以下、本発明に係る制御弁の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の実施形態では、本発明に係る制御弁を従来と同様の自動車用冷却水(以下、単に「冷却水」と略称する。)の循環系に適用したものを例に説明する。
〔第1実施形態〕
(制御弁の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御弁CVの分解斜視図を示している。また、図2は、制御弁CVの平面図を示し、図3は、図2のA−A線に沿って切断した制御弁CVの縦断面図を示している。なお、各図の説明では、回転軸部材2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、回転軸部材2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸部材2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図3中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図1〜図3に示すように、制御弁CVは、ハウジング1の内部において回転軸部材2を介して回転可能に支持された筒状の弁体3と、ハウジング1に収容され、弁体3を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ4と、ハウジング1に収容され、電動モータ4の回転を減速して伝達する減速機構5と、を有する。
ハウジング1は、軸方向に2分割に形成されていて、弁体3及び電動モータ4を収容する第1ハウジング11と、第1ハウジング11の一端側の開口部を閉塞するように設けられ、減速機構5を収容する第2ハウジング12と、から構成される。第1ハウジング11と第2ハウジング12は、共に合成樹脂材料によって成形されていて、複数のボルト13aにより固定されている。また、第1ハウジング11と第2ハウジング12の接合面間(第1フランジ部115と第2フランジ部122の間)は、環状のシール部材18により液密にシールされている。
第1ハウジング11は、弁体3を収容する中空円筒状の弁体収容部111と、弁体収容部111に並列して付設され、電動モータ4のモータ本体41を収容する中空円筒状のモータ収容部112と、を有する。そして、この第1ハウジング11は、軸方向の一端部に設けられた取付部(具体的には、後述する第1フランジ部115)を介して図示外の自動車に搭載され、図示外の固定手段、例えば複数のボルトにより固定される。
弁体収容部111は、軸方向の一端側が、第1ハウジング11と一体に形成される端壁113により閉塞されている。また、端壁113には、回転軸部材2が貫通する軸貫通孔114が、軸方向に沿って形成されている。一方、弁体収容部111の軸方向の他端側は、外部に開口形成され、この開口部111aは、封止部材としてキャップ14により閉塞されている。
ここで、キャップ14は、弁体収容部111の開口部111aに挿入可能な凸状を呈し、開口部111a側から端壁113側に向かって段差状に縮径形成されていて、複数のスクリュ13cによって開口部111a(第1ハウジング11)に取り付けられている。すなわち、キャップ14は、開口部111aの端面に当接可能に設けられ、キャップ14の取り付けに供する大径部141と、大径部141から段差状に縮径し、開口部111aの内周面に嵌合可能な中径部142と、中径部142からさらに段差状に縮径し、弁体3の内周側に臨む小径部143と、を有する。キャップ14の中径部142の外周側には、環状のシール溝144が周方向に沿って形成されていて、シール溝144には、開口部111aの内周面と弾性的に接触可能な、環状のシールリング15が嵌め込まれている。すなわち、キャップ14(中径部142)と開口部111aの間は、シールリング15によって液密にシールされることで、外部からの異物の侵入が抑制されている。また、キャップ14の小径部143の外周側には、弁体3の軸方向他端部に有する開口端部30bを内周側から軸受可能な、環状の軸受B2が配置されている。すなわち、小径部143の外周側に保持された軸受B2によって、弁体3の開口端部30bが、回転支持されている。
また、第2ハウジング12に接合される第1ハウジング11の軸方向他端部の外周縁には、概ね一連の第1フランジ部115が、径方向に突出形成されている。この第1フランジ部115には、第2ハウジング12との締結に供する複数の雌ねじ孔構成部116が形成されている。なお、雌ねじ孔構成部116は、ボルト13aと噛み合う雌ねじ部が内周面に直接形成されていてもよく、また当該雌ねじ孔構成部116内に金属製のスリーブがインサートされ、このスリーブによって雌ねじ部が形成されていてもよい。また、第1フランジ部115には、第2ハウジング12(具体的には、後述する第2フランジ部122)との位置決めに供する位置決めピン16が挿入される、複数の位置決めピン孔117が形成されている。さらに、第1フランジ部115には、制御弁CVを自動車の車体等に取り付け可能な、複数の取付孔118が形成されている。
また、弁体収容部111の側壁(周壁)には、冷却水の導入、排出に供する一対の導入口E1及び排出口E2が、それぞれ径方向に沿って貫通形成されている。この導入口E1と排出口E2は、回転軸線Zを挟んで径方向に対向して設けられている。導入口E1には、直線状の導入管L1が複数のスクリュ13bにより取り付けられていて、導入管L1を介して、例えば自動車に搭載される機関(エンジンやモータ、燃料電池など)の冷却水路と接続されている。他方、排出口E2には、二股状の排出管L2が複数のスクリュ13cにより取り付けられていて、排出管L2を介して、例えば自動車に搭載される補機(ラジエータやオイルクーラ、ヒータなど)の冷却水路と接続されている。
また、導入口E1の内周側には、導入口E1と弁体3との間を液密にシール可能な、シール構成体が設けられている。このシール構成体は、合成樹脂材料からなる円筒状のシール部材S1と、シール部材S1を弁体3側へ付勢する金属製のコイルスプリングSP1と、で構成される。さらに、シール部材S1の外周側には、導入口E1と摺接可能なシールリングSR1が取り付けられる。すなわち、シールリングSR1により、導入口E1とシール部材S1との間が液密にシールされている。
シール部材S1は、所定のフッ素樹脂(本実施形態では、いわゆるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン))によって形成され、導入口E1の内周側に収容されていて、弁体3側へ向けて進退移動可能に設けられている。コイルスプリングSP1は、シール部材S1と導入管L1の間に所定のセット荷重が付与された状態で配置され、シール部材S1を弁体3側へ付勢する付勢部材である。
第2ハウジング12は、弁体収容部111とモータ収容部112とに跨ってこれら弁体収容部111とモータ収容部112とを被覆可能に開口する縦断面凹形状に形成されている。そして、この凹形状の内部空間により、減速機構5を収容する減速機構収容部121が形成される。また、第1ハウジング11に接合される第2ハウジング12の軸方向他端部の外周縁には、複数の第2フランジ部122が、径方向に突出形成されている。第2フランジ部122には、第1ハウジング11(第1フランジ部115)との締結及び位置決めに供する複数のボルト貫通孔123及び位置決めピン孔124が貫通形成されている。なお、ボルト貫通孔123には、それぞれボルト13aの軸力を受ける金属製のスリーブ17がインサートされている。
回転軸部材2は、一定の外径を有する金属製の丸棒であって、軸貫通孔114を貫通して弁体収容部111と減速機構収容部121とに跨って配置され、軸貫通孔114の内周側に収容保持された軸受B1によって回転可能に支持されている。また、回転軸部材2と軸貫通孔114の間は、環状のシール部材20によって液密にシールされている。すなわち、このシール部材20によって、軸貫通孔114を通じた弁体収容部111内の冷却水の第2ハウジング12側への流出が抑止されている。
弁体3は、軸方向の一端側が底壁30bにより閉塞された有底円筒状を呈し、底壁30bに設けられた軸接続孔325を介して、回転軸部材2の軸方向の他端部に一体回転可能に接続されている。また、弁体3は、かかる片持ち構造に基づき、軸方向の他端側が、キャップ14に保持された軸受B2によって回転可能に支持されている。
電動モータ4は、出力軸42が第2ハウジング12側へ臨むかたちでモータ本体41がモータ収容部112内に収容される。そして、この電動モータ4は、モータ本体41の出力軸42側の端部に径方向の外側へと延びるように設けられたフランジ部43を介して、モータ収容部112の開口縁部に複数のボルト44により固定される。なお、電動モータ4は、図示しない車載の電子コントローラ(ECU)によって駆動制御され、例えば車両の運転状態に応じて弁体3を回転駆動することによって、ラジエータ等の補機に対する冷却水の適切な送給が実現される。
減速機構5は、2組の平歯車である第1歯車G1及び第2歯車G2によって構成される。第1歯車G1は、電動モータ4の出力軸42と同軸上に設けられ、出力軸42と一体となって回転する第1駆動ギヤG11と、第1ハウジング11の幅方向の中間位置(弁体収容部111とモータ収容部112の間)に配置される支持軸50によって回転支持され、第1駆動ギヤG11と噛み合う第1従動ギヤG12と、で構成される。第2歯車G2は、支持軸50によって支持され、第1従動ギヤG12と一体となって回転する第2駆動ギヤG21と、回転軸部材2に固定され、第2駆動ギヤG21と噛み合う第2従動ギヤG22と、で構成される。このような構成から、電動モータ4の出力軸42から出力された回転駆動力が、第1歯車G1及び第2歯車G2を介して2段階に減速されて回転軸部材2(弁体3)へと伝達される。
図4(a)は図3の要部拡大図を示し、図4(b)は図4(a)中のB−B線に沿って切断した断面図を示している。図5(a)は弁体3の斜視図を示し、図5(b)は図5(a)中に示す弁体3を底壁側から見た矢視図(平面図)を示している。図6(a)は金属部32の斜視図を示し、図6(b)は図6(a)中に示す金属部32を回転規制部328の突出方向から見た矢視図(平面図)を示している。なお、各図の説明では、回転軸部材2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、回転軸部材2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸部材2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図4(a)中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図4に示すように、第1ハウジング11は、軸方向に沿ってほぼ一定の内径を有する円筒状の空間であり、弁体3を回転可能に収容する弁体収容部111を内部に有する。弁体収容部111には、軸方向の一端側の端壁113に貫通形成された軸貫通孔114を介して、弁体3の回転駆動に供する回転軸部材2の軸方向の他端側が挿入されている。また、弁体収容部111の軸方向他端側の開口部111aは、樹脂製のキャップ14により閉塞されている。
キャップ14は、開口部111aの端面に当接可能な大径部141と、大径部141から段差状に縮径し、開口部111aの内周面に嵌合可能な中径部142と、中径部142からさらに段差状に縮径し、弁体3の内周側に臨む小径部143と、を有する。中径部142の外周側には、環状のシール溝144が周方向に沿って形成され、このシール溝144には、開口部111aの内周面と弾性的に接触可能な、環状のシールリング15が嵌め込まれている。また、小径部143の外周側には、弁体3と小径部143との径方向間に、弁体3の開口端部30bを内周側から軸受する、円環状の軸受B2が配置され、この軸受B2によって、弁体3の開口端部30bが回転可能に支持されている。換言すれば、キャップ14は支持部材として機能し、軸受部材としての軸受B2と共に、回転支持部材を構成している。なお、軸受B2は、低摩擦の樹脂材料、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)によって形成されている。
また、弁体収容部111には、軸方向の一端部の周壁に、弁体3の後述する回転規制部328と当接して弁体3の回転規制に供する被回転規制部119が、径方向の内側に向かって突出形成されている。被回転規制部119は、図4(b)に示すように、先端側がやや先細る横断面ほぼ台形状を呈し、後述する回転規制部328に対して周方向から当接可能となるように、弁体収容部111の周壁と一体に形成されている。すなわち、被回転規制部119は、後述する回転規制部328と対向する第1、第2回転規制面119a,119bが後述する回転規制部328の第1、第2周方向端面328a,328bに当接(面接触)することで、弁体3の回転を規制する。この際、被回転規制部119は、第1、第2回転規制面119a,119bのほぼ全体が、後述する回転規制部328の第1、第2周方向端面328a,328bと当接する。
また、被回転規制部119は、弁体収容部111の周壁との接続部が、それぞれ隅アール119c、119dによって接続されている。この隅アール119c、119dは、被回転規制部119が後述する回転規制部328と当接したときの、被回転規制部119と弁体収容部111の周壁との接続部における応力集中の発生が抑制されている。すなわち、隅アール119c、119dにより、被回転規制部119と後述する回転規制部328とが繰り返し当接することによる被回転規制部119の耐久性の低下を抑制可能となっている。
図4、図5に示すように、弁体3は、軸方向の一端側が回転軸部材2との接続に供する底壁により閉塞され、かつ他端側が開口する有底円筒状に形成されている。具体的には、弁体3は、主として、樹脂材料により形成された本体部31と、前記底壁を構成して回転軸部材2と繋がる、金属材料(例えばアルミニウム合金)により形成された金属部32と、を備える。
本体部31は、軸方向に沿って延びる概ね円筒状を呈し、弁体3の周壁を構成する。本体部31の周壁には、回転軸部材2(弁体3)の回転位置に応じて導入口E1と重なり合う(径方向に対向する)導入部M1と、回転軸部材2(弁体3)の回転位置に応じて排出口E2と重なり合う(径方向に対向する)排出部M2と、を有する。導入部M1及び排出部M2は、いずれも周方向に延びる長孔に形成されていて、それぞれ導入口E1及び排出口E2の周方向幅よりも大きく形成されている。また、導入部M1及び排出部M2の軸方向幅は、それぞれ導入口E1及び排出口E2の軸方向幅とほぼ同じ大きさに設定されている。
図4〜図6に示すように、金属部32は、外部に露出して弁体3の底壁及び周壁の一部を構成する基部321と、基部321の外周側において周方向に沿って扇状に延び、本体部31に包み込まれるインサート部322と、が鍛造によって一体に形成されている。換言すれば、金属部32は、基部321が本体部31と共に弁体3の一連の壁面(底壁面及び周壁面)を構成し、インサート部322が本体部31に包み込まれることで、金属部32と本体部31とが一体に接続されている。
基部321は、回転軸部材2との接続に供する円筒状の筒状基部323と、筒状基部323の外周側に設けられ、弁体3の底壁及び周壁の一部を構成する扇形状の側壁構成部324と、を有する。筒状基部323は、中央部に、回転軸部材2に対して圧入可能な内径を有する軸接続孔325が、軸方向に沿って貫通形成されている。側壁構成部324は、筒状基部323の外周側における一部の周方向領域に周方向へ沿って延びる扇状を呈し、弁体3の一部の周方向領域において、筒状基部323と共に弁体3の底壁の一部を構成しつつ、弁体3の周壁の一部を構成する。
インサート部322は、基部321よりも薄肉(軸方向幅が小さい)に形成され、軸方向及び周方向において、それぞれ段部326a,326bを介して基部321と接続される。また、インサート部322の外周部には、複数の凹部327aと凸部327bが周方向において交互に連続して配置される凹凸部327が形成されている。そして、インサート部322は、各段部326a,326bを埋めるように全体が本体部31に包み込まれ、基部321と本体部31とがほぼ段差なく連続する。また、本体部31がインサート部322を包み込む際、本体部31を構成する樹脂がインサート部322の凹部327a内に入り込むことにより、凹部327aの段差分だけ本体部31と金属部32との接触面積が増大して、本体部31と金属部32がより強固に接続される。換言すれば、凹部327a内に入り込んだ樹脂が凸部327bの周方向端部に引っかかることによって、本体部31と金属部32の周方向における相対移動が規制され、回転軸部材2から金属部32に入力されたトルクが、本体部31に対して良好に伝達可能となっている。
また、側壁構成部324の軸方向外側の端面には、弁体収容部111に設けられた被回転規制部119と当接することによって弁体3の回転規制に供する回転規制部328が、軸方向外側へ向かって突出形成されている。回転規制部328は、弁体3の周方向に沿って延びる円弧状を呈し、第1、第2周方向端面328a,328bが、それぞれ被回転規制部119の第1、第2回転規制面119a,119bに当接することにより、弁体3の回転(回転範囲)が規制される。すなわち、図4(b)に示すように、弁体3が時計方向に回転する場合は、回転規制部328の第1周方向端面328aが、被回転規制部119の第1回転規制面119aに当接する。一方、弁体3が反時計方向に回転する場合は、回転規制部328の第2周方向端面328bが、被回転規制部119の第2回転規制面119bに当接する。
(本実施形態の作用効果)
従来の制御弁によれば、弁体の回転規制に際して、弁体の本体部と一体に形成された樹脂製の回転規制部をハウジングの被回転規制部に当接させることで、弁体の回転(回転範囲)を規制していた。このため、弁体の回転規制に際して、回転規制部と被回転規制部との衝突に伴う力(トルク)が、回転規制部と一体に形成された樹脂製の本体部と、該本体部と共にインサート成形される金属部との接続部分(界面)に作用してしまう。より具体的には、金属部には、回転軸部材を介して周方向一方のトルクが入力されるのに対して、本体部には、被回転規制部から回転規制部を介して周方向他方のトルクが入力され、本体部と金属部との接続部分(界面)に剪断力が作用することになる。その結果、本体部と金属部との接続部分(界面)に、ひび割れ等が発生してしまうおそれがあった。
これに対して、本実施形態に係る制御弁CVでは、以下の効果が奏せられることで、前記従来の制御弁の課題を解決することができる。
すなわち、制御弁CVは、自動車の冷却回路に設けられる制御弁であって、回転軸部材2が挿入される弁体収容部111と、弁体収容部111に設けられた第1連通口(導入口E1)と、弁体収容部111に設けられ、第1連通口(導入口E1)とは異なる位置に形成された第2連通口(排出口E2)と、弁体収容部111に設けられた被回転規制部119と、を有するハウジング1と、回転軸部材2を回転駆動するアクチュエータ(電動モータ4)と、弁体収容部111に収容され、回転軸部材2と繋がる弁体であって、回転軸部材2の回転位置に応じて第1連通口(導入口E1)と第2連通口(排出口E2)の接続状態を変化させ、樹脂材料によって形成された本体部31と、金属材料によって、少なくとも一部が本体部31に包み込まれるように本体部31と一体に設けられ、回転軸部材2と繋がる金属部32と、金属部32と同じ金属材料によって金属部32と一体に形成され、回転軸部材2の回転位置に応じて被回転規制部119と当接する回転規制部328と、を有する弁体3と、を備えている。
このように、本実施形態に係る制御弁CVでは、回転規制部328が金属部32に一体に形成され、この金属製の回転規制部328をハウジング1(弁体収容部)111に設けられた被回転規制部119に当接させることで、弁体3の回転(回転範囲)を規制する。このため、弁体3の回転規制時に、回転規制部328と被回転規制部119との衝突に伴う力(トルク)が作用しても、この衝突に伴う力(トルク)は、回転軸部材2と繋がる金属部32に直接入力されることになる。これにより、弁体3の回転規制時に生ずる、回転規制部328と被回転規制部119との衝突に伴う力(トルク)が、弁体3の本体部31と金属部32との接続部分(界面)に作用するおそれがなくなる。その結果、弁体3の回転規制に起因する、弁体3の本体部31と金属部32との接続部分(界面)の損傷を抑制することができる。
また、本実施形態では、回転規制部328は、回転軸部材2の回転軸線Zに関する周方向において、弁体3の外周に沿って設けられている。
このように、回転規制部328が弁体3の外周に沿って設けられていることにより、弁体3を比較的簡素に、かつコンパクトに形成することが可能となる。これにより、制御弁CVの大型化を抑制することができる。
また、本実施形態では、回転規制部328は、回転軸線Zの方向に突出している。
このように、回転規制部328が回転軸線Zの方向(軸方向)に突出していることにより、弁体3の径方向の大型化を抑制することが可能となる。これにより、制御弁CVの径方向の大型化が抑制され、制御弁CVの自動車への搭載性を向上させることができる。
また、本実施形態では、回転規制部328は、回転軸線Zに直交する平面から見たときに、回転軸線Zに関する周方向において円弧状に形成されている。
このように、回転規制部328が、回転軸線Zに直交する平面から見たときに、回転軸線Zに関する周方向において円弧状に形成されていることにより、当該回転規制部328の剛性を高めることが可能となる。これにより、弁体3の回転規制に係る当該弁体3の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態では、弁体3は、回転軸線Zに関する径方向において回転規制部328の反対側に設けられ、金属部32と同じ金属材料によって金属部32と一体に形成され、連続した凹部327aと凸部327bを有し、本体部31に包み込まれる凹凸部327を有する。
このように、本実施形態では、金属部32のうち本体部31に包み込まれる部分に、凹部327aと凸部327bからなる凹凸部327が設けられている。かかる構成により、金属部32が本体部31に包み込まれる際に、本体部31を構成する樹脂が凹部327aに入り込んで、この凹部327aに入り込んだ樹脂が凸部327bに引っかかることになる。これにより、本体部31と金属部32の相互間において、トルク伝達を良好に行うことが可能となり、弁体3の適切な回転位置制御に供する。
また、本実施形態では、第1連通口(導入口E1)及び第2連通口(排出口E2)は、回転軸線Zに関する周方向の位置に設けられている。
このように、第1連通口(導入口E1)及び第2連通口(排出口E2)が周方向に配置されていることにより、各連通口(導入口E1及び排出口E2)を軸方向に配置する場合に比べて、弁体3の軸方向寸法を小さく設定することが可能となり、制御弁CVの大型化を抑制することができる。
また、本実施形態では、弁体3は、回転軸部材2と繋がる底部(底壁30b)を有する筒状に形成され、回転軸線Zの方向において前記底部(底壁30b)と対向する位置であって、弁体3の内周側に、弁体3の回転を支持する回転支持部材(キャップ14及び軸受B2)が設けられている。
このように、本実施形態では、弁体3が、軸方向の一端側(底壁30b側)が回転軸部材2によって支持され、他端側が回転支持部材(キャップ14及び軸受B2)によって支持されている。かかる両持ち支持により、弁体3の安定した回転支持が可能となり、制御弁CVの適切な回転制御や耐久性の向上に供する。
また、本実施形態では、前記回転支持部材は、弁体収容部111に設けられた支持部材(キャップ14)と、回転軸線Zに関する径方向において弁体3と支持部材(キャップ14)の間に設けられた軸受部材(軸受B2)と、を備えている。
このように、本実施形態では、回転支持部材が、支持部材(キャップ14)と軸受部材(軸受B2)とからなる2ピース構造となっている。これにより、支持部材(キャップ14)と軸受部材(軸受B2)とを、それぞれ別の材質で形成することが可能となる。すなわち、支持部材(キャップ14)と軸受部材(軸受B2)とを、それぞれ最適な材質、例えば軸受部材(軸受B2)については低摩擦の樹脂材料によって形成することが可能となる。その結果、弁体3のより良好な回転支持を得ることができる。
〔第2実施形態〕
図7〜図10は、本発明に係る制御弁の第2実施形態を示し、前記第1実施形態に係る回転規制部328の形態を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る制御弁CV2の縦断面を表示した図3に相当する図を示している。図8(a)は図8の要部拡大図を示し、図8(b)は図8(a)中のC−C線に沿って切断した断面図を示している。図9(a)は弁体3の斜視図を示し、図9(b)は図9(a)中に示す弁体3を底壁側から見た矢視図(平面図)を示している。図10(a)は金属部32の斜視図を示し、図10(b)は図10(a)中に示す金属部32を回転規制部328の突出方向から見た矢視図(平面図)を示している。なお、各図の説明では、回転軸部材2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、回転軸部材2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸部材2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図8(a)中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図7〜図8に示すように、弁体収容部111には、軸方向の一端側の周壁に、弁体3の回転規制部328が当接可能な被回転規制部119が、径方向の内側に向かって突出形成されている。なお、この被回転規制部119は、弁体収容部111の軸方向の一端部から回転規制部328と径方向に対向する位置まで、軸方向に沿って延びるように設けられている。そして、被回転規制部119は、図8(b)に示すように、先端側がやや先細る横断面ほぼ台形状を呈し、回転規制部328に対して周方向から当接可能となるように、弁体収容部111の周壁と一体に形成されている。すなわち、被回転規制部119は、回転規制部328と周方向において対向する第1、第2回転規制面119a,119bが回転規制部328の第1、第2周方向端面328a,328bに当接(面接触)することで、弁体3の回転を規制する。この際、被回転規制部119は、第1、第2回転規制面119a,119bのほぼ全体が、回転規制部328の第1、第2周方向端面328a,328bと当接する。
一方、図7〜図10に示すように、弁体3のインサート部322には、所定の周方向領域(前記第1実施形態において回転規制部328が設けられる領域に相当する領域)に、被回転規制部119と当接可能な回転規制部328が、径方向外側へ向かって突出形成されている。回転規制部328は、弁体3の周方向に沿って延びる扇状を呈し、第1、第2周方向端面328a,328bが、それぞれ被回転規制部119の第1、第2回転規制面119a,119bに当接することにより、弁体3の回転(回転範囲)を規制する。すなわち、図8(b)に示すように、弁体3が時計方向に回転する場合は、回転規制部328の第1周方向端面328aが、被回転規制部119の第1回転規制面119aに当接する。一方、弁体3が反時計方向に回転する場合は、回転規制部328の第2周方向端面328bが、被回転規制部119の第2回転規制面119bに当接する。
以上のように、本実施形態に係る制御弁CV2では、回転規制部328は、回転軸線Zに関する径方向に突出している。
このように、回転規制部328が回転軸線Zに関する径方向に突出していることによって、弁体3の軸方向の大型化を抑制することが可能となる。これにより、制御弁CVの軸方向の大型化が抑制され、制御弁CVの自動車への搭載性を向上させることができる。
さらに、回転規制部328を回転軸線Zに関する径方向に突出させることで、弁体3を鍛造する際の成型性が良好となり、制御弁CV2の製造コストの低廉化等に供されるメリットがある。
また、本実施形態では、回転規制部328は、回転軸線Zに直交する平面から見たときに、回転軸線Zに関する周方向に扇状に形成されている。
このように、回転規制部328が、回転軸線Zに直交する平面から見たときに、回転軸線Zに関する周方向において扇状に形成されていることによって、当該回転規制部328の剛性を高めることが可能となる。これにより、弁体3の回転規制に係る当該弁体3の耐久性を向上させることができる。
〔その他の実施形態〕
本発明に係る制御弁は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、適用する自動車の仕様等に応じて自由に変更可能である。
特に、前記各実施形態では、制御弁の適用の一例として、冷却水の循環系に適用したものを例示したが、当該制御弁は、冷却水のみならず、例えば潤滑油など様々な流体について適用可能であることは言うまでもない。
また、前記各実施形態では、本発明に係る第1連通口として、ハウジング1に対して径方向に開口する導入口E1を設けた態様を例示したが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、導入口E1は、ハウジング1に対して径方向に開口する態様のものに限られず、例えば前記各実施形態においてキャップ14により閉塞される開口部111aのように、軸方向に開口する態様であってもよい。同様に、弁体3に設けられる導入部M1についても、上記導入口E1の配置変更に応じて、弁体3の周壁に開口する態様から弁体3の軸方向に開口する態様に変更することができる。
また、前記各実施形態では、本発明に係る第2連通口として、単一の排出口E2を設けた態様を例示したが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、排出口E2については、制御弁CV,CV2に接続される機器の数量に応じて増やすことができる。同様に、弁体3に設けられる排出部M2についても、単一の態様に限定されるものではなく、上記排出口E2の数量や制御弁の制御パターン(弁体3の制御ポジション数)等に応じて増やすことができる。
以上説明した実施形態に基づく制御弁としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該制御弁は、その1つの態様において、自動車の冷却回路に設けられる制御弁であって、回転軸部材が挿入される弁体収容部と、前記弁体収容部に設けられた第1連通口と、前記弁体収容部に設けられ、前記第1連通口とは異なる位置に形成された第2連通口と、前記弁体収容部に設けられた被回転規制部と、を有するハウジングと、前記回転軸部材を回転駆動するアクチュエータと、前記弁体収容部に収容され、前記回転軸部材と繋がる弁体であって、前記回転軸部材の回転位置に応じて前記第1連通口と前記第2連通口の接続状態を変化させ、樹脂材料によって形成された本体部と、金属材料によって、少なくとも一部が前記本体部に包み込まれるように前記本体部と一体に設けられ、前記回転軸部材と繋がる金属部と、前記金属部と同じ金属材料によって前記金属部と一体に形成され、前記回転軸部材の回転位置に応じて前記被回転規制部と当接する回転規制部と、を有する前記弁体と、を備えている。
前記制御弁の好ましい態様において、前記回転規制部は、前記回転軸部材の回転軸線に関する周方向において、前記弁体の外周に沿って設けられている。
別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記回転規制部は、前記回転軸線の方向に突出している。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記回転規制部は、前記回転軸線に直交する平面から見たときに、前記回転軸線に関する周方向において円弧状に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記回転規制部は、前記回転軸線に関する径方向に突出している。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記回転規制部は、前記回転軸線に直交する平面から見たときに、前記回転軸線に関する周方向に扇状に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記弁体は、前記回転軸線に関する径方向において前記回転規制部の反対側に設けられ、前記金属部と同じ金属材料によって前記金属部と一体に形成され、連続した凹部と凸部を有し、前記本体部に包み込まれる凹凸部を有する。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記第1連通口及び前記第2連通口は、前記回転軸線に関する周方向の位置に設けられている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記弁体は、前記回転軸部材と繋がる底部を有する筒状に形成され、前記回転軸線の方向において前記底部と対向する位置であって、前記弁体の内周側に、前記弁体の回転を支持する回転支持部材が設けられている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記回転支持部材は、前記弁体収容部に設けられた支持部材と、前記回転軸線に関する径方向において前記弁体と前記支持部材の間に設けられた軸受部材と、を備えている。