次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明に基づく除去方法は、有機溶剤の蒸気を含む気体を吸引するドライ式の真空ポンプに対して適用できるものであるが、以下では、有機溶剤の精製を行う精製システムにおいて、水と有機溶剤の混合液に対して膜脱気を行う脱気膜装置を減圧するために用いられる真空ポンプに対して本発明を適用した例を説明する。そこでまず、本発明の除去方法が適用される真空ポンプを備え、有機溶剤の精製を行う精製システムについて説明する。図1は、精製システム1の一例を示している。図中、CWは冷却水を、BR1,BR2はブラインを、STは高温蒸気を意味する。
図1に示す精製システム1によって精製可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類の他、大気圧(0.1013Mpa)での沸点が水の沸点(100℃)よりも高く、好ましくは大気圧下での沸点が浸透気化膜装置の一般的な運転温度である120℃であるかそれ以上である有機溶剤が挙げられる。このような有機溶剤の例を表1に示す。
以下では、有機溶剤がNMPであるとして、NMP水溶液を精製する場合を例に挙げて精製システム1を説明する。精製システム1は、NMP水溶液から微粒子、溶存酸素、イオン成分等を除去する第1のサブシステム100と、微粒子、溶存酸素、イオン成分等が除去されたNMP水溶液から浸透気化膜装置によって水分のほとんどを除去してNMP濃縮液を生成する第2のサブシステム200と、NMP濃縮液を蒸留してNMP精製液を生成する第3のサブシステム300と、を有している。以下、個々のサブシステムの構成を説明する。
(第1のサブシステム100)
第1のサブシステム100は、上述のようにして回収された処理対象のNMP水溶液を受け入れる受入部101を有している。NMP水溶液は、水スクラバーなどのNMP回収手段(図示せず)と接続された第1のNMP水溶液供給ラインL101によって、受入部101すなわち原液タンクに供給される。受入部101は複数の容器(第1〜第3の容器101a,101b,101c)を有し、これらの容器101a,101b,101cは精製システム1に供給されるNMP水溶液の原液の受け入れ、分析、移送などの目的に応じて切替え可能とされている。分析の結果問題がなければ、NMP水溶液は後段に移送されて精製処理を受け、精製処理に適さない場合は廃液槽(図示せず)に移送される。受入部101は第2のNMP水溶液供給ラインL102を介して、NMP水溶液に含まれる微粒子を除去する第1の精密ろ過膜装置102と接続されている。第2のNMP水溶液供給ラインL102上にはNMP水溶液を圧送するポンプ107が設けられている。第1の精密ろ過膜装置102は膜脱気装置103(後述)の上流に設けられているが、膜脱気装置103の下流、すなわち膜脱気装置103とイオン交換装置104(後述)との間に設けられてもよく、あるいは、膜脱気装置103の上流と、膜脱気装置103とイオン交換装置104との間の両方に設けられてもよい。
第1の精密ろ過膜装置102は第3のNMP水溶液供給ラインL103を介して、NMP水溶液の溶存酸素を除去する膜脱気装置103と接続されている。後述するように、NMP水溶液は浸透気化膜装置201に導入される前に120℃程度まで加熱される。120℃程度まで加熱されたNMP水溶液では、NMP水溶液中に含まれる溶存酸素が過酸化水素になり、この過酸化水素がNMPを酸化させ、劣化させる可能性がある。予めNMP水溶液中の溶存酸素を除去することによって、NMPの酸化を抑制することができる。溶存酸素の濃度を監視するため、膜脱気装置103の入口ラインL103と出口ラインL104には溶存酸素計(図示せず)が設けられている。また、膜脱気装置103の入口ラインL103には水分濃度計と比抵抗計(ともに図示せず)が設けられている。受入部101の下流のポンプ107と第1の精密ろ過膜装置102との間にはヒータ108が設けられている。ヒータ108には高温蒸気が供給され、高温蒸気によってNMP水溶液を加熱する。蒸気配管には高温蒸気の流量を調整する流量調整弁V103が設けられている。
膜脱気装置103の脱気膜は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などから形成することができる。NMPは一部の有機材料を溶解させる性質があるため、脱気膜はポリオレフィン、PTFEまたはPFAで形成することが好ましい。脱気膜は非多孔性であることが好ましい。中空糸状の脱気膜の内部を流れるNMP水溶液の溶存酸素が、真空ポンプ109によって負圧にされた脱気膜の外部に移動することによって、脱気、すなわち溶存酸素の除去が行われる。なお、脱気膜の外側(ガス透過側)に窒素ガス等の不活性ガスをスウィープして酸素分圧を下げてもよく、真空法とスウィープ法を併用してもよい。
膜脱気装置103は第4のNMP水溶液供給ラインL104を介して、NMP水溶液のイオン成分を除去するイオン交換装置104と接続されている。イオン交換装置104にはアニオン交換樹脂もしくはカチオン交換樹脂が単床で、または、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が混床もしくは複層床で充填されている。なお、イオン交換樹脂の種類は、ゲル型、MR型のいずれでもよい。イオン交換装置104は第5のNMP水溶液供給ラインL105を介して第2の精密ろ過膜装置105と接続されている。第2の精密ろ過膜装置105はイオン交換装置104から流出する可能性のある樹脂を捕捉し、樹脂の下流への流出を防止する。第2の精密ろ過膜装置105は第6のNMP水溶液供給ラインL106を介して、1次処理液槽106と接続されている。1次処理液槽106は、第1の精密ろ過膜装置102、膜脱気装置103、イオン交換装置104及び第2の精密ろ過膜装置105で処理されたNMP水溶液を受け入れ、受け入れたNMP水溶液を浸透気化膜装置201に供給する。以下、1次処理液槽106に貯留され、浸透気化膜装置201に供給されるNMP水溶液を1次処理液という場合がある。
イオン交換装置104の入口ラインL104と出口ラインL105には比抵抗計(図示せず)が設けられている。イオン交換装置104で処理されたNMP水溶液の比抵抗が所定の値より小さい場合、すなわちイオン成分が十分に除去されないときは、イオン交換装置104を通るループに沿ってNMP水溶液を循環させることができる。具体的には、第5のNMP水溶液供給ラインL105から分岐して受入部101に接続された戻りラインL107が設けられている。通常は第5のNMP水溶液供給ラインL105の弁V101が開けられ、戻りラインL107の弁V102が閉じられているが、NMP水溶液の比抵抗が所定の値より小さい場合は第5のNMP水溶液供給ラインL105の弁V101を閉じ、戻りラインL107の弁V102を開く。これによって、受入部101、第1の精密ろ過膜装置102、膜脱気装置103、イオン交換装置104を通る循環ループが形成される。NMP水溶液がこの循環ループに沿って流れることで、NMP水溶液に含まれるイオン成分が十分に除去される。
なお、前述の膜脱気装置103で処理されたNMP水溶液の溶存酸素が所定の値より大きい場合、すなわち溶存酸素が十分に除去されないときも、前述のイオン交換装置104を通るループに沿ってNMP水溶液を循環させることができる。これにより、NMP水溶液に含まれる溶存酸素も十分に除去される。
(第2のサブシステム200)
微粒子と溶存酸素とイオン成分が除去され1次処理液槽106に貯蔵された1次処理液は次に第2のサブシステム200に供給され、ほとんどの水分が除去されたNMP濃縮液が生成される。1次処理液槽106は第7のNMP水溶液供給ラインL201を介して、浸透気化膜装置201に接続されている。第7のNMP水溶液供給ラインL201にはポンプ224と弁V201が設けられている。第7のNMP水溶液供給ラインL201には外部蒸気を用いた第1のヒータ205と、第1のヒータ205の上流(一次側)に位置する廃熱回収熱交換器206と、が設置されており、これらの第1のヒータ205及び廃熱回収熱交換器206によってNMP水溶液は120℃程度まで加熱される。浸透気化膜装置201に供給されるNMP水溶液を120℃程度まで加熱することで、浸透気化膜装置201の脱水性能を高めることができる。廃熱回収熱交換器206は、第7のNMP水溶液供給ラインL201を流れるNMP水溶液と、NMP濃縮液排出ラインL204を流れるNMP濃縮液との間で熱交換を行う。第1のヒータ205は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を加熱する。第1のヒータ205の蒸気供給ラインには蒸気供給量を調整するための弁V202が設けられている。第1のヒータ205の下流には温度警報表示器223が設けられている。温度警報表示器223で検出された温度に基づき弁V202の開度が調整され、NMP水溶液の温度が120℃程度に制御される。第7のNMP水溶液供給ラインL201の廃熱回収熱交換器206の上流には流量警報表示器225が設けられている。流量警報表示器225で検出された流量に基づき弁V201の開度が調整され、NMP水溶液の流量が所定の範囲内に制御される。
浸透気化膜装置201は直列に接続された複数の浸透気化膜モジュール202〜204を有している。本実施形態では3台の浸透気化膜モジュール、すなわち上流から下流に向けて第1の浸透気化膜モジュール202、第2の浸透気化膜モジュール203、第3の浸透気化膜モジュール204が直列に接続されているが、台数は3台に限定されない。第1の浸透気化膜モジュール202は第1の接続ラインL202を介して第2の浸透気化膜モジュール203に接続されている。第2の浸透気化膜モジュール203は第2の接続ラインL203を介して第3の浸透気化膜モジュール204に接続されている。第1〜第3の浸透気化膜装置202,203,204は分離膜(浸透気化膜)202c、203c、204cによって、上流側の濃縮室202a,203a,204aと下流側の透過室202b,203b,204bとに区画されている。分離膜202c,203c,204cは水に対する親和性を有しているため、水をNMPよりも大きな透過速度で分離膜202c,203c,204cを透過させる。透過室202b,203b,204b側を負圧とすることで、透過速度の大きい水が透過速度の小さい少量のNMPともに蒸気(気相)の形態で透過室202b,203b,204bに移動し、ほとんどのNMPは濃縮室202a,203a,204aに残存する。この原理を用いてNMP水溶液から水分の一部が除去され、NMP水溶液の濃縮液が生成される。第3の浸透気化膜モジュール204の出口では、NMP濃度が99.99%程度まで高められたNMP濃縮液(水分は0.01%未満)が得られる。
NMP水溶液は第1〜第3の浸透気化膜モジュール202,203,204を順次流通し、徐々にNMP水溶液中の水分が除去される。水分の除去効率を維持するため、第1の接続ラインL202と第2の接続ラインL203にはそれぞれ、第2のヒータ207と第3のヒータ208が設けられている。第2及び第3のヒータ207,208は第1のヒータ205と同様、熱交換器であり、外部の蒸気源から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を120℃程度まで加熱する。第2及び第3のヒータ207,208の蒸気供給ラインにはそれぞれ、蒸気供給量を調整するための弁V203,V204が設けられている。第3の浸透気化膜モジュール204から排出されたNMP濃縮水はNMP濃縮液排出ラインL204を通って第3のサブシステム300の中継槽301に供給される。上述のように、NMP濃縮液排出ラインL204を流れるNMP濃縮液は、廃熱回収式熱交換器206によって、第7のNMP水溶液供給ラインL201を流れるNMP水溶液との間で熱交換を行い、NMP水溶液を予熱する。
NMP濃縮液排出ラインL204から分岐して1次処理液槽106に接続されるNMP濃縮液の戻りラインL215が設けられている。通常はNMP濃縮液排出ラインL204の弁V205が開かれ、戻りラインL215の弁V206が閉じられ、NMP濃縮液は中継槽301に供給される。一方、中継槽301にNMP濃縮液を供給できない場合などは弁V205が閉じられ、弁V206が開かれて、NMP濃縮液が1次処理液槽106に戻される。なお、NMP濃縮液を1次処理液槽106に返送する場合は、戻りラインL215に設けられた冷却器226によって、NMP濃縮液の温度がNMP水溶液(1次処理液)の温度と同程度になるように冷却水により冷却する。
第1〜第3の浸透気化膜モジュール202,203,204の透過室202b,203b,204bはそれぞれ第1〜第3の透過液排出ラインL206,L209,L212によって第1〜第3の透過液タンク214,215,216に接続されている。第1〜第3の透過液タンク214,215,216の上部には、透過室202b,203b,204bに負圧を印加し、透過室202b,203b,204bの内部を負圧に維持可能な第1〜第3の真空ポンプ217,218,219が設けられている。気相の水と少量のNMPは冷却水またはブラインによって凝縮され、透過液となって第1〜第3の透過液タンク214,215,216の底部に収集される。第1〜第3の透過液タンク214,215,216は透過液を一時的に貯蔵することができる。具体的には、冷却水CW及びブラインBR1,BR2はそれぞれ、第1〜第3の透過液タンク214,215,216の周囲を覆う冷却ジャケット(図示せず)を流れて気相の水及びNMPを保冷し、さらに冷却ラインL207,L210、L213を通って、第1〜第3の透過液排出ラインL206,L209,L212に設けられた第1〜第3の熱交換器211,212,213に供給され、気相の水及びNMPを凝縮する。ブラインBR1,BR2の温度は0〜−20℃程度が好ましい。
第1〜第3の熱交換器211,212,213はそれぞれ、第1〜第3の透過液排出ラインL206,L209,L212を介して第1〜第3の浸透気化膜モジュール202,203,204の透過室202b,203b,204bと連通している。第1〜第3の熱交換器211,212,213は、透過室202b,203b,204bに透過した透過蒸気を冷却し、凝縮して、透過液を生成する冷却器である。透過室202b,203b,204bは第1〜第3の熱交換器211,212,213の下流で第1〜第3の透過液タンク214,215,216と連通している。
第1〜第3の透過液タンク214,215,216の底部にはそれぞれ第1〜第3の透過水排出ラインL208,L211,L214が接続されている。第1〜第3の透過液タンク214,215,216の上部にはそれぞれ、後述する不活性ガス供給母管L401から分岐した不活性ガス供給ラインL406A,406B,406Cが接続されている。凝縮された水と少量のNMPは第1〜第3の透過液タンク214,215,216に一時的に貯蔵され、不活性ガス供給ラインL406A,406B,406Cから供給される不活性ガスで第1〜第3の透過液タンク214,215,216の内部を加圧することによって、第1〜第3の透過液タンク214,215,216から排出される。第1の透過液タンク214から排出された透過水は廃液槽に排出され、第2〜第3の透過液タンク215,216から排出された透過水は後述するように再利用される。
第1の透過液タンク214に収集された気相の水と少量のNMPを冷却した冷却水CWは第1の冷却水排出ラインL220に排出される。第1の冷却水排出ラインL220を流れる冷却水の一部は、第1の冷却水排出ラインL220から分岐した冷却水排出ラインL221を通って、第2の透過水排出ラインL211に設けられた熱交換器220に供給され、第2の透過水排出ラインL211を流れるNMPを含む透過水を加熱する。冷却水の残りは、第3の透過水排出ラインL214に設けられた熱交換器221に供給され、第3の透過水排出ラインL214を流れるNMPを含む透過水を加熱する。第2及び第3の透過水排出ラインL211,L214の熱交換器220,221の下流には水分濃度、流量などを計測する計測器222,223が設けられている。
最上流の浸透気化膜モジュール、すなわち第1の浸透気化膜モジュール202はCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなる浸透気化膜202cを有している。最上流の浸透気化膜モジュール以外の浸透気化膜モジュール、すなわち第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204はA型ゼオライトからなる浸透気化膜203c,204cを有している。A型ゼオライトは、比較的安価で脱水性能が高いものの、水分濃度が高いNMP水溶液を処理する場合に、リークや性能低下が生じやすい。これに対し、A型以外のゼオライトは上述の環境でより長期間性能を保持することができる。このため、10〜20重量%の水を含有するNMP水溶液を処理する第1の浸透気化膜モジュール202の浸透気化膜202cはCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトを用い、水分含有量の少ないNMP水溶液を処理する第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の浸透気化膜203c,204cはA型ゼオライトを用いている。なお、第1の浸透気化膜モジュール202を構成する複数の浸透気化膜のすべてがCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなっている必要はなく、一部の膜がA型ゼオライトからなっていてもよい。
第3の透過液排出ラインL212には冷却器209とメカニカルブースターポンプ210が設けられている。冷却器209は第3の浸透気化膜モジュール204から排出された透過液を予冷する。メカニカルブースターポンプ210および冷却器209は第3の浸透気化膜モジュール204の透過室204bに大きな負圧を印加するために設けられている。第3の浸透気化膜モジュール204に供給されるNMP水溶液の水分含有量は非常に少ないため、第3の真空ポンプ219に加えてメカニカルブースターポンプ210で十分な負圧を印加することで、水をNMP水溶液から効率的に分離することができる。冷却器209及びメカニカルブースターポンプ210は省略することができる。また、冷却器209とメカニカルブースターポンプ210との間に、冷却器209で凝縮された透過水を貯留するためのポッド(図示せず)を設けることもできる。
第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の透過液は浸透気化膜装置201の上流側に回収される。具体的には第2及び第3の透過液排出ラインL211,L214は透過液回収ラインL205に接続され、透過液回収ラインL205は1次処理液槽106に接続されている。第2及び第3の透過液排出ラインL211,L214から排出される透過液は第1の透過液排出ラインL208から排出される透過液と比べNMPの含有量が高いため、これを回収することで、NMPの回収率を高めることができる。透過液が回収される浸透気化膜モジュールは第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204に限定されず、少なくとも最下流の浸透気化膜モジュール(第3の浸透気化膜モジュール204)の透過液が浸透気化膜装置201の上流側に回収されればよい。透過液は受入部101に回収してもよく、透過液回収ラインL205に分岐ライン(図示せず)を設けることによって、1次処理液槽106と受入部101とに選択的に回収してもよい。
(第3のサブシステム300)
第2のサブシステム200で生成されたNMP濃縮液は、ほとんどの水分が除去されている。しかし、NMP濃縮液は色度成分や浸透気化膜モジュールから溶出した浸透気化膜202c,203c,204cの微粒子およびイオン成分をわずかに含むため、さらに浸透気化膜装置201の下流に位置する第3のサブシステム300で蒸留されてNMP精製液が生成される。第3のサブシステム300はNMP濃縮液を蒸留し凝縮することによってNMPの精製液を生成することから、NMP濃縮液の蒸留精製装置として機能する。なお、以下に述べる第3のサブシステム300は単蒸留方式を用いているが、NMP濃縮液を蒸留することが可能な限り蒸留方法は限定されない。例えば、精密蒸留方式を用いることもできる。ただし、エネルギー消費が少ないこと、装置サイズが小さいこと、操作が簡単であることなどの理由から単蒸留方式が好ましい。また、単蒸留方式の中でも、本実施形態で用いている減圧単蒸留方式は熱劣化を防止できる観点から特に望ましい。
前述のように、NMP濃縮液は一旦中継槽301に貯留される。第3のサブシステム300は第2のサブシステム200から独立したサブシステムであり、例えば、第2のサブシステム200の運転中に第3のサブシステム300の運転を一時的に停止するといった運用がなされることがある。このため、中継槽301を設けることで、第2のサブシステム200と第3のサブシステム300を、互いの独立性を維持しながらより弾力的に運用することが可能となる。中継槽301は第1のNMP濃縮液供給ラインL301を介して再生器302に接続されている。第1のNMP濃縮液供給ラインL301にはポンプ306と弁V301が設けられている。再生器302は熱交換器であり、後述する蒸発缶303で蒸発したNMP濃縮液(以下、NMP精製ガスという)との間で熱交換を行う。これによって、蒸発缶303の熱負荷を低減することができる。再生器302は第2のNMP濃縮液供給ラインL302を介して蒸発缶303に接続されている。蒸発缶303は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP濃縮液を加熱し蒸発させる。蒸発缶303の蒸気供給ラインには蒸気供給量を調整するための弁V302が設けられている。蒸発缶303の底部には高温の液相のNMP濃縮液が滞留し、その上部に微粒子が除去された気相のNMP精製ガスが形成される。液相のNMP濃縮液に含まれる色度成分も蒸発しにくいため、蒸発缶303の底部に蓄積される。なお、本実施形態における蒸発缶303としては、液膜流下式の蒸発缶を例に挙げて以下に説明するが、液膜流下式以外の蒸発缶、例えばフラッシュ式、カランドリア式などの蒸発缶を用いてもよい。蒸発缶303の底部と頂部には循環ラインL303が接続されており、蒸発缶303を含む循環経路が循環ラインL303によって形成されている。循環経路上では、液相のNMP濃縮液を取り出して蒸発缶303に戻し、液膜流下にて再度加熱するサイクルが繰り返される。蒸気取り出し缶304(後述)の底部には、循環ラインL303と合流するNMP濃縮液取り出しラインL306が設けられている。蒸気取り出し缶304の底部に滞留するNMP濃縮液も、NMP濃縮液取り出しラインL306と循環ラインL303を通って蒸発缶303に戻され、再度加熱される。循環ラインL303には循環ポンプ307と弁V303が設けられている。循環ラインL303からは、弁V304が設けられたNMP濃縮液の不純物排出ラインL309が分岐している。
蒸発缶303のNMP精製ガスは蒸発缶303の気相部から取り出され、第1のNMP精製ガス取り出しラインL304によって蒸気取り出し缶304に取り出される。蒸気取り出し缶304は第2のNMP精製ガス取り出しラインL305を介して再生器302と接続されている。NMP精製ガスの熱は再生器302で液相のNMP濃縮液と熱交換される。再生器302を出たNMP精製ガスはさらに第3のNMP精製ガス取り出しラインL307によってコンデンサ305に導入され、冷却水CWによって凝縮されてNMP精製液となる。コンデンサ305の内部では底部にNMP精製液が貯留され、その上はNMP精製ガスからなる気相部となっている。コンデンサ305の気相部は、負圧ラインL310によって真空ポンプ309と連通しており、コンデンサ305の気相部は真空ポンプ309によって負圧にされる。蒸発缶303を含む第3のサブシステム300の気相部も真空ポンプ309によって負圧にされ、蒸発缶303において減圧蒸発が行われる。これによって、NMP濃縮液の蒸発が促進される。負圧ラインL310のコンデンサ305と真空ポンプ309との間にはガスクーラ310が設けられ、コンデンサ305から真空ポンプ309に排出される、NMP精製ガスを含む気体が冷却される。コンデンサ305の冷却水はコンデンサ305と接続された冷却水排水ラインL311に排出される。冷却水排水ラインL311には熱交換器311が設けられており、不純物排出ラインL309を流れるNMP濃縮液が、排出される前に熱交換器311で冷却される。
コンデンサ305の出口にはNMP精製液取り出し配管L308が接続されている。NMP精製液は、NMP精製液取り出し配管L308に設けられたポンプ308によって、払出し部311に送られる。払出し部311は受入部101と同様、複数の容器(第1〜第3の容器311a,311b,311c)を有し、これらの容器311a,311b,311cは精製システム1から払い出されるNMP精製液の受け入れ、分析、移送などの目的に応じて切替え可能とされている。分析の結果問題がなければ、NMP精製液は排出ラインL312を通ってリチウムイオン二次電池の製造システムに移送され、当該製造システムで再利用される。問題がある場合は、NMP精製液は廃液槽(図示せず)に移送される。
(不活性ガス供給手段)
本実施形態の精製システム1はさらに、容器の気相部を不活性ガスで充填する不活性ガス供給手段を備えている。上述のように、浸透気化膜装置201の上流及び下流にはNMP水溶液、NMP濃縮液またはNMP精製液が貯留される様々な容器が設けられている。これらの容器のいくつかは、内部にNMP水溶液、NMP濃縮液またはNMP精製液と、気相部との界面が形成される。この条件を満たす容器として以下が挙げられる。
(1)NMP水溶液の受入部101の第1〜第3の容器101a,101b,101c
(2)1次処理液槽106
(3)中継槽301
(4)再生器302
(5)蒸発缶303
(6)蒸気取り出し缶304
(7)コンデンサ305
(8)NMP精製液の払出し部311の第1〜第3の容器311a,311b,311c
従来の容器(不活性ガス供給手段に関する以下の記載では、容器は容器101a,101b,101c,106,301〜305,311a,311b,311cを意味する)の気相部は空気で形成されていた。しかし、発明者はこれらの容器に空気が充填されている場合、NMPが気相部の空気と結合して、NMPの過酸化物(NMP−O−O−H;5−ハイドロパーオキソ−1−メチル−2−ピロリドン)が生成されることを見出した。NMPの過酸化物は蓄積されると爆発の可能性がある。そこで、本実施形態ではこれらの容器に不活性ガス供給手段を設けている。不活性ガスとしては窒素ガスが好ましく、アルゴンガスを用いることもできる。不活性ガス供給手段は以下に述べる不活性ガス供給母管L401と、母管L401から分岐し各容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインと、各不活性ガス供給ライン上に設置されたガスシールユニット、とから構成される。
具体的には不活性ガスの供給源(図示せず)に不活性ガス供給母管L401が接続され、不活性ガス供給母管L401と受入部101、1次処理液槽106、中継槽301、払出し部311がそれぞれ不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407で接続されている。不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407は容器の頂部に接続されている。不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407にはそれぞれガスシールユニットU402,U403,U404,U405が設けられている。さらに、コンデンサ305(より正確にはガスクーラ310)と真空ポンプ309との間の負圧ラインL310にスウィープ用の不活性ガス供給ラインL405が接続されている。不活性ガスは不活性ガス供給ラインL405からコンデンサ305に供給され、さらにラインL307,L302,L304,L305を通って再生器302、蒸発缶303及び蒸気取り出し缶304にも不活性ガスが供給される。図示は省略するが、再生器302、蒸発缶303、蒸気取り出し缶304にも、同様の真空ポンプとスウィープ用の不活性ガス供給ラインを設けることができる。
不活性ガスは精製システム1が最初に稼動する際に容器に充填される。このとき、容器の内部は空気で満たされているため、ガスシールユニットU402,U403,U404,U405を通して不活性ガスを容器に送り込み、容器の内部の空気を強制的に不活性ガスに置換する。ガスシールユニットU402,U403,U404,U405は、下流側の容器の圧力が低下すると自動的に開き、不活性ガスを容器に充填するようにされている。従って、容器内のNMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液の量が低下すると容器の圧力が下がり、ガスシールユニットU402,U403,U404,U405を介して不活性ガスが容器に補充される。他のガスシールユニットについても同様である。
容器に不活性ガスを充填することで、NMP過酸化物の爆発の可能性を低減できるだけでなく、容器内のNMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液に溶け込む水分量および溶存酸素量を抑えることができる。この結果、浸透気化膜モジュールの負荷を軽減することができる。また、容器内に酸素がほとんど存在しないため、NMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液の酸化を防止する効果も得られる。
次に、図1に示す精製システム1の真空ポンプ109に対して本発明の実施の一形態の凝縮液の除去方法を適用することについて説明する。図2は、図1に示す精製システム1における膜脱気装置103とその周辺の構成を詳しく示しており、図3は、同じく真空ポンプ109とその周辺の構成を詳しく示している。図2と図3は、全体として1枚の図面となるように連続して描かれており、図において数字の「1」または「2」が記載された円のシンボルは、そのシンボルの位置で図2及び図3が接続することを示している。
図1においては1つの膜脱気装置103しか描かれていないが、実際には、図2に示すように、2つの膜脱気装置103A,103Bが接続配管520を介して直列に接続している。各膜脱気装置103A,103Bは、窒素ガスなどの不活性ガスでスウィープしながら液体の脱気を行うことができるように構成されている。以下では、スウィープガスとして窒素ガスを用いることとして説明を行う。もっともスウィープガスとしては、有機溶剤に対する反応性が小さいガスであれば他のガスを使用することもでき、例えばアルゴンガスを使用することもできる。図において、膜脱気装置103A,103Bにおける破線は脱気膜を表しており、破線で挟まれた領域が液体側すなわち液体の通路であって、破線の外側の領域が気体側(ガス透過側)となっている。図1においては、受入部101すなわち原液タンクにNMP水溶液を戻すためのラインとして、イオン交換装置104からの戻りラインL107しか描かれていないが、ここで示す例では、受入部101に接続する2つの戻りラインL107A,L107Bも設けられている。
最初に、図2を用いて、膜脱気装置103A,103Bとその周辺における、主として液体が流れる部分に関連した構成を説明する。第1の膜脱気装置103Aには、その底部に設けられた液体入口に対して入口配管511が接続し、頂部に設けられた液体出口に対して出口配管514が接続する。第1の精密ろ過膜装置102からNMP水溶液が供給される第3のNMP水溶液供給ラインL103は、弁501、配管505及び拡大管512をこの順で介して入口配管511に接続している。配管505には、第1の膜脱気装置103Aに供給されるNMP水溶液の圧力を計測するために、弁506を介して圧力センサ507が接続し、さらに、弁508を介してサンプリングポイントSが接続する。第1の膜脱気装置103Aの出口配管514は、拡大管517を介して上述した接続配管520の一端が接続するとともに、大気連通弁515が接続している。
同様に第2の膜脱気装置103Bには、その底部に設けられた液体入口に対して入口配管521が接続し、頂部に設けられた液体出口対して出口配管524が接続する。接続配管520の他端は、拡大管522を介して入口配管521に接続している。出口配管524には、拡大管527を介して配管530の一端が接続するとともに、大気連通弁525が接続している。配管530の他端は、弁531を介し、イオン交換装置104に対して膜脱気処理後のNMP水溶液を供給する第4のNMP水溶液供給ラインL104に接続している。配管530には、第2の膜脱気装置103Aから排出されるNMP水溶液の圧力を計測するために、弁534を介して圧力センサ535が接続し、さらに、弁536を介してサンプリングポイントSが接続する。
膜脱気装置103A,103B内の液体を排出するための排出配管502が設けられており、第1の膜脱気装置103Aの入口配管511は弁513を介して排出配管502に接続し、第2の膜脱気装置103Bの入口配管521は弁523を介して排出配管502に接続している。排出配管502内の液体を外部に排出するためのドレン弁503が設けられている。さらに排出配管502は、弁504を介して戻りラインL107Aに接続する。第2の膜脱気装置103Bから出口配管524を介して排出される液体を必要に応じて排出配管502に流すために、配管530と排出配管502との間に弁532が設けられている。さらに、膜脱気装置103A,103Bを介することなく第3のNMP水溶液供給ラインL103からのNMP水溶液を第4のNMP水溶液供給ラインL104に流すために、バイパス配管509が設けられ、バイパス配管509にはバイパス弁510が設けられている。
第1の膜脱気装置103Aに供給されるNMP水溶液の溶存酸素濃度を計測してアラームを発生するために、第3のNMP水溶液供給ラインL103から分岐する配管541が設けられ、配管541には、第3のNMP水溶液供給ラインL103の側から、弁542、リーク弁543、電磁弁544、溶存酸素警報センサ545が設けられ、この配管541は逆止弁546を介して戻りラインL107Bに接続する。同様に、第2の膜脱気装置103Aから排出されるNMP水溶液の溶存酸素濃度を計測してアラームを発生するために、配管530から分岐する配管551が設けられ、配管551には、配管530の側から、弁552、リーク弁553、電磁弁554、溶存酸素警報センサ555が設けられ、この配管551は逆止弁556を介して戻りラインL107Bに接続する。
次に、膜脱気装置103A,103Bとその周辺における、気体の流れに関連した構成を説明する。膜脱気装置103A,103Bの底部には、その気体側を排気するための排気出口が設けられており、これらの排気出口は、後述する真空ポンプ109によって排気される排気ライン500に接続している。本実施形態では、上述したように膜脱気装置103A,103Bでは窒素ガスによってスウィープしながら膜脱気を行う。このため、不活性ガス供給母管L401が引き込まれており、不活性ガス供給母管L401に対して弁560の入口が接続し、弁560の出口には、電磁弁562を介して配管561が接続するとともに、配管563も接続している。配管561は、スウィープのために膜脱気装置103A,103Bに窒素ガスを供給するための配管である。配管561と第1の膜脱気装置103Aのスウィープガスの入口との間には、配管561の側から、流量センサ566、圧力調整弁567及び絞り弁568がこの順で設けられている。同様に、配管561と第2の膜脱気装置103Bのスウィープガスの入口との間には、配管561の側から、流量センサ571、圧力調整弁572及び絞り弁573がこの順で設けられている。配管563は、膜脱気装置103A,103Bの液体側に残存する液体を窒素ガスによって押し出して除去するために設けられた配管であり、第1の膜脱気装置103Aの出口配管514に対して弁516を介して接続するとともに、第2の膜脱気装置103Bの出口配管524に対して弁526を介して接続する。
次に、真空ポンプ109とその周辺の構成について、図3を用いて説明する。真空ポンプ109としては、ドライ式真空ポンプが用いられる。本実施形態の場合、膜脱気装置103A,103Bは、有機溶剤を含む液体であるNMP水溶液の膜脱気を行うので、膜脱気装置103A,103Bから排気ライン500を介して真空ポンプ109の側に流れてくる気体には有機溶剤の蒸気が含まれる。そしてこの気体から有機溶剤が凝縮して凝縮液となり、凝縮液が真空ポンプ109に流入すると、ドライ式真空ポンプである真空ポンプ109の故障の原因となる。そこで本実施形態では、真空ポンプ109の一次側(流入側)に、凝縮液を捕捉して一時的に貯留するドレンポット611を設けている。また、真空ポンプ109の二次側(排気側)では、排気が大気圧に圧縮されることによって有機溶剤の沸点が上昇し、排気に含まれる有機溶剤が急激に凝縮するので、真空ポンプ109の二次側にも同様にドレンポット651を設けている。ドレンポット611,651に貯留できる凝縮液の量は限られているので、本実施形態では、ドレンポット611,651内の凝縮液を自動的に排出できるようにして、ドレンポット611,651から凝縮液があふれ出さないようにしている。
排気ライン500は、電磁弁613を介して第1のドレンポット611すなわちポンプ一次側のドレンポットの入口に接続している。ドレンポット611は例えば円筒形のものであり、その入口は、円筒としての側面に設けられている。第1のドレンポット611には、その内部の凝縮液のレベルを監視してアラームを出力するレベル警報センサ612が付属している。第1のドレンポット611の底部には、凝縮液を排出するためのドレン管615が接続し、頂部にはそのドレンポットにおいて気液分離された気体を排出するためのベント管614が接続する。排気ライン500には、真空度を監視してアラームを発生する真空度警報センサ602が、弁601を介して接続している。第1のドレンポット611のベント管614は、電磁弁623を介して、真空ポンプ109の一次側すなわち吸気口に接続している。真空ポンプ109の一次側には、弁626と電磁弁627とが直列に設けられている大気連通管625が接続し、絞り弁628を介してリーク弁629が接続し、弁630を介して圧力センサ631も接続している。
真空ポンプ109の二次側すなわち排気口には、サイレンサ640が設けられ、真空ポンプ109の排気は、サイレンサ640に接続する配管641を介して外部に排出されるようになっている。図3では示していないが、排気にも有機溶剤の蒸気が含まれ得るので、外部に排出する際には適切な排気処理を行うようにする。配管641には、サイレンサ640の側から拡大管642及び弁643がこの順で設けられている。真空ポンプ109の排気が大気圧に圧縮されることによって発生する凝縮液を第2のドレンポット651に導くために、サイレンサ640と第2のドレンポット651の入口との間を接続する配管644が設けられている。配管644には、弁645と電磁弁653が設けられている。第2のドレンポット651も、円筒形状のものであって、その入口は円筒としての側面に設けられている。第2のドレインポット651には、その内部の凝縮液のレベルを監視してアラームを出力するレベル警報センサ652が付属するとともに、その底部には、凝縮液を排出するためのドレン管655が接続する。
ドレンポット611,651内の凝縮液は、基本的には水分を含む有機溶剤(ここではNMP)であり、凝縮液をドレインポット611,651から排出する際に作業員などが接触することは好ましくなく、また、そのまま環境中に放出することも好ましくない。そこでドレンポット611,651内から排出した凝縮液を、NMP水溶液として、受入部101すなわち原液タンクに回収することとする。また、ドレインポット611,651からの凝縮液の排出は、窒素ガスをドレインポット611,651に導入して凝縮液を押し出すことによって行うこととする。そのため、不活性ガス供給母管L401が引き込まれており、不活性ガス供給母管L401は、弁666及び圧力調整弁667を介して配管670に接続している。配管670と第1のドレンポット611のベント管614とは、直列接続された絞り弁671、電磁弁672及び弁673を介して接続している。同様に、配管670と第2のドレンポット651の頂部に接続する配管654とは、直列接続された絞り弁674及び電磁弁675を介して接続している。
第1のドレンポット611のドレン管615は、ドレン弁616が接続されるともに、配管617を介して戻りラインL107Bに接続している。配管617には、第1のドレンポット611の側から、弁618、電磁弁619及び逆止弁620がこの順で設けられている。同様に第2のドレンポット651のドレン管655は、ドレン弁656が接続されるともに、配管657を介して戻りラインL107Bに接続している。配管657には、第2のドレンポット651の側から、弁658、電磁弁659及び逆止弁660がこの順で設けられている。さらに、レベル警報センサ612,652の出力に基づいて電磁弁613,619,623,653,659,672,675の開閉を制御するために、制御装置690が設けられている。
次に、本実施形態における膜脱気について説明する。第3のNMP水溶液供給ラインL103を介して供給されたNMP水溶液の脱気を行うときは、弁510,513,515,516,523,525,526,532を閉じ、弁501,531を開けて、第3のNMP水溶液供給ラインL103から配管505、第1の膜脱気装置103A、接続配管520、第2の膜脱気装置103B及び配管530を経て第4のNMP水溶液供給ラインL104にNMP水溶液が流れるようにする。不活性ガス供給母管L401に接続する弁560が開けられているとして、真空ポンプ109を動作させて排気ライン500を介して膜脱気装置103A,103Bの気体側を減圧し、それと同時に電磁弁562を開けて膜脱気装置103A,103Bの気体側にスウィープガスとして窒素ガスを流す。これにより、膜脱気装置103A,103Bを通過する際にNMP水溶液は脱気され、脱気処理後のNMP水溶液が第4のNMP水溶液供給ラインL104に供給されることになる。このとき、真空ポンプ109の周囲では、弁616,656は閉じられて弁643,645,656は開けられており、制御装置690によって、電磁弁613,623,653は開に制御され、電磁弁619,659,672,675は閉に制御されている。不活性ガス供給母管L401からの窒素ガスの経路にある弁666,673や、配管617,657に設けられる弁618,658、大気連通管625に設けられる弁626も開いている。図2及び図3において、膜脱気処理を行っているときのNMP水溶液の流れは実線の矢印で示され、気体の流れは破線の矢印で表されている。
次に、各ドレンポット611,651での凝縮液の自動排出について説明する。真空ポンプ109を動作させて膜脱気装置103A,103Bにおいて膜脱気処理を行っていると、ドレンポット611,651内に凝縮液が次第に溜まってくる。第1のドレンポット611内の凝縮液のレベルが所定の第1の上限値を超え、レベル警報センサ612からアラームが出力されたとする。このアラームは制御装置690によって受け付けられる。制御装置690は、第1のドレンポット611のレベル警報センサ612からのアラームを受け付けると、電磁弁613,623を閉じ、電磁弁619,627,672を開ける制御を行う。その結果、第1のドレンポット611は、排気ライン500からも真空ポンプ109からも切り離される。そして不活性ガス供給母管L401から窒素ガスがベント管614を経て第1のドレンポット611に導入される。この窒素ガスによって、第1のドレンポット611内の凝縮液が押し出され、凝縮液はドレン管615から配管617を介して戻りラインL107Bへと流れる。凝縮液は、戻りラインL107Bを経てNMP水溶液の受入部101すなわち原液タンクに回収されることになる。
第1のドレンポット611内の凝縮液の回収動作に要する時間は短時間であるので、膜脱気装置103A,103BにおいてはNMP水溶液を流し続けていてもよい。真空ポンプ109も動作をし続けているが、真空ポンプ109は、大気連通管625を介して大気を吸気することになる。第1のドレンポット611内の凝縮液のレベルが所定の下限値を下回ったことをレベル警報センサ612が検出すると、制御装置690は、電磁弁613,623を開け、電磁弁619,627,672を閉じる制御を行う。その結果、真空ポンプ109が排気ライン500を介して膜脱気装置103A,103Bの気体側を減圧するという、最初の動作に戻る。
第2のドレンポット651内の凝縮液のレベルが所定の第2の上限値を超え、レベル警報センサ652からアラームが出力されたと、このアラームを受け付けた制御装置690は、電磁弁653を閉じ、電磁弁659,675を開ける制御を行う。その結果、第2のドレンポット651は真空ポンプ109の排気側から切り離され、その代わり、第2のドレンポット651の上部に設けられた配管654を介して第2のドレンポット651内に窒素ガスが導入されることになる。この窒素ガスによって、第2のドレンポット651内の凝縮液が押し出され、凝縮液は、ドレン管655から配管657を介して戻りラインL107Bへと流れ、NMP水溶液の受入部101すなわち原液タンクに回収される。
第2のドレンポット651の凝縮液の回収動作を行っているとき、真空ポンプ109は排気ライン500を介して膜脱気装置103A,103Bの気体側を減圧し続けている。第2のドレンポット651は真空ポンプ109から切り離されており、サイレンサ640内では凝縮液が発生するが、第2のドレンポット651の凝縮液の回収動作に要する時間は短時間であってこの時間中に発生する凝縮液の量はわずかであり、回収動作の終了後に第2のドレンポット651に流入するので、この凝縮液の発生によって問題が生じることはない。第2のドレンポット651内の凝縮液のレベルが所定の下限値を下回ったことをレベル警報センサ652が検出すると、制御装置690は、電磁弁653を開け、電磁弁659,675を閉じる制御を行う。その結果、真空ポンプ109の二次側で発生した凝縮液が第2のドレンポット651に流れて貯えられるという、最初の動作に戻る。
図3において、一点鎖線で表す矢印は、凝縮液の回収動作を行っているときの窒素ガスの流れを示し、二重線で表す矢印は、ドレンポット611,651から押し出されて受入部101すなわち原液タンクに回収される凝縮液の流れを示している。
以上説明した本実施形態の凝縮液の除去方法によれば、ドライ式である真空ポンプ109の一次側にドレンポット611を配置してドレンポット611において気液分離を行い、凝縮液はドレンポット611に一時的に貯えられて気体だけが真空ポンプ109に流れ込むようにすることによって、凝縮液の流入による真空ポンプ109における故障発生を抑制することができる。同様に真空ポンプ109の二次側にもドライポット651を設けることにより、二次側の排気が大気圧によって圧縮されることによって生ずる凝縮液が真空ポンプ109に流れ込むことも防止でき、真空ポンプ109における故障発生をさらに抑制できる。したがって、液封式真空ポンプの適用が難しい、有機溶剤の蒸気を含む気体の吸引をドライ式真空ポンプによって実施することが可能になる。ドレンポット611,651内の凝縮液の量をそれぞれレベル警報センサ612,652によって監視し、凝縮液の量が所定の上限値を超えたときにドライポット611,651内に不活性ガスを導入して凝縮液をドライポット611,651から自動的に排出されるようにすることにより、ドライポット611,651における凝縮液のあふれなどを気にすることなく、連続して真空ポンプ109を運転することが可能になる。
以上では、有機溶剤を精製する精製システムに設けられる膜脱気装置のガス透過側を減圧するための真空ポンプに対し本発明の凝縮液の除去方法を適用する場合を説明したが、本発明の除去方法が対象とする真空ポンプは、膜脱気装置の運転に用いられるドライ式の真空ポンプに限定されるものではない。例えば、浸透気化膜装置において浸透気化膜の透過側を減圧するために用いられる真空ポンプや、エバポレーターや減圧蒸留装置において減圧に用いられるドライ式の真空ポンプに対しても本発明の凝縮液の除去方法を適用することができる。また、真空ポンプによって減圧するために吸引対象とする気体は、有機溶剤の蒸気を含む気体であるが、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの各種のアルコール類や上記の表1に記載した溶剤に限定されるものではない。例えば、ベンゼンやその誘導体、ナフタレンやその誘導体、アセトンやメチルエチルケトンなどの各種のケトン類、テトラヒドロフランなどの各種の複素環化合物、ジエチルエーテルなどの各種のエーテル類、アセトアルデヒドなどの各種のアルデヒド類などが挙げられる。
膜脱気装置103A,103Bに設けられる脱気膜は、所定に使用時間が経過したり脱気性能の低下が確認されたときに交換される消耗材である。脱気膜を交換する場合には、膜脱気装置103A,103Bに残存するNMP水溶液を排出しなければならないが、NMP水溶液は有機溶剤を含む液体であるので、その排出時に作業員が接触したりNMPの蒸気を吸入することを防がなければならない。また、NMP水溶液を環境中に放出するためには廃液処理が必要であるとともに、NMP水溶液自体は有価物でもある。そこで本実施形態では、膜脱気装置103A,103Bにおいて脱気膜の交換を行う際には、その時点で膜脱気装置103A,103B内に残存しているNMP水溶液を受入部101すなわち原液タンクに回収することとする。
膜脱気装置103A,103B内に残存しているNMP水溶液を回収する際には、弁501,503,515,525,531,532,552を閉め、弁504,513,516,523,526,560を開ける。このとき、電磁弁562は閉じるように制御されているものとする。これにより、不活性ガス供給母管L401から窒素ガスが配管563,弁516,526及び出口配管514,524を介して膜脱気装置103A,103B内に導入され、この窒素ガスは、膜脱気装置103A,103Bにおいて脱気膜よりも液体側に存在するNMP水溶液を押し出す。押し出されたNMP水溶液は、入口配管511,521及び弁513,523を介して排出配管502に流れ込み、さらに、戻りラインL107Aに流れ込んで受入部101に回収されることになる。
膜脱気装置103A,103BからのNMP水溶液の回収が済めば、全ての弁を閉じた上で膜脱気装置103A,103Bの蓋を開け、中から脱気膜を取り出して新しい脱気膜を膜脱気装置103A,103B内に取り付ければよい。図2において、一点鎖線の矢印はNMP水溶液を原液タンクに回収するときの窒素ガスの流れを示し、二重線による矢印は原液タンクに回収されるNMP水溶液の流れを示している。