以下、本発明の樹脂組成物、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)ポリカーボネート樹脂、及び(D)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(D)成分100質量部に対する(C)成分の量が通常0.1質量部〜30質量部である。この樹脂組成物は、埋め込み性に優れる。また、この樹脂組成物によれば、平均線膨張率に優れ、且つ高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる硬化物を得ることができる。このような樹脂組成物を用いれば、平均線膨張率に優れ、且つ高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得ることができ、更には埋め込み性に優れる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含有する樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
樹脂組成物は、(A)成分〜(D)成分の他に必要に応じて、(E)硬化促進剤、(F)難燃剤、及び(G)任意の添加剤を含んでいてもよい。以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発分を100質量%とした場合に、50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:1〜1:20の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:1〜1:10の範囲がより好ましく、1:1〜1:8の範囲がさらに好ましい。
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。また、通常は、(A)成分の量が前記の範囲にある場合に、高温高湿環境下での環境試験後の密着性及び埋め込み性を特に良好にできる。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%としたときの値である。
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<(B)硬化剤>
樹脂組成物は、(B)硬化剤を含有する。(B)成分としては、(A)成分を硬化する機能を有するものを用いることができる。(B)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。中でも、埋め込み性を良好にする観点及び高温高湿環境下での環境試験後の導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得る観点から、(B)成分は、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれか1種以上が好ましく、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤のいずれか1種以上であることがより好ましい。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300−02−65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01〜1:2の範囲が好ましく、1:0.05〜1:3がより好ましく、1:0.1〜1:1.5がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは21質量%以下である。(B)成分の含有量を斯かる範囲内にすることにより、導体層との密着性を向上させることができる。
<(C)ポリカーボネート樹脂>
樹脂組成物は、(C)ポリカーボネート樹脂を含有する。本発明では、(D)無機充填材に対して所定の割合の(C)ポリカーボネート樹脂を樹脂組成物に含有させることで、高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得ることができ、更には埋め込み性に優れる樹脂組成物を提供することができるようになる。(C)ポリカーボネート樹脂は、カーボネート基を有するので、分子の機械的強度に優れる。よって、(C)カーボネート樹脂は、樹脂組成物の硬化物の靱性を高める作用を発揮できる。そして、このように高められた靱性は、高温高湿環境下での環境試験の後であっても維持されるので、硬化物の破壊を伴う導体層の剥離を生じ難くできる。その結果、高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との密着性に優れる。また、(C)カーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂であり、適切な温度条件において優れた可塑性を発揮する。よって、この(C)カーボネート樹脂の作用により、樹脂組成物の最低溶融粘度を低くできるので、樹脂組成物の埋め込み性を良好にすることができる。そして、前記のような作用を発揮できる(C)カーボネート樹脂を、平均線膨張率の低減作用を有する(D)無機充填材に、その(D)無機充填材の作用が損なわれない適切な割合で組み合わせることで、本発明では、低い平均線膨張率と、高温高湿環境下での環境試験後の高い密着性と、優れた埋め込み性とのすべてを達成している。
(C)成分としては、カーボネート基を有していれば特に限定されず、例えば、脂肪族骨格含有ポリカーボネート樹脂、芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なお、芳香族骨格及び脂肪族骨格を含有するポリカーボネート樹脂を用いてもよく、これは芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂に分類される。(C)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。ここで、カーボネート基とは、「−O−C(=O)−」で表される基をいう。
(C)成分は、一般にポリヒドロキシ化合物とカーボネート基前駆体とを反応させて製造することができ、ポリヒドロキシ化合物由来の構造単位を有する。ポリヒドロキシ化合物及びカーボネート基前駆体は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上のポリヒドロキシ化合物を共重合させた共重合体とカーボネート基前駆体とを反応させて(C)成分を製造してもよい。構造単位とは、化合物から1つまたは2つの水素原子を取り除いた構造を意味する。
カーボネート基前駆体としては、例えば、炭酸エステル、ホスゲン等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、脂肪族骨格含有ポリヒドロキシ化合物、芳香族骨格含有ポリヒドロキシ化合物等が挙げられる。ここで、脂肪族骨格含有ポリヒドロキシ化合物とは、分子内に芳香環を含まないポリヒドロキシ化合物をいい、芳香族骨格含有ポリヒドロキシ化合物とは、分子内に芳香環を含むポリヒドロキシ化合物をいう。また、脂肪族骨格含有ポリヒドロキシ化合物を用いて得られたポリカーボネート樹脂を脂肪族骨格含有ポリカーボネート樹脂といい、芳香族骨格含有ポリヒドロキシ化合物を用いて得られたポリカーボネート樹脂を芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂という。
芳香族骨格含有ポリヒドロキシ化合物としては、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を良好にする観点から、芳香族骨格含有ジヒドロキシ化合物が好ましい。芳香族骨格含有ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール、ナフタレンジオール等が挙げられ、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に特に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を特に良好にする観点から、ビスフェノールが好ましい。即ち、芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール構造単位を有するカーボネート樹脂であることが好ましい。ここで、ビスフェノールとは、2つのヒドロキシフェニル基を有する化合物の総称である。
ビスフェノール構造単位を構成するビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールZ等が挙げられ、高温高湿環境下での環境試験後の密着性及び埋め込み性を特に良好にする観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールCが好ましい。
芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「FPC2136」、「FPC0220」、「PCZ200」、「FPC0330」などが挙げられる。
脂肪族骨格含有ポリヒドロキシ化合物としては、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を特に良好にする観点から、脂肪族骨格含有ジヒドロキシ化合物が好ましい。脂肪族骨格含有ジヒドロキシ化合物としては、例えばジオール化合物等が挙げられる。即ち、脂肪族骨格含有ポリカーボネート樹脂としては、ジオール構造単位を有するカーボネート樹脂であることが好ましい。ジオール構造単位を構成するジオール化合物としては、例えば、6−ヘキサメチレンジオール等が挙げられる。
脂肪族骨格含有ポリカーボネート樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、旭化成社製の「T5652」、「G3452」、「G4672」などが挙げられる。
(C)成分としては、高温高湿環境下での環境試験後の密着性及び埋め込み性を特に良好にする観点から、脂肪族骨格含有ポリカーボネート樹脂、及び芳香族骨格含有ポリカーボネート樹脂のいずれか1種以上であることが好ましく、ジオール構造単位を有するカーボネート樹脂、及びビスフェノール構造単位を有するポリカーボネート樹脂のいずれか1種以上であることがより好ましい。
(C)成分の数平均分子量としては、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上である。また、樹脂組成物の溶融粘度を低下させる観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下、さらに好ましくは50000以下、又は30000以下である。数平均分子量は、後述する<ポリカーボネート樹脂の数平均分子量の測定>の記載に従って測定することができる。
(C)成分の含有量としては、樹脂組成物の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。(C)成分の含有量を斯かる範囲内とすることにより、高温高湿環境下での環境試験後の密着性及び埋め込み性を特に良好にできる。ここで「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する不揮発分のうち、後述する(D)無機充填材を除いた成分をいう。
また、(C)成分の量は、(D)成分100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.9質量部以上であり、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下である。これにより、平均線膨張率に優れ、且つ高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得ることができ、更には埋め込み性に優れる樹脂組成物を得ることができる。(D)無機充填材が表面処理剤で表面処理を施されている場合、(D)成分100質量部には、前記の表面処理剤の質量を含む。
<(D)無機充填材>
樹脂組成物は、(D)無機充填材を含有する。無機充填材により、樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率を小さくできる。
無機充填材の材料は無機化合物であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカの市販品として、アドマテックス社製「SOC2」、「SOC1」、デンカ社製「UFP−30」、「UFP−40」等が挙げられる。
無機充填材の平均粒径は、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を良好にする観点から、通常5μm以下であり、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。平均粒径の下限は、特に限定されないが、1nm(0.001μm)以上、又は5nm以上、又は10nm以上等とし得る。
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
無機充填材は、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を良好にする観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましく、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることがより好ましく、アミノシラン系シランカップリング剤で処理されていることがさらに好ましい。表面処理剤は、他の成分、例えば樹脂と反応する官能基、例えばエポキシ基、アミノ基又はメルカプト基を有することが好ましく、当該官能基が末端基に結合していることがより好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製アルコキシシラン化合物「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製シラン系カップリング剤「KBM−7103」(3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を良好にする観点から、(D)成分100質量部に対して、0.2質量部〜5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部〜4質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部〜3質量部で表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、高温高湿環境下での環境試験後の密着性に優れる硬化物を得る観点、及び、埋め込み性を良好にする観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」等を使用することができる。
(D)成分の含有量は、樹脂組成物の硬化物の平均線膨張係数を小さくする観点、及び、誘電性能を向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、通常45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。上限は、特に限定されないが、通常85質量%以下であり、例えば80質量%以下、又は75質量%以下等とし得る。
<(E)硬化促進剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、(E)硬化促進剤を含有し得る。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。これにより、樹脂組成物の硬化を確実に促進することができる。
<(F)難燃剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、(F)難燃剤を含有し得る。難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH−100」、「SPS−100」、「SPB−100」「SPE−100」、伏見製薬所社製の「FP−100」、「FP−110」、「FP−300」、「FP−400」等が挙げられる。
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA−HQ」、大八化学工業社製の「PX−200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいもの、例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等が好ましい。
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上である。これにより、樹脂組成物及びその硬化物に顕著な難燃性を付与することができる。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
<(G)任意の添加剤>
一実施形態において、樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。但し、ここでいう熱可塑性樹脂は(C)ポリカーボネート樹脂を含めない。
熱可塑性樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「YL7553BH30」、「YL7891BH30」、積水化学工業社製のKSシリーズ、新日本理化社製の「リカコートSN20」、「リカコートPN20」、三菱ガス化学社製の「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
<樹脂組成物の物性、用途>
(最低溶融粘度)
本発明の樹脂組成物の最低溶融粘度は、通常6000ポイズ以下であり、好ましくは5000ポイズ以下であり、より好ましくは4500以下であり、さらに好ましくは4000以下であり、かつ、好ましくは100ポイズ以上であり、より好ましくは200ポイズ以上であり、さらに好ましくは500ポイズ以上である。このように最低溶融粘度が低いので、本発明の樹脂組成物は、埋め込み性に優れる。ここで、上記最低溶融粘度は、樹脂組成物を80℃で3分間乾燥することによって得られる厚み15μmの樹脂組成物1gの最低溶融粘度であり、通常、動的粘弾性率を測定する60℃から200℃までの温度範囲内で認められる。最低溶融粘度は、後述する<樹脂組成物層の最低溶融粘度の測定>に記載の方法に従って算出することができる。
(密着性)
本発明の樹脂組成物の硬化物は、当該硬化物の上に銅箔がラミネートされている場合において、銅箔との密着性、すなわち銅箔引き剥がし強度に優れるという特性を示す。通常、当該銅箔の幅10mm及び長さ100mmの領域の長さ方向一端を、JIS C6481に準拠して、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時に測定される第1の荷重が、0.20kgf/cm以上であり、好ましくは0.45kgf/cm以上、より好ましくは0.50kgf/cm以上、さらに好ましくは0.53kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下等とし得る。この第1の荷重は、後述する<銅箔引き剥がし強度(密着性1)の測定>の記載に従って測定することができる。このように硬化物は、銅箔等の導体層との密着性に優れるので、本発明によれば、導体層との密着性に優れる絶縁層を得ることができる。ここで、上記第1の荷重は、樹脂組成物を190℃、90分の硬化条件で硬化することで形成される厚み15μmの硬化物の上に、粗化処理面のRa値が1μmで厚み35μmの防錆処理済みのCZ銅箔を130℃及び30分間の条件でラミネートしたときに測定される値である。
(環境試験後の密着性)
また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、当該硬化物の上に銅箔がラミネートされている場合において、高温高湿条件下での耐環境試験の後でも、銅箔との密着性、すなわち銅箔引き剥がし強度に優れるという特性を示す。そして、通常、このように高温高湿環境下での環境試験後であっても高い密着性に優れる硬化物は、長期間にわたって優れた密着性を維持できる。通常、高温高湿条件下での耐環境試験後に測定される第2の荷重が、0.18kgf/cm以上、より好ましくは0.20kgf/cm以上、さらに好ましくは0.21kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下等とし得る。この第2の荷重は、後述する<銅箔引き剥がし強度(密着性2)の測定>の記載に従って測定することができる。このように硬化物は、高温高湿条件下での耐環境試験の後の銅箔等の導体層との密着性に優れるので、本発明によれば、高温高湿条件下での耐環境試験の後の導体層との密着性に優れる絶縁層を得ることができる。ここで、上記第2の荷重は、樹脂組成物を190℃、90分の硬化条件で硬化することで形成される厚み15μmの硬化物の上に、粗化処理面のRa値が1μmで厚み35μmの防錆処理済みのCZ銅箔を130℃及び30分間の条件でラミネートし、その後、高温高湿条件下での耐環境試験後に測定される値である。
(平均線膨張率)
本発明の樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率は通常低い値を示す。本発明の樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の平均線膨張率は、通常37ppm/℃以下であり、好ましくは36ppm/℃以下であり、より好ましくは35ppm/℃以下であり、さらに好ましくは34ppm/℃以下であり、かつ、通常1ppm/℃以上である。下限は、5ppm/℃以上又は10ppm/℃以上等とし得る。ここで、上記平均線膨張率は、樹脂組成物を200℃で90分間加熱することによって得られる厚み40μmの硬化物の平均線膨張率であり、通常、25℃から150℃までの温度範囲内で測定された熱膨張率(ppm)の平均値である。平均線膨張率は、後述する<平均線膨張率の測定及び評価>に記載の方法に従って算出することができる。
本発明の樹脂組成物は、埋め込み性に優れており、更には、平均線膨張率に優れ、且つ後述するように、高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、埋め込み性が良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
樹脂組成物層の厚さは、通常50μm以下であり、プリント配線板の薄型化観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは13μm以下、特に好ましくは10μm以下、又は8μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
本発明の樹脂シートは、高温高湿環境下での環境試験後、導体層との間の密着性に優れる絶縁層(樹脂組成物層の硬化物)をもたらす。したがって本発明の樹脂シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するための(プリント配線板の絶縁層形成用の)樹脂シートとして好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂シート(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂シート)としてより好適に使用することができる。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、絶縁層を含み、該絶縁層は、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成されている。
プリント配線板は、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃〜240℃、より好ましくは150℃〜220℃、さらに好ましくは170℃〜200℃である。硬化時間は好ましくは5分間〜120分間、より好ましくは10分間〜100分間、さらに好ましくは15分間〜90分間とすることができる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)〜工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
本発明の樹脂シートは、埋め込み性が良好な樹脂組成物層を含むことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。部品内蔵回路板は公知の製造方法により作製することができる。
本発明の樹脂シートを用いて製造されるプリント配線板は、樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物で形成された絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型配線層と、を備える態様であってもよい。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<実施例1:樹脂組成物1の作製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ当量約180)10部、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約330)10部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238)10部、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC社製「HP4700」)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬社製「NC3000」)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約190)25部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPH−100」)5部、及び、ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、数平均分子量20895)3部をメチルエチルケトン(以下、「MEK」ということがある)40部に撹拌しながら加熱溶解させて、樹脂溶液を得た。
樹脂溶液を、室温にまで冷却した。その後、樹脂溶液に、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、活性基当量約151、不揮発分50%の2−メトキシプロパノール溶液)20部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発分5質量%のMEK溶液)3部、球形シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」)をアミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理したもの(平均粒径0.77μm)200部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニスとして樹脂組成物1を作製した。
<実施例2:樹脂組成物2の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)3部を、ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC0220」、数平均分子量18911)3部に変えた。以上の事項以外は実施例1と全く同様にして、樹脂組成物2を作製した。
<実施例3:樹脂組成物3の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)3部を、ポリカーボネート樹脂(旭化成社製「T5652」、数平均分子量2035)3部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物3を作製した。
<実施例4:樹脂組成物4の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)の量を3部から10部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物4を作製した。
<実施例5:樹脂組成物5の作製>
樹脂溶液に、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V−03」、活性基当量約216、不揮発分50質量%のトルエン溶液)10部を加えた。カルボジイミド系硬化剤は、樹脂溶液を室温にまで冷却した後であって、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を混合する前に投入した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物5を作製した。
<実施例6:樹脂組成物6の作製>
活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部を、活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300−02−65MA」、活性基当量約199、不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)40部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物6を作製した。
<実施例7:樹脂組成物7の作製>
アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO−C2」)の量を200部から120部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物7を作製した。
<実施例8:樹脂組成物8の作製>
アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO−C2」)200部を、球状シリカ(デンカ社製「UFP−30」、平均粒径0.078μm)120部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物8を作製した。
<実施例9:樹脂組成物9の作製>
アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO−C2」)の量を200部から300部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして、樹脂組成物9を作製した。
<比較例1:比較例樹脂組成物1の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)の量を3部から0.1部に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして、比較例樹脂組成物1を作製した。
<比較例2:比較例樹脂組成物2の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」)の量を3部から40部に変えた。以上の事項以外は実施例8と同様にして、比較例樹脂組成物2を作製した。
<比較例3:比較例樹脂組成物3の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、数平均分子量20895)3部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例7と同様にして、比較例樹脂組成物3を作製した。
<比較例4:比較例樹脂組成物4の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、数平均分子量20895)3部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL6954BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例7と同様にして、比較例樹脂組成物4を作製した。
<比較例5:比較例樹脂組成物5の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、数平均分子量20895)3部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例8と同様にして、比較例樹脂組成物5を作製した。
<比較例6:比較例樹脂組成物6の作製>
ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製「FPC2136」、数平均分子量20895)3部を、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL6954BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例8と同様にして、比較例樹脂組成物6を作製した。
<無機充填材の平均粒径の測定>
無機充填材100mg、分散剤(サンノプコ社製「SN9228」)0.1g、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−2200」)を使用して、回分セル方式で粒径分布を測定し、メディアン径として平均粒径を算出した。結果は以下の通りであった。
「SO−C2」の表面処理後の平均粒径:0.77μm
「UFP−30」の平均粒径:0.078μm
<ポリカーボネート樹脂の数平均分子量の測定>
各ポリカーボネート樹脂100mg、分散剤(関東化学社製「N−メチルピロリドン」)5gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散した。メンブレンフィルター(東洋濾紙社製「アドバンテック」、0.5μmカット)を使用して濾過を行った後、ゲル浸透クロマトグラフ測定装置(昭光サイエンティフィック社製「Shodex GPC−101」)を使用して、数平均分子量(Mn)の算出を行った。結果は以下の通りであった。
「FPC2136」の数平均分子量:20895
「FPC0220」の数平均分子量:18911
「T5652」の数平均分子量:2035
[樹脂シートの作製]
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、以下「離型PET」ということがある。)を用意した。
<樹脂シートAの作製>
実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが15μmとなるよう、離型PET上にダイコーターにて均一に塗布し、80℃で3分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の離型PETと接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートAを得た。
<樹脂シートBの作製>
実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるよう、離型PET上にダイコーターにて均一に塗布し、90℃で3分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートBを得た。
<樹脂組成物層の最低溶融粘度の測定>
各樹脂シートAから樹脂組成物層の一部を剥離し、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol−G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定間隔温度2.5℃、振動数1Hz、歪み5degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(ポイズ)を算出した。
また、最低溶融粘度が5000ポイズ超の場合を「×」とし、5000ポイズ以下の場合を「○」として評価した。
[銅箔引き剥がし強度の測定]
<サンプルの作製>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC−III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック社製メックエッチボンド「CZ−8101」に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、続いて、防錆溶液(メック社製「CL8300」)を用いて防錆処理を施した。このようにして得られた銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
(2)銅箔のラミネートと絶縁層形成
各樹脂シートAから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP−500」)を用いて、樹脂組成物層が、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)と接合するように、前記の積層板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。ラミネート処理された2枚の樹脂シートAから支持体である離型PETを剥離した。露出した樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、ラミネートした。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、CZ銅箔、絶縁層、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板、絶縁層及びCZ銅箔をこの順に備えたサンプルを作製した。
<銅箔引き剥がし強度(密着性1)の測定>
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性1」と呼ぶ。
<耐環境試験(HAST)後の銅箔引き剥がし強度(密着性2)の測定>
作製したサンプルに対して、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験を実施した。その後、密着性1の測定と同様に、切込みをいれてから銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性2」と呼ぶ。
また、密着性2における測定結果が0.20kgf/cm未満の場合を「×」とし、0.20kgf/cm以上の場合を「○」として評価した。
<平均線膨張率の測定及び評価>
各接着シートBから保護フィルムを剥離した後、200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、離型PETを剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、熱膨張率(ppm)を、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの熱膨張率の値から、平均線膨張率(ppm/℃)を算出した。
また、平均線膨張率が35ppm/℃超の場合を「×」とし、35ppm/℃以下の場合を「○」として評価した。
樹脂組成物1〜9及び比較例樹脂組成物1〜6の調製に用いた成分とその配合量(不揮発分量)を下記表に示した。なお、下記表中の略語等は以下のとおりである。
(A)成分:エポキシ樹脂
828US:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量約180)
ESN475V:ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、エポキシ当量約330)
YL7760:ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量約238)
HP4700:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、エポキシ当量163)
NC3000:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量269)
YX4000H:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量約190)
(B)成分:硬化剤
HPC−8000−65T:活性エステル系硬化剤(DIC社製、活性基当量約223、不揮発分65質量%のトルエン溶液)
PC1300−02−65MA:活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製、活性基当量約199、不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)
LA−3018−50P:フェノール系硬化剤(DIC社製、活性基当量約151、不揮発分50%の2−メトキシプロパノール溶液)
V−03:カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製、活性基当量約216、不揮発分50質量%のトルエン溶液)
(C)成分:ポリカーボネート樹脂
FPC2136:ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、数平均分子量20895)
FPC0220:ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、数平均分子量18911)
T5652:ポリカーボネート樹脂(旭化成社製、数平均分子量2035)
(D)成分:無機充填材
SO−C2:アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理されたアドマテックス社製球形シリカ(平均粒径0.77μm)
UFP−30:球状シリカ(デンカ社製、平均粒径0.078μm)
(E)成分:硬化促進剤
DMAP:硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、不揮発分5質量%のMEK溶液)
(F)成分:難燃剤
SPH−100:難燃剤(ホスファゼン樹脂、大塚化学社製)
(G)成分:任意の熱可塑性樹脂
YL7553BH30:フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)
YL7891BH30:エステル型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)
(C)成分/(D成分)[%]:(D)成分の質量又は質量部に対する(C)成分の質量又は質量部の割合(百分率)
(D)成分[質量%]:樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合の(D)成分の含有量(百分率)
[検討]
表1及び表2に示した実施例1〜9及び比較例1〜6の対比から、樹脂組成物中の(D)成分の質量に対する(C)成分の質量の割合が実施例1〜9に示す割合である場合に、平均線膨張率に優れ、且つ高温高湿環境下での環境試験の後に導体層との間の密着性に優れる絶縁層を得ることができ、更には埋め込み性に優れる樹脂組成物;当該樹脂組成物を含有する樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供することという効果を奏することが分かる。
前記の実施例において、(E)成分〜(F)成分を用いない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。