本開示は、空調システム(空気調和システム)に関し、更に詳しくは、ヒートポンプユニット及び貯湯ユニットを備えた空調システムに関するものである。以下、本開示に係る空調システムの第一実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。なお、本開示に係る空調システムの実施形態は、下記実施形態に限定されるものではなく、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
空調システムは、ヒートポンプユニットにより冷凍サイクルを成立させるのみならず、冷凍サイクルとは無関係な湯水を介して、室内へ吹出す空気に熱を付与することができる。図1に示すように、空調システム1は、ヒートポンプユニット2と、貯湯ユニット3と、湯水熱交換器4と、制御部10(図2参照)と、を備える。第一実施形態の空調システム1は、コージェネレーションシステムに組み込まれたいわゆる温水エアコンであり、再熱除湿機能を有する。
ヒートポンプユニット2は、圧縮機21と、室外側冷媒熱交換器22と、膨張機構23と、室内側冷媒熱交換器24と、ヒートポンプ制御部20(図2参照)と、を有する。ヒートポンプユニット2が動作することにより、冷凍サイクルが成立する。
ヒートポンプユニット2は、室外機201と室内機202とを有する。室外機201は、ケーシング(不図示)と、ケーシング内に収容される、圧縮機21と、室外側冷媒熱交換器22と、膨張機構23と、四方弁25と、送風装置26等の機器を有する。
膨張機構23は、キャピラリチューブや電子膨張弁等により構成される。膨張機構23の流路の一端は、冷媒流路27を介して室外側冷媒熱交換器22の流路の一端に接続される。室外側冷媒熱交換器22は、室外機201内の外気流路(不図示)の途中に配置される。室外機201のケーシングは、外気を吸込むための吸込み口(不図示)と、空気を吹出すための吹出し口(不図示)とを有し、吸込み口と吹出し口との間に外気流路が形成される。外気流路の途中には更に、送風装置26としてのファンが配置される。
室外側冷媒熱交換器22の流路の他端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第1のポート251に接続される。四方弁25の第2のポート252は、冷媒流路27を介して圧縮機21の流路の一端に接続される。圧縮機21の流路の他端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第3のポート253に接続される。膨張機構23の流路の他端に接続される冷媒流路27と、四方弁25の第4のポート254に接続される冷媒流路27とは、室外機201より導出され、室内機202に導入される。
室内機202は、ケーシング(不図示)と、ケーシング内に収容される、室内側冷媒熱交換器24と、湯水熱交換器4と、送風装置28等の機器を有する。ただし、湯水熱交換器4は、空調システム1を構成する要素であるが、ヒートポンプユニット2を構成する要素(すなわち冷凍サイクルを成立させるための要素)ではない。室内機202のケーシングは、室内の空気を吸込むための吸込み口(不図示)と、空気を吹出すための吹出し口(不図示)とを有し、吸込み口と吹出し口との間に室内流路(不図示)が形成される。室内流路の途中には、吸込み口側から吹出し口側にかけて、室内側冷媒熱交換器24と、湯水熱交換器4と、送風装置28としてのファンと、がこの順に配置される。
室内側冷媒熱交換器24は、室内へ吹出す空気と熱交換する。更に説明すると、後述する冷房運転又は再熱除湿運転(ドライ運転)を行っている時に、室内側冷媒熱交換器24は、室内流路を通流する空気を冷却する。また、後述するが、再熱除湿運転を行っている時に、湯水熱交換器4は、室内流路を通流する空気に熱を付与する。
室内側冷媒熱交換器24の流路の一端は、冷媒流路27を介して四方弁25の第4のポート254に接続される。室内側冷媒熱交換器24の流路の他端は、冷媒流路27を介して膨張機構23の流路の他端に接続される。
四方弁25は、第1のポート251と第2のポート252とが通じると共に第3のポート253と第4のポート254とが通じる状態と、第1のポート251と第3のポート253とが通じると共に第2のポート252と第4のポート254とが通じる状態のいずれかに任意に切り替えることができる。
ヒートポンプ制御部20は、ヒートポンプユニット2を制御する。ヒートポンプ制御部20は、例えばマイクロコンピュータを有し、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、ヒートポンプユニット2を構成する要素の動作を制御する。ヒートポンプ制御部20は、具体的には、圧縮機21により搬送される冷媒の単位時間当たりの搬送量(l/s)、室外機201及び室内機202に配置された送風装置26,28による単位時間当たりの風量(m3/s)、四方弁25の切り替えを制御することができる。ヒートポンプ制御部20は、室内機202に設けられるが、室外機201に設けられてもよく、設けられる場所は特に限定されない。
ヒートポンプユニット2は、第一実施形態では、吸込み温度検知部203(図2参照)を備えている。吸込み温度検知部203は、室内機202の室内流路の吸込み口近傍に配置されている。吸込み温度検知部203は、サーミスタにより構成されるが、サーミスタ以外にも各種の温度センサが適宜利用可能であり、特に限定されない。吸込み温度検知部203は、室内機202の室内流路に吸込まれる空気の吸込み温度Tr(℃)(すなわち室内温度)を検知する。吸込み温度検知部203により検知された吸込み温度Tr情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
ヒートポンプユニット2は、第一実施形態では、外気温度検知部204(図2参照)を備えている。外気温度検知部204は、室外機201の外気流路の吸込み口近傍に配置されている。外気温度検知部204は、サーミスタにより構成されるが、サーミスタ以外にも各種の温度センサが適宜利用可能であり、特に限定されない。外気温度検知部204は、室外機201の外気流路に吸込まれる空気(外気)の外気温度To(℃)を検知する。外気温度検知部204により検知された外気温度To情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
ヒートポンプユニット2は、第一実施形態では、吹出し温度検知部205(図2参照)を備えている。吹出し温度検知部205は、室内機202の室内流路の吹出し口近傍に配置されている。吹出し温度検知部205は、サーミスタにより構成されるが、サーミスタ以外にも各種の温度センサが適宜利用可能であり、特に限定されない。吹出し温度検知部205は、室内機202の室内流路を通流して吹出し口より吹出す空気の吹出し温度Ts(℃)を検知する。吹出し温度検知部205により検知された吹出し温度Ts情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
ヒートポンプユニット2は、第一実施形態では、空調操作部29(図2参照)を備えている。使用者は、空調操作部29を操作して、室内目標温度Ta(℃)と、室内機202の吹出し口から吹き出す風量q(m3/s)とを任意に設定することができる。空調操作部29より入力された室内目標温度Taと風量qの情報は、ヒートポンプ制御部20に受信される。
このヒートポンプユニット2により、冷凍サイクルによる冷房運転と暖房運転とが選択的に運転可能である。冷房運転では、ヒートポンプ制御部20は、四方弁25を、第1のポート251と第2のポート252とが通じると共に第3のポート253と第4のポート254とが通じる状態とする。これにより、圧縮機21、室外側冷媒熱交換器22(凝縮器)、膨張機構23、室内側冷媒熱交換器24(蒸発器)、圧縮機21へと到る冷媒流路27が形成され、冷房運転の冷凍サイクルが成立する。
冷房運転では、ヒートポンプ制御部20は、吸込み温度Trが室内目標温度Taとなるように制御する。室内目標温度Taは、例えば26℃等の一般的に快適となる温度である。ヒートポンプ制御部20は、吸込み温度Trが室内目標温度Taを含む所定の温度範囲に入るように、例えばフィードバック制御を行う。所定の温度範囲は、室内目標温度Ta以上の温度である許容上限温度Tu(℃)と、許容下限温度Tl(℃)との間の温度範囲である。具体的には、ヒートポンプ制御部20は、圧縮機21が有するモータの単位時間当たりの回転数を調整して、冷媒の搬送量を制御する。また、ヒートポンプ制御部20は、室内機202に配置された送風装置28が有するモータの単位時間当たりの回転数を調整して、室内機202の吹出し口から吹き出す風量qを制御する。また、ヒートポンプ制御部20は、室外機201に配置された送風装置26が有するモータの単位時間当たりの回転数を調整して、室外機201の外気流路を通流する風量を制御する。
また、暖房運転では、四方弁25を、第1のポート251と第3のポート253とが通じると共に第2のポート252と第4のポート254とが通じる状態とする。これにより、圧縮機21、室内側冷媒熱交換器24(凝縮器)、膨張機構23、室外側冷媒熱交換器22(蒸発器)、再び圧縮機21へと到る冷媒流路27が形成され、暖房運転が行われる。ヒートポンプ制御部20は、冷房運転の場合と同じ要領で、吸込み温度Trが室内目標温度Taとなるように制御する。このようなヒートポンプユニット2は、従来広く知られており、様々なものが適宜利用可能であって特に限定されない。また、ヒートポンプユニット2が適宜アキュミュレータ等の機器を有してもよい。
貯湯ユニット3は、湯水と、発電部31と、湯水流路32と、貯湯部33と、出湯流路34と、出湯量調整部35と、湯水供給部36と、貯湯制御部30(図2参照)と、を有する。第一実施形態では、発電部31からの排熱を回収する熱媒として湯水(水)が利用されるが、特に湯水でなくてもよく、他の液体や各種溶液であってもよく、限定されない。
発電部31は、湯水を加熱する。第一実施形態では、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell、略してPEFCという)により、発電部31が構成されている。燃料電池において発電に伴って発生する熱(排熱)が、熱交換器311を介して湯水に付与される。なお、発電部31は、PEFCに限定されず、他の種類の燃料電池であってもよいし、燃料電池以外であってもよい。例えば、発電部31は、エンジンやガスタービンによりジェネレータを動作させる発電装置であってもよい。
湯水流路32には、発電部31から排熱を回収した湯水が通流する。湯水流路32は、途中に、ポンプ等からなる搬送装置321と、流量調整弁322と、を有する。
貯湯部33は、湯水流路32に設けられる。貯湯部33は、湯水流路32を通流する湯水が貯められる。貯湯部33は、第一実施形態では貯湯タンクにより構成されるが、貯湯タンクにより構成されないものであってもよく、限定されない。湯水流路32及び貯湯部33により、循環した湯水の流路が形成される。
出湯流路34は、貯湯部33から湯水を出湯するための流路である。出湯流路34の上流端は、貯湯部33の上部(上端部)に接続されている。出湯流路34の途中には、湯水熱交換器4が設けられる。
湯水熱交換器4には、貯湯部33から出湯した湯水が通流する。湯水熱交換器4は、室内へ吹出す空気と熱交換する。再熱除湿運転を行っている時に、湯水熱交換器4は、室内流路を通流する空気に熱を付与する。湯水熱交換器4を通流した湯水は、出湯流路34へと出湯されて、出湯流路34の下流端から排出される。
出湯量調整部35は、貯湯部33から出湯流路34を介して出湯される湯水の量(出湯量Qd)を調整する。第一実施形態では、出湯量調整部35は、流量調整弁からなり、貯湯部33からの出湯の実行及び停止を切り替え可能であると共に、出湯量Qdを調整可能である。
湯水供給部36は、湯水流路32又は貯湯部33に湯水を供給する。第一実施形態では、湯水供給部36は、給水管361及び給水管361に設けられる調整弁362により構成される。給水管361の上流端は、水道等の給水源(不図示)に接続されており、給水管361の下流端は、貯湯部33の下部(下端部)に接続されている。湯水供給部36は、貯湯部33への給水の実行及び停止を切り替え可能であると共に、給水量Qsを調整可能である。
なお、湯水供給部36は、このような給水源に接続される給水管361及び調整弁362に限定されない。また、湯水供給部36は、貯湯部33に給水するのではなく、湯水流路32に給水するものであってもよく、給水管361の下流端が貯湯部33ではなく湯水流路32に接続されていれば、湯水流路32に給水することができる。
貯湯制御部30は、貯湯ユニット3を構成する要素の動作を制御する。貯湯制御部30は、例えばマイクロコンピュータを有し、ROM等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、貯湯ユニット3の要素の動作を制御する。貯湯制御部30は、発電部31を制御して、発電部31における単位時間当たりの発熱量を調整することができる。また、貯湯制御部30は、湯水流路32に設けられた搬送装置321及び流量調整弁322を制御して、湯水流路32を通流する湯水の通流の実行及び停止、湯水の通流量を調整することができる。また、貯湯制御部30は、出湯量調整部35を制御して、出湯の実行及び停止と、出湯量Qdとを調整することができる。また、貯湯制御部30は、湯水供給部36を制御して、貯湯部33への給水の実行及び停止と、給水量Qsとを調整することができる。
貯湯ユニット3は、第一実施形態では、貯湯操作部37(図2参照)を備えている。使用者は、貯湯操作部37を操作して、発電部31の動作及び停止と発電量、湯水の出湯及び停止、出湯量Qd等の各種設定を行う。貯湯操作部37より入力された情報は、貯湯制御部30に受信される。
空調システム1は、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30との間で通信を行う通信装置(不図示)を更に備える。通信装置により、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とは、無線又は有線により相互に送受信を行うことができる。このような通信装置は、従来知られている様々なものが適宜利用可能であり、特に限定されない。
第一実施形態では、空調システム1の制御部10は、ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とにより構成される。すなわち、制御部10は、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3を制御する。ヒートポンプ制御部20と貯湯制御部30とが協働して、空調システム1の全体の制御部10として機能する。なお、空調システム1が単一の制御部10を備え、単一の制御部10が空調システム1の全体を制御してもよい。
また、空調システム1は、図示しないが、湯水流路32を通流する湯水に熱を付与するための補助熱源を備えてもよい。この場合、補助熱源は制御部10に制御される。
次に、空調システム1の運転について説明する。
空調システム1は、再熱除湿運転(ドライ運転)が可能である。再熱除湿運転は、室内機202の吸込み口より吸込まれた吸込み温度Trの空気を、室内側冷媒熱交換器24で冷却することにより、空気の潜熱を回収して除湿する。更に、室内側冷媒熱交換器24を通過して温度Te(℃)となった空気を、湯水熱交換器4で再加熱することにより吹出し温度Ts(℃)の空気として、室内機202の吹出し口より吹出す。吹出し温度Tsは、吸込み温度Trと同じであることが好ましいが、吸込み温度Trと異なってもよい。
空調システム1は、貯湯量回復運転を行うことが可能である。貯湯量回復運転は、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3が動作して、室内側冷媒熱交換器24及び湯水熱交換器4と熱交換した空気が、室内へ吹出される運転が行われている場合に、行われる。具体的には、上述した再熱除湿運転中に、所定の条件を満たすと、再熱除湿運転に加えて貯湯量回復運転が行われる。
コージェネレーションシステムにおいては、貯湯部33に貯められている湯水の量(貯湯量Q)が0となると、湯水を利用する湯水熱交換器4やその他の湯水を利用する温水端末の利用はできない。貯湯量Qが許容下限値Qlにまで減少すると、制御部10は、湯水供給部36を制御して、貯湯部33への給水を開始する。許容下限値Qlは、貯湯部33の容量の0%、5%、10%等、貯湯部33の容量に対する所定の割合でもよいし、例えば10リットル等の具体的な値であってもよく、設計上定められるもので、特に限定されない。貯湯量Qが回復すると、再び、貯湯部33に貯められている湯水を利用する温水端末の利用が可能となる。
また、コージェネレーションシステムにおいては、貯湯部33への給水が行われている間においても、湯水の需要があれば、貯湯部33から出湯流路34を介して湯水が出湯されることが好ましい。これにより、温水端末において、温水の利用が中断されることなく、連続した温水の利用が可能となる。貯湯部33への給水が行われながら、貯湯部33から湯水が出湯される場合、出湯量Qdが給水量Qs未満(すなわちQd<Qs)でなければ、貯湯量Qは増加せず、貯湯量Qは回復しない。
そこで、再熱除湿運転中に、制御部10は、貯湯量Qが許容下限値Qlまで減少した時、出湯量調整部35を制御して、出湯量Qdを減少させる貯湯量回復運転を行う。貯湯量回復運転中において、貯湯部33への給水が行われる。貯湯部33への給水は、制御部10が湯水供給部36を制御することによるが、湯水供給部36によらずに例えば常に一定量の給水が貯湯部33へ行われていてもよく、給水の仕方は限定されない。
出湯量Qdの減少幅ΔQdは、制御部10により演算されて算出される。具体的には、減少幅ΔQdは、発電部31における発熱量、湯水流路32を通流する湯水の流量、給水量Qs、貯湯部33に貯められる湯水が有する熱量の増量(設計上定める値)、湯水が有する熱量が前記増量分増加させるのに要する時間(設計上定める値)等から算出される。なお、減少幅ΔQdの算出にあたっては、前記以外の諸量が用いられてもよい。また、減少幅ΔQdは、予め決められた値であってもよい。
貯湯量回復運転により、出湯量Qdが減少するため、貯湯量Qの減少が抑制され、貯湯量Qを増加させやすくなる。これにより、貯湯量Qが許容下限値Ql未満となり、貯湯部33に貯められている湯水の出湯ができなくなって、湯水熱交換器4等の温水端末の利用が中断するのを抑制し、温水端末における連続した湯水の利用が可能となる。また、温水端末における連続した湯水の利用は、発電部31から回収した排熱の利用を連続して行うものであるため、省エネ性が高い。
次に、第二実施形態の空調システムについて、図3〜図6に基づいて説明する。第二実施形態の空調システムは、貯湯量回復制御において第一実施形態の空調システムと若干異なる点があるが、その他の点(図1及び図2に示す構成を含む)については同じである。このため、第一実施形態と重複する説明は省略し、主に異なる部分について説明する。
第二実施形態においては、制御部10は、再熱除湿運転が行われている場合に、貯湯量Qが、下限予備値Ql1まで減少した時、この時点でのヒートポンプユニット2の運転状態を記憶する点で、第一実施形態と異なる。下限予備値Ql1は、許容下限値Qlよりも所定量大きい値であり、所定量は設計上定められるもので、特に限定されない。
以下、空調システム1の運転例1について説明する。図3に、運転例1の貯湯量回復制御のフロー図を示す。運転例1では、更に制御部10は、貯湯量が、許容下限値Qlまで減少した時、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで減少した時に記憶したヒートポンプユニット2の運転状態を基に、吹出し温度Tsが所定範囲内に維持されるようにヒートポンプユニット2を制御する。
使用者は、空調操作部29を操作して、設定温度(室内目標温度Ta)及び設定湿度を設定し、空調システム1による再熱除湿運転を開始する。制御部10は、再熱除湿運転の開始と同時に、図3に示す貯湯量回復制御を開始する。なお、運転例1では、貯湯部33から出湯される湯水を利用する温水端末は、湯水熱交換器4のみである。
ステップS1において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下(Q≦Ql1)であるか否かが判定される。ステップS1において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下でないと判定された場合には、ステップS1に戻る。ステップS1において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下であると判定された場合には、ステップS2に進む。
ステップS2において、この時点におけるヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の運転状態が、制御部10が有する記憶部(不図示)に記憶される。記憶部は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等からなる不揮発性メモリであるが、特に限定されない。また、ヒートポンプユニット2の運転状態とは、吸込み温度Tr、吹出し温度Ts、圧縮機21が有するモータの回転数、冷媒の搬送量といった各種諸量を含み、これらは各種センサ等により検知されて制御部10に受信される。また、貯湯ユニット3の運転状態とは、発電部31における発電量及び発熱量、湯水流路32を通流する湯水の通流量、貯湯量Q、出湯量Qdといった各種諸量を含み、これらは各種センサ等により検知されて制御部10に受信される。ステップS2の後、ステップS3に進む。
ステップS3において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下(Q≦Ql)であるか否かが判定される。ステップS3において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下でないと判定された場合には、ステップS3に戻る。ステップS3において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下であると判定された場合には、ステップS4に進む。
ステップS4において、制御部10は、貯湯量回復運転を開始する。ステップS4の後、ステップS5に進む。
ステップS5において、出湯量Qdの減少幅ΔQdが、制御部10により演算されて算出される。運転例1では、減少幅ΔQdは、発電部31における発熱量、湯水流路32を通流する湯水の流量、給水量Qs、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで増加した場合の熱量の増量、この増量分増加させるのに要する時間(設計上定める値)から、算出される。ステップS5の後、ステップS6に進む。
ステップS6において、出湯量Qdを減少幅ΔQd分減少させた状態で、運転を行う。ステップS6の後、ステップS7に進む。
ステップS7において、一定時間が経過したか否かが判定され、一定時間が経過したと判定されない場合には、ステップS7に戻る。一定時間は、適宜設定されるもので、特に限定されない。ステップS7において、一定時間が経過したと判定された場合には、ステップS8に進む。
ステップS8において、この時点における吹出し温度Tsを計測する。次に、ステップS9に進む。
ステップS9において、ステップS8において計測された吹出し温度Tsが、記憶部に記憶されている吹出し温度Tsを基準とする所定範囲外にあるか否かが判定される。ステップS9において、ステップS8において計測された吹出し温度Tsが、所定範囲外にあると判定された場合(すなわち吹出し温度Tsが所定範囲よりも大きい場合)には、ステップS10に進む。
ステップS10において、制御部10は、ヒートポンプユニット2を制御して、室内側冷媒熱交換器24における空気の冷却能力を一段階下げる。具体的には、冷媒流路27を通流する冷媒の搬送量、室内流路及び外気流路を通流する風量等を下げる。ここで、冷媒の搬送量、室内流路及び外気流路を通流する風量等は、テーブル化されている。すなわち、冷媒の搬送量、室内流路及び外気流路を通流する風量等は、本来は連続的な値をとり得るものであるが、制御を行う上では、離散的な有限個の値に集約すると制御しやすい。運転例1においては、冷媒の搬送量、室内流路及び外気流路を通流する風量等を複数の離散的な値に集約したテーブルを作成し、このテーブル上の値に基づいて、制御を行っている。ステップS10の後、ステップS11に進む。
また、ステップS9において、ステップS8において計測された吹出し温度Tsが、所定範囲外にないと判定された場合には、ステップS11に進む。
ステップS11において、一定時間が経過したか否かが判定され、一定時間が経過していないと判定された場合には、ステップS11に戻る。一定時間は、適宜設定されるもので、特に限定されない。ステップS11において、一定時間が経過していると判定された場合には、ステップS12に進む。
ステップS12において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上(Q≧Ql2)であるか否かが判定される。ここで、下限回復値Ql2は下限予備値Ql1以上(Ql2≧Ql1)であり、特に、下限回復値Ql2が下限予備値Ql1より大きい(Ql2>Ql1)ことが好ましい。ステップS12において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上でないと判定された場合には、ステップS8に戻る。ステップS12において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上であると判定された場合には、ステップS13に進む。
ステップS13において、制御部10は、貯湯量回復運転を終了する。ステップS13の後、ステップS1に戻る。
運転例1においても、貯湯量Qが許容下限値Qlまで減少した時、貯湯量回復運転が行われるため、出湯量Qdが減少して貯湯量Qが増加しやすくなる。これにより、貯湯量Qが許容下限値Ql未満となって、湯水熱交換器4の利用が中断するのが抑制され、湯水熱交換器4における連続した湯水の利用が可能となると共に、省エネ性も高い。
また、運転例1においては、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで減少した時に、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の運転状態を記憶する(ステップS2)。そして、記憶した運転状態を基に、吹出し温度Tsが所定範囲内に維持されるようにヒートポンプユニット2を制御する(ステップS8〜ステップS10)。これにより、出湯量Qdが減少して湯水熱交換器4が空気に付与する熱量が減少しても、室内側冷媒熱交換器24における空気の冷却能力が下がるため、吹出し温度Tsが所定範囲内に維持されやすくなる。
次に、空調システム1の運転例2について説明する。図4に、運転例2の貯湯量回復制御のフロー図を示す。貯湯量Qが許容下限値Qlまで減少した時、運転例1では、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで減少した時に記憶した運転状態を基に、吹出し温度Tsが所定範囲内に維持されるようにヒートポンプユニット2を制御していた。これに対し、運転例2では、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで減少した時に記憶した運転状態を基に、室内側冷媒熱交換器24が空気を冷却する能力が所定範囲内に維持されるようにヒートポンプユニット2を制御する点で運転例1と異なる。
使用者は、空調操作部29を操作して、設定温度及び設定湿度を設定し、空調システム1による再熱除湿運転を開始する。制御部10は、再熱除湿運転の開始と同時に、図4に示す貯湯量回復制御を開始する。なお、運転例2でも、貯湯部33から出湯される湯水を利用する温水端末は、湯水熱交換器4のみである。
ステップS21において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下(Q≦Ql1)であるか否かが判定される。ステップS21において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下でないと判定された場合には、ステップS21に戻る。ステップS21において、貯湯量Qが下限予備値Ql1以下であると判定された場合には、ステップS22に進む。
ステップS22において、この時点におけるヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の運転状態が、制御部10が有する記憶部に記憶される。ステップS22の後、ステップS23に進む。
ステップS23において、制御部10は、冷凍サイクル最適設定制御を開始する。冷凍サイクル最適設定制御について説明するに先立って、ヒートポンプユニット2の負荷Wと冷凍サイクルにおける成績係数(Coefficient Of Performance、以下COPとする)との関係について説明する。
ヒートポンプユニット2においては、負荷Wと、COPとの間に、図5に示す関係が存在する。ここで、Wmin(W)は負荷Wの最小値であり、主に、圧縮機21により搬送される冷媒の最小限界搬送量と、外気温度Toと、に基づいて定まる最小絞り負荷である。最小限界搬送量は、主に、圧縮機21が有するモータの単位時間当たりの回転数の下限値により決まる。
また、Wmax(W)は負荷Wの最大値であり、主に、圧縮機21により搬送される冷媒の最大限界搬送量と、外気温度Toと、に基づいて定まる。最大限界搬送量は、主に、圧縮機21が有するモータの単位時間当たりの回転数の上限値により決まる。
なお、負荷W及びCOPの具体的な値は、ヒートポンプユニット2毎に定まるため、具体的な値についての説明は省略する。
COPが最大となる負荷WをWcmax(W)としたとき、上限をWcmax+α1(W)とすると共に下限をWcmax−α2(W)とする範囲を、最適化負荷範囲Z1とする。ここで、α1及びα2は、COP及びエネルギー効率等の観点から各種の許容範囲をどの位広くとるか等により、適宜決められる。
冷凍サイクルは、負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にある場合に行われると、COP及びエネルギー効率が高く好ましい。また、最適化負荷範囲Z1外の負荷Wの範囲を非最適化負荷範囲Z2とする。最適化負荷範囲Z1のうち、負荷WがWcmax未満である領域を範囲Z11とし、負荷WがWcmax以上である領域を範囲Z12とする。また、非最適化負荷範囲Z2のうち、負荷WがWcmax−α2未満である領域を範囲Z21とし、負荷WがWcmax+α1以上である領域を範囲Z22とする。
冷凍サイクル最適設定制御について、図6に示す冷凍サイクル最適化制御のフロー図に基づいて説明する。
ステップS41において、この時点での実際の負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にあるか否かが判定される。ステップS41において、負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にあると判定されると、ステップS42に進む。
ステップS42において、この時点での実際の負荷Wを、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、記憶部に記憶し、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS41において、負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にないと判定されると、ステップS43に進む。
ステップS43において、負荷Wが、非最適化負荷範囲Z2にあることが分かっているが、負荷Wがこのうちの範囲Z21内にあるか否かが判定される。ステップS43において、負荷Wが範囲Z21内にあると判定されると、ステップS44に進む。
ステップS44において、制御部10は、負荷WをWcmaxで運転すると仮定すると共に、この場合の室内側冷媒熱交換器24を通過した空気の温度Teを算出する。温度Teは、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の運転状態として検知し得る各種諸量を基に、制御部10が所定の演算を行って算出する。その後、ステップS45に進む。
ステップS45において、算出された温度Teが所定範囲内にあるか否かが判定される。ステップS45において、算出された温度Teが所定範囲内にあると判定されると、ステップS46に進む。
ステップS46において、Wcmaxを、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、記憶部に記憶し、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS45において、算出された温度Teが所定範囲内にないと判定されると、ステップS47に進む。
ステップS47において、制御部10は、負荷WをWcmax−α2で運転すると仮定すると共に、この場合の室内側冷媒熱交換器24を通過した空気の温度Teを算出し、ステップS48に進む。
ステップS48において、算出された温度Teが所定範囲内にあるか否かが判定される。ステップS48において、算出された温度Teが所定範囲内にあると判定されると、ステップS49に進む。
ステップS49において、Wcmax−α2を、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、記憶部に記憶し、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS48において、算出された温度Teが所定範囲内にないと判定されると、ステップS42に進み、この時点での実際の負荷Wを、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS43において、負荷Wが範囲Z21内にないと判定されると、ステップS50に進む。
ステップS50において、負荷Wが範囲Z22にあることが分かっており、制御部10は、負荷WをWcmaxで運転すると仮定すると共に、この場合の室内側冷媒熱交換器24を通過した空気の温度Teを算出する。その後、ステップS51に進む。
ステップS51において、算出された温度Teが所定範囲内にあるか否かが判定される。ステップS51において、算出された温度Teが所定範囲内にあると判定されると、ステップS46に進み、Wcmaxを、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS51において、算出された温度Teが所定範囲内にないと判定されると、ステップS52に進む。
ステップS52において、制御部10は、負荷WをWcmax+α1で運転すると仮定すると共に、この場合の室内側冷媒熱交換器24を通過した空気の温度Teを算出し、ステップS53に進む。
ステップS53において、算出された温度Teが所定範囲内にあるか否かが判定される。ステップS53において、算出された温度Teが所定範囲内にあると判定されると、ステップS54に進む。
ステップS54において、Wcmax+α1を、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、記憶部に記憶し、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
また、ステップS53において、算出された温度Teが所定範囲内にないと判定されると、ステップS42に進み、この時点での実際の負荷Wを、貯湯量回復運転時のヒートポンプユニット2の負荷Wとして、冷凍サイクル最適設定制御を終了し、ステップS24に進む。
図4に示すように、ステップS24において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下(Q≦Ql)であるか否かが判定される。ステップS24において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下でないと判定された場合には、ステップS23に戻る。ステップS24において、貯湯量Qが許容下限値Ql以下であると判定された場合には、ステップS25に進む。
ステップS25において、制御部10は、貯湯量回復運転を開始する。貯湯量回復運転においては、ヒートポンプユニット2は、冷凍サイクル最適化制御において設定された負荷Wで運転される。ステップS25の後、ステップS26に進む。
ステップS26において、出湯量Qdの減少幅ΔQdが、演算により算出される。ステップS26の後、ステップS27に進む。
ステップS27において、出湯量Qdを減少幅ΔQd分減少させた状態で、運転を行う。ステップS27の後、ステップS28に進む。
ステップS28において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上(Q≧Ql2)であるか否かが判定される。ステップS28において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上でないと判定された場合には、ステップS27に戻る。ステップS28において、貯湯量Qが下限回復値Ql2以上であると判定された場合には、ステップS29に進む。
ステップS29において、制御部10は、貯湯量回復運転を終了する。ステップS29の後、ステップS21に戻る。
運転例2においても、貯湯量Qが許容下限値Qlまで減少した時、貯湯量回復運転が行われるため、出湯量Qdが減少して貯湯量Qが増加しやすくなる。これにより、貯湯量Qが許容下限値Ql未満となって、湯水熱交換器4の利用が中断するのが抑制され、湯水熱交換器4における連続した湯水の利用が可能となると共に、省エネ性も高い。
また、運転例2においては、貯湯量Qが下限予備値Ql1まで減少した時に、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット3の運転状態を記憶する(ステップS22)。そして、制御部10は、冷凍サイクル最適設定制御を行っている。
冷凍サイクル最適設定制御においては、実際の負荷Wが最適化負荷範囲Z1内にあれば、この状態で貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS41、ステップS42)。
また、実際の負荷Wが、非最適化負荷範囲Z2のうち低い方の範囲Z21内にあれば、負荷Wを最善のWcmaxで運転すると仮定して、所定の除湿能力を維持できる場合に、負荷WをWcmaxとして貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS44〜ステップS46)。
また、実際の負荷Wが低い方の範囲Z21内にあり、負荷Wを最善のWcmaxで運転すると仮定して所定の除湿能力を維持できない場合、負荷Wを、最適化負荷範囲Z1内のWcmax−α2として貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させると仮定する(ステップS47)。この仮定で、所定の除湿能力を維持できる場合に、負荷WをWcmax−α2として貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS48、ステップS49)。また、この仮定で、所定の除湿能力を維持できない場合には、COPの高い運転を断念し、現状の負荷Wで貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS42)。
また、実際の負荷Wが、非最適化負荷範囲Z2のうち高い方の範囲Z22内にあれば、負荷Wを最善のWcmaxで運転すると仮定して、所定の除湿能力を維持できる場合に、負荷WをWcmaxとして貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS50、ステップS51、ステップS46)。
また、実際の負荷Wが高い方の範囲Z22内にあり、負荷Wを最善のWcmaxで運転すると仮定して所定の除湿能力を維持できない場合、負荷Wを最適化負荷範囲Z1内のWcmax+α1として貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させると仮定する(ステップS52)。この仮定で、所定の除湿能力を維持できる場合に、負荷WをWcmax+α1として貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS53、ステップS54)。また、この仮定で、所定の除湿能力を維持できない場合には、COPの高い運転を断念し、現状の負荷Wで貯湯量回復運転時にヒートポンプユニット2を動作させる(ステップS42)。このような冷凍サイクル最適設定制御により、できるだけ高いCOPでヒートポンプユニット2を動作させることができる。
なお、各種の所定範囲(吹出し温度Tsの所定範囲、室内側冷媒熱交換器24が空気を冷却する能力の所定範囲、温度Teの所定範囲等)は設計上適宜定められるものであり、特に限定されない。