以下、本発明に係る制御弁の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の各実施形態では、本発明に係る制御弁を前記特許文献1と同様の自動車用冷却水(以下、「冷却水」と略称する。)の循環回路に適用したものを例に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る制御弁が適用される冷却水の循環回路の構成を表したブロック図である。
制御弁CVは、エンジンEG(具体的には図示しないシリンダヘッド)の側部に取り付けられている。また、制御弁CVは、エンジンEGと、エアコンの温風を作り出すために熱交換を行う暖房熱交換器HT、エンジンEG内の燃焼後の排気ガスを冷却するEGRクーラEC、エンジンEG内の摺動部分を潤滑するためのオイルを冷却するオイルクーラOC、並びにエンジンEGを冷却するための冷却水を冷却するラジエータRDと、の間に配置されている。
具体的には、ウォータポンプWPから吐出された冷却水が、導入通路L0を通じて制御弁CVに導かれ、この制御弁CVにより、配管L1〜L3を介して暖房熱交換器HT、オイルクーラOC及びラジエータRDへとそれぞれ分配される。すなわち、制御弁CVは、これら配管L1〜L3により分配される冷却水の流量を制御する。この際、暖房熱交換器HTに導かれた冷却水は、EGRクーラECへと導かれた後、ウォータポンプWPを介してエンジンEG側へと還流されるようになっている。同様に、オイルクーラOC及びラジエータRDに導かれた冷却水についても、ウォータポンプWPを介してエンジンEG側へと還流されるようになっている。
また、制御弁CVには、導入通路L0をバイパスすることによって冷却水をエンジンEGからエンジンEG内で燃焼される燃料と混合される空気の流量を制御するスロットルチャンバーTCへ直接導くバイパス通路BLが設けられている。これにより、エンジンEG側から導かれた冷却水は、スロットルチャンバーTCへと常時供給可能となっている。そして、スロットルチャンバーTCに供給された冷却水は、暖房熱交換器HTと同様、EGRクーラECへと導かれて、EGRクーラEC及びウォータポンプWPを介してエンジンEG側へと還流される。なお、図1の符号WTは、冷却水の循環回路内の水温を計測する水温センサを示している。
ここで、制御弁CVは、必ずしもエンジンEGの直後配置される必要はなく、例えば図2に示すようにエンジンEGの直前に配置してもよく、また、搭載される車両の仕様に応じて適宜変更することができる。また、スロットルチャンバーTCに分配される冷却水は、後述するように流量制御の対象に該当しないことから、バイパス通路BLの有無についても、搭載対象の仕様に応じて適宜変更することができる。
図3は本実施形態における制御弁CVの構造を示す分解斜視図、図4は制御弁CVの平面図、図5は図4のA−A線に沿って切断した断面図である。
制御弁CVは、第1ハウジング11及び第2ハウジング12からなるハウジング1と、第1ハウジング11内に駆動軸2を介して回転軸Zを中心に回転自在に支持された円筒状の弁体3と、第1ハウジング11内に収容されて弁体3を駆動する電動モータ4と、第2ハウジング12内に収容されて電動モータ4の回転を減速して駆動軸2へと伝達する減速機構5と、を有する。
本実施形態において、第1ハウジング11は、アルミニウム合金材料をもって鋳造により製造される。また、図5に示すように、第1ハウジング11は、図中下方に向かって開口して弁体3を収容する円筒形状の弁体収容部13を備える。また、本実施形態において、第1ハウジング11及び後述する第2ハウジング12は、アルミニウム合金材料により製造されたものを例示しているが、該各ハウジング11,12は、耐熱性及び耐薬品性を有する合成樹脂、例えばエンジニアリングプラスチックの一種であるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)により製造されてもよい。
弁体収容部13の開口の反対側、すなわち第1ハウジング11の第2ハウジング12が取り付けられる側の端壁には、第2ハウジング12に形成された後述する減速機構収容部15へと通じる軸貫通孔11dが形成されている。そして、この軸貫通孔11dに駆動軸2が貫通され、当該駆動軸2の弁体収容部13へと突出した側の端部に弁体3が固定される。また、軸貫通孔11dの弁体収容部13側の開口部近傍には、軸受B1が設けられていて、この軸受B1により駆動軸2が回転可能に支持されている。また、軸貫通孔11dの減速機構収容部15側の開口部近傍には、駆動軸2と軸貫通孔11dの周壁との間に、環状のシール部材SL4が設けられていて、このシール部材SL4により、軸貫通孔11dを通じた弁体収容部13内の冷却水の第2ハウジング12側への流出が抑止されている。
第1ハウジング11は、弁体収容部13に隣接して電動モータ4を収容するほぼ円筒形状のモータ収容部14を備える。モータ収容部14は、第2ハウジング12側へと開口していて、当該モータ収容部14には、出力軸4cが第2ハウジング12側へ突出するように電動モータ4が収容される。電動モータ4は、モータ本体4aが第1ハウジング11のモータ収容部14に収容された状態で、モータ本体4aのハウジングの出力軸4c側に設けられたフランジ部4bを介してモータ収容部14の開口縁部に複数のボルトBT2により固定される。なお、電動モータ4は、図示しない車載の電子コントローラにより制御され、車両の運転状態に応じて弁体3を回動駆動することで、ラジエータRD等に対する冷却水の適切な分配が実現される。
第1ハウジング11は、弁体収容部13の開口の外周域に延びるように設けられた第1フランジ部11aを介して図示しないエンジン(シリンダヘッドの側部)に図示しない複数のボルトによって固定される。第1フランジ部11aには、エンジン内部と連通してエンジン内部からの冷却水を導入する主連通口となる導入口10が形成されていて、弁体収容部13の開口はこの導入口10に通じている。
弁体収容部13に収容される弁体3は、後述するように中空状に形成され、回転軸Z方向の一端側に形成された開口端部が、弁体収容部13から導入口10側へ多少突出した位置に設けられている。これにより、導入口10から導入された冷却水が、弁体3の内周側に形成された内側通路17へと導かれるようになっている。また、弁体3は、導入口10の内周側には、軸受B2が配置されていて、この軸受B2により、回転軸Z方向の一端側の開口端部外周が回転可能に支持されている。
また、第1ハウジングの周壁には、所定の位置に、外部から弁体収容部13に連通して配管L1〜L3が接続されるほぼ円筒形状の複数の貫通孔が排出口E1〜E3として形成されている。排出口E1は、配管L1を介して例えば暖房熱交換器HTに冷却水を供給するために用いられる。同様に、排出口E2は、配管L2を介して例えばオイルクーラOCに冷却水を供給するために用いられる。なお、排出口E1及び排出口E2は、第1ハウジング11の周壁において、弁体3の回転軸Z方向に離間して並列に配置される。排出口E3は、弁体収容部13を介して排出口E1及び排出口E2と対向するかたちで配置され、配管L3を介して例えばラジエータRDに冷却水を循環させるために用いられる。ここで、排出口E1〜E3が上述した接続関係にある場合は、排出口E3は、排出口E1及び排出口E2よりも大径に構成される。また、この場合、排出口E1は、排出口E2よりも大径であることが望ましい。
そして、電動モータ4が弁体3の回転位相を制御することによって、排出口E1〜E3に対応するかたちで弁体3に形成された後述の開口部M1〜M3と排出口E1〜E3との重なり具合が変化する。例えば、排出口E1と開口部M1の少なくとも一部が重なり合う位置に弁体3が制御されると、内側通路17に流入した冷却水が開口部M1、排出口E1を介して配管L1に分配される。同様に、排出口E2と開口部M2の少なくとも一部が重なり合う位置に弁体3が制御されると配管L2に、また、排出口E3と開口部M3の少なくとも一部が重なり合う位置に弁体3が制御されると配管L3に、それぞれ冷却水が分配される。なお、内側通路17に流入した冷却水は、後述する複数の連通口3cから弁体3と第1ハウジング11との間に形成される外側通路18にも導かれ、弁体3の外周と弁体収容部13との間に満たされる。
第2ハウジング12は、図3、図5に示すように、第1ハウジング11と対向する側が弁体収容部13とモータ収容部14とに跨って両者13,14を覆うように開口する凹形状を有し、この凹形状の内部空間により、減速機構5を収容する減速機構収容部15が構成されている。そして、この第2ハウジング12は、開口部の外周域に延びるように設けられた第2フランジ部12aを介して複数のボルトBT1により第1ハウジング11に固定される。なお、第1ハウジング11と第2ハウジング12との結合部にはシール部材SL3が介在されており、減速機構収容部15内が実質的に気密に保持される。
減速機構5は、2つの食い違い歯車である第1歯車G1と第2歯車G2からなる駆動機構である。すなわち、第1歯車G1は、電動モータ4の出力軸4cと同軸上に設けられ、該出力軸4cと一体となって回転する第1ねじ歯車WG1と、電動モータ4の出力軸4cとほぼ直交して配置される中間軸30に固定され、第1ねじ歯車WG1と噛み合う第1斜歯歯車HG1と、で構成される。第2歯車G2は、中間軸30に固定され、第1斜歯歯車HG1と一体となって回転する第2ウォームギヤWG2と、駆動軸2に固定され、第2ウォームギヤWG2と噛み合う第2斜歯歯車HG2と、で構成される。このような構成から、電動モータ4の出力軸4cから出力される回転駆動力は、第1歯車G1と第2歯車G2を介することで、2段階に減速されて弁体3に伝えられる。
図6は、図5中の弁体収容部3の近傍を拡大して表示した拡大断面図である。
第1排出口E1、第2排出口E2及び第3排出口E3の内周側には、該排出口E1〜E3と弁体3との間を気密にシールするシール手段が設けられている。すなわち、このシール手段は、弾性を有する合成樹脂からなる円筒状のシール部材S1〜S3と、金属製のコイルスプリングSP1〜SP3と、弾性を有する合成樹脂製のOリングSL2と、から構成されている。
シール部材S1〜S3は、排出口E1〜E3の内周側に収容配置され、弁体3側へと向かって進退移動可能に設けられている。コイルスプリングSP1〜SP3は、排出口E1〜E3の配管L1〜L3が接続される側の開口部に設けられた着座部L1a,L2a,L3aに着座するように、この着座部L1a,L2a,L3aとシール部材S1〜S3の配管L1〜L3側の端面との間に所定のセット荷重をもって配置され、それぞれシール部材S1〜S3を弁体3側へと付勢する付勢部材である。OリングSL2は、シール部材S1〜S3の外周面に切欠形成された凹部内に収容されるかたちで排出口E1〜E3の内周面とシール部材S1〜S3の外周面との間に設けられ、排出口E1〜E3の内周面と摺接することで排出口E1〜E3とシール部材S1〜S3との間をシールしている。
また、シール部材S1〜S3には、弁体3側の端部内周側に、後述のシール摺接部D1〜D3と摺接するほぼ円錐テーパ状のシール面S1a〜S3aが形成されている。他方、シール部材S1〜S3の配管L1〜L3側の端面には、コイルスプリングSP1〜SP3の端部が着座するほぼ平坦な着座面S1b〜S3bが形成されている。シール面S1a〜S3aは、その厚さ方向(径方向)のほぼ中間部(具体的には後述する図9(a)に示す点F)が摺接する、いわゆる線接触をもって、シール摺接部D1〜D3に摺接するようになっている。なお、本実施形態では、閉弁時におけるシール面S1a〜S3aと弁体3との摺接部が、弁体3の回転軸Z方向において後述する開口部M1〜M3の内側となるように構成されている。
また、本実施形態において、シール部材S1〜S3は、合成樹脂材料の一種である四フッ化エチレン樹脂(PTFE樹脂)製のものを用いているが、これらシール部材S1〜S3としては、低摩擦性に優れたものであれば、PTFE樹脂以外の合成樹脂材料を用いることも可能である。
図7は弁体3の外観を表した図であって、図7(a)は弁体3の斜視図、図7(b)は弁体3の側面図である。
弁体3は、合成樹脂材料の一種であるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)を射出成型することにより形成される。なお、この弁体3は、耐熱性及び耐薬品性に優れた合成樹脂であれば、PPS樹脂に限られず、他の合成樹脂材料で製造されていてもよい。
また、弁体3の回転軸Z方向の一端側(図5中の下方)の端面には、第1ハウジング11の導入口10より導かれる冷却水を内周側通路17に流入させるための流入口3aが形成されている。一方、弁体3の他端側(図5中の上方)には、端壁3bが設けられている。端壁3bには、内側通路17と外側通路18とを連通可能にするほぼ円弧状の複数の連通口3cが弁体3の回転方向(回転軸Z周りの方向)に沿って形成されている。さらに、端壁3bの中央部には、駆動軸2との固定に供する円筒状の軸固定部3dが設けられている。軸固定部3dの内周側には、金属製のインサート部材3eが一体に成形されていて、該インサート部材3eに駆動軸2が圧入されることで、弁体3が駆動軸2に固定されるようになっている。
また、弁体3の外周面、つまり弁体3の径方向(回転軸Zに直交する方向)の外側面は、弁体3の回転時にシール部材S1,S2と摺接する部分が、ほぼ球面形状に形成されている。同様に、弁体3の回転時にシール部材S3と摺接する部分についても、ほぼ球面形状に形成されている。なお、以下では、便宜上、シール部材S1〜S3と摺接する部分を、シール摺接部(シール摺接部D1〜D3)と呼称する。他方、弁体3の回転時にシール部材S1と摺接しない部分を非シール摺動部UA1と呼称し、同様に、弁体3の回転時にシール部材S2と摺接しない部分を非シール摺動部UA2a,UA2bと呼称する。なお、本実施形態では、シール摺接部D1,D2が、弁体3の回転軸Z方向に並んで形成されている。他方、シール摺接部D3は、シール摺接部D1,D2とは径方向反対側の側壁に形成されている。
シール摺接部D1は、弁体3の外周面に周方向のほぼ半周にわたって形成されている。そして、このシール摺接部D1には、弁体3の回転軸Z方向において排出口E1とほぼ過不足なく重なり合い、かつ排出口E1の内径よりもやや幅が狭く周方向へと延びる開口部M1が形成されている。同様に、シール摺接部D2,D3についても、弁体3の外周面に周方向のほぼ半周にわたって形成されている。そして、シール摺接部D2には、弁体3の回転軸Z方向において排出口E2とほぼ過不足なく重なり合い、かつ排出口E2の内径よりもやや幅が狭く周方向へと延びる開口部M2が形成されている。また、シール摺接部D3には、弁体3の回転軸Z方向に排出口E3とほぼ過不足なく重なり合い、かつ排出口E3の内径よりもやや幅の狭い開口部M3が形成されている。
図8は弁体3の横断面図であり、図8(a)は図7(b)のA−A線に沿って切断した断面図、図8(b)は図7(b)のB−B線に沿って切断した断面図である。
図8(a)において、D1で示される領域は、シール摺接部D1が形成されている領域である。シール部材S1のシール摺接面S1aの全体がC1aで示される領域内に位置しているときは、第1排出口E1は閉弁した状態となる。一方、シール摺接面S1aの少なくとも一部分が領域OA1にかかり、排出口E1の内径部分が開口部M1と重なり合うようになると、内側通路17と配管L1とが連通し、第1排出口E1が開弁した状態となる。以下では、シール摺接部D1において、領域C1aの部分を閉塞領域と、領域OA1を開口領域と呼称する。
閉塞領域C1aの開口領域OA1(開口部M1)との境界となる外周壁端部には、内周側に形成された内側端壁部M1bと、内側端壁部M1bのエッジ部分を面取りした面取り部M1cと、外周面C1aD1から面取り部M1cにかけて弁体3の径方向内側に傾斜し、面取り部M1cに近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなるシールガイド部M1aが形成されている。また、開口領域OA1の閉塞領域C1aとは反対側の外周壁端部には、非シール摺動部UA1に形成される周壁部C1bD1側から開口領域OA1側に向かって傾斜した端壁部M1dが形成されている。
閉塞領域C1aを形成する外周面C1aD1とシールガイド部M1aの成す角と、端壁部M1dが隣接する周壁部C1bD1と端壁部M1dの成す角は、共に鈍角である。また、閉塞領域C1aの外周面C1aD1とシールガイド部M1aの成す角度は、端壁部M1dが隣接する周壁部C1bD1と端壁部M1dの成す角度より大きく形成されている。なお、内側端壁部M1b及び端壁部M1dは、弁体3を型成形する場合の型分割方向の抜き勾配を形成するためにテーパ状に設けられている。
シール摺接部D2についても、シール摺接部D1と同様、閉塞領域C2aと開口領域OA2(開口部M2)の境界に位置する外周壁端部に、シールガイド部M2aが形成されている。また、開口領域OA2の閉塞領域C2aとは反対側の周壁端部には、非シール摺動部UA2aに形成される周壁部C2bD2側から開口領域OA2側へと向かって傾斜した端壁部M2dが形成されている。なお、シール摺接部D3については、閉塞領域C3a,C3bと開口領域OA3(開口部M3)の境界に位置する外周壁の端部にシールガイド部は設けられていないが、当該シールガイド部については、必要に応じて適宜設けることができる。
図9は、図7(b)のB−B線に沿って切断した横断面断面を示しており、制御弁CVの具体的な作動状態を説明するための要部拡大断面図である。以下では、図9に基づいて、弁体3が電動モータ4によって回転駆動されたときのシール部材S2の挙動について説明する。
図9(a)に示すように、シール摺接部D2の閉塞領域C2aとシール部材S2のシール面S2aが安定的に接触している状態から弁体3が時計回り(図中の右から左)に回転していく場合、シール部材S2は、コイルスプリングSP2によって弁体3の方向に付勢されているため、シール面S2aと弁体3との間に発生する摺動抵抗に基づいて、弁体3から反時計回りの反力を受ける。この状態で、図9(b)に示すように、シール部材S2のシール面S2aの一部が開口部M2にかかると、シール部材S2は、弁体3から受ける反時計回りの反力により、弁体3(シール摺接部D2)の移動方向(図中の左方向)へと傾く。
一方、図9(c)に示すように、シール部材S2のシール面S2aの全体が開口領域OA2にある状態で弁体が反時計回りに回転し始めると、シール部材S2は、開口部M2の幅方向の外側(図中の紙面手前側及び奥側)でシール面S2aが弁体3と摺接しているため、弁体3から時計回り方向の反力を受け、弁体3(シール摺接部D2)の移動方向(図中の右方向)へと傾く。さらに、弁体3が反時計回りに回転を続けると、図9(d)に示すように、シール面S2aの外周縁S2a’が、シールガイド部M2aと当接することになる。そうすると、図中の右方向へと傾いたシール部材S2は、図9(e)に示すように、弁体3の回転軸Zに対する接線方向の力Faを受けることで、この接線方向の力Faがシールガイド部M2aによって分解される図中の左下方向のシール部材持ち上げ力Fbを受けることになる。その結果、図9(f)に示すように、当該シール部材持ち上げ力Fbに基づいてシール部材S2が反時計回りに回転することとなり、シール部材S2の傾き(前記図中の右方向への傾き)が修正される。
また、シールガイド部M2aと閉塞領域C2aにおけるシール摺接部D2の周壁部C2bD2は鈍角という緩やかな角度変化で接続されることから、この接続部分におけるシール部材S2の欠損が発生し難い。なお、シール部材S1の挙動についても前記シール部材S2の場合と同様であることから、具体的な説明は省略する。また、シール部材S3の挙動については、シール摺接部D3の閉塞領域C3a,C3bと開口領域OA3との間にシールガイド部が設けられていないことから説明を省略するが、シール摺接部D3の閉塞領域C3a,C3bと開口領域OA3の間にシールガイド部が設けられた場合のシール部材S3の挙動については、前記シール部材S2の場合と同様である。
従来の制御弁においては、弁体の回転動作の影響によりシール部材に一方向の傾きが生じた状態でシール部材がシール摺接部の閉塞領域へと当接すると、閉塞領域の開口領域との境界となる周壁端部に対しほぼ直角方向から衝突することになり、シール部材が当該周壁端部から強い力を受けて損傷し、シール性を損なってしまうおそれがあった。
これに対し、本実施形態に係る制御弁CVでは、弁体3の回転方向においてシール部材S1,S2が摺接する部分にシールガイド部M1a,M2aを設けた。これにより、一方向に傾いたシール部材S1,S2がシールガイド部M1a、M2aに当接することによってシールガイド部M1a,M2aからの反力が作用して、前記一方向に傾いたシール部材S1、S2の傾きを修正することができる。
しかも、シール部材S1、S2は、鈍角という緩やかな角度でもって接続されたシールガイド部M1a,M2aとシール摺接部D1,D2の閉塞領域C1a,C2aとの接続部を通過する(横切る)ことになるため、その接続部分によって、シール部材S1,S2の耐久性を向上させることができる。これにより、弁体3とシール部材S1,S2との間のシール性の低下を抑制することができる。
また、シールガイド部M1a,M2aが開口部M1,M2の幅方向の全体にわたって形成されていることで、シール部材S1,S2がシールガイド部M1a,M2aに当接した際に、安定してシール部材S1,S2の傾きを修正することができる。
〔第2実施形態〕
図10は、本発明に係る制御弁の第2実施形態を示したものであって、第1実施形態に係る周壁部C1aD1,C2aD2と連続して接続されるシールガイド部M1a,M2aの形状を変更したものを表している。また、図11は、図10のA−A線及びB−B線に沿って切断した弁体3の横断面図にそれぞれ対応したシール部材S1,S2を配置した状態を表したものである。なお、本実施形態でも、後述するシールガイド部M1aa,M2aa以外の構成については、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、図10中に斜線領域で示すシールガイド部M1aa,M2aaが、第1実施形態にて例示したような傾斜形状(図6中のM1a,M2a参照)ではなく、図11に示すように、弁体3の回転軸Zに対し周方向に曲率が一定の半径Rとなる断面円弧状の曲面形状に形成されている。
かかる本実施形態の構成によれば、シール部材S1,S2の外周縁S1a’,S2a’がシールガイド部M1aa,M2aaを通過するにあたり、該シールガイド部M1aa,M2aaが前記曲面形状であることから、シール部材S1,S2の外周縁S1a’,S2a’及びシール面S1a,S2aの耐久性を向上させることができ、シール部材S1,S2の良好なシール性の維持に供される。
〔第3実施形態〕
図12は、本発明に係る制御弁の第3実施形態を示したものであって、第2実施形態に係るシール部材S1,S2の外周縁S1a’,S2a’の形状を変更したものを表している。なお、図12では、本実施形態に係るシール部材S2のみを示しており、後述するシール部材S2の外周縁S2a’r以外の構成については、第2実施形態と同様である。
本実施形態では、シール部材S2の外周縁S2a’rの形状が、第2実施形態にて例示したような角張った形状でなく、曲率が一定の半径R’ となる断面円弧状の曲面形状となるように形成されている。
かかる本実施形態の構成によれば、シール部材S2の外周縁S2a’rが前記曲面形状のシールガイド部M2aaを通過するにあたり、該シール部材S2の外周縁S2a’rが前記曲面形状であることから、シールの外周縁S2a’rの耐久性をより一層向上させることができ、シール部材S2の良好なシール性を維持に供される。
なお、本実施形態では、シール部材S2を代表例として説明したが、シール部材S1の外周縁S1a’rを、前述したような曲率が一定の半径R’の曲面形状となるように形成してもよい。
また、シール部材S1,S2の外周縁S1a’r,S2a’rに傾斜形状の面取りがされていた場合も、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態で例示したようなシール部材S1,S2の外周縁S1a’r,S2a’rが曲面形状であるシール部材S1,S2を第1実施形態に適用しても、同様の効果を得ることができる。
〔第4実施形態〕
図13は、本発明に係る制御弁の第4実施形態を示したものであって、第1実施形態に係るシールガイド部M1a,M2aの形状を突起形状に形成したものを表している。また、図14は、図13のA−A線及びB−B線に沿って切断した弁体3の横断面図にそれぞれ対応したシール部材S1,S2を配置した状態を表したものである。なお、本実施形態でも、後述するシールガイド部M1a’が形成された突起部Pm1及びシールガイド部M2a’が形成された突起部Pm2以外の構成については、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、第1実施形態で例示したシールガイド部M1aの弁体3の回転軸Z方向における両端部が除去され、弁体3の周方向に突出する突起部Pm1が、開口部M1における弁体3の回転軸Z方向の中央部に形成されている。この突起部Pm1の外周面は、周壁部C1aD1の右側(図14(a)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の面取り部M1c’に近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状のシールガイド部M1a’と、シールガイド部M1a’の右側と連続して形成され、突起部Pm1の先端部に形成された面取り部M1c’と、面取り部M1c’の右側に連続して形成された内側端壁部M1b’と、を有する。
同様に、シールガイド部M2a’の弁体3の回転軸Z方向における両端部が除去され、弁体3の周方向に突出する突起部Pm2が、開口部M1における弁体3の回転軸Z方向の中央部に形成されている。この突起部Pm2の外周面は、周壁部C2aD2の右側(図14(b)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の内側端壁部M2b’に近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状のシールガイド部M2a’と、シールガイド部M2a’の右側と連続して形成された内側端壁部M2b’と、を有する。
かかる本実施形態の構成によれば、シールガイド部M1a’,M2a’の回転軸Z方向の幅寸法を小さくできるため、開口部M1,M2の開口範囲をより拡大することが可能となる。また、開口部M1,M2の開口範囲が拡大されることで、開口部M1,M2が開口し始める初期状態においてより多くの冷却水の供給が可能となり、弁体3の小型化や制御弁CVの搭載性の向上に供される。
〔第5実施形態〕
図15は、本発明に係る制御弁の第5実施形態を示したものであって、第4実施形態に係る突起部Pm1,Pm2の構成を変更したものを表している。また、図16は、図15(b)のA−A線及びB−B線に沿って切断した弁体3の横断面図にそれぞれ対応したシール部材S1,S2を配置した状態を表したものである。なお、本実施形態でも、後述する上側、下側突起部Pm1u,Pm1l及び上側、下側突起部Pm2u,Pm2l以外の構成については、第4実施形態と同様である。
本実施形態では、第4実施形態で例示した突起部Pm1,Pm2を、開口部M1,M2の軸方向の中央部に形成するのでなく、開口部M1,M2における弁体3の回転軸Z方向の上下にそれぞれ1つずつ、上側突起部Pm1u及び下側突起部Pm1l、上側突起部Pm2u及び下側突起部Pm2lが形成されている。
上側突起部Pm1uの外周面は、周壁部C1aD1の右側(図16(a)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の第1上側面取り部M1c’uに近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状の第1上側シールガイド部M1a’uと、第1上側シールガイド部M1a’uの右側と連続して形成され、第1上側突起部Pm1uの先端部に形成された第1上側面取り部M1c’uと、第1上側面取り部M1c’uの右側に連続して形成された第1上側端壁部M1b’uと、を有する。
同様に、第1下側突起部Pm1lの外周面は、周壁部C1aD1の右側(図16(a)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の第1下側面取り部M1b’lに近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状の第1下側シールガイド部M1a’lと、第1下側シールガイド部M1a’lの右側と連続して形成され、第1下側突起部Pm1lの先端部に形成された第1下側面取り部M1c’lと、第1下側面取り部M1c’lの右側と連続して形成された第1下側端壁部M1b’lと、を有する。なお、第1上側突起部Pm1uと第1下側突起部Pm1lの間には、空隙が形成される。
また、開口部M1と同様、第2上側突起部Pm2uの外周面は、周壁部C2aD2の右側(図16(b)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の第2上側面取り部M2c’uに近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状の第2上側シールガイド部M2a’uと、第2シールガイド部M2a’uの右側と連続して形成され、第2上側突起部Pm2uの先端部に形成された第2上側面取り部M2c’uと、第2上側面取り部M2c’uの右側に連続して形成された第2上側端壁部M2b’uと、を有する。
同様に、第2下側突起部Pm2lの外周面は、周壁部C2aD2の右側(図16(b)中の弁体3の周方向右側)と連続して形成され、後述の第2下側面取り部M2b’lに近づくにつれて外周壁の厚さが徐々に薄くなる傾斜形状の第2下側シールガイド部M2a’lと、第2下側シールガイド部M2a’lの右側と連続して形成され、第2下側突起部Pm2lの先端部に形成された第2下側面取り部M2c’lと、第2下側面取り部M2c’lの右側と連続して形成された第2下側端壁部M2b’lと、を有する。なお、第2上側突起部Pm2uと第2下側突起部Pm2lの間には、空隙が形成される。
かかる本実施形態の構成によれば、シール部材S1の外周縁S1a’又はシール面S1aと当接してシール部材S1の傾きを補正する面を、開口部M1における弁体3の回転軸Z方向の上下に形成された第1上側突起部Pm1u及び第1下側突起部Pm1lの外周面、すなわち第1上側シールガイド部M1a’u及び第1下側シールガイド部M1a’lに設けたことにより、第4実施形態よりも安定して弁体3の傾きを修正することができる。
しかも、本実施形態では、第1上側突起部Pm1uと第1下側突起部Pm1lの間に形成される前記空隙の分だけ第1実施形態よりも開口部M1の開口範囲を拡大させることができる。これにより、より多くの冷却水を供給が可能となって、弁体3の小型化や制御弁CVの搭載性の向上に供される。
なお、開口部M2に設けられた第2上側突起部Pm1u及び第2下側突起部Pm2lについての効果は、前述の開口部M1に設けられた第1上側突起部Pm1u及び第1下側突起部Pm1lのものと同様であるため、具体的な説明は省略する。
本発明は前記各実施形態に係る構成に限定されるものではなく、前記制御弁CVの具体的構成については、前述した本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、制御対象となる製品の仕様等に応じて自由に変更することができる。
例えば、前記各実施形態では、制御弁CVを冷却水の流量制御や流路の切り換えに用いられる制御弁を例示して説明したが、制御対象は冷却水に限らず、オイル等の流体や気体等を制御するものに適用することも可能である。
また、前記各実施形態では、弁体3を合成樹脂材料で形成したものを例示して説明したが、弁体3はアルミニウム合金等の金属材料によって成型してもよい。なお、弁体3を金属材料で成型した場合は、当該弁体3の耐久性をさらに向上させられるメリットがある。
さらに、前記各実施形態では、シール部材S1〜S3に凹部を形成し、この凹部にOリングSL2を配置していたが、排出口E1〜E3の内周面に凹部を形成し、この凹部にOリングSL2を配置する構成としてもよい。
加えて、前記各実施形態では、弁体3において、開口部M1,M2の周方向一方側にシールガイド部M1a,M2aを設けたものを例示して説明したが、シールガイド部M1a,M2aは、開口部M1,M2における周方向他方側(例えば周壁部C1bD1,C2bD2と端壁部M1d,M2dの間)に設けられていてもよく、さらには、開口部M1,M2の周方向両側に設けられていてもよい。
以上説明した実施形態に基づく制御弁としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該制御弁は、その1つの態様において、中空状に形成された弁体収容部と、前記弁体収容部と連通する連通口とを有するハウジングと、前記弁体収容部内に回転可能に軸支され、外周面に開口部を有する弁体と、前記弁体収容部における前記連通口と前記弁体の外周面との間に設けられ、前記弁体の回転位相に応じて前記開口部と前記連通口とを連通するように前記弁体の外周面に付勢されるシール部材と、前記弁体の回転方向において前記シール部材と摺接する前記開口部及び/又は前記弁体の外周面と摺接する前記シール部材の外周縁に設けられた面取り部と、を備えている。
前記制御弁の好ましい態様において、前記面取り部は、前記開口部における前記弁体の回転軸方向の範囲に形成されている。
別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記面取り部は、前記弁体の外周面から前記弁体の径方向内側へ傾斜して形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記面取り部と前記弁体の外周面との成す角は鈍角である。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記面取り部は、曲面形状である。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記面取り部は、前記開口部から前記弁体の回転方向に延びる突起部を備える。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記突起部は、前記開口部において、前記弁体の回転軸方向の中央部に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記突起部は、前記開口部において、前記弁体の回転軸方向の一端部及び他端部にそれぞれ1つずつ設けられている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記面取り部は、前記弁体の外周面と摺接する前記シール部材の外周縁に曲面形状に形成されている。
また、別の観点から、前記制御弁は、その1つの態様において、中空状に形成された弁体収容部と、前記弁体収容部と連通する連通ポートとを有するハウジングと、前記弁体収容部に回転可能に配置されて回転方向の一方側に設けられる底部と、前記底部の外周から前記回転方向の一方側に設けられる周壁部と、前記周壁部に設けられ前記連通ポートと連通する開口ポートと、前記開口ポートにおける前記弁体の回転方向の端縁に設けられた持ち上げ部と、を有する弁体と、前記弁体収容部と前記弁体との間に設けられ、前記弁体と前記ハウジングとの間をシールし、前記持ち上げ部によって前記弁体の径方向外側に持ち上げられるシール部材と、を備える。
さらに別の観点から、前記制御弁は、その1つの態様において、中空状に形成された弁室と、前記弁室と連通するポートと、を有するハウジングと、前記弁室内に回転可能に配置され、回転することによって前記ポートと連通可能な孔部と、前記孔部において回転方向の一方側に設けられる第1面取り部と、前記孔部において回転方向の他方側に設けられる第2面取り部と、を有する弁体と、前記弁室と前記弁体との間に配置され、前記弁体と前記ハウジングとの間を封止する封止部材と、を備え、前記第1面取り部と連続する前記弁体の外周面との成す角度は、前記第2面取り部と連続する前記弁体の外周面との成す角度よりも大きいことを特徴とする制御弁。