JP2019165690A - 魚類飼育用飼料、魚類の養殖方法及び魚類飼育用飼料の添加剤 - Google Patents

魚類飼育用飼料、魚類の養殖方法及び魚類飼育用飼料の添加剤 Download PDF

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Abstract

【課題】感染症予防効果に優れる魚類飼育用飼料を提供することを目的とする。【解決手段】ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する、魚類飼育用飼料。アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料。【選択図】なし

Description

本発明は、魚類飼育用飼料、魚類の養殖方法及び魚類飼育用飼料の添加剤に関する。
水産業において養殖技術の開発は進んでおり、世界的に海面漁業の総漁獲量のうち養殖が占める割合は約44%と大きく(国際連合食料農業機関,2016)、養殖産業は重要な位置を占めている。国内に目を向けると、ブリ類の総生産量のうち、養殖が占める割合は61%にのぼり、生産量は160,215tであった(農林水産省,2013)。しかしながら、養殖生産量が増大するにつれ、養殖現場の環境汚染、飼料不足、感染症、薬剤投与による薬剤耐性菌の出現などの問題が頻繁に発生するようになった。そのため、感染症の発症を予防するため、主要養殖魚にはワクチン投与が行われている。
例えば、特許文献1には、不活化した魚類ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)を抗原として含有するストレプトコッカス・ディスガラクティエ感染症予防ワクチンが記載されている。
また、特許文献2には、ヒト及び脊椎動物において病原性細菌により引き起こされる全身感染の防止、抑制及び/又は治療のための組成物の製造のための食物繊維又は食物繊維の混合物の使用;及び繊維がイヌリン及びオリゴフルクトース又はそれらの任意の混合物からなる群より選択されるフルクタンであることが記載されている。
特開2007−326794号公報 特表2004−509922号公報
しかしながら、魚類ワクチンは高価であり、注射による投与を行う必要がある場合も多く、作業が煩雑であり、生産者の負担となる。そのため、簡易な作業で感染症予防効果に優れる、持続性のある対策が必要である。経口投与される飼料により感染症予防が可能であれば、作業は簡易なものとなる。
また、引用文献2においては、特定の病原性細菌に感染させたマウスに10重量%イヌリンを含む食餌を与えた場合に、セルロースを含有する食餌を与えられた対照マウスに比べて、低い死亡率が得られたことが記載されているが、魚類について何らその効果は示されていない。哺乳類の液性免疫としてはIgM、IgA、IgG、IgE、IgDが知られているが、魚類の液性免疫はIgMだけであり(馬場、魚病研究、18、209−219(1984))、哺乳類の実験結果を魚類に外挿するのは妥当とは言えない。また、引用文献2においては、イヌリンの配合割合も多く、仮にこのような飼料を与えたならば水槽内でこれを栄養源とする微生物を発生させ、水質汚濁の原因となるものと予想される。
本発明は、感染症予防効果に優れる魚類飼育用飼料を提供することを目的とする。
本発明の第一は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する、魚類飼育用飼料に関する。
前記魚類飼育用飼料において、前記水溶性多糖類がイヌリンであってよい。
前記魚類飼育用飼料において、前記水溶性多糖類を0.1重量%以上含有してよい。
本発明の第二は、アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料に関する。
前記魚類飼育用飼料において、前記酢酸セルロースのアセチル総置換度が0.4以上1.1以下であってよい。
前記魚類飼育用飼料において、前記酢酸セルロースを0.1重量%以上含有してよい。
前記魚類飼育用飼料において、前記酢酸セルロースは、下記式で定義される組成分布指数(CDI)が2.0以下であってよい。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅

DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
本発明の第三は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する飼料、またはアセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する飼料を給餌する、魚類の養殖方法に関する。
前記魚類の養殖方法において、前記養殖が陸上養殖であってよい。
前記魚類の養殖方法において、前記陸上養殖が、水槽に地下海水をかけ流して行うものであってよい。
本発明の第四は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する、魚類飼育用飼料の添加剤に関する。
本発明の第五は、アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料の添加剤に関する。
本発明によれば、感染症予防効果に優れる魚類飼育用飼料を提供することができる。
供試魚の生存率(%)の実験結果を示すグラフである。
[ヒドロキシ基およびアセチル基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する、魚類飼育用飼料]
本開示の第一の魚類飼育用飼料は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有するものである。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する魚類飼育用飼料における、魚類は、養殖可能なものであれば特に制限されない。例えば、ブリ、ヒラマサ、カンパチなどのブリ属魚類;マアジやシマアジなどのアジ亜科魚類;スズキなどのスズキ科魚類;マダイ、チダイ、クロダイなどのタイ科魚類;クロマグロやマサバなどのサバ亜科魚類;トラフグなどのフグ科魚類;ヒラメなどのヒラメ科魚類;イシダイなどのイシダイ科魚類;カワハギなどのカワハギ科魚類;メバル、カサゴ、クロソイなどのメバル科魚類;マハタやクエなどのハタ科魚類;イサキなどのイサキ科魚類;ギンザケ、ニジマス、イワナ、ヤマメ、ヒメマスなどのサケ科魚類;及びアユやワカサギなどのキュウリウオ科魚類などを挙げることができる。
水溶性多糖類とは、水に溶ける性質を有する多糖類をいう。多糖類とは、単糖類2分子以上がグリコシド結合によって脱水縮合して生ずる炭水化物をいい、オリゴ糖を含む。また、水に溶ける性質とは、温度10℃〜35℃、濃度1重量%以上の水溶液において、多糖類の95%以上が溶解していることをいう。多糖類の溶解の程度は、6,000rpm、30分の遠心分離での沈降物量を定量することで判断できる。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しないとは、特に、ヒドロキシ基の一部がアシル化及びエーテル化等により誘導体化されていないことをいう。アシル化及びエーテル化としては、例えば、アセチル基及びブチリル基等によるアシル化;並びに、メチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基によるエーテル化等が挙げられる。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類としては、例えば、フルクタン類が挙げられ、その中でも特にイヌリンが好ましい。イヌリンはビフィズス菌などの腸内細菌によって酢酸、プロピオン酸、n−酪酸などの短鎖脂肪酸に代謝されやすく、それら細菌が増殖することと、短鎖脂肪酸によるpH低下により、一般に病原菌が定着し難い腸内環境を形成するためである。なお、フルクタン類は、フルクトースから成る多糖類(オリゴ糖類を含む)である。フルクタン類の中では重合度の低いフラクトオリゴ糖が一般に短鎖脂肪酸に代謝されやすく、この観点では好ましい。尤も、養殖用飼料として使う上では重合度を上げ、溶解速度を遅くすることで、環境中に溶出せずに魚類に摂取されるものが増えることから、この観点ではフラクトオリゴ糖の使用は注意して行われるべきである。フルクタン類の純度としては、50重量%以上のものを使うことが好ましい。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類は腸内細菌によって消化管内で、短鎖脂肪酸に分解されると考えられる。このような過程で生じる酢酸などの代謝産物や、このような過程でヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を異化または資化する腸内細菌が腸内細菌叢の多様性(α多様性)の増加に繋がると考えられる。ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類の単糖への分解は菌体外酵素によって生じると考えられる、そのようにして生じたグルコースやフルクトースなどの単糖は解糖系でフォスフォエノールピルビン酸を経由するなどして酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸に分解されるので、一般的にはヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類は分解されやすく、腸内細菌叢の多様性を増加させる効果が高く、感染症予防効果に優れる。特に、ブリ類の類結節症予防効果に優れる。
腸内細菌叢の多様性とは、本開示においては特にα多様性をいい、一個体の中での菌種数に関わる概念をいう。多様性が高いとは、一個体の中で菌種数が多いことを意味する。多様性の指標としては、実測値に基き確率的補正をかけたChao 1指数を使うことが出来る。なお、α多様性やChao 1指数については小谷野の論文(統計数理、60、263(2012))において分り易く説明されており、Chao 1指数は後述するCaporasoらの方法で求めることができ、この計算にはインターネット上で入手可能な解析パイプライン(ワークフロー)であるQiimeの1.9.1版などを使えば良い。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類の重量平均重合度(DPw)は、2以上100以下が好ましく、2以上50以下がより好ましい。重合度が高すぎると腸内細菌による短鎖脂肪酸への発酵効率が下がるためである。なお、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類がイヌリンである場合には、重合度の値に162.14を乗じ、さらに18.015を足すことにより、分子量に換算することができる。
本開示の魚類飼育用飼料における、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類の含有量は4重量%以下である。4重量%以下のように少ない含有量であっても十分に感染症予防効果を奏する。含有量を少なくすることにより、まず食味などを理由とした忌避による食欲低下を未然に防ぐことができ、さらに前記の通り不必要な水質の汚濁を防ぐことができる。また、その下限値については、特に限定されるものではないが、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。0.1重量%未満であると、感染症予防効果が低下する傾向となるためである。なお、その上限値については、特に限定されるものではないが、経済性の観点からは、2重量%以下、1重量%以下であってもよい。
魚類飼育用飼料に含まれる、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類以外の任意成分としては、魚類の飼育に用いられる公知の飼料等が挙げられ、具体的には、日清丸紅飼料(株)製のモジャコEP3、おとひめEP0、おとひめEP1、おとひめEP2、おとひめEP3、おとひめEP4、おとひめEP5、おとひめEP6、おとひめEP8、おとひめEP10、モジャコA、モジャコB、モジャコEP0、モジャコEP1、モジャコEP2、ハマチスペシャルS5、ハマチスペシャルS6、ハマチスペシャル4、ハマチスペシャル5、ハマチスペシャル6、ハマチスペシャル8、ハマチスペシャル10、ハマチスペシャル12、ハマチスペシャル15、ハマチスペシャル18、ハマチEPウエスト10、ハマチEPウエスト12、ハマチEPウエスト15、ハマチEPウエスト18、ハマチEPブライト6、ハマチEPブライト8、ハマチEPブライト10、ハマチEPブライト12、及びハマチEPブライト15等が挙げられる。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する魚類飼育用飼料は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類、及び必要に応じて任意成分を混合するかまたはしないことによって調製することができる。また、特に、任意成分として、魚類の飼育に用いられる公知のペレット状飼料を用いる場合、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類の水溶液を当該ペレット状飼料に外添することにより調製してもよい。このように、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を、魚類飼育用飼料の添加剤として使用することができる。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する魚類飼育用飼料によれば、魚類の感染症(例えば、ブリ類の類結節症)を予防することができ、その生存率を高めることができる。
また、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する魚類飼育用飼料は、魚類に経口投与することができるので、個体毎に投与が必要となる注射投与等に比べ、投与が非常に容易であり、養殖を行う者にとって負担が軽減される。
そして、当該魚類飼育用飼料は、ワクチン投与及び抗生物質投与と併用することができ、ワクチン投与及び抗生物質投与を代替することもできる。そのため、飼育費用の削減ができる。さらに、ワクチン投与及び抗生物質投与を代替することで、養殖された魚類の消費者の不安を払拭することもできる。特に、抗生物質投与を代替することで、その抗生物質への耐性菌の出現も防止できる。
[アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料]
本開示の第二の魚類飼育用飼料は、アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有するものである。
アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料における魚類は、養殖可能なものであれば特に制限されない。例えば、ブリ、ヒラマサ、カンパチなどのブリ属魚類;マアジやシマアジなどのアジ亜科魚類;スズキなどのスズキ科魚類;マダイ、チダイ、クロダイなどのタイ科魚類;クロマグロやマサバなどのサバ亜科魚類;トラフグなどのフグ科魚類;ヒラメなどのヒラメ科魚類;イシダイなどのイシダイ科魚類;カワハギなどのカワハギ科魚類;メバル、カサゴ、クロソイなどのメバル科魚類;マハタやクエなどのハタ科魚類;イサキなどのイサキ科魚類;ギンザケ、ニジマス、イワナ、ヤマメ、ヒメマスなどのサケ科魚類;及びアユやワカサギなどのキュウリウオ科魚類などを挙げることができる。
酢酸セルロースのアセチル総置換度は、0.4以上1.4以下である。アセチル総置換度が0.4以上1.4以下であると水に対する溶解性に優れ、この範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。
酢酸セルロースは腸内細菌によって消化管内で酢酸とセルロースに分解し、セルロースはさらにオリゴ糖や単糖を経由して酢酸等の短鎖脂肪酸に分解されると考えられる。このような過程で生じる酢酸などの代謝産物や、このような過程で酢酸セルロースを異化または資化する腸内細菌が腸内細菌叢の多様性の増加に繋がると考えられる。酢酸セルロースの酢酸とセルロースへの分解は菌体外酵素によって生じると考えられるので水に対する溶解性の高い酢酸セルロースの方が分解されやすく、腸内細菌叢の多様性を増加させる効果が高く、感染症予防効果に優れる。特に、ブリ類の類結節症予防効果に優れる。このような観点から、アセチル総置換度は、0.4以上1.1以下が好ましく、0.5以上1.0以下がより好ましく、0.6以上0.95以下がさらに好ましい。
(酢酸セルロースのアセチル総置換度)
酢酸セルロースのアセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的な酢酸セルロースのアセチル総置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶液(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
上記の他、アセチル総置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従い、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で、重クロロホルムに溶解し、NMR(13C−NMRまたはH−NMR)により測定することもできる。酢酸セルロースの水酸基のプロピオニル化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させる、後述の酢酸セルロースの完全誘導体化の方法にて行うことができる。
なお、アセチル総置換度とは、酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル平均置換度の和と言い換えることができる。
(酢酸セルロースの組成分布指数(CDI))
本開示の魚類飼育用飼料が含有する酢酸セルロースは、組成分布指数(CDI)が2.0以下であることが好ましい。組成分布指数(CDI)は、1.9以下、1.8以下、1.6以下、1.5以下、さらに1.3以下の順により小さい方が好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0以上であってよい。
計算上、組成分布指数(CDI)の下限値は0であるが、これは例えば100%の選択性でグルコース残基の6位のみをアセチル化し、他の位置はアセチル化しない等の特別な合成技術をもって実現されるものであり、そのような合成技術は知られていない。グルコース残基の水酸基の全てが同じ確率でアセチル化および脱アセチル化される状況において、CDIは1.0となるが、実際のセルロースの反応においてはこのような理想状態に近付けるためには相当の工夫を要する。
酢酸セルロースは組成分布指数(CDI)が小さく、組成分布(分子間置換度分布)が均一となることにより、本開示の魚類飼育用飼料は、アセチル総置換度が通常よりも広い範囲で水溶性を確保でき、均一な溶解がなされ、構造粘性が発現しないので摂取または投与しやすく、分解されやすく、腸内細菌叢の多様性を増加させる効果が高いなどの利点がある。
ここで、組成分布指数(Compositional Distribution Index, CDI)とは、組成分布半値幅の理論値に対する実測値の比率[(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)]で定義される。組成分布半値幅は「分子間置換度分布半値幅」又は単に「置換度分布半値幅」ともいう。
酢酸セルロースのアセチル置換度の均一性を評価するのに、酢酸セルロースの分子間置換度分布曲線の最大ピークの半値幅(「半価幅」ともいう)の大きさを指標とすることができる。なお、半値幅は、アセチル置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めることができる。なお、HPLCにおけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算する方法については、特開2003-201301号公報(段落0037〜0040)に説明されている。
(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。

m:酢酸セルロース1分子中の水酸基とアセチル基の全数
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロースの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
さらに、組成分布半値幅の理論値を置換度と重合度で表すと、以下のように表される。下記式(2)を組成分布半値幅の理論値を求める定義式とする。

DS:アセチル置換度
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロースの残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
ところで、式(1)および式(2)においては、より厳密には重合度分布を考慮に入れるべきであり、この場合には式(1)および式(2)の「DPw」は、重合度分布関数に置き換え、式全体を重合度0から無限大までで積分すべきである。しかしながら、DPwを使う限り、式(1)および式(2)は近似的に十分な精度の理論値を与える。DPn(数平均重合度)を使うと、重合度分布の影響が無視できなくなるので、DPwを使うべきである。
(組成分布半値幅の実測値)
本開示において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
一般的に、アセチル置換度2〜3の酢酸セルロースに対しては、前処理なしに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行うことができ、それによって組成分布半値幅を求めることができる。例えば、特開2011−158664号公報には、置換度2.27〜2.56の酢酸セルロースに対する組成分布分析法が記載されている。
一方、組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値は、HPLC分析前に前処理として酢酸セルロースの分子内残存水酸基の誘導体化を行い、しかる後にHPLC分析を行って求める。この前処理の目的は、置換度の低い酢酸セルロースを有機溶剤に溶解しやすい誘導体に変換してHPLC分析可能とすることである。すなわち、分子内の残存水酸基を完全にプロピオニル化し、その完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)をHPLC分析して組成分布半値幅(実測値)を求める。ここで、誘導体化は完全に行われ、分子内に残存水酸基はなく、アセチル基とプロピオニル基のみ存在していなければいけない。すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の和は3である。これは、CAPのHPLC溶出曲線の横軸(溶出時間)をアセチル置換度(0〜3)に変換するための較正曲線を作成するために関係式:DSac+DSpr=3を使用するためである。
酢酸セルロースの完全誘導体化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させることにより行うことができる。より具体的には、溶媒として混合溶媒[ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド=1/1(v/v)]を酢酸セルロース(試料)に対して20重量部、プロピオニル化剤として無水プロピオン酸を該酢酸セルロースの水酸基に対して6.0〜7.5当量、触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジンを該酢酸セルロースの水酸基に対して6.5〜8.0mol%使用し、温度100℃、反応時間1.5〜3.0時間の条件でプロピオニル化を行う。そして、反応後、沈澱溶媒としてメタノールを用い、沈澱させることにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネートを得る。より詳細には、例えば、室温で、反応混合物1重量部をメタノール10重量部に投入して沈澱させ、得られた沈澱物をメタノールで5回洗浄し、60℃で真空乾燥を3時間行うことにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得ることができる。なお、重量平均重合度(DPw)も、酢酸セルロース(試料)をこの方法により完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とし、測定したものである。
上記HPLC分析では、異なるアセチル置換度を有する複数のセルロースアセテートプロピオネートを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースアセテートプロピオネートの溶出時間とアセチル置換度(0〜3)との関係を示す曲線、通常、三次曲線]から、酢酸セルロース(試料)の組成分布半値幅(実測値)を求めることができる。HPLC分析で求められるのは溶出時間とセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度分布の関係である。これは、試料分子内の残存ヒドロキシ基のすべてがプロピオニルオキシ基に変換された物質の溶出時間とアセチル置換度分布の関係であるから、本開示の魚類飼育用飼料に含まれる酢酸セルロースのアセチル置換度分布を求めていることと本質的には変わらない。
上記HPLC分析の条件は以下の通りである。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/HO=8/1(v/v),B液:CHCl MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
較正曲線から求めた置換度分布曲線[セルロースアセテートプロピオネートの存在量を縦軸とし、アセチル置換度を横軸とするセルロースアセテートプロピオネートの置換度分布曲線](「分子間置換度分布曲線」ともいう)において、平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして置換度分布半値幅を求める。ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅(すなわち、置換度分布半値幅)とする。
このような置換度分布半値幅は、試料中のセルロースアセテートプロピオネートの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度アセチル化されているかにより、保持時間(リテンションタイム)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、HPLCには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。このため、セルロースアセテートプロピオネートの置換度分布半値幅は、通常、下式で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な置換度分布半値幅(実測値)を求めることができる。
Z=(X−Y1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3の酢酸セルロースの見掛けの置換度分布半値幅(実際は置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル置換度(0≦x≦3)である]
なお、上記置換度3の酢酸セルロース(もしくはセルロースプロピオネート)とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステルを示し、実際には(理想的には)置換度分布半値幅を有しない(すなわち、置換度分布半値幅0の)セルロースエステルである。
前記酢酸セルロースの組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値としては、好ましくは0.12〜0.34であり、より好ましくは0.13〜0.31であり、さらに好ましくは0.13〜0.25である。
先に説明した置換度分布理論式は、すべてのアセチル化と脱アセチル化が独立かつ均等に進行することを仮定した確率論的計算値である。すなわち、二項分布に従った計算値である。このような理想的な状況は現実的にはあり得ない。酢酸セルロースの加水分解反応が理想的なランダム反応に近づくような、および/または、反応後の後処理について組成について分画が生じるような特別な工夫をしない限り、セルロースエステルの置換度分布は確率論的に二項分布で定まるものよりも大幅に広くなる。
(分散度(多分散性、Mw/Mn))
分子量分布(重合度分布)の分散度(多分散性、Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本開示の魚類飼育用飼料に含まれる酢酸セルロースの分散度(多分散性、Mw/Mn)は、1.2〜2.5の範囲であることが好ましい。分散度Mw/Mnが上記の範囲にある酢酸セルロースは、分子の大きさが揃っており、水に対する溶解性に優れる。酢酸セルロースは腸内細菌によって消化管内で酢酸とセルロースに分解し、セルロースはさらにオリゴ糖や単糖を経由して酢酸等の短鎖脂肪酸に分解されると考えられる。このような過程で生じる酢酸などの代謝産物や、このような過程で酢酸セルロースを資化する腸内細菌が多様性を増加させると考えられる。酢酸セルロースの酢酸とセルロースへの分解は菌体外酵素によって生じると考えられるので水に対する溶解性の高い酢酸セルロースの方が分解されやすく、多様性の増加を促進する効果が高い。さらには養殖魚の生存率が高まることにつながる。
酢酸セルロースの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(多分散性、Mw/Mn)は、HPLCを用いた公知の方法で求めることができる。酢酸セルロースの分散度(多分散性、Mw/Mn)は、測定試料を有機溶剤に可溶とするため、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより決定される(GPC−光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
(重量平均重合度(DPw))
重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本開示の魚類飼育用飼料に含まれる酢酸セルロースの重量平均重合度(DPw)は、50以上800以下の範囲であることが好ましい。重量平均重合度(DPw)が高すぎると、水に対する溶解性が悪くなりやすい。前記重量平均重合度(DPw)は、好ましくは55以上700以下、さらに好ましくは60以上600以下である。酢酸セルロースは腸内細菌によって消化管内で酢酸とセルロースに分解し、セルロースはさらにオリゴ糖や単糖を経由して酢酸等の短鎖脂肪酸に分解されると考えられる。このような過程で生じる酢酸などの代謝産物や、このような過程で酢酸セルロースを資化する腸内細菌が多様性を増加させると考えられる。酢酸セルロースの酢酸とセルロースへの分解は菌体外酵素によって生じると考えられるので水に対する溶解性の高い酢酸セルロースの方が分解されやすく、多様性の増加を促進する効果が高い。さらには養殖魚の生存率が高まることにつながる。
上記重量平均重合度(DPw)は、前記分散度(多分散性、Mw/Mn)と同じく、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、サイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより求められる(GPC−光散乱法)。
上述のように、酢酸セルロースの分子量(重合度)、分散度(多分散性、Mw/Mn)はGPC−光散乱法(GPC−MALLS、GPC−LALLSなど)により測定される。なお、光散乱の検出は、一般に水系溶媒では困難である。これは水系溶媒は一般的に異物が多く、一旦精製しても二次汚染されやすいことによる。また、水系溶媒では、微量に存在するイオン性解離基の影響のため分子鎖の広がりが安定しない場合があり、それを抑えるために水溶性無機塩(例えば塩化ナトリウム)を添加したりすると、溶解状態が不安定になり、水溶液中で会合体を形成したりすることがある。この問題を回避するための有効な方法の一つは、酢酸セルロースを誘導体化し、異物が少なく、二次汚染されにくい有機溶媒に溶解するようにし、有機溶媒でGPC−光散乱測定を行うことである。この目的の酢酸セルロースの誘導体化としてはプロピオニル化が有効であり、具体的な反応条件及び後処理は前記組成分布半値幅の実測値の説明箇所で記載した通りである。
酢酸セルロースの重量平均分子量(重量平均重合度)は、上出らの方法(Polymer Journal,13,421−431,1981)により次の式でジメチルスルフォキシド(DMSO)を溶媒とした際の極限粘度([η]、単位cm/g)から求めることも出来る。
Mw=([η]/0.171)(1/0.61)
DPw=Mw/(162.14+42.037×DS)
極限粘度は、ウベローデ型粘度管などの毛細粘度管を使ってISO1628−1に準拠して定法で測定すれば良い。
前記酢酸セルロースの製造方法は特に限定されない。例えば、特開2015−140432号公報、特開2016−169386号公報等を参照して、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。なお、中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5以上3以下、好ましくは2以上3以下である。
魚類飼育用飼料における、酢酸セルロースの含有量は特に限定されるものではないが、その下限値については、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。0.1重量%未満であると、感染症予防効果が低下する傾向となるためである。また、その上限値については、特に限定されるものではないが、経済性の観点からは、4重量%以下であってよく、2重量%以下、1重量%以下であってもよい。
魚類飼育用飼料に含まれる酢酸セルロース以外の任意成分としては、魚類の飼育に用いられる公知の飼料等が挙げられ、具体的には、日清丸紅飼料(株)製のモジャコEP3、おとひめEP0、おとひめEP1、おとひめEP2、おとひめEP3、おとひめEP4、おとひめEP5、おとひめEP6、おとひめEP8、おとひめEP10、モジャコA、モジャコB、モジャコEP0、モジャコEP1、モジャコEP2、ハマチスペシャルS5、ハマチスペシャルS6、ハマチスペシャル4、ハマチスペシャル5、ハマチスペシャル6、ハマチスペシャル8、ハマチスペシャル10、ハマチスペシャル12、ハマチスペシャル15、ハマチスペシャル18、ハマチEPウエスト10、ハマチEPウエスト12、ハマチEPウエスト15、ハマチEPウエスト18、ハマチEPブライト6、ハマチEPブライト8、ハマチEPブライト10、ハマチEPブライト12、及びハマチEPブライト15等が挙げられる。
アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料は、酢酸セルロース、及びその他必要に応じて任意成分を混合するかまたはしないことによって調製することができる。また、特に、任意成分として、魚類の飼育に用いられる公知のペレット状飼料を用いる場合、酢酸セルロースの水溶液を当該ペレット状飼料に外添することにより調製してもよい。このように、アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを、魚類飼育用飼料の添加剤として使用することができる。
アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料によれば、魚類の感染症を予防することができ、その生存率を高めることができる。
また、アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料を含有する魚類飼育用飼料は、魚類に経口投与することができるので、個体毎に投与が必要となる注射投与等に比べ、投与が非常に容易であり、養殖を行う者にとって負担が軽減される。
そして、当該魚類飼育用飼料は、ワクチン投与及び抗生物質投与と併用することができ、ワクチン投与及び抗生物質投与を代替することもできる。そのため、飼育費用の削減ができる。さらに、ワクチン投与及び抗生物質投与を代替することで、養殖された魚類の消費者の不安を払拭することもできる。特に、抗生物質投与を代替することで、その抗生物質への耐性菌の出現も防止できる。
[魚類の養殖方法]
本開示の魚類の養殖方法は、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する飼料、またはアセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する飼料を給餌するものである。
魚類を養殖している水中に、当該飼料を給餌すればよい。例えば、1日あたり、当該飼料を給餌する魚類の体重に対し、例えば、0.5重量%以上15重量%以下、1重量%以上15重量%以下、2重量%以上10重量%以下、または2重量%以上7重量%以下を与えてもよい。給餌量は出荷に際して目標とする体重などに鑑みて適宜調整すればよく、残餌量を適時確認しつつ飽食量を給餌することが好ましい。
給餌回数は、魚類の種類、成長度、季節等に応じて調整すればよいが、例えば、1日あたり0.5回以上5回以下、1週間当たり3.5回以上35回以下とすることができる。
魚類を養殖する水(言い換えば、飼育水)は、養殖する魚類の養殖に適した水であればよく、海水、淡水または汽水であってよい。
一般的に養殖の方法としては、大きく海面養殖と陸上養殖に分けられ、海面養殖とは、主に湾岸海域に生簀網を設置して魚介類を飼育する養殖方法をいい、陸上養殖とは、陸上に設置した生簀(水槽を含む)で行う養殖方法をいう。
海面養殖は、自然の海岸を利用しているので、台風などの自然災害の影響を受けたり、赤潮等による被害が発生したりすることは珍しくない。また、海面養殖での高密度な飼育は魚病発生のリスクを高めるため抗生物質等の薬を含む餌の使用が欠かせない。病害虫やウイルス感染の対策のために抗生物質や消毒剤等の化学物質が投与されるので、そのような環境で養殖された魚介類は、安全性に全く懸念のない食材であるとは断言し切れない部分がある。
これらのことから、海面養殖には、安全で高品質の魚介類を安定して生産することが難しいという問題点がある。また、餌の投与によって周辺海域が汚染されることがあるので、環境面でも解決すべき問題を含んでいる。特に、食べ残しの餌や排泄物、死骸等による水質悪化を起こすため環境負荷が大きく、赤潮発生の原因ともなる。
これに対し、陸上養殖は、自然災害による影響を海面養殖に比べて小さくすることができ、また、赤潮等による被害を避けることができるという利点がある。そのため、本開示の魚類の養殖方法としては、陸上養殖とすることが好ましい。
また、陸上養殖は、陸上に設置した生簀(水槽を含む)に飼育水を継続的に引き込みながら循環及び/または排水させる、言い換えれば、水をかけ流す「かけ流し式」と、飼育水を濾過システムを用いて浄化しながら閉鎖系で循環利用する「閉鎖循環式」に分けられる。
「閉鎖循環式」は飼育水の温度が安定しやすいという利点があるが、飼育水をろ過洗浄などを行い循環使用する必要があるため、エネルギーコストが高くなる。一方、「かけ流し式」でも、海水で飼育する魚類の飼育おいて、地下海水を利用する場合には、地下海水は、ろ過された海水であり清浄で温度が一定であるので、好適である。
しかしながら、地下海水を利用したかけ流し方式の陸上養殖であっても、高密度な飼育を行う場合には、魚病発生のリスクを高める可能性がある。
このような状況であっても、本開示の魚類の養殖方法によれば、魚類に経口投与することができるので、個体毎に投与が必要となる注射投与等に比べ、投与が非常に容易であり、養殖を行う者にとって負担が軽減される。また、当該魚類飼育用飼料は、ワクチン投与と併用することができ、また、ワクチン投与を代替することもできる。さらに、魚類の感染症(例えば、ブリ類の類結節症)を予防することができ、その生存率を高めることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
(酢酸セルロースの調製)
酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−70」、アセチル総置換度2.43、6%粘度:145mPa・s)1重量部に対して、4.4重量部の酢酸および1.9重量部の水を加え、混合物を3時間攪拌して酢酸セルロースを溶解した。この溶液に0.58部の酢酸と0.13重量部の硫酸の混合物を加え、得られた溶液を70℃に保持し、加水分解を行った。加水分解の間に酢酸セルロースが沈殿するのを防止するために、系への水の添加を2回に分けて行った。すなわち、反応を開始して1時間後に0.65重量部の水を5分間にわたって系に加えた。さらに2時間後、1.29重量部の水を10分間にわたって系に加え、さらに4時間反応させた。合計の加水分解時間は7時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1加水分解工程(第1熟成工程)、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2加水分解工程(第2熟成工程)、2回目の水の添加から反応終了までを第3加水分解工程(第3熟成工程)という。
加水分解を実施した後、硫酸に対して1.1当量の酢酸マグネシウムを含む24%酢酸マグネシウム水溶液を反応混合物に加えて反応を停止した。この反応混合物に対して3.6倍重量のアセトン中に反応混合物を攪拌下で60分を要して滴下し、沈殿を形成させた。ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして沈殿を回収した。得られた沈殿物の固形分1重量部に対し、16重量部のアセトン/水の混合溶剤(アセトン濃度20重量%)を加え、40℃で8時間撹拌後、ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして固形物を回収した。得られたウェットケーキの固形分1重量部に対し、16重量部のメタノールを加え、25℃で1時間撹拌後、ろ過によって固形分15重量%のウェットケーキとして固形物を回収する操作を5回繰り返し、乾燥して、酢酸セルロースを得た。
得られた酢酸セルロースのアセチル総置換度、重量平均重合度(DPw)、分散度(多分散性、Mw/Mn)、組成分布半値幅の実測値、及び組成分布指数(CDI)を前記の方法で測定した。その結果、酢酸セルロースのアセチル総置換度は0.78、重量平均重合度(DPw)は124、分散度(多分散性、Mw/Mn)は2.0、組成分布半値幅の実測値は0.305、組成分布指数(CDI)は1.90であった。
<生存率の評価>
[給餌試験]
供試魚として、ブリ30個体(高知県産当歳魚、平均体重38.6g)を、かけ流し式200L容FRP角形水槽に入れ、3日間馴致飼育を行った。これを合計7槽(合計7試験区)用意した。飼育水の水温は、25.5℃を保つようにした。馴致飼育では、飼料として、モジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)を、毎日1回、供試魚の体重に対し3重量%の量を投与(給餌)した。
3日間馴致飼育後、さらに28日間飼育を行った。28日間飼育では、第1試験区から第7試験区の供試魚に対し、毎日1回、供試魚の体重に対し3重量%の魚類飼育用飼料をそれぞれ投与(給餌)した。第1試験区から第7試験区の供試魚に与えた飼料は以下のとおりである。また、飼育水の水温は、25.5℃を保つようにした。
(実施例1)
第1試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、0.25重量部の酢酸セルロースを蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料における酢酸セルロースの含有量は、0.25重量%である)。
(実施例2)
第2試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、0.5重量部の酢酸セルロースを蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料における酢酸セルロースの含有量は、0.50重量%である)。
(実施例3)
第3試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部の酢酸セルロースを蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料における酢酸セルロースの含有量は、1.0重量%である)。
(実施例4)
第4試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)社製)100重量部に対し、0.25重量部のイヌリン(Sigma−Aldrich社製、重合度(DPw)=38)を蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料におけるイヌリンの含有量は、0.25重量%である)。
(実施例5)
第5試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)社製)100重量部に対し、0.5重量部のイヌリン(Sigma−Aldrich社製、重合度(DPw)=38)を蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料におけるイヌリンの含有量は、0.50重量%である)。
(実施例6)
第6試験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)製)100重量部に対し、1.0重量部のイヌリン(Sigma−Aldrich社製、重合度(DPw)=38)を蒸留水に溶かして得られた水溶液を、当該商業用ペレットに外添して調製したものを用いた(この魚類飼育用飼料におけるイヌリンの含有量は、1.0重量%である)。
(比較例1)
第7験区の魚類飼育用飼料は、商業用ペレットモジャコEP3(日清丸紅飼料(株)社製)を用いた。
第1試験区から第7試験区の供試魚に対し、馴致期間の最後の給餌を試験開始(0日後)とし、それぞれ実施例1〜6、及び比較例1の魚類飼育用飼料の給餌開始を1日後として、14日後に類結節症細菌(Photobacterium damselae subsp. Piscicida)に感染させた。感染方法としては、浸漬感染を行った。具体的には、25L容水槽に20Lの海水を入れ、そこに供試魚を入れ、細菌培養液を入れ、30分間浸漬させた。その間、通気を行った。感染時の菌濃度は6.75×10CFU/mlであった。
ブリ属の感染症である類結節症細菌(Photobacterium damselae subsp. Piscicida)に感染させた日を1日目として、毎日各試験区における供試魚の生存率(%)及び飼料投与(給餌)による有効率を、以下の方法により求めた。結果を図1及び表1に示す。
(生存率(%))
対照区(比較例)および各試験区(実施例)の生存率は次の通り定義した。
生存率(%)=供試魚生存個体数/類結節症細菌に感染させた日の供試魚全個体数×100
(有効率(RPS))
後述のとおり、死んだ全ての個体の腎臓から菌が検出されたことから、死因は、全ての個体において類結節症であると判断し、次式により有効率を算出した。
有効率(RPS)=(1−(各試験区の死亡率/比較例1(対照区)の死亡率))×100
死亡率(%)=100−生存率(%)
感染後14日間(15日目まで)観察し、死んだ個体が確認されれば、その当日中に解剖し、腎臓から菌分離を行った。また、感染後14日間の観察が終了した後に生存した個体(言い換えれば、28日間飼育において28日後に生存した個体)も同様に解剖し、腎臓から菌分離を行った。菌分離は、トリプトソイアガー(TSA)平板培地(NaCl 2%含む)を使用し、画線培養を行った。死んだ全ての個体の腎臓から菌が検出された。一方、生存した個体では、1.0重量%の酢酸セルロースを含有した魚類飼育用飼料を投与した個体21個体中2個体のみ確認され、その他の生存した個体からは検出されなかった。
図1に示されるように、実施例の魚類飼育用飼料を投与しなかった場合(比較例1)には、感染後3日目から生存率が低下し始め、3〜5日目にかけて急激に生存率が低下し、6日目以降で10%程度となったのに対し、実施例の魚類飼育用飼料を投与した場合には、その中でも最も生存率の低い0.25重量部の酢酸セルロースを用いた場合(実施例1)であっても、感染後4日目以降、実施例の魚類飼育用飼料を投与しなかった場合(比較例1)に対して、約2倍もの生存率を維持した。
特に、1.0重量部の酢酸セルロースを用いた場合(実施例3)には、4日目も生存率の低下が見られず、最終的な生存率は70%程度と、実施例の魚類飼育用飼料を投与しなかった場合(比較例1)の10%程度に対して、約7倍もの顕著な生存率の向上が見られた。
なお、酢酸セルロースを用いた場合(実施例1、2、及び3)と、イヌリンを用いた場合(実施例4、5、及び6)との比較から分かるように、それぞれの濃度の違いによる、生存率の差は、イヌリンを用いた場合には、酢酸セルロースを用いた場合と比較して小さい。
表1には、28日間飼育における28日後の供試魚の生存率(%)とその生存率から算出された飼料投与による有効率(RPS)を示す。実施例の魚類飼育用飼料の有効率(RPS)は、低くとも11.1であり(実施例1)、高い場合には66.7(実施例3)との結果が得られた。特に、ワクチンとしての使用候補の目安となる有効率(RPS)は、60以上であることを考慮すれば、酢酸セルロースの含有量が1.0重量%である魚類飼育用飼料(実施例3)は、ワクチンと同等以上の有効率を有すると言える。
上記のとおり、実施例の魚類飼育用飼料では生存性が改善され、ブリの類結節症の予防に非常に優れた効果を示すことが分かる。
<腸内細菌叢(α多様性)の評価)>
(実施例7−8、及び比較例2)
実施例6と同様の方法で1.0重量%イヌリンを含有する魚類飼育用飼料を与えブリを飼育し、これを実施例7とした。実施例3と同様の方法で1.0%重量%酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料を与えブリを飼育し、これを実施例8とした。比較例1と同様の方法でブリを飼育し比較例2とした。これら実施例または比較例に対応する試験区または対照区の供試魚数は各25とし、馴致飼育は7日間とし、全供試魚の平均体重は73.7g、水温は24.5℃であった。感染処理直前、および、感染処理2日後に試験区および対照区から各5個体をサンプリングし、腸内容物を採取した。腸内容物はただちにマイナス80℃以下に冷凍し、腸内細菌叢の分析までマイナス80℃以下で保存した。
これら腸内容物の腸内細菌叢を以下の方法で分析し、α多様性(Chao 1指数)を調べた。結果は表2に示す。
(腸内細菌叢の分析)
ブリの腸内細菌叢の分析はCaporasoらの非特許文献(Caporaso JGら、Ultra-high-throughput microbial community analysis on the Illumina HiSeq and MiSeq platforms.、ISME J. 2012 Aug;6(8):1621-4.)、及びイルミナ社公式プロトコール「16S Metagenomics Sequencing Library Preparation」に準じて実施した。
(DNAの抽出)
ブリの腸内容物を、ジルコニアビーズPathogen Lysis Tubes S(キアゲン社)を用いて破砕した後、磁性ビーズ法(ベックマン・コールター社genfind2.0)によるDNA精製を行うことで、ブリの腸内細菌叢のDNAを抽出した。
(16SrDNA V3-V4領域の増幅(1st_PCR))
抽出したDNAの16SrDNAのV3-V4領域を以下のプライマーで増幅した。増幅後、AmpureXPを用いて精製し、プライマーを除去し、1回目のPCR産物(1st-PCR産物)を得た。増幅及び精製条件は以下のとおりである。
(1)プライマー:341F-805R(イルミナ推奨プライマー配列)
F 5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGNCCTACGGGNGGCWGCAG-3’
R 5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGNGACTACHVGGGTATCTAATCC-3’
(2)酵素:KAPA HiFi HotStart (日本ジェネティクス社)
(3)反応液:KAPA HiFi 25 ul(2×MasterMix)、Primer F 0.2 uM、Primer R 0.2 uM、及びTemplate DNA(前記の方法で抽出したDNA) 5 ngに対し滅菌水を加えて総量を50 ulとした。
(4)反応条件:上記反応液をよく混合したものを、95℃で3分間初期変性を行い、95℃を30秒間、55℃を30秒間、72℃を30秒間、を30サイクル、最後に72℃を5分間反応させ、DNAを増幅させた。
(5)精製:前記の操作で得られた混合物を磁性ビーズAMpureXP 50 ul(日本ジェネティクス社)と混和し、DNA増幅物を磁性ビーズに吸着させ、磁石スタンド(日本ジェネティクス社)を用いて磁性ビーズに吸着した状態でDNA増幅物を回収した。これを磁性スタンドに載せたまま80%エタノールにて2回洗浄した。これをさらに10 mM Tris Buffer (pH8.5) 50 ulに懸濁しDNAを溶出後、磁石スタンドを用いて磁性ビーズを沈降させ、溶出したDNAを得た。
(アダプター・インデックス配列の付与(2nd_PCR))
以下のプライマーを用いてPCRを行い、上記の操作で得られた1st-PCR産物(DNA増幅物)に、必要なアダプター配列およびインデックス配列を付与した。この2回目のPCR産物(2nd-PCR産物)は精製後、電気泳動およびQubitを用いて定量し、各サンプル同濃度になるように調整した。増幅及び精製条件は以下のとおりである。
(1)プライマー:8塩基のインデックス配列を含む。
F 5’-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC CTCTCTAT TCGTCGGCAGCGTC-3’
R 5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATATTACTCGGTCTCGTGGGCTCGG-3’
(下線部は例であり、検体毎に異なる標識としてのインデックス配列である。)
(2)PCR酵素:KAPA HiFi HotStart(日本ジェネティクス)
(3)反応液:KAPA HiFi 20 ul (2×MasterMix)、Primer F 0.2 uM、Primer R 0.2 uM、Template DNA(1stPCR産物)4 ulに対し滅菌水を加えて総量40 ulとした。
(4)反応条件:上記反応液を混合し、95℃を3分間、95℃を30秒間、55℃を30秒間、72℃を30秒間、72℃5分間と順に条件を変えた。たたし、95℃を3分間、95℃を30秒間、55℃を30秒間、72℃を30秒間の処理は8回繰り返した。
(5)精製:前記の操作で得られた混合物を磁性ビーズAMpureXP 50 ul(日本ジェネティクス社)と混和し、DNA増幅物を磁性ビーズに吸着させ、磁石スタンド(日本ジェネティクス社)を用いて磁性ビーズに吸着した状態でDNA増幅物を回収した。これを磁性スタンドに載せたまま80%エタノールにて2回洗浄した。これをさらに10 mM Tris Buffer (pH8.5) 50 ulに懸濁しDNAを溶出後、磁石スタンドを用いて磁性ビーズを沈降させ、溶出したDNA(2nd-PCR産物)を得た。
(次世代シーケンシング)
α多様性の評価の対象としたブリの各個体の腸内容物から前記の方法でDNA抽出、1st-PCRおよび2nd-PCRすることで各サンプルのライブラリーDNAを得た。各サンプルをDNA濃度について等molとなるように混和した。混和したライブラリーを希釈後、デジタルPCRにて定量し、ライブラリーDNAの濃度を4 nMに調整した。ライブラリーDNAは等量の0.2 N NaOHと混和して変性させ、さらにHT1バッファーでDNA濃度を8 pMに調整した。このように調整したライブラリー60容量部に対して8 pM PhiXを40容量部の割合で添加し、MiSeqによる次世代シーケンス解析を実施した。各検体の腸内細菌叢の塩基配列情報をfastq形式ファイルとして得た。
(1)シーケンス解析条件:
Read長:251bp x 2 pair-end
ライブラリー濃度:8 pM
PhiX添加量:40%
使用試薬:Miseq Reagent Kit V2-500cycle(1500万クラスター)
なお、「read」は、シーケンサーによって読み取った個々の塩基配列のことであり、「リード」または「塩基配列」と呼ぶことがある。
(2)シーケンス解析結果(読み取り結果)
クラスター密度:608K/mm2
PhiX実測値:41.5%
PassFilter:94.64%
Q30:平均77.24%
(α多様性の解析)
各検体の腸内細菌叢の塩基配列情報は、Qiime(J Gregory Caporasoら,Nature Methods, 2010; doi:10.1038/nmeth.f.303.)で解析し、α多様性の指標としてのChao 1指数を得た。なお、Qiimeは、1.9.1版を使い要領次の要領でChao 1指数を得た。
1. fastq_joinによるフォワード読み込み及びリバース読み込みのリードの結合
2. uclastによるOTUクラスタリング(97%identity)
3. blastによる相同性検索(参照データベースGreenGenes13.5)
4. Chao 1指数の算出
使用ソフトウェア・データベース:Usearch v8.1.1861、FastQC v0.11.3、BioLinux 8.0、QIIME 1.9.1、GreenGenes 13.5
表2に示すように、1.0重量%イヌリンを含有する魚類飼育用飼料を投与した供試魚(実施例7)、及び1.0%重量%酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料を投与した供試魚(実施例8)のいずれにおいても、感染処理直前に対して、感染処理2日後でChao 1指数が有意に増加し、α多様性が増大した。比較例2においてはα多様性の有意な変化は認められなかった。
非特許文献(本田賢也、領域融合レビュー、2、e011(2013) DOI:10.7875/leading.auhor.2.e011)によれば、「消化管はユニークな免疫系を構築している。そこでは,強い炎症活性をもつ免疫細胞と同時に抑制能の強い免疫細胞がバランスよく生み出されている。これは,消化管がさまざまな微生物の侵入という危険につねにさらされているのと同時に,日常的に接する無害な食物や腸内フローラに対しては不必要に免疫応答しないよう制御される必要があるためである。こうしたバランスよく制御された消化管免疫系の構築において,腸内フローラが重要なはたらきをしていることが徐々に明らかになってきている。腸内フローラを構成する個々の細菌種は,それぞれ異なる様式により消化管免疫系に影響をあたえる。」としている。ここで腸内フローラとは腸内細菌叢のことである。また、同じ非特許文献によれば、正常な腸内フローラにおいては「バクテロイディアに属する細菌およびクロストリジアに属する細菌が豊富に存在し,細菌種の多様性が高く,機能的にもすぐれている。セグメント細菌やクロストリジアに属する細菌などによりTh17細胞と制御性T細胞とがバランスよく生み出され,頑強な粘膜のバリアが保たれている。」、「かたよった食事,感染や遺伝的な素因による炎症,抗生物質の使用などにより,優性であるべきバクテロイディアに属する細菌およびクロストリジアに属する細菌が減少し,細菌種の多様性が減少し,本来はごく少数しか存在しないはずの細菌種が増加するというdysbiosisを生じることがある。dysbiosisはTh17細胞や制御性T細胞などによる免疫系の活性化と抑制とのバランスに異常をもたらし,粘膜のバリアの破壊と,本来は免疫系が応答すべきではない食事の成分や腸内細菌に対する異常な活性化を誘導する。」としている。さらに、理化学研究所の2014年7月11日のプレスリリースによれば、「免疫反応を抑制する制御性T細胞が、IgA抗体の産生を介して、腸内細菌叢のバランスを制御していること、一方で、バランスのとれた腸内細菌叢が、腸管における制御性T細胞の誘導やIgA抗体の産生といった健全な腸管免疫系の形成に有効である」としており、腸内細菌叢と免疫系との間の新たな双方向制御機構が発見されたとしている。
これらの非特許文献およびプレスリリースも踏まえると、表2の結果は、酢酸セルロースおよびイヌリンはブリの腸内細菌叢に影響を与えることで免疫系に影響を与え、感染による細菌種の多様性(α多様性)の減少を抑えるどころか、むしろα多様性を高めて腸管の強固な粘膜バリアの形成を促進したものと推察される。
ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類、または酢酸セルロースを含有する魚類飼育用飼料を投与することにより、ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類、または酢酸セルロースを異化または資化する腸内細菌が、ブリの腸内細菌叢の多様性の増加をもたらした結果、類結節症の予防効果が得られた。

Claims (12)

  1. ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する、魚類飼育用飼料。
  2. 前記水溶性多糖類がイヌリンである、請求項1に記載の魚類飼育用飼料。
  3. 前記水溶性多糖類を0.1重量%以上含有する、請求項1または2に記載の魚類飼育用飼料。
  4. アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料。
  5. 前記酢酸セルロースのアセチル総置換度が0.4以上1.1以下である、請求項4に記載の魚類飼育用飼料。
  6. 前記酢酸セルロースを0.1重量%以上含有する、請求項4または5に記載の魚類飼育用飼料。
  7. 前記酢酸セルロースは、下記式で定義される組成分布指数(CDI)が2.0以下である、請求項4〜6の何れか一項に記載の魚類飼育用飼料。
    CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
    組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅

    DS:アセチル総置換度
    DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
  8. ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を4重量%以下含有する飼料、またはアセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する飼料を給餌する、魚類の養殖方法。
  9. 前記養殖が陸上養殖である、請求項8に記載の魚類の養殖方法。
  10. 前記陸上養殖が、水槽に地下海水をかけ流して行う、請求項9に記載の魚類の養殖方法。
  11. ヒドロキシ基以外の置換基を有しない水溶性多糖類を含有する、魚類飼育用飼料の添加剤。
  12. アセチル総置換度が0.4以上1.4以下の酢酸セルロースを含有する、魚類飼育用飼料の添加剤。
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