JP2020157435A - 研磨パッド - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はドレス性に優れた研磨パッドを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、脆性を付与するカーボンブラックを添加しない場合でも、樹脂の脆性を向上させることで、研磨時の表面開口の閉塞を防ぎ、スクラッチ抑制と研磨安定性を向上させることができる研磨パッドを提供することを目的とする。【解決手段】ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であることを特徴とする研磨パッド。【選択図】なし

Description

本発明は軟質研磨パッドに関する。本発明の軟質研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のアルミ基板、ガラス基板等の研磨に用いられ、特にこれら材料の表面を仕上げ研磨するのに好適に用いられる。
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
CMP工程において半導体基板表面上には、不純物が多量に発生する。不純物としては、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、更には各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれ、無機物パーティクルや有機残渣として残存する。半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。特に、研磨対象である低誘電率の層間絶縁膜は疎水性が高く、疎水性相互作用により不純物が吸着されやすい。したがって、CMPで使用される研磨パッドは、半導体基板表面に残存する無機物パーティクルや有機残渣を研磨により低減させることが求められている。
デバイス表面の仕上げ用研磨パッドとして、スクラッチ等のキズを与えにくい軟質なスウェードパッドが好適に使用されている(特許文献1)。
特開2010−149259号公報
従来、湿式成膜法による研磨パッドでは、発泡状態の調整、強度向上、粘弾性の調整、脆性付与の目的で、通常、樹脂溶液にカーボンブラックが添加されている。ところが、このカーボンブラック粒子が凝集体を形成しやすく、当該凝集体が硬質成分であるために、得られた軟質プラスチックシートを研磨パッドに使用すると、被研磨物にスクラッチが生じる。スクラッチを抑制するためカーボンブラックを入れない研磨パッドでは、ポリウレタン樹脂の粘りが大きくなり、セルフドレッシング性が悪化し、研磨加工中、研磨面の開口が閉塞されやすくなる。開口が閉塞すると、砥粒が閉塞表面に付着しやすくスクラッチが発生しやすく、また、研磨加工中に研磨液(スラリ)の循環が悪化するので、安定した研磨加工を行うことが難しくなる。
上記課題に鑑み、本発明はドレス性に優れた研磨パッドを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、脆性を付与するカーボンブラックを添加しない場合でも、樹脂の脆性を向上させることで、研磨時の表面開口の閉塞を防ぎ、スクラッチ抑制と研磨安定性を向上させることができる研磨パッドを提供することを目的とする。特に、本発明はカーボンブラックを添加しない場合にはドレス性に劣る軟質パッドにおいてドレス性を向上することを目的とする。
本発明は以下のものを提供する。
[1]
ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であることを特徴とする研磨パッド。
[2]
パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内である、[1]に記載の研磨パッド。
[3]
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]又は[2]に記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
[4]
[1]又は[2]に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用することを特徴とする方法。
[5]
ポリウレタン樹脂を研磨層として有する研磨パッドの評価方法であって、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であるか否かを確認する工程を含む評価方法。
[6]
パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内である、[5]に記載の評価方法。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、当該ポリウレタン樹脂のパルスNMR(NMR:核磁気共鳴)で得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であることを特徴とする。研磨パッドを上記のポリウレタン樹脂で形成したことにより、分子が動きにくい状態である界面相成分を多く有することで、セルフドレッシング性を向上させ、これにより研磨レートも向上するという効果が得られる。本発明の研磨パッドの好ましい態様において、パルスNMR測定で得られる非晶相、界面相、結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比20℃と40℃の比が0.5〜1.5とすることにより、研磨温度が上昇しパッド温度が40℃近くに上昇した場合でも各成分の存在比について変動が小さいため、研磨レートが変動することなく安定的に研磨を行うことができるという効果が得られる。
本発明の研磨パッドの断面の模式図及び走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の研磨パッドの製造工程における塗布、凝固再生、洗浄・乾燥の工程を行う装置の一例を示す概略図である。 本発明の研磨パッドを用いた被研磨物の研磨方法を説明する図である。 パルスNMRによる研磨パッドの構造解析方法を説明する図である。 実施例及び比較例で得られた研磨パッドのパルスNMRによる構造解析の結果(各成分の緩和時間)を示すグラフである。 実施例及び比較例で得られた研磨パッドのパルスNMRによる構造解析の結果(各成分の存在割合)を示すグラフである。
(作用)
本発明では、仕上げ研磨用に好適な軟質材料として熱可塑性ポリウレタン樹脂を使用する。熱硬化性ポリウレタン樹脂では三次元網目構造を有するため熱可塑性ポリウレタンよりも表面硬度が高くなり、仕上げ研磨用に使用するには硬すぎてスクラッチ発生の原因となる。熱可塑性ポリウレタン樹脂分子は、線形のブロック構造を持つ高分子ポリマーであり、そのポリマー中に、長くて柔らかい低極性のソフトセグメントと、短くて剛性の高い高極性のハードセグメントが、お互いに共有結合で繋がって交互配列されている。ハードセグメント中のウレタン基(ウレア基を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂も稀にある)は、官能基中の水素Hと酸素Oの水素結合による分子間相互作用により,強固な物理架橋構造(共有結合ではない、いわゆる擬似架橋構造)を形成している。ソフトセグメントでできる柔軟なマトリクスの「海」に、高度な凝集と結晶(または擬似結晶)の局所的な「島」ができている。このいわゆる「海」「島」両ブロックの相分離現象の強弱は、両セグメントの極性や分子量などで調整できる。結晶(または擬似結晶)の局所的な「島」が、物理的な架橋を演じ、熱可塑性ポリウレタン樹脂の高弾性、硬度などに貢献する。そして柔軟なマトリクスの「海」が、熱可塑性ポリウレタン樹脂の伸長特性などに貢献する。熱可塑性ポリウレタン樹脂において、この「擬似架橋構造」は加熱されると減少する。
界面相成分の存在比は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の組成、即ち、高分子ポリオールの種類や分子量、ジイソシアネートの種類、鎖延長剤の種類、あるいはこれら高分子ジオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤の配合モル比を調整することにより適切な範囲とすることができる。本発明で使用するポリウレタン樹脂では、好ましくは、重量平均分子量(Mw)を100,000〜300,000の範囲に規定する。Mwが100,000以上である場合には、ポリウレタン樹脂の非晶相(ソフトセグメント)成分の高分子量化を達成でき、ソフトセグメントの分子鎖が絡み合い、分子鎖が拘束された状態である界面相の領域が大きく発達しやすい傾向がある。また、Mwが300,000以下である場合には、溶媒への溶解や安定した成膜性が得られる傾向がある。界面相の領域が大きく発達することにより、研磨時に引き伸ばされたポリウレタン樹脂の伸びが抑制され、樹脂が千切れやすく、研磨中、開口が閉塞しにくくなり安定した研磨加工を行うことができる。またドレスもかかりやすく、ドレス後に削れ残りのないきれいな研磨面を作りだすことができ、パッド削れ残り由来のスクラッチ傷を低減できる。即ち、本発明の研磨パッドはドレス性に優れている。
通常、熱可塑性ポリウレタン樹脂では温度上昇に伴い、分子の凝集が徐々に緩和し、非晶相(ソフトセグメント)が運動しやすくなり、結晶相成分は界面相成分へ、界面相成分は非晶相成分へ移り、全体として軟化する傾向にある。一方、本願発明で使用するポリウレタン樹脂では、結晶相(ハードセグメント)とソフトセグメントの相溶性が高く、ハードセグメントにソフトセグメントが取り込まれた界面相が大きく発達するとともに、各相の分子間相互結合が強固に形成されているため、20℃から40℃に昇温した場合にも、非晶相、界面相、結晶相の各層のドメインサイズの変動が小さい。これにより、研磨温度中での物性変化が小さく、研磨安定性を高めることができる。
界面相とは、ハードセグメントとソフトセグメントの界面であり、界面相の分率が多いことは、ハードセグメントとソフトセグメントの界面が不明確であること、およびハードセグメントとソフトセグメントの界面の数が多いことを示している。界面相を大きく発達させるためには、ソフトセグメントとしてポリエステル系ポリオールを用いることが好ましい。ポリエステル系ポリオールはポリエーテル系ポリオールよりもハードセグメントの混和性を高くでき、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離構造が進行しにくくなる。また、ハードセグメントとして、ポリイソシアネートの配合比を低くすることによりハードセグメント成分の極性が下がり、ソフトセグメントとの溶解性が上がってハードセグメント内にソフトセグメントが入り込みやすくなり、界面相の分率向上に寄与する。また、鎖延長剤としてジオールを用いる場合に該ジオールの炭素数を調整する方法が挙げられ、ジオールの炭素数を上げることによりハードセグメント成分の極性が下がって界面相の分率向上に寄与する。更にまた、ハードセグメントとソフトセグメントの極性を近づけることにより界面相の分率向上につながる。
本発明で使用するポリウレタン樹脂の特徴的な化学構造は、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であることによって規定される。界面相の成分が35%以上であることにより、研磨パッドの脆性が向上し、研磨中に開口が閉塞しにくい。また、界面相の成分が55%以下であることにより、摩耗性を抑制することができる。特に、パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内である研磨パッドを採用した場合には、各成分の存在比が研磨作業中に変動しにくいことを意味し、これにより、本発明の研磨パッドを使用した場合には研磨作業を安定して行うことができる。
(研磨パッドの製造方法)
以下、図面を参照して、本発明の研磨パッドの製造方法について説明する。
図1に本発明の研磨パッドの断面の模式図及び走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。本発明の研磨パッド1は湿式成膜法により製造された軟質プラスチックフォームとしてのポリウレタンシート2を有している。ポリウレタンシート2は、研磨面P側が、ポリウレタンシート2の厚さ(図1の縦方向の長さ)がほぼ一様となるようにバフ処理されている(詳細については後述する。)。
ポリウレタンシート2は、湿式成膜法で表面側に形成されたスキン層がバフ処理により除去されている。バフ処理により、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pが構成されている。ポリウレタンシート2の内部には、ポリウレタンシート2の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面略三角状の発泡3が形成されている。発泡3の空間体積は、研磨面P側の大きさが、研磨面Pの裏面側より小さく形成されている。発泡3同士の間のポリウレタン樹脂中には、発泡3より小さな空間体積を有する微発泡が形成されている。発泡3及び微発泡は、連通孔で立体網目状につながっている。
また、研磨パッド1は、アクリル系接着剤を用いて基材8(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済のポリウレタンシート2のバフ処理した面とは反対側の面とが貼り合わされている。基材8のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に、研磨機に研磨パッド1を装着するための両面テープが貼り合わされている。両面テープは、他面側(基材8と反対側)の接着剤層が剥離紙で覆われている。
研磨パッド1は、例えば、湿式成膜法によりポリウレタンシート2を作製し、基材8を貼り合わせて作製する。湿式成膜法では、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解させたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させ、洗浄後乾燥させて帯状(長尺状)のポリウレタンシート2を作製する。以下、工程順に説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。例えば、ポリウレタン樹脂が30質量%の濃度となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡3の大きさや量(個数)を制御するため、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシート2を得る。塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程は、例えば、図2に示す成膜装置で連続して実行される。
図2に示すように、成膜装置60は、成膜基材の不織布や織布を前処理する、水又はDMF水溶液(DMFと水との混合液)等の前処理液15が満たされた前処理槽10、ポリウレタン樹脂を凝固再生させるための、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液25が満たされた凝固槽20、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄する水等の洗浄液35が満たされた洗浄槽30及びポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機50を連続して備えている。
前処理槽10の上流側には、成膜基材43を供給する基材供給ローラ41が配置されている。前処理槽10は、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向の略中央部の内側下部に一対のガイドローラ13を有している。前処理槽10の上方で、基材供給ローラ41側にはガイドローラ11、12が配設されており、凝固槽20側には前処理した成膜基材43に含まれる過剰な前処理液15を除去するマングルローラ18が配置されている。マングルローラ18の下流側には、成膜基材43にポリウレタン樹脂溶液45を略均一に塗布するナイフコータ46が配置されている。ナイフコータ46の下流側で凝固槽20の上方にはガイドローラ21が配置されている。
凝固槽20には、洗浄槽30側の内側下部にガイドローラ23が配置されている。凝固槽20の上方で洗浄槽30側には凝固再生後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ28が配置されている。マングルローラ28の下流側で洗浄槽30の上方にはガイドローラ31が配置されている。洗浄槽30には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向で上部に4本、下部に5本のガイドローラ33が上下交互となるように配設されている。洗浄槽30の上方でシリンダ乾燥機50側には、洗浄後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ38が配置されている。シリンダ乾燥機50には、内部に熱源を有する4本のシリンダが上下4段に配設されている。シリンダ乾燥機50の下流側には、乾燥後のポリウレタン樹脂を(成膜基材43と共に)巻き取る巻取ローラ42が配置されている。なお、マングルローラ18、28、38、シリンダ乾燥機50及び巻取ローラ42は、図示を省略した回転駆動モータに接続されており、これらの回転駆動力により成膜基材43が基材供給ローラ41から巻取ローラ42まで搬送される。成膜基材43の搬送速度は、例えば、2.5m/minに設定されており、1.0〜5.0m/minの範囲で設定されることが好ましい。
成膜基材43に不織布又は織布を用いる場合は、成膜基材43が基材供給ローラ41から引き出され、ガイドローラ11、12を介して前処理液15中に連続的に導入される。前処理液15中で一対のガイドローラ13間に成膜基材43を通過させて前処理(目止め)を行うことにより、ポリウレタン樹脂溶液45を塗布するときに、成膜基材43内部へのポリウレタン樹脂溶液45の浸透が抑制される。成膜基材43は、前処理液15から引き上げられた後、マングルローラ18で加圧されて余分な前処理液15が絞り落とされる。前処理後の成膜基材43は、凝固槽20方向に搬送される。なお、成膜基材43としてPET製等の可撓性フィルムを用いる場合は、前処理が不要のため、ガイドローラ12から直接マングルローラ18に送り込むようにするか、又は、前処理槽10に前処理液15を入れないようにしてもよい。以下、本例では、成膜基材43をPET製フィルムとして説明する。
塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液45が常温下でナイフコータ46により成膜基材43に略均一に塗布される。このとき、ナイフコータ46と成膜基材43の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液45の塗布厚さ(塗布量)を調整する。
凝固再生工程では、ナイフコータ46でポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が、ガイドローラ21からガイドローラ23へ向けて凝固液25中に導入される。凝固液25中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液45の表面に厚さ数μmのスキン層4が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液45中のDMFと凝固液25との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材43の片面に凝固再生する。このポリウレタン樹脂の凝固再生は、ポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が凝固液25中に進入してからガイドローラ23に到る間に完了する。DMFがポリウレタン樹脂溶液45から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中に発泡3が形成される。このとき、PET製フィルムの成膜基材43が水を浸透させないため、ポリウレタン樹脂溶液45の表面側で脱溶媒が生じて成膜基材43側が表面側より大きな発泡3が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂は、凝固液25から引き上げられ、マングルローラ28で余分な凝固液25が絞り落とされた後、ガイドローラ31を介して洗浄槽30に搬送され洗浄液35中に導入される。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液35中に導入されたポリウレタン樹脂をガイドローラ33に上下交互に通過させることによりポリウレタン樹脂が洗浄される。洗浄後、ポリウレタン樹脂は洗浄液35から引き上げられ、マングルローラ38で余分な洗浄液35が絞り落とされる。その後、ポリウレタン樹脂を、シリンダ乾燥機50の4本のシリンダ間を交互(図2の矢印方向)に、シリンダの周面に沿って通過させることで乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂(ポリウレタンシート2)は、成膜基材43と共に巻取ローラ42に巻き取られる。
バフ処理工程では、厚みが一様となるよう成膜樹脂のスキン層側にバフ処理が施される。巻取ローラ42に巻き取られたポリウレタンシート2は成膜基材43のPET製フィルム上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシート2の厚さにバラツキが生じるため、研磨面Pには凹凸が形成されている。成膜基材43を剥離した後、成膜樹脂のスキン層と反対側の面に、表面が略平坦な圧接用治具の表面を圧接することで、スキン層側に凹凸が出現する。スキン層側に出現した凹凸をバフ処理で除去する。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシート2が帯状のため、研磨面Pに圧接用治具を圧接しながら、スキン層側を連続的にバフ処理する。これにより、スキン層が除去されて平坦な研磨面が形成されたポリウレタンシート2は、厚さのバラツキが解消され、開口が形成される。
貼り合わせ工程では、アクリル系接着剤を用いて基材8(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済みのポリウレタンシート2のバフ処理した面とは反対側の面とを貼り合わせる。
ラミネート加工工程では、基材8のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に両面テープを貼り合わせる。研磨面Pにエンボス加工を施した後、裁断・検査工程で円形等の所望の形状に裁断する。エンボス加工のパターンには特に制限はなく、研磨加工時のスラリの移動が円滑になればよい。そして、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、研磨パッド1を完成させる。
(研磨方法)
被研磨物の研磨加工を行うときは、例えば、図3に示すように、片面研磨機70を使用する。片面研磨機70は、上側に被研磨物を押圧する加圧定盤72、下側に回転可能な回転定盤71を有している。加圧定盤72の下面及び回転定盤71の上面は、いずれも平坦に形成されている。加圧定盤72の下面にはバックパッド75が貼付されており、回転定盤71の上面には被研磨物を研磨する研磨パッド1が貼付されている。バックパッド75に適量の水を含ませて被研磨物78を押し付けることで、被研磨物78が水の表面張力及びポリウレタン樹脂の粘着性でバックパッド75に保持される。加圧定盤72で被研磨物78を加圧しながら回転定盤71を回転させることで、被研磨物78の下面(加工表面)が研磨パッド1で研磨加工される。
(ポリウレタン樹脂組成物)
本発明の研磨パッドのポリウレタン樹脂は、ポリエステルジオ−ルやポリエーテルジオールやポリカーボネートジオール等の高分子ジオール、ジイソシアネート化合物および鎖延長剤を反応させて得られる。水素結合を主とする分子間凝集力により形成される結晶相(ハードセグメント)はイソシアネート化合物及び鎖延長剤に由来する構造単位から構成され、弱い分子間力(ファンデルワールス力)により形成される非晶相(ソフトセグメント)は高分子ジオールに由来する成分から構成される。
ポリウレタン樹脂における界面相成分の存在比は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の組成、即ち、高分子ポリオールの種類や分子量、ジイソシアネートの種類、鎖延長剤の種類、あるいはこれら高分子ジオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤の配合モル比を調整することにより適切な範囲とすることができる。例えば、ハードセグメントとソフトセグメントの極性を近づけることにより、相分離が進行しにくくなり界面相を増やすことができる。ポリオールとしてジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオールを用いる場合であれば、前記ジオールが短鎖である程(水酸基間の炭素数が少ない程)ソフトセグメント成分の極性が上がり、ポリイソシアネート由来の極性の高いハードセグメントとの相分離が進行しにくくなる。また、ポリイソシアネート(特にMDI)の配合比を低くすることによりハードセグメント成分の極性が下がり、ソフトセグメントとの相分離が進行しにくくなる。鎖延長剤としてジオールを用いる場合に該ジオールの炭素数を上げることによりハードセグメント成分の極性が下がって相分離が進行しにくくなる。
ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とポリオールをあらかじめ反応させて高分子量化したプレポリマーの形で使用することができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
高分子ジオールとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。これらの高分子ジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などが挙げられる。これらのポリエーテルジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルジオールとしては、例えば、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物等のエステル形成性誘導体と低分子ジオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより製造できる。ポリエステルジオールを構成するジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリエステルジオールを構成する低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;等が挙げられる。これらの低分子ジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。低分子ジオールの炭素数としては、例えば、6以上12以下が挙げられる。
鎖延長剤としては、例えば、プロピレングリコール、1−エチル−1,2−エタンジオール、1,2−ジメチル−1,2−エタンジオール、1−メチル−2−エチル−1,2−エタンジオール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、1,3−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオールおよび2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物、水などを用いることができる。これらの鎖延長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でも、界面相の分率を上げるためには、ハードセグメントに立体障害を与え結晶構造を乱し、ハードセグメントの極性を下げることのできる、アルキル基を分岐側鎖に有するジオールを含むことが好ましく、プロピレングリコール、1−エチル−1,2−エタンジオール、1,2−ジメチル−1,2−エタンジオール、1−メチル−2−エチル−1,2−エタンジオール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、1,3−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオールおよび2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールを含むことが好ましい。
更に好ましくは、鎖延長剤は側鎖にアルキル基を有するジオールと直鎖のジオールからなることが好ましく、直鎖のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,9−ノナンジオールを用いることが好ましい。側鎖にアルキル基を有するジオールと直鎖のジオールのモル比としては、5/95〜50/50の範囲であることが好ましい。
(その他の成分)
添加剤は、好ましくは、成膜助剤、発泡抑制助剤からなる群より選択される。成膜助剤としては、疎水性活性剤等が挙げられる。疎水性活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコンなどのノニオン系界面活性剤や、アルキルカルボン酸などのアニオン系界面活性剤が挙げられる。発泡抑制助剤としては、親水性活性剤等が挙げられる。親水性活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤やセルロースエステルが挙げられる。成膜助剤を添加剤として添加する場合には、ポリウレタン樹脂組成物の質量を基準として0.2〜10質量%であることが好ましい。発泡抑制助剤を添加剤として添加する場合には、ポリウレタン樹脂組成物の質量を基準として0.2〜10質量%であることが好ましい。
(ポリウレタン樹脂組成物の重合反応)
ポリウレタン樹脂は、上述したポリウレタン樹脂組成物を重合させることにより製造できる。すなわち、有機溶剤中で前記重合反応を行う方法等が挙げられる。得られたポリウレタン樹脂は、DMFなどの溶媒に混合してから、図2に示すような成膜装置に供給され、ポリウレタンシートに成形される。
(パルスNMRによる構造解析)
パルスNMRでは、パルスに対する応答信号を検出することで定量性に優れるFID信号を得ることができる。このため、ポリウレタン樹脂の相分離構造を解析することができる。FID信号の初期値は測定試料中のプロトンの数に比例しており、測定試料に複数の成分があれば、FID信号は各成分の応答信号の和となる。各成分の運動性に差があると、応答信号の減衰の速さが異なりスピン−スピン緩和時間T2が異なるため、これらを分離して各成分の緩和時間T2と成分割合Rとを求めることができる。成分の運動性が小さくなるほど緩和時間T2が短くなり、運動性が大きくなるほど緩和時間T2が長くなる。換言すれば、緩和時間T2が短くなるほど結晶性が大きくなり、緩和時間T2が長くなるほど非晶性が大きくなる。
図4に示すように、ポリウレタン樹脂のパルスNMRで得られるFID信号は、曲線Dで示される。曲線Dから、最小二乗法により緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することで、曲線H、曲線S、曲線Iで示される3つの成分に分けることができる。曲線Sで示される緩和時間T2の長い成分が非晶相に相当し、曲線Hで示される緩和時間T2の短い成分が結晶相に相当する。曲線Sと曲線Hとの間の曲線Iで示される成分が界面相に相当する。ポリウレタン樹脂では、運動性の大きなソフトセグメントで形成される非晶相の成分割合が圧縮弾性率と相関し、運動性の小さなハードセグメントで形成される結晶相の成分割合がA硬度と相関する。このため、非晶相の成分割合を大きくすれば圧縮弾性率を大きくすることができ、結晶相の成分割合を大きくすればA硬度を大きくすることができる。本発明では、界面相の成分割合が大きくなるように研磨パッドを調製しているので、相対的に結晶相の成分割合および非晶相の成分割合が小さく、温度変化による結晶相と非晶相の割合の変化が小さくなり、温度変化の影響を受けにくい。
本発明を以下の例により説明するが、本発明の範囲は以下の例により限定されるものではない。
(実施例1)
100%樹脂モジュラスが7.5MPa、重量平均分子量120000のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF31.8部、ポリエーテル変性シリコーン1部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4−ブタンジオール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を、ナイフコータを用いて塗布し、凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、該樹脂含有溶液を凝固させた後、洗浄・乾燥させて、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの表面に形成されたスキン層側に研削処理を施した(研削量:200μm)。その後、樹脂フィルムの一部を格子状の金型でエンボス加工を行い、研磨パッドを得た。
(比較例1)
100%樹脂モジュラスが4.0MPa、重量平均分子量が132800のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF52部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4−ブタンジオール/エチレングリコール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例2)
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量103100のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF32部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とトルエンジイソシアネート(TDI)を2:5の質量比で混合させたものとを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例3)
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量104300のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF32部、水5部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(100%樹脂モジュラス測定)
ポリウレタン樹脂の100%樹脂モジュラスは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値である。具体的には、100%樹脂モジュラスは、樹脂溶液を薄く引き延ばし熱風乾燥し、200μm程度の厚みの乾式フィルムを作製後、しばらく養生したのち、全長90mm、両端部幅20mm、つかみ具間距離50mm、平行部幅10mm、厚さ200μmのダンベル状に試料を打ち抜き、測定試料を万能材料試験機テンシロン(株式会社エイ・アンド・デイ製テンシロン万能試験機「RTC−1210」)の上下エアチャックにはさみ、20℃(±2℃)、湿度65%(±5%)の雰囲気下で、引っ張り速度100mm/分で引っ張り、100%伸長時(2倍延伸時)の張力を試料の初期断面積で割ることにより求めた。
(GPC測定)
実施例及び比較例で得られた研磨パッドから、研磨層のポリウレタン樹脂を0.05g切り取り、DMF4.95gに溶解し1%ポリウレタンDMF溶液を調整し、静置後、試験管ミキサーにより50℃で14時間振とうした。振とう後、上澄み0.5gを測り取りDMF2gと混合し、0.2%ポリウレタンDMF溶液とした後、0.45μmフィルターにて濾過し、測定試料とした。得られた測定試料を以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定した。標準試料としてポリエチレングリコールオキシド (アジレント・テクノロジー株式会社製 EasiVial PEG/PEO)を用いて検量線を作成した。
<測定条件>
カラム:Ohpak KB-805HQ(排除限界2000000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.75ml/min(21kg/cm2)
オーブン:60℃
検出器:RI
試料量:30μl
(パルスNMR測定)
実施例及び比較例で得られた研磨パッドは、以下の条件でパルスNMRにより構造解析を行った。
上記の装置、条件にて、得られたエンボス加工済みの研磨パッドのランド部をカッターで切り出し、1〜3mm角程度のサンプル片を10mmφの試料管に1〜2cmの高さまで充填し、パルスNMRの測定を行うことにより、減衰曲線を得た。得られた減衰曲線とフィッティング曲線が一致するよう、ローレンツ関数(直線部分)、ガウス関数(曲線部分)を用いて最小二乗法により解析し、研磨層中の結晶相、界面相及び非結晶相の割合(存在比(%))、並びに、緩和時間(T2)を得た。なお、フィッティング及び解析は、上記測定装置に付属のソフトウェアを用いた。
結果を表2、図5及び図6に示す。
実施例1の研磨パッドは、20℃における界面相の存在比と40℃における界面相の存在比が46.1%と44.4%と45%付近と高い値を維持しており、温度が20℃から40℃に上昇しても界面相が変化していないことがわかる。各相の存在比の温度変化から、温度上昇に伴って結晶相の存在比が減って非晶相の存在比が増えていることがわかる。一方、比較例1の研磨パッドは、20℃における界面相の存在比は46.5%と高いが、40℃における界面相の存在比が5.3%へ急激に減少している。比較例1の研磨パッドは、40℃における非晶相の存在比が非常に大きく、温度上昇により軟質化してしまうことがわかる。比較例2及び3の研磨パッドは、界面相の存在比が20℃及び40℃のいずれの温度においても低く、しかも温度上昇によって界面相の存在比は減少している。比較例2及び3の研磨パッドにおいても、温度上昇に伴って結晶相の存在比が減って非晶相の存在比が増えていることがわかる。以上の結果から、実施例1の研磨パッドでは、界面相の存在比が大きく、存在比も温度変化が少ないことから、温度変化にかかわらず安定して研磨作業を行うことができることが予想され、一方、比較例1〜3の研磨パッドは温度上昇により軟質化してしまうことが予想される。
(研磨試験の試験条件)
実施例および比較例の各研磨パッドを用い、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜付きシリコンウェハ、及び、Cu膜付きシリコンウェハの50枚に対して、以下の条件にて研磨加工を繰り返し行い、研磨レートの立ち上がりの状況およびスクラッチ性を評価した。
(研磨レートの測定)
研磨試験前後のウエハ上のTEOS膜、或いはCu膜について、121箇所の厚さ測定結果から平均値を求めて、その平均値から各点において研磨された厚さを研磨時間で除することにより研磨レート(Å/分)を求めた。なお、厚さ測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、型番「ASET−F5x」)のDBSモードにて測定した。
(研磨レートの安定性の評価)
ウエハの研磨処理枚数50枚までの各研磨レートを求め、処理枚数5〜50枚における研磨レートの最大値、最小値、平均値、及び研磨レートの標準偏差を求め、下記式により研磨レート安定性を評価した。
研磨レート安定性(%)=(研磨レート標準偏差/研磨レート平均値)×100
研磨レート安定性は、研磨レートのバラつき度合を表し、数値が低いほど研磨レートのバラつきが少なく安定した研磨が行われていることを示す。結果を表4に示す。
(開口状態の評価)
ウエハ50枚研磨処理後の研磨パッド表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。開口の閉塞が見られなかった場合を○、閉塞が見られた場合を×と評価した。結果を表4に示す。
実施例1では研磨レートが大きく研磨安定性に優れ、研磨処理後のパッド表面の開口も閉塞が見られなかった。
比較例1は20℃における界面相成分の存在比が40%より大きいが40℃では大きく低下している。つまり、温度の上昇に伴い界面相成分が非晶相へ変化している。温度上昇により軟質化が大きく、研磨安定性は良いものの研磨レートが非常に低い。また、若干の閉塞が見られた。
比較例2では、20℃と40℃の3成分の存在比が0.5〜1.5であるため、実施例と同等の研磨レート安定性を示した。しかしながら、界面相成分の存在比が小さいことから研磨後の表面開口は閉塞しており、研磨枚数の増加とともにスクラッチが増加した。
比較例3では、界面相成分の存在比が小さく、パッドの開口が顕著であったため、研磨スラリーが十分保持できずに研磨レート安定性に劣り、スクラッチ数も多かった。
以上説明したように、本発明によれば、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であるか否かを確認することにより、研磨パッドの性能を評価することができることがわかった。さらに、パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内であるか否かを確認することにより、研磨パッドの性能の温度変化に対する安定性を評価できることがわかった。

Claims (6)

  1. ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であることを特徴とする研磨パッド。
  2. パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
  4. 請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用することを特徴とする方法。
  5. ポリウレタン樹脂を研磨層として有する研磨パッドの評価方法であって、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン−スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン−スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における界面相成分の存在比が35〜55%であるか否かを確認する工程を含む評価方法。
  6. パルスNMR測定で得られる前記非晶相、前記界面相、前記結晶相の各成分の存在比について、20℃における値と40℃における値の比が0.5〜1.5の範囲内である、請求項5に記載の評価方法。
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