記第二の態様における各工程は、上記の第一の態様において説明したように実施することができる。上記第二の態様では、湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程で使用される液滴が着色しているので、当該不均一化工程における繊維分布の不均一化と繊維の着色を同時に実施することができ、製造効率に優れる。
この第二の態様でも、原料の繊維として未着色のものを使用することができる。
本発明の製造方法の第三の態様は、少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機、並びに、少なくとも1種の有色繊維を使用し、
ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
を含む。
上記第三の態様における各工程は、上記の第一の態様において説明したように実施することができる。但し、上記第三の態様では、有色繊維を使用するのでワイヤーパートで形成される湿紙は既に着色されており有色である。したがって、湿紙又は紙の着色工程は必須ではない。
本発明の製造方法では、必要に応じて、紙の表面を塗工するサイズプレスを行うサイズプレスパートを設けてもよい。サイズプレスパートは、例えば、ドライヤーパートの後に設けることができる。
なお、特許文献1記載の模様紙の製造方法では、サイズプレス工程において、クレーター状の窪みに着色料を溜めるので、当該窪みの形状を少なくともサイズプレス工程完了まで維持する必要がある。そして、前記サイズプレス工程においては、クレーター状の窪みを維持する必要があるので、紙を圧縮する程のプレスは行われない。したがって、そのままでは平滑な紙を得ることはできない。また、サイズプレス工程後にカレンダーパートにおいてプレスをしても、もともとの紙の凹凸が大きいので、プレス後の紙の表面の平滑性を高めることが困難な場合がある。
一方、本発明の製造方法では、そのようなクレーター状の窪みを維持する必要がないので、平滑度の高い紙を得ることができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、及び、広葉樹晒クラフトパルプ60質量部からなるパルプを380mlC.S.Fに叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」荒川化学工業(株)製を2.0質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」荒川化学工業(株)製)を1.0質量部、硫酸バンドを3.0質量部添加し、原料を調製した。また、染料(商品名「Kayafect Blue GT」日本化薬株式会社)0.14質量部、及び、他の染料(商品名「Direct Paper Yellow RL」株式会社日本化学工業所製)を0.16質量部添加し、緑色になるよう調整して着色原料を得た。
ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機(長網抄紙機)を使用して、前記着色原料を坪量100g/m2で抄紙した。この抄紙の際、ワイヤーパート上の湿紙に対して一流体ノズルを幅方向に対して50mmの間隔で24個配置したスプレー装置を用いて湿紙から350mmの高さから水を噴霧した。連続した不規則模様がムラなく発現するように湿紙に対する液滴の進行方向角度を30°に調整し、液滴を適度な大きさにするため流量を30L/minに調整を行い、表面の繊維分布が不均一な湿紙を得た。更に、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを経て模様紙を製造した。
製造された模様紙の表面は、平滑であり、また、不規則な淡色パターン及び不規則な濃色パターンを含み当該濃色パターンが連続している模様を備えていた。前記淡色パターンは一部が閉曲線によって囲まれた閉領域からなり、不連続であった。

Claims (15)

  1. 少なくとも1種の繊維からなり、非印刷有色模様を有する平滑紙であって、
    前記非印刷有色模様が淡色パターン及び濃色パターンを含み、
    前記濃色パターンが連続している、平滑紙。
  2. 前記繊維が少なくとも1種の天然繊維を含む、請求項1に記載の平滑紙。
  3. 前記濃色パターンの繊維密度が前記淡色パターンの繊維密度よりも大きい、請求項1又は2に記載の平滑紙。
  4. 前記濃色パターンの明度が前記淡色パターンの明度よりも低い、請求項1から3のいずれか一項に記載の平滑紙。
  5. 前記濃色パターン及び/又は前記淡色パターンの少なくとも一部が曲線によって形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の平滑紙。
  6. 前記淡色パターンの少なくとも一部が不連続である、請求項1から5のいずれか一項に記載の平滑紙。
  7. 前記不連続淡色パターンの少なくとも一部が単一閉曲線によって囲まれた閉領域である、請求項6に記載の平滑紙。
  8. 前記色が単一色である、請求項1から7のいずれか一項に記載の平滑紙。
  9. JIS B0601に準拠した算術平均粗さが4.0μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の平滑紙。
  10. JIS P8119に準拠した平滑度が10秒以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載の平滑紙。
  11. 坪量が60〜300g/mである、請求項1から10のいずれかに一項に記載の平滑紙。
  12. 少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
    前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
    前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
    前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
    前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
    前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
    を含み、
    更に、前記湿紙又は紙を着色する工程を含む、製造方法。
  13. 少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
    前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
    前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
    前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
    前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
    前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
    を含み、
    前記液滴が少なくとも1種の着色剤を含む、製造方法。
  14. 少なくとも、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを備えた抄紙機を用いる、少なくとも1種の有色繊維からなり、淡色パターン及び濃色パターンを含み、濃色パターンが連続している非印刷有色模様を有する平滑紙の製造方法であって、
    前記ワイヤーパートにおいて湿紙を形成する工程、
    前記湿紙の表面に液滴を散布して当該表面の繊維分布を不均一化する工程、
    前記プレスパートにおいて湿紙を脱水する工程、
    前記ドライヤーパートにおいて湿紙を加熱する工程、及び、
    前記カレンダーパートにおいて加熱後の紙をプレスする工程
    を含む、製造方法。
  15. 前記液滴が水を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の製造方法。
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