JP2020143171A - ビニル芳香族重合体成分を含む重合体、およびその製造方法 - Google Patents

ビニル芳香族重合体成分を含む重合体、およびその製造方法 Download PDF

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隆直 松本
高柳 健二郎
Kenjiro Takayanagi
健二郎 高柳
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Atsushi Nakagawa
淳 中川
川上 公徳
Kimitoku Kawakami
公徳 川上
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Abstract

【課題】重合体の加工時の加熱や水素化処理等における加工装置や反応器の腐食を抑制することができ、かつ、燃焼時の金属残渣や、重合体の着色、臭気といった問題のないビニル芳香族重合体成分を含む重合体を提供する。【解決手段】塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下であるビニル芳香族重合体成分を含む重合体。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から、塩素および塩基性物質を除去する工程を有するビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体、およびその製造方法に関する。
スチレン−イソブチレン系共重合体等のビニル芳香族系重合体や共重合体は、通常カチオン重合により製造されるが、カチオン重合では、重合開始剤や触媒として塩素原子が結合した化合物が一般的に使用されている。この場合、得られる重合体には、重合開始剤および/または触媒由来の塩素が含有されることとなる。
重合体に塩素が含まれていると、重合体の加工時に加熱した際や、水素化処理などを行う際に、塩化水素等が発生し、加工装置や反応器に腐食を起こすことがある。この腐食のリスクを回避するため、重合体に固体塩基であるハイドロタルサイトを添加して、発生する塩酸を中和する方法(特許文献1)や、ジオクチル錫メルカプタイド等を塩酸トラップ剤として使用する方法(特許文献2)が知られている。
特開2006−131774号公報 特開2002−179932号公報
しかしながら、これらの方法では金属元素を含むハイドロタルサイトや、錫化合物を重合体に添加するため、重合体を燃焼させた際の金属残渣が問題となることがある。また、ハイドロタルサイトや錫化合物を添加することで重合体の着色や臭気が問題となることもある。更には、重合体の水素化時に水素化触媒活性の低下や触媒の濾過性の悪化といった問題を引き起こすこともある。
本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
即ち、本発明は、重合体の加工時の加熱や水素化処理等における加工装置や反応器の腐食を抑制することができ、かつ、燃焼時の金属残渣や、重合体の着色、臭気、更には重合体の水素化時の触媒活性の低下や濾過性の悪化といった問題のないビニル芳香族重合体成分を含む重合体を提供することを目的とする。
本発明者らの詳細な検討によれば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体から、灰化試験時に強熱残分となるハイドロタルサイトのような塩基性物質を除去すると、重合体に含まれる芳香環を水素化する際に、Cl基の水素化分解が起こり、脱離した塩化水素により装置の腐食を引き起こすことがわかった。
一方で、この塩基性物質を重合体に含有させたままの状態であれば装置の腐食のリスクは低減できるが、強熱残分が多く発生してしまうほか、重合体を水素化しようとした際に、触媒毒となり、触媒活性を低下させたり、触媒の濾過性を悪化させたりするという問題が生じることがわかった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、ビニル芳香族重合体に含まれる塩素の含有量と、灰化試験を行なったときの強熱残分の量を特定の範囲に制御することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下であることを特徴とするビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
[2] 重量平均分子量が10000以上、200000以下である、[1]に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
[3] 前記ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が、共重合体である、[1]または[2]に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
[4] 前記共重合体が、スチレン−イソブチレン系共重合体である、[3]に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法であって、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から、塩素および塩基性物質を除去する工程(以下、「工程(1)」と称す。)を有することを特徴とするビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法。
[6] 前記工程(1)において、水素化分解を行なう、[5]に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法。
[7] [1]〜[4]のいずれかに記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体を含み、塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下である樹脂組成物。
[8] [7]に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
[9] 医療用フィルムまたはシートに用いられる、[8]に記載の成形体。
本発明のビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、塩素の量が少なく、灰化試験時の強熱残分が低減されている。そのため、本発明のビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、重合体を燃焼させた際の金属残渣が少なくなり、また、着色や臭気の問題が改善され、例えば、医療用途にも好適に用いることができる。
また、本発明のビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、塩素含有量が少ないため、二次的に加工する際、加工に用いる装置等の腐食を抑制することができると共に、強熱残分である塩基性物質含有量も少ないため、重合体の水素化等における触媒活性の低下、触媒の濾過性の悪化といった問題も抑制することができる。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
[ビニル芳香族重合体成分を含む重合体]
本発明に係るビニル芳香族重合体成分を含む重合体(以下、「本発明の重合体」と称する場合がある。)は、ビニル芳香族重合体成分を含んでいればよく特に限定されない。
<ビニル芳香族重合体成分>
ビニル芳香族重合体成分とはビニル芳香族重合体を構成する成分であり、後述のビニル芳香族重合体を構成する単量体(以下「ビニル芳香族単量体」と称す場合がある。)を重合したものである。
ビニル芳香族単量体としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環等の芳香環に、ビニル基が結合されたものが挙げられる。芳香環に結合されるビニル基は一つでも複数でもよい。また、この芳香環にはビニル基以外の置換基が結合していてもよい。ビニル芳香族単量体としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレンが好ましく用いられ、さらにスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレンが好ましく用いられ、最も好ましくはスチレンが用いられる。これらのビニル芳香族単量体を用いることで得られる重合体の成形性や、耐衝撃性が向上する傾向にある。これらのビニル芳香族単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<ビニル芳香族重合体以外の成分>
本発明の重合体は、上記ビニル芳香族単量体に由来する単位等のビニル芳香族重合体成分以外の成分(以下「ビニル芳香族重合体以外の成分」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。本発明の重合体が含んでいてもよい、ビニル芳香族重合体以外の成分としては、例えば、以下に示す単量体(以下「他の単量体」と称す場合がある。)に由来する単位及び該単量体から構成される重合体が挙げられる。他の単量体としては、具体的には、脂肪族オレフィン類、共役ジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン類等が挙げられ、具体的にはエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン等が挙げられる。他の単量体は好ましくはブタジエン又はイソブチレンであり、最も好ましくはイソブチレンである。これらのビニル芳香族重合体以外の成分は、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。本発明の重合体がビニル芳香族重合体以外の成分を含むことで、ガスバリア性や薬液非吸着性にバランスよく優れた重合体が得られる傾向にある。
<ブロック共重合体>
本発明の重合体がビニル芳香族重合体以外の成分を含む場合、ビニル芳香族重合体成分とビニル芳香族重合体以外の成分とは共重合体を形成していてもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体であってもよい。
ブロック共重合体は、1以上のセグメントA(ビニル芳香族重合体成分)と1以上のセグメントB(ビニル芳香族重合体以外の成分)を有し、その組み合わせは、本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されず、具体的にはA−B、A−(B−A)、(A−B)、B−A−(B−A)−B(ただし、nは1以上の整数、mは2以上の整数を表す)等の構造が挙げられる。
本発明の効果が得られる範囲であれば、ビニル芳香族重合体成分及びビニル芳香族重合体以外の成分の組み合わせは特に限定されない。好ましくは、スチレンとイソブチレンの組合せ、スチレンとエチレンの組合せ、スチレンとブタジエンの組合せ、スチレンと2−ブテンの組合せ等が、得られる重合体の耐候性、耐熱性、柔軟性及び強度が良好となる傾向にあるため好ましい。
これらのうち、特に、本発明の重合体は、スチレン−イソブチレン系共重合体であることがより好ましい。スチレン−イソブチレン共重合体としては、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン交互共重合体等が挙げられ、中でも、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体であることが特に好ましい。イソブチレン骨格を有することにより、ガスバリア性が高められる他、低吸着性(例えば、輸液バッグにした際に溶質成分が吸着しにくい)や、柔軟性が高められる傾向にある。
また、上記組合せの割合も特に限定されないが、本発明の重合体中のビニル芳香族重合体成分の含有割合(スチレン−イソブチレン共重合体の場合は、スチレンの割合)は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。本発明の重合体中のビニル芳香族重合体成分の割合が上記上限値以下であることにより、本発明の重合体は柔軟性や弾力性が良好で、耐衝撃性に優れる傾向にあり、上記下限値以上であることにより、本発明の重合体は耐熱性が良好なものとなる傾向にある。
<分子構造>
本発明の重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状又はこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
<重量平均分子量>
本発明の重合体は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは50000以上で、好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下である。本発明の重合体のMwが上記下限値以上であることにより、重合体の耐熱性、成形性、重合体を成形してなる成形体の機械強度が良好なものとなり、上記上限値以下であることにより、加工時の溶融粘度が下がり、成形性が良好なものとなる傾向にある。
<塩素の含有量>
本発明の重合体の塩素含有量は、通常350質量ppm以下であり、好ましくは200質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下である。塩素含有量が少ないほど、加工時や水素化処理時の加工装置や反応器の腐食を抑制することができる。また、本発明の重合体を水素化する場合、水素化系内の酸性度が下がり過ぎないことで、水素化の反応速度の低下を抑制することができる傾向にある。
本発明の重合体の塩素含有量の下限には特に制限はなく、塩素含有量は少ない程好ましい。本発明の重合体には、本発明の効果が得られる範囲内で、塩素含有量を分析したときに検出限界以下となるものも含まれる。
なお、本発明において、重合体の塩素含有量の測定方法は特に限定されないが、例えば、湿式分解後のイオンクロマトグラフ測定、XRF測定等が挙げられる。具体的には、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
<灰化試験を行なったときの強熱残分>
本発明の重合体は、灰化試験を行なったときの強熱残分(以下、単に「強熱残分」と称す場合がある。)が、通常0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。強熱残分が少ないほど、燃焼処理した際に残存物を低減することができる。
例えば、強熱残分が0.5質量%であるスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体を医療用途に適用する場合、強熱残分を0.1質量%以下とするために、少なくとも5倍の強熱残分を含まない他の重合体で希釈する必要があるが、希釈して医療用途に用いると、ガスバリア性の高さ等、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体の特徴的な物性を充分に発揮することが難しくなる。そのため、本発明のように強熱残分の含有量が少ない重合体が求められている。
なお、上記灰化試験(強熱残分測定)とは、第一六改正 日本薬局方 一般試験法7.02プラスチック製医薬品容器試験である。
ここで、強熱残分が0.1質量%以下であることが、プラスチック製医療用容器の規格であり、重合体を医療用途に使用する上で必須の項目である。強熱残分が0.1質量%以下の本発明の重合体によれば、前述の通り、プラスチック製医薬品容器等への適用用途が広がるなどのメリットがある。
なお、本発明の重合体の強熱残分の下限には特に制限はなく、強熱残分は少ないほど好ましいが、通常0.0001質量%以上であり、好ましくは0.001質量%以上である。この範囲であれば、強熱残分を含む他のポリマーと混合して用いることができる等、強熱残分を低減した効果は充分に得られる。
<重合体末端>
本発明の重合体の構造は、特に限定されないが、重合体の安定性の面から重合体末端が飽和炭化水素になっていることが望ましい。一般的に、重合体末端は重合体合成時の重合開始剤に由来する構造となっており、重合開始剤によっては塩化炭化水素構造となっていることがある。該塩化炭化水素構造は、後述の水素化分解等による脱塩素を行うことで、重合体末端を飽和炭化水素とすることができる。具体的には、1,4−ビス(α−クロル−イソプロピル)ベンゼンなどが重合開始剤に使用された重合体の場合、末端をイソプロピル基とすることができる。末端構造のうちのイソプロピル基等の飽和炭化水素構造の割合は特に限定されないが、末端構造のうち通常40%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。この割合の上限には特に制限はないが99.9%以下である。
[本発明のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法]
塩素含有量が350質量ppm以下で、強熱残分が0.1質量%以下の本発明の重合体を製造する方法には特に制限はないが、本発明の重合体は、好ましくは、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液(以下、「被処理重合体溶液」と称す場合がある。)から、塩素および塩基性物質を除去する工程(以下、「工程(1)」と称す。)を有する本発明の重合体の製造方法により製造される。
工程(1)は、被処理重合体溶液中のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩素含有量が350質量ppm以下、好ましくは200質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下で、強熱残分が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下となるように、被処理重合体溶液を処理して塩素と塩基性物質を除去する工程である。
ここで、塩基性物質は、反応器の腐食を抑制できるものであれば特に限定されないが、具体的には、酸を中和する性質を持つものである。特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ金属化合物;アルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア水;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、n−トリオクチルアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の2級アミン;エチレンジアミン等の1級アミン;等、その他、ハイドロタルサイト類、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが挙げられる。塩基性物質は、これらの2種類以上であってもよい。中でも、ハイドロタルサイト類および酸化マグネシウムなどの金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ハイドロタルサイト類がより好ましい。
前述の通り、これらの塩基性物質は、通常の場合、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造工程に由来するものであり、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に反応器などの腐食防止のために、通常0.01〜5質量%程度含有される。
上記の塩基性物質のうち、ハイドロタルサイト類は、マグネシウムおよびアルミニウムを含む固体塩基で、天然鉱物のハイドロタルサイトと人工的に製造されたハイドロタルサイトを含むハイドロタルサイト類が挙げられる。また、有機化合物等で表面修飾を施したもの等もある。具体的にはDHT−4A、DHT−4C、DHT−6(以上協和化学工業株式会社製)等が挙げられる。
ハイドロタルサイト類は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に、Mg含有量として25質量ppm〜1.2質量%程度含有されている場合がある。
本発明において、工程(1)は、被処理重合体溶液から塩素を除去する工程と、被処理重合体溶液から塩基性物質を除去する工程との別工程を経るものであってもよく、これらの工程を同時に行うものであってもよい。また、得られる重合体の、塩素含有量または強熱残分の含有量が上記範囲を満たすのであれは、被処理重合体溶液から塩素を除去する工程、被処理重合体溶液から塩基性物質を除去する工程のいずれか一つのみを行なってもよい。
工程(1)のうち、塩素を除去する工程の具体的な方法は限定されないが、例えば、水素化分解により重合体の塩素含有量を低減する方法、重合体の加熱により塩素含有量を低減する方法、塩基を添加して塩素含有量を低減する方法などがある。塩素の除去効率の点からは、水素化分解を行う方法が最も好ましく、水素化分解を行って、塩素と塩基性物質とを一つの工程で除去することが好ましい。
即ち、後述のように、水素化分解に触媒を用いた場合、水素化分解反応後の触媒の分離のための濾過処理で触媒と共に塩基性物質を分離除去することができる。また、水素化分解反応後に被処理重合体溶液から重合体を析出させる処理において、塩基性物質を分離除去することもできる。
塩素は、通常、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体合成時の重合開始剤や触媒に由来して含有される。例えば、カチオン重合では、重合開始剤としては1,4−ビス(α−クロル−イソプロピル)ベンゼンなどが用いられるが、製造されたポリマー骨格にそのまま塩素が組み込まれる場合がある。この場合は、特に塩素がビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれることとなる。
工程(1)で塩素を除去する前のビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれる塩素含有量については特に制約はないが、上述のように重合体を製造する段階で塩素が含有される場合、通常5000質量ppm以下、好ましくは1000質量ppm以下である。工程(1)前の塩素含有量の下限は特に限定されず、塩素含有量は検出限界以下であってもよいが、例えば原料由来で含まれる量としては400質量ppm以上である。
<被処理重合体溶液>
被処理重合体溶液とは、前述のビニル芳香族重合体成分を含む重合体が溶媒に完全に溶解ないし分散している状態、一部溶解ないし分散している状態、或いはビニル芳香族重合体成分を含む重合体が融点を超えて溶融している状態のものを示す。
後述する加熱による脱塩素を行う場合は、溶媒を使用してもよいし、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体をそのまま溶融させて行ってもよい。塩素の水素化分解を行う場合は溶媒を使用するのが好ましい。
被処理重合体溶液が、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を溶媒に溶解ないし分散させたものである場合、該溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1,4ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブテンジオールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンやジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、デカリンなどの炭化水素;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種類以上の混合溶媒としても用いることができる。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の溶解性の点から、テトラヒドロフラン(THF)又はシクロヘキサンを用いることが好ましい。
工程(1)において溶媒を用いる際、被処理重合体溶液中のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度としては、特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下、より好ましく50質量%以下である。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度が前記範囲であることで、生産性を維持しながら、被処理重合体溶液の粘度の上昇を抑制でき、被処理重合体溶液のハンドリング性を維持できる傾向にある。
<塩素を除去する工程(水素化分解)>
以下に、工程(1)として水素化分解を行なう場合について説明する。
本発明における水素化分解としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(i)触媒による水素化分解を行ない、塩素を塩化水素として反応中に脱離させる。脱離させた塩素をハイドロタルサイトのような塩基性物質でトラップし、該塩素をトラップした塩基性物質と、水素化分解で使用した触媒を重合体溶液から分離する。塩基性物質と触媒の分離は同時に行なうことが好ましいが、別々に分離してもよい。
(ii)塩基性物質をあらかじめ濾過などで重合体溶液から分離する。続いて、耐酸性容器内で、触媒による水素化分解を行い、塩素を塩化水素として反応中に脱離させ、塩化水素ガスとして重合体溶液から分離する。さらに、その後に、水素化分解を行った触媒を分離する。
(iii)塩基性物質をあらかじめ濾過などで重合体溶液から分離する。続いて、耐酸性容器内で、触媒による水素化分解を行い、塩素を塩化水素として反応中に脱離させ、塩化水素ガスとして重合体溶液から分離する。その後に水素化分解を行った触媒を分離せず、該触媒は重合体中に含まれる(ただし、強熱残分が本発明の範囲内となるような触媒量の場合に限る)。
すなわち、本発明において、水素化分解とは、後述するように、触媒(特に、金属触媒)を用いることが好ましく、水素化分解を行なった後に、必要に応じて、該触媒を濾過等により分離する工程を有することが好ましい。触媒を分離する際、塩素をトラップしている塩基性物質も、重合体溶液から同時に分離することが可能である。
上記の中でも(i)が、発生する塩化水素を塩基性物質でトラップするために耐酸性の反応容器を使用する必要がなく、「塩素をトラップした塩基性物質」と「水素化分解で使用した触媒」を濾過などで同時に重合体溶液から分離できるため、好ましい。
(金属触媒)
水素化分解は、金属触媒を共存させて行ってもよい。金属触媒の金属成分は、水素化分解を促進して重合体の塩素含有量を低減できるものであれば特に限定されない。金属触媒としては、例えば、合金触媒、担体に触媒活性金属を担持させた担持金属触媒等が挙げられる。
金属触媒の金属成分は、重合体中の塩素を水素化分解できるものであれば特に限定されないが、通常、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム等の金属を用いることができる。なかでも、水素化分解能力を発揮するものとして、周期表第8族、第9族、第10族及び第11族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましい。特に水素化分解能力が高いことから、周期表第8族、第9族及び第10族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、特に活性が高いことから、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム又は白金が好ましく、特にハロゲン原子の水素化分解に対する能力の高さからルテニウム、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
水素化分解で用いる金属触媒は、金属を1種類用いても、2種類以上用いてもよい。金属を2種類以上用いるときは、その組み合わせは特に限定されず、それぞれの金属が触媒活性を有するもの(共触媒)でも、1種類以上の金属の触媒活性を向上させるもの(助触媒)であってもよいが、これらのうち助触媒が好ましい。
前記合金触媒は、特に限定はされないが、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金等の金属の合金が用いられる。具体的には一般的に知られているラネー触媒、銅クロム触媒などが挙げられる。
金属触媒は、活性金属種を後述する各種の担体に担持させた担持金属触媒であってもよく、均一系の錯体触媒であってもよい。反応液からの分離を容易に行えること、触媒の再使用が容易であるという点から、担持金属触媒を用いることが好ましい。
前記担体としては特に限定はされないが、例えば活性炭、カーボンブラック、シリコンカーバイド等の炭素系担体;アルミナ、シリカ、ジルコニア、ニオビア、チタニア、セリア、珪藻土、ゼオライト等の金属酸化物担体等が挙げられる。中でも活性炭、シリカ及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種を担体として用いるのが、活性発現と触媒の活性安定化の面で好ましい。また触媒使用後の分離工程において比較的担体強度を保てるシリカ及びアルミナを用いることが望ましい。
担持金属触媒における金属の含有量は特に限定されないが、金属に換算した質量百分率で、通常、担体と金属の合計質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上である。また、通常50質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。金属含有量を前記範囲内とすることにより、十分な触媒活性を得ることができる。なお、以下の触媒の記載において、質量%と記載されている値は、その触媒の担体と金属の合計質量に対する金属含有量を示す。
金属触媒に用いられる担体の表面積は特に限定されないが、通常1m/g以上であり、好ましくは10m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。また、好ましくは2000m/g以下であり、より好ましくは1500m/g以下、更に好ましくは1000m/g以下である。表面積が前記下限値以上のものを用いることで、金属を担体に高い分散度で担持することを可能とし、十分な触媒活性を得る上で好ましい。また前記上限値以下のものを用いることは、通常担体が有する細孔を有効に利用できる点で好ましい。
担持金属触媒に用いられる担体の平均細孔径は特に限定されないが、通常200Å以上であり、好ましくは250Å以上である。また、好ましくは500Å以下であり、より好ましくは400Å以下である。平均細孔径が上記下限以上であることで、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の取り込みが十分行われ、処理効率を維持できる傾向にある。上記範囲より平均細孔径が大きい担体も使用できるが、担体表面を有効に利用する点から上記上限以下が好ましい。
水素化分解で用いる金属触媒の製造方法は、活性成分が金属状態で触媒として機能していればよく、特に限定されない。例えば、金属、金属化合物等を、還元処理することで得ることができる。
担持金属触媒を用いる場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法を適宜組み合わせて製造することができる。通常、金属源となる金属化合物を担体に担持させ、乾燥、洗浄、焼成等の処理を行なった後、還元処理によって、金属状態に変換して用いる。
金属化合物の担体への担持方法は、特に限定されないが、例えば含浸法、イオン交換法、スプレー法、共沈法等の担持金属触媒の調製に常用されている既知の方法を用いることができる。前記金属化合物が担持された担体を還元処理することにより、担体に担持された金属化合物が金属に変換されることで、目的とする触媒が得られる。
前記還元処理は、液相又は気相のいずれでも行うことができるが、水素などの還元性ガスを用いて還元する気相還元や、アルコール、ギ酸、ギ酸ナトリウムなどを用いて還元する液相還元が好ましい。
前記還元処理における還元温度は特に限定はされないが、通常20℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。
水素化分解で用いられる金属触媒の形状は、特に限定はされず、該金属触媒を用いて行う反応の形式に応じて、適宜選択して用いることができる。該金属触媒の具体的な形状としては、例えば粉末状、粒子状、ペレット状等の形状が挙げられるが、中でも細孔内拡散の影響が少ない粉末状が好ましい。
また水素化分解で用いられる金属触媒の粒子径等も特に限定はされない。該金属触媒を用いる反応の形式に応じて、適宜選択して用いることができるが、通常、平均粒径30μm以上、20mm以下の触媒が使用される。
水素化分解で用いられる金属触媒の使用量は、水素化分解で適切な時間内に脱塩素できる程度であればよく、特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の重量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
(水素化分解条件)
水素化分解における温度は、特に限定されないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、150℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上の順でよりさらに好ましい。また、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。反応温度が前記範囲であることで、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の分解反応を抑制しながら、効率的に塩素を水素化分解除去することができる傾向にある。
水素化分解の時間は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩素含有量が上記上限以下となる時間であればよく、特に限定されない。好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
水素化分解における水素源としては特に限定はされないが、反応終了後に分離精製の必要がない気体の水素を用いることが望ましい。
水素ガス圧は、特に限定はされないが、通常、水素ガスによる加圧条件下で行われる。水素化分解反応の圧力は特に限定されないが、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上である。また、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下である。
一般的には、反応圧力を上昇させると金属触媒への水素供給が促進され、水素化分解の反応速度が向上する。一方で、高い反応圧力で実施するには特別に耐圧性を高めた反応器等の設備が必要となるほか、高い反応圧力の条件によって重合体の分解反応が生じる可能性がある。また高い圧力の反応では、芳香環の水素化も進行する可能性があり、芳香環の水素化を望まない場合、選択的に脱塩素だけを実施することが困難となる。
水素雰囲気下における水素ガスの水素濃度は、特に限定はされないが、通常70体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上であり、上限は通常100体積%であり、好ましくは95体積%以下である。
(反応装置)
水素化分解で用いられる反応装置については、特に限定されないが、通常は高圧反応が可能なオートクレーブが使用される。ループリアクターを使用してもよい。連続反応器の使用も可能であり、触媒を反応器に充填し、被処理重合体溶液と水素を流通させて反応を行うことも選択できる。連続反応器の場合は、触媒の分離工程が不要であるので、大量生産を行う場合は連続反応器の方が望ましい。反応装置の材質については通常SUSが用いられるが、ハステロイなどの耐酸性のSUSを用いてもよい。発生する酸に対する対応として、グラスライニングの容器やテフロンコーティングの容器なども使用できる。
(金属触媒の分離)
水素化分解反応後は、反応液から金属触媒を分離してもよい。
具体的な触媒の分離方法は特に限定されないが、フィルターなどによる濾過、デカンテーション、遠心分離等が挙げられる。この金属触媒の分離操作を行うことで、通常の場合、塩基性物質をも除去することができる。
(核水素化の進行率)
水素化分解工程における、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の核水素化の進行率は特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれる芳香環のうち、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下であり、下限は特に限定されない。核水素化進行率が上記上限以下であることで、重合体の機械的強度が高まる傾向にある。
核水素化進行率を上記上限以下として、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の核水素化を防止した上で、効率的な水素化分解による脱塩素を行うためには、反応温度、反応圧力、反応時間、触媒量を適宜調整することが好ましい。また、必要に応じて、水素化分解の触媒に対しては被毒物質となる塩基性物質の量を調整することも行う。
なお、核水素化進行率は、例えば、H−NMRにより、0.5〜2.5ppm付近の脂肪族由来ピークと6.0〜8.0ppm付近の芳香族由来のピークの積分値から算出することができる。
<塩素を除去する工程(加熱による脱塩素)>
以下、工程(1)として、加熱による脱塩素を行なう場合について説明する。
加熱による脱塩素では、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を加熱することにより、脱塩素を行なう。ここで、脱塩素された塩素は、塩基性物質に吸着され、該塩基性物質を濾過などにより分離する際に、同時に、塩素を除去することができる。そのため、後述するように、工程(1)の前に、塩基性物質の量を調整することが好ましい。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の加熱による脱塩素温度は、特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。また、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。反応温度が前記範囲であることで、重合体の分解反応を抑制しながら、効率的な脱塩素が達成できる傾向にある。
加熱による脱塩素を行う際のガス雰囲気は、特に限定はされないが、通常窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素などが使用される。酸素下であると酸化的な重合体の分解が進行する可能性があるため、好ましくは窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが使用される。不活性ガス濃度は通常70体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上であり、上限は通常100体積%であり、好ましくは95体積%以下である。
加熱による脱塩素を行う場合の処理時間は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩素含有量が前述の上限値以下となる時間であればよく、特に限定されない。好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
<塩基性物質の量の調整>
上述の塩素を除去する工程に先立ち、必要に応じて、塩基性物質の量を調整してもよい。具体的には、塩基性物質の量を調整して若干量の塩基性物質を残留させたり、塩基性物質を添加したりすることで、脱離した塩素が塩基性物質によりトラップされやすくなるように塩基性物質の量を調整する。
例えば、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体には、通常、塩素が含まれており、前述の通り、塩素が含まれたままで重合体の成形を行なう時などに加熱すると塩化水素等が発生して反応機器の腐食を起こしてしまう可能性がある。そのため、塩素を中和する目的でハイドロタルサイトのような塩基性物質の添加を必要とする場合がある。ただし、塩基性物質を添加すると、強熱残分が増加する傾向にあるため、塩基性物質の添加量や、塩素を除去する工程における反応条件等を調整する必要がある。
塩基性物質を、塩素を除去する工程で添加する或いは残留させる場合の添加量又は残留量は、塩素を除去する工程で脱塩素処理するにあたり、脱離した塩素に由来する酸を中和できる量であれば特に限定されないが、用いるビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また、用いるビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の塩素含有モル量に対して、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1.1当量以上であり、好ましくは3当量以下、より好ましくは2.5当量以下、さらに好ましくは2当量以下である。
また、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体にはあらかじめ上記の範囲内で塩基性物質が添加されている場合がある。従って、塩素を除去する工程を行う場合、塩基性物質が上記範囲で添加されていることで、水素化分解、加熱等により発生する塩化水素をトラップしながら、塩素の水素化分解、加熱分解反応等を行うことができる傾向にある。
<溶媒の分離>
上述の塩素を除去する工程、具体的には、水素化分解や加熱による脱塩素で溶媒を使用した場合、塩素を除去する工程の後にビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液を、そのまま種々の用途に使用してもよく、溶媒を分離して固体として取り出してもよい。本発明の重合体を固体として取り出す方法は特に限定されないが、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の貧溶媒中に溶液を注いでビニル芳香族重合体成分を含む重合体を析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を採用することができる。
この溶媒の分離工程においても、例えば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の貧溶媒中に溶液を注いでビニル芳香族重合体成分を含む重合体を析出、凝固させる凝固法などを採用することで、溶媒中に塩基性物質を溶出させる、もしくは、洗い流すことで塩基性物質を除去することができる。
<塩基性物質を除去する工程>
工程(1)では、上述の塩素を除去する工程と同時に、あるいは、上述の塩素を除去する工程とは別工程として、塩基性物質を除去する工程を設けることができる。上述したように、塩素を除去する工程において、該工程に用いる触媒を分離するときに、同時に、塩基性物質も分離、除去することができる。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩基性物質の含有形態としては、特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に添加されている形態が挙げられる。例えば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を溶媒に溶解させた場合、その塩基性物質が溶媒に不溶性のものであれば、溶媒中に分散した状態となる。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含有される塩基性物質の種類や含有量は前述の通りであるが、塩基性物質の除去工程では、特に、本発明の重合体を水素化する場合に用いる触媒活性の向上及び触媒分離濾過性の改善の効果が良好に得られる傾向にあるため、塩基性物質としてハイドロタルサイト類を除去することが好ましい。
被処理重合体溶液から塩基性物質を除去する方法は特に限定されない。例えば、重合体を溶媒に溶解させ不溶分となる塩基性物質をフィルター等で濾過により除く方法、デカンテーションにより沈降した塩基性物質を除く方法、遠心分離により塩基性物質を除く方法、活性炭などに吸着させた後に濾過等で除く方法、蒸留により除く方法などが挙げられる。溶媒に溶解する塩基性物質の場合、酸により塩として沈殿させて除去する方法、溶媒抽出で除く方法などが挙げられる。効率の観点から、不溶性の塩基性物質は濾過による除去が好ましい。
塩基性物質を除去する際に、助剤を用いてもよい。助剤は塩基性物質の除去に悪影響のないものであれば特に限定されないが、直接塩基性物質を吸着するもの、塩基性物質を濾過する際に濾過速度を向上させるもの等が挙げられる。具体的には活性炭、シリカ、アルミナ、活性白土、珪藻土等である。これらのうち、重合体の色相に影響を及ぼす有機低分子物等も除去できる点から、活性炭が好ましい。
助剤の使用量は特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。助剤の使用量が上記範囲であることで、助剤の効果が十分に得られ、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液のハンドリングの悪化を抑制し、助剤への塩基性物質の吸着、濾過速度の向上が十分行われる傾向にある。
塩基性物質の除去処理後の本発明の重合体中の塩基性物質の含有量は、本発明の重合体の質量に対して、通常0.05質量%以下であり、好ましくは0.005質量%以下、さらに好ましくは0.0005質量%以下である。塩基性物質含有量の下限は特に限定されないが、本発明の重合体の質量に対して例えば0.0001質量%以上である。上記塩基性物質の含有量が多いと、塩基性物質が無機固体である場合、重合体を燃焼した際の強熱残分となってしまい、本発明の重合体の強熱残分の規定を満たすことができず、重合体の用途によっては問題となる場合がある。
なお、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の塩基性物質の含有量は、一般的には酸による中和滴定により求めることができる。ただし、あらかじめ含有されている塩基性物質が特定されている場合は、その塩基性物質に由来する元素量を分析し、この結果から換算して求めることができる。例えば、ハイドロタルサイトであってその組成が分かっている場合、Mg量を測定することで、含有量を求めることができる。
[樹脂組成物]
本発明の重合体に必要に応じて本発明の重合体以外の樹脂成分や、各種添加剤などを配合して樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、上述のビニル芳香族重合体成分を含む重合体を含み、塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下である樹脂組成物であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物が含有し得る他の樹脂成分としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体のようなエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体、ポリスチレンなどのビニル芳香族重合体、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のエチレン系エラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー、ポリブタジエン、水素化ビニル芳香族重合体、水素化スチレン/ブタジエン又はスチレン/イソプレンブロック共重合体を含むその他の水素化ビニル芳香族ブロック共重合体、シクロオレフィン重合体、シクロオレフィン共重合体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、透明性、耐熱性、ガスバリア性、並びに薬液非吸着性のバランスに優れることから、水素化ビニル芳香族重合体、水素化ビニル芳香族ブロック共重合体、シクロオレフィン重合体、シクロオレフィン共重合体、ポリオレフィン樹脂が好ましく、特に、水素化ビニル芳香族重合体が好ましい。
なお、上記の水素化ビニル芳香族重合体や水素化ビニル芳香族ブロック共重合体を構成する単量体のビニル芳香族類としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、中でもスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらのビニル芳香族類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、フィラーなどの充填剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤、有機拡散剤や無機拡散剤等の光拡散剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性や耐熱性、低吸着性に優れるという特性をいかして、医療用のプラスチックとしては輸液バッグなどの材料に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、例えば上記の各成分を機械的に溶融混練する方法によって製造することができる。ここで用いることができる溶融混練機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロールミル等を挙げることができる。混練温度の下限は、通常100℃以上、好ましくは145℃以上、より好ましくは160℃以上である。混練温度の上限は、通常350℃、好ましくは300℃、より好ましくは250℃である。混練に際しては、各成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いてもよい。
[成形体]
本発明の成形体は、上述の本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体である。
本発明の樹脂組成物は、例えば射出成形(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の成形法により種々の成形体に加工することができる。成形体の形状には特に制限はなく、シート、フィルム、板状、粒子状、塊状体、繊維、棒状、多孔体、発泡体等が挙げられ、好ましくはシート、フィルム、板状である。また、成形されたフィルムは一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用されるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
本発明の成形体の用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、電気・電子部品分野における電線、コード類、ワイヤーハーネス等の被覆材料、絶縁シート、OA機器のディスプレイやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、リレー部品、コイルボビン、ICソケット、ヒューズケース、カメラ圧板、FDDコレット、フロッピーハブ、光学部品分野における光ディスク基板、光ディスク用ピックアップレンズ、光学レンズ、LCD基板、PDP基板、プロジェクションテレビ用テレビスクリーン、位相差フィルム、フォグランプレンズ、照光スイッチレンズ、センサースイッチレンズ、フルネルレンズ、保護メガネ、プロジェクションレンズ、カメラレンズ、サングラス、導光板、カメラストロボリフレクター、LEDリフレクター、自動車部品におけるヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバー、外板、ドアハンドル、リアパネル、ホイールキャップ、バイザー、ルーフレール、サンルーフ、インパネ、パネル類、コントロールケーブル被覆材、エアーバッグ・カバー、マッドガード、バンパー、ブーツ、エアホース、ランプパッキン類、ガスケット類、ウィンドウモール等の各種モール、サイトシールド、ウェザーストリップ、グラスランチャンネル、グロメット類、制震・遮音部材、建材分野における目地材、手すり、窓、テーブルエッジ材、サッシ、浴槽、窓枠、看板、照明カバー、水槽、階段腰板、カーポート、高速道路遮音壁、マルチウォールシート、鋼線被覆材、照明灯グローブ、スイッチブレーカー、工作機械の保護カバー、工業用深絞り真空成形容器、ポンプハウジング、家電、弱電分野における各種パッキン類、グリップ類、ベルト類、足ゴム、ローラー、プロテクター、吸盤、冷蔵庫等のガスケット類、スイッチ類、コネクターカバー、ゲーム機カバー、パチンコ台、OAハウジング、ノートPCハウジング、HDDヘッド用トレー、計器類の窓、透明ハウジング、OA用ギア付きローラー、スイッチケーススライダー、ガスコックつまみ、時計枠、時計輪列中置、アンバーキャップ、OA機器用各種ロール類、ホース、チューブ等の管状成形体、異型押し出し品、レザー調物品、咬合具、ソフトな触感の人形類等の玩具類、ペングリップ、ストラップ、吸盤、時計、傘骨、化粧品ケース、ハブラシ柄等の一般雑貨類、ハウスウェア、タッパーウェア等の容器類、結束バンド、ブロー成形による輸液ボトル、食品用ボトル、ウォーターボトル、化粧品用等のパーソナルケア用のボトル等各種ボトル、医療用部品におけるカテーテル、シリンジ、シリンジガスケット、点滴筒、チューブ、ポート、キャップ、ゴム栓、ダイヤライザー、血液コネクター、義歯、ディスポーザブル容器等、が挙げられ、また、発泡成形による用途にも適用可能である。
これらの中でも、本発明の成形体は、ガスバリア性や耐熱性、低吸着性に優れるため、フィルム、シート、容器など、特に医療用フィルムまたはシートに好適に用いることができる。また、本発明の成形体は、ガスバリア性や耐熱性、低吸着性に優れるという特性をいかして、医療用のプラスチックとしては輸液バッグなどに特に好適に用いることができる。本発明の成形体は、ビタミンなどの分子がバッグ材質に吸着しにくい、耐熱性に優れる、高温の加熱滅菌操作が可能である、などのメリットがある。
本発明の成形体のフィルム・シート分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、包装用ストレッチフィルム、業務用又は家庭用ラップフィルム、パレットストレッチフィルム、ストレッチラベル、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シーラント用フィルム、レトルト用フィルム、レトルト用シーラントフィルム、保香性ヒートシールフィルム、A−PET用シーラント、冷凍食品用容器・蓋、キャップシール、熱溶着フィルム、熱接着フィルム、熱封緘用フィルム、バッグ・イン・ボックス用シーラントフィルム、レトルトパウチ、スタンディングパウチ、スパウトパウチ、ラミネートチューブ、重袋、繊維包装フィルム等の食品、雑貨等包装分野、ハウス用フィルム、マルチフィルム等の農業用フィルム分野、輸液バッグ、高カロリー輸液や腹膜透析用(CAPD)等の複室容器、腹膜透析用の排液バッグ、血液バッグ、尿バッグ、手術用バッグ、アイス枕、アンプルケース、PTP包装等の医療用フィルム・シート分野、土木遮水シート、止水材、マット、目地材、床材、ルーフィング、化粧フィルム、表皮フィルム、壁紙等の建材関連分野、レザー、天井材、トランクルーム内張、内装表皮材、制震シート、遮音シート等の自動車部品分野、ディスプレーカバー、バッテリーケース、マウスパッド、携帯電話ケース、ICカード入れ、フロッピーディスクケース、CD−ROMケース等の弱電分野、ハブラシケース、パフケース、化粧品ケース、目薬等医薬品ケース、ティッシュケース、フェイスパック等のトイレタリー又はサニタリー分野、文具用フィルム・シート、クリアファイル、ペンケース、手帳カバー、デスクマット、キーボードカバー、ブックカバー、バインダー等の事務用品関連分野、家具用レザー、ビーチボール等の玩具、傘、レインコート等の雨具、テーブルクロス、ブリスターパッケージ、風呂蓋、タオルケース、ファンシーケース、タグケース、ポーチ、お守り袋、保険証カバー、通帳ケース、パスポートケース、刃物ケース等の一般家庭用、雑貨分野、再帰反射シート、合成紙等が挙げられる。また、粘着剤組成物として、あるいは基材に粘着材が塗布されて粘着性が付与されたフィルム・シート分野として、キャリアテープ、粘着テープ、マーキングフィルム、半導体又はガラス用ダイシングフィルム、表面保護フィルム、鋼鈑・合板保護フィルム、自動車保護フィルム、包装・結束用粘着テープ、事務・家庭用粘着テープ、接合用粘着テープ、塗装マスキング用粘着テープ、表面保護用粘着テープ、シーリング用粘着テープ、防食・防水用粘着テープ、電気絶縁用粘着テープ、電子機器用粘着テープ、貼布フィルム、バンソウコウ基材フィルム等医療・衛生材用粘着テープ、識別・装飾用粘着テープ、表示用テープ、包装用テープ、サージカルテープ、ラベル用粘着テープ等が挙げられる。
本発明の成形体の繊維、不織布分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、連続紡糸、連続捲縮糸、短繊維、モノフィラメント等の繊維、フラットヤーン、メルトブロー法、スパンボンド法による不織布にすることにより、紙おむつ等の衛生材、手術用衣服、手袋等の医療用、インナーグローブ、カーペット、その裏地、ロープ等の用途が挙げられる。また、これら不織布やモノフィラメント、フラットヤーン、スリットテープ等の編物と、フィルム・シートのラミネートによる、帆布、テント材、幌、フレキシブルコンテナー、レジャーシート、ターポリン等が挙げられる。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のCl量分析方法>
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のCl量は以下の方法で測定した。
方法:燃焼吸収イオンクロマト測定
燃焼装置:株式会社三菱ケミカルアナリテック製 AQF−2100M
イオンクロマト:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 DX500
<触媒調製方法>
(含浸工程)
シリカ(富士シリシア化学キャリアクトQ30)担体2.85gと、パラジウム原料として塩化パラジウム(日本エンゲルハルド株式会社)0.25gを、100mlナスフラスコに秤量し、濃塩酸0.9g、水6.6mlを加えて攪拌した(水の添加量はシリカ担体の吸水量の130質量%に相当)。攪拌溶液全体がなじんだ後、ナスフラスコ内を減圧しながら湯浴(80℃)で加熱し、パラジウム原料溶液を前記シリカ担体に含浸させると共に、余分な水分を除去した。シリカ担体に担持するパラジウム量は、金属パラジウムとして質量百分率で、5質量%となるように仕込んだ。
パラジウム原料溶液を含浸させた前記シリカ担体を、ガラス管(パイレックス社製)につめ、アルゴンガス流通下で乾燥し、室温まで冷却した後、取り出した。以下、これを触媒前躯体という。乾燥条件の詳細は以下の通りである。
ガス流通量:アルゴンガス 83ml/分
乾燥温度:室温から150℃まで15分間かけて昇温し、150℃にて1時間保持の後、50℃まで放冷した。
(還元工程及び安定化工程)
上記乾燥工程を経た触媒前躯体に対して、還元処理を行った。還元処理は、再度触媒前駆体を、ガラス管(パイレックス社製)につめ、Hガスを83ml/分で流通させながら、還元温度50℃から300℃まで30分間かけて昇温の後、300℃にて2時間保持して行った。その後、流通ガスをアルゴンに切り替え、流量83ml/分流通下、室温まで放冷した。
引き続き同じガラス管(パイレックス社製)に5体積%O含有窒素ガスを30分間流通し、安定化処理を行ない、5質量%Pd/SiO触媒を得た。
[実施例1]
シクロヘキサンを入れた200ml三角フラスコに、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(スチレン含量30質量%、重量平均分子量110,000。ハイドロタルサイト由来のMgを820質量ppm含有。以下「A−1」と表すことがある。)が18質量%となるように溶解させ、被処理重合体溶液を得た。この被処理重合体溶液に含まれるA−1に対して0.4質量%となる量の5質量%Pd/SiO触媒と、被処理重合体溶液を、攪拌装置を備えたハステロイ製オートクレーブに入れて混合して原料混合物aとした。
原料混合物aを含むオートクレーブを密閉後、H圧力1MPaとなるようにHを仕込んだ。前記オートクレーブを処理温度である210℃まで昇温し、210℃で2時間攪拌して、水素化分解を行った。処理中のオートクレーブ内全圧は2MPaであった。
この水素化分解後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したAr加圧濾過器によって触媒と不溶残分を濾別し、A−1処理液1を得た。フィルター上に白色物が残り、塩基性物質であるハイドロタルサイトが除去されていた。
3gのA−1処理液1と、3gのTHFを混合した溶液を作成し、メタノール30gの中に入れ、重合体を析出させた。得られた重合体の減圧乾燥を行い、固体中の溶媒を除去した。この固体重合体中のCl含有量を測定したところ44質量ppmであった。また、この固体重合体の強熱残分を測定したところ、0.01質量%以下であった。
[比較例1]
水素化分解の処理を行っていない未処理のA−1のCl含有量を測定したところ550質量ppmであった。また、A−1の強熱残分は0.5質量%であった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
Figure 2020143171
上記の比較例1に対して、実施例1では、触媒を用いた水素化分解処理により、重合体のCl含有量が大幅に低減されていることがわかる。重合体のCl含有量が低減されたことにより、その後の加工や更なる反応工程において、Clが原因となる腐食リスクを低減できる。また、比較例1では重合体にハイドロタルサイトのような塩基性物質がCl由来の酸を中和するために添加されているが、実施例1では、水素化分解処理により、強熱残分となるこれらの塩基性物質も除去されていることがわかる。
このようにCl含有量を低減するための水素化分解を行うことで、その後の工程での腐食リスクを低減できるほか、強熱残分をも低減できるため、医療用プラスチック容器等にも適用できる重合体を提供することができる。

Claims (9)

  1. 塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下であることを特徴とするビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
  2. 重量平均分子量が10000以上、200000以下である、請求項1に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
  3. 前記ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が、共重合体である、請求項1または2に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
  4. 前記共重合体が、スチレン−イソブチレン系共重合体である、請求項3に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法であって、
    該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から、塩素および塩基性物質を除去する工程(以下、「工程(1)」と称す。)を有することを特徴とするビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法。
  6. 前記工程(1)において、水素化分解を行なう、請求項5に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニル芳香族重合体成分を含む重合体を含み、
    塩素の含有量が350質量ppm以下であり、かつ、灰化試験を行なったときの強熱残分が0.1質量%以下である樹脂組成物。
  8. 請求項7に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
  9. 医療用フィルムまたはシートに用いられる、請求項8に記載の成形体。
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