JP2020152680A - 新規オピオイドペプチド、その糖鎖付加体及びそれらを含む医薬組成物 - Google Patents

新規オピオイドペプチド、その糖鎖付加体及びそれらを含む医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】オピオイド作用を有する新規ペプチド及びその糖付加体の提供。【解決手段】R1N=C(R2)−AA1−AA2−AA3−AA4−Yという一般式で表されるペプチド誘導体又はその塩であって、R1は水素等、R2はメチル基等、Yはヒドロキシ基等、AA1はチロシン残基等、AA2はD−アルギニン残基等、AA3はフェニルアラニン残基等、AA4はシステイン残基等である、ペプチド誘導体又はその塩であり、システイン残基のチオール基を介して糖鎖を導入することができる。【選択図】図1

Description

本発明は医薬として有用な新規化合物及びそれを含む医薬に関する。
オピオイドペプチドは鎮痛作用を有するペプチドである。例えばモルヒネが挙げられ、急性疼痛、慢性疼痛、がん性疼痛に汎用されている。しかし、モルヒネはμオピオイド受容体に対する選択性が高く、麻薬性などの副作用があり、取り扱いが難しい。
他のオピオイドペプチドとして、カエルの皮膚より単離されたデルモルフィンが知られており(非特許文献1)、κオピオイド受容体に対する選択性が高く、中毒性が低く、モルヒネよりも鎮痛活性が高く、D−体アミノ酸を有し経口投与も可能なため、医薬候補として期待され、その誘導体であるテトラペプチドAも開発されている(非特許文献2)。
また、鎮痛作用又は抗侵害作用を有するオピオイドペプチドとして、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[N−MeβAla]−NHなどのペプチド化合物も知られている(特許文献1)。
しかしながら、生理活性ペプチドを医薬として用いる場合、体内の分解酵素で速やかに分解され、その有効性が著しく損なわれてしまうことが多いことや、血液−脳関門を通過できず、脳内で作用させることが困難であることなどの問題がある。
そこで、血液中での安定性を高める等の目的で、オピオイドペプチドに糖を結合させることがいくつか報告されている。
しかしながら、これまでに報告されている糖結合型オピオイドペプチドは、ほとんどがペプチド鎖中のC末端側に糖を結合させたオピオイドペプチド誘導体であり、化合物の活性を損なうことなく、ペプチドの側鎖に糖を結合させた誘導体はほとんど報告がない。
WO2007145208
V. Erspamerら Peptides, 1981, 2(2), 7-16. T. OgawaらChem. Pharm. Bull., 2003, 51(7), 759-771
本発明は、新規オピオイドペプチド化合物を提供することを課題とする。本発明はまた、糖鎖修飾が可能な新規オピオイドペプチド化合物を提供することを課題とする。本発明はまた、糖鎖が導入された新規オピオイドペプチド糖鎖付加体を提供することを課題とする。本発明はさらに、新規オピオイドペプチド又はその糖鎖付加体を含む医薬を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で示される化合物の合成に成功し、この化合物が有するチオール基を介して糖鎖を効率よく導
入することができることを見出した。さらに、得られたオピオイドペプチド及びその糖鎖付加体は医薬として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物、そのチオール基を介して糖鎖が導入された糖鎖付加体、及びそれらを含む医薬を提供する。
本発明の化合物は強力なオピオイド作用を有するため、中毒性を有さない安定な低投与量でよい鎮痛薬や抗掻痒薬などの医薬として有用である。
本発明の化合物はまた、AAの部位にチオール基を含むため、チオール基を介して糖鎖を効率よく導入することができる。これにより、オピオイドペプチドの活性を損なうことなく、オピオイドペプチドの血中安定性を向上させることができ、さらには導入する糖鎖をヒト型糖鎖とすることで抗原性の低減も達成できる。また、導入する糖鎖の種類を変えることで、オピオイドペプチドの体内動態を制御することができ、オピオイドペプチドを目的組織や目的臓器に送達する(DDS)ことも可能である。例えば、ヒト型糖鎖をガラクトースタイプにすることで、肝実質細胞に取り込まれやすくなり、N-アセチルグルコサミンタイプにすることで肝非実質細胞(星細胞など)に取り込まれやすくなり、マンノースタイプにすることで樹状細胞やマクロファージに取り込まれやすくなる、というようなDDS設計が可能となる。
テールフリック試験により本発明の化合物の鎮痛作用を評価した結果を示す図。 化合物11のHPLCクロマトグラフを示す図。 化合物11の質量分析スペクトルを示す図。 化合物17のHPLCクロマトグラフを示す図。 化合物17の質量分析スペクトルを示す図。 化合物13のHPLCクロマトグラフを示す図。 化合物13の質量分析スペクトルを示す図。
<本発明の化合物又はその塩>
本発明の化合物は、下記の一般式(1)で表される。
−AA−AA−AA−AA−Y (1)
一般式(1)において、Yは下記の式(2)で表される基である。
N=C(R)− (2)
式(2)においてRは、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、及び低級アルコキシル基から選ばれる1つであり、Rは、低級アルキル基、又はアミノ基である。
一般式(1)において、Yは、ヒドロキシ基、又は下記の式(3)で表される基である。
−N(R)R (3)
式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、及び、低級アルコキシル基から選ばれる1つであるか、又は、R及びRはこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基である。
一般式(1)において、AAは下記の式(4)で表されるα−アミノ酸残基である。
式(4)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである。Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、下記の式(5)で表される基、及び、下記の式(6)で表される基から選ばれる1つである。
−O−CO−R (5)
−O−CO−O−R (6)
式(5)のR、及び、式(6)のRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、複素環基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つである。
一般式(1)において、AAは下記の式(7)で表されるD−α−アミノ酸残基である。
式(7)において、Rは、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基、及び、ヒドロキシ低級アルキル基から選ばれる1つである。なお、nは1〜4の整数であり、好ましくは2〜3であり、特に好ましくは3である。
一般式(1)において、AAは非置換フェニルアラニン残基、置換フェニルアラニン残基、非置換D−フェニルアラニン残基、及び、置換D−フェニルアラニン残基から選ばれる1つである。
一般式(1)において、AAは、下記の式(8)で表されるα−アミノ酸残基である。
−N(R10)−CH(R11)−CO− (8)
式(8)において、R10は、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つである。R11は、の式(9)で表される基である。
−(CH−SH (9)
式(9)において、nは、1〜4の整数であり、好ましくは1〜2であり、特に好ましくは1である。
一般式(1)において、Yの好ましい例は、式(2)においてRが水素原子であり、Rが低級アルキル基又はアミノ基であるが、Rのより好ましい例は、メチル基、エチル基、又はアミノ基である。
一般式(1)において、Yの好ましい例は、ヒドロキシ基、又は式(3)においてR及びRがともに水素原子であるか、あるいは、一方が水素原子であって他方がメチル基である組合せであり、すなわち、式(3)の好ましい例は−NH又は−NH−CHである。
AAを表す式(4)におけるR及びRのベンゼン環上における置換位置は特に限定されない。
一般式(1)において、AAの好ましい例としては、チロシン残基、2,6−ジメチル−チロシン残基、o−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基等が挙げられるが、これに限定されない。
一般式(1)において、AAの好ましい例としては、D−アルギニン残基、D−メチオニンスルホキシド残基、D−N5−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、D−シトルリン残基、D−5−ヒドロキシノルロイシン残基等が挙げられるが、これに限定されない。
一般式(1)において、AAは下記の式(11)又は(12)で表される。

式(11)及び(12)において、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである。式(11)及び式(12)におけるR12及びR13のベンゼン環上における置換位置は特に限定されない。
一般式(1)において、AAの好ましい例としては、フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基及びo−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基、D−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基等が挙げられる。
一般式(1)において、AAの好ましい例としては、システイン残基、ホモシステイン残基等が挙げられる。
本明細書に記載のアミノ酸、その残基について、D−体とL−体とが存在する場合、特にD−と表示していない場合には、そのアミノ酸、その残基はL−アミノ酸を意味する。
本明細書に記載の「低級アルキル」、「低級アルコキシル」、「低級アシル」及び「低級アルキレン」の用語において、「低級」とは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含むことを意味する。本明細書に記載の「低級アルケニル」、「低級アルキニル」、「低級アルケニレン」及び「低級アルキニレン」の用語において、「低級」とは、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含むことを意味する。
本明細書に記載の「アルキル」、「アルコキシル」、「アシル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」は、直鎖型異性体及び分岐鎖型異性体のいずれの場合であってもよい。分岐鎖型異性体としては、第2級炭素を含む分岐鎖型異性体と第3級炭素を含む分岐鎖型異性体とのいずれの場合であってもよい。
前記低級アルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等があるが、これらの例に限定されない。また、本明細書に記載の「C1−16アルキル基」、「ヒドロキシC1−16アルキル基」、「アミノC1−16アルキル基」、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」、「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」等における「C1−16アルキル基」の好ましい例としては、前記低級アルキル基の好ましい例に加えて、直鎖又は分岐鎖のヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等があるが、これらの例に限定されない。C1−16アルキル基としては直鎖又は分岐鎖型のC6−12アルキル基が好ましく、C8−10アルキル基がより好ましい。
本明細書に記載の「低級アルコキシル基」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアルコキシル基を指す。前記低級アルコキシル基の好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基等があるが、これらの例に限定されない。
本明細書に記載の「C3−10シクロアルキル基」と、「C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基」における「C3−10シクロアルキル基」とは、ともに炭素原子の数が3、4、5、6、7、8、9又は10個のシクロアルキル基を指す。前記C3−10シクロアルキル基の好ましい例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等があるが、これらの例には限定されない。本明細書に記載の「C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基」における「C3−10シクロアルキル基」は低級アルキル基のどの炭素原子に置換していてもよく、低級アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のC3−10シクロアルキル基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。
本明細書に記載の「C2−16アルケニル基」及び「C2−16アルキニル基」は、それぞれ、炭素原子の数が2個から16個までのいずれかのアルケニル基及びアルキニル基であって、直鎖又は分岐鎖型のものを指す。前記C2−16アルケニル基及びC2−16アルケニル基にそれぞれ含まれる二重結合及び三重結合の位置及び数は特に限定されない,前記C2−16アルケニル基の好ましい例としては、ビニル基すなわちエテニル基、2−プロペニル基、cis−1−プロペニル基、trans−1−プロペニル基等があるが、これらの例に限定されない。前記C2−16アルキニル基の好ましい例としては、エチニル基、2−プロピニル基等があるが、これらの例には限定されない。
本明細書に記載の「複素環基」は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなるグループから選択される少なくとも1種類の原子と炭素原子とからなる、飽和、不飽和又は部分不鉋和の環状化合物を指す。前記複素環基の好ましい例は、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基等があるが、これらの例に限定されない。式(3)におけるR及びRは、これらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表す場合がある。該含窒素複素環基は、例えば、環を再成する原子として1個又は2個以上の窒素原子を含む5ないし6員の飽和又は部分不飽和の複素環基である場合がある。前記含窒素複素環基の好ましい例としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基、3,4−デヒドロピロリジノ基、ピリジニオ基等が挙げられるが、これらの例には限定されない。
本明細書に記載の「アリール基」と、「アリール置換低級アルキル基」における「アリール基」とは、1個又は2個以上の環からなる芳香族置換基を指す。前記アリール基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニリル基、フェナントリル基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「アリール置換低級アルキル基
」における「アリール基」は、低級アルキル基のどの炭素原子に置換していてもよく、低級アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば、1ないし4個、より好ましくは、1ないし2個、特に好ましくは、1個のアリール基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記アリール置換低級アルキル基の好ましい例としては、ベンジル基、フェネチル基等があるが、これらの例に限定されない。
本明細書に記載の「低級アシル基」と、「低級アシルアミノ基」における「低級アシル基」とは、ともに1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアシル基すなわちアルカノイル基を指す。前記低級アシル基の好ましい例としては、ホルミル基、アセチル基等があるが、これらの例に限定されない。基本明細書に記載の「低級アシルアミノ基」における「低級アシル基」は、アミノ基の水素原子の一方又は両方を置換する。前記低級アシルアミノ基の好ましい例としては、モノアセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。
本明細書に記載の「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のいずれでもよい。本明細書に記載の「ハロゲン化低級アルキル基」に置換するハロゲン原子の置換位置、個数及び種類は特に制限されず、モノハロゲン化低級アルキル基からパーハロゲン化低級アルキル基までいずれも利用可能である。2個以上のハロゲン原子が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。前記ハロゲン化低級アルキル基の好ましい例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等があるが、これらの例には限定されない。
本明細書に記載の「ヒドロキシ低級アルキル基」又は「ヒドロキシC1−16アルキル基」における「ヒドロキシ基」は、アルキル基の炭素原子のうちどの炭素原子に置換していてもよく、アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のヒドロキシ基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記「ヒドロキシ低級アルキル基」及び「ヒドロキシC1−16アルキル基」の好ましい例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基等があるが、これらの例に限定されない。
本明細書に記載の「アミノC1−16アルキル基」における「アミノ基」は、C1−16アルキル基の炭素原子のうちどの炭素原子に置換していてもよく、アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のアミノ基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記「アミノC1−16アルキル基」の好ましい例としては、アミノメチル基、2−アミノエチル基等があるが、これらの例に限定されない。
本明細書に記載の「(モノ低級アルキル)アミノ基」と、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(モノ低級アルキル)アミノ基」とは、ともに、炭素原子の数が1、2、3、4、5又は6個のアルキル基がアミノ基の1個の水素原子を置換したものを指す。本明細書に記載の「(モノ低級アルキル)アミノ基」と、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(モノ低級アルキル)アミノ基」との好ましい例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(ジ低級アルキル)アミノ基」とは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアルキル基がアミノ基の2個の水素原子のそれぞれを置換したものを指す。それぞれの水素原子を置換する低級アルキル基は、同じ低級アルキル基であっても、異なる低級アルキル基であってもかまわない。前記(ジ低級アルキル)アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「
(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」は、前記(モノ低級アルキル)アミノ基が、C1−16アルキル基の炭素原子のどこに置換していてもよく、該アミノ基はさらに前記低級アルキル基1個で置換されていることを表す。前記(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基の好ましい例としては、3−(メチルアミノ)−n−プロニル基、2−(エチルアミノ)−n−ペンチル基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」は、前記(ジ低級アルキル)アミノ基が、C1−16アルキル基の炭素原子のどこに置換していてもよく、該アミノ基はさらに前記低級アルキル基2個で置換されていることを表す。前記(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基の好ましい例としては、2−(ジメチルアミノ)エチル基、2−(ジエチルアミノ)エチル基等があるが、これらの例には限定されない。
本明細書において、「アミノ酸残基」という用語はペプチド化学の分野における通常の意味で用いられており、より具体的には、αアミノ酸においてα位の関係にあるアミノ基及びカルボキシル基、又はβアミノ酸においてβ位の関係にあるアミノ基及びカルボキシル基から、それぞれ水素原子及びヒドロキシ基を除いた残りの構造を意味する。アミノ酸残基の表記法は、生化学辞典(第3版、東京化学同人、1998年10月8日発行)、WIPO標準ST.25及び平成14年7月に特許庁が公表した「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」に準じる。D−アミノ酸残基を含む場合にはその旨を表示する。すなわち、化学式(1)において、「−AA−」(iは1ないし4の整数)と表記される第i番目のアミノ酸残基が例えばチロシン残基のときには、「−[Tyr]−」、D−アルギニン残基のときには、「−[D−Arg]−」、ホモシステインのときには、「−[Hcy]−」のようにアルファベット3文字による省略表記で表されるが、修飾アミノ酸残基の場合には、2,6−ジメチル−チロシン残基のときには、「−[2,6−ジメチル−Tyr]−」、D−メチオニンスルホキシド残基のときには、「−[D−Met(O)]−」とそれぞれ表される。
一般式(1)で表される化合物は、Yが、式(2)で表され、式(2)におけるRは水素原子であり、Rはメチル基、エチル基、及び、アミノ基から選ばれる1つである場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、Yが、ヒドロキシ基、又は、式(3)で表され、式(3)におけるR及びRがともに水素原子であるか、あるいは、一方が水素原子であって他方がメチル基の組合せである場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、AAが式(4)で表されるα−アミノ酸残基であり、式(4)におけるXがヒドロキシ基である場合がある。また、一般式(1)で表される化合物は、AAが式(4)で表されるα−アミノ酸残基であり、式(4)におけるXが水素原子又はハロゲン原子の場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、AAがチロシン残基又は2,6−ジメチル−チロシン残基の場合がある。また、一般式(1)で表される化合物は、AAがo−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基又は2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基の場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、AAがD−アルギニン残基又はD−メチオニンスルホキシド残基の場合がある。また、一般式(1)で表される化合物は、AAがD−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、D−シトルリン残基又はD−5−ヒドロキシノルロイシン残基の場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、AAがフェニルアラニン残基の場合がある。また、一般式(1)で表される化合物は、AAがp−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、2,6−ジメチルフェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基又はD−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基の場合がある。
一般式(1)で表される化合物は、AAがシステイン残基又はホモシステイン残基の場合がある。
一般式(1)で表される好ましい化合物としては、Yが1−イミノエチル基であり、Yがヒドロキシ基である、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−OHがあるが、これらに限定されない。
一般式(1)で表される好ましい化合物としては、Yが1−イミノエチル基であり、Yがアミノ基である、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−アミド、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−アミド、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−アミド、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−アミド、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−アミド、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−アミド、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−アミド、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−アミドがあるが、これらに限定されない。
本発明の化合物の特に好ましい例として、以下の1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OHが挙げられる。

一般式(1)で表される化合物は、任意の光学活性体又はラセミ体、ジアステレオ異性体又はそれらの任意の混合物がすべて含まれる。また、一般式(1)で表される化合物には、一般式(1)で表されるペプチド誘導体の2量体ないし多量体である化合物と、これらのペプチド誘導体のC−末端とN−末端が結合した環状の化合物も含まれる場合がある。
また、本発明の化合物は一般式(1)で表される化合物の薬学的に許容できる塩であってもよいが、その好ましい例としては、塩酸塩、酢酸塩、又はパラトルエンスルホン酸などの酸付加塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩などの塩基付加塩、遊離形態及び塩の形態のペプチド誘導体の任意の水和物及び溶媒和物等があるが、これらに限定されない。
一般式(1)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、通常のペプチド合成に通常用いられる固相法及び液相法で合成することができる。アミノ基等の保護基及び縮合反応の縮合剤等は、優れたものが種々知られており、以下の実施例を参考に、また、例えば:鈴木紘一編「タンパク質工学−基礎と応用」丸善(株)(1992)及びそこに引用された文献;M.Bondanszky,etal.,“PeptideSynthesis”,JohnWiley&Sons,n.Y.,1976;並びにJ.M.StewartandD.J.Young,”SolidPhasePeptideSynthesis”,W.H.FreemanandCo.,SanFrancisco,1969等を参照して適宜選択使用することができる。固相法では市販の各種ペプチド合成装置、例えば株式会社パーキン・エルマー・ジャパン製モデル430A、株式会社島津製作所製PSSM−8等を利用するのが便利な場合がある。合成に使用する樹脂、試薬等は市販品等を容易に入手できる。
例えば、一般式(1)で表される化合物の場合、トリチル基などでチオール基を保護したシステイン又はホモシステインを用い、ペプチド合成に供することで合成することができる。
<糖鎖付加体>
本発明の糖鎖付加体は、一般式(1)で表される化合物又はその塩の糖鎖付加体であって、一般式(1)のAAに相当する上記式(8)のα−アミノ酸残基における置換基R11(式(9))に含まれるチオール基との反応により、糖鎖が導入された、糖鎖付加体である。
本発明において、「糖鎖」とは、単位糖(単糖及び/又はその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される単糖類及び多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれらの複合体及び誘導体)などが挙げられるがそれらに限定されない。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。
また、本発明において、「糖鎖」には糖鎖の誘導体も含まれ、糖鎖の誘導体としては、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシ基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコースが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコースが酸化されたD−グルクロン酸))、アミノ基又はアミノ基の誘導体を有する糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミンなど)、アミノ基及びカルボキシ基を両方とも有する糖(例えば、N−グリコイルノイラミン酸、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
糖鎖は、例えば、ジシアロ(Disialo)糖鎖、アシアロ(Asialo)糖鎖、ジグルクナック(DiGlcNAc)糖鎖、ジマンノース(DiMan)糖鎖、グルクナック(GlcNAc)糖鎖、マルトトリオース(Maltotriose)糖鎖、マルトース(Maltose)糖鎖、マルトテトラオース(Maltotetraose)糖鎖、マルトヘプタオース(Maltoheptaose)糖鎖、β−シクロデキストリン(β−cyclodextrin)糖鎖、γ−シクロデキストリン(γ−cyclodextrin)糖鎖を用いることができる。
より具体的には、本発明に用いられる糖鎖は、下記に示すジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、ジグルクナック糖鎖、ジマンノース糖鎖、グルクナック糖鎖、マルトトリオース糖鎖、マルトース糖鎖、マルトテトラオース糖鎖、マルトヘプタオース糖鎖、β−シクロデキストリン糖鎖、γ−シクロデキストリン糖鎖などが例示される。
ジシアロ糖鎖
アシアロ糖鎖


ジグルクナック糖鎖

ジマンノース糖鎖


グルクナック糖鎖


マルトトリオース糖鎖


マルトース糖鎖


マルトテトラオース糖鎖

マルトヘプタオース糖鎖


β−シクロデキストリン糖鎖


γ−シクロデキストリン糖鎖
以下に、本発明の糖鎖付加体の好ましい例を示す。

システイン残基を介して一般式(1)の化合物に糖鎖を結合させる方法は特に限定されず、例えば、システイン残基に糖鎖を直接結合させてもよく、システイン残基にリンカーを介して糖鎖を結合させてもよい。
本発明の糖鎖付加体は、当業者に公知の糖鎖付加工程を組み込むことで製造することができる。本発明の糖鎖付加体の製造方法の具体例としては、前記システイン残基に化学合成により糖鎖を付加する方法が例示される。
例えば、導入すべき糖鎖の、一般式(1)の化合物のチオール基と反応させる部位の糖(通常は末端の糖、好ましくは末端のN−アセチルグルコサミン)の1位に−NH−(CH−(CO)−CHX(Xはハロゲン原子、aは0〜4の整数を示す。)という反応基を導入してハロアセチル化糖鎖誘導体を得る。
そして、当該ハロアセチル化糖鎖誘導体を一般式(1)の化合物と反応させることにより、糖鎖のハロアセチル化部位をシステイン残基のチオール基と反応させて、−NH−(CH−(CO)−CH−S−という連結構造を形成させることにより、糖鎖を一般式(1)の化合物に結合させる。
上記反応は、リン酸緩衝液、トリス‐塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液などの水系溶媒、又はDMSO、DMF、メタノール、アセトニトリルのような有機溶媒又はこれらの混合溶液中において、通常0〜80℃、好ましくは、10〜60℃、更に好ましくは15〜35℃で行うことができる。反応系には必要に応じて塩基や触媒などを添加してもよい。反応時間は、糖鎖の大きさにもよるが、通常10分〜24時間、好ましくは、通常30分〜5時間程度である。反応終了後は、適宜、公知の方法(例えば、HPLC)で精製するのがよい。
さらに、無保護のシステイン残基を含む化合物が、ジスルフィド結合を介した2量体を
形成することを防止するために、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)やジチオトレイトール(DTT)を緩衝液に添加して反応させることもできる。TCEPやDTTは、最終濃度が10μM〜10mMとなるように緩衝液に加えることができる。
このようにして、所定の位置に糖鎖が結合したオピオイドペプチド糖付加体を得ることができる。
<医薬組成物>
本発明の化合物もしくはその塩又はそれらの糖鎖付加体はオピオイド様作用を有するため、医薬の有効成分として使用できる。
すなわち、本発明は、鎮痛薬又は抗掻痒薬等として使用可能な医薬組成物を提供する。本発明はまた、鎮痛薬又は抗掻痒薬等に用いる医薬の製造のための本発明の化合物もしくはその薬学的に許容できる塩又はそれらの糖鎖付加体の使用を提供する。本発明はまた、本発明の化合物もしくはその薬学的に許容できる塩又はそれらの糖鎖付加体の有効量をヒトを含む動物に投与する工程を含む、疼痛又は掻痒等の予防及び/又は治療方法を提供する。
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物もしくはその薬学的に許容できる塩又はそれらの糖鎖付加体の少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の医薬組成物は、さらに薬学的に許容できる担体や製剤用添加物を含んでもよい。薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物には、安定化剤、界面活性剤、可溶化剤、吸着剤等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物に含まれる薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物は、医薬組成物の剤形等に応じて適宜選択できる。
本発明の医薬組成物の剤形は、例えば、錠剤、顆粒剤(細粒)、カプセル剤、注射剤(点滴静注剤)、貼布剤、坐剤、懸濁液及びエマルジョン、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、点鼻剤、点眼剤等の剤形とすることができるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、持続時間を長時間維持することを目的として徐放化製剤としてもよい。
本発明の医薬組成物は、鎮痛剤として使用することができる。鎮痛剤としては、一般的な疼痛の予防及び/又は治療を目的とするものだけでなく、ニューロパチックペインの予防及び/又は治療、癌性疼痛の予防及び/又は治療を目的とするものも含む。
本発明の医薬組成物はまた、抗掻痒薬として使用することもできる。抗掻痒薬としては、痒みの抑制剤、止痒剤、鎮痒剤のいずれの用途も含む。本発明に係る抗掻痒薬により、アレルギー反応又は非アレルギー反応によって発現する痒みを抑制することができる。具体的には、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎及び/又は接触性皮膚炎に由来する痒みの予防剤又は治療剤として使用することができる。
本発明の医薬組成物の投与経路は特に限定されず、静脈内投与、皮下投与、直腸内投与などの非経口投与のほか、経口投与、経粘膜投与、又は経皮投与により適用可能である。これらの投与経路に適する剤形は当業者に種々知られており、当業者は所望の投与形態に適する剤形を適宜選択し、必要に応じて当業界で利用可能な1又は2以上の薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物を用いて医薬用組成物の形態の製剤を製造することが可能である。例えば、経粘膜投与には、点鼻剤や鼻腔内スプレー剤などの鼻腔内投与剤又は舌下剤などの口腔内投与剤などが好適である。
投与量は特に限定されないが、例えば、経皮投与又は経粘膜投与の場合には単回投与量
を0.1〜10mgとし、経口投与の場合には単回投与量を1〜100mgとして、一日あたり2〜3回投与することができる。あるいは、通常成人1日あたり約0.1〜1,000mg、好ましくは、約1〜300mg投与することができる。また、投与量を患者の体重、年齢、遺伝子型、病状等のパラメータと関連づけて設定することができる。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の態様は以下には限定されない。
<1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OHの合成>
下記のスキームにしたがって1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OHを合成した。

具体的手順は以下の通りである。
HMPB-Chemmatrix(Biotage)を用い、通常のアミノ酸カップリング(Fmoc法)にょり、
Tyr(otBu)-D-Arg(Pbf)-Phe-Cys(Trt)-OHMPB Chemmatrix(9) を合成した。DMFに溶解したethyl acetimidate (5eq.) とDIEA(8eq.) を添加して、室温で20分撹拌した。その後、樹脂をDMFで3回、DCMで3回、DMFで3回洗浄した。この操作を5回行った後、ペプチドを樹脂から切り離して化合物11を得た(収量10%)。
化合物11のHPLCクロマトグラフと質量分析スペクトルをそれぞれ図2,3に示す。なお、HPLCにはACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm, 2.1×50 mm (Waters製)を用いた。
<鎮痛作用の評価>
上記で得られたオピオイドペプチドの皮下投与による鎮痛作用をマウス テールフリック試験で行った結果を図1に示す。試験結果は用量作用曲線で示す。陰性コントロールとして生理食塩水(Saline)を使用して同様の試験を行った。化合物の鎮痛作用は最大許容効果率(%MPE)を用いて定量化した。
%MPEは次式により算出した。
%MPE=[(薬剤処理後潜時−薬剤処理前潜時)/(最大刺激時間−薬剤処理前潜時)]×100。図の横軸は化合物投与後の時間(Time after injection (min))を示す。
図1より、本発明のオピオイドペプチドは優れた鎮痛作用を示すことが分かった。
<糖鎖付加体の合成1>
以下のスキームに従って、ジマンノース糖鎖を導入した。

具体的手順と得られた化合物のスペクトルは以下の通りである。
GlcNAc-Ac-Br(14) (1.1eq.)と11(1eq.)をそれぞれ50μL、40μLの水に溶解した。リン酸緩衝液(pH7.0)10μLを加えて合計100μLとし、室温で2時間撹拌して反応させることにより、化合物15を得た(収量20%)。
Dimannose-Ac-Br(16) (1.1eq.)と11(1eq.)をそれぞれ50μL、40μLの水に溶解した。リン酸緩衝液(pH7.0)10μLを加えて合計100μLとし、室温で2時間撹拌して反応させることにより、化合物17を得た(収量20%)。
化合物17のHPLCクロマトグラフと質量分析スペクトルをそれぞれ図4,5に示す。なお、HPLCにはACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm, 2.1×50 mm (Waters製)を用いた。
<糖鎖付加体の合成2>
以下のスキームに従って、ジシアロ糖鎖を導入した。

具体的手順と得られた化合物のスペクトルは以下の通りである。
Disialo-Ac-Br (12) (1.1eq.)と11(1eq.)をそれぞれ50μL、40μLの水に溶解した。リン酸緩衝液(pH7.0)10μLを加えて合計100μLとし、室温で2時間撹拌して反応させることにより、化合物13を得た(収量11%)。
化合物13のHPLCクロマトグラフと質量分析スペクトルをそれぞれ図6,7に示す。なお、HPLCにはACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm, 2.1×50 mm (Waters製)を用いた。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。

    −AA−AA−AA−AA−Y(1)

    一般式(1)において、
    は、式(2)RN=C(R)−で表される基であり、式(2)においてRは、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、及び低級アルコキシル基から選ばれる1つであり、Rは、低級アルキル基、又はアミノ基であり、
    は、ヒドロキシ基、又は式(3)−N(R)Rで表される基であり、式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルキル基、及び低級アルコキシル基から選ばれる1つであるか、又は、R及びRはこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基であり、
    AAは式(4)

    で表されるα−アミノ酸残基であり、式(4)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及びハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つであり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、式(5)−O−CO−Rで表される基、及び、式(6)−O−CO−O−Rで表される基から選ばれる1つであり、式(5)のR、及び、式(6)のRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、複素環基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、
    AAは式(7)


    で表されるD−α−アミノ酸残基であり、式(7)において、Rは、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基、及び、ヒドロキシ低級アルキル基から選ばれる1つであり、nは1〜4の整数であり、
    AAは非置換フェニルアラニン残基、置換フェニルアラニン残基、非置換D−フェニルアラニン残基、及び、置換D−フェニルアラニン残基から選ばれる1つであり、
    AAは、式(8)−N(R10)−CH(R11)−CO−で表されるα−アミノ酸残基であり、式(8)において、R10は、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、R11は、式(9)−(CH−SHで表される基であり、式(9)において、nは、1〜4の整数である。
  2. 式(2)におけるRは水素原子であり、Rはメチル基又はエチル基である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
  3. Xはヒドロキシ基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
  4. はグアニジノ基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
  5. 1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Cys]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[2,6−ジメチル−Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−OH、1−イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[Hcy]−OHからなる群より選択される化合物又はその塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。
  6. 下記化合物又はその塩である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその塩。

  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその塩の糖鎖付加体であって、一般式(1)のAAに相当する式(8)のα−アミノ酸残基における置換基R11に含まれるチオール基との反応により、糖鎖が導入された、糖鎖付加体。
  8. 糖鎖がジシアロ(Disialo)糖鎖、アシアロ(Asialo)糖鎖、ジグルクナック(DiGlcNAc)糖鎖、ジマンノース(DiMan)糖鎖、グルクナック(GlcNAc)糖鎖、マルトトリオース(Maltotriose)糖鎖、マルトース(Maltose)糖鎖、マルトテトラオース(Maltotetraose)糖鎖、マルトヘプタオース(Maltoheptaose)糖鎖、β−シクロデキストリン(β−cyclodextrin)糖鎖、およびγ−シクロデキストリン(γ−cyclodextrin) 糖鎖から選択される、請求項7に記載の糖鎖付加体。
  9. 糖鎖が以下のいずれかの構造を有する、請求項7または8に記載の糖鎖付加体。

  10. 下記いずれかの化合物である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の糖鎖付加体。


  11. 請求項1〜6に記載のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩、または請求項7〜10のいずれか一項に記載の糖鎖付加体を有効成分として含む医薬組成物。
  12. 鎮痛薬または抗掻痒薬である、請求項11に記載の医薬組成物。
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