JP6471068B2 - 反芻動物用飼料添加剤及び飼料 - Google Patents

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Description

本発明は、反芻動物用飼料添加剤、当該添加剤を含む飼料、反芻動物の飼育方法、生乳中の乳脂肪の増加方法等に関する。
乳牛等の生乳生産を目的とする家畜は4つの胃を持つ反芻動物であり、生乳の品質、特に乳脂肪率に影響する最も重要な消化器官は第1胃(ルーメン)である。
ルーメン内には、多数の嫌気性細菌と繊毛虫、少数の好気性細菌、寄生性鞭毛虫、真菌およびウイルスから構成されている微生物相が存在する。この微生物相は反芻動物の摂取飼料を利用して、いわゆるルーメン発酵と呼ばれる微生物消化を行い、反芻動物と相利の共生関係を営んでいる。
炭水化物は反芻動物の主要なエネルギー源であり、その大部分はルーメンで消化、発酵される。即ち、炭水化物はルーメン内の微生物の働きによって酢酸、プロピオン酸、酪酸という3つの低級脂肪酸(揮発性低級脂肪酸:volatile fatty acid;VFA)に転化され、ルーメンの胃壁から直接吸収される。酢酸は、主にセルロースやヘミセルロースなどの構造性炭水化物(繊維)のルーメン発酵により生成し、プロピオン酸、酪酸は糖類やでんぷんなどの非構造性炭水化物(Non-structural carbohydrate:NSC、非繊維性炭水化物:Non fibers carbohydrate:NFCとも言う)から主に生成される。なお、構造性炭水化物(繊維)量の指標としては、中性デタージェント繊維(Neutral detergent fiber:NDF)あるいは総繊維(Organic cell wall:OCW)を使うのが一般的であり、牧草などのペクチン質の少ない飼料ではこれらは同様の値となる。
VFAはそれぞれ異なった性質を持っており、酢酸は体内で燃焼して熱源となり、プロピオン酸は肝臓でブドウ糖に転化され栄養源となる。酪酸は、第1胃壁の絨毛形成を促進する一方で、吸収されて血中に移行するとき、第1胃壁の働きによってケトン体に作り変えられ、ケトーシスと呼ばれる疾患の原因になることがあり、大量に生成されることは望ましくない。
反芻動物が健康を保つためには、VFAが酢酸6・プロピオン酸3・酪酸1の割合で生成されることが望ましいと言われている。
また、VFAの生乳に対する影響として、酢酸と酪酸は乳脂肪を増加、プロピオン酸は乳糖を増加させる。VFAの量と構成がどのようになるかは、飼料の構成とルーメン内の微生物相(とくに細菌叢)に拠る。飼料の構成が及ぼす影響について述べると、高NSC・低NDFではプロピオン酸生成が促進され乳糖が増加し乳量も増えるが、ルーメンpHの低下や食欲低下の問題が生じ得る。逆に、低NSC・高NDFでは酢酸生成が促成され乳脂肪分が増加するが、削痩やエネルギー不足になりがちとなる。飼料構成と微生物相、それらに応じた発酵状態はルーメン内のpHに影響を及ぼし、また逆にルーメン内のpHがVFA産生に影響を及ぼす。pH5.4付近を極大として酪酸生成が、pH5.9付近を極大としてプロピオン酸生成が促進される。酢酸生成を優位にするには、それ以上のpH、例えば6.5程度が好ましい。ルーメンのpHは通常は6.0〜7.0であり、5.5以下の状態をルーメンアシドーシス(あるいは単にアシドーシス)と呼ぶ。アシドーシスは万病のもとであり、症状としては、「採食量の低下」、「沈うつ」、「軟便、下痢、便の酸臭」、「乳脂肪率の低下(3.6%以下)」が挙げられ、重症例では死に至る。
従って、乳脂肪率等の生乳の品質を向上するためには、ルーメン内のpHを5.5以上、好ましくは6.0〜7.0に保って酢酸発酵が優位となるように繊維分が豊富な牧草などの粗飼料を十分に与えて、酢酸の生成を増加させることが重要である。しかしながら、粗飼料は一般的には発酵が遅く、VFAの総量を低下させ、エネルギー不足、削痩、乳量低下につながるなどの問題があった。
また、夏場の気温上昇で乳牛の体力が低下して、飼料の摂取量が低下することがあり、乳脂肪率を維持するため、加熱大豆、綿実等を配合して脂肪含量を高めた配合飼料が使用されている。しかしながら、脂肪はルーメン発酵に利用できないために、高脂肪飼料の多用はルーメン内の微生物バランスを崩し、ルーメン発酵に関与しない微生物の増加を招き、抗生物質等の投与が必要になるなどの問題があった。
特許文献1には、反芻動物用飼料にマンノシルエリスリトールリピッド又はラムノリピッドを配合することにより、反芻動物のルーメン発酵を改善し、メタン等の温暖化ガスの発生を抑制し、飼料効率を向上させることが記載されている。しかし、マンノシルエリスリトールリピッド又はラムノリピッドを添加した人工ルーメン発酵では、酢酸、酪酸等が有意に低下する一方、プロピオン酸を顕著に増加する効果が観られ、乳脂肪の増加効果は期待できないと考えられた。
国際公開WO2008/047658号公報
本発明の目的は、ルーメン内VFAの総量は低下させずに反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持し、しかも生乳中の乳脂肪を増加させることができる反芻動物用飼料添加剤、及び当該添加剤を含む反芻動物用飼料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させる、反芻動物の飼育方法及び生乳中の乳脂肪の増加方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、低置換度の酢酸セルロースを含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、VFA総量は低下させず、酪酸を増加させることなく酢酸生成が顕著に増加する共に、プロピオン酸が低下するようにルーメン発酵が改善し、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、生乳中の乳脂肪率を向上させることができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、アセチル総置換度が0.4〜1.1である酢酸セルロースを含有することを特徴とする反芻動物用飼料添加剤を提供する。
前記反芻動物用飼料添加剤において、前記酢酸セルロースは、下記で定義される組成分布指数(CDI)が3.0以下である酢酸セルロースであることが好ましい。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
Figure 0006471068
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
また、本発明は、前記反芻動物用飼料添加剤を含む反芻動物用飼料を提供する。
また、本発明は、前記反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させることを特徴とする、反芻動物の飼育方法を提供する。
さらに、本発明は、前記反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させることを特徴とする、反芻動物の生乳の乳脂肪増加方法を提供する。
本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、ルーメン内のVFA総量は低下させず、酪酸を増加させることなく酢酸生成が顕著に増加する共に、プロピオン酸が低下するようにルーメン発酵が改善する。従って、酪酸生成の増加によるケトーシス発症の懸念なく、酢酸生成の増加による生乳中の乳脂肪の向上が期待できる。また、プロピオン酸生成を伴うルーメンのpHの低下が抑制され、ルーメンアシドーシスによる乳量や乳脂肪の低下が予防できると考えられる。
また、本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料の使用により、乳脂肪向上のための高脂肪飼料の給与が不要となるか、低減させることができるため、高脂肪飼料の多用に起因する反芻動物の各種疾患を予防することができる。
すなわち、本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、乳脂肪率が高い高品質の生乳の生産が可能になる。
実施例1において、試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相中の総VFA、酢酸、プロピオン酸、酪酸の各濃度(mmol/dl)の推移を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相中の総VFAに対する酢酸、プロピオン酸、酪酸の各モル比(%)及び酢酸/プロピオン酸モル比(A/P)の推移を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相のpHの推移を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相のアンモニアの濃度(mgN/dl)の推移を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン液相の細菌叢について、各菌のDNA量(log 16SrDNA copies/ml)を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン液相の細菌叢について、総菌数に対する各菌のパーセント(%)を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のプロトゾア密度(cells/mL)を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のガス(総量、二酸化炭素、メタン、水素)の生成量(mL/day)を示すグラフである。 実施例1において、試験区及び対照区における6及び7日目の飼料バック内の飼料乾物消失率(%)を示すグラフである。
本発明の反芻動物用飼料添加剤は、アセチル総置換度が0.4〜1.1である酢酸セルロースを含有することを特徴とする。
[反芻動物]
本発明の飼料添加剤の摂取対象である反芻動物としては、第1胃(ルーメン)を有する哺乳動物である限り特に限定されない。好ましい例としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、キリン、バイソン、シカ、ヌーなどが含まれ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の家畜動物がより好ましく、特に、生乳生産を目的とした反芻動物の家畜(例、乳牛、乳ヤギ等)が好ましい。
[酢酸セルロース]
(アセチル総置換度)
本発明における酢酸セルロースは、アセチル総置換度(平均置換度)が0.4〜1.1の酢酸セルロース(以下、「低置換度酢酸セルロース」と称することがある)である。アセチル総置換度がこの範囲であると水に対する溶解性に優れ、この範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。本発明における酢酸セルロースが水溶性に優れることにより、ルーメン中の各種微生物に利用されやすくなり、速やかにルーメン発酵を改善することができる。
前記アセチル総置換度の好ましい範囲は0.5〜1.0であり、さらに好ましい範囲は0.6〜0.95である。アセチル総置換度は、酢酸セルロースを水に溶解し、酢酸セルロースの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。また、該アセチル総置換度は、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で(後述の方法参照)、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
アセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的なセルロースアセテートの置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
(組成分布指数(CDI))
本発明において、前記酢酸セルロースの組成分布(分子間置換度分布)は特に限定されず、組成分布指数(CDI)は、好ましくは3.0以下(例えば1.0〜3.0)である。組成分布指数(CDI)は、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.5である。
組成分布指数(CDI)の下限値は0であるが、これは例えば100%の選択性でグルコース残基の6位のみをアセチル化し、他の位置はアセチル化しない等の特別な合成技術をもって実現されるものであり、そのような合成技術は知られていない。グルコース残基の水酸基の全てが同じ確率でアセチル化および脱アセチル化される状況において、CDIは1.0となるが、実際のセルロースの反応においてはこのような理想状態に近付けるためには相当の工夫を要する。前記組成分布指数(CDI)が小さいほど、組成分布(分子間置換度分布)が均一となる。組成分布が均一であると、アセチル総置換度が通常よりも広い範囲で水溶性を確保でき、均一な溶解がなされ、構造粘性が発現しないので反芻動物に摂取させやすいなどの利点がある。
ここで、組成分布指数(Compositional Distribution Index, CDI)とは、組成分布半値幅の理論値に対する実測値の比率[(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)]で定義される。組成分布半値幅は「分子間置換度分布半値幅」又は単に「置換度分布半値幅」ともいう。
酢酸セルロースのアセチル総置換度の均一性を評価するのに、酢酸セルロースの分子間置換度分布曲線の最大ピークの半値幅(「半価幅」ともいう)の大きさを指標とすることができる。なお、半値幅は、アセチル置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。置換度分布半値幅は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めることができる。なお、HPLCにおけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算する方法については、特開2003-201301号公報(段落0037〜0040)に説明されている。
(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
Figure 0006471068
m:酢酸セルロース1分子中の水酸基とアセチル基の全数
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
式(1)は、セルロースの全ての水酸基が同じ確率でアセチル化および脱アセチル化された際に必然的に生じる組成分布半値幅であり、所謂二項定理に従って導かれるものである。さらに、組成分布半値幅の理論値を置換度と重合度で表すと、以下のように表される。本発明では下記式(2)を組成分布半値幅の理論値を求める定義式とする。
Figure 0006471068
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
ところで、式(1)および式(2)においては、より厳密には重合度分布を考慮に入れるべきであり、この場合には式(1)および式(2)の「DPw」は、重合度分布関数に置き換え、式全体を重合度0から無限大までで積分すべきである。しかしながら、DPwを使う限り、式(1)および式(2)は近似的に十分な精度の理論値を与える。DPn(数平均重合度)を使うと、重合度分布の影響が無視できなくなるので、DPwを使うべきである。
(組成分布半値幅の実測値)
本発明において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
一般的に、アセチル総置換度2〜3の酢酸セルロースに対しては、前処理なしに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行うことができ、それによって組成分布半値幅を求めることができる。例えば、特開2011−158664号公報には、置換度2.27〜2.56の酢酸セルロースに対する組成分布分析法が記載されている。
一方、本発明においては、組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値は、HPLC分析前に前処理として酢酸セルロースの分子内残存水酸基の誘導体化を行い、しかる後にHPLC分析を行って求める。この前処理の目的は、低置換度酢酸セルロースを有機溶剤に溶解しやすい誘導体に変換してHPLC分析可能とすることである。すなわち、分子内の残存水酸基を完全にプロピオニル化し、その完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)をHPLC分析して組成分布半値幅(実測値)を求める。ここで、誘導体化は完全に行われ、分子内に残存水酸基はなく、アセチル基とプロピオニル基のみ存在していなければいけない。すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の和は3である。これは、CAPのHPLC溶出曲線の横軸(溶出時間)をアセチル置換度(0〜3)に変換するための較正曲線を作成するために関係式:DSac+DSpr=3を使用するためである。
酢酸セルロースの完全誘導体化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させることにより行うことができる。より具体的には、溶媒として混合溶媒[ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド=1/1(v/v)]を酢酸セルロース(試料)に対して20重量部、プロピオニル化剤として無水プロピオン酸を該酢酸セルロースの水酸基に対して6.0〜7.5当量、触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジンを該酢酸セルロースの水酸基に対して6.5〜8.0mol%使用し、温度100℃、反応時間1.5〜3.0時間の条件でプロピオニル化を行う。そして、反応後、沈殿溶媒としてメタノールを用い、沈殿させることにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネートを得る。より詳細には、例えば、室温で、反応混合物1重量部をメタノール10重量部に投入して沈澱させ、得られた沈殿物をメタノールで5回洗浄し、60℃で真空乾燥を3時間行うことにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得ることができる。なお、後述の多分散性(Mw/Mn)及び重量平均重合度(DPw)も、酢酸セルロース(試料)をこの方法により完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とし、測定したものである。
上記HPLC分析では、異なるアセチル置換度を有する複数のセルロースアセテートプロピオネートを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースアセテートプロピオネートの溶出時間とアセチル置換度(0〜3)との関係を示す曲線、通常、三次曲線]から、酢酸セルロース(試料)の組成分布半値幅(実測値)を求めることができる。HPLC分析で求められるのは溶出時間とセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度分布の関係である。これは、試料分子内の残存ヒドロキシ基のすべてがプロピオニルオキシ基に変換された物質の溶出時間とアセチル置換度分布の関係であるから、本発明の酢酸セルロースのアセチル置換度分布を求めていることと本質的には変わらない。
上記HPLC分析の条件は以下の通りである。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
較正曲線から求めた置換度分布曲線[セルロースアセテートプロピオネートの存在量を縦軸とし、アセチル置換度を横軸とするセルロースアセテートプロピオネートの置換度分布曲線](「分子間置換度分布曲線」ともいう)において、平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして置換度分布半値幅を求める。ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅(すなわち、置換度分布半値幅)とする。
このような置換度分布半値幅は、試料中のセルロースアセテートプロピオネートの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度アセチル化されているかにより、保持時間(リテンションタイム)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、HPLCには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。このため、セルロースアセテートプロピオネートの置換度分布半値幅は、通常、下式で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な置換度分布半値幅(実測値)を求めることができる。
Z=(X2−Y21/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースアセテートの見掛けの置換度分布半値幅(実際は総置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル総置換度(0≦x≦3)である]
なお、上記総置換度3のセルロースアセテート(もしくはセルロースプロピオネート)とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステルを示し、実際には(理想的には)置換度分布半値幅を有しない(すなわち、置換度分布半値幅0の)セルロースエステルである。
本発明において、前記酢酸セルロースの組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値としては、好ましくは0.12〜0.34であり、より好ましくは0.13〜0.25である。
先に説明した置換度分布理論式は、すべてのアセチル化と脱アセチル化が独立かつ均等に進行することを仮定した確率論的計算値である。すなわち、二項分布に従った計算値である。このような理想的な状況は現実的にはあり得ない。酢酸セルロースの加水分解反応が理想的なランダム反応に近づくような、および/または、反応後の後処理について組成について分画が生じるような特別な工夫をしない限り、セルロースエステルの置換度分布は確率論的に二項分布で定まるものよりも大幅に広くなる。
反応の特別な工夫の一つとしては、例えば、脱アセチル化とアセチル化が平衡する条件で系を維持することが考えられる。しかし、この場合には酸触媒によりセルロースの分解が進行するので好ましくない。他の反応の特別な工夫としては、脱アセチル化速度が低置換度物について遅くなる反応条件を採用することである。しかし、従来、そのような具体的な方法は知られていない。つまり、セルロースエステルの置換度分布を反応確率論通り二項分布にしたがうよう制御するような反応の特別な工夫は知られていない。さらに、酢化過程(セルロースのアセチル化工程)の不均一性や、熟成過程(酢酸セルロースの加水分解工程)で段階的に添加する水による部分的、一時的な沈殿の発生などの様々な事情は、置換度分布を二項分布よりも広くする方向に働き、これらを全て回避し、理想条件を実現することは、現実的には不可能である。これは、理想気体があくまで理想の産物であり、実在する気体の挙動はそれとは多かれ少なかれ異なることと似ている。
従来の低置換度酢酸セルロースの合成と後処理においては、このような置換度分布の問題について殆ど関心が払われておらず、置換度分布の測定や検証、考察が行われていなかった。例えば、文献(繊維学会誌、42、p25 (1986))によれば、低置換度酢酸セルロースの溶解性は、グルコース残基2、3、6位へのアセチル基の分配で決まると論じられており、組成分布は全く考慮されていない。
本発明者らの検討によれば、後述するように、酢酸セルロースの置換度分布は、驚くべきことに酢酸セルロースの加水分解工程の後の後処理条件の工夫で制御することができる。文献(CiBment, L., and Rivibre, C., Bull. SOC. chim., (5) 1, 1075 (1934)、Sookne, A. M., Rutherford, H. A., Mark, H., and Harris, M. J. Research Natl. Bur. Standards, 29, 123 (1942)、A. J. Rosenthal, B. B. White Ind. Eng. Chem., 1952, 44 (11), pp 2693-2696.)によれば、置換度2.3の酢酸セルロースの沈澱分別では、分子量に依存した分画と置換度(化学組成)に伴う微々たる分画が起こるとされており、本発明者らが見出したような置換度(化学組成)で顕著な分画ができるとの報告はない。さらに、低置換度酢酸セルロースについて、溶解分別や沈澱分別で置換度分布(化学組成)を制御できることは検証されていなかった。
本発明者らが見出した置換度分布を狭くするもう1つの工夫は、酢酸セルロースの90℃以上の(又は90℃を超える)高温での加水分解反応(熟成反応)である。従来、高温反応で得られた生成物の重合度について詳細な分析や考察がなされて来なかったにもかかわらず、90℃以上の高温反応ではセルロースの分解が優先するとされてきた。この考えは、粘度に関する考察のみに基づいた思い込み(ステレオタイプ)と言える。本発明者らは、酢酸セルロースを加水分解して低置換度酢酸セルロースを得るに際し、90℃以上の(又は90℃を超える)高温下、好ましくは硫酸等の強酸の存在下、多量の酢酸中で反応させると、重合度の低下は見られない一方で、CDIの減少に伴い粘度が低下することを見出した。すなわち、高温反応に伴う粘度低下は、重合度の低下に起因するものではなく、置換度分布が狭くなることによる構造粘性の減少に基づくものであることを解明した。上記の条件で酢酸セルロースの加水分解を行うと、正反応だけでなく逆反応も起こるため、生成物(低置換度酢酸セルロース)のCDIが極めて小さい値となり、水に対する溶解性も著しく向上する。これに対し、逆反応が起こりにくい条件で酢酸セルロースの加水分解を行うと、置換度分布は様々な要因で広くなり、水に溶けにくいアセチル総置換度0.4未満の酢酸セルロース及びアセチル置換度1.1を超える酢酸セルロースの含有量が増大し、全体として水に対する溶解性が低下する。
(2,3,6位の置換度の標準偏差)
本発明において、前記酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、酢酸セルロース試料の遊離水酸基をピリジン中で無水プロピオン酸によりプロピオニル化する。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C−NMRスペクトルを測定する。アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、そして、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比から、元のセルロースジアセテートにおけるグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度を求めることができる。なお、このように求めた2,3,6位の各アセチル置換度の和はアセチル総置換度であり、この方法でアセチル総置換度を求めることもできる。なお、アセチル総置換度は、13C−NMRのほか、1H−NMRで分析することもできる。
2,3,6位の置換度の標準偏差σは、次の式で定義される。
Figure 0006471068
本発明においては、酢酸セルロースのグルコース環の2,3及び6位のアセチル置換度の標準偏差が0.08以下(0〜0.08)であることが好ましい。該標準偏差が0.08以下である酢酸セルロースは、グルコース環の2,3,6位が均等に置換されており、水に対する溶解性に優れる。
(多分散性(分散度、Mw/Mn))
本発明において、分子量分布(重合度分布)の多分散性(Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロースの多分散性(分散度、Mw/Mn)は、1.2〜2.5の範囲であることが好ましい。多分散性Mw/Mnが上記の範囲にある酢酸セルロースは、分子の大きさが揃っており、水に対する溶解性に優れる。
酢酸セルロースの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)は、HPLCを用いた公知の方法で求めることができる。本発明において、酢酸セルロースの多分散性(Mw/Mn)は、測定試料を有機溶剤に可溶とするため、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより決定される(GPC−光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
(重量平均重合度(DPw))
本発明において、重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロースの重量平均重合度(DPw)は、50〜800の範囲であることが好ましい。重量平均重合度(DPw)が高すぎると、濾過性が悪くなりやすい。前記重量平均重合度(DPw)は、好ましくは55〜700、さらに好ましくは60〜600である。
上記重量平均重合度(DPw)は、前記多分散性(Mw/Mn)と同じく、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、サイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより求められる(GPC−光散乱法)。
上述のように、水溶性の酢酸セルロースの分子量(重合度)、多分散性(Mw/Mn)はGPC−光散乱法(GPC−MALLS、GPC−LALLSなど)により測定される。なお、光散乱の検出は、一般に水系溶媒では困難である。これは水系溶媒は一般的に異物が多く、一旦精製しても二次汚染されやすいことによる。また、水系溶媒では、微量に存在するイオン性解離基の影響のため分子鎖の広がりが安定しない場合があり、それを抑えるために水溶性無機塩(例えば塩化ナトリウム)を添加したりすると、溶解状態が不安定になり、水溶液中で会合体を形成したりすることがある。この問題を回避するための有効な方法の一つは、水溶性酢酸セルロースを誘導体化し、異物が少なく、二次汚染されにくい有機溶媒に溶解するようにし、有機溶媒でGPC−光散乱測定を行うことである。この目的の水溶性酢酸セルロースの誘導体化としてはプロピオニル化が有効であり、具体的な反応条件及び後処理は前記組成分布半値幅の実測値の説明箇所で記載した通りである。
(6%粘度)
本発明における前記酢酸セルロースの6%粘度は、例えば5〜500mPa・s、好ましくは6〜300mPa・sである。6%粘度が高すぎると濾過性が悪くなる場合がある。
酢酸セルロースの6%粘度は、下記の方法で測定できる。
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させる。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温する。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
(低置換度酢酸セルロースの製造)
本発明における前記酢酸セルロース(低置換度酢酸セルロース)は、例えば、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。
[(A)加水分解工程(熟成工程)]
この工程では、中乃至高置換度酢酸セルロース(以下、「原料酢酸セルロース」と称する場合がある)を加水分解する。原料として用いる中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3である。原料酢酸セルロースとしては、市販のセルロースジアセテート(アセチル総置換度2.27〜2.56)やセルローストリアセテート(アセチル総置換度2.56超〜3)を用いることができる。
加水分解反応は、有機溶媒中、触媒(熟成触媒)の存在下、原料酢酸セルロースと水を反応させることにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、アセトン、アルコール(メタノール等)、これらの混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、酢酸を少なくとも含む溶媒が好ましい。触媒としては、一般に脱アセチル化触媒として用いられる触媒を使用できる。触媒としては、特に硫酸が好ましい。
有機溶媒(例えば、酢酸)の使用量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
触媒(例えば、硫酸)の使用量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部である。触媒の量が少なすぎると、加水分解の時間が長くなりすぎ、酢酸セルロースの分子量の低下を引き起こすことがある。一方、触媒の量が多すぎると、加水分解温度に対する解重合速度の変化の度合いが大きくなり、加水分解温度がある程度低くても解重合速度が大きくなり、分子量がある程度大きい酢酸セルロースが得られにくくなる。
加水分解工程における水の量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜7重量部である。また、該水の量は、有機溶媒(例えば、酢酸)1重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.5重量部である。水は、反応開始時において全ての量を系内に存在させてもよいが、酢酸セルロースの沈殿を防止するため、使用する水の一部を反応開始時に系内に存在させ、残りの水を1〜数回に分けて系内に添加してもよい。
加水分解工程における反応温度は、例えば、40〜130℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃である。特に、反応温度を90℃以上(或いは90℃を超える温度)とする場合には、正反応(加水分解反応)に対する逆反応(アセチル化反応)の速度が増加する方向に反応の平衡が傾く傾向があり、その結果、置換度分布が狭くなり、後処理条件を特に工夫しなくとも、組成分布指数CDIの極めて小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。この場合、触媒として硫酸等の強酸を用いるのが好ましく、また、反応溶媒として酢酸を過剰に用いるのが好ましい。また、反応温度を90℃以下とする場合であっても、後述するように、沈殿工程において、沈殿溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いて沈殿させたり、沈殿分別及び/又は溶解分別を行うことにより、組成分布指数CDIが非常に小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。
[(B)沈殿工程]
この工程では、加水分解反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、沈殿溶媒を加えて低置換度酢酸セルロースを沈殿させる。沈殿溶媒としては、水と混和する有機溶剤若しくは水に対する溶解度の大きい有機溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトニトリル等の含窒素化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル;これらの混合溶媒などが挙げられる。
沈殿溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いると、後述する沈殿分別と同様の効果が得られ、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数(CDI)が小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。好ましい混合溶媒として、例えば、アセトンとメタノールの混合溶媒、イソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒などが挙げられる。
また、沈殿して得られた低置換度酢酸セルロースに対して、さらに沈殿分別(分別沈殿)及び/又は溶解分別(分別溶解)を行うことにより、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数CDIが非常に小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。
沈殿分別は、例えば、沈殿して得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)を水に溶解し、適当な濃度(例えば、2〜10重量%、好ましくは3〜8重量%)の水溶液とし、この水溶液に貧溶媒を加え(又は、貧溶媒に前記水溶液を加え)、適宜な温度(例えば、30℃以下、好ましくは20℃以下)に保持して、低置換度酢酸セルロースを沈殿させ、沈殿物を回収することにより行うことができる。貧溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどが挙げられる。貧溶媒の使用量は、前記水溶液1重量部に対して、例えば1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部である。
溶解分別は、例えば、前記沈殿して得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)或いは前記沈殿分別で得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)に、水と有機溶媒(例えば、アセトン等のケトン、エタノール等のアルコールなど)の混合溶媒を加え、適宜な温度(例えば、20〜80℃、好ましくは25〜60℃)で撹拌後、遠心分離により濃厚相と希薄相とに分離し、希薄相に沈殿溶剤(例えば、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコールなど)を加え、沈殿物(固形物)を回収することにより行うことができる。前記水と有機溶媒の混合溶媒における有機溶媒の濃度は、例えば、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
[(C)洗浄、中和工程]
沈殿工程(B)で得られた沈殿物(固形物)は、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどの有機溶媒(貧溶媒)で洗浄するのが好ましい。また、塩基性物質を含む有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなど)で洗浄、中和することも好ましい。なお、中和工程は加水分解工程の直後に設けても良く、その場合には塩基性物質またはその水溶液を加水分解反応浴に添加するのが好ましい。
前記塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシドなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属カルボン酸塩;マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシドなど)などを使用できる。これらの中でも、特に、酢酸カリウム等のアルカリ金属化合物が好ましい。
洗浄、中和により、加水分解工程で用いた触媒(硫酸等)などの不純物を効率よく除去することができる。
このようにして得られた低置換度酢酸セルロースは、必要に応じて、粉砕、篩別又は造粒して、特定粒度の範囲に調整することができる。
[反芻動物用飼料添加剤]
本発明の反芻動物用飼料添加剤は、前記低置換度酢酸セルロースを少なくとも含有している。
低置換度酢酸セルロースを反芻動物に摂取させることにより、ルーメン内のVFA総量は低下させず、酪酸を増加させることなく酢酸生成が顕著に増加する共に、プロピオン酸が低下するようにルーメン発酵が改善する。従って、酪酸生成の増加によるケトーシス発症の懸念なく、酢酸生成の増加による生乳中の乳脂肪の増加が期待できる。また、プロピオン酸生成を伴うルーメンのpHの低下が抑制され、ルーメンアシドーシスによる乳量や乳脂肪の低下が予防できると考えられる。
また、本発明の反芻動物用飼料添加剤の使用により、乳脂肪向上のための高脂肪飼料の給与が不要となるか、低減させることができるため、高脂肪飼料の多用に起因する反芻動物の各種疾患を予防することができる。
本発明の反芻動物用飼料添加剤は、低置換度酢酸セルロースの他に、反芻動物の成長促進に有効な成分、栄養補助成分、保存安定性を高める成分等の任意成分をさらに含むものであってもよい。このような任意成分としては、例えば、エンテロコッカス類、バチルス類、ビフィズス菌類等の生菌剤;アミラーゼ、リパーゼ等の酵素;L−アスコルビン酸、塩化コリン、イノシトール、葉酸等のビタミン;塩化カリウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、リン酸塩類等のミネラル、DL−アラニン、DL−メチオニン、塩酸L−リジン等のアミノ酸;フマル酸、酪酸、乳酸、酢酸及びそれらの塩類等の有機酸;エトキシキン、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;プロピオン酸カルシウム等の防カビ剤;CMC、カゼインナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の粘結剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤;アスタキサンチン、カンタキサンチン等の色素;各種エステル、エーテル、ケトン類等の着香料が挙げられる。
本発明の反芻動物用飼料添加剤の剤形は特に制限されず、例えば粉末、液体、錠剤、カプセル剤、乳剤など任意の形態とすることができる。本発明の反芻動物用飼料添加剤は、低置換度酢酸セルロース、並びに必要に応じて任意成分を混合し、当該技術分野の公知の方法及び手段を用いて製剤化することにより製造することができる。
本発明の反芻動物用飼料添加剤において、低置換度酢酸セルロースの含有量は、特に制限されないが、効果を十分に得る観点からは、反芻動物用飼料添加剤全量(100重量%)に対して、通常、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。上記低置換度酢酸セルロースの含有量が1重量%未満では、ルーメン発酵の上記改善効果が十分に発揮されない場合がある。
[反芻動物用飼料]
本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、乳脂肪率が高い高品質の生乳の生産が可能になる。
本発明の反芻動物用飼料は、反芻動物用の飼料、ペットフード、ペット用サプリメント(以下、飼料という。)に用いられる他の飼料成分と前記反芻動物用飼料添加剤を混合することにより調製することができる。
本発明の飼料における低置換度酢酸セルロースの含有量は、与える反芻動物の種類、健康状態、飼料の種類、飼料成分、年齢、性別、体重等により適宜調節され、特に制限されないが、乾物質量当たり、効果やコストの面から、反芻動物用飼料全量(100重量%)に対して、1重量%〜20重量%が好ましく、より好ましくは、5重量%〜20重量%、さらに好ましくは、10重量%〜20重量%である。
本発明の反芻動物用飼料は、前記反芻動物用飼料添加剤をそのまま飼料成分に添加し、混合して製造することができる。この際、粉末状、固形状の飼料添加剤を用いる場合は、混合を容易にするために飼料添加剤を液状又はゲル状の形態にしてもよい。この場合は、水、大豆油、菜種油、コーン油などの植物油、液体動物油、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物を液体担体として用いることができる。また、飼料中における低置換度酢酸セルロースの均一性を保つために、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カゼインナトリウム、アラビアゴム、グアーガム、タマリンド種子多糖類などの水溶性多糖類を配合することも好ましい。
また、本発明の反芻動物用飼料は、糖類(乳糖、トレハロースなど)、メイズ、マイロ、ふすま、米糠、脱脂糠、乾燥糠、圧ぺん大麦、圧ぺんトウモロコシ、大豆粕、トウモロコシ粉、米粉、大豆粉などを含んでもよい。
さらに、本発明の反芻動物用飼料は、珪藻土、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、酸性白土、活性白土、ケイ酸等の無機担体を含んでいてもよい。
本発明の反芻動物用飼料を摂取させる際の飼料の量は、反芻動物の種類、体重、年齢、性別、健康状態、飼料の成分などにより適宜調節することができる。
飼料を摂取させる方法及び飼育する方法は、動物の種類に応じて、通常用いられる方法をとることができる。
[生乳中の乳脂肪の増加方法]
本発明の反芻動物用飼料を反芻動物に摂取させることにより、生乳中の乳脂肪を増加させることができる。
生乳中の乳脂肪を増加させるための本発明の反芻動物用飼料の摂取量は、反芻動物の種類、健康状態、飼料の種類、飼料成分、年齢、性別、体重等により適宜調節され、特に制限されないが、通常、反芻動物あたり1日の前記低置換度酢酸セルロースの摂取量として、25〜500g/体重100kg・日、より好ましくは125〜500g/体重100kg・日、さらに好ましくは250〜500g/体重100kg・日の範囲になるように、飼料に反芻動物用飼料添加剤を配合すればよく、一般的には、飼料固形分として前記低置換度酢酸セルロースが1〜20重量%、好ましくは5〜20重量%となるように配合すればよい。
本発明の反芻動物用飼料を摂取させた反芻動物から採取した生乳と前記低置換度酢酸セルロースを含まないこと以外は本発明の反芻動物用飼料と同じ組成を有する飼料を摂取させた反芻動物から採取した生乳において、乳脂肪率を比較することにより、本発明の反芻動物用飼料を摂取させた反芻動物の生乳中の乳脂肪の増加効果を評価することができる。生乳中の乳脂肪率(重量%)は、公知の方法(例えば、ゲルベル法)によって測定することができる。
また、本発明の反芻動物用飼料の生乳中の乳脂肪の増加効果は、人工ルーメンに本発明の反芻動物用飼料を添加して、ルーメン発酵の改善効果を観察することによっても評価することができる。
人工ルーメンは、ルーメン発酵を人工の培養装置で再現するものであり、人工ルーメンに本発明の反芻動物用飼料を添加して、VFA、pH、アンモニア、ガス(メタン、水素、二酸化炭素等)の発生量、微生物相の挙動を観察することによってルーメン発酵の状態を評価することができる。
例えば、VFAのうち酢酸はルーメンの胃壁から吸収され乳脂肪分を高めることが知られている。従って、人工ルーメンに本発明の反芻動物用飼料を添加することによって酢酸濃度が上昇すれば、生乳中の乳脂肪が増加すると評価することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
製造例1:低置換度酢酸セルロースの製造
低置換度酢酸セルロースは、WO2014/142166の実施例5に準じ、ただし、出発物質、第3加水分解工程時間、中和方法、洗浄回数を変更することで調製した。具体的には、酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−40」、アセチル総置換度2.45、6%粘度(溶媒:アセトン):90mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌して酢酸セルロースを溶解した。得られた溶液を70℃に保持し、この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、加水分解を行った。加水分解の間に酢酸セルロースが沈殿するのを防止するために、系への水の添加は2回に分けて行った。すなわち、1時間後に0.67重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに2時間後、1.33重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに7時間反応させた。合計の加水分解時間は10時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
加水分解を実施した後、酢酸マグネシウムの24重量%水溶液0.85重量部を系に加え硫酸を中和し反応を停止し、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部の沈澱溶媒(アセトン/メタノール1:2(重量比)混合溶媒)を加えて沈殿を生成させた。沈澱物は脱液し、固形分15%のウェットケーキとした。
得られた沈殿物に水に加え、8時間撹拌し、5重量%溶液とした。ここに貧溶媒であるメタノールを上記5重量%溶液の4倍量(重量基準)加え、10℃に1時間保ち、沈殿物を回収した(沈殿分別)。沈澱物は脱液し、固形分15重量%のウェットケーキとした。
このウェットケーキに、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを5回繰り返した。このウェットケーキ乾燥して、低置換度酢酸セルロースを得た。
得られた低置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度、2、3及び6位の置換度の標準偏差、6%粘度(mPa・s)、重量平均重合度(DPw)、多分散性(Mw/Mn)、分子間置換度分布半値幅(実測値)、組成分布指数(CDI)を下記の方法で測定したところ、アセチル置換度:0.78、2、3及び6位の置換度の標準偏差:0.001、6%粘度:42mPa・s、重量平均重合度(DPw):124、多分散性(分散度、Mw/Mn):1.6、分子間置換度分布半値幅:0.298、組成分布指数(CDI):1.85であった。
なお、第3熟成工程における系内の酢酸濃度(重量%)は35重量%であった。
(置換度(DS)及び2,3,6位の置換度の標準偏差の測定)
手塚の方法(Carbohydr.Res.273, 83(1995))に準じて低置換度酢酸セルロース試料の未置換水酸基をプロピオニル化した。プロピオニル化低置換度酢酸セルロースのアセチル基総置換度及び2,3,6位の置換度の標準偏差は、手塚の方法(同)に準じて13C−NMRにおける169〜171ppmのアセチルカルボニルのシグナルおよび172〜174ppmのプロピオニルカルボニルのシグナルから決定した。
2,3,6位の置換度の標準偏差σは、次の式により算出した。
Figure 0006471068
(6%粘度の測定)
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出した。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求めた。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
(重量平均重合度(DPw)、分散度(Mw/Mn)の測定)
酢酸セルロースの重量平均重合度および分散度は、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でGPC−光散乱測定を行うことで決定した。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
(組成分布指数(CDI)の測定)
酢酸セルロースのCDIは、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でHPLC分析を行うことで決定した。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å・4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度: 30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
まず、アセチルDS(アセチル基総置換度)が0〜3の範囲でDS既知の標品をHPLC分析することで、溶出時間対DSの較正曲線を作成した。較正曲線に基づき、未知試料の溶出曲線(時間対検出強度曲線)をDS対検出強度曲線(組成分布曲線)に変換し、この組成分布曲線の未補正半値幅Xを決定し、次式により組成分布の補正半値幅Zを決定した。
Z=(X2−Y21/2
なお、Yは次式で定義される装置定数である。
Y=(a−b)x/3+b
a: アセチルDS=3の標品のX値
b: アセチルDS=0の標品のX値
x: 未知試料のアセチルDS
補正半値幅Zから、次式により組成分布指数(CDI)を決定した。
CDI=Z/Z0
ここに、Z0は全ての部分置換酢酸セルロースの調製におけるアセチル化および部分脱アセチル化が全ての分子の全ての水酸基(又はアセチル基)に対して等しい確率で生じた場合に生成する組成分布であり、次式で定義される。
Figure 0006471068
DPw:重量平均重合度
p:(未知試料のアセチルDS)/3
q:1−p
実施例1
製造例1で得られた低置換度酢酸セルロースを用い、人工ルーメン中のルーメン発酵に対する影響(VFA、pH、アンモニア濃度、微生物相、ガス発生量、飼料乾物消失率等)を評価した。
<イノキュラムの調製>
北海道大学農場で飼養されているルーメンカニューレを装着したホルスタイン種乾乳牛2頭より給餌4時間後のルーメン液(各々より3L、計6L)およびルーメン内容物(各500g、計1kg)を採取した。各個体より採取したルーメン液及び内容物はそれぞれ等量混合し(4L)、これに人工唾液(2.5L、McDougall,Biochem.J.,43:99−109,1948)を加え、イノキュラムとした。
<人工ルーメンの運転>
800ml容の発酵槽8基を持つ汎用型人工ルーメン(ルシテックS、三紳工業製)を用いて連続培養を実施した。上述のイノキュラム(650ml)を加えた発酵槽に、ルーメン内容物(70g)を封入したナイロンバッグと供試飼料(濃厚飼料(MFフィード モンスター18)3gおよびチモシー1番刈り乾草9g、共に1mm粉砕)を封入したナイロンバッグをそれぞれ1つずつ投入した飼料容器を設置し、嫌気条件下、39℃で攪拌培養(168時間)し、培養開始後120時間までを馴致期、以降の48時間を試験期(6日目および7日目)とした。その際、下記表1に示された投与量で製造例1で得られた低置換度酢酸セルロース及びセルロースパウダー(旭化成製アビセルPH101)を投与した発酵槽を試験区とし、下記表1に示された投与量でセルロースパウダーのみを投与した発酵槽を対照区とした。
Figure 0006471068
各発酵槽には24時間間隔で飼料サンプル封入バッグを投入し、各バッグは48時間培養した後に取り出し、分析に供した。低置換度酢酸セルロースもしくはセルロースパウダーの投与は24時間毎に実施した。
なお、取り出した飼料バッグは人工唾液50mlで洗浄することで飼料に付着する微生物を遊離させ、この洗浄液も発酵槽に加えた。低置換度酢酸セルロースもしくはセルロースパウダーの投与はこのタイミングで実施した。また、運転中は、飼料容器が発酵槽内を1分間当たり4往復上下運動するように攪拌設定した。また、ベリスタポンプ(Masterflex Pump,Cole−Parmer,U.S.A.)を用い、一日あたり、人工ルーメン内容物容量の1/2に相当する容量の人工唾液を一定流量で流入させた。
<サンプリング>
運転開始120時間後の飼料バッグ交換直後を試験期開始0時間後とし、以降3時間毎に液相サンプルを発酵槽上部のサンプル採取口より採取した。この液相サンプルは各種成分分析及びDNA抽出に供試するまで、−30℃で保存した。プロトゾア測定用サンプルは24時間毎の飼料バッグ交換後に採取し、MFS溶液(30mgのメチルグリーンと0.85gの塩化ナトリウムを、100mlの10%(v/v)ホルマリンに溶解したもの)により5倍希釈および固定後、室温保存した。ガスは流出液回収瓶上部に取り付けたテドラーバッグより回収し、24時間毎に流量計を用いて総容量を量り、10mlを成分分析用サンプルとして真空採血管(Becton,Dickinson and Company)に保存した。飼料乾物消失率測定のため、試験終了時およびその1日前の時点で48時間浸漬された飼料バッグは、洗浄液が透明になるまで蒸留水で洗浄し、分析まで4℃で保存した。
上記で得られた各サンプルについて、以下の評価を行った。
<揮発性脂肪酸(VFA(短鎖脂肪酸:Short-chain fatty acid:SCFAともいう))の測定>
発酵槽上部のサンプル採取口より3時間毎に採取したサンプルは、分析に供試するまで−30℃で保存し、分析に際して氷上解凍した。解凍したサンプルを12,000rpmで2分遠心し、上清100μLを分取した。これに除タンパク液(25%メタリン酸含有5N−硫酸)20μLを加え冷蔵庫内で一晩静置した。除タンパク液を加えたサンプルを遠心分離(10,000rpm×5min)して沈降物を除去した。マイクロチューブにクロトン酸標準液(3mM/dl)を25μlとり、さらに遠心分離したサンプル上清を25μlとり、ボルテックスミキサーで混合し、FIDを検出器としてガスクロマトグラフィー分析に供し、下記式より、各VFA(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、及び吉草酸)の濃度(mmol/dl)を算出した。酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、及び吉草酸の総量をもって総VFAとした。
ガスクロマトグラフィー条件は次の通り。
カラム:ULBON HR−20M,30m×0.53mm
I.D.温度:130℃
キャリアガス:He
20cm/sec
注入量:1.0μl
VFA濃度(mmol/dl)=n×F×s/S×2×1.2
n:酢酸では2、他の酸では1
F:各酸のファクター
酢酸: 1.0205 プロピオン酸:1.0196
イソ酪酸: 1.0270 酪酸: 1.0086
イソ吉草酸: 1.0592 吉草酸: 1.0489
s:各酸のクロマトグラムにおけるピーク面積
S:内部標準として加えたクロトン酸のクロマトグラムにおけるピーク面積
×2:サンプルとクロトン酸を1:1で混ぜたので補正
×1.2:サンプルと除タンパク液を1:0.2で混ぜたので補正
試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相中の総VFA、酢酸、プロピオン酸、酪酸の各濃度(mmol/dl)の推移を示すグラフを図1、試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相中の総VFAに対する酢酸、プロピオン酸、酪酸の各モル比(%)及び酢酸/プロピオン酸モル比(A/P)の推移を示すグラフを図2に示す。
<pHの測定>
発酵槽上部のサンプル採取口より3時間毎に採取したサンプルついて、直ちにガラス電極pH計を用いてpHを測定した。
試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相のpHの推移を示すグラフを図3に示す。
<アンモニアの測定>
試験管に5μlのルーメン液上清と245μlの蒸留水を入れ、そこに250μlの1N−NaOHを加え混合した。これに2000μlのフェノール混合試薬を加え混合後、250μlの次亜塩素酸ナトリウム液を加え混合すると発色開始するので、最低30分放置した(発色完了)。ただしフェノール混合試薬を加え混合(ボルテックス)したあとは時間をおかず、すぐに次亜塩素酸ナトリウム液を加え混合(ボルテックス)した。その後1時間以内に分光光度計(610nm)で吸光度を計測し、標準液から作成した検量線(回帰式)からアンモニア濃度(mgN/dl)を算出した。
フェノール混合試薬
フェノール5%含有0.6N−NaOH(遮光しポリびんにて冷凍保存、使用時は完全融解)
0.5Mリン酸2ナトリウム(Na2HPO4)溶液(pH9.8)
0.05%ニトロプルシッドナトリウム
この3つを2:3:1の容量比に使用直前に混合して使用した。
試験区及び対照区における試験期間のルーメン液相のアンモニアの濃度(mgN/dl)の推移を示すグラフを図4に示す。
<細菌叢の定量>
試験期6日目及び7日目のルーメン液相に存在する下記表2に示される細菌叢を下記の方法で定量した。
Figure 0006471068
飼料サンプル封入バッグの内容物から、Koikeらの方法(Journal of
Dairy Science 86, 1429_1435, 2003)にしたがいDNAを抽出、精製した。精製DNA試料をKoikeらの方法(Animal Science Journal, 78, 135_141, 2007)で定量PCR分析することで、各細菌のDNA量を求めた。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン液相の細菌叢について、各菌のDNA量(log 16SrDNA copies/ml)を示すグラフを図5に、総菌数に対する各菌のパーセント(%)を示すグラフを図6に示す。なお、図5,6中、各菌は表2の略称で示している。
<プロトゾア密度の測定>
プロトゾア測定用に採取しMFSで5倍に希釈した溶液の10μlを格子入りスライドガラス上にとり、倍率100倍で光学顕微鏡で観察し、プロトゾア数を計数した。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のプロトゾア密度(cells/mL)を示すグラフを図7に示す。
<ガス生成量の測定>
発酵槽の流出液回収瓶上部に取り付けたテドラーバッグよりガスを回収し、24時間毎に流量計を用いて総容量を量り、10mlを成分分析用サンプルとして真空採血管(Becton,Dickinson and Company)に保存した。TCDを検出器としたガスクロマトグラフィーにより二酸化炭素、メタン、水素を定量した。
試験区及び対照区における6及び7日目のルーメン内のガス(総量、二酸化炭素、メタン、水素)の生成量(ml/day)を示すグラフを図8に示す。
<飼料消化率の測定>
試験終了時およびその1日前の時点で48時間浸漬された飼料バッグは、洗浄液が透明になるまで蒸留水で洗浄し、分析まで4℃で保存した。湿潤状態の飼料バッグ内容物の総量を測定し、その一部を恒量となるまで105℃で乾燥し固形分率を求めることで、飼料バッグ内容物の総固形分量を算出し、これに基づき飼料消化率を求めた。
試験区及び対照区における6及び7日目の飼料バック内の飼料乾物消失率(%)を示すグラフを図9に示す。
図1、2により、低置換度酢酸セルロースを投与した試験区では対照区に対して、ルーメン液相中の総VFAの濃度の変化はなかったが、試験区の酢酸濃度は試験期間中を通じて対照区に対して有意な増加を示し、試験区のプロピオン酸濃度は試験期間中を通じて対照区に対して有意な減少を示した。一方、試験区と対照区で酪酸濃度に変化はなかった。
従って、ルーメン中のエネルギー状態を維持しつつ、酢酸生成の増加による生乳中の乳脂肪の向上が期待できる。また、酪酸生成の増加によるケトーシス発症の懸念なく、プロピオン酸生成によるルーメンのpHの低下が抑制され、ルーメンアシドーシスによる乳量や乳脂肪の低下が予防できると考えられた。
図3より、試験6日目の試験区のルーメンのpHは対照区に対して低下したが、7日目には試験区のルーメンのpHは対照区よりも上昇し、pH6.5付近に達した。試験期間を通じて、おおむねpH6付近以上で推移し、酢酸発酵が優位になっていることが示唆された。
図4より、試験6日目、7日目とも飼料バック投入後15時間後までは、試験区のアンモニア濃度は対照区と変化はなかったが、15時間経過後に試験区のアンモニア濃度が顕著に上昇した。
タンパク質が分解され、ルーメン発酵が活発になっていると考えられた。
図5,6より、試験群では対照区に対して、Prevotella属菌(Prevotella ruminicola、Prevotella bryantii)、Treponema属菌(Treponema bryantii)等の繊維分解物利用菌が増加し、Fibrobacter succinogenes、Ruminococcus flavefaciens等の主要繊維分解菌、Succinivibrio dextrinosolvens、Ruminobacter amylophilus等の可溶性糖、でんぷん利用菌が減少し、低置換度酢酸セルロースを投与することにより、細菌叢が大きく変化することが判明した。
細菌叢の変化により、乳脂肪が増加するようにルーメン発酵が変化していることが示唆された。
図7より、試験区の6及び7日目のルーメン内のプロトゾア密度は、対照区と比較して減少した。また、図8より、試験区の6、7日目のルーメン内の二酸化炭素及びメタンの発生は対照区と比較してやや減少する一方、試験区の水素の発生量は量的には少ないながらも対照区に比べて増加した。また、図9より、飼料消化率は、試験区と対照区の間で差はなかった。
これらの結果より、低置換度酢酸セルロースの投与により、飼料の消化率に変化はないが、ルーメン発酵効率が向上していることが示唆された。
本発明の反芻動物用飼料添加剤を含む飼料を反芻動物に摂取させることにより、ルーメン内の総VFAは維持されながら酢酸生成が顕著に増加し、反芻動物のエネルギー状態および健康状態を維持しつつ、乳脂肪率が高い生乳を生産することができる。

Claims (5)

  1. アセチル総置換度が0.4〜1.1である酢酸セルロースを含有することを特徴とする生乳生産を目的とする反芻動物用飼料添加剤。
  2. 前記酢酸セルロースが、下記で定義される組成分布指数(CDI)が3.0以下である酢酸セルロースである請求項1記載の生乳生産を目的とする反芻動物用飼料添加剤。
    CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
    組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
    Figure 0006471068
    DS:アセチル総置換度
    DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
  3. 請求項1又は2に記載の生乳生産を目的とする反芻動物用飼料添加剤を含む生乳生産を目的とする反芻動物用飼料。
  4. 請求項3に記載の飼料を生乳生産を目的とする反芻動物に摂取させることを特徴とする、生乳生産を目的とする反芻動物の飼育方法。
  5. 請求項3に記載の飼料を反芻動物に摂取させることを特徴とする、反芻動物の生乳の乳脂肪増加方法。
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