JP2020147789A - メッキ部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機基材上において、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制して、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できるメッキ部品の製造方法を提供する。【解決手段】メッキ部品の製造方法であって、表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する無機基材の前記平滑面上に、触媒失活剤(ハイパーブランチポリマー等)を含む触媒活性妨害層を形成することと、前記基材上の前記触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射して除去することと、前記レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した無機基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した領域に無電解メッキ膜を形成することを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、メッキ部品の製造方法に関する。
近年、回路やアンテナパターンを形成する基板としてガラス基材、セラミックス基材等の無機基材が注目されており、このような無機基材の表面に金属皮膜パターンを形成する試みがなされている(例えば、特許文献1及び2)。ガラス基材、セラミックス基材等の無機基材は、高い絶縁性と放熱性を有する。無機基材上の金属皮膜パターンは、例えば、無電解メッキ膜によって、又は無電解メッキ膜と電解メッキ膜とを組み合わせて形成できる。
特許第6080873号 特開2019−9147号公報
無電解メッキ膜は、回路やアンテナパターンの所定領域のみに形成する必要がある。例えば、回路パターンを形成する場合、配線間に無電解メッキ膜が析出すると、配線の短絡が生じてしまう。また、メッキ膜によりアンテナを形成する場合も、所定領域以外にメッキ膜が析出すると、十分なアンテナ特性が得られない。したがって、ガラス、セラミックス等の無機基材上において、メッキ膜を有する部分と、メッキ膜を有さない部分とのコントラストを十分に得られる技術が求められていた。
本発明は、これらの課題を解決するものであり、無機基材上において、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制して、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できるメッキ部品の製造方法を提供する。
本発明に従えば、メッキ部品の製造方法であって、表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する無機基材の前記平滑面上に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと、前記基材上の前記触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射することと、前記レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した無機基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した領域に無電解メッキ膜を形成することを含む、メッキ部品の製造方法が提供される。
前記無電解メッキ膜を形成した後に、前記無機基材の表面に溶剤を接触させて、前記無機基材の表面から前記触媒活性妨害層を除去してもよい。また、前記無機基材が、その表面に、前記平滑面を形成する平滑層を有してもよい。
前記メッキ部品の製造方法は、前記触媒活性妨害層を形成する前に、前記無機基材の前記平滑面上にカップリング剤を付与することを更に含んでもよい。前記カップリング剤が、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はスチリル基を含むシランカップリング剤であってもよい。
前記触媒失活剤が、アミド基、アミノ基及びジチオカルバメート基からなる群から選択される少なくとも1つを有するポリマーであってもよい。また、前記触媒失活剤が、下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーであってもよい。
Figure 2020147789

式(1)において、Aは芳香環を含む基であり、Aはアミド基を含む基であり、Aは硫黄を含む基であり、Rは、水素又は炭素数1〜10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、m1は0.5〜11であり、n1は5〜100である。
前記レーザー光の波長が、200〜380nmであってもよい。また、前記無電解メッキ膜が前記無機基材上で電気回路又はアンテナパターンを形成してもよい。
本発明の製造方法は、無機基材上において、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できる。
第1の実施形態のメッキ部品の製造方法を示すフローチャートである。 第2の実施形態のメッキ部品の製造方法を示すフローチャートである。
[第1の実施形態]
図1に示すフローチャートに従って、本実施形態のメッキ部品の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する無機基材の平滑面上に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと(図1のステップS1)、触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射することと(図1のステップS2)、レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与することと(図1のステップS3)、無電解メッキ触媒を付与した無機基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、レーザー光を照射した領域に無電解メッキ膜を形成すること(図1のステップS4)を含む。
(1)触媒活性妨害層の形成
まず、表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する無機基材の平滑面上に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成する(図1のステップS1)。
<無機基材>
無機基材(以下、適宜、単に「基材」と記載する場合がある)は、無機材料を主成分とする基材であれば特に限定されないが、無電解メッキ膜により回路やアンテナパターンを形成する場合には、絶縁性と放熱性に優れるガラス基材、セラミックス基材が好ましい。
ガラス基材は、ガラスを含む基材であれば特に限定されず、メッキ部品の用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基材としては、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、ホウ珪酸塩ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基材が挙げられる。ガラス基材は、可視光に対して透明であってもよいし、また、添加物を包含することにより着色していてもよい。ガラス基材が可視光に対して透明であるとは、例えば、ガラス基材の波長400nm〜800nm(可視光域)の光の透過率が60%以上であることを意味する。ガラス基材の透明性を重要視する場合、ガラス基材の波長400nm〜800nm(可視光域)の光の透過率は65%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。ガラス基材は、市販品であってもよい。また、ガラス基材は、レンズ、プリズム等のガラス製光学部品、スマートフォン等の電子機器のガラス製筐体であってもよい。
セラミックス基材は、セラミックスを含む基材であれば特に限定されず、メッキ部品の用途に応じて適宜選択できる。例えば、セラミックス基材としては、アルミナ、窒化アルミ、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、シリコンウエハ等のセラミックス基材が挙げられる。
ガラス基材は、ガラスのみから形成されてもよいし、ガラスが主成分であれば、汎用の添加剤等を含有してもよい。また、セラミックス基材は、セラミックスのみから形成されてもよいし、セラミックスが主成分であれば、汎用の添加剤等を含有してもよい。
無機基材は、表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する。平滑面は、無機基材の全表面であってもよいし、無機基材の表面の一部であってもよい。本実施形態で製造されるメッキ部品では、無電解メッキ膜は、無機基材の平滑面上に形成される。ここで、「表面粗さ」とは、算術表面粗さ(Ra)を意味する。無機基材上において、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制する観点から、平滑面の表面粗さは、0.7μm以下が好ましい。また、平滑面の表面粗さの下限値は、特に限定されないが、実質的な観点から、例えば、0.005μm以上、又は0.01μm以上である。
無機基材は、それ自体の表面が平滑面を形成してもよい。また、無機基材は、その表面に平滑層を有し、平滑層が平滑面を形成してもよい。例えば、セラミックス材料の中には、それ自体の表面粗さが大きいものがある。表面粗さ(Ra)が1μmより大きい材料であっても、その表面に平滑層を設けることで、その表面を平滑にして、本実施形態の無機基材として用いることができる。即ち、平滑層が平滑面を形成する場合、本実施形態の無機基材は、無機材料である原基材と、原基材上に形成される平滑層と、を有する。原基材の表面粗さは1μmより大きくてもよいため、無機基材の材料選択の幅を広げることができる。
平滑層は、原基材の絶縁性、放熱性に影響を与えないように、無機材料から形成される薄膜であることが好ましい。例えば、酸化ケイ素、酸化チタン等の薄膜が挙げられる。平滑層の膜厚は、例えば、0.01μm〜1μm、又は0.02μm〜0.3μmである。本実施形態では、平滑面上に触媒活性妨害層を形成する前に、原基材上に平滑層を形成して、無機基材を製造してもよい。平滑層は、例えば、ゾルゲル法により形成できる。
<触媒失活剤>
触媒失活剤(触媒活性妨害剤)としては、無電解メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げ、結果として、無電解メッキの反応を抑制する物質であれば、任意の物質を用いることができる。触媒失活剤は、無電解メッキ触媒と直接反応して無電解メッキ触媒を被毒するか、又は無電解メッキ触媒と直接反応せずとも、触媒付与工程のいずれかの段階において、無電解メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げると推測される。
触媒失活剤としては、例えば、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)等のメッキ触媒毒となる重金属及びその化合物、ヨウ素及びその化合物、過酸化物等の酸化剤等の国際公開第2016/013464号に開示される触媒失活剤を用いてもよい。これらの触媒失活剤は、バインダ樹脂と混合等して、無機基材上に触媒活性妨害層を形成できる。
また、触媒失活剤として、触媒活性を妨害するポリマーを用いてもよい。触媒失活剤がポリマーである場合、バインダ樹脂を用いずとも、それ自身で無機基材上に触媒活性妨害層を形成できる。触媒失活剤としては、アミド基、アミノ基、又はジチオカルバメート基を有するポリマーが好ましい。これらの官能基が無電解メッキ触媒となる金属イオンに作用し、触媒能が発揮することを妨げると推測される。触媒失活剤であるポリマーは、これらの官能基を側鎖に含む分岐ポリマーであることが好ましく、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー等のデンドリティックポリマーであることがより好ましい。
触媒失活剤(触媒活性妨害剤)としては、例えば、国際公開第2018/131492号に記載されている、下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを用いてもよい。
Figure 2020147789
式(1)において、Aは芳香環を含む基であり、Aはアミド基を含む基であり、Aは硫黄を含む基であり、Rは、水素又は炭素数1〜10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、m1は0.5〜11であり、n1は5〜100である。
式(1)で表されるハイパーブランチポリマーが、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げるメカニズムは定かではないが、以下のように推測される。ハイパーブランチポリマーのアミド基は、無電解メッキ触媒に吸着、配位、反応等して複合体を形成し、これにより無電解メッキ触媒は、ハイパーブランチポリマーにトラップされる。ハイパーブランチポリマーのアミド基は、側鎖に含まれるため自由度が高く、また、ハイパーブランチポリマー1分子中には、多数のアミド基が含まれる。このため、ハイパーブランチポリマーは、複数のアミド基により、無電解メッキ触媒を効率的且つ強力にトラップできる。例えば、ハイパーブランチポリマーは多座配位子として作用し、複数のアミド基が無電解メッキ触媒に配位してキレート構造を形成できる。この様にトラップされた無電解メッキ触媒は、触媒活性を発揮できない。例えば、パラジウムを無電解メッキ触媒として用いた場合、ハイパーブランチポリマーのアミド基はパラジウムをパラジウムイオンの状態でトラップする。パラジウムイオンは還元されて金属パラジウムとなり、無電解メッキ触媒活性を発揮する。しかし、ハイパーブランチポリマーにトラップされたパラジウムイオンは還元剤によっても還元されず、触媒活性を発揮できない。これにより、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーが付与された基材の表面では、無電解メッキ膜の形成が抑制される。ただし、このメカニズムは推定に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
は、芳香環を含む基であれば、任意のものを用いることができるが、例えば、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
Figure 2020147789
が、式(2)で表される基である場合、本実施形態のハイパーブランチポリマーのハイパーブランチ構造は、スチレン骨格を有する。ハイパーブランチ構造がスチレン骨格を有すると、ハイパーブランチポリマーの耐候性、耐熱性が向上する。
ハイパーブランチポリマーは、複数の末端基を有する。上記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの末端基において、Aは、アミド基を含む基であり、Aは、硫黄を含む基である。また、m1は、各末端基におけるアミド基を含む基(A)の数(繰り返し数)mの平均値である。したがって、m1は整数でなくてもよい。本実施形態のハイパーブランチポリマーは、平均値であるm1が0.5〜11であればよく、アミド基を含む基(A)を有さない末端基を有してもよい。各末端基におけるアミド基を含む基(A)の数(繰り返し数)mは、例えば、0〜11である。式(1)のm1は、分子内におけるアミド基を含む基(A)の総数(分子内におけるmの合計)を末端基の数で除した商である。m1の値は、NMR法や元素分析法により定量できる。
上記式(1)において、Aはアミド基を含む基であれば特に限定されず、また、Aに含まれるアミド基は、1級アミド基、2級アミド基、3級アミド基のいずれであってもよい。また、Aは、アミド基を1個含む基であってもよいし、2個以上含む基であってもよい。Aは下記式(3)で表される基であることが好ましい。Aが下記式(3)で表される基であると、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、金属捕捉能力がより向上する。これにより、無電解メッキ抑制効果がより高まる。
Figure 2020147789
式(3)において、R1は炭素数が1〜5である置換若しくは無置換のアルキレン基、又は単結合であり、R2及びR3は、それぞれ、炭素数が1〜10である置換若しくは無置換のアルキル基又は水素である。また、式(3)において、R1は単結合であることが好ましく、R2は水素であることが好ましく、Rはイソプロピル基であることが好ましい。
上記式(1)において、Aは、硫黄を含む基であれば特に限定されず、例えば、ジチオカルバメート基、トリチオカーボネート基、スルフィド基、チオシアン基等が挙げられ、中ででも、ジチオカルバメート基であることが好ましい。A3がジチオカルバメート基であると、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、合成が容易となり、また、金属捕捉能力が向上する。更に、Aは、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
Figure 2020147789
式(4)において、R及びRは、それぞれ、炭素数が1〜5である置換若しくは無置換のアルキル基、又は水素である。また、式(4)において、R及びRはエチル基であることが好ましい。
上記式(1)において、Rは、水素又は炭素数1〜10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であれば、任意の炭化水素基を用いることができる。上記炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であってもよい。Rが、置換の炭化水素基である場合の置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基又はエステル基等であってもよい。また、Rは、無置換の炭化水素基であってもよく、例えば、ビニル基又はエチル基であってもよい。
本実施形態のハイパーブランチポリマーは、式(1)において、Rが異なるハイパーブランチポリマーの混合物であってもよい。例えば、Rが不飽和結合を有する場合、ハイパーブランチポリマーの合成過程において、不飽和結合の一部に何らかの付加反応が生じて飽和結合となる場合がある。この場合、上記式(1)において、Rが不飽和炭化水素基のハイパーブランチポリマーと、Rが飽和炭化水素基のハイパーブランチポリマーとの混合物が得られる。本実施形態のハイパーブランチポリマーは、上記式(1)において、Rがビニル基のハイパーブランチポリマーと、Rがエチル基のハイパーブランチポリマーとの混合物であってもよい。
本実施形態のハイパーブランチポリマーは、数平均分子量が、3,000〜30,000であり、重量平均分子量が、10,000〜300,000であることが好ましく、数平均分子量が、5,000〜30,000であり、重量平均分子量が、14,000〜200,000であることがより好ましい。尚、ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で測定できる。
本実施形態のハイパーブランチポリマーの合成方法は、特に限定されず、任意の方法により合成できる。例えば、市販のハイパーブランチポリマーを出発物質として、本実施形態のハイパーブランチポリマーを合成してもよい。また、モノマーの合成、モノマーの重合、末端基修飾等を順に行って、本実施形態のハイパーブランチポリマーを合成してもよい。尚、本実施形態のハイパーブランチポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量、式(1)中のm1及びn1は、合成に用いる試薬の比率、合成条件等を任意の方法で調整することにより、所定の範囲内に調整できる。
<触媒活性妨害層の形成>
触媒活性妨害層(以下適宜、単に「妨害層」と記載する場合がある)は、触媒失活剤を含む。触媒活性妨害層を形成する方法は特に限定されず、例えば、以下に説明するように、国際公開第2017/154470号、国際公開第2018/131492号に開示される方法を用いることができる。
触媒活性妨害層は、触媒失活剤をバインダとなる樹脂と混合して無機基材の表面に付与して形成してもよい。または、触媒失活機能を有さない樹脂からなる樹脂層を無機基材上に形成し、形成した樹脂層に触媒失活剤を接触させてもよい。樹脂層に触媒失活剤が浸透、吸着等により担持され、触媒活性妨害層が形成される。
触媒失活剤がポリマーである場合、バインダ樹脂を用いずに、それ自身で触媒活性妨害層を形成できる。例えば、まず、溶剤に触媒失活剤である樹脂を溶解又は分散させた溶液を調整する。その溶液を基材に塗布する、又は、その溶液に基材を浸漬することによって、触媒活性妨害層を形成してもよい。具体的な形成方法としては、ディップコート、スクリーンコート、スプレーコート等が挙げられる。
触媒活性妨害層は、少なくとも、無機基材の平滑面上に形成する。更に、触媒活性妨害層は、後述する無電解メッキ工程において、無電解メッキ液と接触する無機基材表面の領域に形成することが好ましく、無機基材の表面全面に形成することがより好ましい。
触媒活性妨害層は無機基材の絶縁性、放熱性に影響を与えないように、薄い方が好ましい。例えば、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更により好ましい。一方で、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する観点からは、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更により好ましい。
(2)レーザー光照射
次に、触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射する(図1のステップS2)。レーザー光の照射方法は、特に限定されず、例えば、レーザー光を所定パターンに従って照射するレーザー描画であってもよい。
照射するレーザー光は、特に限定されず、COレーザー、YVOレーザー、YAGレーザー等の汎用のレーザー装置を用いて照射できる。レーザー光の波長、強度等は、基材の種類、メッキ部品の用途等に基づいて決定できる。例えば、無電解メッキ膜の高い密着強度が要求される用途では、レーザー光照射部分の粗度は大きい(高い)方が好ましい。レーザー光照射部分の粗度を高めるため、例えば、無機基材の吸収が大きい波長のレーザー光を選択してもよい。一方、例えば、無電解メッキ膜でアンテナパターン等を形成する場合、アンテナ特性を向上させるため、レーザー光照射部分の粗度は小さい方が好ましい。ガラス基材上に比較的粗度の小さいレーザー光照射部分を形成するには、基材に照射するレーザー光は、波長200nm〜380nmの紫外線レーザー光が好ましく、その波長は、例えば、355nmである。例えば、式(1)で表されるハイパーブランチポリマー等を含む触媒活性妨害層は、上記範囲の波長の光(例えば、紫外光)を吸収するが、ガラスは吸収し難い。このため、上記範囲の波長のレーザー光は、ガラス基材上に形成された式(1)で表されるハイパーブランチポリマー層(触媒活性妨害層)を除去するが、ガラス基材を粗化し難い。
基材の表面の一部にレーザー光を照射することにより、光が熱に変換され、基材の表面は加熱される。これにより、レーザー光照射部分において、妨害層は除去される。ここで、「妨害層の除去」とは、例えば、レーザー光照射部分の妨害層が、蒸発又は分解により消失することを意味する。妨害層が付与された基材の表面に、所定パターンのレーザー描画を行うことにより、所定パターンの妨害層除去部分と、妨害層が残存している妨害層残存部分とを形成できる。尚、レーザー光照射部分である妨害層除去部分では、妨害層と共に基材の表層部分が蒸発又は分解して消失してもよい。また、「妨害層の除去」とは、妨害層が完全に消失するだけでなく、後工程の無電解メッキ処理の進行に影響がない程度に妨害層が残存する場合も含む。妨害層が残存していても、後工程の無電解メッキ処理に影響なければ、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する作用が消失したことになる。更に、本実施形態では、妨害層の加熱部分が変性又は変質して妨害層として作用しなくなる場合も、「妨害層の除去」に含める。例えば、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーのアミド基が変性又は変質し、その結果、ハイパーブランチポリマーが無電解メッキ触媒をトラップできない場合が挙げられる。この場合、妨害層の加熱部分は完全に消失するのではなく、変性物(変質物)が残存する。この変性物は、触媒活性を妨害しない。このため、妨害層が変性又は変質した部分も、妨害層が消失した妨害層除去部分と同様に作用する。
(3)無電解メッキ触媒の付与
次に、レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与する(図1のステップS3)。無電解メッキ触媒を基材の表面に付与する方法は、特に限定されない。例えば、センシタイザー・アクチベータ法、キャタライザー・アクセラレータ法等、汎用の方法により、無電解メッキ触媒を基材に付与してもよい。また、例えば、特開2017−036486号公報に開示されている塩化パラジウム等の金属塩を含むメッキ触媒液を用いて、基材の表面に無電解メッキ触媒を付与してもよい。尚、金属塩を含むメッキ触媒液としては、市販のアクチベータ処理液を用いてもよい。
金属塩を含むメッキ触媒液を用いる場合、触媒付与の前処理として、基材にポリエチレンイミン等のポリマーを付与してもよい。金属塩由来の金属イオンである触媒は、イオン化していない金属触媒(酸化数が0(ゼロ))と比較して基材に吸着し難い。ポリエチレンイミン等のポリマーは金属イオンを吸着するので、ポリエチレンイミン等を基材に先に付与しておくことで、金属塩由来の金属イオン(無電解メッキ触媒)の基材への吸着が促進される。尚、基材に吸着した金属イオンは、例えば、後工程の無電解メッキにおいて、無電解メッキ液中の還元剤によって還元されて無電解メッキ触媒活性(無電解メッキ触媒能)を発現する。
(4)無電解メッキ
次に、無機基材に無電解メッキ液を接触させる(図1のステップS4)。無機基材表面には、妨害層が残存している妨害層残存部分と、加熱等により妨害層が除去された、所定パターンの妨害層除去部分が存在する。この基材表面に無電解メッキ触媒を付与して、無電解メッキ液を接触させることにより、所定パターンの妨害層除去部分のみに、無電解メッキ膜を形成できる。
無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しできるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液、無電解銅メッキ液、無電解ニッケルメッキ液が好ましい。
無電解メッキ膜上には、更に、異なる種類の無電解メッキ膜を形成してもよいし、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。基材上のメッキ膜の総厚みを厚くすることにより、所定パターンのメッキ膜を電気回路として用いた場合に電気抵抗を小さくできる。メッキ膜の電気抵抗を下げる観点から、無電解メッキ膜上に積層するメッキ膜は、無電解銅メッキ膜、電解銅メッキ膜、電解ニッケルメッキ膜等が好ましい。また、電気的に孤立した回路には電解メッキを行えないため、このような場合は、無電解メッキにより、基材上のメッキ膜の総厚みを厚くすることが好ましい。また、ハンダリフローに対応できるようメッキ膜パターンのハンダ濡れ性を向上させるために、錫、金、銀等のメッキ膜をメッキ膜パターンの最表面に形成してもよい。
(5)触媒活性妨害層の除去
無電解メッキ膜を形成した後に、無機基材の表面から触媒活性妨害層を除去してもよい。触媒活性妨害層を除去することで、触媒活性妨害層を有さないメッキ部品を製造できる。例えば、無機基材が透明である場合、触媒活性妨害層を除去することで、メッキ部品は無機基材の透明性を維持できる。また、触媒活性妨害層が基材から剥離すると、コンタミネーション(汚染)となり、周囲を汚染する虞がある。触媒活性妨害層を除去することで、コンタミネーションの発生を防止できる。
無機基材から式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを除去する方法としては、例えば、溶剤(洗浄液)を接触させ、無機基材を洗浄する方法が挙げられる。溶剤は、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを溶解又は分散でき、かつ無機基材を変質させない溶剤であれば特に限定されない。例えば、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。また、溶剤(洗浄液)は、必要に応じて、界面活性剤等の汎用の添加剤を含んでもよい。
以上説明した本実施形態の製造方法によって製造されるメッキ部品は、無電解メッキ膜が無機基材上で電気回路又はアンテナパターンを形成する電子部品であってもよい。
本実施形態のメッキ部品の製造方法は、例えば、以下の効果を奏する。本実施形態のメッキ部品の製造方法では、触媒失活剤を用いることで、所定領域以外(妨害層が残存している妨害層残存部分)での無電解メッキ膜の析出を抑制して、所定領域(レーザー光照射部分、妨害層除去部分)のみに無電解メッキ膜を形成できる。上述したように、触媒活性妨害層は無機基材の物性に影響を与えないように、薄い方が好ましい。しかし、触媒活性妨害層が形成される無機基材の表面の表面粗さが大きい場合、その表面上には、薄い触媒活性妨害層は均一に形成され難い。触媒活性妨害層には、基材表面が露出する欠陥が生じ、欠陥には無電解メッキ膜が析出する虞がある。本実施形態では、触媒活性妨害層は、表面粗さ(Ra)の小さい平滑面上に形成される。このため、膜厚が薄い触媒活性妨害層であっても均一に覆うことができ、無電解メッキ膜の析出を十分に抑制できる。これにより、本実施形態のメッキ部品の製造方法では、メッキ膜を有する部分と、メッキ膜を有さない部分とのコントラストが明確なメッキ部品を製造できる。
特に、触媒失活剤として式(1)で表されるハーパーブランチポリマーを用いる場合、触媒活性妨害層の膜厚を薄くしても、ハーパーブランチポリマーは、十分に無電解メッキ触媒の触媒能を失活させる能力を有する。このため、触媒活性妨害層は、より薄く形成される傾向がある。本実施形態の製造方法は、触媒失活剤として式(1)で表されるハーパーブランチポリマーを用いる場合であっても、触媒活性妨害層は基材表面(平滑面)を均一に覆うことができ、メッキ膜を有する部分と、メッキ膜を有さない部分とのコントラストが明確なメッキ部品を製造できる。
尚、以上説明したメッキ部品の製造方法では、無機基材に触媒活性妨害層を形成し(図1のステップS1)、その後、触媒活性妨害層の表面の一部にレーザー光を照射する(図1のステップS2)。しかし、本実施形態は、これに限定されず、例えば、基材の平滑面の一部にレーザー光を照射し(図1のステップS2)、その後、基材に触媒活性妨害層を付与してもよい(図1のステップS1)。レーザー描画した基材の表面は粗化されるため、無電解メッキを抑制するのに十分な妨害層が形成され難い。このため、レーザー描画部分に、選択的にメッキ膜を形成できる。
[第2の実施形態]
図2に示すフローチャートに従って、本実施形態のメッキ部品の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、基材の平滑面上に触媒活性妨害層を形成する前に、平滑面上にカップリング剤を付与する(図2のステップS11)。それ以外は、上述した第1の実施形態と同様である。即ち、本実施形態の製造方法は、無機基材の表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面上にカップリング剤を付与することと(図2のステップS11)、カップリング剤を付与した無機基材に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと(図2のステップS1)、触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射することと(図2のステップS2)、レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与することと(図2のステップS3)、無電解メッキ触媒を付与した無機基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、レーザー光を照射した領域に無電解メッキ膜を形成すること(図2のステップS4)を含む。
以下に、基材の平滑面にカップリング剤を付与する工程(図2のステップS11)についてのみ、説明する。その他の工程(図2のステップS1〜S4)は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
本実施形態で用いるカップリング剤は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤を用いることができ、中でも、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤は、その分子内に、無機材料と反応又は相互作用する構造(以下、単に「無機材料と反応する構造」と記載する)と、有機材料と反応又は相互作用する構造(以下、単に「有機材料と反応する構造」と記載する)との両方を有する有機ケイ素化合物である。
シランカップリング剤の無機材料と反応する構造は、加水分解によりシラノール基を生成する構造(加水分解性シリル基を含む構造)が好ましい。生成したシラノール基が、無機基材と反応又は相互作用する。無機材料と反応する構造は、例えば、ケイ素元素にアルコキシ基、アセトキシ基、塩素原子等のハロゲン原子が結合した構造を含むことが好ましい。
シランカップリング剤の有機材料と反応する構造は、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はスチリル基を有する構造が好ましく、エポキシ基を有する構造がより好ましい。特に、触媒活性妨害剤が式(1)で表されるハイパーブランチポリマーである場合、上記官能基を有するシランカップリング剤は、無機基材と、触媒活性妨害層との密着強度をより高められる。このメカニズムは不明であるが、これらの官能基と、ハイパーブランチポリマーのスチレン骨格が何らかの相互作用をすると推測される。
シランカップリング剤において、無機材料と反応する構造と有機材料と反応する構造とは、単結合で連結されてもよいし、炭化水素鎖で連結されてもよい。無機材料と反応する構造と有機材料と反応する構造とが、比較的長い炭化水素鎖で連結されると、無機基材と触媒活性妨害層との密着強度をより高め、それを長期間に亘って維持できる。炭化水素鎖は、例えば、炭素数1〜12個のアルキレン基であり、炭素数3〜8個のアルキレン基が好ましく、炭素数6〜8個のアルキレン基がより好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、下記式(S)で表されるシランカップリング剤を用いてもよい。式(S)で表されるシランカップリング剤は、無機材料と反応する構造(X1〜3Si-)と、有機材料と反応する構造(-Y)を有し、これらは、単結合又は炭化水素鎖(-R-)で連結される。
Figure 2020147789
式(S)において、
〜Xは、全てがアルコキシ基であるか、又は、2つがアルコキシ基であり、残りの1つがアルキル基であり、
Yは、グリシドキシ基、アクリロキシ基(アクリル基)、メタクリロキシ基(メタクリル基)又はスチリル基であり、
Rは、単結合又は炭素数1〜12個のアルキレン基である。
式(S)において、X〜Xは、全てがアルコキシ基であることが好ましく、全てがメトキシ基であることがより好ましい。また、Yは、グリシドキシ基であることが好ましく、Rは、炭素数3〜8個又は6〜8個のアルキレン基であることが好ましい。
カップリング剤を付与する方法は特に限定されず、汎用の方法を用いることができる。例えば、溶剤にカップリング剤を溶解させたカップリング剤液を調製し、それを無機基材に塗布してもよし、又は、それに無機基材を浸漬してもよい。具体的な方法としては、ディップコート、スクリーンコート、スプレーコート等が挙げられる。
以上説明した本実施形態では、第1の実施形態と同様に、メッキ膜を有する部分と、メッキ膜を有さない部分とのコントラストが明確なメッキ部品を製造できる。また、本実施形態では、カップリング剤を無機基材の平滑面上に付与することで、無機基材(無機材料)と、触媒活性妨害層(有機材料)との密着強度を高められる。これにより、レーザー光を照射していない領域(妨害層が残存している妨害層残存部分)での無電解メッキ膜の析出をより効率的に抑制できる。
また、触媒失活剤として、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを用い、カップリング剤がエポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はスチリル基を有するシランカップリング剤である場合、シランカップリング剤は、後工程の無電解メッキ工程において(図2のステップS4)、式(1)で表されるハイパーブランチポリマー(触媒活性妨害層)上に無電解メッキ膜が析出することを抑制できる。このメカニズムは以下のように推測される。発明者らの検討によれば、使用するシランカップリング剤の種類によっては、触媒失活剤であるハイパーブランチポリマー上に無電解メッキ膜が析出することがわかった。例えば、アミノ基を含むシランカップリング剤を用いると、無機基材と式(1)で表されるハイパーブランチポリマーとの密着強度は高まるが、触媒失活剤であるハイパーブランチポリマー上に無電解メッキ膜が析出する。これは、シランカップリング剤中のアミノ基がハイパーブランチポリマーと反応し、更に、ハイパーブランチポリマーを介して、その上に付与される無電解メッキ触媒を補足する(トラップする)ためだと考えられる。触媒失活剤であるハイパーブランチポリマーは無電解メッキ触媒を強力に捕捉することにより、無電解メッキ触媒(例えば、パラジウムイオン)が還元されて触媒活性が発現することを阻止する。これに対し、シランカップリング剤中のアミノ基は、比較的弱い力で無電解メッキ触媒を捕捉する。このため、シランカップリング剤に捕捉された無電解メッキ触媒は還元されて、触媒活性が発現し、そこに無電解メッキ膜が析出すると推測される。本発明者らは、シランカップリング剤の有機材料(式(1)で表されるハイパーブランチポリマー)と反応する構造が、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はスチリル基を含む構造であれば、ハイパーブランチポリマーとは反応するが、無電解メッキ触媒を捕捉し難いことを見出した。このようなシランカップリング剤を用いることにより、無機基材と、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーとの密着強度を高めると共に、ハイパーブランチポリマー上に無電解メッキ膜が析出することを抑制できる。尚、以上説明したメカニズムは推測であり、本発明を何ら限定するものではない。また、ハイパーブランチポリマー上に無電解メッキ膜が析出することを抑制する観点から、シランカップリング剤はアミノ基を含まないことが好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
試料1〜34(メッキ部品)を以下のように製造した。尚、試料1〜23、33及び34の製造方法は本発明の実施例に相当し、試料24〜32の製造方法は本発明の比較例に相当する。
[試料1]
(1)シランカップリング剤の付与
無機基材として、平板形状の大型スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、S9111、76mm×52mm×厚み0.8〜1.0mm)を用意した。レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK―9700)を用いて、無機基材の表面の表面粗さ(Ra)を測定した。表面粗さ(Ra)は0.015μmであった。尚、これ以降に記載する、本試料及び他の試料における表面粗さの値は、全て同様の測定方法により測定した値である。
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM‐4803)を、エタノール:水=1:1の混合溶剤に添加した。続けて酢酸を添加した。その後、1時間撹拌を実施し、シランカップリング剤液を調製した。調製したシランカップリング剤液に、無機基材を室温で5秒間浸漬し(ディッピング)、その後、110℃の乾燥機中で10分間乾燥した。用いたシランカップリング剤は、式(S)で表されるシランカップリング剤である。
(2)触媒活性妨害層の形成
シランカップリング剤を付与した基材の表面に、触媒失活剤(触媒活性妨害剤)である下記式(5)で表されるハイパーブランチポリマーの層(触媒活性妨害層)を形成した。式(5)で表されるハイパーブランチポリマーは、国際公開第2018/131492号に開示される方法により合成した。
Figure 2020147789
式(5)で表されるハイパーブランチポリマーは、式(1)で表されるポリマーであり、式(1)において、Aが式(2)で表される基であり;Aが式(3)で表される基であって、R1が単結合であり、R2が水素であり、Rがイソプロピル基であり;Aが式(4)で表されるジチオカルバメート基であり、R及びRがエチル基であり、Rがビニル基又はエチル基である。
合成したハイパーブランチポリマーの分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した。分子量は、数平均分子量(Mn)=9,946、重量平均分子量(Mw)=24,792であり、ハイパーブランチ構造独特の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とが大きく異なった値であった。
合成した式(5)で表されるポリマーをメチルエチルケトンに溶解して、ポリマー濃度0.5重量%のポリマー溶液を調製した。室温のポリマー溶液に、基材を5秒間浸漬し、その後、100℃乾燥機中で10分間乾燥した。これにより、基材の表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層の厚さは、100nmであった。
(3)レーザー光照射
触媒活性妨害層を形成した無機基材に、レーザー描画装置(キーエンス製、MD―U1000C、YVOレーザー、波長355nm)を用いて、レーザー強度80%、描画速度300mm/sec、周波数40kHzで、所定のパターン上を1回走査するレーザー描画を行った。本実施例でレーザー描画したパターンは、以下の3種類のパターンである。尚、レーザー描画部の表面粗さ(Ra)は0.016μmであった。
<レーザー描画パターン>
パターン1:2cm×3cmの長方形のパターン。0.05μm間隔ピッチの直線で塗り潰すようにレーザー描画した。
パターン2:ピッチ100μm、線幅50μm、長さ4cmの複数の直線からなるパターン(即ち、パターンのライン・アンド・スペース(L/S)は、50μm/50μm)
パターン3:ピッチ400μm、線幅200μm、長さ4cmの複数の直線からなるパターン(即ち、パターンのライン・アンド・スペース(L/S)は、200μm/200μm)
(4)触媒付与の前処理
前処理液として、重量平均分子量70,000のポリエチレンイミン(PEI)(和光純薬製)の水溶液を調製した(ポリエチレンイミンの配合量(固形分濃度):30g/L)。室温の前処理液に、無機基材を5分間浸漬し、その後、十分に水洗した。
(5)無電解メッキ触媒の付与
室温の塩化パラジウム(PdCl)水溶液(奥野製薬工業製、アクチベータ)に無機基材を2分浸漬し、その後、十分に水洗した。
(6)無電解メッキ
65℃に調整した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンLTN)に、無電解メッキ触媒を付与した無機基材を15分浸漬して、無機基材の表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、試料1(メッキ部品)を得た。
[試料2]〜[試料7]
レーザー光照射条件(レーザー描画条件)を表1に示すように変更した以外は、試料1と同様の方法により試料2〜7を製造した。尚、試料6及び7の製造には、レーザー描画装置(パナソニックデバイスSUNX製、LP−300、波長:10.6μm)を用いてレーザー描画を行った。
[無電解メッキの評価1]
試料1〜7の表面に形成されたメッキ膜パターンを目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。
<評価基準>
◎:レーザー描画パターン1〜3のみに無電解メッキ膜が形成されており、それ以外の領域では無電解メッキ膜は析出しなかった。
○:レーザー描画パターン1〜3に加えて、パターン2及び3の細線の間及び周囲に部分的に無電解メッキ膜が析出していた。
△:レーザー描画パターン1〜3に加えて、パターン2及び3の細線の間及び周囲に部分的に無電解メッキ膜が析出し、更に、その他の非レーザー描画部にも部分的に(飛び地的に)無電解メッキ膜が析出していた。
×:無機基材の全面にメッキ膜が析出した。
Figure 2020147789
*試料1〜7に用いたシランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、KBM‐4803、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、式(S)において、Yがグリシドキシ基(エポキシ基を含む基)、Rが炭素数8個のアルキレン基
[試料8]〜[試料10]
シランカップリング剤の種類を表2に示すものに変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料8〜10を製造した。用いたシランカップリング剤は、式(S)で表されるシランカップリング剤である。製造した試料8〜10について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表2に示す。
Figure 2020147789
*試料8〜10のレーザー描画条件は、試料1と同様(レーザー光波長:355nm)
1)信越化学工業株式会社製、p‐スチリルトリメトキシシラン
2)信越化学工業株式会社製、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
3)信越化学工業株式会社製、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
[試料11]〜[試料17]
無機基材として、アルミナ製セラミックスプレート(株式会社廣杉計器製、CRP−0505−10)を用い、レーザー光照射条件(レーザー描画条件)を表3に示すように変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料11〜17を製造した。試料11〜17に用いた無機基材の表面の表面粗さ(Ra)は、0.421μmであった。製造した試料11〜17について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表3に示す。
Figure 2020147789
*試料11〜17に用いたシランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、KBM‐4803、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、式(S)において、Yがグリシドキシ基(エポキシ基を含む基)、Rが炭素数8個のアルキレン基
[試料18]〜[試料20]
無機基材として、アルミナ製セラミックスプレート(株式会社廣杉計器製、CRP−0505−10)を用い、シランカップリング剤の種類を表4に示すものに変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料18〜20を製造した。用いたシランカップリング剤は、式(S)で表されるシランカップリング剤である。製造した試料18〜20について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表4に示す。
[試料21]
無機基材として、アルミナ製セラミックスプレート(株式会社廣杉計器製、CRP−0505−10)を用い、カップリング剤として、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製、プレンアクト338X)を用いた以外は、試料1と同様の方法により、試料21を製造した。
(1)カップリング剤の付与
チタネート系カップリング剤を、メチルエチルケトンに添加して1時間撹拌し、カップリング剤液を調製した。調製したカップリング剤液に、無機基材(アルミナ)を室温で5秒間浸漬し(ディッピング)、その後、110℃の乾燥機中で10分間乾燥した。
(2)その後、試料1と同様の方法により、触媒活性妨害層の形成、レーザー光照射、触媒付与の前処理、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキを行い、試料21を製造した。製造した試料21について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表4に示す。
Figure 2020147789
*試料18〜21のレーザー描画条件は、試料1と同様(レーザー光波長:355nm)
1)信越化学工業株式会社製、p‐スチリルトリメトキシシラン
2)信越化学工業株式会社製、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
3)信越化学工業株式会社製、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
4)味の素ファインテクノ製、チタネート系カップリング剤
[試料22]
無機基材として、硼珪酸ガラス時計皿(ショット社製、DURAN、直径80mm)を用い、レーザー描画パターンを変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料22を製造した。試料22では、無機基材の立体的な面上にメッキ膜を形成した。
(1)試料1と同様の方法により、シランカップリング剤の付与、及び触媒活性妨害層の形成を行った。
(2)レーザー光照射
試料22では、無機基材の立体的な面上にレーザー描画をするため、描画パターンの平面図を無機基材の立体図形データを合わせて、3次元描画用データを作成した。作成した3次元描画用データを用いて、無機基材上をレーザー描画した。レーザー描画に用いた装置、レーザー描画条件は、試料1と同様である。また、試料22で用いた描画パターンの平面図は、試料1の描画パターンと同様である。
(3)その後、試料1と同様の方法により、触媒付与の前処理、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキを行い、試料22を製造した。製造した試料22について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表5に示す。
[試料23]
原基材上に平滑層を設けた無機基材を製造し、製造した無機基材を用いて試料23(メッキ部品)を製造した。
(1)無機基材の製造
原基材として、アルミナ板(アズワン株式会社製)を用意した。現基材の表面粗さ(Ra)は、1.12μmであった。
次に、アルミナ板上に、以下に説明するゾルゲル法により、平滑層を形成した。まず、オルトケイ酸テトラエチル(東京化成工業製)25gをエタノール37.6mLに滴下し、撹拌した。更に、撹拌しつつ、水23.8g、酢酸0.3gを順に滴下した。その後、3時間撹拌し、オルトケイ酸テトラエチル溶液を得た。原基材を調製した溶液に室温で5秒間ディッピングし、その後、110℃乾燥機中で30分間乾燥した。これにより、原基材(アルミナ)表面に、平滑層(SiO)を形成した。平滑層の表面(平滑面)の表面粗さ(Ra)は、0.326μmであった。
(2)その後、試料1と同様の方法により、シランカップリング剤の付与、触媒活性妨害層の形成を行った。
(3)レーザー光照射
触媒活性妨害層を形成した無機基材に、レーザー描画装置(キーエンス製、MD―U1000C、YVOレーザー、波長355nm)を用いて、レーザー強度80%、描画速度150mm/sec、周波数40kHzで、所定のパターン上を1回走査するレーザー描画を行った。描画したパターンは、試料1と同様である。
(4)その後、試料1と同様に方法により、触媒付与の前処理、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキを行い、試料23を製造した。製造した試料23について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表5に示す。
Figure 2020147789
5)信越化学工業株式会社製、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、式(S)において、Yがグリシドキシ基(エポキシ基を含む基)、Rが炭素数8個のアルキレン基
[試料24]〜[試料27]
無機基材として、アルミナ板(アズワン株式会社製)を用い、レーザー光照射条件(レーザー描画条件)を表6に示すように変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料24〜27を製造した。試料24〜27に用いた無機基材の表面の表面粗さ(Ra)は、1.12μmであった。製造した試料24〜27について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表6に示す。
Figure 2020147789
*試料24〜27に用いたシランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、KBM‐4803、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、式(S)において、Yがグリシドキシ基(エポキシ基を含む基)、Rが炭素数8個のアルキレン基
[試料28]〜[試料30]
無機基材として、アルミナ板(アズワン株式会社製)を用い、シランカップリング剤の種類を表7に示すものに変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料28〜30を製造した。試料28〜30に用いた無機基材の表面の表面粗さ(Ra)は、1.12μmであった。試料28〜30に用いたシランカップリング剤は、式(S)で表されるシランカップリング剤である。製造した試料28〜30について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表7に示す。
[試料31]
無機基材として、アルミナ板(アズワン株式会社製)を用い、カップリング剤として、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製、プレンアクト338X)を用いた以外は、試料1と同様の方法により、試料31を製造した。試料31に用いた無機基材の表面の表面粗さ(Ra)は、1.12μmであった。
(1)カップリング剤の付与
試料21と同様の方法により、チタネート系カップリング剤を無機基材に付与した。
(2)その後、試料1と同様の方法により、触媒活性妨害層の形成、レーザー光照射、触媒付与の前処理、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキを行い、試料31を製造した。製造した試料31について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。結果を表7に示す。
Figure 2020147789
*試料28〜31のレーザー描画条件は、試料1と同様(レーザー光波長:355nm)
1)信越化学工業株式会社製、p‐スチリルトリメトキシシラン
2)信越化学工業株式会社製、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
3)信越化学工業株式会社製、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
4)味の素ファインテクノ製、チタネート系カップリング剤
[試料32]
触媒活性妨害層を設けなかった以外は、試料1と同様の方法により、試料32を製造した。製造した試料32について、試料1と同様に、無電解メッキの評価1を行った。評価結果は、不良であった(評価結果:△)。
[試料1〜32についての考察]
表1〜5に示すように、基材の平滑面の表面粗さが1μm以下である試料1〜23は、無電解メッキの評価1の結果が良好であった。即ち、試料1〜23では、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できた。試料1〜23では、表面粗さ(Ra)の小さい平滑面上に触媒活性妨害層が形成されるため、膜厚が薄い触媒活性妨害層であっても基材表面を均一に覆うことができ、無電解メッキ膜の析出を十分に抑制できたと推測される。一方、表6〜7に示すように、基材の表面の表面粗さが1μmを超える試料24〜試料31では、無電解メッキの評価結果1が不良であり、基材全面にメッキが析出してしまった。試料24〜31では、無機基材の表面の表面粗さが大きいため、触媒活性妨害層に基材表面が露出する欠陥が生じ、欠陥に無電解メッキ膜が析出したと推測される。
また、触媒活性妨害層を設けなった試料32は、無電解メッキの評価1の結果が不良であった。この原因は次のように推測される。試料32において、シランカップリング剤が付与された無機基材表面は疎水性となるため、水性であるメッキ触媒液、メッキ液と馴染みが悪い。このため、無機基材全面に無電解メッキ膜が形成されることはなかった。しかし、シランカップリング剤のみでは、無電解メッキ膜の析出を十分に抑制することは困難であり、パターン2及び3の細線の間やその周囲、更に、その他の非レーザー描画部にも部分的に(飛び地的に)無電解メッキ膜が析出したと推測される。
レーザー描画条件が異なり、その他の条件が同一である試料1〜7を比較する。試料1〜7は、ガラス基材を用いている。表1に示すように、レーザー光波長が200nm〜380nm(紫外光、355nm)である試料1〜5は、レーザー光波長が上記範囲外である試料6及び7と比較して、レーザー描画部の表面粗さが小さかった。この原因は、上記範囲の波長の光(例えば、紫外光)を式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは吸収するが、ガラスは吸収し難いためだと推測される。試料1〜5では、ガラス基材をあまり粗化することなく、ハイパーブランチポリマー層(触媒活性妨害層)を除去することができた。
カップリング剤の種類が異なり、その他の条件が同一の試料18〜21を比較する。シランカップリング剤を用いた試料18〜20は、チタネート系カップリング剤を用いた試料21よりも、無電解メッキの評価1の結果が良好であった。
[無電解メッキ評価2]
シランカップリング剤の種類が異なり、それ以外の条件が同一である試料1及び10に対して、以下の評価を行った。試料1及び10に用いたシランカップリング剤は共に、式(S)で表されるシランカップリング剤である。試料1で用いたシランカップリング剤は、式(S)におけるRが、炭素数8個のアルキレン基であり、試料10で用いたシランカップリング剤は、式(S)におけるRが、炭素数3個のアルキレン基である。
<評価試料の作製>
試料1及び10の製造過程において、無機基材上に触媒活性妨害層を形成した状態で、室温で1週間放置した。放置後、レーザー光の照射、触媒付与の前処理、無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキを行い、試料1及び10それぞれに対応する、評価試料を製造した。
<評価方法>
評価試料の表面に形成されたメッキ膜パターンを目視により観察し、無電解メッキの評価1と同様の評価基準に基づいて評価した。無電解メッキの評価1の結果と併せて、無電解メッキの評価2の結果を表8に示す。
Figure 2020147789
5)信越化学工業株式会社製、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン
3)信越化学工業株式会社製、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
表8に示すように、試料1は、無電解メッキの評価1及び2共に結果が良好であった(評価結果:○)。試料1で用いたシランカップリング剤は、無機材料と反応する構造と、有機材料と反応する構造とを連結する炭化水素鎖(式(S)におけるR)が比較的長いため、無機基材と触媒活性妨害層との密着強度がより高まり、且つそれを長期間に亘って維持できたと推測される。
一方、試料10は、パターン2及び3の細線の間やその周囲、更に、その他の非レーザー描画部にも部分的に(飛び地的に)無電解メッキ膜が析出した(評価結果:△)。試料10で用いたシランカップリング剤は、式(S)におけるRが試料1と比較して短い。このため、試料10は、試料1と比較すると無機基材と触媒活性妨害層との密着強度がやや弱く、触媒活性妨害層の形成から時間が経過すると、十分な密着強度が維持できなかった推測される。
[試料33]
製造したメッキ部品から、触媒活性妨害層を除去して、試料33を製造した。まず、試料1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。製造したメッキ部品をメチルエチルケトン(洗浄液)に浸漬し、超音波を15分印加し洗浄した。これにより、触媒活性妨害層は除去された試料33を得た。
[試料34]
製造したメッキ部品から、触媒活性妨害層を除去して、試料34を製造した。触媒活性妨害剤を除去するための洗浄液として、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は、試料33と同様の方法により、試料34を製造した。
[試料33及び34の評価]
走査型電子顕微鏡‐エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により、触媒活性妨害層を除去する前後において、試料33及び34における、式(1)で表されるハイパーブランチポリマー中に含まれる硫黄元素の検出を行った。この結果、試料33及び34において、洗浄前に検出された硫黄元素が洗浄後には検出されなかった。これにより、洗浄により、ハイパーブランチポリマー(触媒活性妨害層)が除去されたことが確認できた。
本発明のメッキ部品の製造方法によれば、ガラス、セラミックス等の無機基材において、所定領域以外での無電解メッキ膜の析出を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できる。本発明のメッキ部品の製造方法により、高い絶縁性と放熱性を有する電子部品を製造できる。

Claims (9)

  1. メッキ部品の製造方法であって、
    表面粗さ(Ra)が1μm以下である平滑面を有する無機基材の前記平滑面上に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと、
    前記基材上の前記触媒活性妨害層の一部にレーザー光を照射することと、
    前記レーザー光を照射した無機基材の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、
    前記無電解メッキ触媒を付与した無機基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した領域に無電解メッキ膜を形成することとを含む、メッキ部品の製造方法。
  2. 前記無電解メッキ膜を形成した後に、前記無機基材の表面に溶剤を接触させて、前記無機基材の表面から前記触媒活性妨害層を除去することを更に含む、請求項1に記載のメッキ部品の製造方法。
  3. 前記無機基材が、その表面に、前記平滑面を形成する平滑層を有する、請求項1又は2に記載のメッキ部品の製造方法。
  4. 前記触媒活性妨害層を形成する前に、前記無機基材の前記平滑面上にカップリング剤を付与することを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  5. 前記カップリング剤が、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はスチリル基を含むシランカップリング剤である、請求項4に記載のメッキ部品の製造方法。
  6. 前記触媒失活剤が、アミド基、アミノ基及びジチオカルバメート基からなる群から選択される少なくとも1つを有するポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  7. 前記触媒失活剤が、下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
    Figure 2020147789
    式(1)において、Aは芳香環を含む基であり、Aはアミド基を含む基であり、Aは硫黄を含む基であり、Rは、水素又は炭素数1〜10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、m1は0.5〜11であり、n1は5〜100である。
  8. 前記レーザー光の波長が、200〜380nmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  9. 前記無電解メッキ膜が前記無機基材上で電気回路又はアンテナパターンを形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
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