以下、本発明のプリプレグ、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、シート状繊維基材と、該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物とを含み、樹脂組成物が(a)エラストマー、(b)芳香族構造を有する熱硬化性樹脂、及び(c)無機充填材を含有し、樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物中に含まれるドメインの平均最大長が15μm以下であることを特徴とする。
プリプレグのハンドリング性、埋め込み性、及び銅めっきピール強度等を向上させる観点から、樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物中に含まれるドメインの平均最大長は15μm以下、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、確認できない(ドメインが存在しない)ことがさらに好ましい。ドメインの平均最大長を15μm以下とすることで、プリプレグの埋め込み性を向上させることができる。
ドメインの平均最大長は、以下のようにして測定することができる。100℃で30分間、次いで170℃で30分間の条件で熱硬化させたプリプレグに対して、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、プリプレグの表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像(観察幅60μm、観察倍率2,000倍)を取得した。無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を観察し、断面SEM画像中に存在する最も大きいドメインを選択し、選んだドメインの最大長をそれぞれ測定し、その平均値を平均最大長とした。最大長とはドメイン領域に引ける直線のうち、最も長い直線の長さをいう。樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物においては、樹脂組成物の各成分が均一に混ざりあっておらず、偏在した状態となる場合がある。このような構成成分の偏在が生じた硬化物の断面SEM画像を観察すると、構成成分の偏在に起因した海島構造がみられる。本発明において、ドメインとは、斯かる海島構造の島部分をいう。
詳細は後述するが、配線板を製造するに際して、配線層は本発明のプリプレグに埋め込まれ、これによって埋め込み型の配線層が形成される。本発明のプリプレグは、ハンドリング性、埋め込み性、及び銅めっきピール強度が向上し、さらに反りの発生を抑制する観点から、樹脂組成物は、(a)エラストマー、(b)芳香族構造を有する熱硬化性樹脂、及び(c)無機充填材を含有する。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(d)有機粒子、(e)硬化剤、(f)硬化促進剤、(g)熱可塑性樹脂、及び(h)難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
(樹脂組成物)
<(a)エラストマー>
樹脂組成物は(a)成分を含む。(a)成分のような柔軟な樹脂を含むことで、プリプレグのハンドリング性、埋め込み性、及び銅めっきピール強度が向上し、さらに反り等の発生を抑制することができる。
(a)成分としては、柔軟な樹脂であれば特に限定されないが、後述する(b)成分と反応し得る官能基を有することが好ましい。中でも、ガラス転移温度が25℃以下もしくは25℃で液状であり、かつ(b)成分と反応し得る官能基を有する樹脂から選択される1種以上である樹脂であることが好ましい。
ガラス転移温度(Tg)が25℃以下である樹脂のガラス転移温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、通常−15℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂としては、好ましくは20℃以下で液状である樹脂、より好ましくは15℃以下で液状である樹脂である。
好適な一実施形態において、(b)成分と反応し得る官能基は、ヒドロキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基、フェノール性水酸基が好ましく、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基がより好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、(b)成分との区別のため、(a)成分としては芳香族構造を有する熱硬化性樹脂を含まない。
(a)成分は、本発明のプリプレグのハンドリング性等を向上させる観点から、ポリブタジエン及び水添ポリブタジエン等のブタジエン構造単位、シリコーンゴム等のポリシロキサン構造単位、(メタ)アクリレート構造単位、炭素原子数2〜15のアルキレン構造単位(好ましくは炭素原子数3〜10、より好ましくは炭素原子数5〜6)、炭素原子数2〜15のアルキレンオキシ構造単位(好ましくは炭素原子数3〜10、より好ましくは炭素原子数5〜6)、イソプレン構造単位、イソブチレン構造単位、クロロプレン構造単位、ウレタン構造単位、及びポリカーボネート構造単位から選択される1以上の構造単位を有することが好ましく、ブタジエン構造単位、ウレタン構造単位、(メタ)アクリレート構造単位から選択される1以上の構造単位を有することがより好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
(a)成分の好適な一実施形態は、25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂である。25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の酸無水物基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のフェノール性水酸基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のエポキシ基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、25℃で液状のイソシアネート基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂、及び25℃で液状のウレタン基含有飽和及び/又はブタジエン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が好ましい。ここで、「飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂」とは、飽和ブタジエン骨格及び/又は不飽和ブタジエン骨格を含有する樹脂をいい、これらの樹脂において飽和ブタジエン骨格及び/又は不飽和ブタジエン骨格は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜50000、より好ましくは1000〜10000である。ここで、樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
25℃で液状の官能基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂の官能基当量は、好ましくは100〜10000、より好ましくは200〜5000である。なお、官能基当量とは、1当量の官能基を含む樹脂の質量である。例えば、樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
25℃で液状のエポキシ基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又はブタジエン骨格含有エポキシ樹脂が好ましく、25℃で液状のポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂がより好ましく、25℃で液状のポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂がさらに好ましい。ここで、「水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂」とは、ポリブタジエン骨格の少なくとも一部が水素化されたエポキシ樹脂をいい、必ずしもポリブタジエン骨格が完全に水素化されたエポキシ樹脂である必要はない。25℃で液状のポリブタジエン骨格含有樹脂及び25℃で液状の水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂の具体例としては、(株)ダイセル製の「PB3600」、「PB4700」(ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス(株)製の「FCA−061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。
25℃で液状の酸無水物基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有酸無水物樹脂が好ましい。25℃で液状のフェノール性水酸基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有フェノール樹脂が好ましい。25℃で液状のイソシアネート基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有イソシアネート樹脂が好ましい。25℃で液状のウレタン基含有飽和及び/又は不飽和ブタジエン樹脂としては、25℃で液状の飽和及び/又は不飽和ブタジエン骨格含有ウレタン樹脂が好ましい。
(a)成分の他の好適な一実施形態は、Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂である。Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のイソシアネート基含有アクリル樹脂、Tgが25℃以下のウレタン基含有アクリル樹脂、及びTgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が好ましい。
Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000〜1000000、より好ましくは30000〜900000である。ここで、樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
Tgが25℃以下の官能基含有アクリル樹脂の官能基当量は、好ましくは1000〜50000、より好ましくは2500〜30000である。
Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス(株)製の「SG−80H」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:350000g/mol、エポキシ価0.07eq/kg、Tg11℃))、ナガセケムテックス(株)製の「SG−P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、Tg12℃))が挙げられる。
Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下の酸無水物基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましい。
Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル樹脂としては、Tgが25℃以下のフェノール性水酸基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス(株)製の「SG−790」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:500000g/mol、水酸基価40mgKOH/kg、Tg−32℃))が挙げられる。
また、(a)成分の好適な一実施形態は、分子内にブタジエン構造単位、ウレタン構造単位、及びイミド構造単位を有するポリイミド樹脂であり、該ポリイミド樹脂は分子末端にフェノール構造を有することが好ましい。
該ポリイミド樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜100000、より好ましくは10000〜15000である。ここで、樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
該ポリイミド樹脂の酸価は、好ましくは1KOH/g〜30KOH/g、より好ましくは10KOH/g〜20KOH/gである。
該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%〜95質量%、より好ましくは75質量%〜85質量%である。
該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂組成物中の(a)成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。また、下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
<(b)芳香族構造を有する熱硬化性樹脂>
(b)芳香族構造を有する熱硬化性樹脂としては、配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも芳香族構造を有するエポキシ樹脂がより好ましい。
芳香族構造を有するエポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」ともいう)は、芳香族構造を有していれば特に限定されない。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(b)成分は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)を含むことが好ましく、さらに、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という)を含有してもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200L」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「HP−7200HHH」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「157S70」(ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ドメインの平均最大長を15μm以下にするという観点から、固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格を有する分子量400以上の樹脂を含有しないことが好ましい(ナフタレン骨格を有する分子量350以上の樹脂を含有しないことがより好ましく、ナフタレン骨格を有する樹脂を含有しないことが、さらに好ましい)。また、固体状エポキシ樹脂としては、トリフェニル骨格を有する樹脂を含有しないことが好ましい。さらに、固体状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールノボラック樹脂を含有しないことが好ましい。さらに、固体状エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有する分子量1000以上のエポキシ樹脂を含有しないことが好ましい(ビフェニル骨格を有する樹脂を含有しないことが、より好ましい)。
また、固体状エポキシ樹脂としては、脂環式構造を有するエポキシ樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、キシレン骨格を含有する樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、中でも、脂環式構造を有するエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するエステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂及び芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がさらに好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液状エポキシ樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香環構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、固体状エポキシ樹脂としては1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香環構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂を用いることでプリプレグのハンドリング性及び樹脂フローを向上させることができ、固体状エポキシ樹脂を用いることでプリプレグのタックを抑制しつつ耐熱性及び電気特性等を向上させることができる。液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂の両効果を付与するために、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:20の範囲が好ましい。上記効果を得る観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:10の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:9の範囲がさらに好ましい。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
プリプレグの反りを抑制する観点から、(a)成分の質量をA、(b)成分の質量をBとしたとき、A/(A+B)×100が20〜70が好ましく、30〜68がより好ましく、35〜65がさらに好ましい。A/(A+B)×100を20〜70とすることで効果的に反りを抑制することができる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。なお、1000以下の分子量はGC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)により測定することができる。
<(c)無機充填材>
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材の平均粒径は、良好な埋め込み性の観点から、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下、より好ましくは1μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、(株)アドマテックス製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」、電気化学工業(株)製「UFP−30」、(株)トクヤマ製「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」、(株)アドマテックス製「SOC4」、「SOC2」、「SOC1」、河合石灰工業(株)製「BMB−05」等が挙げられる。
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、熱膨張率の低い絶縁層を得る観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、絶縁層の機械強度、特に伸びの観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
<(d)有機粒子>
樹脂組成物としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機粒子(有機充填材ともいう)を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。なお、(d)成分としては、(a)成分における官能基を有さないことが好ましい。(d)成分は、25℃において、メチルエチルケトンへの溶解度が5(g/100g)未満であることが好ましい。
有機粒子の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とし得る。下限については特に制限はないが、0.01μm以上である。平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等を用いて各有機粒子を50回測定した平均値である。
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本(株)製の「EXL−2655」、ガンツ化成(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。
樹脂組成物が有機粒子を含有する場合、有機粒子の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.2質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%、又は0.5質量%〜4質量%である。
樹脂組成物中の(a)成分の質量をA、(b)成分の質量をB、(d)成分の質量をDとしたとき、(D/(A+B+D))×100が、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。(D/(A+B+D))×100を10以下とすることで各成分の相分離が抑制され、ドメインの平均最大長を15μm以下とすることができる。(d)成分を配合する場合(すなわち、Dが0ではない場合)、(D/(A+B+D))×100の下限値は、1以上が好ましい。
<(e)硬化剤>
硬化剤としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(e)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、配線層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び配線層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495V」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」、「HPC−9500」等が挙げられる。
配線層との密着性に優れる絶縁層を得る観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、「YLH1030」(三菱化学(株)製)、「YLH1048」(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。また、下限は特に制限はないが2質量%以上が好ましい。
<(f)硬化促進剤>
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学(株)製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂と硬化剤の不揮発成分合計量を100質量%としたとき、0.01質量%〜3質量%が好ましい。
<(g)熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、中でも、芳香族構造を有する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、芳香族構造を有するフェノキシ樹脂、芳香族構造を有するポリビニルアセタール樹脂、芳香族構造を有するポリイミド樹脂、芳香族構造を有するポリアミドイミド樹脂、芳香族構造を有するポリエーテルイミド樹脂、芳香族構造を有するポリスルホン樹脂、芳香族構造を有するポリエーテルスルホン樹脂、芳香族構造を有するポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族構造を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族構造を有するポリエステル樹脂が好ましく、芳香族構造を有するフェノキシ樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.5質量%〜60質量%、より好ましくは3質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜40質量%である。
<(h)難燃剤>
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光(株)製の「HCA−HQ」等が挙げられる。
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜15質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜10質量%がさらに好ましい。
<その他の成分>
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
(シート状繊維基材)
本発明のプリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。
シート状繊維基材として用いられ得るガラスクロスの具体例としては、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1027MS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m2、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1037MS」(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m2、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製の「1078」(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m2、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製の「1037NS」(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布重量23g/m2、厚さ21μm)、(株)有沢製作所製の「1027NS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量19.5g/m2、厚さ16μm)、(株)有沢製作所製の「1015NS」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布重量17.5g/m2、厚さ15μm)、(株)有沢製作所製の「1000NS」(経糸密度85本/25mm、緯糸密度85本/25mm、布重量11g/m2、厚さ10μm)等が挙げられる。また液晶ポリマー不織布の具体例としては、(株)クラレ製の、芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法による「ベクルス」(目付け量6g/m2〜15g/m2)や「ベクトラン」などが挙げられる。
プリプレグの厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは20μm以下である。
本発明のプリプレグは、必要に応じて、保護フィルム、又は金属箔が積層されていてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。また、保護フィルムとして、離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ(株)製「ルミラーT6AM」等が挙げられる。
金属箔としては、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。金属箔は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケルクロム合金、銅ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、金属箔の形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケルクロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。また、金属箔は複数の金属箔が積層したものを用いてもよい。
[プリプレグの製造方法]
本発明のプリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。ホットメルト法では、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートするか、あるいはダイコーターによりシート状繊維基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造している。またソルベント法では、樹脂組成物を有機溶剤に溶解したワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物をシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させて、プリプレグを製造している。さらにプリプレグは、樹脂組成物からなる2枚の樹脂シートでシート状繊維基材をその両面側から挟み込んで加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで製造することもできる。
また、プリプレグの製造方法は、長尺のシート状繊維基材を用いて、ロールツーロール方式で行ってもよいし、バッチ方式で行ってもよい。
本発明のプリプレグは、反りの発生が抑制されるという特性を示す。反りの大きさは、好ましくは1.5cm未満、さらに好ましくは1.3cm以下又は−1cm以下、より好ましくは0cmである。反りの測定は、後述する<反りの評価>に記載の方法に従って測定することができる。
本発明のプリプレグは、良好なハンドリング性を示す。一実施形態において、プリプレグを一度基板に重ねたのちにプリプレグを剥離しても、基板上に樹脂等の付着物はない。ハンドリング性の測定は後述する<ハンドリング性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
本発明のプリプレグは、良好な埋め込み性を示す。一実施形態において、配線層付き基材上に積層する際、ボイドがない状態で配線層にプリプレグを積層することができる。埋め込み性は、後述する実施例の<パターン埋め込み性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
本発明のプリプレグは、良好な銅引き剥がし強度(銅めっきピール強度)を示す。一実施形態において、好ましくは1.5kgf/cm以下、より好ましくは1.3kgf/cm以下、さらに好ましくは1.0kgf/cm以下である。下限については特に制限はないが、0.4kgf/cm以上である。銅引き剥がし強度は、後述する実施例の<銅引き剥がし強度(銅めっきピール強度)の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
[プリント配線板及びその製造方法]
本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、プリプレグが内層基板と接合するように積層する工程
(II)プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい。
内層基板とプリプレグの積層は、例えば、プリプレグを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。プリプレグを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材をプリプレグに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸にプリプレグが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板とプリプレグの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層されたプリプレグの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
工程(II)において、プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する。
プリプレグの熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、プリプレグの熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
プリプレグを熱硬化させる前に、プリプレグを硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、プリプレグを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、プリプレグを5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に硬化体を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、又は100nm以下である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
本発明のプリント配線板は、本発明のプリプレグの硬化物である絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型配線層と、を備える態様であってもよい。
このようなプリント配線板の製造方法としては、
(1)内層基板と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた配線層とを有する配線層付き基材を準備する工程、
(2)本発明のプリプレグを、配線層がプリプレグに埋め込まれるように、配線層付き基材上に積層し、熱硬化させて絶縁層を形成する工程、
(3)配線層を層間接続する工程、及び
(4)基材を除去する工程、を含む。
この製造方法で用いる内層基板の両面には、銅箔等からなる金属層を有することが好ましく、金属層は2層以上の金属層が積層されている構成であることがより好ましい。工程(1)の詳細は、内層基板上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層し、フォトマスクを用いて所定の条件で露光、現像しパターンドライフィルムを形成する。現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電界めっき法により配線層を形成した後、パターンドライフィルムを剥離する。
内層基板とドライフィルムとの積層条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
ドライフィルムを内層基板上に積層後、ドライフィルムに対して所望のパターンを形成するためにフォトマスクを用いて所定の条件で露光、現像を行う。
配線層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは18/18μm以下(ピッチ36μm以下)、さらに好ましくは15/15μm以下(ピッチ30μm以下)である。配線層のライン/スペース比の下限は特に制限されないが、好ましくは0.5/0.5μm以上、より好ましくは1/1μm以上である。ピッチは、配線層の全体にわたって同一である必要はない。
ドライフィルムのパターンを形成後、配線層を形成し、ドライフィルムを剥離する。ここで、配線層の形成は、所望のパターンを形成したドライフィルムをめっきマスクとして使用し、めっき法により実施することができる。
配線層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、配線層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。配線層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成されたものが挙げられる。
配線層の厚みは、所望のプリント配線板のデザインによるが、好ましくは3μm〜35μm、より好ましくは5μm〜30μm、さらに好ましくは10〜20μm、又は15μmである。
配線層を形成後、ドライフィルムを剥離する。ドライフィルムの剥離は、公知の方法により実施することができる。必要に応じて、不要な配線パターンをエッチング等により除去して、所望の配線パターンを形成することもできる。
工程(2)は、本発明のプリプレグを、配線層がプリプレグに埋め込まれるように、配線層付き基材上に積層し、熱硬化させて絶縁層を形成する工程である。配線層付き基材とプリプレグとの積層条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
工程(3)は、配線層を層間接続することができれば特に限定されないが、絶縁層にビアホールを形成し、導体層を形成する工程、及び絶縁層を研磨又は研削し、配線層を露出させる工程の少なくともいずれかの工程であることが好ましい。絶縁層にビアホールを形成し、導体層を形成する工程は上述したとおりである。
絶縁層の研磨方法又は研削方法としては、プリント配線層を露出させることができ、研磨又は研削面が水平であれば特に限定されず、従来公知の研磨方法又は研削方法を適用することができ、例えば、化学機械研磨装置による化学機械研磨方法、バフ等の機械研磨方法、砥石回転による平面研削方法等が挙げられる。
工程(4)は、内層基板を除去し、本発明のプリント配線板を形成する工程である。内層基板の除去方法は特に限定されない。好適な一実施形態は、内層基板上に有する金属層の界面でプリント配線板から内層基板を剥離し、金属層を例えば塩化銅水溶液などでエッチング除去する。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含むことを特徴とする。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
まず、物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
[測定・評価用基板の調製]
(1)内層回路基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ35μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)に、IPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC C−25のパターン(ライン/スペース比=600/660μmの櫛歯パターン(残銅率48%))を形成した。次いで、基板の両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理し、内層回路基板を作製した。
(2)プリプレグの積層
下記実施例、比較例で作製したプリプレグとキャリア付銅箔(三井金属鉱業(株)製「MT−Ex」、銅箔厚み3μm)を銅箔が外側になるように上記内層回路基板の上下に配置し、20kgf/cm2の圧力で、温度190℃で90分間プレスし積層体を得た。
[評価]
<パターン埋め込み性の評価>
上記(2)で得られた積層体からキャリア銅を剥離後、残った銅を塩化鉄溶液に浸漬することで銅を剥離し、絶縁層の表面3cm2をマイクロスコープ(KEYENCE(株)製「マイクロスコープVK−8510」)を用いて観察し、シワ又はボイドがない場合を「〇」、シワ又はボイドがある場合を「×」とした。
<銅引き剥がし強度(銅めっきピール強度)の測定>
上記(2)で得られた積層体からキャリア銅を剥離した後、電解銅めっきを行い、全体の厚さが30μmの導体層(銅層)を形成した。得られた導体層付基板に対し、幅10mm、長さ100mmの部分領域を囲む切込みをいれ、その一端側を剥がしてつかみ具((株)ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm(N/cm))を測定した。引き剥がし強度が0.4kgf/cm以上の場合を「○」、0.4kgf/cm未満の場合を「×」とした。
<反りの評価>
下記実施例、比較例で作製したプリプレグを銅箔(JX日鉱日石金属(株)製「JTC箔」、銅箔厚み70μm)の片面に配置し、20kgf/cmの圧力で、温度190℃で90分間プレスし評価サンプルを得た。得られたプリプレグ付き銅箔の四辺のうち、二辺をポリイミドテープによりSUS板に固定し、SUS板から最も高い点の高さを求めることにより反りの値を求めた。そして、反りの大きさが0cm以上1.5cm未満の場合を「〇」、−1cm以上0cm未満又は1.5cm以上3cm未満を「△」、−1cm未満、又は3.5cm以上の場合を「×」とした。なお、反りの大きさについて、プリプレグを上向きに配置した際にプリプレグ側に反った場合を「+」とし、銅箔側に反った場合を「−」とした。
<プリプレグのハンドリングの評価>
下記実施例で作製したプリプレグを上記(1)で得られた基板に大気圧で重ねたのちに剥離し、表面3cm2をマイクロスコープ(KEYENCE(株)製「マイクロスコープVK−8510」)を用いて観察し、基板上に樹脂付着がない場合を「〇」、基板上に樹脂付着があった場合を「×」とした。
<ドメインの平均最大長の測定>
ドメインの平均最大長は、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」)を用いた。100℃で30分間、次いで170℃で30分間の条件で熱硬化させたプリプレグの表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像(観察幅60μm、観察倍率2,000倍)を取得した。無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を観察し、断面SEM画像中に存在する最も大きいドメインを選択し、選んだドメインの最大長をそれぞれ測定し、その平均値を平均最大長とした。
[実施例1]
下記のように製造したブタジエン系エラストマー28部と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200L」、エポキシ当量245)5部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品、エポキシ当量約169)3部とをメチルエチルケトン(MEK)15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、硬化促進剤(四国化成(株)製1B2PZ、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、不揮発成分5質量%のMEK溶液)1部と、有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)1部と、無機充填剤としてフェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)11部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
<プリプレグの調製>
樹脂ワニス1を、日東紡績(株)製スタイルWEA2013(経糸密度46本/25mm、緯糸密度44本/25mm、布質量81g/m2、厚さ71μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて135℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグ中の樹脂組成物含有量は48質量%、プリプレグの厚みは90μmであった。また、プリプレグの縦方向の長さが30cm、横方向の長さが20cmであった。
<ブタジエン系エラストマーの合成>
反応容器にG−3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達(株)製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学(株)製)23.5g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン−2,4−ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.96gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)40.4gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT−IRより2250cm−1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過してブタジエン系エラストマーを得た。
ブタジエン系エラストマーの性状:
粘度:7.5Pa・s(25℃、E型粘度計)
酸価:16.9mgKOH/g
固形分:50質量%
数平均分子量:13723
ポリブタジエン構造部分の含有率:50×100/(50+4.8+8.96)=78.4質量%。
[実施例2]
球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)11部に代えて、ひし形状ベーマイト(河合石灰工業(株)製「BMB−05」、平均粒径0.5μm)15部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス2、プリプレグ2を作製した。
[実施例3]
エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製「SG−P3」、数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg)55部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品、エポキシ当量約169)1部と、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「157S70」、エポキシ当量210)3.5部とを撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA3018−50P」、水酸基当量151、不揮発成分50%の1−メトキシ−2−プロパノール溶液)4部と、硬化促進剤(四国化成(株)製1B2PZ、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、不揮発成分5質量%のMEK溶液)0.1部と、有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)0.8部、無機充填剤としてひし形状ベーマイト(河合石灰工業(株)製「BMB−05」、平均粒径0.5μm)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を作製した。樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス3を用いた以外は実施例1と同様にしてプリプレグ3を作製した。
[実施例4]
球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)の添加量を40部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス4、プリプレグ4を作製した。
[実施例5]
ブタジエン系エラストマーの添加量を10部、球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)の添加量を7部、及び有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)の添加量を0.6部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス5、プリプレグ5を作製した。
[実施例6]
上記のように製造したブタジエン系エラストマー5部と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200L」、エポキシ当量245)9部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品、エポキシ当量約169)4部とをメチルエチルケトン(MEK)15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、硬化促進剤(四国化成(株)製1B2PZ、不揮発成分5質量%のMEK溶液)1部と、有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)1部と、無機充填剤としてフェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm、)10部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス6を作製した。樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス6を用いた以外は実施例1と同様にしてプリプレグ6を作製した。
[実施例7]
ブタジエン系エラストマーの添加量を40部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス7、プリプレグ7を作製した。
[実施例8]
球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)の添加量を5部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス8、プリプレグ8を作製した。
[実施例9]
球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm、)の添加量を60部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス9、プリプレグ9を作製した。
[比較例1]
上記のように製造したブタジエン系エラストマー28部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品、エポキシ当量約169)2.5部と、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「157S70」、エポキシ当量210)5部とをメチルエチルケトン(MEK)15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、硬化促進剤(四国化成(株)製1B2PZ、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、不揮発成分5質量%のMEK溶液)1部と、有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)1部と、無機充填剤としてフェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマッテクス(株)製「SOC4」、平均粒径1.0μm)11部とを混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス10を作製した。樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス10を用いた以外は実施例1と同様にしてプリプレグ10を作製した。
[比較例2]
有機粒子(アイカ工業(株)製、スタフィロイドAC3816N)の添加量を4部に変えた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス11、プリプレグ11を作製した。
[比較例3]
ブタジエン系エラストマーを添加しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂ワニス12、プリプレグ12を作製した。
表から、実施例1〜9のプリプレグは、ハンドリング性、埋め込み性、及び銅めっきピール強度が向上し、さらに反りが発生してないことがわかる。また、ドメインの平均最大長が15μmを超える比較例1、2、及び(a)成分を含まない比較例3のプリプレグはハンドリング性、埋め込み性、銅めっきピール強度、及び反りのいずれかが実施例1〜9のプリプレグよりも劣ることがわかる。比較例1の銅めっきピール強度を測定において、プリプレグを加熱しただけで銅箔の一部が膨れ、その後銅箔が剥がれてしまったことから銅めっきピール強度の測定ができなかった。
また、図1に示すように、実施例1はドメインの平均最大長が7.2μmであった。図2に示すように、実施例2はドメインの平均最大長が確認できないほど小さく、無機充填材等の各成分が分散していることがわかる。これに対し、図3に示すように、比較例1は、ドメインの平均最大長が18.0μmであることから、埋め込み性及び銅めっきピール強度が実施例1〜9よりも劣るものと考えられる。
実施例6及び実施例7は、(A/(A+B))×100が20〜70の範囲外であることから、(A/(A+B))×100が20〜70の範囲内である他の実施例よりも反りが劣っているが、使用上実害がない程度であった。
実施例8及び実施例9は、無機充填材の含有量が25〜70質量%の範囲外であることから、無機充填材の含有量が25〜70質量%の範囲内である他の実施例よりも反りが劣っているが、使用上実害がない程度であった。