JP2020148911A - 量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】量子もつれ光子対を増幅させるための系を閉じることなく、量子もつれ光子対を増幅させることができる量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法を提供すること。【解決手段】量子もつれ光子対増幅装置10は、光源11と、入射された光を2つの光へ分離する偏光ビームスプリッター14と、入射された光から、一対の量子もつれ光子対を生成するPPKTP18と、光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射するリトロリフレクター22と、光の間の位相差を制御する半波長板20と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法に関する。
従来、量子もつれを生成する方法が知られている。例えば、誘導放出によって、量子もつれ光子を増幅させる技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
A. Lamas-Linares, J. C. Howell and D. Bouwmeester, "Stimulated emission of polarization-entangled photons.", Nature412, 887-890 (2001)
上記非特許文献1に記載されている技術は、メタホウ酸バリウム結晶へポンプ光を2回通すことにより、もつれた光子対を4倍まで増幅させることができる。
しかし、上記非特許文献1に記載の技術は、量子もつれ光子対を増幅させるための系が閉じているため、量子もつれ光子対の更なる増幅は困難である。
本発明は、上記の事実を考慮してなされたもので、量子もつれ光子対を増幅させるための系を閉じることなく、量子もつれ光子対を増幅させることができる光子対増幅装置及び光子対増幅方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る量子もつれ光子対増幅装置は、光源と、入射された光を2つの光へ分離する光分離手段と、入射された光から、一対の量子もつれ光子対を生成する光子対生成手段と、光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射する光反射手段と、光の間の位相差を制御する位相制御手段と、を備え、前記光分離手段は、前記光源から出力された光を、第1の光と第2の光とへ分離し、前記光子対生成手段は、第1の光から第1の量子もつれ光子対を生成し、第2の光から第2の量子もつれ光子対を生成し、前記位相制御手段は、第1の光と第1の光子対との間の位相差を制御し、第2の光と第2の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、前記光反射手段は、第1の光と第1の量子もつれ光子対及び第2の光と第2の量子もつれ光子対を、前記光子対生成手段へ向けて反射させ、前記光子対生成手段は、前記光反射手段によって反射された第1の光から、第1の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成し、前記光反射手段によって反射された第2の光から、第2の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成する、量子もつれ光子対増幅装置である。
本発明に係る量子もつれ光子対増幅装置の前記光反射手段は、複数の光反射手段を含み、複数の前記光反射手段の各々は、前記光子対生成手段を挟んで互いに対向する位置に配置され、前記光源から出力された光が複数の前記光反射手段によって反射され、前記光が前記光子対生成手段を通過する毎に新たな量子もつれ光子対が生成されるようにすることができる。
本発明に係る量子もつれ光子対増幅装置の前記光反射手段は、リトロリフレクター、プリズム、又は一対のミラーであるようにすることができる。
本発明に係る量子もつれ光子対増幅装置の前記光子対生成手段の光が入射される一辺の大きさは、前記光反射手段に入射される光の位置と前記光反射手段から出力される反射光の位置との間の距離よりも大きようにすることができる。
本発明に係る量子もつれ光子対増幅方法は、光源と、入射された光を2つの光へ分離する光分離手段と、入射された光から、一対の量子もつれ光子対を生成する光子対生成手段と、光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射する光反射手段と、光の間の位相差を制御する位相制御手段と、を備えた量子もつれ光子対増幅装置における量子もつれ光子対増幅方法であって、前記光分離手段が、前記光源から出力された光を、第1の光と第2の光とへ分離し、前記光子対生成手段が、第1の光から第1の量子もつれ光子対を生成し、第2の光から第2の量子もつれ光子対を生成し、前記位相制御手段が、第1の光と第1の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、第2の光と第2の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、前記光反射手段が、第1の光と第1の量子もつれ光子対及び第2の光と第2の量子もつれ光子対を、前記光子対生成手段へ向けて反射させ、前記光子対生成手段が、前記光反射手段によって反射された第1の光から、第1の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成し、前記光反射手段によって反射された第2の光から、第2の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成する、量子もつれ光子対増幅方法である。
本発明によれば、量子もつれ光子対を増幅させるための系を閉じることなく、量子もつれ光子対を増幅させることができる量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法を提供することができる、という効果を奏する。
以下、本発明の実施形態に係る量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法について詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1及び図2に示されるように、第1実施形態の量子もつれ光子対増幅装置10は、レーザ光源11と、ダイクロックミラー12と、光分離手段の一例である偏光ビームスプリッター14と、両波長用半波長板16と、光子対生成手段の一例であるPPKTP(Periodically Polled KTP)18と、位相制御手段の一例である赤用半波長板20と、光反射手段の一例であるリトロリフレクター22と、ミラー24と、時間波高変調器26とを備える。本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置10は、2つの光子を表す量子もつれ光子対を増幅させるための系を閉じることなく、量子もつれ光子対を増幅させる。
なお、以下では、光の伝搬方向に対して水平な偏光を記号|H>で表し、光の伝搬方向に対して垂直な偏光を記号|V>で表す。
図1及び図2の何れにも、第1実施形態の量子もつれ光子対増幅装置10が示されているが、図1は、時計回りにレーザ光|H>pが進む経路を表しており、図2は、反時計回りにレーザ光|H>pが進む経路を表している。なお、図中の実線はレーザ光を表し、点線は量子もつれ光子対を表す。
以下では、まず、図1のみを参照して、レーザ光が時計回りに進む経路について説明する。
レーザ光源11からは、レーザ光が出力される。本実施形態では、青色のレーザ(405nm)がレーザ光源11から出力される場合を例に説明する。
ダイクロックミラー12は、図1に示されるように、レーザ光源11から出力されたレーザ光が入射する位置に配置される。ダイクロックミラー12は、青色の光(405nm)を透過し、赤色の光(810nm)を反射する。このため、レーザ光源11から出力された青色(405nm)のレーザ光は、ダイクロックミラー12を透過し、後述する偏光ビームスプリッター14へ入射される。
偏光ビームスプリッター14は、図1に示されるように、ダイクロックミラー12を透過したレーザ光が入射される位置に配置される。偏光ビームスプリッター14は、H偏光を透過し、V偏光を反射する。このため、レーザ光源11から出力された青色(405nm)のうちの|H>は、偏光ビームスプリッター14を透過し、後述する両波長用半波長板16へ入射される。偏光ビームスプリッター14を透過したレーザ光|H>は、図に対して時計回りの経路を辿る。一方、レーザ光源11から出力された青色(405nm)のうちの|V>は、反射され、図に対して反時計回りの経路を辿る。このため、偏光ビームスプリッター14は、レーザ光源11から出力されたレーザ光を2つの光へ分離する。
両波長用半波長板16は、図1に示されるように、偏光ビームスプリッター14と、PPKTP18との間に配置される。両波長用半波長板16は、入射された光の偏光を変化させ、水平方向の偏光を有する光に変換する。このため、偏光ビームスプリッター14を透過したレーザ光|H>pは、両波長用半波長板16を通過したとしても、偏光は変化しない。そのため、両波長用半波長板16からは、入射したレーザ光|H>pがそのまま出力される。両波長用半波長板16を通過したレーザ光|H>pは、第1の光の一例である。
非線形結晶の一例であるPPKTP18は、入射された光をパラメトリック下方変換(PDC : parametric down-conversion)し、量子もつれ光子対(以下、単に「光子対」と称する。)を生成する。なお、本実施形態においては、TypeIIのPPKTPを用いる場合を例に説明する。
図3に、TypeIIのPPKTPの機能を説明するための説明図を示す。例えば、図3に示されるように、TypeIIのPPKTP18に対して青色の光(405nm)が入射された場合、PPKTP18からは、偏光が互いに直交している光子対が出力される。図3に示される例では、青色の光(405nm)|H>がPPKTP18へ入力されると、PPKTP18からは赤色の光(810nm)|H>と赤色の光(810nm)|V>とが光子対として出力される。
両波長用半波長板16から出力されたレーザ光|H>pは、PPKTP18へ入射する。そして、PPKTP18からは光子対|H>|V>が出力される。このときの光子対の生成が、時計回りに辿るレーザ光|H>pによる1回目の光子対の生成となる。なお、PPKTP18へ入射したレーザ光|H>pは、PPKTP18を通過する。このため、PPKTP18からは光子対|H>|V>とレーザ光|H>pとが出力される。
赤用半波長板20は、図1に示されるように、PPKTP18とリトロリフレクター22との間に配置される。赤用半波長板20は、光子対|H>|V>とレーザ光|H>pとの間の位相差を制御する。こ赤用半波長板20は、煽り角θによって光子対の位相を制御することができる。このため、図1に示されるように、位相が制御された光子対eiθ|V>|H>が赤用半波長板20から出力される。また、レーザ光|H>pは、赤用半波長板20をそのまま通過する。
リトロリフレクター22は、図1に示されるように、赤用半波長板20から出力された光が照射される位置に配置される。リトロリフレクター22は、レーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>が入射された位置とは異なる位置からレーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>を出力する。図1に示されるように、リトロリフレクター22は、光を遅延させる遅延回路としての機能を有する。
図1に示されるように、赤用半波長板20から出力されたレーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>が、リトロリフレクター22に入射されると、それらの光がPPKTP18へ再度入射するように、レーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>が反射される。
リトロリフレクター22によって反射した、レーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>は、PPKTP18へ再度入射する。そして、PPKTP18によって、レーザ光|H>pから新たな光子対|H>|V>が生成される。この新たな光子対|H>|V>の生成が、時計回りに辿るレーザ光|H>pによる2回目の光子対の生成となる。
図1に示されるように、本実施形態のPPKTP18の一辺の大きさは、リトロリフレクター22に入射される光の位置とリトロリフレクター22から出力される反射光の位置との間の距離よりも大きい。このため、レーザ光|H>pを往復させて、PPKTP18を通過させることができる。
なお、赤用半波長板20によって、レーザ光|H>pと光子対eiθ|V>|H>との位相差が制御されているため、光子対eiθ|V>|H>と新たな光子対|H>|V>との間の位相も異なる。
図4に、本実施形態の光子対増幅の原理を説明するための説明図を示す。図4に示されるように、入射光であるレーザ光|H>pがPPKTP18結晶へ入射されると、以下の式(1)に示されるように、1回目の光子対の生成が起こる。そして、光子対|H>|V>とレーザ光|H>pとがPPKTP18結晶から出力される。
|H>→|H>|V> (1)
次に、赤用半波長板20によって、光子対|H>|V>とレーザ光|H>pとの間の位相差が制御され、光子対|H>|V>は光子対eiθ|V>|H>となる。
そして、レーザ光|H>pと光子対eiθ|V>|H>とは、リトロリフレクター22によって反射され、PPKTP18結晶へ入射する。このとき、レーザ光|H>pのPPKTP18結晶への入射により、2回目の光子対の生成が起こる。また、光子対eiθ|V>|H>は、PPKTP18結晶へ入射することにより、光子対eiθ|H>|V>として出力される。
この結果、最終的にPPKTP18から出力される光子対の状態は、以下の式(2)によって表される。
|φ>=|H>|V>+eiθ|H>|V>
=(1+eiθ)|H>|V> (2)
=(1+eiθ)|H>|V> (2)
上記式(2)に示されるように、|H>|V>の前に(1+eiθ)の項が存在しており、この項の存在により、光子対|H>|V>が増幅される。
次に図1に戻り説明を続ける。
図1に示されるように、PPKTP18から出力された光子対(1+eiθ)|H>|V>は、両波長用半波長板16を通過し、ミラー24に入射する。
そして、ミラー24によって反射された光子対(1+eiθ)|H>|V>は、偏光ビームスプリッター14へ入射する。そして、図1に示されるように、偏光ビームスプリッター14によって、光子対(1+eiθ)|H>|V>は、|H>と|V>とに分離される。
そして、図1に示されるように、分離された|H>と|V>との各々の光子は、時間波高変調器26のうちの検出部A及び検出部Bによって検出される。
次に、図2を参照して、レーザ光のうちの反時計回りの経路について説明する。
レーザ光源11から出力された青色(405nm)のレーザ光は、ダイクロックミラー12を透過し、偏光ビームスプリッター14へ入射する。
レーザ光源11から出力された青色(405nm)のレーザ光のうちの|V>pは、偏光ビームスプリッター14によって反射し、両波長用半波長板16へ入射する。偏光ビームスプリッター14を反射したレーザ光|V>pは、図に対して反時計回りの経路を辿る。
偏光ビームスプリッター14によって反射したレーザ光|V>pは、両波長用半波長板16によって、水平方向の偏光であるレーザ光|H>pへ変換される。そして、両波長用半波長板16からは、レーザ光|H>pが出力される。両波長用半波長板16から出力されたレーザ光|H>pは、第2の光の一例である。
両波長用半波長板16から出力されたレーザ光|H>pは、PPKTP18へ入射する。そして、PPKTP18からは光子対|H>|V>が出力される。このときの光子対の生成が、反時計回りに辿るレーザ光|H>pによる1回目の光子対の生成となる。なお、PPKTP18へ入射したレーザ光|H>pは、PPKTP18をそのまま通過する。このため、PPKTP18からは光子対|H>|V>とレーザ光|H>pとが出力される。
リトロリフレクター22は、図2に示されるように、レーザ光|H>p及び光子対|H>|V>が入射された位置とは異なる位置からレーザ光|H>p及び光子対|H>|V>を出力する。
リトロリフレクター22によって反射させられた、レーザ光|H>p及び光子対|V>|H>は、赤用半波長板20に入射する。そして、赤用半波長板20によって、位相が制御された光子対eiθ|V>|H>が出力される。また、レーザ光|H>pは、赤用半波長板20をそのまま通過する。
次に、レーザ光|H>p及び光子対eiθ|V>|H>は、PPKTP18に入射する。そして、PPKTP18によって、レーザ光|H>pから新たな光子対|H>|V>が生成される。この新たな光子対|H>|V>の生成が、反時計回りに辿るレーザ光|H>pによる2回目の光子対の生成となる。
図2に示されるように、PPKTP18から出力された光子対(1+eiθ)|H>|V>は、両波長用半波長板16を通過し、偏光ビームスプリッター14へ入射する。次に、図2に示されるように、偏光ビームスプリッター14によって、光子対(1+eiθ)|H>|V>は、|H>と|V>とに分離される。
そして、図2に示されるように、分離された|H>と|V>との各々の光子は、時間波高変調器26のうちの検出部A及び検出部Bによって検出される。
これにより、時計回りにおいて発生させた光子対と反時計回りにおいて発生させた光子対とが出力側において重ね合わさることにより、原理的には確率1で増幅した量子もつれ光子対を無条件に発生させることができる。
以上説明したように、時計回りのレーザ光によって生成される光子対と、反時計回りのレーザ光によって生成される光子対とが重ね合さることで、時間波高変調器26のうちの検出部A及び検出部Bにおいて検出される光子対の状態は、以下の式(3)によって表される。
|φ>=(1+eiθ)(|H>A|V>B+|H>B|V>A) (3)
なお、添え字A,Bは、検出部A又は検出部Bにおいて検出されることを表す。
また、時間波高変調器26によって光子対が検出される確率を表す検出確率(時計回りのレーザ光によって生成される光子対及び反時計回りのレーザ光によって生成される光子対の何れか一方)は、以下の式(4)によって表される。
|<V|<H|(1+eiθ)|H>|V>|=2(1+cosθ)
=4(θ=2πnのとき。但しnは整数)
(4)
=4(θ=2πnのとき。但しnは整数)
(4)
上記式(4)から、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置により、理論上は最大4倍までの光子対の増幅が可能であることがわかる。
以上説明したように、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、レーザ光源と、偏光ビームスプリッターと、光から一対の光子対を生成するPPKTP18と、光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射するリトロリフレクターと、光の間の位相差を制御する半波長板と、を備える。そして、偏光ビームスプリッターは、レーザ光源から出力された光を、時計回りの経路を辿る光と反時計回りの経路を辿る光とへ分離する。そして、PPKTP18によって時計回りの経路を辿る光から光子対が生成され、反時計回りの経路を辿る光から光子対が生成される。また、半波長板は、時計回りの経路を辿る光と該光から生成された光子対との間の位相差を制御し、反時計回りの経路を辿る光と該光から生成された光子対との間の位相差を制御する。そして、リトロリフレクターは、時計回りの経路を辿る光と該光から生成された光子対及び反時計回りの経路を辿る光と該光から生成された光子対を、PPKTP18へ向けて反射させ、PPKTP18は、反射された時計回りの経路を辿る光から、既に生成された光子対と位相が異なる新たな光子対を生成し、反射された反時計回りの経路を辿る光から、既に生成された光子対と位相が異なる新たな光子対を生成する。これにより、光子対を増幅させるための系を閉じることなく、光子対を増幅させることができる。
具体的には、光の遅延回路として機能するリトロリフレクターによって、PPKTP18から出力されたレーザ光を再度PPKTP18へ入射させることにより、光子対が再び生成される。また、このときに、既に生成された光子対と新たに生成される光子対との間の位相差を制御するために、半波長板を介して、レーザ光をPPKTP18へ再び入射させる。これにより、位相差が制御された光子対を増幅させることができる。更に、リトロリフレクターは、レーザ光が入射された位置とは異なる位置からレーザ光を出力する。これにより、図1及び図2に示されるように、PPKTP18から出射されるレーザ光の位置と、PPKTP18へ入射されるレーザ光の位置とが異なる位置となる。このため、PPKTP18に対してレーザ光を複数回通過させることができ、複数の光子対を生成させことができるため、光子対を増幅させるための系を閉じることなく、光子対を増幅させることができる。
また、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置によれば、図1及び図2に示されるように、光子対を増幅させるための系を閉じることなく、光子対を増幅させるため、光子対の取出しが容易である。
また、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、図1及び図2に示されるように、その全体が干渉計となり、時計回りと反時計回りの両方で光子対を発生させる。そして、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、時計回りにおいて発生させた光子対と反時計回りにおいて発生させた光子対とを、出力側において重ね合わせることにより、原理的には確率1で増幅した量子もつれ光子対を無条件に発生させることができる。
干渉計を用いずに一方向に光子対を増幅させた場合も、ビームスプリッター又は波長フィルタ等を用いることにより光子対を分離させ、量子もつれ光子対を発生させることは可能である。しかし、その場合には、ある確率で発生する条件的な量子もつれ光子対の状態となり、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置のように、原理的に確率1で増幅した量子もつれ光子対とはならない。
これに対し、本実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、時計回りにおいて発生させた光子対と反時計回りにおいて発生させた光子対とを、出力側において重ね合わせることにより、原理的には確率1で増幅した量子もつれ光子対を無条件に発生させることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成及び同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、複数のリトロリフレクターを備え、PPKTP18に対してレーザ光を複数回通過させる点が第1実施形態と異なる。
図5に示されるように、第2実施形態の量子もつれ光子対増幅装置210は、レーザ光源11と、ダイクロックミラー12と、偏光ビームスプリッター14と、両波長用半波長板16と、PPKTP18と、複数の赤用半波長板20と、複数のリトロリフレクターである第1のリトロリフレクター222と、第2のリトロリフレクター223と、ミラー24と、時間波高変調器26とを備える。
図5に示されるように、第2実施形態の量子もつれ光子対増幅装置210は、複数のリトロリフレクターとして、第1のリトロリフレクター222と第2のリトロリフレクター223とが備えられており、第1のリトロリフレクター222及び第2のリトロリフレクター223の光の反射によって、PPKTP18に対してレーザ光を複数回通過させることができ、複数の光子対を生成させことができる。
具体的には、図5に示されるように、両波長用半波長板16を通過したレーザ光L1は、PPKTP18を通過する際に、G1において光子対が生成される。次に、レーザ光L1は、PPKTP18に対する2回目の通過の際に、G2において光子対が生成される。次に、レーザ光L1は、PPKTP18に対する3回目の通過の際に、G3において光子対が生成される。そして、レーザ光L1は、PPKTP18に対する4回目の通過の際に、G4において光子対が生成される。
また、図5に示されるように、両波長用半波長板16を通過したレーザ光L2は、PPKTP18を通過する際に、G4において光子対が生成される。次に、レーザ光L2は、PPKTP18に対する2回目の通過の際に、G3において光子対が生成される。次に、レーザ光L2は、PPKTP18に対する3回目の通過の際に、G2において光子対が生成される。そして、レーザ光L2は、PPKTP18に対する4回目の通過の際に、G1において光子対が生成される。
なお、図5に示されるように、レーザ光と生成された光子対との間の位相差を制御するために、複数の赤用半波長板20が存在している。レーザ光がPPKTP18に入射する前後には、赤用半波長板20が設置されており、レーザ光と生成された光子対との間の位相差が制御される。
以上説明したように、第2実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、複数のリトロリフレクターを含み、複数のリトロリフレクターの各々は、PPKTP18を挟んで互いに対向する位置に配置されている。そして、光源から出力されたレーザ光が複数のリトロリフレクターによって反射され、レーザ光がPPKTP18を通過する毎に新たな光子対が生成される。これにより、光子対を増幅させるための系を閉じることなく、光子対を増幅させることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1又は第2実施形態と同様の構成及び同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、3のリトロリフレクターを備える点が第1及び第2実施形態と異なる。
第2実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、2つのリトロリフレクターを備えていたが、量子もつれ光子対増幅装置は、3つのリトロリフレクターによって構成されていてもよい。
図6に示されるように、第3実施形態の量子もつれ光子対増幅装置310は、レーザ光源11と、ダイクロックミラー12と、偏光ビームスプリッター14と、両波長用半波長板16と、PPKTP18と、複数の赤用半波長板20と、複数のリトロリフレクターである第1のリトロリフレクター224と、第2のリトロリフレクター225と、第3のリトロリフレクター226と、ミラー24と、時間波高変調器26とを備える。
図6に示されるように、第3実施形態の量子もつれ光子対増幅装置310は、複数のリトロリフレクターとして、第1のリトロリフレクター224と第2のリトロリフレクター225と第3のリトロリフレクター226とが備えられており、第1のリトロリフレクター224、第2のリトロリフレクター225、及び第3のリトロリフレクター226の光の反射によって、PPKTP18に対してレーザ光を複数回通過させることができ、複数の光子対を生成させことができる。
具体的には、図6に示されるように、両波長用半波長板16を通過したレーザ光L1は、PPKTP18を通過する際に、G1において光子対が生成される。次に、レーザ光L1は、PPKTP18に対する2回目の通過の際に、G2において光子対が生成される。次に、レーザ光L1は、PPKTP18に対する3回目の通過の際に、G3において光子対が生成される。そして、レーザ光L1は、PPKTP18に対する4回目の通過の際に、G4において光子対が生成される。
また、図6に示されるように、両波長用半波長板16を通過したレーザ光L2は、PPKTP18を通過する際に、G4において光子対が生成される。次に、レーザ光L2は、PPKTP18に対する2回目の通過の際に、G3において光子対が生成される。次に、レーザ光L2は、PPKTP18に対する3回目の通過の際に、G2において光子対が生成される。そして、レーザ光L2は、PPKTP18に対する4回目の通過の際に、G1において光子対が生成される。
なお、図6に示されるように、レーザ光と生成された光子対との間の位相差を制御するために、複数の赤用半波長板20が存在している。レーザ光がPPKTP18に入射する前後には、赤用半波長板20が設置されており、レーザ光と生成された光子対との間の位相差が制御される。
以上説明したように、第3実施形態の量子もつれ光子対増幅装置は、3つのリトロリフレクターを含み、3つのリトロリフレクターの各々は、PPKTP18を挟んで互いに対向する位置に配置されている。そして、光源から出力されたレーザ光が複数のリトロリフレクターによって反射され、レーザ光がPPKTP18を通過する毎に新たな光子対が生成される。これにより、光子対を増幅させるための系を閉じることなく、光子対を増幅させることができる。
[実施例]
次に、本実施形態に係る量子もつれ光子対増幅装置及び量子もつれ光子対増幅方法の実施例について説明する。本実施例では、図7に示される装置50を用いて、光子対の増幅を計測した。なお、図7に示される装置50は、1つのレーザ光による光子対の増幅に関する実験を行うための装置である。すなわち、装置50は、本実施形態における、時計回りの経路を辿る光及び反時計回りの経路を辿る光の何れか一方による光子対の増幅を確認するためのものである。図7に示される装置50の各光学素子は、以下の表に示される通りである。
図7に示されるレンズは、光強度を高めるために設置されている。また、図7に示される補償用結晶は、PPKTP18を通過した光の群速度のずれを補償するために設置されている。
図8に、図7の装置50によって得られた実験結果を示す。図8に示される結果は、リトロリフレクターとTypeIIのPPKTP18との間に設置される赤用HWPの煽り角θを制御した場合の、1秒当たりの光子対の数が示されている。赤用HWPの後ろに記載されている「45°」は、半波長板の回転角が45°に設定されていることを表す。この赤用HWPの煽り角θを様々な値に設定したときの光子対の数を計測することにより、図8の結果が得られる。
図8に示されるように、赤用HWPの煽り角θによって、光子対の数が変化していることがわかる。なお、レーザ光がPPKTP18を1回通過して生成される光子対の数は30[count/sec]である。本実験では、PPKTP18に対してレーザ光を2回通過させ、かつ2回目の通過の際には、既に生成された光子対とレーザ光との間の位相差θが制御される。図8に示されているように、PPKTP18に対してレーザ光を2回通過させた場合、光子対の数は、120[count/sec]程度まで増加していることがわかる。実際には、本実験においては、光子対が3.4±0.3に増幅された。これにより、入射されるレーザ光と該レーザ光から生成された光子対との間の位相差θを制御することにより、光子対を約4倍まで増幅させることが可能なことがわかる。
なお、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、本実施形態においては、光反射手段の一例としてリトロリフレクターを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光反射手段として、プリズム、又は一対のミラー等を用いるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、位相制御手段の一例として半波長板を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御手段として、半波長板に替えて、プリズムを用いても良い。
また、本実施形態においては、光子対生成手段の一例としてTypeIIのPPKTP18を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態において生成されるような光子対を発生することができるものであれば、非線形結晶はPPKTPに限定されるものではない。例えば、光子対生成手段としてType0(ゼロ)のPPKTP18を用いてもよい。
また、本実施形態では、TypeIIのPPKTPを用いて光子対を発生させているため、波長が異なる光子対が発生する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、TypeI又はType0と称される光子対の発生方法を用いて、|H>|H>又は|V>|V>というように、偏光が一致している光子対を発生した場合でも、増幅した量子もつれ光子対を無条件に発生させることができる。
10 量子もつれ光子対増幅装置
11 レーザ光源
12 ダイクロックミラー
14 偏光ビームスプリッター
16 両波長用半波長板
18 PPKTP
20 赤用半波長板
22,222,224,225,226 リトロリフレクター
24 ミラー
26 時間波高変調器
11 レーザ光源
12 ダイクロックミラー
14 偏光ビームスプリッター
16 両波長用半波長板
18 PPKTP
20 赤用半波長板
22,222,224,225,226 リトロリフレクター
24 ミラー
26 時間波高変調器
Claims (5)
- 光源と、
入射された光を2つの光へ分離する光分離手段と、
入射された光から、一対の量子もつれ光子対を生成する光子対生成手段と、
光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射する光反射手段と、
光の間の位相差を制御する位相制御手段と、
を備え、
前記光分離手段は、前記光源から出力された光を、第1の光と第2の光とへ分離し、
前記光子対生成手段は、第1の光から第1の量子もつれ光子対を生成し、第2の光から第2の量子もつれ光子対を生成し、
前記位相制御手段は、第1の光と第1の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、第2の光と第2の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、
前記光反射手段は、第1の光と第1の量子もつれ光子対及び第2の光と第2の量子もつれ光子対を、前記光子対生成手段へ向けて反射させ、
前記光子対生成手段は、前記光反射手段によって反射された第1の光から、第1の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成し、前記光反射手段によって反射された第2の光から、第2の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成する、
量子もつれ光子対増幅装置。 - 前記光反射手段は、複数の光反射手段を含み、
複数の前記光反射手段の各々は、前記光子対生成手段を挟んで互いに対向する位置に配置され、
前記光源から出力された光が複数の前記光反射手段によって反射され、前記光が前記光子対生成手段を通過する毎に新たな量子もつれ光子対が生成される、
請求項1に記載の量子もつれ光子対増幅装置。 - 前記光反射手段は、リトロリフレクター、プリズム、又は一対のミラーである、
請求項1又は請求項2に記載の量子もつれ光子対増幅装置。 - 前記光子対生成手段の光が入射される一辺の大きさは、前記光反射手段に入射される光の位置と前記光反射手段から出力される反射光の位置との間の距離よりも大きい、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の量子もつれ光子対増幅装置。 - 光源と、
入射された光を2つの光へ分離する光分離手段と、
入射された光から、一対の量子もつれ光子対を生成する光子対生成手段と、
光が入射された位置とは異なる位置から反射光を出力するように、入射された光を反射する光反射手段と、
光の間の位相差を制御する位相制御手段と、
を備えた量子もつれ光子対増幅装置における量子もつれ光子対増幅方法であって、
前記光分離手段が、前記光源から出力された光を、第1の光と第2の光とへ分離し、
前記光子対生成手段が、第1の光から第1の量子もつれ光子対を生成し、第2の光から第2の量子もつれ光子対を生成し、
前記位相制御手段が、第1の光と第1の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、第2の光と第2の量子もつれ光子対との間の位相差を制御し、
前記光反射手段が、第1の光と第1の量子もつれ光子対及び第2の光と第2の量子もつれ光子対を、前記光子対生成手段へ向けて反射させ、
前記光子対生成手段が、前記光反射手段によって反射された第1の光から、第1の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成し、前記光反射手段によって反射された第2の光から、第2の量子もつれ光子対と位相が異なる新たな量子もつれ光子対を生成する、
量子もつれ光子対増幅方法。
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