JP5672835B2 - パッド印刷用転写シート - Google Patents
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Description
これに対し、特許文献1には、凸版印刷原版を用いることで印刷精度を改善したパッド印刷法が開示されている。
すなわち、本発明は、
1.水不溶性基材フィルム上に少なくとも印刷層を積層してなるパッド印刷用転写シートであって、活性剤を用いて該印刷層の少なくとも一部を軟化させた後、パッド印刷によって被印刷物上に、軟化した印刷層を転写可能なパッド印刷用転写シート、
2.前記印刷層が、ビヒクルとしてセルロース系樹脂を含有するインキより形成されてなる上記1に記載のパッド印刷用転写シート、及び
3.前記水不溶性基材フィルムが、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される1種以上を用いて形成されてなる上記1又は2に記載のパッド印刷用転写シート、
を提供するものである。
図1は、本発明のパッド印刷用転写シートの構成の一例を示す概略断面図である。パッド印刷用転写シート10は、水不溶性基材フィルム1上に、グラビア印刷等により、複数の絵柄層からなる印刷層2が設けられている。
水不溶性基材フィルム1としては、通常印刷シートとして使用されるものであって、水不溶性のものであれば特に制限はなく、一般には、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチックとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂;セロファン;ポリスチレン;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂等が挙げられる。
これらのうち、コスト、機械的強度等の観点から、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく用いられ、延伸ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートが、ハンドリング性やコストの観点から特に好ましい。
また、水不溶性基材フィルム1に用いられる合成樹脂には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
水不溶性基材フィルム1は、印刷層2との剥離性の観点から、印刷層2側の面に離型層や剥離層を設けてもよい。
本発明のパッド印刷用転写シート10は、転写用の印刷層2を有し、該印刷層2を形成するためのインキとしては、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
インキに含有される顔料としては、例えばチタン白、アンチモン白、鉛白、鉄黒、黄鉛、チタンイエロー、朱、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、パール顔料、アルミペースト等のシルバー顔料などの無機顔料;カーボブラック(墨インキ)、ベンジジンイエロー、イソインドリノンイエロー、ポリアゾレッド、キナクリドンレッド、インダスレンブルー、フタロシアニンブルー等の有機顔料を用いることができる。
セルロース系樹脂の重量平均分子量は、10万以上が好ましく、30万〜600万がより好ましく、50万〜200万が最も好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機系化合物や、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機質系化合物が挙げられ、また、光安定剤としては、例えばビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤などを挙げることができる。
なお、これら紫外線吸収剤や光安定剤の含有量は、それぞれインキ全量基準で0.5〜10質量%程度である。
水不溶性基材フィルム1の一方の面に、グラビア印刷などにより印刷層2が形成される。多色の印刷層2を形成する場合には、絵柄層を2層以上設けることで印刷層2を形成することができる。この重ね刷りにおいては、例えばカラー写真などを印刷する場合、絵柄層を3〜7層設けることが一般的である。4色刷りでは、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(黒)が一般に用いられる。従来のパッド印刷においては、多色刷りをする場合には色の数に応じて、原版からパッドへの印刷層の転写工程、パッドの移動工程、及びパッドから被印刷物上への印刷層の転写工程を繰り返す必要があるところ、印刷層が複数の絵柄層からなる本発明のパッド印刷用転写シートを用いる場合、色の数が多い場合であっても、上記一連の工程を繰り返す必要が無いため、印刷工程が大幅に短縮でき、また、色ズレが生じないため、実用上極めて有用である。
また、各絵柄層を形成する際のインキの塗布量は、各絵柄層の厚みが上記の範囲内にあれば特に制限はなく、0.5〜1.5g/m2であることが好ましく、0.7〜1.4g/m2であることがより好ましい。
活性剤は、本発明のパッド印刷用転写シートの印刷層2に塗布することで、適度に印刷層2の少なくとも一部を溶解乃至膨潤して軟化させる(活性化させる)ものであり、パッドや被印刷物に印刷物が転写されるまでその状態を維持させることができるものである。
本発明で用いる活性剤としては、印刷層2の少なくとも一部を溶解乃至膨潤して軟化させるようなものであれば使用できるが、例えばエステル類、アルコール類、ケトン類などの溶剤を使用することができ、特に、フタル酸エステル1〜20質量%、アルコール類60〜90質量%、及びケトン類1〜20質量%を含有するものが好ましく用いられる。
フタル酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどのフタル酸ジエステルが好ましく挙げられる。これらのうちフタル酸ジメチル及びフタル酸ジブチルがより好ましく、なかでもフタル酸ジメチルが活性状態を安定化させるのとともに、適度に他の溶剤とともに蒸発する点から好ましい。
本発明で使用する活性剤には、さらにフタル酸エステルを除くエステル類を添加してもよい。
フタル酸エステルを除くエステル類としては、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、メトキシブチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、シュウ酸ジブチルなどが挙げられる。これらのうち酢酸エステルが好ましく、なかでも酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
脂肪族炭化水素としては、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、オクタン、イソオクタンなどが挙げられ、これらのうちヘプタンが好ましい。
エーテル類としては、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブなどが挙げられ、このうちブチルセロソルブが好ましい。
本発明のパッド印刷用転写シートを用いることで、被印刷物上に、印刷物を転写することができる。
以下、本発明のパッド印刷法により加飾成形品を製造する方法について説明する。
また、上記工程(A)〜(C)に加えて、さらに(D)転写された印刷層上に、保護膜を形成する工程を追加してもよい。
工程(A)は、図2に示すように、本発明のパッド印刷用転写シートの印刷層2上に活性剤3を塗布し、必要に応じてスムージングロールで該活性剤の塗布面を均一にし、印刷層2の少なくとも一部を溶解乃至膨潤して活性化させ、軟化した印刷層4とする工程である。
本工程においては、パッド印刷用転写シートを印刷層2側が上を向くように供給して、活性剤3を塗布することが好ましい。
工程(B)は、図3に示すように、軟化した印刷層4上にパッド5を押し当てて、軟化した印刷層4を写しとる工程である。
パッド5としては、その表面に一時的に軟化した印刷層4を保持しうる柔軟で弾性のある部材であれば特に限定されないが、シリコーンゴム製、ウレタンゴム製、ゼラチン製、ニトリルゴム製など、従来よりパッド印刷で用いられているものが仕様でき、通常は内部に中空部を有する。
工程(B)では、従来のパッド印刷法において凹版原版上に塗布されたインキをパッド上に写しとるところ、この凹版原版に代えて、上記工程(A)で得られた水不溶性基材フィルム1上に軟化した印刷層4を有するパッド印刷用転写シート10を用いる。
本工程では、パッド印刷用転写シート10を、軟化した印刷層4側を上にして支持体(図示せず)上に固定した状態でパッド5を押し当てることが好ましく、より具体的には、水不溶性基材フィルム側を両面テープ等で貼付したり、真空吸引したりして支持体に固定すると、水不溶性基材フィルム1と軟化した印刷層4との界面における剥離を促すことができる。
工程(C)は、図4に示すように、軟化した印刷層4を写しとったパッド5を被印刷物6上に押し当てて、これに加飾を施す工程である。
工程(C)は、従来のパッド印刷法と同様にして行うことができる。
工程(D)は、転写された印刷層上に、必要に応じて保護膜を形成する工程である。
当該工程(D)においては、前記工程(C)にて被印刷物の被転写面に転写された印刷層に対し、表面強度向上、表面保護、表面艶調整などのために必要に応じ塗装を施し、透明保護膜を形成する。この透明保護膜としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など、具体的にはウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂などが用いられる。塗装方法としては、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、浸漬塗装、など公知の方法を用いることができる。
上記方法により得られる加飾成形品は、特に高い意匠性が要求される自動車内装材、建材、家具類、電気製品のハウジングなどとして好適に用いられる。
なお、各例で得られた加飾成形品について、以下に示す基準で評価した。
(評価方法)
(1)転写状態
活性化された絵柄を被印刷物に転写した後の絵柄の転写状態を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;均一に絵柄が転写されている。
△ ;一部の絵柄が印刷されていない。
× ;絵柄がほとんど転写されていない。
被印刷物に絵柄が転写された初期状態において、シャワーにより水圧をかけた際の絵柄の状態を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;水圧に対して絵柄のくずれがなく、転写された状態を維持している。
△ ;若干柄がくずれる部分が存在する。
× ;絵柄がくずれ意匠性が損なわれる。
転写時、溶剤揮発等によるピンホールが認められ、絵柄が転写されず水不溶性基材が見える状態であるか否かについて目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;ピンホールなし。
△ ;ピンホールが若干見られたが実用上は問題ない程度である。
× ;絵柄全体にピンホールが発生した。
被印刷物に絵柄を転写した後、活性剤による印刷層の溶解の度合いの違いにより、柄に亀裂や細かく割れたような状態(柄割れ)について評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;柄割れがない。
△ ;一部に柄の割れがある。
× ;全体的に細かい柄の割れ、亀裂があり意匠再現性がない。
被印刷物に絵柄を転写した後、活性剤による印刷層の溶解の度合いの違いにより、柄が基材からずれたり曲がった状態(柄流れ)について評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;柄流れがない。
△ ;一部に柄のゆがみがある。
× ;全体的に柄流れが生じ、意匠再現性がない。
被印刷物の曲面部分において、曲面に沿って絵柄が転写されているかを目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;柄の切れ目がなく、曲面に沿って転写されている。
△ ;柄の伸びが若干不均一であるが、実用上は問題ない程度である。
× ;柄割れがあり、意匠性を損なうものである。
被印刷物に転写し、乾燥した後の表面の平滑性を目視及び触感により評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;鏡面となり、滑らかな面となっている。
△ ;一部マット状になり若干の凹凸が存在するが、実用上は問題ない程度である。
× ;全面に凹凸がありざらつく。
被印刷物に転写し、乾燥し、透明保護層を設けた後の被印刷物に対して、意匠性を柄と伸びを考慮して目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ ;意匠性が良好である。
△ ;意匠性に一部不具合がある。
× ;全体的に意匠性が損なわれている。
フタル酸ジメチル5質量部、イソプロピルアルコール30質量部、イソブタノール55質量部及びジイソブチルケトン10質量部を混合して活性剤1を調製した。
ブチルカルビトールアセテート60質量部、ブチルセロソルブ20質量部、フタル酸ジブチル10質量部及びキシレン10質量部を混合して活性剤2を調製した。
(1)パッド印刷用転写シートの作製
厚さ18μmの延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、電動式グラビア印刷機にて、グラビアインキ〔DICグラフィックス株式会社製、「GTカラー」、ビヒクル:セルロース系樹脂(重量平均分子量:100万)〕を用いて、塗布量0.75g/m2で多色の重ね刷りにより第1絵柄層〜第4絵柄層からなる厚さ2μmの印刷層(木目模様)を設けることによりパッド印刷用転写シートを作製した。
なお、インキの塗布量は、インキの塗布前後の質量を測定し、その差とした。
鏡面板上に、両面テープを介して上記(1)で得たパッド印刷用転写シートを、印刷層が上を向くように固定し、製造例1で調製した活性剤1をミヤバーコート法により塗布量4g/m2で塗工した。常温下で1分間放置した後、パッド印刷用転写シートの軟化した印刷層側にパッドを10秒間押し当てることで印刷層をパッド上に転写した。次に、パッド上に転写した印刷層を被印刷物であるABS樹脂製成形体に10秒間押し当てて、印刷層を被印刷物上に転写した。
次に、得られた被転写体を乾燥して、印刷層が転写された加飾成形品を得た。
次いで、加飾成形品の印刷層の表面に、透明保護層として厚さ10μmのアクリル系樹脂層を形成した。
なお、活性剤の塗布量は、別に200×400mmの紙を用意して、各例と同じ条件で活性剤を塗布した際の、塗布前の紙の質量と、塗布後10秒以内の質量とを測定し、その質量の差とした。
上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
第1表に示す活性剤とインキを使用した以外は、実施例1と同様にしてパッド印刷用転写シートを作成し、それを用いて加飾成形品を得た。
上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
インキ2:(DICグラフィックス株式会社製、「KLCF」、ビヒクル:セルロース系樹脂、重量平均分子量:500万)
インキ3:(DICグラフィックス株式会社製、「MA」、ビヒクル:セルロース系樹脂、重量平均分子量:500万)
2:印刷層
3:活性剤
4:軟化した印刷層
5:パッド
6:被印刷物
10:パッド印刷用転写シート
Claims (2)
- 水不溶性基材フィルム上に少なくとも印刷層を積層してなるパッド印刷用転写シートであって、該印刷層がビヒクルとしてセルロース系樹脂を含有するインキより形成されてなり、活性剤を用いて該印刷層の少なくとも一部を軟化させた後、パッド印刷によって被印刷物上に、軟化した印刷層を転写可能なパッド印刷用転写シート。
- 前記水不溶性基材フィルムが、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選択される1種以上を用いて形成されてなる請求項1に記載のパッド印刷用転写シート。
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