JP2020150859A - 魚類の養殖方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】養殖水系において糞を非分散化する魚類の養殖方法を提供することを目的とする。【解決手段】セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である飼料を魚類に給餌して前記魚類の糞を集塊化する、魚類の養殖方法。【選択図】なし
Description
本発明は、魚類の養殖方法に関する。
水産業において養殖技術の開発は進んでおり、世界的に海面漁業の総漁獲量のうち養殖が占める割合は約44%と大きく(国際連合食料農業機関,2016)、養殖産業は重要な位置を占めている。国内に目を向けると、ブリ類の総生産量のうち、養殖が占める割合は61%にのぼり、生産量は160,215tであった(農林水産省,2013)。しかしながら、養殖生産量が増大するにつれ、被養殖物の生存率の向上及び高い飼育密度が求められ、養殖現場の環境汚染、飼料不足、感染症、及び薬剤投与による薬剤耐性菌の出現などの問題が頻繁に発生するようになった。
養殖現場の環境周辺における有機物負荷の増大により、水質の悪化を引き起こし、赤潮の発生、水中の酸素濃度が低下することによる貧酸素水塊の発生、また、魚病の蔓延も懸念されている(非特許文献1及び2)。養殖現場の水質は魚類の生存率にも大きく影響する。
魚類の残餌や排泄物等が有機物負荷の要因となるところ、このような有機物負荷を低減するため、飼料の量を制限することにより浮遊物質を低減する取組みや、飼料の形態をモイストペレットから水中で拡散・浮遊しにくいエクストルーダーペレットに変更する取組みがなされている。なお、養殖沈殿物(底泥、堆積物)中の含有物について、1月〜5月は残餌が多く、10月〜12月は糞が多いとの報告がなされている(非特許文献3)。なお、養殖沈殿物そのものよりも同種の有機物が浮遊物質として振舞うことが水質上の問題である。
また、一般的な魚類は、腸管内バリア機構を構成する主要素であるキチン、腸管内の粘膜層を構成するムチンを併せ持ち、その魚類の糞はキチンで構成された硬い膜に覆われているとの報告がなされている(非特許文献4)。
窪田敏文(1977),魚類養殖場.浅海養殖と自家汚染(日本水産学会編),恒星社厚生閣,東京,pp. 9-18.
Brown et al. (1986), The effect of salmon farming on the benthos of a Scottish Ioch., J. Exp. Mar. Biol. Ecol., 109, 39-51.
Aquaculture, Volume 286, Issues 1-2, 7 January 2009, Pages 80-88
Nature Communications, volume 9, Article number: 3402 (2018)
しかしながら、従来のような、飼料の量及び形態の調整等だけでは有機物負荷を十分に低減することはできない。魚類の排泄物も有機物負荷の要因となるため、魚類の糞を大きく、可能であれば凝集化(集塊化)して、養殖水系で浮遊及び分散しにくくできれば、養殖水系に浮遊する糞の量を低減することができる。これにより、有機物負荷を低減し、水質の悪化を抑制することができる。また、養殖による魚類の生産性の向上及び周辺環境の保護が期待される。
本発明は、養殖水系において糞を非分散化する魚類の養殖方法を提供することを目的とする。
本発明は、セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である飼料を魚類に給餌して前記魚類の糞を集塊化する、魚類の養殖方法に関する。
前記魚類の養殖方法において、前記魚類が肉食魚であってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記養殖が陸上養殖であってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記魚類が、ブリ、マダイ、ギンザケ、カンパチ、ヒラメ、トラフグ、シマアジ、マアジ、ヒラマサ、タイリクスズキ、スズキ、スギ、クロマグロ、ウナギ、又はニジマスであってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記セルロースエステルのアシル総置換度が0.1以上1.5以下であってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記セルロースエステルがアセチル総置換度0.5以上0.9以下の酢酸セルロースであってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記酢酸セルロースは、下記式で定義される組成分布指数(CDI)が2.0以下であってよい。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
前記魚類の養殖方法において、前記魚類の糞をろ過した飼育水を循環させて前記陸上養殖を行ってよい。
本発明によれば、養殖水系において糞を非分散化する魚類の養殖方法を提供することができる。
[魚類の養殖方法]
本開示の魚類の養殖方法は、セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である飼料を魚類に給餌して前記魚類の糞を集塊化するものである。
本開示の魚類の養殖方法は、セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である飼料を魚類に給餌して前記魚類の糞を集塊化するものである。
本開示の魚類の養殖方法における魚類は、前記飼料を給餌することで養殖可能なものであれば特に制限されない。例えば、肉食魚、草食魚及び雑食魚等であってよい。肉食魚は魚類及び魚類以外の肉を主食にする魚類であり、草食魚は水草、藻及び陸草等の植物を主食にする魚類であり、また、雑食魚は肉及び植物のいずれも食べる魚類である。
本開示の養殖方法を適用できる魚類としては、具体的には、例えば、ブリ、ヒラマサ、カンパチなどのブリ属魚類;マアジやシマアジなどのアジ亜科魚類;スズキやタイリクスズキなどのスズキ科魚類;マダイ、チダイ、クロダイなどのタイ科魚類;クロマグロやマサバなどのサバ亜科魚類;トラフグなどのフグ科魚類;ヒラメなどのヒラメ科魚類;イシダイなどのイシダイ科魚類;カワハギなどのカワハギ科魚類;メバル、カサゴ、クロソイなどのメバル科魚類;マハタやクエなどのハタ科魚類;イサキなどのイサキ科魚類;ギンザケ、ニジマス、イワナ、ヤマメ、ヒメマスなどのサケ科魚類;アユやワカサギなどのキュウリウオ科魚類;及びウナギなどのウナギ科魚類などが挙げられる。
本開示の養殖方法を適用する魚類としては、肉食魚が好ましい。肉食魚は、経済価値が高いにも関わらず養殖における腸内環境制御や糞の非分散化が難しく、また、従来、腸内環境制御や糞の非分散化の重要性に対して関心が払われてきていないためである。また、肉食魚としては、ブリ、マダイ、ギンザケ、カンパチ、ヒラメ、トラフグ、シマアジ、マアジ、ヒラマサ、タイリクスズキ、スズキ、スギ、クロマグロ、ウナギ、又はニジマス等が挙げられる。これらは何れも経済価値が高いが、腸内環境制御や糞の非分散化が難しくまた、腸内環境制御や糞の非分散化の重要性に対して関心が払われてきていないものである。
魚類に給餌する飼料は、セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である。このように少ない含有量であっても十分に魚類の糞を集塊化して、養殖水系において糞を非分散化できるため、養殖水系の汚濁を抑制することができる。また、このように少ない含有量であることにより、魚類が好まない食味などを理由とした忌避による食欲低下を未然に防ぐことができ、残餌を低減できるため、不必要な養殖水系の汚濁を抑制し、有機物負荷を低減できる。よって、生存率の向上などにより生産性の向上が期待される。
水質の評価は、例えば、化学的酸素要求量(COD)及びアンモニア態窒素等を分析すればよい。
飼料におけるセルロースエステルの含有量は、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。含有量が少なすぎると、養殖水系における糞の非分散化の程度が低下する傾向になるためである。経済性の観点からは、セルロースエステルの含有量は、2重量%以下、1重量%以下であってもよい。
本開示において、セルロースエステルとは、セルロースの水酸基の一部又は全てが脂肪酸によりエステル化されたものをいう。その脂肪酸は、炭素数nが2〜8のアシル基(炭素数にはカルボニル炭素も含む)を含有してよい。
セルロースエステルとしては、例えば、炭素数nが2のアシル基を有する酢酸セルロースや炭素数nが3のアシル基を有するプロピオン酸セルロースが挙げられる。また、セルロースエステルは、炭素数の異なる2種以上のアシル基を有していてもよく、例えば、炭素数nが2及び4のアシル基を有する酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。
セルロースエステルは腸内細菌によって消化管内で脂肪酸とセルロース分解し(特に、酢酸セルロースは腸内細菌によって消化管内で酢酸とセルロースに分解し)、セルロースはさらにオリゴ糖や単糖を経由して酢酸等の短鎖脂肪酸に分解されると考えられる。このような過程で生じる酢酸などの代謝産物や、このような過程でセルロースエステルを異化または資化する腸内細菌が腸管免疫の恒常性を維持するのに役立ち、腸管からのキチンの分泌を促すと考えられる。そして、キチンの分泌を促進することにより、排出される糞が集塊化して、養殖水系の糞の非分散化につながる。
セルロースエステルの脂肪酸とセルロースへの分解(特に、酢酸セルロースの酢酸とセルロースへの分解)は菌体外酵素によって生じると考えられる。このため、水に対する溶解性の高いセルロースエステルの方が分解されやすく、腸管免疫の恒常性の維持、腸管からのキチン分泌の促進、及びキチンの分泌が促されることによる糞の集塊化のため、より有効である。また、水に対する溶解性の高いセルロースエステルは、腸管において化学及び生物的分解されることによりゲル化する。このゲル化も糞の集塊化に寄与する。
セルロースエステルのアシル総置換度は限定されるものではなく、アシル総置換度は、0.1以上3.0以下、又は0.1以上1.5以下であってよいが、水に対する溶解性が高いことから、0.4以上1.4以下がより好ましい。
セルロースエステルが酢酸セルロースである場合、その酢酸セルロースのアセチル総置換度は限定されるものではない。アセチル総置換度は、0.1以上3.0以下、又は0.1以上1.5以下であってよいが、水に対する溶解性が高いことから、0.4以上1.4以下、0.4以上1.1以下、0.5以上1.0以下、0.5以上0.9以下の順により好ましい。アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。
(アシル総置換度及び酢酸セルロースのアセチル総置換度)
セルロースエステルのアシル総置換度は、ASTM D−817におけるアシル化度の測定法に準じて求めたアシル化度をアシル置換度に換算することにより求められる。特に、酢酸セルロースのアセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的な酢酸セルロースのアセチル総置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
セルロースエステルのアシル総置換度は、ASTM D−817におけるアシル化度の測定法に準じて求めたアシル化度をアシル置換度に換算することにより求められる。特に、酢酸セルロースのアセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的な酢酸セルロースのアセチル総置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶液(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
上記の他、アセチル総置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従い、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で、重クロロホルムに溶解し、NMR(13C−NMRまたは1H−NMR)により測定することもできる。酢酸セルロースの水酸基のプロピオニル化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させる、後述の酢酸セルロースの完全誘導体化の方法にて行うことができる。
なお、アセチル総置換度とは、酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル平均置換度の和と言い換えることができる。
(酢酸セルロースの組成分布指数(CDI))
セルロースエステルが酢酸セルロースである場合、その酢酸セルロースは、組成分布指数(CDI)が2.0以下であることが好ましい。組成分布指数(CDI)は、1.9以下、1.8以下、1.6以下、1.5以下、さらに1.3以下の順により小さい方が好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0以上であってよい。
セルロースエステルが酢酸セルロースである場合、その酢酸セルロースは、組成分布指数(CDI)が2.0以下であることが好ましい。組成分布指数(CDI)は、1.9以下、1.8以下、1.6以下、1.5以下、さらに1.3以下の順により小さい方が好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0以上であってよい。
計算上、組成分布指数(CDI)の下限値は0であるが、これは例えば100%の選択性でグルコース残基の6位のみをアセチル化し、他の位置はアセチル化しない等の特別な合成技術をもって実現されるものであり、そのような合成技術は知られていない。グルコース残基の水酸基の全てが同じ確率でアセチル化および脱アセチル化される状況において、CDIは1.0となるが、実際のセルロースの反応においてはこのような理想状態に近付けるためには相当の工夫を要する。
酢酸セルロースは、組成分布指数(CDI)が小さく、組成分布(分子間置換度分布)が均一となることにより、アセチル総置換度が通常よりも広い範囲で水溶性を確保でき、均一な溶解がなされ、構造粘性が発現しないので摂取または投与しやすく、分解されやすいため腸管免疫の恒常性の維持につながり、腸管からのキチンの分泌をより促すことができるなどの利点がある。
ここで、組成分布指数(Compositional Distribution Index, CDI)とは、組成分布半値幅の理論値に対する実測値の比率[(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)]で定義される。組成分布半値幅は「分子間置換度分布半値幅」又は単に「置換度分布半値幅」ともいう。
酢酸セルロースのアセチル置換度の均一性を評価するのに、酢酸セルロースの分子間置換度分布曲線の最大ピークの半値幅(「半価幅」ともいう)の大きさを指標とすることができる。なお、半値幅は、アセチル置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めることができる。なお、HPLCにおけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算する方法については、特開2003-201301号公報(段落0037〜0040)に説明されている。
(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
m:酢酸セルロース1分子中の水酸基とアセチル基の全数
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロースの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
さらに、組成分布半値幅の理論値を置換度と重合度で表すと、以下のように表される。下記式(2)を組成分布半値幅の理論値を求める定義式とする。
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロースの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
ところで、式(1)および式(2)においては、より厳密には重合度分布を考慮に入れるべきであり、この場合には式(1)および式(2)の「DPw」は、重合度分布関数に置き換え、式全体を重合度0から無限大までで積分すべきである。しかしながら、DPwを使う限り、式(1)および式(2)は近似的に十分な精度の理論値を与える。DPn(数平均重合度)を使うと、重合度分布の影響が無視できなくなるので、DPwを使うべきである。
(組成分布半値幅の実測値)
本開示において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
本開示において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
一般的に、アセチル置換度2〜3の酢酸セルロースに対しては、前処理なしに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行うことができ、それによって組成分布半値幅を求めることができる。例えば、特開2011−158664号公報には、置換度2.27〜2.56の酢酸セルロースに対する組成分布分析法が記載されている。
一方、組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値は、HPLC分析前に前処理として酢酸セルロースの分子内残存水酸基の誘導体化を行い、しかる後にHPLC分析を行って求める。この前処理の目的は、置換度の低い酢酸セルロースを有機溶剤に溶解しやすい誘導体に変換してHPLC分析可能とすることである。すなわち、分子内の残存水酸基を完全にプロピオニル化し、その完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)をHPLC分析して組成分布半値幅(実測値)を求める。ここで、誘導体化は完全に行われ、分子内に残存水酸基はなく、アセチル基とプロピオニル基のみ存在していなければいけない。すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の和は3である。これは、CAPのHPLC溶出曲線の横軸(溶出時間)をアセチル置換度(0〜3)に変換するための較正曲線を作成するために関係式:DSac+DSpr=3を使用するためである。
酢酸セルロースの完全誘導体化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させることにより行うことができる。より具体的には、溶媒として混合溶媒[ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド=1/1(v/v)]を酢酸セルロース(試料)に対して20重量部、プロピオニル化剤として無水プロピオン酸を該酢酸セルロースの水酸基に対して6.0〜7.5当量、触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジンを該酢酸セルロースの水酸基に対して6.5〜8.0mol%使用し、温度100℃、反応時間1.5〜3.0時間の条件でプロピオニル化を行う。そして、反応後、沈殿溶媒としてメタノールを用い、沈殿させることにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネートを得る。より詳細には、例えば、室温で、反応混合物1重量部をメタノール10重量部に投入して沈殿させ、得られた沈殿物をメタノールで5回洗浄し、60℃で真空乾燥を3時間行うことにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得ることができる。なお、重量平均重合度(DPw)も、酢酸セルロース(試料)をこの方法により完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とし、測定したものである。
上記HPLC分析では、異なるアセチル置換度を有する複数のセルロースアセテートプロピオネートを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースアセテートプロピオネートの溶出時間とアセチル置換度(0〜3)との関係を示す曲線、通常、三次曲線]から、酢酸セルロース(試料)の組成分布半値幅(実測値)を求めることができる。HPLC分析で求められるのは溶出時間とセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度分布の関係である。これは、試料分子内の残存ヒドロキシ基のすべてがプロピオニルオキシ基に変換された物質の溶出時間とアセチル置換度分布の関係であるから、本開示の養殖方法で用いられる飼料に含まれ得る酢酸セルロースのアセチル置換度分布を求めていることと本質的には変わらない。
上記HPLC分析の条件は以下の通りである。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3 /MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3 /MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
較正曲線から求めた置換度分布曲線[セルロースアセテートプロピオネートの存在量を縦軸とし、アセチル置換度を横軸とするセルロースアセテートプロピオネートの置換度分布曲線](「分子間置換度分布曲線」ともいう)において、平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして置換度分布半値幅を求める。ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅(すなわち、置換度分布半値幅)とする。
このような置換度分布半値幅は、試料中のセルロースアセテートプロピオネートの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度アセチル化されているかにより、保持時間(リテンションタイム)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、HPLCには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。このため、セルロースアセテートプロピオネートの置換度分布半値幅は、通常、下式で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な置換度分布半値幅(実測値)を求めることができる。
Z=(X2−Y2)1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3の酢酸セルロースの見掛けの置換度分布半値幅(実際は置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル置換度(0≦x≦3)である]
Z=(X2−Y2)1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3の酢酸セルロースの見掛けの置換度分布半値幅(実際は置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル置換度(0≦x≦3)である]
なお、上記置換度3の酢酸セルロース(もしくはセルロースプロピオネート)とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステルを示し、実際には(理想的には)置換度分布半値幅を有しない(すなわち、置換度分布半値幅0の)セルロースエステルである。
前記酢酸セルロースの組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値としては、好ましくは0.12〜0.34であり、より好ましくは0.13〜0.31であり、さらに好ましくは0.13〜0.25である。
先に説明した置換度分布理論式は、すべてのアセチル化と脱アセチル化が独立かつ均等に進行することを仮定した確率論的計算値である。すなわち、二項分布に従った計算値である。このような理想的な状況は現実的にはあり得ない。酢酸セルロースの加水分解反応が理想的なランダム反応に近づくような、および/または、反応後の後処理について組成について分画が生じるような特別な工夫をしない限り、セルロースエステルの置換度分布は確率論的に二項分布で定まるものよりも大幅に広くなる。
(分散度(多分散性、Mw/Mn))
分子量分布(重合度分布)の分散度(多分散性、Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
分子量分布(重合度分布)の分散度(多分散性、Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
セルロースエステルが酢酸セルロースである場合、その酢酸セルロースの分散度(多分散性、Mw/Mn)は、1.2〜2.5の範囲であることが好ましい。分散度Mw/Mnが上記の範囲にある酢酸セルロースは、分子の大きさが揃っており、水に対する溶解性に優れる。
酢酸セルロースの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(多分散性、Mw/Mn)は、HPLCを用いた公知の方法で求めることができる。酢酸セルロースの分散度(多分散性、Mw/Mn)は、測定試料を有機溶剤に可溶とするため、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより決定される(GPC−光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
(重量平均重合度(DPw))
重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
セルロースエステルが酢酸セルロースである場合、その酢酸セルロースの重量平均重合度(DPw)は、50以上800以下の範囲であることが好ましい。重量平均重合度(DPw)が高すぎると、水に対する溶解性が悪くなりやすい。前記重量平均重合度(DPw)は、好ましくは55以上700以下、さらに好ましくは60以上600以下である。
上記重量平均重合度(DPw)は、前記分散度(多分散性、Mw/Mn)と同じく、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、サイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより求められる(GPC−光散乱法)。
上記のように、酢酸セルロースの分子量(重合度)、分散度(多分散性、Mw/Mn)はGPC−光散乱法(GPC−MALLS、GPC−LALLSなど)により測定される。なお、光散乱の検出は、一般に水系溶媒では困難である。これは水系溶媒は一般的に異物が多く、一旦精製しても二次汚染されやすいことによる。また、水系溶媒では、微量に存在するイオン性解離基の影響のため分子鎖の広がりが安定しない場合があり、それを抑えるために水溶性無機塩(例えば塩化ナトリウム)を添加したりすると、溶解状態が不安定になり、水溶液中で会合体を形成したりすることがある。この問題を回避するための有効な方法の一つは、酢酸セルロースを誘導体化し、異物が少なく、二次汚染されにくい有機溶媒に溶解するようにし、有機溶媒でGPC−光散乱測定を行うことである。この目的の酢酸セルロースの誘導体化としてはプロピオニル化が有効であり、具体的な反応条件及び後処理は前記組成分布半値幅の実測値の説明箇所で記載した通りである。
酢酸セルロースの重量平均分子量Mw(重量平均重合度DPw)は、上出らの方法(Polymer Journal,13,421−431,1981)により次の式でジメチルスルフォキシド(DMSO)を溶媒とした際の極限粘度([η]、単位cm3/g)から求めることも出来る。
Mw=([η]/0.171)(1/0.61)
DPw=Mw/(162.14+42.037×DS)
DS:アセチル総置換度
極限粘度は、ウベローデ型粘度管などの毛細粘度管を使ってISO1628−1に準拠して定法で測定すれば良い。
Mw=([η]/0.171)(1/0.61)
DPw=Mw/(162.14+42.037×DS)
DS:アセチル総置換度
極限粘度は、ウベローデ型粘度管などの毛細粘度管を使ってISO1628−1に準拠して定法で測定すれば良い。
セルロースエステルの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、原料パルプ(セルロース)を活性化する活性化工程と、活性化されたセルロースをエステル化剤(アシル化剤)でアシル化するアシル化工程と、アシル化反応の終了後、アシル化剤を失活させる失活工程と、生成したセルロースアシレートを熟成(ケン化、加水分解)する熟成工程を経て製造できる。
酢酸セルロースの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015−140432号公報、特開2016−169386号公報等を参照して、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。なお、中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5以上3以下、好ましくは2以上3以下である。
本開示の養殖方法に用いられる飼料に含まれるセルロースエステル以外の任意成分としては、魚類の飼育に用いられる公知の飼料等が挙げられ、具体的には、日清丸紅飼料(株)製のモジャコEP3、おとひめEP0、おとひめEP1、おとひめEP2、おとひめEP3、おとひめEP4、おとひめEP5、おとひめEP6、おとひめEP8、おとひめEP10、モジャコA、モジャコB、モジャコEP0、モジャコEP1、モジャコEP2、ハマチスペシャルS5、ハマチスペシャルS6、ハマチスペシャル4、ハマチスペシャル5、ハマチスペシャル6、ハマチスペシャル8、ハマチスペシャル10、ハマチスペシャル12、ハマチスペシャル15、ハマチスペシャル18、ハマチEPウエスト10、ハマチEPウエスト12、ハマチEPウエスト15、ハマチEPウエスト18、ハマチEPブライト6、ハマチEPブライト8、ハマチEPブライト10、ハマチEPブライト12、及びハマチEPブライト15等が挙げられる。
飼料は、セルロースエステル及び必要に応じて任意成分を混合するかまたはしないことによって調製することができる。また、特に、任意成分として、魚類の飼育に用いられる公知のペレット状飼料を用いる場合、セルロースエステルの水溶液を当該ペレット状飼料に外添することにより調製してもよい。このように、セルロースエステルを飼料の添加剤として使用することができる。
本開示の養殖方法において、例えば、1日あたり、当該飼料を給餌する魚類の体重に対し、例えば、0.5重量%以上15重量%以下、1重量%以上15重量%以下、2重量%以上10重量%以下、または2重量%以上7重量%以下の飼料を魚類に給餌してよい。給餌量は出荷に際して目標とする体重などに鑑みて適宜調整すればよく、残餌量を適時確認しつつ飽食量を給餌することが好ましい。
給餌回数は、魚類の種類、成長度、季節等に応じて調整すればよいが、例えば、1日あたり0.5回以上5回以下、1週間当たり3.5回以上35回以下とすることができる。
魚類を養殖する水(言い換えば、飼育水)は、養殖する魚類の養殖に適した水であればよく、海水、淡水または汽水であってよい。
一般的に養殖の方法としては、大きく海面養殖と陸上養殖に分けられ、海面養殖とは、主に湾岸海域に生簀網を設置して魚介類を飼育する養殖方法をいい、陸上養殖とは、陸上に設置した生簀(水槽を含む)で行う養殖方法をいう。
海面養殖は、自然の海岸を利用しているので、台風などの自然災害の影響を受けたり、赤潮等による被害が発生したりすることもあるが、本開示の養殖方法によれば、魚類の糞を集塊化して、養殖水系における糞を非分散化できるため、汚濁を抑制できる。
陸上養殖は、自然災害による影響を海面養殖に比べて小さくすることができ、また、赤潮等による被害を避けることができるという利点がある。そのため、本開示の魚類の養殖方法としては、陸上養殖とすることが好ましい。
また、陸上養殖は、陸上に設置した生簀(水槽を含む)に飼育水を継続的に引き込みながら循環及び/または排水させる、言い換えれば、水をかけ流す「かけ流し式」と、飼育水をろ過システムを用いて浄化しながら閉鎖系で循環利用する「閉鎖循環式」に分けられる。
「かけ流し式」は、海水で飼育する魚類の飼育において、地下海水を利用する場合には、地下海水は、ろ過された海水であり清浄で温度が一定であるので、好適である。しかしながら、地下海水を利用したかけ流し方式の陸上養殖であっても、高密度な飼育を行う場合には、魚病発生のリスクを高める可能性がある。また、その排水は海に流すため、環境負荷が大きい。
「閉鎖循環式」は、飼育水の温度が安定しやすく、魚病発生のリスクが低いという利点がある。しかしながら、飼育水の換水やろ過等を行い循環使用する必要があるため、エネルギーコストが高くなる。そのろ過においては、例えば、ドラムフィルター等のろ過装置を用いることができる。ドラムフィルターは、回転するドラム状のフィルターメッシュを用いて水中の固形物を除去する。
本開示の養殖方法により、魚類の糞を集塊化すれば、陸上養殖におけるフィルターでの糞の除去が容易になり、ろ過効率が向上する。また、本開示の養殖方法により、魚類の糞を集塊化すれば、養殖水系における糞を非分散化できるため、養殖水系の汚濁を抑制することができ、ろ過効率の向上だけでなく、換水頻度を低減することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
(酢酸セルロースの調製)
酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−70」、アセチル総置換度2.43、6%粘度:145mPa・s)1重量部に対して、4.4重量部の酢酸および1.9重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌して酢酸セルロースを溶解した。この溶液に0.58部の酢酸と0.13重量部の硫酸の混合物を加え、得られた溶液を70℃に保持し、加水分解を行った。加水分解の間に酢酸セルロースが沈殿するのを防止するために、系への水の添加を2回に分けて行った。すなわち、反応を開始して1時間後に0.65重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに2時間後、1.29重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに4時間反応させた。合計の加水分解時間は7時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−70」、アセチル総置換度2.43、6%粘度:145mPa・s)1重量部に対して、4.4重量部の酢酸および1.9重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌して酢酸セルロースを溶解した。この溶液に0.58部の酢酸と0.13重量部の硫酸の混合物を加え、得られた溶液を70℃に保持し、加水分解を行った。加水分解の間に酢酸セルロースが沈殿するのを防止するために、系への水の添加を2回に分けて行った。すなわち、反応を開始して1時間後に0.65重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに2時間後、1.29重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに4時間反応させた。合計の加水分解時間は7時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
加水分解を実施した後、硫酸に対して1.1当量の酢酸マグネシウムを含む24%酢酸マグネシウム水溶液を反応混合物に加えて反応を停止した。この反応混合物に対して3.6倍重量のアセトン中に反応混合物を攪拌下で60分を要して滴下し、沈殿を形成させた。ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして沈殿を回収した。得られた沈殿物の固形分1重量部に対し、16重量部のアセトン/水の混合溶剤(アセトン濃度20重量%)を加え、40℃で8時間撹拌後、ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして固形物を回収した。得られたウェットケーキの固形分1重量部に対し、16重量部のメタノールを加え、25℃で1時間撹拌後、ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして固形物を回収する操作を5回繰り返し、乾燥して、酢酸セルロースを得た。
得られた酢酸セルロースのアセチル総置換度、重量平均重合度(DPw)、分散度(多分散性、Mw/Mn)、組成分布半値幅の実測値、及び組成分布指数(CDI)を前記の方法で測定した。その結果、酢酸セルロースのアセチル総置換度は0.78、重量平均重合度(DPw)は124、分散度(多分散性、Mw/Mn)は2.0、組成分布半値幅の実測値は0.305、組成分布指数(CDI)は1.90であった。
<糞形状の評価>
[給餌試験]
供試魚として、ブリ20個体(高知県産当歳魚、平均体重19.3g)を、かけ流し式200L容FRP角形水槽に入れ、3日間馴致飼育を行った。これを合計6槽(合計3試験区:1試験区あたり2槽)用意した。飼育水の水温は、25.5℃を保つようにした。馴致飼育では、飼料として、モジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)を、毎日1回、供試魚の体重に対し3重量%の量(11.58g/水槽)を投与(給餌)した。
[給餌試験]
供試魚として、ブリ20個体(高知県産当歳魚、平均体重19.3g)を、かけ流し式200L容FRP角形水槽に入れ、3日間馴致飼育を行った。これを合計6槽(合計3試験区:1試験区あたり2槽)用意した。飼育水の水温は、25.5℃を保つようにした。馴致飼育では、飼料として、モジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)を、毎日1回、供試魚の体重に対し3重量%の量(11.58g/水槽)を投与(給餌)した。
3日間馴致飼育後、さらに17日間飼育を行った。17日間飼育では、第1試験区から第3試験区の供試魚に対し、毎日1回、供試魚の体重に対し3重量%の魚類飼育用飼料をそれぞれ投与(給餌)した。第1試験区から第3試験区の供試魚に与えた飼料は以下のとおりである。また、飼育水の水温は、25.5℃を保つようにした。
(実施例1)
第1試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部の酢酸セルロースを蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料における酢酸セルロースの含有量は、1.0重量%である)。
第1試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部の酢酸セルロースを蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料における酢酸セルロースの含有量は、1.0重量%である)。
(比較例1)
第2試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部のイヌリン(Sigma−Aldrich社製、重合度(DPw)=38)を蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料におけるイヌリンの含有量は、1.0重量%である)。
第2試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部のイヌリン(Sigma−Aldrich社製、重合度(DPw)=38)を蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料におけるイヌリンの含有量は、1.0重量%である)。
(比較例2)
第3験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)社製)を用いた。
第3験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)社製)を用いた。
第1試験区から第3試験区の供試魚に対し、馴致期間の最後の給餌を試験開始(0日後)とし、それぞれ実施例1、比較例1及び2の魚類飼育用飼料の給餌開始を1日後として、14日後の水槽底面の養殖沈殿物を観察した。この養殖沈殿物の形状をもって糞形状とした。結果を表1に示す。0.5mm未満を非塊状とし、0.5mm以上1mm未満をやや塊状とし、1mm以上を塊状とした。また、実施例1及び比較例1における水槽底面の養殖沈殿物の写真をそれぞれ図1及び図2に示す。
表1及び図1に示すとおり、実施例の養殖方法では養殖沈殿物の大きさが1mm以上と大きくなり、糞が塊状となり集塊化されることが示された。よって、養殖水系における魚類の糞を非分散化でき、養殖水系に浮遊する糞の量を低減することができることがわかる。表1及び図2に示すとおり、比較例1の養殖方法では、水槽底面の養殖沈殿物の大きさは主には1mm未満であり、糞はやや塊状であるが、実施例の養殖方法比べ糞が水中に分散しやすいことがわかる。比較例2の養殖方法では、水槽底面に0.5mm以上のものを含め養殖沈殿物は殆ど観察されず、糞は非塊状であり水中に分散したことがわかる。
Claims (8)
- セルロースエステルの含有量が0.1重量%以上5重量%以下である飼料を魚類に給餌して前記魚類の糞を集塊化する、魚類の養殖方法。
- 前記魚類が肉食魚である、請求項1に記載の魚類の養殖方法。
- 前記養殖が陸上養殖である、請求項1又は2に記載の魚類の養殖方法。
- 前記魚類が、ブリ、マダイ、ギンザケ、カンパチ、ヒラメ、トラフグ、シマアジ、マアジ、ヒラマサ、タイリクスズキ、スズキ、スギ、クロマグロ、ウナギ、又はニジマスである、請求項1〜3の何れか一項に記載の魚類の養殖方法。
- 前記セルロースエステルのアシル総置換度が0.1以上1.5以下である、請求項1〜4の何れか一項に記載の魚類の養殖方法。
- 前記セルロースエステルがアセチル総置換度0.5以上0.9以下の酢酸セルロースである、請求項1〜5の何れか一項に記載の魚類の養殖方法。
- 前記酢酸セルロースは、下記式で定義される組成分布指数(CDI)が2.0以下である、請求項6に記載の魚類の養殖方法。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値) - 前記魚類の糞をろ過した飼育水を循環させて前記陸上養殖を行う、請求項3に記載の魚類の養殖方法。
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