JP2020143338A - 電縫鋼管 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度と優れた低温靱性とを有する電縫鋼管を提供する。【解決手段】母材とシーム熱処理部とを有する電縫鋼管であって、母材の化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.80〜1.60%、P≦0.020%、S≦0.003%、Al≦0.060%、Ti:0.001〜0.030%、Nb:0.01〜0.04%、N:0.001〜0.008%、O≦0.005%を含有し、必要に応じてCu、Ni、Cr、Mo、V、B、Ca、REMを含有し、残部:Feおよび不純物であり、Ceqが0.20〜0.53、Pcmが0.150〜0.250であり、母材の外表層部及び肉厚中央部における金属組織が面積%で50%以下のフェライトを含み、シーム熱処理部の金属組織は、外表層部においては面積%で20%を超えるフェライトを含み、肉厚中央部においては面積%で50%を超えるフェライトを含み、シーム熱処理部の外表層部の硬さの最大値が220HV10以下であり、シーム熱処理部の-20℃におけるCTOD値が0.40mm以上である、電縫鋼管。【選択図】 なし

Description

本発明は、電縫鋼管に関する。
近年、原油・天然ガスの長距離輸送方法として、パイプラインの重要性がますます高まっている。現在、長距離輸送用の幹線ラインパイプとしては米国石油協会(API)規格が設計の基本になっている。
特に、寒冷地で使用されるラインパイプには、強度のみならず優れた低温靱性が要求される。従来このような用途には、UOE鋼管が用いられるのが一般的であったが、より安価な電縫鋼管の適用が求められている。
例えば、特許文献1および2には、板厚18mm以上の厚手材において、X56級の電縫溶接鋼管用として好適な、母材および溶接部靱性に優れた高強度熱延鋼板が開示されている。
特開2007−138289号公報 特開2007−138290号公報
しかしながら、特許文献1および2においては、溶接部の組織制御について検討がなされておらず、低温靱性はシャルピー衝撃試験で評価されている。寒冷地で使用するに際して、信頼性を確保するためには、シャルピー衝撃試験ではなく、最低使用温度でのCTOD(Crack Tip Opening Displacement)試験による評価が不可欠である。
本発明は、高い強度と優れた低温靱性とを有する電縫鋼管を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記の電縫鋼管を要旨とする。
(1)母材とシーム熱処理部とを有する電縫鋼管であって、
前記母材の化学組成が、質量%で、
C:0.03〜0.09%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.80〜1.60%、
P:0.020%以下、
S:0.003%以下、
Al:0.060%以下、
Ti:0.001〜0.030%、
Nb:0.01〜0.04%、
N:0.001〜0.008%、
O:0.005%以下、
Cu:0〜0.80%、
Ni:0〜0.80%、
Cr:0〜0.80%、
Mo:0〜0.80%、
V:0〜0.10%、
B:0〜0.0020%、
Ca:0〜0.0050%、
REM:0〜0.010%、
Sb:0〜0.10%、
Sn:0〜0.10%、
Co:0〜0.10%、
As:0〜0.10%、
Pb:0〜0.005%、
Bi:0〜0.005%、
H:0〜0.0005%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で表わされるCeqが0.20〜0.53であり、
下記(ii)式で表わされるPcmが0.150〜0.250であり、
前記母材の肉厚をtとすると、前記母材の外表面から厚さ方向に1mmの位置および前記母材の外表面から厚さ方向に1/2tの位置における金属組織が、面積%で0%以上50%以下のフェライトを含み、残部がベイナイトであり、15μm以下の平均結晶粒径を有し、
前記母材において、外表面から厚さ方向に1mmの位置の硬さと外表面から厚さ方向に1/2tの位置の硬さとの差が30HV10以下であり、
前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置における金属組織が、面積%で20%を超えるフェライトを含み、残部がベイナイトであり、20μm以下の平均結晶粒径を有し、
前記シーム熱処理部の肉厚をtとすると、前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に1/2tの位置における金属組織が、面積%で50%を超えるフェライトを含み、残部がベイナイトであり、15μm以下の平均結晶粒径を有し、
前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置の硬さの最大値Hvmaxが220HV10以下であり、
前記シーム熱処理部の−20℃におけるCTOD値が0.40mm以上である、
電縫鋼管。
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(i)
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B ・・・(ii)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記母材の化学組成が、質量%で、
Cu:0.01〜0.80%、
Ni:0.01〜0.80%、
Cr:0.01〜0.80%、
Mo:0.01〜0.80%、
V:0.001〜0.10%、
B:0.0001〜0.0020%、
Ca:0.0001〜0.0050%、および、
REM:0.0001〜0.010%、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)に記載の電縫鋼管。
(3)前記母材の肉厚が25.4mm以下である、
上記(1)または(2)に記載の電縫鋼管。
本発明によれば、高い強度と優れた低温靱性とを有する電縫鋼管を得ることが可能となる。
本発明者らは、高い強度と優れた低温靱性とを有する電縫鋼管を得る方法について検討を行い、以下の知見を得るに至った。
電縫鋼管は、一般的に鋼板をロール成形しながら、該鋼板の両端を高周波誘導加熱して衝合溶接することによって製造される。そしてその後、溶接部(衝合面)を含む所定の範囲に対して所定の条件で熱処理を施す。そのため、溶接部と溶接部を挟んだ両側の母材には、熱処理が施された領域が形成される。なお、本願明細書においては、上記の処理をシーム熱処理といい、シーム熱処理が施され、Ac点以上の温度域まで加熱された領域をシーム熱処理部という。
高い強度と優れた低温靱性とを両立するためには、鋼管の化学組成を調整することに加えて、母材およびシーム熱処理部における金属組織を、それぞれ制御することが重要となる。
特に、シーム熱処理部の金属組織の制御は、外表面側から加熱する熱処理を施した後に外表面側から水冷することにより行う。そのため、シーム熱処理部の外表面側と肉厚中央部とでは冷却速度に差が生じ、組織にばらつきが生じる。
組織のばらつきにより、シーム熱処理部の外表面側と肉厚中央部とで硬さに大きな差が生じると、低温靱性を確保することはできない。したがって、シーム熱処理部に対する熱処理および冷却の条件を厳密に管理することにより、シーム熱処理部全体での硬さのばらつきを極力低減する必要がある。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
本発明に係る電縫鋼管は、母材と、熱処理が施された状態の母材および溶接部を含むシーム熱処理部とを有する。母材は円筒状であり、溶接部は鋼管の軸方向に平行な方向に延在している。また、上述のように、シーム熱処理部は、電縫鋼管の周方向において、溶接部を挟んで両側に熱処理が施された母材を含んでいる。すなわち、シーム熱処理部は熱処理が施された状態の母材を含んでいるが、以下の説明において、単に「母材」といった場合には、溶接部およびシーム熱処理部を除く部分を指すものとする。
本発明においては、母材およびシーム熱処理部の化学組成の調整および金属組織の制御が重要となる。なお、鋼板を電縫溶接して電縫鋼管とする際には、溶接材料等を用いないため、実質的に、母材と溶接部との化学組成は同一となる。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.母材の化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.03〜0.09%
Cは、鋼における母材強度を向上させる元素である。上記の効果を得るためには、Cを0.03%以上含有させる必要がある。一方、C含有量が0.09%を超えると、鋼の溶接性および低温靱性の低下を招く。そのため、C含有量は0.03〜0.09%とする。C含有量は0.035%以上であるのが好ましく、0.04%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.075%以下であるのがより好ましい。
Si:0.01〜0.50%
Siは、製鋼上、脱酸元素として必要な元素である。上記の効果を得るためには、Siを0.01%以上含有させる必要がある。一方、Si含有量が0.50%を超えると、シーム熱処理部の靱性の低下を招く。そのため、Si含有量は0.01〜0.50%とする。Si含有量は0.015%以上であるのが好ましい。また、Si含有量は0.40%以下であるのが好ましく、0.30%以下であるのがより好ましい。
Mn:0.80〜1.60%
Mnは、母材の強度および低温靱性の確保に必要な元素である。上記の効果を得るためには、Mnを0.80%以上含有させる必要がある。一方、Mn含有量が1.60%を超えると、シーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、Mn含有量は0.80〜1.60%とする。Mn含有量は1.00%以上であるのが好ましく、1.50%以下であるのが好ましい。
P:0.020%以下
Pは、不純物として含まれ、鋼の低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.020%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、P含有量は0.020%以下とする。P含有量は0.018%以下であるのが好ましい。P含有量は少ない方が好ましいが、製造コストの観点から0.001%以上とすることができる。
S:0.003%以下
Sは、不純物として含まれる元素であり、その含有量が0.003%を超えると、粗大な硫化物の生成の原因となり、低温靱性を阻害する。そのため、S含有量は0.003%以下とする。S含有量は0.002%以下であるのが好ましい。S含有量は少ない方が好ましいが、製造コストの観点から0.0001%以上とすることができる。
Al:0.060%以下
Alは、通常脱酸材として添加される元素である。しかしながら、Al含有量が0.060%を超えると、母材およびシーム熱処理部の靱性が劣化する。そのため、Al含有量は0.060%以下とする。Al含有量は0.030%以下であるのが好ましい。Al含有量の下限に制限はなく、0%であってもよい。脱酸の効果を高めるために、Al含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Ti:0.001〜0.030%
Tiは、窒化物形成元素として、結晶粒の細粒化に効果を発揮する元素である。上記の効果を得るためには、Tiを0.001%以上含有させる必要がある。一方、Ti含有量が0.030%を超えると、炭化物の形成による低温靱性の著しい低下を招く。そのため、Ti含有量は0.001〜0.030%とする。Ti含有量は0.003%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましく、0.025%以下であるのが好ましい。
Nb:0.01〜0.04%
Nbは、炭化物および/または窒化物を形成し、強度の向上に寄与する元素である。加えて、オーステナイト域の再結晶を抑制して、未再結晶圧延温度域を拡大し、さらにオーステナイトの焼き入れ性を向上させることによって、圧延後およびシーム熱処理後の加速冷却中に生成するフェライトおよびベイナイトなどの組織を微細均一化し、鋼管母材部およびシーム熱処理部の靭性を向上させる効果を有する。上記の効果を得るためには、Nbを0.01%以上含有させる必要がある。一方、Nb含有量が0.04%を超えると、低温靱性の低下を招く。そのため、Nb含有量は0.01〜0.04%とする。Nb含有量は0.015%以上であるのが好ましく、0.03%以下であるのが好ましい。
N:0.001〜0.008%
Nは、鋼の低温靱性に影響を与える元素である。窒化物を形成して、結晶粒を細粒化し、低温靭性を向上させるために、N含有量を0.001%以上とする。一方、N含有量が0.008%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、N含有量は0.001〜0.008%とする。N含有量は0.006%以下であるのが好ましい。
O:0.005%以下
Oは、不純物として含まれ、鋼の低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.005%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、O含有量は0.005%以下とする。O含有量は0.003%以下であるのが好ましい。O含有量は少ない方が好ましいが、製造コストの観点から0.001%以上とすることができる。
Cu:0〜0.80%
Cuは、低温靱性を低下させずに強度の上昇に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.80%を超えると、鋼片加熱時および溶接時に割れが生じやすくなる。そのため、Cu含有量は0.80%以下とする。Cu含有量は0.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Cu含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。
Ni:0〜0.80%
Niは、低温靱性および強度の改善に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.80%を超えると、溶接性が低下する。そのため、Ni含有量は0.80%以下とする。Ni含有量は0.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Ni含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。
Cr:0〜0.80%
Crは、析出強化による鋼の強度を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.80%を超えると、焼入れ性を上昇させ、ベイナイト組織を生じさせ、低温靱性を低下させる。そのため、Cr含有量は0.80%以下とする。Cr含有量は0.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Cr含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。
Mo:0〜0.80%
Moは、焼入れ性を向上させると同時に、炭窒化物を形成し、強度を改善する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。加えて、Nbと複合的に含有させることで、オーステナイト域の再結晶を抑制して、未再結晶圧延温度域を拡大し、さらにオーステナイトの焼き入れ性を向上させることによって、圧延後およびシーム熱処理後の加速冷却中に生成するフェライトおよびベイナイトなどの組織を微細均一化し、鋼管母材部およびシーム熱処理部の靭性を向上させる効果を有する。しかしながら、その含有量が0.80%を超えると、必要以上の強化とともに、低温靱性の著しい低下を招く。そのため、Mo含有量は0.80%以下とする。Mo含有量は0.50%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Mo含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。
V:0〜0.10%
Vは、炭化物および/または窒化物を形成し、強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.10%を超えると、低温靱性の低下を招く。そのため、V含有量は0.10%以下とする。V含有量は0.060%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、V含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.010%以上であるのがより好ましい。
B:0〜0.0020%
Bは、焼入れ性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.0020%を超えると、Bの析出物が生成し、低温靱性を劣化させる。そのため、B含有量は0.0020%以下とする。B含有量は0.0015%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、B含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましい。
Ca:0〜0.0050%
Caは、硫化物を生成することにより、伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性を改善するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.0050%を超えると、母材およびシーム熱処理部のCaの酸化物の個数が増加する。その結果、Ca酸化物が破壊の起点となり、低温靱性が大きく低下する。そのため、Ca含有量は0.0050%以下とする。Ca含有量は0.0040%以下であるのが好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、Ca含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0010%以上であるのがより好ましい。
REM:0〜0.0100%
REMは、Caと同様に、硫化物を生成することにより、伸長MnSの生成を抑制し、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性を改善するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、その含有量が0.0100%を超えると、REMの酸化物の個数が増加し、低温靱性が低下する。そのため、REM含有量は0.0100%以下とする。REM含有量は0.0050%以下であるのが好ましく、0.0040%以下であるのがより好ましい。なお、上記の効果を得たい場合には、REM含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0010%以上であるのがより好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
Sb:0〜0.10%
Sbは、不純物として含まれることがある。Sbは、鋼の強度および低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.10%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、Sb含有量は0〜0.10%とする。Sb含有量は0〜0.01%であるのが好ましい。
Sn:0〜0.10%
Snは、不純物として含まれることがある。Snは、鋼の強度および低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.10%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、Sn含有量は0〜0.10%とする。Sn含有量は0〜0.01%であるのが好ましい。
Co:0〜0.10%
Coは、不純物として含まれ、鋼の強度および低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.10%を超えると、溶接性が低下する。そのため、Co含有量は0.10%以下とする。Co含有量は0〜0.07%であるのが好ましい。
As:0〜0.10%
Asは、不純物として含まれ、鋼の強度および低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.10%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、As含有量は0〜0.10%とする。As含有量は0〜0.01%であるのが好ましい。
Pb:0〜0.005%
Pbは、不純物として含まれることがある。Pbは、鋼の低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.005%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、Pb含有量は0〜0.005%とする。Pb含有量は0〜0.001%であるのが好ましい。
Bi:0〜0.005%
Biは、不純物として含まれることがある。Biは、鋼の低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.005%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、Bi含有量は0〜0.005%とする。Bi含有量は0〜0.001%であるのが好ましい。
H:0〜0.0005%
Hは、不純物として含まれることがある。Hは、鋼の低温靱性に影響を与える元素であり、その含有量が0.0005%を超えると、母材だけでなくシーム熱処理部の靱性を著しく阻害する。そのため、H含有量は0〜0.0005%とする。H含有量は0〜0.0001%であるのが好ましい。
上記の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。なお、P、S、O、Sb、Sn、Co、As、Pb、Bi、Hについては、上述のように含有量を制限することが必要である。
Ceq:0.20〜0.53
Ceqは、焼入れ性の指標となる値であり、下記(i)式で表わされる。Ceqが0.20未満では、必要な強度が得られない。一方、Ceqが0.53を超えると、低温靱性が劣化する。したがって、Ceqは0.20〜0.53とする。Ceqは0.30以上であるのが好ましく、0.50以下であるのが好ましい。
Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(i)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
Pcm:0.150〜0.250
Pcmは、溶接性の指標となる値であり、下記(ii)式で表わされる。また、Pcmの右辺の各元素は、鋼の強度を向上させる効果があるので、Pcmが小さいと、必要な強度が得られない場合がある。特に、Pcmが0.150未満では、必要な強度が得られない。一方、Pcmが0.250を超えると、低温靱性が劣化する。したがって、Pcmは0.150〜0.250とする。Pcmは0.152以上であるのが好ましく、0.245以下であるのが好ましい。
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B ・・・(ii)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
2.金属組織
上述のように、鋼管の強度および低温靱性を向上させるためには、母材およびシーム熱処理部における金属組織の制御が重要となる。母材およびシーム熱処理部のそれぞれについて、以下に詳しく説明する。
鋼管の強度および低温靱性を担保するため、母材の金属組織の制御が重要となる。具体的には、母材の肉厚をtとしたときに、母材の外表層部および1/2t部の金属組織を、面積%で、0〜50%のフェライトを含み、残部がベイナイトとする必要がある。母材中に含まれるフェライトの面積率が50%を超えると、強度が低下するおそれがある。
ここで、本発明におけるフェライトには、ポリゴナルフェライトだけでなく、アシキュラーフェライトも含まれるものとする。アシキュラーフェライトは、旧オーステナイト粒界が不明瞭で、粒内は、塊状または針状のフェライトを指すものとする。また、ベイナイトには、ラス状のフェライトと炭化物との混合組織だけではなく、組織中にパーライトおよびMA(Martensite-Austenite Constituent)から選択される1種または2種を含む混合組織も含まれ、さらにラス状形態が崩れているグラニュラーベイナイトも含まれるものとする。
なお、本発明において、母材の外表層部および1/2t部とは、それぞれ、母材の外表面から厚さ方向に1mmの深さ位置および1/2tの深さ位置を意味する。
良好な低温靱性を確保するためには、母材の外表層部および1/2t部における平均結晶粒径を15μm以下とする必要がある。上記の平均結晶粒径は13μm以下とすることが好ましい。単に、母材の金属組織、母材のフェライトの面積率、母材の平均結晶粒径という場合は、母材の表層部および1/2t部の両方の金属組織、フェライトの面積率、平均結晶粒径を意味する。
また、シーム熱処理部における低温靱性を確保する観点から、シーム熱処理部の金属組織は、所定の面積率のフェライトと残部がベイナイトである必要がある。ここで、本発明におけるフェライトには、ポリゴナルフェライトだけでなく、アシキュラーフェライトも含まれるものとする。アシキュラーフェライトは、旧オーステナイト粒界が不明瞭で、粒内は、塊状または針状のフェライトを指すものとする。また、ベイナイトは、ラス状フェライト(グラニュラーベイナイトも含む)と炭化物、パーライトから選択される1種以上を含む組織をいう。
後述するように、シーム熱処理部の金属組織の制御は、外表面側から熱処理を施した後に水冷することにより行う。そのため、シーム熱処理部の外表面側の肉厚中央部とでは冷却速度に差が生じ、組織にばらつきが生じる。したがって、フェライトの面積率は深さごとに異なる。
具体的には、シーム熱処理部の肉厚をtとしたときに、シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置においては、フェライトの面積率は、20%超とする。また、シーム熱処理部の表面から1/2tの位置においては、フェライトの面積率は、50%超とする。また、いずれの部位においても、フェライト以外の残部はベイナイトである。フェライトの面積率について特に上限は規定しないが、シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置においては、40%未満であることが好ましく、シーム熱処理部の表面から1/2tの位置においては、80%未満であることが好ましい。
なお、本発明において、シーム熱処理部の外表面から3mmの深さ位置および1/2tの深さ位置を、それぞれ、シーム熱処理部の外表層部および1/2t部という場合がある。
また、良好な低温靱性を確保するためには、結晶の細粒化が重要であり、シーム熱処理部の外表層部では平均結晶粒径を20μm以下に、1/2t部においては平均結晶粒径を15μm以下に制御する必要がある。平均結晶粒径は、いずれの位置でも、13μm以下であるのが好ましい。
本発明において、金属組織は以下のように求めるものとする。まず、母材およびシーム熱処理部の厚さ方向断面からそれぞれ2つずつ試験片を切り出し、組織観察用および粒径測定用に供する。
なお、本発明において、母材の厚さ方向断面とは、溶接部から鋼管の周方向に180°離れた位置であって、鋼管の長さ方向および厚さ方向に平行な断面のことである。また、シーム熱処理部の厚さ方向断面とは、溶接部を含むシーム熱処理部を通り、かつ、鋼管の長さ方向に垂直な断面のことである。溶接部は電縫溶接の衝合面であり、メタルフローから鋼管の周方向における位置を特定することができる。
また、本発明において、フェライトの面積率は、次の方法で測定される。採取された組織観察用の試料をコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨する。研磨された試料をEBSP−OIMを用いて解析し、フェライトの面積率を求める。視野範囲は、200μm(母材:長さ方向、シーム熱処理部:周方向)×500μm(厚さ方向)とする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。
具体的には、EBSP−OIMに装備されているKAM(Kernel Average Misorientation)法にてフェライトの面積率を求める。
KAM法では、測定データのうち、任意のひとつの正六角形のピクセルを中心のピクセルとする。この中心のピクセルに隣り合う6個のピクセルを用いた第一近似(全7ピクセル)、もしくはこれらの6個のピクセルのさらにその外側の12個のピクセルも用いた第二近似(全19ピクセル)、もしくはこれら12個のピクセルのさらに外側の18個のピクセルも用いた第三近似(全37ピクセル)について、各ピクセル間の方位差を求める。求めた方位差を平均し、得られた平均値をその中心のピクセルの値とする。この操作をピクセル全体に対して行う。
本実施の形態では、第三近似により隣接するピクセル間の方位差5°以下となるものを表示させる。本実施の形態では、視野範囲の全面積に対する、方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面積率をフェライトの面積率と定義する。方位差第三近似1°を超えるものは、ベイナイト等のフェライト以外の組織とする。
そして、母材部のフェライトの面積率は、外表層部および1/2t部の各板厚位置において、長さ方向に0.5mmピッチで7か所測定したフェライトの面積率の平均値である。また、シーム熱処理部のフェライトの面積率は、溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定したフェライトの面積率の平均値であり、外表層部および1/2t部の各板厚位置で測定する。ここで、溶接部中心位置は上述の溶接部(電縫溶接の衝合面)であり、コロイダルシリカ研磨剤で研磨する前に、例えば、ビッカース硬度計の圧痕を残して位置を特定しておくことが好ましい。
また、平均結晶粒径は、EBSP−OIMを用いて測定する。具体的には、フェライトの面積率の測定と同様に、試料を採取および研磨する。研磨された試料をEBSP−OIMを用いて解析する。より具体的には、一定測定ステップごとの方位測定で、隣り合う測定点の方位差が、15°を超えた位置を粒界とする。15°は大傾角粒界の閾値であり、一般的に結晶粒界として認識されている。
金属組織がフェライトであるか、フェライト以外の組織であるかを特定せずに、大傾角粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径および結晶粒の表面積を求める。得られた粒径および表面積からエリア平均粒径を求める。本明細書中において、求めたエリア平均粒径を平均結晶粒径とする。なお、視野範囲は、200μm(母材:長さ方向、シーム熱処理部:周方向)×500μm(厚さ方向)とする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。
母材部の平均結晶粒径は、外表層部および1/2t部の各板厚位置で、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定した平均結晶粒径の平均値である。また、シーム熱処理部の平均結晶粒径は、溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定した平均結晶粒径の平均値であり、外表層部および1/2t部の各板厚位置で測定する。
3.機械的性質
母材における硬さのばらつきが大きいと、低温靱性が劣化する。そのため、母材の厚さ方向断面における外表層部と1/2t部との硬さの差は30HV10以下とする。
シーム熱処理部は、熱処理後の冷却速度が大きい外表面側の硬さが上昇すると、低温靱性が劣化する。後述するCTOD試験では、試験片の表面から中心方向に3mmの位置が最も応力状態が厳しくなるため、シーム熱処理部においては、外表面から厚さ方向に3mmの位置の硬さの最大値Hvmaxが220HV10を超えると、低温靱性が劣化する。そのため、シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置の硬さの最大値Hvmaxを220HV10以下とする。なお、「HV10」は、試験力を98N(10kgf)として、ビッカース硬さ試験を実施した場合の「硬さ記号」を意味する(JIS Z 2244:2009を参照)。
なお、母材部の硬さは、各板厚位置で、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定した硬さの平均値である。また、シーム熱処理部の硬さは、溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定した硬さの平均値である。
本発明において、上記の硬さの差は以下のように求めるものとする。まず、母材の厚さ方向断面からそれぞれ試験片を切り出し、硬さ測定用に供する。そして、母材の厚さ方向断面において、外表層部、および、1/2t部で硬さ測定を行い、その差を算出する。
寒冷地で使用するに際して、信頼性を確保するためには、シーム熱処理部のCTOD値を0.40mm以上にすることが必要である。CTOD試験は、シーム熱処理部を含んで長手方向に300mm、円周方向に300mmの長さに切断し、シーム熱処理部を含んだCTOD試験片を用いて行う。シーム熱処理部のCTOD値は、試験温度−20℃におけるCTOD試験を、BS7448の規格に準拠して実施し、測定すればよい。
本発明の電縫鋼管において、それ以外の機械的性質については特に制限は設けない。しかしながら、ラインパイプとして使用する場合には、降伏応力は440MPa以上、引張強さは500〜700MPaであることが好ましい。
4.肉厚
本発明の電縫鋼管の肉厚について特に制限は設けない。しかしながら、ラインパイプとして使用する場合には、管内を通過する流体の輸送効率向上の観点から、肉厚は10.0mm以上であるのが好ましく、15.0mm以上であるのがより好ましい。一方、電縫鋼管の肉厚は、一般的に25.4mmが上限となる。
5.製造方法
本発明に係る電縫鋼管は、例えば、以下の方法により製造することができるが、この方法には限定されない。
上述の化学組成を有する鋼を炉で溶製した後、鋳造によってスラブを作製する。その後、上記のスラブを1000℃以上の温度域まで加熱して熱間圧延を施す。1000℃未満の加熱温度では圧延機の荷重負担が高くなり、圧延効率が著しく低下する。一方、上記加熱温度が1200℃を超えると、オーステナイト粒の粗大化が生じ、微細な組織が得られなくなるおそれがあるため、1200℃以下とするのが好ましい。より好ましくは1150℃以下とする。
また、母材の金属組織を微細化するために、熱間圧延時には、再結晶域での圧下比を2以上とし、未再結晶域での圧下比を3以上にすることが好ましい。特に未再結晶域での圧下比を3以上にすることで、母材の平均結晶粒径を15μm以下にすることが可能になる。未再結晶域での圧下比は4以上とするのが好ましい。再結晶域と未再結晶域との境界は、鋼の組成に依存するが、900〜950℃程度となる。
さらに、仕上げ圧延では、オーステナイト域での圧延を1パス以上でかつ1パスの圧下率を20%以下とすることが好ましい。また、仕上げ圧延終了温度は、770℃以上とすることが好ましい。仕上げ圧延後には、450〜550℃の温度範囲まで水冷し、当該温度範囲で巻き取る。
そして、得られた熱延鋼板に対して、ロール成形し、高周波溶接により電縫鋼管とすることで電縫鋼管を製造する。続いて、溶接部およびその周辺に対して、シーム熱処理を施す。
シーム熱処理においては、外表面側から熱処理を行い900〜1000℃の温度範囲まで加熱した後、600℃以下まで水冷を行う。熱処理は例えば、高周波誘導加熱、バーナー加熱または電気抵抗加熱等により行うことができるが、加熱の応答性および均一性に優れる高周波誘導加熱を採用することが好ましい。
この時、一般的に外面部から加熱されることが多いが、外面部と内面部との加熱時の温度差または冷却時の外面部と内面部との冷却速度差等に起因して、熱処理後の冷却中にシーム熱処理部の組織中に硬質のマルテンサイトが生成し、溶接部靭性を低下させる場合がある。
加えて、シーム熱処理部における最高硬さを低減し、良好な低温靱性を確保するためには、ベイナイトの生成量も制限し、所定量以上のフェライトを確保する必要がある。
これら硬質のマルテンサイトの生成を抑制するとともに、フェライトの生成を促進するためには、熱処理後の冷却過程において、多段加速冷却を行うのが有効である。多段加速冷却とは、加速冷却における水量密度を減らして、冷却時間を短くし、加速冷却を2回または3回以上に分ける方法である。
特に、ベイナイトの生成量を制限するためには、1回目の冷却停止温度がBs点を下回らないことが重要である。その後、復熱により表面温度が750℃以上まで上昇した後、2回目の冷却を開始する。そして、多段加速冷却後の水冷停止温度を600℃以下にすることにより、硬質のマルテンサイトの生成が抑制され、溶接部の外表層の硬さの上昇が抑制され、低温靭性を確保することができる。なお、2回目以降の加速冷却における冷却停止温度および復熱後の温度については特に制限はない。
ここで、Bs点(℃)は下記(iii)式で表わされ、ベイナイトの生成温度を意味する。
Bs=830−270C−90Mn−37Ni−70Cr−83Mo ・・・(iii)
但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
以上の処理を行うことにより、シーム熱処理部の金属組織および硬さを上述した範囲に制御することが可能になる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する厚さ240mmの鋼塊を、表2に示す温度まで加熱した。そして、55〜100mmの厚さまで、再結晶域で熱間圧延を行った。その後、表2に示す開始温度から800℃までの未再結晶域において、表2に示す厚さまで熱間圧延を行った。続いて、表2に示す条件で水冷を行った。
その後、上記の熱延鋼板をスリット切断して、コイルを造管して、電縫溶接を行った。そして、表2に示す条件で、高周波誘導加熱により溶接部およびその周辺を加熱した後、水冷した。
Figure 2020143338
Figure 2020143338
得られた各電縫鋼管の母材およびシーム熱処理部の厚さ方向断面からそれぞれ3つずつ試験片を切り出し、組織観察用、粒径測定用および硬さ測定用に供した。
採取された組織観察用の試料をコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨した後、EBSP−OIMを用いて解析し、フェライトの面積率を求めた。視野範囲は、200μm(母材:圧延方向、シーム熱処理部:周方向)×500μm(厚さ方向)、観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとした。
具体的には、EBSP−OIMに装備されているKAM(Kernel Average Misorientation)法にてフェライトの面積率を求めた。
KAM法では、測定データのうち、任意のひとつの正六角形のピクセルを中心のピクセルとする。この中心のピクセルに隣り合う6個のピクセルを用いた第一近似(全7ピクセル)、もしくはこれらの6個のピクセルのさらにその外側の12個のピクセルも用いた第二近似(全19ピクセル)、もしくはこれら12個のピクセルのさらに外側の18個のピクセルも用いた第三近似(全37ピクセル)について、各ピクセル間の方位差を求める。求めた方位差を平均し、得られた平均値をその中心のピクセルの値とする。この操作をピクセル全体に対して行う。
本実施例においては、第三近似により隣接するピクセル間の方位差5°以下となるものを表示させた。そして、視野範囲の全面積に対する、方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面積率をフェライトの面積率と定義した。一方、方位差第三近似1°を超えるものは、ベイナイト等のフェライト以外の組織とした。
そして、母材部のフェライトの面積率は、外表層部および1/2t部の各板厚位置において、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定したフェライトの面積率の平均値とした。また、シーム熱処理部のフェライトの面積率は、外表層部および1/2t部の各板厚位置において、溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定したフェライトの面積率の平均値とした。
また、平均結晶粒径は、EBSP−OIMを用いて測定した。具体的には、フェライトの面積率の測定と同様に、試料を採取および研磨し、EBSP−OIMを用いて解析した。より具体的には、一定測定ステップごとの方位測定で、隣り合う測定点の方位差が、15°を超えた位置を粒界とした。
そして、粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径および結晶粒の表面積を求めた。得られた粒径および表面積からエリア平均粒径を求めた。本実施例においては、求めたエリア平均粒径を平均結晶粒径とした。なお、視野範囲は、200μm(母材:圧延方向、シーム熱処理部:周方向)×500μm(厚さ方向)、観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとした。
母材部の平均結晶粒径は、外表層部および1/2t部の各板厚位置で、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定した平均結晶粒径の平均値とした。また、シーム熱処理部の平均結晶粒径は、外表層部および1/2t部の各板厚位置において、溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定した平均結晶粒径の平均値とした。
さらに、硬さ測定用の試験片については、母材およびシーム熱処理部のそれぞれの厚さ方向断面において、母材の外表層部および1/2t部、シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置の硬さを測定した。そして、母材の外表層部および1/2t部の硬さの差、シーム熱処理部の外表層部の硬さの最大値Hvmaxを算出した。ビッカース硬さは、JIS Z 2244:2009に準拠し、試験力を98N(10kgf)として測定した。
母材についての測定結果を表3に、シーム熱処理部についての測定結果を表4にそれぞれ示す。
Figure 2020143338
Figure 2020143338
さらに、溶接部から鋼管の周方向に180°離れた位置において、API5L規格に準拠した全厚試験片を円周方向に2本ずつ採取した。そして、常温にて引張試験を行い、降伏応力(YS)および引張強さ(TS)を測定した。引張試験は、API規格に準拠して行った。
次に、溶接部から鋼管の周方向に90°離れた位置において、試験片の長手方向が鋼管の円周方向と一致するように、DWTT試験片を採取した。そして、試験温度−20℃でのDWTT試験を行い、DWTT延性破面率を測定した。DWTT試験は、ASTM E436に準拠して行った。
さらに、シーム熱処理部を含んで長手方向に300mm、円周方向に300mmの長さに切断し、シーム熱処理部を含んだCTOD試験片を採取した。そして、試験温度−20℃におけるCTOD試験を実施し、シーム熱処理部のCTOD値を測定した。CTOD試験は、BS7448の規格に準拠して実施した。
それらの結果を表5にまとめて示す。なお、本発明においては、降伏応力が440MPa以上でかつ引張強さが500MPa以上である場合に、高い強度を有すると判断することとする。また、−10℃での母材のDWTTが85%以上でかつ−20℃でのシーム熱処理部のCTOD値が0.40mm以上である場合に、低温靱性に優れると判断することとする。
Figure 2020143338
表5の結果から明らかなように、本発明の規定を満足する試験No.1〜21は、高い強度と優れた低温靱性とを有することが分かる。一方、試験No.22〜34は、鋼の化学組成が本発明の規定を満足しないため、強度または低温靱性が劣る結果となった。また、試験No.35〜42では、製造条件が不適切であることに起因して、強度および低温靱性の少なくとも一方が劣る結果となった。
本発明によれば、高い強度と優れた低温靱性とを有する電縫鋼管を得ることが可能となる。したがって、本発明に係る電縫鋼管は、寒冷地に敷設されるラインパイプとして好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 母材とシーム熱処理部とを有する電縫鋼管であって、
    前記母材の化学組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.09%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.80〜1.60%、
    P:0.020%以下、
    S:0.003%以下、
    Al:0.060%以下、
    Ti:0.001〜0.030%、
    Nb:0.01〜0.04%、
    N:0.001〜0.008%、
    O:0.005%以下、
    Cu:0〜0.80%、
    Ni:0〜0.80%、
    Cr:0〜0.80%、
    Mo:0〜0.80%、
    V:0〜0.10%、
    B:0〜0.0020%、
    Ca:0〜0.0050%、
    REM:0〜0.010%、
    Sb:0〜0.10%、
    Sn:0〜0.10%、
    Co:0〜0.10%、
    As:0〜0.10%、
    Pb:0〜0.005%、
    Bi:0〜0.005%、
    H:0〜0.0005%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で表わされるCeqが0.20〜0.53であり、
    下記(ii)式で表わされるPcmが0.150〜0.250であり、
    前記母材の肉厚をtとすると、前記母材の外表面から厚さ方向に1mmの位置および前記母材の外表面から厚さ方向に1/2tの位置における金属組織が、面積%で0%以上50%以下のフェライトを含み、残部がベイナイトであり、15μm以下の平均結晶粒径を有し、
    前記母材において、外表面から厚さ方向に1mmの位置の硬さと外表面から厚さ方向に1/2tの位置の硬さとの差が30HV10以下であり、
    前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置における金属組織が、面積%で20%を超えるフェライトを含み、残部がベイナイトであり、20μm以下の平均結晶粒径を有し、
    前記シーム熱処理部の肉厚をtとすると、前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に1/2tの位置における金属組織が、面積%で50%を超えるフェライトを含み、残部がベイナイトであり、15μm以下の平均結晶粒径を有し、
    前記シーム熱処理部の外表面から厚さ方向に3mmの位置の硬さの最大値Hvmaxが220HV10以下であり、
    前記シーム熱処理部の−20℃におけるCTOD値が0.40mm以上である、
    電縫鋼管。
    Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(i)
    Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B ・・・(ii)
    但し、式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記母材の化学組成が、質量%で、
    Cu:0.01〜0.80%、
    Ni:0.01〜0.80%、
    Cr:0.01〜0.80%、
    Mo:0.01〜0.80%、
    V:0.001〜0.10%、
    B:0.0001〜0.0020%、
    Ca:0.0001〜0.0050%、および、
    REM:0.0001〜0.010%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載の電縫鋼管。
  3. 前記母材の肉厚が25.4mm以下である、
    請求項1または請求項2に記載の電縫鋼管。
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