JP2020147234A - 操舵制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バリアブルギヤレシオのラックアンドピニオン機構を採用しつつ、操舵フィーリングの低下を抑制できる操舵制御装置を提供する。【解決手段】マイコン41は、操舵角θhを演算する操舵角演算部51と、目標アシストトルクTa*を演算する目標アシストトルク演算部52と、目標アシストトルクTa*及び操舵角θhに応じた電流指令値を演算する電流指令値演算部53と、dq座標系における電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号Mを演算するモータ制御信号演算部54とを備える。電流指令値演算部53は、d軸電流指令値Id*を演算するd軸電流指令値演算部61と、q軸電流指令値Iq*を演算するq軸電流指令値演算部62とを備える。d軸電流指令値演算部61は、比ストロークの増大に基づいてd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなるように、操舵角θhに基づいてd軸電流指令値Id*を演算する。【選択図】図3
Description
本発明は、操舵制御装置に関する。
従来、車両用のステアリング装置として、ステアリング操作に伴う回転をラックアンドピニオン機構によりラック軸の往復直線運動に変換して転舵輪の転舵角を変更するものが知られている。こうしたステアリング装置には、例えば特許文献1に記載されるように、ラック軸に形成されるラック歯の諸元をその軸方向位置によって異ならせることにより、比ストロークを操舵角に応じて変化させる所謂バリアブルギヤレシオのラックアンドピニオン機構を採用したものがある。
また、特許文献1のステアリング装置は、モータを駆動源としてアシスト力を付与するアシスト機構を備えた電動パワーステアリング装置(EPS)として構成されている。そして、EPSでは、運転者が入力する操舵トルクに基づく軸力(以下、操舵軸力)とモータが付与するアシストトルクに基づく軸力(以下、アシスト軸力)との合計が、転舵輪を転舵させるための軸力(以下、全体軸力)としてラック軸に作用する。
ところで、上記特許文献1の構成においては、運転者が入力する操舵トルクの大きさが同じであっても、比ストロークの大きな領域では比ストロークの小さな領域よりも、ラック軸に作用する操舵軸力が小さくなる。また、運転者によるステアリング操作の操舵速度が同じでも比ストロークが大きくなると、ラック軸の移動速度が速くなる。それに従い、モータはラック軸に対して機械的に連結されていることから、同モータの回転数が高くなる。そして、モータの回転数が高くなると、そのN−T特性上、モータの出力可能なトルクが小さくなる。つまり、ラック軸に作用するアシスト軸力が小さくなる。したがって、例えば比ストロークの大きな領域で素早い操舵を行う場合にラック軸に作用する全体軸力が不足し易く、操舵フィーリングが低下するおそれがある。
本発明の目的は、バリアブルギヤレシオのラックアンドピニオン機構を採用しつつ、操舵フィーリングの低下を抑制できる操舵制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する操舵制御装置は、ステアリングホイールが連結されるステアリングシャフトと、転舵輪が連結されるラック軸と、前記ステアリングシャフトのピニオン歯と前記ラック軸のラック歯とが噛合することにより構成され、前記ステアリングシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するラックアンドピニオン機構と、モータの回転を前記ラック軸の往復動に変換することにより運転者の操舵を補助するためのアシストトルクを付与するアシスト機構と、前記ステアリングホイールの操舵角を示す値を360°を超える範囲を含む絶対角で検出する舵角検出装置とを備え、前記ラックアンドピニオン機構として、比ストロークが前記操舵角に応じて変化するように前記ラック歯が形成されたものを採用した電動パワーステアリング装置を制御対象とし、前記アシストトルクの目標となる目標アシストトルクに対応する駆動電流が前記モータに供給されるように、dq座標系における電流フィードバック制御を実行することにより前記モータの作動を制御するものにおいて、弱め界磁制御を実行するためのd軸電流の目標となるd軸電流指令値を演算するd軸電流指令値演算部を備え、前記d軸電流指令値演算部は、前記比ストロークの増大に基づいて前記d軸電流指令値の絶対値が大きくなるように、前記操舵角を示す値に基づいて前記d軸電流指令値を演算する。
上記構成によれば、比ストロークの大きな領域でモータに弱め界磁制御を実行するためのd軸電流を供給するため、モータの回転数が高くなっても、同モータの出力可能なトルクが小さくなることを抑制できる。そのため、例えば比ストロークの大きな領域で素早い操舵を行った場合において、ラック軸に作用する操舵軸力が小さくなっても、アシスト軸力が低下することを抑制できる。これにより、転舵輪を転舵させるための全体軸力が不足し難くなり、操舵フィーリングの低下を抑制できる。
上記操舵制御装置において、前記アシスト機構は、前記ラックアンドピニオン機構とは別の変換機構を介して前記アシストトルクを付与することが好ましい。
ここで、操舵速度が同じ場合、比ストロークが大きい領域と比ストロークが小さい領域とを比較すると、比ストロークが大きい領域の方がラック軸の往復動する速度が速くなる。そのため、アシスト機構がラックアンドピニオン機構とは別の変換機構を介してアシストトルクを付与する構成では、比ストロークの大きな領域においてモータの回転数が高くなり易く、アシスト軸力が小さくなり易い。したがって、上記構成のように、比ストロークの大きな領域でモータにd軸電流を供給する効果は大である。
ここで、操舵速度が同じ場合、比ストロークが大きい領域と比ストロークが小さい領域とを比較すると、比ストロークが大きい領域の方がラック軸の往復動する速度が速くなる。そのため、アシスト機構がラックアンドピニオン機構とは別の変換機構を介してアシストトルクを付与する構成では、比ストロークの大きな領域においてモータの回転数が高くなり易く、アシスト軸力が小さくなり易い。したがって、上記構成のように、比ストロークの大きな領域でモータにd軸電流を供給する効果は大である。
上記操舵制御装置において、前記d軸電流指令値演算部は、前記操舵角と前記d軸電流指令値との関係を示すマップを備え、該マップを参照することにより前記操舵角に応じた前記d軸電流指令値を演算することが好ましい。
上記構成によれば、マップを参照することにより、容易に操舵角に応じた好適なd軸電流指令値を演算できる。
上記操舵制御装置において、前記d軸電流指令値演算部は、車速の増大に基づいて前記d軸電流指令値の絶対値が小さくなるように、前記操舵角を示す値及び前記車速に基づいて前記d軸電流指令値を演算することが好ましい。
上記操舵制御装置において、前記d軸電流指令値演算部は、車速の増大に基づいて前記d軸電流指令値の絶対値が小さくなるように、前記操舵角を示す値及び前記車速に基づいて前記d軸電流指令値を演算することが好ましい。
上記構成のようにd軸電流をモータに供給することで、モータの消費電力は大きくなる。一方、車速が増大すると、車速が小さい場合に比べ、転舵輪を転舵させるために必要な全体軸力が小さくなる。したがって、車速が大きい場合には、アシスト軸力が小さくなっても、全体軸力が不足し難い。この点を踏まえ、上記構成では、車速の増大に応じてd軸電流指令値を小さくするため、操舵フィーリングの低下を抑制しつつ、余分なd軸電流を供給することを抑制でき、省電力化を図ることができる。
本発明によれば、バリアブルギヤレシオのラックアンドピニオン機構を採用しつつ、操舵フィーリングの低下を抑制できる。
以下、操舵制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、操舵制御装置1の制御対象となる電動パワーステアリング装置(以下、EPS)2は、運転者によるステアリングホイール3の操作に基づいて転舵輪4を転舵させる操舵機構5と、操舵機構5にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアシスト機構6とを備えている。
図1に示すように、操舵制御装置1の制御対象となる電動パワーステアリング装置(以下、EPS)2は、運転者によるステアリングホイール3の操作に基づいて転舵輪4を転舵させる操舵機構5と、操舵機構5にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアシスト機構6とを備えている。
操舵機構5は、ステアリングホイール3が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に連結された転舵軸としてのラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通される円筒状のラックハウジング13と、ステアリングシャフト11の回転をラック軸12の往復動に変換するラックアンドピニオン機構14とを備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール3が位置する側から順にコラム軸15、中間軸16、及びピニオン軸17を連結することにより構成されている。
ラック軸12とピニオン軸17とは、ラックハウジング13内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構14は、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸17に形成されたピニオン歯17aとが噛合されることにより構成されている。また、ラック軸12の両端には、その軸端部に設けられたボールジョイントからなるラックエンド18を介してタイロッド19がそれぞれ回動自在に連結されている。タイロッド19の先端は、転舵輪4が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、EPS2では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド19を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪4の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
ここで、ラック歯12aは、例えば歯のピッチや圧力角等の諸元がラック軸12における軸方向位置に応じて異なるように設定されている。つまり、EPS2は、ステアリングシャフト11の回転量に対するラック軸12の移動量である比ストロークSが、ステアリングホイール3の操舵角θhに応じて変化する所謂バリアブルギヤレシオのラックアンドピニオン機構14を採用している。
具体的には、図2に示すように、比ストロークSは、操舵角θhの絶対値が所定の第1操舵角θh1以下となるステアリング中立位置付近の範囲R1では、一定の値S1に設定されている。また、比ストロークSは、操舵角θhの絶対値が第1操舵角θh1よりも大きく、かつ所定の第2操舵角θh2以下の範囲R2では、操舵角θhの絶対値の増大につれて徐々に大きくなるように設定されている。そして、比ストロークSは、操舵角θhの絶対値が所定の第2操舵角θh2よりも大きなストロークエンド近傍の範囲R3では、値S1よりも大きな一定の値S2に設定されている。これにより、操舵角θhが大きくなるほど、転舵輪4の転舵角が変化しやすくなり、素早く旋回することが可能になっている。
図1に示すように、アシスト機構6は、駆動源であるモータ21と、モータ21の回転を伝達する伝達機構22と、伝達機構22を介して伝達された回転をラック軸12の往復動に変換する変換機構23とを備えている。そして、アシスト機構6は、モータ21の回転を伝達機構22を介して変換機構23に伝達し、変換機構23にてラック軸12の往復動に変換することで、モータ21が出力するモータトルクをアシストトルクTaとして操舵機構5に付与する。なお、本実施形態のモータ21には表面磁石型の三相ブラシレスモータが採用され、伝達機構22にはベルト機構が採用され、変換機構23にはボールネジ機構が採用されている。
したがって、EPS2においては、転舵輪4を転舵させるためにラック軸12に作用する軸力(以下、全体軸力Ft)は、運転者が入力する操舵トルクThに基づく軸力(以下、操舵軸力Fh)と、モータ21が付与するアシストトルクTaに基づく軸力(以下、アシスト軸力Fa)との合計になる。なお、全体軸力Ft、操舵軸力Fh及びアシスト軸力Faは、それぞれ下記(1)〜(3)のように表される。
Ft=Fh+Fa…(1)
Fh=A×Th÷S…(2)
Fa=B×Ta×P÷L…(3)
上記各式において、「A」、「B」は所定の係数をそれぞれ示し、「P」は伝達機構22の減速比、「L」は変換機構23のリードを示す。
Fh=A×Th÷S…(2)
Fa=B×Ta×P÷L…(3)
上記各式において、「A」、「B」は所定の係数をそれぞれ示し、「P」は伝達機構22の減速比、「L」は変換機構23のリードを示す。
次に、本実施形態の電気的構成について説明する。
操舵制御装置1は、モータ21に接続されており、その作動を制御する。なお、操舵制御装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の制御が実行される。
操舵制御装置1は、モータ21に接続されており、その作動を制御する。なお、操舵制御装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の制御が実行される。
操舵制御装置1には、車速Vを検出する車速センサ31、及び運転者の操舵によりステアリングシャフト11に付与された操舵トルクThを検出するトルクセンサ32が接続されている。なお、トルクセンサ32は、ピニオン軸17に設けられており、トーションバー33の捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。また、操舵制御装置1には、モータ21の回転角であるモータ角θmを360°の範囲内の相対角で検出する回転角センサ34が接続されている。なお、操舵トルクTh及びモータ角θmは、例えば右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。そして、操舵制御装置1は、これら各センサから入力される各状態量に基づいて、モータ21に駆動電力を供給することにより、アシスト機構6の作動、すなわち操舵機構5にラック軸12を往復動させるべく付与するアシストトルクTaを制御する。
以下、操舵制御装置1の構成について説明する。
図3に示すように、操舵制御装置1は、モータ制御信号Mを生成するマイコン41と、モータ制御信号Mに基づいてモータ21に駆動電流を供給する駆動回路42とを備えている。マイコン41には、操舵トルクTh、車速V及びモータ角θmが入力される。また、マイコン41には、駆動回路42とモータ21との間の給電線に設けられた電流センサ43u〜43wにより検出されるモータ21の各相電流値Iu,Iv,Iwが入力される。
図3に示すように、操舵制御装置1は、モータ制御信号Mを生成するマイコン41と、モータ制御信号Mに基づいてモータ21に駆動電流を供給する駆動回路42とを備えている。マイコン41には、操舵トルクTh、車速V及びモータ角θmが入力される。また、マイコン41には、駆動回路42とモータ21との間の給電線に設けられた電流センサ43u〜43wにより検出されるモータ21の各相電流値Iu,Iv,Iwが入力される。
本実施形態の駆動回路42には、例えばFET等の複数のスイッチング素子を有する周知のPWMインバータがそれぞれ採用されている。モータ制御信号Mは、各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。そして、マイコン41は、モータ制御信号Mを駆動回路42に出力することにより、車載電源44からモータ21に駆動電力を供給する。これにより、モータ21からアシストトルクTaが操舵機構5に付与される。
次に、マイコン41の構成について説明する。
マイコン41は、所定の演算周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行して、モータ制御信号Mを演算する。詳しくは、マイコン41は、ステアリングホイール3の操舵角θhを演算する操舵角演算部51と、アシストトルクTaの目標値である目標アシストトルクTa*を演算する目標アシストトルク演算部52とを備えている。また、マイコン41は、目標アシストトルクTa*及び操舵角θhに応じた電流指令値を演算する電流指令値演算部53と、モータ制御信号Mを演算するモータ制御信号演算部54とを備えている。
マイコン41は、所定の演算周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行して、モータ制御信号Mを演算する。詳しくは、マイコン41は、ステアリングホイール3の操舵角θhを演算する操舵角演算部51と、アシストトルクTaの目標値である目標アシストトルクTa*を演算する目標アシストトルク演算部52とを備えている。また、マイコン41は、目標アシストトルクTa*及び操舵角θhに応じた電流指令値を演算する電流指令値演算部53と、モータ制御信号Mを演算するモータ制御信号演算部54とを備えている。
操舵角演算部51には、モータ角θmが入力される。操舵角演算部51は、モータ角θmを、例えばステアリング中立位置からのモータ21の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲を含む絶対角に換算して取得する。なお、ステアリング中立位置としては、例えば図示しないメモリに予め設定された設定値を用いる構成や、運転者による操舵を通じて学習した学習値を用いる構成等を適宜採用できる。そして、操舵角演算部51は、絶対角に換算された回転角に伝達機構22の減速比、変換機構23のリード、及びラックアンドピニオン機構14の回転速度比に基づく換算係数を乗算して操舵角θhを演算する。つまり、本実施形態では、操舵角演算部51及び回転角センサ34により、舵角検出装置が構成されている。このように演算された操舵角θhは、電流指令値演算部53に出力される。
目標アシストトルク演算部52には、操舵トルクTh及び車速Vが入力される。目標アシストトルク演算部52は、操舵トルクThの絶対値が大きくなるほど、また車速Vが低くなるほど、より大きな絶対値を有する目標アシストトルクTa*を演算する。このように演算された目標アシストトルクTa*は、電流指令値演算部53に出力される。
電流指令値演算部53には、車速V、目標アシストトルクTa*及び操舵角θhが入力される。そして、電流指令値演算部53は、これらの各状態量に基づいて、dq座標系におけるd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を演算する。なお、dq座標系は、モータ角θmに従う二相回転座標系であって、ロータに設けられた界磁の作る磁束に沿う方向のd軸と、このd軸に直交したq軸とにより規定されるものである。したがって、d軸電流が負の値である場合は、界磁の磁束を弱める弱め界磁制御を行うことになる。また、q軸電流の大きさはアシストトルクTaの大きさに比例する。
詳しくは、電流指令値演算部53は、d軸電流指令値Id*を演算するd軸電流指令値演算部61と、q軸電流指令値Iq*を演算するq軸電流指令値演算部62とを備えている。q軸電流指令値演算部62には、目標アシストトルクTa*が入力される。q軸電流指令値演算部62は、目標アシストトルクTa*の絶対値が大きくなるほど、より大きな絶対値を有するq軸電流指令値Iq*を演算する。
d軸電流指令値演算部61には、操舵角θh及び車速Vが入力される。そして、d軸電流指令値演算部61は、比ストロークSの増大に基づいてd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなるとともに、車速Vの増大に基づいてd軸電流指令値Id*の絶対値が小さくなるように、操舵角θh及び車速Vに基づいてd軸電流指令値Id*を演算する。
具体的には、d軸電流指令値演算部61は、操舵角θhの絶対値及び車速Vとd軸電流指令値Id*との関係を定めたマップを備えており、同マップを参照することにより操舵角θh及び車速Vに応じたd軸電流指令値Id*を演算する。図4に示すように、マップは、操舵角θhの絶対値がゼロの時にd軸電流指令値Id*がゼロとなり、操舵角θhの絶対値の増大に基づいて、d軸電流指令値Id*が負の値で線形的に減少するように設定されている。そして、同マップは、操舵角θhの絶対値がある程度以上大きくなると、d軸電流指令値Id*が一定となるように設定されている。つまり、本実施形態のd軸電流指令値演算部61が備えるマップは、操舵角θhの絶対値の増大に基づいて、d軸電流指令値Id*の絶対値が増大するように設定されている。また、同マップは、車速Vの増大に基づいて、d軸電流指令値Id*の絶対値が小さくなるように設定されている。図3に示すように、このように演算されたd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*は、モータ制御信号演算部54に出力される。
モータ制御信号演算部54には、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に加え、モータ角θm及び各相電流値Iu,Iv,Iwが入力される。そして、モータ制御信号演算部54は、dq座標系における電流フィードバック演算を実行することにより、モータ制御信号Mを演算する。
具体的には、モータ制御信号演算部54は、モータ角θmに基づいて相電流値Iu,Iv,Iwをdq座標上に写像することにより、dq座標系におけるモータ21の実電流値であるd軸電流及びq軸電流を演算する。そして、モータ制御信号演算部54は、d軸電流をd軸電流指令値Id*に追従させるべく、またq軸電流をq軸電流指令値Iq*に追従させるべく、d軸及びq軸上の各電流偏差に基づいて目標電圧値を演算し、該目標電圧値に基づくデューティ比を有するモータ制御信号Mを生成する。
このように演算されたモータ制御信号Mが駆動回路42に出力され、モータ制御信号Mに応じた駆動電力がモータ21に出力される。これにより、モータ21から目標アシストトルクTa*に示されるモータトルクがアシストトルクとして操舵機構5に付与される。
次に、d軸電流指令値Id*の出力に伴う操舵フィーリングの変化について説明する。
まず、図5に示すように、モータ21のN−T特性は、モータ21の回転数Nの増大に基づいて、モータ21の出力可能なトルクTが徐々に減少する傾向を示す。また、EPS2では、運転者によるステアリング操作の操舵速度ωが速くなると、モータ21は変換機構23及び伝達機構22を介してラック軸12に機械的に連結されているため、その回転数Nが高くなり、モータ21の出力可能なトルクTが小さくなる。
まず、図5に示すように、モータ21のN−T特性は、モータ21の回転数Nの増大に基づいて、モータ21の出力可能なトルクTが徐々に減少する傾向を示す。また、EPS2では、運転者によるステアリング操作の操舵速度ωが速くなると、モータ21は変換機構23及び伝達機構22を介してラック軸12に機械的に連結されているため、その回転数Nが高くなり、モータ21の出力可能なトルクTが小さくなる。
したがって、図6に示すように、上記(1)式で示される全体軸力Ftは、操舵速度ωの増大に基づいて減少する傾向を示す。そして、本実施形態のEPS2は、バリアブルギヤレシオのEPSとして構成されているため、操舵トルクThの大きさが同じであっても、比ストロークSの大きな領域では比ストロークの小さな領域よりも、ラック軸12に作用する操舵軸力Fhが小さくなる。
一例として、比ストロークSが小さな値S1である場合における全体軸力Ftの操舵速度ωに対する特性を同図において破線で示す特性とする。このとき、比ストロークSの値が「S1」よりも大きな「S2」である場合における同特性は、同図において実線で示す特性となり、その全体軸力Ftが破線で示す全体軸力Ftよりも小さくなる。したがって、比ストロークSの大きな領域、すなわちストロークエンド近傍で素早い操舵を行う場合には、ラック軸12に作用する全体軸力Ftが不足するおそれがある。その結果、速い速度で操舵するのに必要な操舵トルクThが増え、ステアリングホイール3が重く感じるおそれがある。
この点、本実施形態では、比ストロークSの増大に基づいて弱め界磁制御を行うためのd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなり、モータ21に負のd軸電流を供給する。そのため、モータ21のN−T特性は、図5において実線で示す特性から二点鎖線で示す特性に変化し、回転数Nの高い領域でモータ21の出力可能なトルクTが大きくなる。したがって、図6において二点鎖線で示すように、全体軸力Ftの操舵速度ωに対する特性が変化し、全体軸力Ftが不足し難くなる。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)d軸電流指令値演算部61は、比ストロークSの増大に基づいてd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなるように、操舵角θhに基づいてd軸電流指令値Id*を演算するため、モータ21の回転数Nが高くなっても、同モータ21の出力可能なトルクTが小さくなることを抑制できる。そのため、例えば比ストロークSの大きな領域で素早い操舵を行った場合において、ラック軸12に作用する操舵軸力Fhが小さくなっても、アシスト軸力Faが低下することを抑制できる。これにより、転舵輪4を転舵させるための全体軸力Ftが不足し難くなり、操舵フィーリングの低下を抑制できる。
(1)d軸電流指令値演算部61は、比ストロークSの増大に基づいてd軸電流指令値Id*の絶対値が大きくなるように、操舵角θhに基づいてd軸電流指令値Id*を演算するため、モータ21の回転数Nが高くなっても、同モータ21の出力可能なトルクTが小さくなることを抑制できる。そのため、例えば比ストロークSの大きな領域で素早い操舵を行った場合において、ラック軸12に作用する操舵軸力Fhが小さくなっても、アシスト軸力Faが低下することを抑制できる。これにより、転舵輪4を転舵させるための全体軸力Ftが不足し難くなり、操舵フィーリングの低下を抑制できる。
(2)操舵速度ωが同じ場合、比ストロークSが大きい領域と比ストロークSが小さい領域とを比較すると、比ストロークSが大きい領域の方がラック軸12の往復動する速度が速くなる。そのため、本実施形態のようにアシスト機構6がラックアンドピニオン機構14とは別の変換機構23を介してアシストトルクTaを付与する構成では、比ストロークSの大きな領域においてモータ21の回転数Nが高くなり易く、アシスト軸力Faが小さくなり易い。したがって、ラックアンドピニオン機構14とは別の変換機構23を介してモータ21のアシストトルクTaを操舵機構5に付与する構成において、比ストロークSの大きな領域でモータ21にd軸電流を供給する効果は大である。
(3)d軸電流指令値演算部61は、操舵角θhとd軸電流指令値Id*との関係を示すマップを備え、該マップを参照することにより操舵角θhに応じたd軸電流指令値Id*を演算するため、容易に操舵角θhに応じた好適なd軸電流指令値Id*を演算できる。
(4)本実施形態のようにd軸電流をモータ21に供給することで、モータ21の消費電力は大きくなる。一方、車速Vが増大すると、車速Vが小さい場合に比べ、転舵輪4を転舵させるために必要な全体軸力Ftが小さくなる。したがって、車速Vが大きい場合には、アシスト軸力Faが小さくなっても、全体軸力Ftが不足し難い。この点を踏まえ、本実施形態では、車速Vの増大に応じてd軸電流指令値Id*を小さくするため、操舵フィーリングの低下を抑制しつつ、余分なd軸電流を供給することを抑制でき、省電力化を図ることができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、操舵角θhに基づいてd軸電流指令値Id*を演算したが、これに限らず、例えばモータ角θmをステアリング中立位置からのモータ21の回転数をカウントすることにより絶対角に換算して取得したモータ絶対角等、操舵角θhを示す値に基づいてd軸電流指令値Id*を演算してもよい。
・上記実施形態では、操舵角θhに基づいてd軸電流指令値Id*を演算したが、これに限らず、例えばモータ角θmをステアリング中立位置からのモータ21の回転数をカウントすることにより絶対角に換算して取得したモータ絶対角等、操舵角θhを示す値に基づいてd軸電流指令値Id*を演算してもよい。
・上記実施形態では、操舵角θh及び車速Vに基づいてd軸電流指令値Id*を演算したが、これに限らず、例えば操舵角θhのみに基づいてd軸電流指令値Id*を演算し、車速Vによってd軸電流指令値Id*が変化しなくてもよい。
・上記実施形態では、d軸電流指令値演算部61はマップを参照することにより、d軸電流指令値Id*を演算したが、これに限らず、例えば操舵角θh及び車速Vとd軸電流指令値Id*との関係を示す関数式を用いてd軸電流指令値Id*を演算してもよい。
・上記実施形態において、d軸電流指令値演算部61の備えるマップの形状は、適宜変更可能である。例えば操舵角θhの絶対値の増大に基づいて、d軸電流指令値Id*が負の値で非線形的に減少するように設定してもよい。
・上記実施形態において、モータ21にロータの電気角θeを検出する回転角センサを設け、この電気角θeを操舵制御装置1に入力してもよい。この場合、操舵制御装置1では電気角θeの変化方向を判別しながら電気角θeを積算してロータの機械的回転角であるモータ角θmを算出し、これを上記実施形態の制御に用いてもよい。
・上記実施形態において、操舵角θhを絶対角で検出可能なステアリングセンサを設け、該ステアリングセンサからの検出値に基づいてd軸電流指令値Id*を演算してもよい。なお、この場合は、ステアリングセンサが舵角検出装置に相当する。
・上記実施形態において、操舵角θhに応じた比ストロークSの変化の態様は適宜変更可能である。例えばステアリング中立位置付近の範囲での比ストロークSの値を、ストロークエンド近傍の範囲での比ストロークSの値よりも大きくなるようにしてもよい。
・上記実施形態において、アシスト機構6の構成は適宜変更可能である。例えば図7に示すように、伝達機構22としてウォーム減速機等の減速機を採用し、変換機構23としてラックアンドピニオン機構を採用してもよい。また、アシスト機構6が変換機構23を備えず、ステアリングシャフト11にアシストトルクを付与する構成としてもよく、例えば図8に示すように、ウォーム減速機等の減速機71を介してモータ21からアシストトルクをコラム軸15に付与する構成としてもよい。
Fa…アシスト軸力、Fh…操舵軸力、Ft…全体軸力、Id*…d軸電流指令値、Iq*…q軸電流指令値、S…比ストローク、Ta…アシストトルク、Ta*…目標アシストトルク、Th…操舵トルク、V…車速、θh…操舵角、1…操舵制御装置、2…電動パワーステアリング装置、3…ステアリングホイール、4…転舵輪、5…操舵機構、6…アシスト機構、11…ステアリングシャフト、12…ラック軸、12a…ラック歯、14…ラックアンドピニオン機構、17…ピニオン軸、17a…ピニオン歯、21…モータ、22…伝達機構、23…変換機構、41…マイコン、42…駆動回路、53…電流指令値演算部、61…d軸電流指令値演算部、62…q軸電流指令値演算部。
Claims (4)
- ステアリングホイールが連結されるステアリングシャフトと、転舵輪が連結されるラック軸と、前記ステアリングシャフトのピニオン歯と前記ラック軸のラック歯とが噛合することにより構成され、前記ステアリングシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するラックアンドピニオン機構と、モータの回転を前記ラック軸の往復動に変換することにより運転者の操舵を補助するためのアシストトルクを付与するアシスト機構と、前記ステアリングホイールの操舵角を示す値を360°を超える範囲を含む絶対角で検出する舵角検出装置とを備え、
前記ラックアンドピニオン機構として、比ストロークが前記操舵角に応じて変化するように前記ラック歯が形成されたものを採用した電動パワーステアリング装置を制御対象とし、
前記アシストトルクの目標となる目標アシストトルクに対応する駆動電流が前記モータに供給されるように、dq座標系における電流フィードバック制御を実行することにより前記モータの作動を制御する操舵制御装置において、
弱め界磁制御を実行するためのd軸電流の目標となるd軸電流指令値を演算するd軸電流指令値演算部を備え、
前記d軸電流指令値演算部は、前記比ストロークの増大に基づいて前記d軸電流指令値の絶対値が大きくなるように、前記操舵角を示す値に基づいて前記d軸電流指令値を演算する操舵制御装置。 - 請求項1に記載の操舵制御装置において、
前記アシスト機構は、前記ラックアンドピニオン機構とは別の変換機構を介して前記アシストトルクを付与する操舵制御装置。 - 請求項1又は2に記載の操舵制御装置において、
前記d軸電流指令値演算部は、前記操舵角と前記d軸電流指令値との関係を示すマップを備え、該マップを参照することにより前記操舵角に応じた前記d軸電流指令値を演算する操舵制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
前記d軸電流指令値演算部は、車速の増大に基づいて前記d軸電流指令値の絶対値が小さくなるように、前記操舵角を示す値及び前記車速に基づいて前記d軸電流指令値を演算する操舵制御装置。
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2019
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