JP6471068B2 - 反芻動物用飼料添加剤及び飼料 - Google Patents
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Description
反芻動物が健康を保つためには、VFAが酢酸6・プロピオン酸3・酪酸1の割合で生成されることが望ましいと言われている。
また、本発明の他の目的は、前記反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させる、反芻動物の飼育方法及び生乳中の乳脂肪の増加方法を提供することである。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
また、本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料の使用により、乳脂肪向上のための高脂肪飼料の給与が不要となるか、低減させることができるため、高脂肪飼料の多用に起因する反芻動物の各種疾患を予防することができる。
すなわち、本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、乳脂肪率が高い高品質の生乳の生産が可能になる。
本発明の飼料添加剤の摂取対象である反芻動物としては、第1胃(ルーメン)を有する哺乳動物である限り特に限定されない。好ましい例としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、キリン、バイソン、シカ、ヌーなどが含まれ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の家畜動物がより好ましく、特に、生乳生産を目的とした反芻動物の家畜(例、乳牛、乳ヤギ等)が好ましい。
(アセチル総置換度)
本発明における酢酸セルロースは、アセチル総置換度(平均置換度)が0.4〜1.1の酢酸セルロース(以下、「低置換度酢酸セルロース」と称することがある)である。アセチル総置換度がこの範囲であると水に対する溶解性に優れ、この範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。本発明における酢酸セルロースが水溶性に優れることにより、ルーメン中の各種微生物に利用されやすくなり、速やかにルーメン発酵を改善することができる。
前記アセチル総置換度の好ましい範囲は0.5〜1.0であり、さらに好ましい範囲は0.6〜0.95である。アセチル総置換度は、酢酸セルロースを水に溶解し、酢酸セルロースの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。また、該アセチル総置換度は、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で(後述の方法参照)、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
本発明において、前記酢酸セルロースの組成分布(分子間置換度分布)は特に限定されず、組成分布指数(CDI)は、好ましくは3.0以下(例えば1.0〜3.0)である。組成分布指数(CDI)は、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.5である。
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
本発明において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
Z=(X2−Y2)1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースアセテートの見掛けの置換度分布半値幅(実際は総置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル総置換度(0≦x≦3)である]
本発明において、前記酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、酢酸セルロース試料の遊離水酸基をピリジン中で無水プロピオン酸によりプロピオニル化する。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C−NMRスペクトルを測定する。アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、そして、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比から、元のセルロースジアセテートにおけるグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度を求めることができる。なお、このように求めた2,3,6位の各アセチル置換度の和はアセチル総置換度であり、この方法でアセチル総置換度を求めることもできる。なお、アセチル総置換度は、13C−NMRのほか、1H−NMRで分析することもできる。
本発明において、分子量分布(重合度分布)の多分散性(Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
本発明において、重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロースの6%粘度は、例えば5〜500mPa・s、好ましくは6〜300mPa・sである。6%粘度が高すぎると濾過性が悪くなる場合がある。
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させる。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温する。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3)
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
本発明における前記酢酸セルロース(低置換度酢酸セルロース)は、例えば、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。
この工程では、中乃至高置換度酢酸セルロース(以下、「原料酢酸セルロース」と称する場合がある)を加水分解する。原料として用いる中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3である。原料酢酸セルロースとしては、市販のセルロースジアセテート(アセチル総置換度2.27〜2.56)やセルローストリアセテート(アセチル総置換度2.56超〜3)を用いることができる。
この工程では、加水分解反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、沈殿溶媒を加えて低置換度酢酸セルロースを沈殿させる。沈殿溶媒としては、水と混和する有機溶剤若しくは水に対する溶解度の大きい有機溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトニトリル等の含窒素化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル;これらの混合溶媒などが挙げられる。
沈殿工程(B)で得られた沈殿物(固形物)は、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどの有機溶媒(貧溶媒)で洗浄するのが好ましい。また、塩基性物質を含む有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなど)で洗浄、中和することも好ましい。なお、中和工程は加水分解工程の直後に設けても良く、その場合には塩基性物質またはその水溶液を加水分解反応浴に添加するのが好ましい。
本発明の反芻動物用飼料添加剤は、前記低置換度酢酸セルロースを少なくとも含有している。
低置換度酢酸セルロースを反芻動物に摂取させることにより、ルーメン内のVFA総量は低下させず、酪酸を増加させることなく酢酸生成が顕著に増加する共に、プロピオン酸が低下するようにルーメン発酵が改善する。従って、酪酸生成の増加によるケトーシス発症の懸念なく、酢酸生成の増加による生乳中の乳脂肪の増加が期待できる。また、プロピオン酸生成を伴うルーメンのpHの低下が抑制され、ルーメンアシドーシスによる乳量や乳脂肪の低下が予防できると考えられる。
また、本発明の反芻動物用飼料添加剤の使用により、乳脂肪向上のための高脂肪飼料の給与が不要となるか、低減させることができるため、高脂肪飼料の多用に起因する反芻動物の各種疾患を予防することができる。
本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、乳脂肪率が高い高品質の生乳の生産が可能になる。
本発明の反芻動物用飼料は、反芻動物用の飼料、ペットフード、ペット用サプリメント(以下、飼料という。)に用いられる他の飼料成分と前記反芻動物用飼料添加剤を混合することにより調製することができる。
さらに、本発明の反芻動物用飼料は、珪藻土、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、酸性白土、活性白土、ケイ酸等の無機担体を含んでいてもよい。
飼料を摂取させる方法及び飼育する方法は、動物の種類に応じて、通常用いられる方法をとることができる。
本発明の反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させることにより、生乳中の乳脂肪を増加させることができる。
生乳中の乳脂肪を増加させるための本発明の反芻動物用飼料の摂取量は、反芻動物の種類、健康状態、飼料の種類、飼料成分、年齢、性別、体重等により適宜調節され、特に制限されないが、通常、反芻動物あたり1日の前記低置換度酢酸セルロースの摂取量として、25〜500g/体重100kg・日、より好ましくは125〜500g/体重100kg・日、さらに好ましくは250〜500g/体重100kg・日の範囲になるように、飼料に反芻動物用飼料添加剤を配合すればよく、一般的には、飼料固形分として前記低置換度酢酸セルロースが1〜20重量%、好ましくは5〜20重量%となるように配合すればよい。
人工ルーメンは、ルーメン発酵を人工の培養装置で再現するものであり、人工ルーメンに本発明の反芻動物用飼料を添加して、VFA、pH、アンモニア、ガス(メタン、水素、二酸化炭素等)の発生量、微生物相の挙動を観察することによってルーメン発酵の状態を評価することができる。
例えば、VFAのうち酢酸はルーメンの胃壁から吸収され乳脂肪分を高めることが知られている。従って、人工ルーメンに本発明の反芻動物用飼料を添加することによって酢酸濃度が上昇すれば、生乳中の乳脂肪が増加すると評価することができる。
低置換度酢酸セルロースは、WO2014/142166の実施例5に準じ、ただし、出発物質、第3加水分解工程時間、中和方法、洗浄回数を変更することで調製した。具体的には、酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−40」、アセチル総置換度2.45、6%粘度(溶媒:アセトン):90mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌して酢酸セルロースを溶解した。得られた溶液を70℃に保持し、この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、加水分解を行った。加水分解の間に酢酸セルロースが沈殿するのを防止するために、系への水の添加は2回に分けて行った。すなわち、1時間後に0.67重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに2時間後、1.33重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに7時間反応させた。合計の加水分解時間は10時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
加水分解を実施した後、酢酸マグネシウムの24重量%水溶液0.85重量部を系に加え硫酸を中和し反応を停止し、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部の沈澱溶媒(アセトン/メタノール1:2(重量比)混合溶媒)を加えて沈殿を生成させた。沈澱物は脱液し、固形分15%のウェットケーキとした。
得られた沈殿物に水に加え、8時間撹拌し、5重量%溶液とした。ここに貧溶媒であるメタノールを上記5重量%溶液の4倍量(重量基準)加え、10℃に1時間保ち、沈殿物を回収した(沈殿分別)。沈澱物は脱液し、固形分15重量%のウェットケーキとした。
このウェットケーキに、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを5回繰り返した。このウェットケーキ乾燥して、低置換度酢酸セルロースを得た。
得られた低置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度、2、3及び6位の置換度の標準偏差、6%粘度(mPa・s)、重量平均重合度(DPw)、多分散性(Mw/Mn)、分子間置換度分布半値幅(実測値)、組成分布指数(CDI)を下記の方法で測定したところ、アセチル置換度:0.78、2、3及び6位の置換度の標準偏差:0.001、6%粘度:42mPa・s、重量平均重合度(DPw):124、多分散性(分散度、Mw/Mn):1.6、分子間置換度分布半値幅:0.298、組成分布指数(CDI):1.85であった。
なお、第3熟成工程における系内の酢酸濃度(重量%)は35重量%であった。
手塚の方法(Carbohydr.Res.273, 83(1995))に準じて低置換度酢酸セルロース試料の未置換水酸基をプロピオニル化した。プロピオニル化低置換度酢酸セルロースのアセチル基総置換度及び2,3,6位の置換度の標準偏差は、手塚の方法(同)に準じて13C−NMRにおける169〜171ppmのアセチルカルボニルのシグナルおよび172〜174ppmのプロピオニルカルボニルのシグナルから決定した。
2,3,6位の置換度の標準偏差σは、次の式により算出した。
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出した。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3)
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求めた。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
酢酸セルロースの重量平均重合度および分散度は、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でGPC−光散乱測定を行うことで決定した。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
酢酸セルロースのCDIは、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でHPLC分析を行うことで決定した。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å・4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度: 30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
まず、アセチルDS(アセチル基総置換度)が0〜3の範囲でDS既知の標品をHPLC分析することで、溶出時間対DSの較正曲線を作成した。較正曲線に基づき、未知試料の溶出曲線(時間対検出強度曲線)をDS対検出強度曲線(組成分布曲線)に変換し、この組成分布曲線の未補正半値幅Xを決定し、次式により組成分布の補正半値幅Zを決定した。
Z=(X2−Y2)1/2
なお、Yは次式で定義される装置定数である。
Y=(a−b)x/3+b
a: アセチルDS=3の標品のX値
b: アセチルDS=0の標品のX値
x: 未知試料のアセチルDS
補正半値幅Zから、次式により組成分布指数(CDI)を決定した。
CDI=Z/Z0
ここに、Z0は全ての部分置換酢酸セルロースの調製におけるアセチル化および部分脱アセチル化が全ての分子の全ての水酸基(又はアセチル基)に対して等しい確率で生じた場合に生成する組成分布であり、次式で定義される。
p:(未知試料のアセチルDS)/3
q:1−p
製造例1で得られた低置換度酢酸セルロースを用い、人工ルーメン中のルーメン発酵に対する影響(VFA、pH、アンモニア濃度、微生物相、ガス発生量、飼料乾物消失率等)を評価した。
北海道大学農場で飼養されているルーメンカニューレを装着したホルスタイン種乾乳牛2頭より給餌4時間後のルーメン液(各々より3L、計6L)およびルーメン内容物(各500g、計1kg)を採取した。各個体より採取したルーメン液及び内容物はそれぞれ等量混合し(4L)、これに人工唾液(2.5L、McDougall,Biochem.J.,43:99−109,1948)を加え、イノキュラムとした。
800ml容の発酵槽8基を持つ汎用型人工ルーメン(ルシテックS、三紳工業製)を用いて連続培養を実施した。上述のイノキュラム(650ml)を加えた発酵槽に、ルーメン内容物(70g)を封入したナイロンバッグと供試飼料(濃厚飼料(MFフィード モンスター18)3gおよびチモシー1番刈り乾草9g、共に1mm粉砕)を封入したナイロンバッグをそれぞれ1つずつ投入した飼料容器を設置し、嫌気条件下、39℃で攪拌培養(168時間)し、培養開始後120時間までを馴致期、以降の48時間を試験期(6日目および7日目)とした。その際、下記表1に示された投与量で製造例1で得られた低置換度酢酸セルロース及びセルロースパウダー(旭化成製アビセルPH101)を投与した発酵槽を試験区とし、下記表1に示された投与量でセルロースパウダーのみを投与した発酵槽を対照区とした。
なお、取り出した飼料バッグは人工唾液50mlで洗浄することで飼料に付着する微生物を遊離させ、この洗浄液も発酵槽に加えた。低置換度酢酸セルロースもしくはセルロースパウダーの投与はこのタイミングで実施した。また、運転中は、飼料容器が発酵槽内を1分間当たり4往復上下運動するように攪拌設定した。また、ベリスタポンプ(Masterflex Pump,Cole−Parmer,U.S.A.)を用い、一日あたり、人工ルーメン内容物容量の1/2に相当する容量の人工唾液を一定流量で流入させた。
運転開始120時間後の飼料バッグ交換直後を試験期開始0時間後とし、以降3時間毎に液相サンプルを発酵槽上部のサンプル採取口より採取した。この液相サンプルは各種成分分析及びDNA抽出に供試するまで、−30℃で保存した。プロトゾア測定用サンプルは24時間毎の飼料バッグ交換後に採取し、MFS溶液(30mgのメチルグリーンと0.85gの塩化ナトリウムを、100mlの10%(v/v)ホルマリンに溶解したもの)により5倍希釈および固定後、室温保存した。ガスは流出液回収瓶上部に取り付けたテドラーバッグより回収し、24時間毎に流量計を用いて総容量を量り、10mlを成分分析用サンプルとして真空採血管(Becton,Dickinson and Company)に保存した。飼料乾物消失率測定のため、試験終了時およびその1日前の時点で48時間浸漬された飼料バッグは、洗浄液が透明になるまで蒸留水で洗浄し、分析まで4℃で保存した。
<揮発性脂肪酸(VFA(短鎖脂肪酸:Short-chain fatty acid:SCFAともいう))の測定>
発酵槽上部のサンプル採取口より3時間毎に採取したサンプルは、分析に供試するまで−30℃で保存し、分析に際して氷上解凍した。解凍したサンプルを12,000rpmで2分遠心し、上清100μLを分取した。これに除タンパク液(25%メタリン酸含有5N−硫酸)20μLを加え冷蔵庫内で一晩静置した。除タンパク液を加えたサンプルを遠心分離(10,000rpm×5min)して沈降物を除去した。マイクロチューブにクロトン酸標準液(3mM/dl)を25μlとり、さらに遠心分離したサンプル上清を25μlとり、ボルテックスミキサーで混合し、FIDを検出器としてガスクロマトグラフィー分析に供し、下記式より、各VFA(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、及び吉草酸)の濃度(mmol/dl)を算出した。酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、及び吉草酸の総量をもって総VFAとした。
カラム:ULBON HR−20M,30m×0.53mm
I.D.温度:130℃
キャリアガス:He
20cm/sec
注入量:1.0μl
n:酢酸では2、他の酸では1
F:各酸のファクター
酢酸: 1.0205 プロピオン酸:1.0196
イソ酪酸: 1.0270 酪酸: 1.0086
イソ吉草酸: 1.0592 吉草酸: 1.0489
s:各酸のクロマトグラムにおけるピーク面積
S:内部標準として加えたクロトン酸のクロマトグラムにおけるピーク面積
×2:サンプルとクロトン酸を1:1で混ぜたので補正
×1.2:サンプルと除タンパク液を1:0.2で混ぜたので補正
発酵槽上部のサンプル採取口より3時間毎に採取したサンプルついて、直ちにガラス電極pH計を用いてpHを測定した。
試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相のpHの推移を示すグラフを図3に示す。
試験管に5μlのルーメン液上清と245μlの蒸留水を入れ、そこに250μlの1N−NaOHを加え混合した。これに2000μlのフェノール混合試薬を加え混合後、250μlの次亜塩素酸ナトリウム液を加え混合すると発色開始するので、最低30分放置した(発色完了)。ただしフェノール混合試薬を加え混合(ボルテックス)したあとは時間をおかず、すぐに次亜塩素酸ナトリウム液を加え混合(ボルテックス)した。その後1時間以内に分光光度計(610nm)で吸光度を計測し、標準液から作成した検量線(回帰式)からアンモニア濃度(mgN/dl)を算出した。
フェノール5%含有0.6N−NaOH(遮光しポリびんにて冷凍保存、使用時は完全融解)
0.5Mリン酸2ナトリウム(Na2HPO4)溶液(pH9.8)
0.05%ニトロプルシッドナトリウム
この3つを2:3:1の容量比に使用直前に混合して使用した。
試験期6日目及び7日目のルーメン液相に存在する下記表2に示される細菌叢を下記の方法で定量した。
Dairy Science 86, 1429_1435, 2003)にしたがいDNAを抽出、精製した。精製DNA試料をKoikeらの方法(Animal Science Journal, 78, 135_141, 2007)で定量PCR分析することで、各細菌のDNA量を求めた。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン液相の細菌叢について、各菌のDNA量(log 16SrDNA copies/ml)を示すグラフを図5に、総菌数に対する各菌のパーセント(%)を示すグラフを図6に示す。なお、図5,6中、各菌は表2の略称で示している。
プロトゾア測定用に採取しMFSで5倍に希釈した溶液の10μlを格子入りスライドガラス上にとり、倍率100倍で光学顕微鏡で観察し、プロトゾア数を計数した。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のプロトゾア密度(cells/mL)を示すグラフを図7に示す。
発酵槽の流出液回収瓶上部に取り付けたテドラーバッグよりガスを回収し、24時間毎に流量計を用いて総容量を量り、10mlを成分分析用サンプルとして真空採血管(Becton,Dickinson and Company)に保存した。TCDを検出器としたガスクロマトグラフィーにより二酸化炭素、メタン、水素を定量した。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のガス(総量、二酸化炭素、メタン、水素)の生成量(ml/day)を示すグラフを図8に示す。
試験終了時およびその1日前の時点で48時間浸漬された飼料バッグは、洗浄液が透明になるまで蒸留水で洗浄し、分析まで4℃で保存した。湿潤状態の飼料バッグ内容物の総量を測定し、その一部を恒量となるまで105℃で乾燥し固形分率を求めることで、飼料バッグ内容物の総固形分量を算出し、これに基づき飼料消化率を求めた。
試験区及び対照区における6及び7日目の飼料バック内の飼料乾物消失率(%)を示すグラフを図9に示す。
従って、ルーメン中のエネルギー状態を維持しつつ、酢酸生成の増加による生乳中の乳脂肪の向上が期待できる。また、酪酸生成の増加によるケトーシス発症の懸念なく、プロピオン酸生成によるルーメンのpHの低下が抑制され、ルーメンアシドーシスによる乳量や乳脂肪の低下が予防できると考えられた。
タンパク質が分解され、ルーメン発酵が活発になっていると考えられた。
細菌叢の変化により、乳脂肪が増加するようにルーメン発酵が変化していることが示唆された。
これらの結果より、低置換度酢酸セルロースの投与により、飼料の消化率に変化はないが、ルーメン発酵効率が向上していることが示唆された。
Claims (5)
- アセチル総置換度が0.4〜1.1である酢酸セルロースを含有することを特徴とする生乳生産を目的とする反芻動物用飼料添加剤。
- 請求項1又は2に記載の生乳生産を目的とする反芻動物用飼料添加剤を含む生乳生産を目的とする反芻動物用飼料。
- 請求項3に記載の飼料を生乳生産を目的とする反芻動物に摂取させることを特徴とする、生乳生産を目的とする反芻動物の飼育方法。
- 請求項3に記載の飼料を反芻動物に摂取させることを特徴とする、反芻動物の生乳の乳脂肪増加方法。
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