JP2020143613A - エンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法 - Google Patents

エンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】点火プラグの劣化度合いを適切に反映した形でメンテナンス周期を調整する。【解決手段】燃焼室11の内部状態に応じて点火プラグ57にて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部60と、要求電圧測定部60にて測定された要求電圧を経時的に記憶する記憶部S1と、記憶部S1に記憶された現時点までの要求電圧の近似線を算出し、当該近似線上に現時点以降の要求電圧推定値が存在すると推定する要求電圧推定値導出部S2と、要求電圧推定値導出部S2が導出した要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次のメンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部S3とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備え、予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスが実行されるエンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法に関する。
昨今、ガスエンジンヒートポンプ(以下、GHPと略称する場合がある)のエンジンは、例えば、運転時間10000時間又は設置後5年でメンテナンスが行われており、経済性の向上を図るべく、当該メンテナンス周期を延長することが検討されている。
ガスエンジンで燃焼室での点火を担う点火プラグは、劣化すると電極間距離が広がり、スパークプラグ発生のために必要な電圧が高まるため、電極間にて正常なスパークが発生せず失火状態となり、メンテナンスが要求される部品の一つである。
ここで、メンテナンス周期の延長を行う一つの方法として、負荷に応じたメンテナンス周期の延長を行う方法が考えられるが、点火プラグは、エンジンの積算負荷とその劣化度合との相関が弱く、負荷に応じたメンテナンス周期の延長は行い難い状況にある。
一方で、特許文献1に開示の技術では、燃焼室の圧力等の内部状態に応じて点火プラグにて要求される要求電圧を取得する要求電圧取得部を備えたエンジンにおいて、当該要求電圧取得部が取得した要求電圧に基づいて、点火プラグの交換時期を予測する点が示されている(特許文献1を参照)。
特開2011−074825号公報
しかしながら、特許文献1に開示の技術には、要求電圧取得部にて要求電圧を取得はするものの、取得した要求電圧をどのように用いて交換時期を予測するかについては、一切開示がなく、その示唆すらなく、その技術を具体的に開発する余地があった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、点火プラグの劣化度合いを適切に反映した形でメンテナンス周期を調整可能なエンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法を提供することにある。
上記目的を達成するためのエンジンは、所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備え、予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスが実行されるエンジンであって、その特徴構成は、
前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部と、
前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧を経時的に記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された現時点までの要求電圧の近似線を算出し、当該近似線上に現時点以降の要求電圧推定値が存在すると推定する要求電圧推定値導出部と、
前記要求電圧推定値導出部が導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部とを備える点にある。
上記目的を達成するためのエンジンのメンテナンス周期調整方法は、
所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備え、予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスを実行するエンジンのメンテナンス周期調整方法であって、その特徴構成は、
前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定工程と、
前記要求電圧測定工程にて測定された要求電圧を経時的に記憶する記憶工程と、
前記記憶工程にて現時点までに記憶された要求電圧に基づいて、現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出工程と、
前記要求電圧推定値導出工程にて導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整工程とを有する点にある。
上記特徴構成によれば、要求電圧推定値導出部(要求電圧推定値導出工程)にて、記憶部に記憶された現時点までの要求電圧の近似線を算出し、当該近似線上に現時点以降の要求電圧推定値が存在すると推定するから、現時点以降の要求電圧を適切に推定して、将来の要求電圧推定値に基づいてメンテナンス周期を調整でき、推定値による予測に基づいて余裕を持ったメンテナンスを実行できることになる。
以上より、点火プラグの劣化度合いを適切に反映した形でメンテナンス周期を調整可能なエンジン、及びそのメンテナンス周期調整方法を実現できる。
エンジンの更なる特徴構成は、
出力軸に連結される圧縮機を空調用のヒートポンプとして備え、
前記要求電圧推定値導出部は、現時点までに前記記憶部に記憶された直近の要求電圧で、且つ現時点と同一季節に測定された要求電圧に基づいて前記近似線を測定する点にある。
空調機に用いられるエンジンにあっては、点火プラグの要求電圧の変動傾向が、負荷、回転数等が同等の運転状態であれば直線近似がより有効であり、負荷は季節(外気温度)との関わりが大きいことから、例えば同一季節のデータに基づいて要求電圧を推定することも有効な手法である。
上記特徴構成によれば、要求電圧推定値導出部は、現時点までに記憶部に記憶された直近の要求電圧で、且つ現時点と同一季節に測定された要求電圧に基づいて近似線を測定するから、当該近似線に沿う形で推定される要求電圧推定値を、より精度良く導出することができる。
エンジンの更なる特徴構成は、
前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧が、前記要求電圧上限値を超える場合で、且つ前記要求電圧推定値導出部にて推定される前記要求電圧推定値が前記要求電圧上限値未満である場合に、例外的に高い要求電圧が発生する例外要求電圧発生状態であるか否かを判定する例外要求電圧判定部を備える点にある。
要求電圧は、種々の要因により、経時的に徐々に増加する変動傾向から外れた増加を示した後に低下する場合がある。
尚、種々の要因としては、要求電圧は空気比が希薄になるほど高くなる傾向にあるため、一時的に空気比が希薄側にずれ、燃料調整弁制御等の調整が間に合わない等の要因がある。
上記特徴構成によれば、要求電圧が、要求電圧上限値を超える場合で、且つ前記要求電圧推定値導出部にて推定される前記要求電圧推定値が前記要求電圧上限値未満である場合には、例外的に高い要求電圧が発生する例外要求電圧発生状態であると判定する。
これにより、例えば、要求電圧推定値導出部は、例外要求電圧発生状態であるときの要求電圧については、要求電圧の推定に用いない等の処理を行うことで、要求電圧推定値の推定精度をより向上することができる。
エンジンの更なる特徴構成は、
前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、エンジン回転数を増加する回転数増加制御を実行する回転数制御部とを有する点にある。
上述したように、例外要求電圧発生状態は、種々の要因により、一時的に要求電圧が高くなる状態であるため、すぐにメンテナンスを実行することはないが、一時的に発生する失火を防ぐ必要がある。
発明者らは、エンジンの回転数を低下させると、点火時期がより進角化し、比較的低圧で点火されるため、低い要求電圧でも着火できるようになる点に鑑みて、上記特徴構成の如く、回転数制御部が、例外要求電圧発生状態であると判定された場合に、エンジン回転数を増加する回転数増加制御を実行することで、一時的に要求電圧上限値を超えてしまった要求電圧を低下させ、失火を良好に抑制することができる。
尚、本明細書におけるエンジンにあっては、点火時期は上死点よりも早いタイミングで設定されているものとする。
エンジンの更なる特徴構成は、
前記回転数制御部は、前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記回転数増加制御において、エンジン出力を維持した状態でエンジン回転数を増加する点にある。
特に、回転数制御部は、例外要求電圧発生状態であると判定された場合に、エンジン出力を維持した状態で、エンジン回転数を増加することにより、必要な出力を維持したまま、要求電圧を要求電圧上限値よりも低下させて、好適に失火を防ぐことができる。
エンジンの更なる特徴構成は、
前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記点火プラグでの点火時期を、当該例外要求電圧発生状態であると判定したときの点火時期よりも進角化する点火時期進角化制御を実行する点火時期制御部とを有する点にある。
上述したように、例外要求電圧発生状態は、種々の要因により、一時的に要求電圧が高くなる状態であるため、すぐにメンテナンスを実行することはないが、一時的に発生する失火を防ぐ必要がある。
発明者らは、エンジンの点火時期をより進角化させると、比較的低圧で点火されるため、低い要求電圧でも着火できるようになる点に鑑みて、上記特徴構成の如く、点火時期制御部が、例外要求電圧発生状態であると判定された場合に、点火時期を、例外要求電圧発生状態であると判定された時点の点火時期より進角化する点火時期進角化制御を実行することで、一時的に要求電圧上限値を超えてしまった要求電圧を低下させ、失火を良好に抑制することができる。
エンジンの更なる特徴構成は、
前記点火時期制御部は、前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記点火時期進角化制御において、エンジン出力を維持した状態で前記点火プラグでの点火時期を進角化する点にある。
特に、点火時期制御部は、例外要求電圧発生状態であると判定された場合に、エンジン出力を維持した状態で、点火時期を上死点よりも進角化することにより、必要な出力を維持したまま、要求電圧を要求電圧上限値よりも低下させて、好適に失火を防ぐことができる。
上記目的を達成するためのエンジンの遠隔監視装置は、
所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備えると共に予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスが実行されるエンジンの遠隔監視装置であって、その特徴構成は、
前記エンジンの前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部と、前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧を送信するエンジン側送受信部を有するエンジン側制御部とを備えると共に、
前記エンジン側送受信部から送信された要求電圧を受信する監視側送受信部と、前記監視側送受信部にて受信した要求電圧を経時的に記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された現時点までの要求電圧に基づいて現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出部と、前記要求電圧推定値導出部が導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部とを有する監視側制御部を備える点にある。
上記特徴構成によれば、例えば、監視センターに監視側制御部を備えて、複数のエンジンの要求電圧を一括で監視できるから、例えば、メンテナンス周期を地域毎に調整する等の調整も行うことができ、効率的で且つ効果的なメンテナンス周期の調整を実施することができる。
実施形態に係るエンジン100を含むガスエンジンヒートポンプの概略構成図 要求電圧の実測値、要求電圧推定値及び要求電圧上限値からメンテナンス周期の開始時点を調整することを説明するためのグラフ図 例外要求電圧発生状態を例示するためのグラフ図 出力と回転数と要求電圧との概略関係を示すグラフ図 エンジンの遠隔監視装置の概略構成図
本発明の実施形態に係るエンジン100、その遠隔監視装置300、及びそのメンテナンス周期調整方法は、点火プラグの劣化度合いを適切に反映した形でメンテナンス周期を調整可能なものに関する。以下、図面を用いてその実施形態について説明する。
エンジン100は、図1に示すように、混合気Mを燃焼室11で圧縮して燃焼させて軸動力を出力するエンジン100、及び負荷に応じてエンジン100を制御するECU等を備えるものであり、ヒートポンプシステム40は、エンジン100の軸動力を駆動源とする圧縮機41と、当該圧縮機41にて圧縮される冷媒を循環するヒートポンプ回路C等を備えて構成されている。
尚、当該実施形態におけるエンジンにあっては、点火時期は上死点よりも早いタイミングで設定されているものとする。
エンジン100の燃焼室11には、混合気Mを吸気する吸気路20と、排ガスEが通流する排気路25とが接続されている。
吸気路20には、ベンチュリーミキサ23を介して、天然ガス系都市ガス等の燃料ガスGを供給する燃料供給路21が接続されており、当該燃料供給路21には、燃料ガスGの供給量を調整することにより、当該燃料ガスGと吸気路20に吸気される燃焼用空気Aとの比である空燃比を調整可能な燃料流量調整弁22が設けられている。吸気路20でベンチュリーミキサ23の下流側には、吸気路20を通流する混合気Mの吸気量を調整可能なスロットルバルブ24が設けられている。
これにより、燃料供給路21から燃料流量調整弁22の開度が調整される状態で供給される燃料ガスGが、ベンチュリーミキサ23にて燃焼用空気Aと混合され、所望の空燃比に調整された混合気Mが、スロットルバルブ24にて吸気量を調整された状態で、燃焼室11に吸気される。吸気された混合気Mは、燃焼室11にて圧縮されると共に、イグナイタ51にて点火制御される点火プラグ57(図示せず)により点火され燃焼・膨張することにより、クランクシャフト35が回転されて軸動力が出力され、燃焼により発生した排ガスEが排気路25を通して排気される。つまり、このエンジン100は、通常の4サイクルエンジンとして構成されている。
イグナイタ51は、ECU(図示せず)からの制御信号に基づいて点火プラグ57を制御する装置であって、ECUからの制御信号を検出する信号検出回路10を有するスイッチ制御装置52と、点火プラグ57で放電するための電圧を作り出すイグニッションコイル54と、スイッチ制御装置52の出力に基づいてイグニッションコイル54に流れる電流を通電・遮断するスイッチ素子53とを備える。
スイッチ制御装置52は、図2に示すように、ECUからの制御信号を検出する信号検出回路10を有する装置であり、具体的にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)ゲートドライバから構成される。スイッチ素子53は、スイッチ制御装置52の出力に基づいて、イグニッションコイル54に流れる電流を通電・遮断する素子であり、具体的にはIGBTから構成される。イグニッションコイル54は、点火プラグ57で放電するための電圧を作り出す変圧器である。
イグニッションコイル54の一次側コイルの一端にはバッテリー56等の電源が接続され、他端にはスイッチ素子53が接続される。また、イグニッションコイル54の二次側コイルの一端には一次側コイルと同様にバッテリー56等の電源が接続され、他端には点火プラグ57が接続される。例えば、12〜15Vのバッテリー56の電圧をイグニッションコイル54が2万〜4万Vまで昇圧して点火プラグ57に供給する。
更に、エンジン100は、点火プラグ57において点火火花が発生する電圧値である要求電圧値を測定する要求電圧測定部としての高電圧プローブ60が設けられている。
エンジン100の軸動力は、動力伝達機構30によりヒートポンプシステム40の圧縮機41に伝達される。
動力伝達機構30は、エンジン100のクランクシャフト35に固定されたエンジン側プーリ31と、圧縮機41の駆動軸34に電磁クラッチ(図示せず)を介して連結された圧縮機側プーリ33と、エンジン側プーリ31と圧縮機側プーリ33とにわたって巻回されるリブドベルト32を備えている。
ヒートポンプシステム40は、冷媒を循環するヒートポンプ回路Cと、当該ヒートポンプ回路Cを循環する冷媒を圧縮する圧縮機41と、室外空気と冷媒とを熱交換させる室外熱交換器42と、室内空気と冷媒とを熱交換させる室内熱交換器44と、冷媒を膨張させる膨張弁43と、ヒートポンプ回路Cにおける冷媒の循環方向を切り換える四方弁45とから構成されている。
当該ヒートポンプシステム40が、冷房運転を実行する場合、四方弁45は、図1で実線にて示されるように、圧縮機41の冷媒吐出側を室外熱交換器42へ接続すると共に、圧縮機41への冷媒流入側を室内熱交換器44へ接続する状態に切り換わる。これにより、ヒートポンプ回路Cを循環する冷媒は、圧縮機41で圧縮され昇温した状態で室外熱交換器42としての凝縮器に導かれ、当該室外熱交換器42としての凝縮器で室外空気と熱交換する形態で凝縮して放熱し、膨張弁43を通過した後に、室内熱交換器44としての蒸発器に導かれ、室内空気と熱交換する形態で蒸発して室内空気を冷却した後、圧縮機41の冷媒流入側に戻される。
一方、ヒートポンプシステム40が、暖房運転を実行する場合、四方弁45は、図1で破線にて示されるように、圧縮機41の冷媒吐出側を室内熱交換器44へ接続すると共に、圧縮機41の冷媒流入側を室外熱交換器42へ接続する状態に切り換わる。これにより、ヒートポンプ回路Cを循環する冷媒は、圧縮機41で圧縮され昇温した状態で室内熱交換器44としての凝縮器に導かれ、当該室内熱交換器44としての凝縮器で室内空気と熱交換する形態で凝縮して室内空気を加熱し、膨張弁43を通過した後に、室外熱交換器42としての蒸発器に導かれ、室外空気と熱交換する形態で蒸発して室内空気から熱を回収した後、圧縮機41の冷媒流入側に戻される。
さて、当該実施形態に係るヒートポンプシステム40の動力源として用いられるエンジン100は、通常、一定の期間(例えば設置後5年または、運転時間1万時間毎)のメンテナンス周期が定められており、当該メンテナンス周期毎に、経年劣化する点火プラグ57等の部品の交換・点検作業が実施される。当該実施形態に係るエンジン100にあっては、点火プラグの劣化度合いをより適切に反映した形でメンテナンス周期を調整するべく、以下の構成を有している。
即ち、エンジン100には、図1、2に示すように、上述した高電圧プローブ60にて測定された要求電圧の実測値を経時的に記憶する記憶部S1と、記憶部S1に記憶された現時点までの要求電圧の近似線を算出し、当該近似線上に現時点以降の要求電圧推定値が存在すると推定する要求電圧推定値導出部S2と、要求電圧推定値導出部S2が導出した要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次のメンテナンス周期の開始時点(図2でT)を変更するメンテナンス周期調整部S3とを有する制御装置Sを備える。
当該構成において、要求電圧推定値導出部S2は、例えば、過去の要求電圧の実測値に最小二乗法を適用する形で近似直線(近似線の一例)を算出することができる。尚、当該実施形態においては、近似線は、多項式近似等による近似曲線もその概念として含むものとする。
高電圧プローブ60による要求電圧の測定、想定された要求電圧の記憶部S1への記憶は、リアルタイムに実行され、記憶されたデータに基づくメンテナンス周期の調整等の各種制御については、所定の期間(例えば、1日毎又は100時間毎)の最大値や平均値を用いて実行される。
制御装置Sは、燃焼室11の内部状態(例えば、圧力、燃料と空気の混合割合等)に応じて点火プラグ57にて要求される要求電圧を高電圧プローブ60にて測定する要求電圧測定工程と、当該要求電圧測定工程にて測定された要求電圧を経時的に記憶部S1に記憶する記憶工程と、当該記憶工程にて現時点までに記憶された要求電圧に基づいて、現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出工程と、当該要求電圧推定値導出工程にて導出した要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次のメンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整工程とにより、メンテナンス周期の調整を実行する。
制御装置Sによりメンテナンス周期調整方法に基づく制御が実行されて調整されたメンテナンス周期は、モニタ等の出力部Moへ出力され、当該出力部Moに出力されたメンテナンス周期の開始時点Tに基づいて作業者が、メンテナンスを実施する。
ここで、要求電圧の実測値は、図3に示すように、種々の要因により、経時的に徐々に増加する変動傾向から外れた増加を示した後に低下する値(図3でEVX)をとる場合がある。
このような場合に備え、当該実施形態に係るエンジン100の制御装置Sは、高電圧プローブ60にて測定された要求電圧が要求電圧上限値を超える場合で、且つ要求電圧推定値導出部S2にて推定される要求電圧推定値が要求電圧上限値未満である場合に、例外的に高い要求電圧EVXが発生する例外要求電圧発生状態であるか否かを判定する例外要求電圧判定部S4を備えている。
更に、要求電圧推定値導出部S2は、例外要求電圧発生状態であるときの要求電圧については、要求電圧の推定から外す処理を行う。これにより、要求電圧推定値の推定精度をより向上させている。
更に、例えば、例外要求電圧発生状態にある場合、点火が良好に行われず失火が生じている可能性が高い。
そこで、当該実施形態に係るエンジン100は、例外要求電圧判定部S4が例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、エンジン回転数を増加する回転数増加制御を実行する回転数制御部S5を有する。
例えば、図4に示すグラフ図において、現状の出力及びエンジン回転数がP1の運転状態にあるときに、例外要求電圧発生状態であると判定された場合、回転数制御部S5は、エンジン回転数を増加させ、現状よりも要求電圧が低いP2の運転状態へ移行することで、要求電圧を低下することで、点火プラグ57での点火を良好に維持することができる。
尚、当該運転状態の移行時において、図4に示すように、エンジン出力を維持することにより、ヒートポンプシステム40に要求される負荷を適切に賄いながらも、失火を防止することができる。
ここで、例えば、ヒートポンプシステム40が、圧縮機41を2台有すると共に夫々を格別のエンジン100にて駆動する構成を採用している場合、図4に示すように、CP2台で示す運転状態からCP1台で示す運転状態へ移行することで、CP1台で賄う冷媒の吐出量を増加させる必要があるので、駆動するCP1台の動力源のエンジン100の回転数を増加させることで対応することにより、駆動しているエンジン100における要求電圧を低下させることができる。
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、エンジン100は、その出力軸に空調機の圧縮機41が連結される構成、即ち、空調用のエンジンであるものを示した。
しかしながら、空調機のエンジン以外のエンジンに対しても、本発明は有効に機能する。
(2)上記実施形態において、要求電圧推定値導出部S2は、過去に実測された要求電圧に基づいて、要求電圧の近似線を導出する構成例を示した。
ここで、発明者らは、鋭意検討した結果、上記実施形態の如く、エンジン100を空調機の動力源として働かせる場合、例えば、夏期や冬期では、負荷が高く回転数が高くなるから、より進角化された時点で比較的低圧での点火が要求されるため、要求電圧が低くなり、春期や秋期では、負荷が低く回転数が低くなるから、上死点近傍での比較的高圧での点火が要求されるため、要求電圧が高くなる傾向にあるという知見を得た。
そこで、要求電圧推定値導出部S2は、例えば、現時点までに記憶部S1に記憶された直近の要求電圧で、且つ現時点と同一季節に測定された要求電圧に基づいて近似線を算出するよう構成しても構わない。
(3)上記実施形態においては、要求電圧推定値導出部S2は、例外要求電圧発生状態であるときの要求電圧については、要求電圧の推定から外す処理を行う例を示したが、当該処理が実行しなくても構わない。
(4)上記実施形態では、回転数制御部S5が、例外要求電圧判定部S4が例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、エンジン回転数を増加する回転数増加制御を実行する例を示した。
これにかえて、以下の構成を採用しても構わない。
例えば、例外要求電圧判定部S4が例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、点火プラグ57での点火時期を、例外要求電圧発生状態であると判定された時点の点火時期よりも進角化する点火時期進角化制御を実行する点火時期制御部(図示せず)とを有する構成を採用しても構わない。
更に、点火時期制御部は、点火時期進角化制御において、エンジン出力を維持した状態で点火プラグでの点火時期を進角化する構成としても良い。
(5)上記実施形態において、エンジン100にて完結していたメンテナンス周期の調整については、例えば、複数のエンジン100から要求電圧に関する情報を監視センター(遠隔監視装置に含まれる構成)にて集約する形で、監視センターにて実行する構成を採用しても構わない。
即ち、遠隔監視装置は、図5に示すように、エンジン100の燃焼室11の内部状態に応じて点火プラグ57にて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部としての高電圧プローブ60と、高電圧プローブ60にて測定された要求電圧を送信するエンジン側送受信部ER1を有するエンジン側制御部ERとを備えると共に、エンジン側送受信部ER1から送信された要求電圧を受信する監視側送受信部MR1と、監視側送受信部MR1にて受信した要求電圧を経時的に記憶する記憶部MR2と、記憶部MR2に記憶された現時点までの要求電圧に基づいて現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出部MR3と、要求電圧推定値導出部MR3が導出した要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次のメンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部MR4とを有する監視側制御部MRを備える。
当該監視側制御部MR、及びそのメンテナンス周期調整部MR4にて出力されるメンテナンス周期の開始時点を出力表示する出力部Moは、エンジン100が設置されている箇所とは離れた位置に存在する監視センターに設けられている。
エンジン側送受信部ER1と監視側送受信部MR1とが、インターネット回線等を介してリアルタイムに通信することにより、遠隔地でのメンテナンス周期の調整が実現する。
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明のエンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法は、点火プラグの劣化度合いを適切に反映した形でメンテナンス周期を調整可能なエンジン、その遠隔監視装置、及びそのメンテナンス周期調整方法として、有効に利用可能である。
11 :燃焼室
34 :駆動軸
41 :圧縮機
57 :点火プラグ
60 :高電圧プローブ
100 :エンジン
300 :遠隔監視装置
ER :エンジン側制御部
ER1 :エンジン側送受信部
G :燃料ガス
M :混合気
MR :監視側制御部
MR1 :監視側送受信部
MR2 :記憶部
MR3 :要求電圧推定値導出部
MR4 :メンテナンス周期調整部
S1 :記憶部
S2 :要求電圧推定値導出部
S3 :メンテナンス周期調整部
S4 :例外要求電圧判定部
S5 :回転数制御部
T :開始時点

Claims (9)

  1. 所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備え、予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスが実行されるエンジンであって、
    前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部と、
    前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧を経時的に記憶する記憶部と、
    前記記憶部に記憶された現時点までの要求電圧の近似線を算出し、当該近似線上に現時点以降の要求電圧推定値が存在すると推定する要求電圧推定値導出部と、
    前記要求電圧推定値導出部が導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点に次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部とを備えるエンジン。
  2. 出力軸に連結される圧縮機を空調用のヒートポンプとして備え、
    前記要求電圧推定値導出部は、現時点までに前記記憶部に記憶された直近の要求電圧で、且つ現時点と同一季節に測定された要求電圧に基づいて前記近似線を算出する請求項1に記載のエンジン。
  3. 前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧が、前記要求電圧上限値を超える場合で、且つ前記要求電圧推定値導出部にて推定される前記要求電圧推定値が前記要求電圧上限値未満である場合に、例外的に高い要求電圧が発生する例外要求電圧発生状態であるか否かを判定する例外要求電圧判定部を備える請求項1又は2に記載のエンジン。
  4. 前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、エンジン回転数を増加する回転数増加制御を実行する回転数制御部とを有する請求項3に記載のエンジン。
  5. 前記回転数制御部は、前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記回転数増加制御において、エンジン出力を維持した状態でエンジン回転数を増加する請求項4に記載のエンジン。
  6. 前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記点火プラグでの点火時期を、当該例外要求電圧発生状態であると判定したときの点火時期よりも進角化する点火時期進角化制御を実行する点火時期制御部とを有する請求項3に記載のエンジン。
  7. 前記点火時期制御部は、前記例外要求電圧判定部が前記例外要求電圧発生状態であると判定した場合に、前記点火時期進角化制御において、エンジン出力を維持した状態で前記点火プラグでの点火時期を進角化する請求項6に記載のエンジン。
  8. 所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備えると共に予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスが実行されるエンジンの遠隔監視装置であって、
    前記エンジンの前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定部と、前記要求電圧測定部にて測定された要求電圧を送信するエンジン側送受信部を有するエンジン側制御部とを備えると共に、
    前記エンジン側送受信部から送信された要求電圧を受信する監視側送受信部と、前記監視側送受信部にて受信した要求電圧を経時的に記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された現時点までの要求電圧に基づいて現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出部と、前記要求電圧推定値導出部が導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整部とを有する監視側制御部を備える遠隔監視装置。
  9. 所定の点火タイミングで電圧を付与して燃焼室にて混合気に火花点火する点火プラグを備え、予め決定された所定のメンテナンス周期でメンテナンスを実行するエンジンのメンテナンス周期調整方法であって、
    前記燃焼室の内部状態に応じて前記点火プラグにて要求される要求電圧を測定する要求電圧測定工程と、
    前記要求電圧測定工程にて測定された要求電圧を経時的に記憶する記憶工程と、
    前記記憶工程にて現時点までに記憶された要求電圧に基づいて、現時点以降の要求電圧の推定値である要求電圧推定値を導出する要求電圧推定値導出工程と、
    前記要求電圧推定値導出工程にて導出した前記要求電圧推定値が、予め決定された要求電圧上限値を超える時点まで、次の前記メンテナンス周期の開始時点を変更するメンテナンス周期調整工程とを有するメンテナンス周期調整方法。
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