JP2020157490A - 水圧転写用活性剤組成物、水圧転写方法及び水圧転写品 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)水圧転写品の装飾層の透明性を害さないこと(透明性)。
(2)水圧転写槽内で転写フィルムが膨潤する際に印刷層のインクずれを起こさないこと(インクずれ)。
(3)水圧転写品の装飾層のガラス曇度が低く、透明性が高いこと(ガラス曇度)。
(4)転写フィルムのキャリアフィルムを水圧転写品から取り除く際に泡の発生を起こさないこと(脱膜泡)。
(5)水圧転写槽内で転写フィルムの伸展性を妨げないこと(伸展性)。
(6)水圧転写品の表面にべたつきが少ないこと(表面性状)。
(7)装飾層が揮発油によって浸食されないこと(耐揮発油性)。
以下に、本発明の具体的な実施例1乃至20(表1乃至4)を比較例1乃至8(表5及び6)と比較しながら説明する。いずれの実施例及び比較例とも、活性剤組成物が異なることを除いて図2の工程によって水圧転写を行った。また、いずれの実施例及び比較例とも、水圧転写面(装飾層)の表面に25±5μmのウレタン系紫外線硬化型透明トップコート(藤倉化成社製 PG2455A−N7クリヤ)を別途の工程で施した。
(1)転写フィルム
出願人がライセンス先に供給している、「クリエイションライトオーク2C」と称する水圧転写フィルムを用いた。なお、この転写フィルムは、PVAフィルムの被転写面側に、顔料と合成樹脂との混合系からなる溶剤系インクを用いてグラビア印刷によって木目柄の印刷パターン層(溶剤成分は揮発除去された状態)が施されて形成されている。
(2)活性剤と塗工条件
本発明の実施例及び比較例に使用した活性剤は、表7の可塑剤、表8の樹脂成分、溶剤成分、微粒子シリカを用いて各実施例及び比較例毎に、表1〜6に示す組成で調合された。活性剤は、(1)の転写フィルムに12μmの厚みにグラビアロール塗工法で塗工された。
(3)被転写体
被転写体である物品としては、100mm×200mm×3mmのABS樹脂製の平板(ユーエムジー・エービーエス株式会社製 TM20)と100mm×200mm×3mmのPC/ABS樹脂製の平板(テクノポリマー社製 CK50)との両方を用いて、これらの平板によって変化する品質を評価結果に用いた。
実施例及び比較例に用いられた活性剤及びこれらの活性剤を用いて得られた湿潤された転写フィルムの印刷模様層の透明性、鮮鋭性を目視で確認した。活性剤自体及び印刷模様層自体のいずれも透明で鮮鋭性がある場合を「○」とし、活性剤組成物自体、溶剤の揮発が早く転写フィルム上で半乾燥して被膜化した活性剤組成物の白濁及び転写フィルムの印刷模様層の鮮鋭性の阻害によって透明性、鮮鋭性が劣る場合を「×」とした。
活性剤組成物が塗布された面を上にして転写フィルムを水槽内の水面に浮かばせ、転写フィルムのキャリアフィルム(ベースフィルム)が水
を吸収して膨潤すると同時に印刷模様層活性剤組成物によって膨潤した際に、印刷模様層が歪んで流れたり崩れたりする状態の有無を目視で確認した。印刷模様層が膨潤後に均一に拡大され曲りや歪みがないか否かを目視で確認した。印刷模様層が膨潤後に均一に拡大されて印刷模様層の何処にも曲りや歪みがない場合を「○」とし、印刷模様層の何処にも曲りや歪みがないが、印刷模様層が均一に拡大されていない場合を「△」とし、印刷模様層の何処かに曲りや歪みがあり、印刷模様層が均一に拡大されていない場合を「×」とした。
ISO−6452準拠のガラス曇り(フォギング)試験装置内に試験片をビーカーに入れ専用ガラス板で蓋をした状態で配置し、加熱温度100℃で20時間内部を加熱したときの試験片の揮発成分の付着による専用ガラス板の曇り(フォギング)状態を評価した。試験片は、実施例及び比較例の活性剤組成物を用いてABS基材の被転写体に水圧転写を施した後、印刷模様層のトップコート加工を施して形成され。この試験片は、実施例及び比較例に用いられた寸法と異なって100mm×50mm×0.012mmであった。加熱温度100℃、加熱時間20時間で処理が行われた。この専用ガラス板の曇り状態(ガラス曇度)は、JIS-K7105規定の積分球式光線透過率測定装置(スガ試験器株式会社製直読ヘイズコンピュータ)を用いて測定したヘイズ値(曇りの度合い)で評価した。ヘイズ値が5%以下の場合を「○」とし、ヘイズ値が10%以下の場合を「△」とし、ヘイズ値が10%を越える場合を「×」とした。
脱膜水槽に700Kgの水を溜め、濃度が2000ppmとなるように1.4kgのポリビニールアルコール(PVA)を溶解し、更に評価すべき活性剤組成物を400g混入した。その後、水を循環シャワーしながら脱膜洗浄を開始し、脱膜洗浄中の脱膜水槽内の泡の高さ上昇率(上昇速度)HR[cm/min]を経時的に計測した。HRが0.3cm/min以下の場合には「◎」とし、HRが0.5cm/min以下で0.3cm/min未満の場合には「○」とし、HRが1.0cm/min以下で0.5cm/minの場合には「△」とし、HRが1.0cm/minを越える場合には「×」とした。
活性剤組成物が塗布された転写フィルム(幅510mm)が水圧転写槽の水面上に浮かべ、この転写フィルムのベースフィルムが水で膨潤すると同時に、印刷模様層も活性剤組成物によって膨潤し、それによって転写フィルムが一体的にある一定の拡大率に至るまで均一に伸長拡大する際に、転写位置(フィルム着水位置から3200mmの位置)における水圧転写槽のガイドチェーン(幅650mm)と膨潤したフィルム端部との間の距離Dを測定した。Dが0cm(フィルムがガイドチェーンに到達)である場合には「◎」とし、Dが5cm未満の場合には「○」とし、Dが5cm以上で8cm未満の場合には「△」とし、Dが8cm以上の場合には「×」とした。
200mm×100mmの大きさの10枚のABS平板に実施例及び比較例の活性剤組成物を用いて水圧転写して印刷模様層を水圧転写し、脱膜工程によって、シャワーや熱風等で残存するベースフィルムやインク、活性剤組成物に含まれる溶剤分を揮発した後に平板に付着した異物個数を目視で観察して評価した。表面べたつきが強いものは、異物が多く、ベタつきの無いものは、異物が少ないか異物が確認されなかった。異物が確認されなかった平板が1枚もない場合には「◎」とし、異物が確認された平板が3枚以内である場合には「○」とし、異物がついた平板が4−5枚である場合には「△」とし、「異物がついた平板が6枚以上である場合には「×」とした。
ポリエチレン円筒(内径3cm)を水圧転写品のサンプル上に固定し、その円筒内に1号揮発油(nーヘキサン:n―ヘプタン=1:1)を5ml滴下してサンプル表面に接触させた状態で、20±2℃の温度で24時間放置した後、サンプルを水洗して風乾し、円筒の色差及び揮発油が接触していたサンプルの部分の塗面の状態(変色、シワ、割れ等)を目視で確認するとともに、揮発油が接触していないかった部分との色差ΔEで評価した。サンプルの塗面に問題がなく、且つ色差ΔEが1.5以下である場合には「○」とし、サンプルの塗面に問題がなく、且つ色差ΔEが1.5より大きい場合には「△」とし、色差ΔEの値に拘らず、サンプルの塗面に問題がある場合には「×」とした。
実施例と比較例との評価は、表1乃至6の「評価」の欄に記載された通りであるが、これらの評価結果から次のことが分かる。
(1)可塑剤が2個以上のカルボキシレート基を有する非芳香族のカルボン酸エステル又はカルボン酸エーテルエステルであり、前記カルボン酸エステル又はカルボン酸エーテルエステルの分子量(MW)でエステル結合する末端側の脂肪族炭化水素基及び/又はエーテル結合を構成する最末端側の脂肪族炭化水素基の分子量を合計した値(SMW)を除した値で求められる分子量割合(ΣSMW/MW)が0.3以上である成分から成っている本発明の実施例1〜20は、この成分から外れている比較例1〜6と対比して分かるように、本発明の目的である環境規制に適合し、且つ先に述べた可塑剤の評価の対象である7つの条件、即ち、透明性、インクずれ、ガラス曇度、脱膜泡、伸展性、表面性状、耐揮発油性の全てにおいて好適であるか、使用に支障がないことが分かる。
(2)実施例中、可塑剤成分が副可塑剤成分を含まない実施例1〜3によれば、可塑剤の分子量割合が大きいほど脱膜泡の抑制効果が大きいことが分かる。可塑剤成分が副可塑剤成分を含まないため、伸展性、表面性状及び耐揮発油性にやや劣るが、使用には支障がなかった。
(3)実施例中、実施例1〜3と、可塑剤成分が副可塑剤成分を含む実施例5、7、8、10〜15、18、19との比較から、副可塑剤成分が含まれることによって、表面性状と耐揮発油性が向上することが分かった。
(4)実施例5、7、8、10〜15、18、19の実施例群(A)と実施例4、6、9の実施例群(B)とを比較すると、主可塑剤成分と副可塑剤成分との分子量割合の差が0.05〜0.25の範囲である実施例群(A)が表面性状と耐揮発油性の向上の観点から望ましいことが分かる。一方、主可塑剤成分と副可塑剤成分との分子量割合の差が0.33と上限値を越えている実施例4、6は、同じく使用に支障がないが、伸展性及び表面性状が低いことが分かる。また、実施例9によれば、分子量割合の差がそれぞれ0.02と下限値未満であるため、使用に支障はないがガラス曇度に劣り、更に、実施例9によれば、使用に支障はないが伸展性と表面性状が低下する傾向が見られた。
(5)実施例13によれば、活性剤組成物全体に対する可塑剤成分の配合(重量)割合が好ましい範囲の下限値である13%未満である10%であるので、使用に支障はないが脱膜泡がやや発生し、実施例14、15によれば、可塑剤の配合割合の好ましい範囲13〜25%内であるので、可塑剤に必要な全ての条件を具備していることが分かる。しかし、実施例16によれば、可塑剤の配合割合は好ましい範囲の上限値を越えている30%であり、使用に支障はないが表面性状及び耐揮発油性に劣ることが分かる。
(6)実施例4、5、17によれば、可塑剤成分中の主可塑剤成分の配合(重量)割合は、好ましい範囲の下限値より低い50%(実施例4,5)、63%(実施例17)であると、使用に支障はないが、脱膜泡が僅かに発生することが判明した。一方、実施例18、19によれば、主可塑剤成分の配合割合が好ましい範囲65〜80%の範囲内にあって脱膜泡の発生がほとんどなく、使用に好適であることが分かった。
(6)比較例中、比較例3乃至6は、フタル酸系の可塑剤成分を使用しているので、環境規制に適合しないし、また比較例1、2、7、8は、フタル酸系成分以外の可塑剤成分を使用しているので、環境規制には適合しているが、上記の7つの条件のいずれか1つ又は複数の条件を満足することができないので、本発明の対象外であることが分かる。
(7)実施例1乃至20を見渡すと、可塑剤成分が主可塑剤成分と副可塑剤成分とから成っており、可塑剤組成物全体に対する可塑剤成分の配合(重量)割合、主可塑剤成分と副可塑剤成分の分子量割合の差、可塑剤成分中の主可塑剤成分の配合(重量)割合が好ましい範囲にある実施例7,8、14,15、18及び19が好適な例であり、特に、実施例7,8が最も好適な例であることが分かる。
20 転写フィルム
30 水溶性フィルム(キャリアフィルム)
40 印刷パターン層
50 水
60 溶剤系の活性剤組成物
70 シャワー
80 熱風
Claims (8)
- 水圧転写用の転写フィルムの印刷パターン層に塗布して前記印刷パターン層を活性化するためのものであって樹脂分と溶剤分と可塑剤分とを含む水圧転写用活性剤組成物において、前記可塑剤分は、2個以上のカルボキシレート基を有する非芳香族のカルボン酸エステル又はカルボン酸エーテルエステルであり、前記カルボン酸エステル又はカルボン酸エーテルエステルの分子量でエステル結合する末端側の脂肪族炭化水素基及び/又はエーテル結合を構成する最末端側の脂肪族炭化水素基の分子量を合計した値を除した値で求められる分子量割合が0.3以上であることを特徴とする水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1に記載の水圧転写用活性剤組成物であって、前記可塑剤成分は、主可塑性成分と単独成分又は複数成分の副可塑剤成分とから成っていてもよく、前記副可塑剤成分は、前記主可塑剤成分よりも前記分子量割合が小さい水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1に記載の水圧転写用活性剤組成物であって、前記主可塑剤成分の分子量割合と前記副可塑剤成分の分子量割合との差が0.05〜0.25である水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1に記載の水圧転写用活性剤組成物であって、活性剤組成物全体に対する前記可塑剤成分の重量割合が13〜25%である水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1に記載の水圧転写用活性剤組成物であって、可塑剤が主可塑剤成分と副可塑剤成分とから成っている場合において、前記可塑剤全体に占める前記主可塑剤成分の重量割合が65〜80%である水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1に記載の水圧転写用活性剤組成物であって、前記カルボン酸エステル又はカルボン酸エーテルエステルを構成するカルボン酸は、マレイン酸、コハク酸から選択される水圧転写用活性剤組成物。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の活性剤組成物を用いて水圧転写用転写フィルムの印刷パターン層を物品上に水圧転写する方法。
- 請求項7に記載の方法によって水圧転写用転写フィルムの印刷パターン層を水圧転写して得られた装飾層を有する水圧転写品。
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