本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、寝たきりの要介護者を介護する労を軽減するベッド及びパッドを提供することを目的とする。
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、 ベッドであって、横臥する使用者の身体を支える横臥台と、前記横臥台を前記ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動可能に支持する横臥台支持機構と、前記横臥台を前記軸の周りに揺動させる横臥台揺動機構と、前記横臥台の上に配置して使用される少なくとも1個のパッドと、を備えている。前記少なくとも1個のパッドの各々は、複数の袋体を含んでいる。当該複数の袋体は、前記横臥台の上の互いに異なる位置に配置可能であり、全体で流体を密封しており、密封された前記流体の収容量に応じて各々が膨縮し、流路を通じて内部が互いに連通している。前記流路は、外部から挟むことにより閉塞可能な柔軟な材料により形成されている。前記横臥台は、前記少なくとも1個のパッドの前記流路の少なくとも一部を挟んで封じるように弾性部材により付勢された挟み機構を有している。前記ベッドは、第1及び第2の紐体と、床と、当該床に取り付けられ前記第2の紐体を中継する中継部材と、をさらに備えている。前記第1の紐体は、当該第1の紐体の張力によって前記挟み機構を開くように、前記挟み機構に一端が連結され、前記床に他端が連結されている。前記第2の紐体は、当該第2の紐体の張力によって前記挟み機構を開くように、前記挟み機構に一端が連結し、前記床に取り付けられた前記中継部材に中間部が中継され、前記軸からの距離が前記一端よりも遠くかつ前記軸とは反対側の前記横臥台の部位に、他端が連結されている。それにより、前記横臥台の揺動に伴い、前記横臥台の傾斜角が一方向及び他方向に、それぞれの所定限度を超えたときにのみ、前記挟み機構が前記弾性部材の付勢力に抗して開くように、前記第1及び第2の紐体が前記挟み機構に張力を付与する。
この構成によれば、横臥台が、ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動するので、横臥台の姿勢の変動に伴い、横臥台の上に横臥する使用者の体重を支え、使用者に押圧力を及ぼす横臥台上の位置が変動する。横臥台の上に、少なくとも1個のパッドを配置し、しかも複数の袋体が横臥台の上の互いに異なる位置となるように、当該パッドを配置することにより、パッドの上に横臥する使用者の体重を支える袋体が移り変わる。横臥台の揺動に伴い、その傾斜角が一方向及び他方向に、それぞれの所定限度を超えたときにのみ、第1及び第2の紐体の張力により、挟み機構が弾性部材の付勢力に抗して開く。このため、横臥台が一方向及び他方向に、それぞれの所定限度以上に傾斜したときにのみ、複数の袋体の内部を連通させる流路が開くこととなる。それにより、傾斜に沿って、流体が一つの袋体から別の袋体へ移動する。その結果、複数の袋体の間で膨張収縮の状態が、横臥台の揺動に伴って変化する。このように、横臥台の揺動と袋体の膨縮状態の変化とが相まって、袋体により押圧される身体の部位が、横臥台の揺動に伴って変動する。それにより、使用者の床ずれ防止効果が向上する。
本発明のうち第2の態様によるものは、ベッドであって、横臥する使用者の身体を支える横臥台と、前記横臥台を前記ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動可能に支持する横臥台支持機構と、前記横臥台を前記軸の周りに揺動させる横臥台揺動機構と、前記横臥台の上に配置して使用される少なくとも1個のパッドと、を備えている。前記少なくとも1個のパッドの各々は、複数の袋体を含んでいる。当該複数の袋体は、前記横臥台の上の互いに異なる位置に配置可能であり、流体を出し入れ可能に全体で密封する流体栓を有し、密封された前記流体の収容量に応じて各々が膨縮し、流路を通じて、内部が互いに連通している。前記流路は、外部から挟むことにより閉塞可能な柔軟な材料により形成されている。前記横臥台は、前記少なくとも1個のパッドの前記流路の少なくとも一部を挟んで封じるように弾性部材により付勢された挟み機構を有している。前記ベッドは、第1及び第2の紐体と、床と、当該床に取り付けられ前記第2の紐体を中継する中継部材と、をさらに備えている。前記第1の紐体は、当該第1の紐体の張力によって前記挟み機構を開くように、前記挟み機構に一端が連結され、前記床に他端が連結されている。前記第2の紐体は、当該第2の紐体の張力によって前記挟み機構を開くように、前記挟み機構に一端が連結し、前記床に取り付けられた前記中継部材に中間部が中継され、前記軸からの距離が前記一端よりも遠くかつ前記軸とは反対側の前記横臥台の部位に、他端が連結されている。それにより、前記横臥台の揺動に伴い、前記横臥台の傾斜角が一方向及び他方向に、それぞれの所定限度を超えたときにのみ、前記挟み機構が前記弾性部材の付勢力に抗して開くように、前記第1及び第2の紐体が前記挟み機構に張力を付与する。
この構成によれば、少なくとも1個のパッドの各々に、流体栓を通じて流体を注入し、密封することができる。密封後のパッドを第1の態様によるベッドのパッドと同様に用いることにより、第1の態様によるベッドと同様の効果が得られる。パッドが流体栓を有するために、パッドが無用であるときに流体を排出することができ、軽量かつコンパクトな状態にしてパッドを保管することができる。
本発明のうち第3の態様によるものは、ベッドであって、横臥する使用者の身体を支える横臥台と、前記横臥台を前記ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動可能に支持する横臥台支持機構と、前記横臥台を前記軸の周りに揺動させる横臥台揺動機構と、前記横臥台の上に配置して使用される少なくとも1個のパッドと、を備えている。そして、前記少なくとも1個のパッドの各々は、複数の袋体を含んでいる。さらに、当該複数の袋体は、前記横臥台の上の互いに異なる位置に配置可能であり、全体で流体を密封しており、密封された前記流体の収容量に応じて各々が膨縮し、圧力差による前記流体の移動を遅延させる狭窄な流路を通じて、内部が互いに連通する。
この構成によれば、横臥台が、ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動するので、横臥台の姿勢の変動に伴い、横臥台の上に横臥する使用者の体重を支え、使用者に押圧力を及ぼす横臥台上の位置が変動する。横臥台の上に、少なくとも1個のパッドを配置し、しかも複数の袋体が横臥台の上の互いに異なる位置となるように、当該パッドを配置することにより、パッドの上に横臥する使用者の体重を支える袋体が移り変わる。使用者の体重を支える袋体の流体は、圧力が高いため、流路を通じて別の袋体に移動しようとする。流路は流体の移動を遅延させる狭窄なものであるため、流体は時間掛けて移動する。その結果、複数の袋体の間で膨張収縮の状態が、時間を掛けて変化する。横臥台の揺動に伴って、袋体の状態の変化が繰り返される。このように、横臥台の揺動と袋体の膨縮状態の変化とが相まって、袋体により押圧される身体の部位が、時間を掛けて変動する。それにより、使用者の床ずれ防止効果が向上する。
本発明のうち第4の態様によるものは、ベッドであって、横臥する使用者の身体を支える横臥台と、前記横臥台を前記ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動可能に支持する横臥台支持機構と、前記横臥台を前記軸の周りに揺動させる横臥台揺動機構と、前記横臥台の上に配置して使用される少なくとも1個のパッドと、を備えている。そして、前記少なくとも1個のパッドの各々は、複数の袋体を含んでいる。さらに、当該複数の袋体は、前記横臥台の上の互いに異なる位置に配置可能であり、流体を出し入れ可能に全体で密封する流体栓を有し、密封された前記流体の収容量に応じて各々が膨縮し、圧力差による前記流体の移動を遅延させる狭窄な流路を通じて、内部が互いに連通する。
この構成によれば、少なくとも1個のパッドの各々に、流体栓を通じて流体を注入し、密封することができる。密封後のパッドを第3の態様によるベッドのパッドと同様に用いることにより、第3の態様によるベッドと同様の効果が得られる。パッドが流体栓を有するために、パッドが無用であるときに流体を排出することができ、軽量かつコンパクトな状態にしてパッドを保管することができる。
本発明のうち第5の態様によるものは、第3又は第4の態様によるベッドであって、前記少なくとも1個のパッドのうちの少なくとも1個は、前記複数の袋体のいずれについても前記流体の流入及び流出を可能にしつつ、前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁を有する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わったために、当該袋体の流体が逆止弁を通じて別の袋体へ移動した後に、当該別の袋体に圧力が加わった場合に、当該別の袋体の流体は、元の袋体へは戻ることができず、さらに別の袋体へ移動するほかない。このように、流体の流れの方向が規制されるために、膨張収縮の状態の変化が、複数の袋体の全体に広がり易い。このため、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第6の態様によるものは、第5の態様によるベッドであって、前記逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わっても、当該袋体から圧力弁の機能を兼ねる逆止弁を通じて別の袋体へ流体が移動するには、双方の袋体の流体の間の圧力差が、ある大きさを超えなければならない。このため、圧力弁の機能を兼ねる逆止弁が接続された袋体の膨張収縮の度合いが高められるので、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第7の態様によるものは、第3又は第4の態様によるベッドであって、前記少なくとも1個のパッドのうちの少なくとも1個は、前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁と、当該逆止弁と並列な別の狭窄な流路とを有する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わったために、当該袋体の流体が逆止弁と別の狭窄な流路とを通じて別の袋体へ移動した後に、当該別の袋体に圧力が加わった場合に、当該別の袋体の流体は、別の狭窄な流路のみを通じて元の袋体へ戻ることもできるが、逆止弁を逆戻りできない分、より長い時間を要することとなる。このように、流体の流れ易さが、方向により一様でないために、膨張収縮の状態の変化が、複数の袋体の全体に広がり易い。このため、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第8の態様によるものは、第7の態様によるベッドであって、前記別の狭窄な流路に別の逆止弁が介在しており、当該別の逆止弁を含む、互いに並列の関係にある逆止弁は、流体の流れを規制する方向が互いに逆であり、前記別の狭窄な流路を含む、互いに並列な関係にある狭窄な流路は、圧力差による前記流体の移動を遅延させる度合いが互いに異なる。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わったために、当該袋体の流体が、流体の移動を遅延させる度合いの比較的弱い狭窄な流路と、当該流路に介在する逆止弁とを通じて別の袋体へ移動した後に、当該別の袋体に圧力が加わった場合に、当該別の袋体の流体は、流体の移動を遅延させる度合いの比較的強い狭窄な流路と、当該流路に介在する逆止弁とを通じて元の袋体へ戻ることもできるが、より長い時間を要することとなる。このように、流体の流れ易さが、方向により一様でないために、膨張収縮の状態の変化が、複数の袋体の全体に広がり易い。このため、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第9の態様によるものは、第8の態様によるベッドであって、前記別の逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わっても、当該袋体から圧力弁の機能を兼ねる逆止弁を通じて別の袋体へ流体が移動するには、双方の袋体の流体の間の圧力差が、ある大きさを超えなければならない。このため、圧力弁の機能を兼ねる逆止弁が接続された袋体の膨張収縮の度合いが高められるので、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第10の態様によるものは、第3又は第4の態様によるベッドであって、前記少なくとも1個のパッドのうちの少なくとも1個については、前記複数の袋体が3個以上の袋体であり、かつ、前記狭窄な流路が前記複数の袋体を循環する循環経路を形成している。
この構成によれば、膨縮により形成される複数の袋体の間の凹凸が、一部の袋体の間で繰り返されるのではなく、全ての袋体を巡り易くなる。すなわち、膨張収縮の状態の変化が、複数の袋体の全体に広がり易い。このため、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第11の態様によるものは、第10の態様によるベッドであって、前記循環経路を形成する前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁が介在する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わったために、当該袋体の流体が逆止弁を通じて別の袋体へ移動した後に、当該別の袋体に圧力が加わった場合に、当該別の袋体の流体は、元の袋体へは戻ることができず、さらに別の袋体へ移動するほかない。さらに、流体が元の袋体に戻るには、複数の袋体全体を一巡しなければならない。その結果、膨張収縮の状態の変化が、複数の袋体の全体に広がり易い。このため、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第12の態様によるものは、第11の態様によるベッドであって、前記逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、ある袋体に圧力が加わっても、当該袋体から圧力弁の機能を兼ねる逆止弁を通じて別の袋体へ流体が移動するには、双方の袋体の流体の間の圧力差が、ある大きさを超えなければならない。このため、圧力弁の機能を兼ねる逆止弁が接続された袋体の膨張収縮の度合いが高められるので、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
本発明のうち第13の態様によるものは、第3から第12のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台の揺動の周期は、10分から24時間の範囲のいずれかに設定されているか、設定が可能であり、前記狭窄な流路は、横臥する使用者の身体の荷重により押圧された袋体から、前記流体が実質的に流れ出て行く時間が、5分から12時間の範囲となるように設定されているか、設定が可能である。
この構成によれば、横臥台の揺動周期と、使用される流体の移動を遅延させる狭窄な流路の機能とが好ましい範囲に設定されているか、設定可能であるので、使用者の床ずれ防止効果がさらに高められる。
本発明のうち第14の態様によるものは、第1から第13のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台は、前記少なくとも1個のパッドを、着脱自在に固定するパッド固定機構を含む。
この構成によれば、パッドが横臥台に着脱自在に固定できるので、パッドの交換や、不要なときの取り外しが可能であり、便利である。
本発明のうち第15の態様によるものは、第1から第14のいずれかの態様によるベッドであって、前記流体は、液体又はゲル状流体である。
この構成によれば、使用される流体が非収縮性であるので、使用者の身体が押圧される感触が良好である。また、気体と比べて流体の粘性が大きいので、狭窄な流路が設けられる場合には、流体の移動に長い時間を要する狭窄な流路の形成が容易である。
本発明のうち第16の態様によるものは、第1から第15のいずれかの態様によるベッドであって、複数のローラと、当該複数のローラを回転軸に略直交する方向に配列するように、前記回転軸を両端において支持する一対の軸受けと、を有し、前記ローラの配列方向が前記前後方向に沿うように前記横臥台の上に載置可能なローラ配列体を、さらに備えている。そして、前記一対の軸受けは、前記複数のローラの配列方向に対して前記回転軸のなす角度が、ある範囲内で自在に変動可能なように、前記複数のローラを支持する。前記横臥台には、上面の左右方向の両端の付近において前記前後方向に沿う、2本の溝が形成されている。前記ベッドは床を備えており、前記ベッドは、2本の長尺部材と、係合部材と、をさらに備えている。2本の長尺部材は、前記2本の溝にそれぞれ沿い、かつ両端が前記床に接続され、当該両端のうち少なくとも一方が伸縮可能な弾性部材を介して、前記床に接続されており、それにより、前記横臥台の揺動に伴い前記溝に沿って互いに逆向きに往復動する、紐状ないし帯状のものである。係合部材は、当該2本の長尺部材に固定され、前記ローラ配列体が前記横臥台の上に載置されたときに、前記一対の軸受けにそれぞれ係合することにより、前記横臥台の揺動に伴い前記一対の軸受けを前記前後方向に往復動させることが可能なものである。
この構成によれば、横臥台の揺動に伴い、2本の長尺部材が前後方向に、かつ互いに反対向きに往復動する。ローラ配列体を横臥台の上に載置し、一対の軸受けを、2本の長尺部材に固定された係合部材にそれぞれ係合させることにより、複数のローラの両端を、前後方向に、かつ互いに逆向きに往復動させることができる。それにより、ローラの上に横臥する使用者の身体に作用する押圧力の位置が変動するので、使用者の床ずれ防止効果が高められる。
本発明のうち第17の態様によるものは、第16の態様によるベッドであって、前記2本の長尺部材に固定された前記係合部材と、前記一対の軸受けとは、前記前後方向に遊びを持って係合可能である。
この構成によれば、遊びのために、複数のローラの両端の往復動の振幅が、2本の長尺部材に固定された係合部材の往復動の振幅よりも、小さく抑えられる。それにより、ローラの過剰な移動が抑えられる。
本発明のうち第18の態様によるものは、第17の態様によるベッドであって、前記一対の軸受けは、前記遊びの大きさを可変とする可変機構を有する。
この構成によれば、複数のローラの両端の往復動の振幅を、例えば使用者の好み、横臥台の揺動幅に応じて、変更することが可能である。
本発明のうち第19の態様によるものは、第16から第18のいずれかの態様によるベッドであって、前記2本の長尺部材は、前記両端のうち双方が、互いにバネ係数の異なる伸縮可能な弾性部材を介して、前記床に接続されている。
この構成によれば、2本の長尺部材の両端のうち、一方のみが弾性部材を介して床に接続されている場合に比べて、複数のローラの両端の往復動の振幅が小さく抑えられる。それにより、ローラの過剰な往復動が抑えられる。
本発明のうち第20の態様によるものは、第1から第19のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台の上を、前記横臥台に横臥する使用者から距離を保つように、かつ開閉可能又は着脱可能に覆う覆いと、前記横臥台の下方から前記覆いの内側に空気を送る送風機構と、前記送風機構が送る前記空気を加熱又は冷却する空気温度調節機構と、をさらに備える。
この構成によれば、使用者は、布団なしで横臥台に横臥することができ、しかも使用者が新鮮な空気の流れに包まれるので、長期間わたって継続して使用する場合であっても、使用者の身体が蒸(む)れたり被(かぶ)れたりすることが抑えられる。覆い(おおい)は開閉可能又は着脱可能であるので、使用者がベッドに入ったり出たりすることが妨げられず、使用者が介護を要する場合に、横臥する使用者への介護行為が妨げられない。
本発明のうち第21の態様によるものは、第1から第20のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台支持機構は、支持状態を解除可能に、前記横臥台を支持するものであり、前記ベッドは、落下物防護部材と、緩衝機構と、閉駆動機構と、地震検出部と、をさらに備えている。落下物防護部材は、互いに開閉可能であって、開いたときには前記横臥台を挟むように、前記ベッドの左右方向両側に分けて配置されている。緩衝機構は、前記横臥台支持機構による前記横臥台の前記支持状態が解除されたときに、前記横臥台が略水平の姿勢で、かつ自然落下速度よりも緩やかに、前記使用者と前記横臥台との重量により下降することを可能にする。閉駆動機構は、前記横臥台の下降に伴い、前記落下物防護部材が閉じるように、前記横臥台の下降する動きを前記落下物防護部材に伝達する。地震検出部は、規定を超える強さの地震の発生を検出し、前記横臥台の前記支持状態を解除するように、前記横臥台支持機構を駆動する。
この構成によれば、規定を超える強さの地震が発生すると、使用者と横臥台との重量により、横臥台が下降し、落下物防護部材が閉塞する。落下物防止部材が閉塞するので、地震に伴う落下物から使用者を保護することができる。横臥台の下降と落下物防護部材の閉塞とに、電動機構等を要しないので、構造が簡単であり、しかも地震にともなう停電の影響を受けない。横臥台は略水平の姿勢をもって、自然落下速度よりも緩やかに降下するので、横臥台の降下に伴って使用者が受ける衝撃及び不快感が、緩和ないし解消される。
本発明のうち第22の態様によるものは、第21の態様によるベッドであって、前記横臥台の前記前後方向の両端部には、前記軸に沿った孔がそれぞれ形成されている。そして、前記横臥台支持機構は、前記軸に沿って摺動可能に前記孔にそれぞれ挿入されることにより、前記横臥台を前記軸の周りに揺動可能に支持する2本のピンと、当該2本のピンを前記軸に沿って摺動可能に支持する支持機構本体と、を有している。また、前記地震検出部は、前記2本のピンが前記横臥台の前記孔と前記支持機構本体とのいずれかから外れるように、前記2本のピンを前記軸に沿って摺動させることにより、前記横臥台の支持状態を解除する。
この構成によれば、地震検出部は、2本のピンを摺動させるべく駆動する、という簡素な機構により、横臥台の支持状態を解除することが可能となる。
本発明のうち第23の態様によるものは、第22の態様によるベッドであって、前記地震検出部は、前記横臥台の内部を貫通するように又は前記横臥台の下面に沿うように配置され、前記2本のピンを、互いに同一の動きをするように連結する長尺の連結部材を有している。また、前記連結部材は、前記2本のピンのうち一方ピンが、前記横臥台の前記孔から外れるように摺動したときに、他方ピンが前記支持機構本体から外れるように設定されており、かつ、前記連結部材は、前記一方ピンが、前記横臥台の前記孔から外れるように摺動したときに、横臥台と使用者の重力により当該一方ピンとの連結状態が解除されるように、前記一方ピンに下方から着脱可能に係合する、上向きに起立した係合部材を有している。さらに、前記地震検出部は、前記一方ピンが前記横臥台の前記孔から外れるように、前記一方ピンを前記軸に沿って摺動させ、さらに当該一方ピンの動きを、前記連結部材を介して前記他方ピンに伝えることにより、前記横臥台の支持状態を解除する。
この構成によれば、地震検出部は、一方ピンを横臥台の孔から外れるように摺動させ、その動きを、連結部材を通じて他方ピンに伝える、という簡素な機構により、横臥台の支持状態を解除することが可能となる。
本発明のうち第24の態様によるものは、第22又は第23の態様によるベッドであって、前記地震検出部は、錘と、前記規定を超える強さの地震により落下可能なように前記錘を支持する錘支持部材と、落下した前記錘の重力を、前記2本のピンが前記軸に沿って摺動するように、前記2本のピンに伝達する重力伝達機構と、を含んでいる。
この構成によれば、錘の重力を利用してピンを摺動させるので、地震検出部の構成がさらに簡素なものとなる。
本発明のうち第25の態様によるものは、第22から第24のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台支持機構は、前記横臥台の前記支持状態を解除する方向に摺動するように、前記2本のピンを、弾性部材の弾性復元力により付勢する付勢機構と、当該付勢機構による前記2本のピンの摺動を、解除可能に係止する係止機構と、を有している。また、前記地震検出部は、錘と、前記規定を超える強さの地震により落下可能なように前記錘を支持する錘支持部材と、前記2本のピンの摺動を係止する状態を解除するように、落下した前記錘の重力を前記係止機構に伝達する重力伝達機構と、を含んでいる。
この構成によれば、錘の重力を利用して係止機構による係止状態が解除され、その結果、付勢機構の弾性部材の弾性復元力によりピンが摺動し、横臥台の支持状態が解除される。このように、横臥台の支持状態を解除する方向へのピンの摺動が、錘の重力に代えて、又はそれとともに、弾性部材の弾性復元力によりもたらされるので、錘を軽量化することができる。
本発明のうち第26の態様によるものは、第21から第25のいずれかの態様によるベッドであって、前記閉駆動機構は、前記横臥台と前記落下物防護部材とを連結する紐体と、前記横臥台の下降に伴う前記紐体の動きを、前記落下物保護部材を閉じる方向の動きに転換する中継部材と、を有している。
この構成によれば、閉駆動機構がさらに簡素な構成により実現する。
本発明のうち第27の態様によるものは、第21から第26のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台の前記支持状態が解除されることにより、前記横臥台が下降した場合に、当該使用者を外部に脱出させることを可能にするべく、前記ベッドにおける左右方向の両側に形成され、前記ベッドの内側から外側に向けて開閉自在の2つの扉を、さらに備えている。
この構成によれば、地震の発生により、使用者が横臥台と共に下降した場合に、2つの扉のうちの何れか一方を、使用者に干渉しないよう外側に開いて、前記使用者を外部に脱出させることができる。また、2つの扉のうち、一方の扉の外側に落下物等があって開かない場合であっても、他方の扉を開くことができるので、使用者をより確実に外部に脱出させることができる。また、内側から使用者がいずれかの扉を押すことにより、自力で脱出することも容易である。
本発明のうち第28の態様によるものは、パッドであって、複数の袋体を含み、当該複数の袋体は、横臥する使用者の身体の下に敷き、かつ互いに異なる位置に配置することが可能であり、全体で流体を密封しており、密封された前記流体の収容量に応じて各々が膨縮し、圧力差による前記流体の移動を遅延させる狭窄な流路を通じて、内部が互いに連通する。
この構成によれば、当該パッドを、横臥台が揺動可能なベッドに適用することにより、第3の態様によるベッドについて述べたところと同様の効果が得られる。また、横臥台が揺動しないベッドや寝具とともに使用したり、単に横臥する使用者の身体の下に敷いたりすることによっても、袋体により押圧される身体の部位が、時間を掛けて変動するので、使用者の床ずれ防止効果が得られる。特に、横臥する使用者が適度な頻度で寝返りすること、あるいは使用者の身体を寝返りさせることにより、床ずれ防止効果が高められる。
本発明のうち第29の態様によるものは、パッドであって、複数の袋体を含み、当該複数の袋体は、横臥する使用者の身体の下に敷き、かつ互いに異なる位置に配置することが可能であり、流体を出し入れ可能に全体で密封する流体栓を有し、密封された前記流体の各々の収容量に応じて各々が膨縮し、圧力差による前記流体の移動を遅延させる狭窄な流路を通じて、内部が互いに連通する。
この構成によれば、当該パッドに流体を注入し、横臥台が揺動可能なベッドに適用することにより、第4の態様によるベッドについて述べたところと同様の効果が得られる。また、横臥台が揺動しないベッドや寝具とともに使用したり、単に横臥する使用者の身体の下に敷いたりすることによっても、袋体により押圧される身体の部位が、時間を掛けて変動するので、使用者の床ずれ防止効果が得られる。特に、横臥する使用者が適度な頻度で寝返りすること、あるいは使用者の身体を寝返りさせることにより、床ずれ防止効果が高められる。
本発明のうち第30の態様によるものは、第28又は第29の態様によるパッドであって、前記複数の袋体のいずれについても前記流体の流入及び流出を可能にしつつ、前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁を有する。
この構成によれば、第5の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第31の態様によるものは、第30の態様によるパッドであって、前記逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、第6の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第32の態様によるものは、第28又は第29のいずれかの態様によるパッドであって、前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁と、当該逆止弁と並列な別の狭窄な流路とを有する。
この構成によれば、第7の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第33の態様によるものは、第32の態様によるパッドであって、前記別の狭窄な流路に別の逆止弁が介在しており、当該別の逆止弁を含む、互いに並列の関係にある逆止弁は、流体の流れを規制する方向が互いに逆であり、前記別の狭窄な流路を含む、互いに並列な関係にある狭窄な流路は、圧力差による前記流体の移動を遅延させる度合いが互いに異なる。
この構成によれば、第8の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第34の態様によるものは、第33の態様によるパッドであって、前記別の逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、第9の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第35の態様によるものは、第28又は第29の態様によるパッドであって、前記複数の袋体が3個以上の袋体であり、かつ、前記狭窄な流路が前記複数の袋体を循環する循環経路を形成している。
この構成によれば、第10の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第36の態様によるものは、第35の態様によるパッドであって、前記循環経路を形成する前記狭窄な流路の一部ないし全てに、流れの方向を一方に規制する逆止弁が介在する。
この構成によれば、第11の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第37の態様によるものは、第36の態様によるパッドであって、前記逆止弁の少なくとも一部は、ある大きさを超える圧力差があったときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。
この構成によれば、第12の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第38の態様によるものは、第28から第37のいずれかの態様によるパッドであって、前記流体は、液体又はゲル状流体である。
この構成によれば、第15の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第39の態様によるものは、第28から第38のいずれかの態様によるパッドであって、前記狭窄な流路は、横臥する使用者の身体の荷重により押圧された袋体から、前記流体が実質的に流れ出て行く時間が、5分から12時間の範囲となるように設定されているか、設定が可能である。
この構成によれば、使用される流体の移動を遅延させる狭窄な流路の機能が好ましい範囲に設定されているか、設定が可能であるので、使用者の床ずれ防止効果がさらに高められる。
本発明のうち第40の態様によるものは、ベッドであって、横臥台と、横臥台支持機構と、落下物防護部材と、緩衝機構と、閉駆動機構と、地震検出部と、を備えている。横臥台は、横臥する使用者の身体を支えるものである。横臥台支持機構は、前記横臥台を、支持状態を解除可能に支持するものである。落下物防護部材は、互いに開閉可能であって、開いたときには前記横臥台を挟むように、前記ベッドの左右方向両側に分けて配置されているものである。緩衝機構は、前記横臥台支持機構による前記横臥台の前記支持状態が解除されたときに、前記横臥台が略水平の姿勢で、かつ自然落下速度よりも緩やかに、前記使用者と前記横臥台との重量により下降することを可能にするものである。閉駆動機構は、前記横臥台の下降に伴い、前記落下物防護部材が閉じるように、前記横臥台の下降する動きを前記落下物防護部材に伝達するものである。地震検出部は、規定を超える強さの地震の発生を検出し、前記横臥台の前記支持状態を解除するように、前記横臥台支持機構を駆動するものである。
この構成によれば、規定を超える強さの地震が発生すると、使用者と横臥台との重量により、横臥台が下降し、落下物防護部材が閉塞する。落下物防止部材が閉塞するので、地震に伴う落下物から使用者を保護することができる。横臥台の下降と落下物防護部材の閉塞とに、電動機構等を要しないので、構造が簡単であり、しかも地震にともなう停電の影響を受けない。横臥台は略水平の姿勢をもって、自然落下速度よりも緩やかに降下するので、横臥台の降下に伴って使用者が受ける衝撃及び不快感が、緩和ないし解消される。
本発明のうち第41の態様によるものは、第40の態様によるベッドであって、前記横臥台支持機構は、前記横臥台を、前記ベッドの前後方向に沿った軸の周りに揺動可能に、かつ支持状態を解除可能に支持し、前記ベッドは、前記横臥台を前記軸の周りに揺動させる横臥台揺動機構を、さらに備えている。
この構成によれば、使用者が横臥台から圧力を受ける部位を変えることができ、使用者の床ずれを和らげる効果が得られる。特に、本発明のパッドと併せて使用することにより、床ずれ防止効果を高めることができる。
本発明のうち第42の態様によるものは、第41の態様によるベッドであって、前記横臥台の前記前後方向の両端部には、前記軸に沿った孔がそれぞれ形成されている。そして、前記横臥台支持機構は、前記軸に沿って摺動可能に前記孔にそれぞれ挿入されることにより、前記横臥台を前記軸の周りに揺動可能に支持する2本のピンと、当該2本のピンを前記軸に沿って摺動可能に支持する支持機構本体と、を有している。さらに、前記地震検出部は、前記2本のピンが前記横臥台の前記孔と前記支持機構本体とのいずれかから外れるように、前記2本のピンを前記軸に沿って摺動させることにより、前記横臥台の支持状態を解除する。
この構成によれば、第22の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第43の態様によるものは、第42の態様によるベッドであって、前記地震検出部は、前記横臥台の内部を貫通するように又は前記横臥台の下面に沿うように配置され、前記2本のピンを、互いに同一の動きをするように連結する長尺の連結部材を有している。そして、前記連結部材は、前記2本のピンのうち一方ピンが、前記横臥台の前記孔から外れるように摺動したときに、他方ピンが前記支持機構本体から外れるように設定されており、かつ、前記連結部材は、前記一方ピンが、前記横臥台の前記孔から外れるように摺動したときに、横臥台と使用者の重力により当該一方ピンとの連結状態が解除されるように、前記一方ピンに下方から着脱可能に係合する、上向きに起立した係合部材を有している。さらに、前記地震検出部は、前記一方ピンが前記横臥台の前記孔から外れるように、前記一方ピンを前記軸に沿って摺動させ、さらに当該一方ピンの動きを、前記連結部材を介して前記他方ピンに伝えることにより、前記横臥台の支持状態を解除する。
この構成によれば、第23の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第44の態様によるものは、第42又は第43の態様によるベッドであって、前記地震検出部は、錘と、前記規定を超える強さの地震により落下可能なように前記錘を支持する錘支持部材と、落下した前記錘の重力を、前記2本のピンが前記軸に沿って摺動するように、前記2本のピンに伝達する重力伝達機構と、を含んでいる。
この構成によれば、第24の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第45の態様によるものは、第42から第44のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台支持機構は、前記横臥台の前記支持状態を解除する方向に摺動するように、前記2本のピンを、弾性部材の弾性復元力により付勢する付勢機構と、当該付勢機構による前記2本のピンの摺動を、解除可能に係止する係止機構と、を有している。また、前記地震検出部は、錘と、前記規定を超える強さの地震により落下可能なように前記錘を支持する錘支持部材と、前記2本のピンの摺動を係止する状態を解除するように、落下した前記錘の重力を前記係止機構に伝達する重力伝達機構と、を含んでいる。
この構成によれば、第25の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第46の態様によるものは、第40から第45のいずれかの態様によるベッドであって、前記閉駆動機構は、前記横臥台と前記落下物防護部材とを連結する紐体と、前記横臥台の下降に伴う前記紐体の動きを、前記落下物保護部材を閉じる方向の動きに転換する中継部材と、を有している。
この構成によれば、第26の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
本発明のうち第47の態様によるものは、第40から第46のいずれかの態様によるベッドであって、前記横臥台の前記支持状態が解除されることにより、前記横臥台が下降した場合に、当該使用者を外部に脱出させることを可能にするべく、前記ベッドにおける左右方向の両側に形成され、前記ベッドの内側から外側に向けて開閉自在の2つの扉を、さらに備えている。
この構成によれば、第27の態様によるベッドについて述べたところと同様の作用及び効果を奏する。
以上のように本発明によれば、寝たきりの要介護者を介護する労を軽減するベッド及びパッドが実現する。
図1は、本発明の一実施の形態によるベッドの構造を例示する斜視図であり、便宜上ベッドの一部を除去して示している。このベッドの全体外観斜視図は、後述する図9に例示する。このベッド101は、ベッド本体1、横臥台3、及び落下物防護部材5を有している。ベッド本体1は、上面が開口する矩形の箱状部7を有する。ベッド本体1は、さらに、箱状部7の前方に連結する収納部9を有している。箱状部7と収納部9との連結部は開口しており、それにより双方の内側の空間は連通している。横臥台3は、横臥する被介護者等の使用者の身体を支える台であり、箱状部7の上面の開口に配置され、ベッド本体1に支持されている。横臥台3は、ベッド1の前後方向11に沿うとともに、左右方向12の中心に位置する中心軸13の周りに揺動可能となるように、中心軸13上に位置するピン17を通じて、ベッド本体1に支持されている。ピン17は、横臥台3の前後2箇所に配置され、横臥台3の揺動軸として機能する。図1には、横臥台3の前部に位置するピン17のみが表れ、後部のピン17は横臥台3に隠れている。2本のピン17及び、これらのピン17を支持するベッド本体1の部分は、本発明の横臥台支持機構の一具体例に相当する。ベッド101及び横臥台3は、一例として、主たる部分が木製であるとして図示しているが、鋼鉄製など金属製とすることも可能であり、それらに代わる他の頑強な材料により形成されていても良い。
ベッド本体1の収納部9の内側には、低速モータ19が設置されており、低速モータ19の駆動軸に取り付けられたプーリ21と、プーリ21の周面に掛け回されたベルト23とを通じて、低速モータ19の動力が横臥台3に伝達される。ベルト23は、横臥台3の左右方向12の両端部ないしその付近に、両端が接続されている。このため、低速モータ19が緩慢な速度で、正転と逆転とを繰り返すことにより、横臥台3は中心軸13の周りに揺動する。例えば、揺れの角度は±15°程度以内であり、揺れの周期は、10分程度から24時間程度の範囲である。好ましくは、横臥台3の揺れの角度及び周期は、介護者等の操作者が低速モータ19の操作パネル(図示略)を操作することにより、選択可能である。操作パネル(図示略)は、例えばベッド本体1の外表面に設置される。なお、低速モータ19、プーリ21、ベルト23及び操作パネル(図示略)は、本発明の横臥台揺動機構の一具体例に相当する。
好ましくは、プーリ21の周面には歯車のごとく凹凸が形成され、ベルト23にも、当該凹凸と噛み合うように、凹凸が形成されている。それにより、プーリ21とベルト23との間に滑りが発生することを防止できる。また、好ましくはベルト23には、伸縮性を抑えた筋入りのベルトが用いられる。それにより、横臥台3を水平の姿勢に戻すべきときに、水平からのずれを抑えることができる。横臥台3が水平状態にあることを検知するセンサー(図示略)をベッド本体1に設置し、横臥台3の姿勢を水平に戻すように、操作者が操作パネルを操作した場合には、このセンサーが横臥台3の水平状態を検知したときに、低速モータ19が停止するように、低速モータ19を制御してもよい。それにより、ベルト23とプーリ21との間にずれが生じても、あるいは、ベルト23に相当の伸縮があっても、横臥台3の姿勢を正しく水平に戻すことが可能となる。
低速モータ19は、回転速度よりもトルクを重視したモータであり、例えば、多段階の減速歯車により、モータ19の回転子の回転速度を低くし、逆にトルクを引き上げて、プーリ21に伝達される。従って、低速モータ19は比較的小型のもので実現可能である。また、低速モータ19には、停止時には制動が働くことにより、プーリ21が外力により回動しないタイプのものが望ましい。それにより、横臥台3に横臥する者の重量などの外力により、横臥台3が不用意に回動することを防止し得る。
ベッド本体1の収納部9には、低速モータ19のほかに、地震検出用の錘31、錘31を支持する錘支持部材33、錘31が錘支持部材33から落下したときの錘31の重力をピン17に伝達する紐体35、及び紐体35を中継する中継部材37が設けられている。錘支持部材33は、ベッド本体1に固定されており、水平の姿勢に保持される環状体を有し、この環状体の上に載置される錘31を支持する。
ある規模を超える地震が発生すると、錘支持部材33は、ベッド本体1とともに大きく揺れる。その結果、錘31は錘支持部材33の環状体から転落する。転落する錘31の重力は、紐体35を通じて、ピン17に伝達される。紐体35は、例えばロープあるいは柔軟な金属ワイヤである。中継部材37は、錘支持部材33と同様にベッド本体1に固定されており、環状体を有し、この環状体に紐体35が挿通されている。中継部材37は、錘31により紐体35に作用する下向きの力を、中心軸13に沿ってピン17を引く水平方向の力に転換する。後述するように、横臥台3の前部に位置するピン17が引かれると、それに伴い、横臥台3の後部に位置するピン17も引かれる。その結果、2本のピン17による横臥台3の支持状態が解除され、横臥台3は、自身と横臥する使用者との重力により、ベッド本体1の箱状部7の内側に下降する。それにより、横臥台3の上の使用者は、箱状部7に四方を囲まれた、安全な空間に収容される。錘31がピン17に伝える力を増大させるために、紐体35は通常時には撓むほどの長さに設定されるのが望ましい。それにより、地震が発生し錘31が転落した後、ある程度落下が進行して落下速度を増した段階で、錘31がピン17を引くこととなるので、ピン17には錘31の重力を超える撃力が付与される。
ベッド本体1の箱状部7の床8に立設された4本の緩衝機構39の働きにより、横臥台3は、おおよそ水平の姿勢を保ちつつ、かつ緩やかに下降する。4本の緩衝機構39は、上端が横臥台3の四隅の付近に連結されている。下端は、床8に対して緩衝機構39の多少の傾斜を許すように、柔軟なゴム板等(図示略)を介して床8に支持されている。緩衝機構39の構造については、図13を参照しつつ後述する。床8は、図1に例示するような板状体に代えて、例えば、緩衝機構39を支持するフレーム状であってもよい。なお、錘31、錘支持部材33、紐体35、及び中継部材37は、本発明の地震検出部の一具体例に相当する。
落下物防護部材5は、箱状部7の上面の開口に、左右に分けて配置されており、かつ開閉自在である。落下物防護部材5は、通常時には開いており、横臥台3の左右両側にあって、横臥台3とともに箱状部7の上面の開口を覆っている。落下物防護部材5は、前後方向11の両端部付近において、紐体41により横臥台3に連結されている。その結果、横臥台3が下降するのに伴い、横臥台3の動きが紐体41により落下物防護部材5に伝えられ、落下物防護部材5が閉塞する。紐体41は、例えばロープあるいは柔軟な金属ワイヤである。
このようにして、地震発生と共に、横臥台3がベッド本体1の箱状部7の内側に下降することにより、横臥台3の上の使用者は、箱状部7に四方を囲まれた、安全な空間に収容されるとともに、使用者の上面が、閉塞した落下物防護部材5によって覆われる。それにより、例えばベッド1が据え置かれた部屋の天井に取り付けられた照明器具が落下した場合などに、これらの落下物から使用者が保護される。建物の構造物等の長尺の重量物が落下した場合には、箱状部7の上端縁によりこれらの落下物は受け止められ、やはり箱状部7の内側に退避させられた使用者が保護される。落下物防護部材5の構造、及び落下物防護部材5を駆動する機構については、図14〜図16を参照しつつ後述する。
箱状部7の左右方向12の両側の壁体には、扉10が形成されている。扉10は、箱状部7の内側から外側へ向けて開閉自在となっている。このため、箱状部7の内側に退避させられた使用者を、介護者等の手により搬出することが可能であり、使用者自身が単に扉10を押すだけで、自力で外側へ避難することも可能である。扉10は、箱状部7の後部の壁体にも設けられても良い。
横臥台3には、上面の左右方向12の両端の付近に、前後方向11に沿うように2本の溝43が形成されている。これら2本の溝43には、長尺部材45が通されている。長尺部材45は、例えばロープあるいは柔軟な金属ワイヤである。長尺部材45は、帯状であってもよい。長尺部材45の両端は箱状部7の床8に接続されており、そのうち一端は、バネ47を通じて床8に接続されている。このため、横臥台3が揺動するのに伴い、溝43に沿った長尺部材45は、前後方向11に往復動する。溝43上の長尺部材45の動きは、横臥台3に載置される、後述のローラ配列体の駆動に利用される。
収納部9の内側には、さらに、送風機51が設置されている。送風機51は、ベッド本体1の外部の空気を吸気し、横臥台3の下方の空間、すなわち箱状部7の内側の空間に、吸気した空気を送り込む。送り込まれた空気は、横臥台3と落下物防護部材5又はベッド本体1との間の隙間を通じて、横臥台3の上に送られる。送風機51は、ヒータ(図示略)を内蔵しており、室温が寒冷であるときにも、適度な温度の空気を横臥台3の上に送ることができる。送風機51は、本発明の送風機構及び空気温度調節機構を兼ねている。送風機51には、空気を冷却する冷却機の機能、除湿機の機能、あるいは空気清浄機の機能を組み込んでもよい。横臥台3の上に送られた空気の利用の仕方については、図9及び図10を参照しつつ後述する。
図2は、図1の横臥台3とその上に載置された部材を例示する外観斜視図である。図2の例では、横臥台3の上には、パッド53,55,56,57,59が載置され、さらに、ローラ配列体61が載置されている。これらの部材は、横臥台3の上に横臥する使用者の身体を押圧するもので、横臥台3の揺動にともない、押圧する身体の部位に変化を持たせることにより、床ずれ防止効果を高めるものである。好ましくは、図2に例示するように、パッド53,55,56,57,59は、横臥する使用者の肩から臀部にわたる範囲に敷かれ、ローラ配列体61は、脚部の範囲に敷かれる。図示を略するが、好ましくは、これらのパッド53,55,56,57,59及びローラ配列体61の上には、例えば毛布あるいは薄手の敷き布団などが敷かれ、使用者はその上に横臥する。
パッド53,55,56,57,59の各々は、横臥台3の上の異なる位置に配置可能な複数の袋体を有している。パッド53は、2個の長尺の袋体を有しており、各々が左右方向12に延在し、前後方向11に並置されている。パッド55も同様である。パッド56は、10個の袋体を有しており、それらは左右方向12に5列、前後方向11に2列を成すように配置されている。パッド57は、8個の袋体を有しており、それらは左右方向12に4列、前後方向11に2列を成すように配置されている。パッド59は、4個の袋体を有しており、それらは左右方向12に2列、前後方向11に2列を成すように配置されている。
各パッドの複数の袋体は、内部に流体を封じ込んでおり、流体の収容量に応じて膨縮する。各袋体は、例えばゴムあるいは合成樹脂製のシートにより形成されている。1つのパッド内の複数の袋体は、圧力差による流体の移動を遅延させる狭窄な流路を通じて互いに連通している。狭窄な流路には、好ましくは逆止弁(図示略)が設けられ、さらに好ましくは、逆止弁は、背圧がある大きさを超えたときに初めて開く圧力弁の機能をも有する。パッドの機能、効果については、後に詳述する。流体は、押圧の効果を高める上で、また、狭窄な流路の設計を容易にする上で、望ましくは液体、さらに望ましくはゲル状流体である。
パッド53の2個の長尺の袋体は、左右方向12の両端部付近の流路によって連通している。2つの流路には、それぞれ逆止弁が設けられており、流体は2個の袋体を循環できるようになっている。パッド55も同様である。パッド56では、10個の袋体が、全体を循環する循環経路を形成する流路によって連通しており、好ましくは各流路には流体の一方向への循環を可能にする逆止弁が設けられている。パッド57,59も同様に、8個及び4個の袋体が、循環経路を形成する流路によって連通しており、かつ好ましくは各流路には逆止弁が設けられている。
ローラ配列体61は、前後方向11に配列された多数のローラ63を有している。各ローラ63は、左右方向12に延びる円筒状を為している。各ローラ63の向きは、ある範囲内で変動可能となっており、長尺部材45の前後方向11の往復動に伴って、各ローラ63の向きも変動する。それにより、各ローラ63が押圧する身体の部位に変化がもたらされる。長尺部材45が配置されている溝43の前後方向11の両端部には、長尺部材45の方向を変え、かつ長尺部材45と溝43との間の摩擦力を低くするために、滑車62が設けられている。
図3は、横臥台3とローラ配列体61との一部を拡大して例示する部分拡大斜視図である。図3の例では、ローラ配列体61は、上下2段のローラ63の列を有している。各ローラ63の回転軸67は、左右方向12の両端において、軸受け65に支持されている。図3の例では、軸受け65は、各々が上下4本のローラ63の回転軸67を支持する複数枚の板状部材69を有しており、これらの板状部材69はピン71を通じて互いに回動可能に連結されている。それにより、ローラ配列体61は、不要時にコンパクトにして収納することが可能となっている。回転軸67は、板状部材69に固定され、ローラ63が回転軸67に対して回転自在に滑動してもよく、回転軸67はローラ63に固定され、板状部材69に対して滑動してもよく、あるいは回転軸67は、ローラ63と板状部材69との双方に対して滑動するものであってもよい。
下段のローラ63は、横臥台3の上面を転動し、上段のローラ63は、使用者の身体、あるいは使用者が敷いている毛布等の下面を転動する。転動を容易にするために、各ローラ63は、左右方向12に沿って、独立に回転可能な複数のローラに分割され、分割されたローラの各々が、回転軸67に対して回転自在に滑動してもよい。また、ローラ配列体61の構造を簡素にするために、ローラ配列体61は、上下方向には1段のローラのみを有するものであっても良い。
軸受け65は、回転軸67の軸方向について、ある程度の遊びをもって回転軸67を支持する。このため、ローラ63は、左右方向12からある角度の範囲内で、延在方向を変えることが可能となっている。軸受け65は、さらに、長尺部材45と係合する係合部材73を有している。係合部材73は、図3の例では、互いに連結する幾つかの板状部材69の1つの下端から左右方向12の外方に延びる板状基材75を有している。板状基材75には、溝43の開口に沿って開口する長孔(ながあな)77が形成されている。板状基材75には、長孔77の実質的な長さを調節する2枚の規制部材79が、ネジ止めされている。板状基材75には、さらに長孔77の両側に沿って多数のネジ孔が並ぶように形成されており、それによって、規制部材79のネジ止めの位置を変えることが可能となっている。これらのネジ孔及び規制部材79は、本発明の「可変機構」の一具体例を構成する。
溝43の底に配置された長尺部材45の中途には、係合部材81が固定されている。係合部材81は、係合部材73と係合することにより、溝43に沿った長尺部材45の往復動を軸受け65に伝達する。図3に示す例では、長尺部材45はロープないしワイヤ状であり、係合部材81は、長尺部材45を内部に挿通し、かつ爪部85により長尺部材45を把捉することにより、長尺部材45に固定された筒状体83と、この筒状体83から上方に突起する突起体87と、を有する。ローラ配列体61は、突起体87が2枚の規制部材79に挟まれた長孔77の部分に挿通されるように、横臥台3の上に置かれる。2枚の規制部材79に挟まれた長孔77の部分が長いほど、係合部材73、81は、より大きな遊びをもって互いに係合する。遊びが大きいほど、長尺部材45の往復動の揺れ幅に対して、軸受け65は、より小さい振幅で往復動する。このように、2枚の規制部材79が板状基材75にネジ止めされる位置を変えることにより、係合部材73、81の間の遊びの大きさを変えることができ、それにより、軸受け65の往復動の揺れ幅を変えることが可能となっている。係合部材73、81の間の遊びの大きさを変える機構として、図3に例示した形態以外に、様々な形態を採り得ること、特に、段階的にではなく連続的に変えることも可能であることは、当業者に容易に理解されるであろう。
図4は、ローラ配列体61の動作を例示する動作説明図である。図4(a)及び図4(b)は、ベッド101の関連する部分の右側面図であり、図4(c)は上面図である。図4(a)及び図4(b)には、2本の長尺部材45のうち、図において手前側、すなわち右側の長尺部材45のみを表している。図4(a)の状態では、揺動する横臥台3は、右側が下に左側が上になるように、傾斜している。このとき、長尺部材45に連結されたバネ47は収縮する。このため、溝43にある係合部材81は、前方に移動している。それに伴い、右側の軸受け65も前方へ移動する。図4(b)の状態では、揺動する横臥台3は、右側が上に左側が下になるように、傾斜している。このとき、バネ47は伸張する。このため、溝43にある係合部材81は、後方に移動している。それに伴い、右側の軸受け65も後方へ移動する。2本の長尺部材45のうち、図において奥側、すなわち左側の長尺部材45は、右側の長尺部材45とは逆の動きを示す。従って、図4(c)に例示するように、ローラ配列体61のローラ63の列は、左右両端が互いに逆方向に前後動する。このような動きを可能にする程度に、各ローラ63は軸受け65に遊びを持って支持されている。
図5は、図2に示したパッド53,55,56,57,59を、横臥台3に着脱自在に固定するパッド固定機構を例示する斜視図であり、例としてパッド59を固定する様子を表している。図5に例示するパッド固定機構は、スプリング(図示略)により閉方向に付勢された蝶番89を有している。蝶番89の一方の羽根91は、横臥台3の左右方向12の端面にネジ止めされている。他方の羽根93には取っ手95が設けられており、取っ手95を指に摘むなどにより、羽根93を開くことができる。パッド53,55,56,57,59の各々は、シート97を有しており、このシート97の上に複数の袋体99が接着等により配置されている。シート97は、おおよそ、横臥台3の左右方向12の全幅に跨る横幅を有しており、その両端部を羽根93により挟み込むことにより、シート97を着脱自在に固定することができる。羽根93は、蝶番89が有するスプリング(図示略)により、シート97を横臥台3の上面に押圧する。
図6〜図8は、パッド53,55,56,57,59が採り得る様々な形態を例示する概略平面図である。図6〜図8を通じて、例示するパッドは、いずれも複数(すなわち2個以上)の袋体111を有しており、これら複数の袋体111の内部は、収納される流体の移動を遅延させる狭窄流路113を通じて、互いに連通している。図6(a)に例示するパッドは、1個の狭窄流路113により連通する2個の袋体111を有している。使用者の重量が一方の袋体111から他方の袋体111に偏る毎に、内部の流体が一方から他方へ、時間を掛けて移動する。流体は直ぐには移動し尽くさないので、使用者の身体は、それまでは重量を余り受けずに、より大きく膨らんだ他方の袋体111から、しばらくは大きな押圧力を受け、やがては弱まることになる。使用者の重量が、再び他方の袋体111から一方の袋体111に偏ると、使用者の身体は、より大きく膨らんだ一方の袋体111から、しばらくは大きな押圧力を集中的に受け、やがては弱まることになる。このように、2つの袋体111に加わる使用者の身体の重量の偏りが変動する毎に、使用者の身体が集中的に押圧力を受ける部位が変動し、かつ押圧力自体も弱まるように変化して行く。このため、身体の同一部位が押圧され続けることにより生じる床ずれを、効果的に抑えることができる。
図6(b)に例示するパッドは、4個の袋体111を有している。袋体111の個数が多いほど、使用者の身体が押圧力を集中して受ける部位が、より多くの異なる部位にわたって移動することとなるので、床ずれ防止効果がさらに向上する。図6(c)に例示するように、狭窄流路113は、すべての袋体111を一巡する循環経路を形成するように設けられていてもよい。狭窄流路113をこのように形成することにより、膨縮による凹凸が、一部の袋体111の間で繰り返されるのではなく、全ての袋体111を巡り易くなる。このような循環経路は、パッドが3個以上の袋体111を有する場合に、形成可能である。
図6(d)に例示するパッドは、図6(b)に例示するパッドにおいて、狭窄流路113に逆止弁115が付加された形態を成している。逆止弁115は、全ての袋体111について流体の出入りを妨げないように設置される。すなわち逆止弁115は、ある袋体111に一旦流入した流体が、その袋体111から流出して他の袋体111へ移動することは最早できない、という不都合を生じないように設置される。狭窄流路113に逆止弁115が設置されることにより、1つの袋体111から別の袋体111へ流体が移動した後に、使用者の重量の偏りに変動があっても、流体は逆流することができず、さらに別の袋体111へ移動するほかなくなる。このため、膨縮による凹凸が、一部の袋体111の間で繰り返されるのではなく、全ての袋体111に広がり易くなる。図6(e)に例示するように、循環経路を形成する狭窄流路113に逆止弁115を設置することにより、その効果はさらに高められる。この場合、流体は全ての袋体111を一巡する経路に沿って、移動するほかないからである。図6(d)及び図6(e)では、逆止弁115は全ての狭窄流路113に設置されているが、一部の狭窄流路113に設置した場合であっても相応の効果を発揮する。
図7(a)〜図7(c)に例示するように、複数の袋体111の内部が、2つの狭窄流路113により互いに連通し、かつ一方の狭窄流路113には逆止弁115が設置されていてもよい。この形態では、使用者の身体による押圧力の偏りにより、1つの袋体111から別の袋体111へ流体が流出するのに要する時間と、押圧力の偏りが変動したために逆戻りするのに要する時間との間に、差異が生じる。このような構成によっても、膨縮の変化が、全ての袋体111に広がり易くなる。
図8(a)〜図8(c)に例示するように、複数の袋体111の内部が、流体の流れ易さの異なる2つの狭窄流路113、114により互いに連通し、かつ双方の狭窄流路113、114には、逆止弁115が互いに逆向きとなるように設置されていてもよい。この形態においても、使用者の身体による押圧力の偏りにより、1つの袋体111から別の袋体111へ流体が流出するのに要する時間と、押圧力の偏りが変動したために逆戻りするのに要する時間との間に、差異が生じる。従って、このような構成によっても、膨縮の変化が、全ての袋体111に広がり易くなる。
図6(d)、(e)、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)に例示した各パッドにおいて、逆止弁115は、圧力弁の機能を有することが、さらに望ましい。圧力弁の機能を有する逆止弁115は、逆止弁115の順方向に流体を流そうとする圧力の差が、ある大きさを超えないときには開かず、順方向であっても流体を流さない。逆止弁115が、このような圧力弁の機能を有することにより、袋体111の膨張収縮の度合いが高められる。その結果、使用者の床ずれ防止効果がさらに向上する。
図6〜図8に例示した各パッドは、互いに内部が連通する複数の袋体111の全体で、流体を出し入れ不能に密封するものであってもよく、流体栓を有して、当該流体栓を通じて流体の供給排出が可能なように構成されてもよい。流体は、密度と粘性とが低い気体でもよいが、既述の通り、密度と粘性が高い液体である場合には、流体の移動を遅延させる狭窄流路113、114が容易に構成可能であり、粘性がさらに高いゲル状流体に対しては特に構成容易である、という利点がある。また、使用者の身体の一部を押圧する効果が高いという点においても、流体は、密度の高い液体又はゲル状の流体であることが望ましい。
狭窄流路113、114による流体の移動を遅延させる度合いは、対象とされる流体が、使用者の身体の重量により、1つの袋体111から別の袋体111へ実質的に流出し終える時間が、5分以上となるように設定されるのが、床ずれ防止効果を高める上で望ましい。流体が移動する時間が過度に短いと、身体の荷重の偏りに変動が生じることによって、それまでとは異なる袋体111から身体が押圧力を受ける時間が、十分に確保されないからである。また、流体が実質的に流出し終える時間は、12時間以内であることが望ましい。流体が移動する時間が過度に長いと、長時間にわたって同じ部位が押圧力を受ける状態に近くなり、パッドを使用する意義が希薄となるからである。当該時間は、さらには10分以上、さらには30分以上、さらには1時間以上、さらには、2時間以上、さらには4時間以上であることが、望ましい。また、当該時間は、さらには8時間以内、さらには6時間以内であることが望ましい。
図9は、図1に例示したベッド101の全体外観を例示する斜視図である。図9に例示するように、ベッド101は、さらに覆(おお)い121を有している。覆い121は、横臥台3に横臥する使用者から距離を保って、横臥台3の上を覆うものであり、例えば、主要部分が柔軟な合成樹脂シート製である。図9の例では、覆い121は、ベッド本体1に取り付けられたフレーム123に被せて使用に供されることにより、使用者からの距離が保持される。覆い121は、送風機51(図1を参照)の機能と相まって、横臥台3に横臥する使用者を、布団無しで適度な温度の空気で包み込むことを可能にする。それにより、長期の継続使用があっても、使用者の身体に蒸(む)れや被(かぶ)れの発生を抑えることが可能となる。
覆い121は、ベッド本体1に装着することも、ベッド本体1から取り外すことも可能である。使用者を横臥台3の上に横臥させるとき、あるいは逆に、横臥台3の上に横臥する使用者をベッド101の外に連れ出すときなどには、覆い121はベッド本体1から取り外される。フレーム123自身も、ベッド本体1に着脱可能に取り付けられており、覆い121とともに、フレーム123も取り外すことが可能である。覆い121の左右両側と後側には、ファスナー125が設けられている。横臥台3に横臥する使用者の介護や看護をするときなどに、ファスナー125のスライダー(図示略)を引き上げて、ファスナー125の閉状態を解除することにより、覆い121の一部を開放することができる。このように、覆い121は開閉可能である。
図10は、覆い121の外観及び構造を例示する図であり、(a)は前方右側から視た覆い121の概略外観斜視図、(b)及び(c)は、覆い121をベッド本体1に取り付ける機構を例示する拡大断面図である。図10(a)に例示するように、覆い121は、ベッド本体1の左右の側壁及び後部壁の上端部付近を覆うことが可能となるように、左右両側と後側は、前側よりも幾分余分に下方へ延びている。覆い121の左右両側と後側の下方へ延びた部分は、図10(b)に、矢印124の方向に視た断面構造を例示するように、長板状の永久磁石127を、巻き込むようにして保持している。永久磁石127の磁力により、ベッド本体1の箱状部7の左右側壁及び後部壁の上端部付近の外側面に、覆い121の左右両側及び後側の下端部分を吸着させることができる。覆い121の前側の下端部付近も、図10(c)に、矢印126の方向に視た断面構造を例示するように、長板状の永久磁石127を、巻き込むようにして保持している。永久磁石127の磁力により、ベッド本体1の箱状部7の前部壁の上端面に、覆い121の前側の下端部分を吸着させることができる。箱状部7が、鋼鉄製である場合のように、強磁性体を主材料とするものであれば、永久磁石127は箱状部7に吸着し得る。箱状部7が、木製である場合のように、非磁性体を主材料とするものであれば、永久磁石127を吸着すべき部位に、鋼鉄などの強磁性体の板状体又はシート状体を、貼着あるいはネジ止め等により固定しておくとよい。永久磁石127は、ゴム板状のものなど、軽量かつ柔軟な材質であると、取扱いに便宜である。なお、ファスナー125により互いに隔てられる覆い121の下端部領域の間では、覆い121の開閉を可能にするように、永久磁石127も互いに分かれている。
図11は、ベッド101の断面図であり、(a)は全体断面図、(b)は一部を拡大した断面図である。送風機51が送り出す空気は、収納部9から箱状部7へ流れ、横臥台3、落下物防護部材5及び箱状部7の間の隙間を通じて、さらに横臥台3の上方へ流れる。横臥台3の上に覆い121が設置されているときには、送風機51が送り出す空気によって、覆い121の内側が満たされることになる。
横臥台3を揺動可能にベッド本体1に支持する、前後2本のピン17のうち、前方のピン17は、箱状部7の前部壁体に形成された貫通孔128に摺動可能に挿通され、横臥台3の前端部に形成された貫通孔130に、摺動可能に挿入されている。それにより、横臥台3の前端部が支持されている。また、後方のピン17は、箱状部7の後部壁体の上端部に形成された孔132に摺動可能に挿入され、横臥台3の後端部に形成された貫通孔133に摺動可能に挿通されている。それにより、横臥台3の後端部が支持されている。2本のピン17は、係合部材129及び連結棒131によって連結されている。係合部材129は、前方のピン17とともに横臥台3の貫通孔130に摺動可能に挿入され、双方の鉤(かぎ)状端部135,137により、互いに係合している。係合部材129には、例えば金属製である連結棒131の前端部が連結しており、連結棒131の後端部は、後方のピン17に連結している。係合部材129は、本発明の「係合部材」の一具体例に相当し、連結棒131と係合部材129は、本発明の「連結部材」の一具体例に相当する。
ある強さを超える地震が発生することにより、錘31が錘支持部材33から落下すると、紐体35及び中継部材37を通じて、落下する錘31による撃力が、前方のピン17に伝えられ、このピン17が前方へ引かれる。その結果、この前方のピン17は、横臥台3の貫通孔130から抜け出る。ピン17が貫通孔130から抜け出ると同時に、鉤状端部135,137が、横臥台3の前端部と箱状部7の前部壁体との間の間隙139に露出する。このときに、横臥台3の重量、あるいは横臥台3とその上に横臥する使用者との重量により、鉤状端部135,137の係合状態は解除され、横臥台3の前端部は支持を失う。
鉤状端部135,137の係合状態が、横臥台3等の重量により解除されることを可能にするために、前方のピン17及び係合部材129は、貫通孔128及び130の中での回転の動きが拘束される。それには例えば、貫通孔128又は130を、軸方向に延びる溝付きの円形孔とし、前方のピン17又は係合部材129を、当該溝内を摺動する突起を有する円柱形とすると良い。
係合部材129の周面の一部には係止用突起141が形成されている。この係止用突起141は、落下する錘31による撃力により、前方のピン17が貫通孔130から引き抜かれるときに、鉤状端部135,137が間隙139に止まるように、係合部材129を横臥台3に係止するためのものである。係止用突起141は、横臥台3の貫通孔130の開口端縁に当接することにより、係合部材129を横臥台3に係止する。
落下する錘31による撃力により、前方のピン17が貫通孔130から引き抜かれるときに、前方のピン17の動きは、係合部材129及び連結棒131により、後方のピン17にそのまま伝達される。前方のピン17が横臥台3の貫通孔130を脱したときに、後方のピン17は箱状部7の後部壁体の孔132を脱するように、連結棒131の長さが調節されている。従って、横臥台3の前端部が支持を失ったときに、同時に、横臥台3の後端部も支持を失う。その結果、横臥台3は自然落下しようとする。横臥台3の下降を妨げないように、低速モータ19は、横臥台3の直下よりも前方に後退した部位に設置される。連結棒131は、長さの微調整を可能にする調節機構を有していても良い。当該調節機構として、棒状体の長さを調節する周知の構造を採用することができる。
図11(a)の中に一部を拡大して例示するように、後方のピン17を囲む環状、例えば円環状のスペーサ401が、横臥台3の後端部と箱状部7の後部壁体との間に配置される。スペーサ401には、ねじの座金を転用することも可能である。図11(b)に例示するように、横臥台3の前端部と箱状部7の前部壁体との間の間隙139には、圧縮バネ403が、前方のピン17を囲むように配置される。圧縮バネ403の弾性復元力により、横臥台3は常に後方に付勢される。それにより、間隙139が一定の大きさに保持される。横臥台3の後端部と箱状部7の後部壁体との間には、スペーサ401が介挿されるので、横臥台3が箱状部7の後部壁体の方へ付勢されていても、横臥台3は自身と箱状部7の後部壁体との間の摩擦力を小さく抑えつつ、揺動することが可能である。また、圧縮バネ403は、地震が検知されたときに、係合部材129が前方のピン17から外れ、横臥台3が落下することを妨げない。
図12は、横臥台3の揺動、及び落下物防護部材5の閉塞過程を例示する動作説明図であり、(a)は平常時の動作を例示する正面図、(b)は平常時の動作を例示する平面図、(c)は地震発生に伴う動作を例示する正面図である。図12(a)に例示するように、横臥台3は、低速モータ19が正転と逆転とを繰り返すことにより、ピン17の周りに揺動する。横臥台3の前端部の底部には、2本の紐体41の一端が連結されており、それらの他端は、左右に分けて配置された落下物防護部材5の前端部に連結されている。図12(a)、(b)には表れないが、横臥台3の後端部の底部には、別の2本の紐体41の一端が連結されており、それらの他端は、左右に分けて配置された落下物防護部材5の後端部に連結されている。
ピン17が外れることにより、横臥台3が下降すると、横臥台3に連結する紐体41が下方に引かれる。紐体41の下方への動きを、落下物防護部材5を中央へ向かって閉塞させる左右方向12の動きに転換するために、紐体41は中継部材143によって中継される。中継部材143は、例えば「U」字型の金具であり、箱状部7の前部壁体に固定されている。その結果、横臥台3の下降に伴い、落下物防護部材5が閉塞する。落下物防護部材5は、例えば、落下物を受け止めることのできる芯材を有するカーテン状であり、開閉自在である。低速モータ19のプーリ21に掛けられたベルト23は、横臥台3の下降に伴って緩められるので、横臥台3の下降を妨げない。図12(c)は、ベルト23がプーリ21に1回以上巻回されている例を示している。なお、紐体41及び中継部材143は、本発明の「閉駆動機構」の一具体例に相当する。
図13は、緩衝機構39を例示する図であり、(a)は緩衝機構39の動作を説明する動作説明図、(b)は緩衝機構39の断面図である。図13に例示する緩衝機構39は、オイルダンパとエアダンパとの双方の機能を兼ねたものであり、望遠鏡(テレスコープ)式に伸縮可能なように、互いに入れ子を成す多段のシリンダーを有している。これらのシリンダーの内部は、小孔を通じて互いに連通している。例えば、最外部のシリンダーの中に、他の全てのシリンダーが収納されることにより、緩衝機構39が最も収縮した状態にあるときに、全てのシリンダーの内部に収まる分量のオイル145が、シリンダーの内部に充填されている。最内部のシリンダーの頂部には、空気の出入りを可能にする微小な通気孔(図示略)が設けられている。従って、図13(a)に例示するように、横臥台3が揺動する平常時には、緩衝機構39は、エアダンパとして機能し、横臥台3の動きに追随する。横臥台3の揺動の速度は緩慢であるので、緩衝機構39は低速モータ19に、殆ど余分な負荷を加えない。
横臥台3がピン17による支持を失い、自然落下しようとすると、緩衝機構39はまずエアダンパとして機能し、横臥台3の落下速度を緩和する。緩衝機構39は、オイル145の量によって定まる所定長さまで収縮すると、オイル145によりオイルダンパとして機能するようになり、横臥台3の下降速度はさらに緩められる。従って、横臥台3がピン17による支持を失ったときに、図13(a)に例示するように、横臥台3が傾斜していた場合であっても、横臥台3は下降の中途において、姿勢を略水平に戻す。横臥台3は、その後、緩やかに下降し、緩衝機構39が最小の長さになったところで停止する。このように、緩衝機構39は、横臥台3が略水平の姿勢で、かつ自然落下速度よりも緩やかに下降することを可能にする。従って、横臥台3の降下に伴って使用者が受ける衝撃及び不快感が、緩和ないし解消される。
図14は、落下物防護部材5を例示する図であり、(a)は落下物防護部材5の正面図、(b)は落下物防護部材5の一部の斜視図、(c)は落下物防護部材5を案内する機構の一部を例示する斜視図である。図14に例示される落下物防護部材5は、多数の芯材151が柔軟なシート状体153により連結された形状を成している。芯材151は、長尺の板状であり、例えば、主として軽合金あるいは木材により形成されている。シート状体151は、例えば、布あるいは柔軟な合成樹脂シートであり、芯材151の上端部の間を連結している。多数の芯材151のうち、中央部に最も近い芯材152は、隣接する芯材154とは、シート状体151に代わって、剛性の連結板159により上端部同士が連結されている。紐体41は、最も中央寄りの芯材152ではなく、中央から2番目に配列する芯材154に連結されている。芯材152には、紐体41との干渉を避けるために、切れ込み161が形成されている。芯材151の長手方向すなわち前後方向11に沿った両端面の上端付近には、ローラ155が回転自在に軸支されている。ローラ155は、箱状部7の前部壁体及び後部壁体に形成された案内溝157に収まり、当該案内溝157に案内されつつ転動する。
図15は、落下物防護部材5の一部を例示する平面図である。さらに、図16は、落下物防護部材5の一部を例示する側面断面図である。図15及び図16に例示するように、紐体41は、その一端が、横臥台3の前後方向11に沿った端部の底面に連結され、中途が箱状部7の壁体に固定された「U」字状の中継部材143を通過し、他端が芯材154に連結されている。中継部材143は、左右方向12の中央付近、すなわちピン17の近くに設置される。これにより、横臥台3が下降するときに、その動きが紐体41を通じて、芯材154を中央方向に引き寄せるように、芯材154に伝えられる。横臥台3が箱状部7の中に収容され、下降を停止したときには、左右に分けて配置された落下物防護部材5の最も中央寄りの芯材152は、互いに接し合う。すなわち、落下物防護部材5は閉塞する。紐体41は、最も中央寄りの芯材152ではなく、その隣の芯材154に連結しているので、落下物防護部材5が閉塞するまで、落下物防護部材5に閉塞方向の力を及ぼすことができる。
芯材154は、案内溝157に支持されるローラ155により吊り下げられる板状であるので、上下方向にある程度の幅を有する。このため、ベッド101が設置される部屋の天井等からの照明具などの落下物から、閉塞した落下物防護部材5の下に沈んでいる横臥台3の上の使用者が保護される。また、隣り合う芯材151の間は、シート状体151によって連結されているので、ガラスの破片などの、サイズが比較的小さい落下物あるいは飛散物から、使用者が保護される。
図17は、図2に示したローラ配列体61を駆動する別の機構を例示する概略説明図である。図17(a)及び図17(b)は、ベッド101の関連する部分の右側面図であり、既に述べた図4(a)及び図4(b)に対応する。図17の例では、長尺部材45の両端が、それぞれバネ163、165を通じて、床8に接続されている。バネ163,165のバネ係数は互いに異なるように設定される。このため、図17(a)、(b)に例示するように、長尺部材45は、横臥台3の揺動に伴って、前後方向11に往復動をする。しかし、バネが長尺部材45の一方端にのみ接続されている場合に比べて、双方のバネ163,165が伸縮するために、長尺部材45の往復動の振幅は小さくなる。バネ163,165のバネ係数が接近するほど、長尺部材45の振幅は小さくなる。従って、バネ163,165のバネ係数を適切に設定することにより、長尺部材45の往復動の振幅を、適切な大きさに設定することができる。図17の例では、前方のバネ163に比べて、後方のバネ165の方が、バネ係数が大きく(すなわち伸び難く)設定されている。
図18は、図6〜図8に例示したパッドが有する逆止弁を例示する断面図である。図18(a)に例示する逆止弁は、狭窄流路113の一部に、球状の弁体203と、この弁体203を弁座201へ押圧付勢するスプリング205とを有している。流体は、スプリング205の押圧力に抗して、弁体203を押しのけることにより、順方向に流れることができるが、逆方向の流れは阻止される。スプリング205の押圧力を十分に弱く設定することにより、実質的に圧力差がなくても、流体は順方向に流れることができる。逆に、スプリング205の押圧力をある程度強く設定することにより、逆止弁に圧力弁の機能を付与することができる。
図18(b)に例示する逆止弁は、狭窄流路113の一部に先細状の管207を有している。この管207は、一例として、狭窄流路113を形成する管と一体に形成され、かつ柔軟な樹脂あるいはゴムを材料とする。流体の圧力が管207の内圧として作用する順方向の流れに対しては、管207の細い先端部は開口し流体の流れを妨げない。一方、逆方向の流れに対しては、流体の圧力は管207の外圧として作用するので、管207の細い先端部は閉塞し流体の流れを阻止する。
図19は、図6〜図8に例示したパッドの狭窄流路の広さを調節する機構を例示する図である。狭窄流路の広さを調節することにより、流体の移動を遅延させる度合いを調節することができる。図19に例示する調節機構はクリップ210を有しており、図19(a)はクリップ210の構造を示す正面図であり、図19(b)はクリップ210の使用形態を示す斜視図である。クリップ210は、袋体215,216を連結する連結部217を挟持することにより、連結部217の内部に形成されている狭窄流路113の広さを調節する。
クリップ210は、支点の周りに開閉可能な2本の脚部213と、脚部213の先端部付近であって、開く方向の側面に形成された雄ねじ211に螺合するナット212とを有している。雄ねじ211は、支点に近いほど拡径するように形成されている。このため、ナット212を回転させることにより、支点に近づけるほど、脚部213は微小ながら閉じる方向に動く。それにより、脚部213に挟まれた連結部217の狭窄流路113は、より狭くなる。連結部217は、一例として、袋体215,216と一体であり、樹脂あるいはゴムなどの柔軟な材料により構成される。このため、脚部213の開度により、狭窄流路113の広さを調節することが可能である。ナット212の大きな回転量は、脚部213に沿った小さい移動量に変換され、ナット212が脚部213に沿って移動することにより、さらに脚部213の微小な開度の変化がもたらされる。このように、クリップ210は、人手の操作によりナット212に付与される回転角の大きな変化量を、狭窄流路113の広さの微小な変化量に変換する。狭窄流路113の広さの僅かな相違は、流体の流れの遅延量を大きく左右する。従って、クリップ210を使用することにより、流体の流れの遅延量を容易に調節することが可能となる。ナット212は、図19(b)に例示するように、細長状の形状とすることにより、袋体215,216と共にクリップ210を横臥台3の上に載置して使用するときに、ナット212が回転することを防ぐことができる。使用者の身体にクリップ210が異物として違和感を与えることのないよう、クリップ210の上には、柔軟なマットなどの緩衝材を被せておくのが望ましい。
図20は、図13に例示した緩衝機構39に代わる、緩衝機構の別の例を示す図である。図20(a)はベッド後部の上面図であり、図20(b)はA−A線に沿った断面図、図20(c)はB−B線に沿った断面図である。図21は、図20に例示した緩衝機構の一部を拡大して示す拡大図であり、図21(a)は落下しようとする横臥台を受け止める横臥台受け部材の斜視図、図21(b)は図20(a)のC−C線に沿って後方から見た横臥台の外観図である。この緩衝機構は、地震の発生により支持状態が解除された横臥台3を、スプリング233,243により、略水平の姿勢を保つように、柔軟に受け止める。なお、図示を略するが、図20及び図21に示す機構と同様の緩衝機構が、ベッド前部にも設けられる。
スプリング233,243は、箱状部7(図1参照)の後壁221の上端部に形成された空洞231の内側に配置されている。空洞231は、一例として、落下物防護部材5のローラ155(図14参照)の案内溝239の後部に設けられる。スプリング233,243の一端部は後壁221に固定され、他端部はワイヤ235,245、及びピン状の留め部材265,255を通じて、横臥台受け部材261、251に連結されている。ワイヤ235,245は、延在方向を水平から垂直へ替えるために、後壁221に固定されたピン237、247に掛け回される。横臥台受け部材261,251は、横臥台3及び使用者の重量を受けることにより脱落可能な程度に、ネジ263,253により、後壁221に緩くネジ止めされる。
横臥台3の後端部には、横臥台3が支持状態を解除されたときに、横臥台受け部材261,251に受け止められるための板状部材225,223が取り付けられている。板状部材225,223は、横臥台3の下方に突出している。横臥台受け部材261,251は、板状部材225,223を受け止め、かつ外さないように、下端部がポケット状となっている。また、図21(a)に例示するように、横臥台受け部材261,251の頂部には、切れ込み267が形成されており、ネジ263、253は、この切れ込み267に挿入される。このため、ネジ263、253を適度に緩く締結することにより、重量を受けた横臥台受け部材261,251は、容易に後壁221から外れ、ワイヤ235,245によって吊り下げられる状態となる。
横臥台受け部材261,251の下端部は、横臥台3が揺動しても板状部材225,223と干渉しないように、横臥台3が水平状態にあるときの板状部材225,223の下端部よりも、下方に位置している。地震が発生することにより、横臥台3の支持状態が解除されると、横臥台3に固定された板状部材225,223が、横臥台受け部材261,251に受け止められる。横臥台受け部材261,251は、重量が加わったことにより、ネジ263、253による後壁221への固定状態を脱し、ワイヤ235,245によって吊り下げられる。ワイヤ235,245は、スプリング233、243に連結されているので、スプリング233,243の弾性復元力によって、横臥台3は柔軟に受け止められることとなる。しかも横臥台3は、スプリング233,243の弾性復元力により、略水平の姿勢を保つように受け止められる。このように、図13に例示した緩衝機構39と同様に、図20及び図21に例示する緩衝機構も、横臥台3が、略水平の姿勢で、かつ自然落下速度よりも緩やかに、使用者と横臥台3との重量により下降することを可能にする。
図22は、図1に例示したベッドに、さらに別の機能を付加したベッドが有する横臥台と、その上に載置された部材を例示する概略斜視図である。このベッド102が有する横臥台303には、パッド310が配置される。図22の例では、4個のパッド310が配置されている。各パッド310は、既に例示したパッド53,55,56,57,59と同様に、横臥台3の上の異なる位置に配置可能な複数の袋体を有している。図22には、各パッド310が2個の袋体を有する例を示している。パッド310の複数の袋体は、内部に流体を封じ込んでおり、流体の収容量に応じて膨縮する。各袋体は、例えばゴムあるいは合成樹脂製のシートにより形成されている。パッド310の複数の袋体は、流路300を通じて互いに連通している。流路300は、外部から挟むことにより閉塞できるよう、例えばゴムあるいは合成樹脂など、柔軟な材料により構成されている。流路300は、パッド53,55,56,57,59の狭窄流路113,114と同様に、流体の移動を遅延させる狭窄な流路であってもよい。流体は、押圧の効果を高める上で、望ましくは液体、さらに望ましくはゲル状流体である。
横臥台303は、図2に例示した横臥台3に、パッド310の流路300を、横臥台303の揺動に同期して開閉する機構が付加された構造を有する。この機構は、パッド310に封じられた流体が、横臥台303の揺動周期に合わせて、袋体から袋体へ移動することを可能にする。横臥台303の上面には、着脱可能な蓋体305が設けられており、パッド310の流路300が、蓋体305の下に通されている。
図2(b)に例示するように、横臥台303の傾斜に伴い、使用者が横臥台から転げ落ちないように、横臥台の両側には、転落防止壁302を設けることも可能である。また、パッド300を覆うように敷布304が敷かれ、この敷布304の上面には、面ファスナー306が取り付けられてもよい。使用者が着用する衣服には、対応する部位に面ファスナーを取り付け、双方の面ファスナー同士を固着させることにより、横臥台303の揺動に伴う使用者の体の過度の動きや転落を、防止することができる。敷布304は横臥台3に、面ファスナー等の固着部材(図示略)により、着脱可能に固着される。
図23及び図24は、それぞれ、ベッド102の一部の前後方向11及び左右方向12に沿った断面図であり、蓋体305とその下方の構造を示している。また、図25は、横臥台303の部分上面図(図25(a))及び部分斜視図(図25(b))である。図25(b)の斜視図では、蓋体305を除去した横臥台303の形状を示している。また、図23に示す横臥台303の断面図は、図25(a)に示すD−D線に沿った断面図であり、図24に示す横臥台303の断面図は、E−E線に沿った断面図である。
図23〜図25に示すように、横臥台303には上面から下面まで貫通する貫通孔307が形成されている。貫通孔307は、パッド310の流路300が位置する部位に形成され、一例として前後方向11に広く左右方向12に狭い平面視略矩形である。貫通孔307の上面開口部は、蓋体305によって着脱自在に覆われている。一例として、蓋体305の上面は、使用者に凹凸感を与えないよう、横臥台303の上主面と同一平面をなす。貫通孔307の内壁上部は、蓋体305を安定して支持するように、傾斜している。また、貫通孔307の左右方向12両側の内壁上部には、前後方向11中央部に、後退した凹部308,309(図24、図25参照)が形成されている。この凹部308,309は、蓋体305の左右方向12両側において、横臥台303の上面に開口している。パッド310の流路300は、これらの凹部308,309を通じて、蓋体305の下に潜り込むことが可能となっている。凹部308,309は、蓋体305を着脱するときに、蓋体305を摘むための空隙としても機能する。
蓋体305には、その下面から下方に突出するように前後方向11に間隔をおいて並んだ2本の案内棒311が設けられている。図23及び図24の例では、案内棒311は、その上端部が蓋体305にねじ込まれている。これらの案内棒311には、押さえ部材313が摺動可能に案内されている。案内棒311には、押さえ部材313の下に、スプリング315がさらに案内されている。スプリング315は、案内棒311の下端に設けられた支持部材317により、下端が支持されている。図23及び図24の例では、支持部材317は、案内棒311の下端部にねじ込まれたナットである。支持部材317により下端が支持されたスプリング315は、押さえ部材313を上方に付勢する。蓋体305の下に通されたパッド310の流路300は、蓋体305と押さえ部材313とに挟まれ、さらにスプリング315によって、閉塞するように付勢される。
押さえ部材313の下面には、環状部を有する連結部材319が取り付けられており、この連結部材319に紐体321及び329の一端が連結されている。紐体321、329は、例えばロープあるいはワイヤである。ベッドの床8には、環状部を有する中継部材323及び係止部材331が取り付けられている。紐体321は中継部材323の環状部に遊挿されることにより中継される。紐体321の他端は、横臥台303に連結される。紐体329は中継部材を介することなく、その他端が係止部材331に連結されることにより、床8に係止される。紐体321、329が緩んだ状態にあるか、外されているときには、蓋体305を持ち上げることにより、押さえ部材313、案内棒311等も、一緒に持ち上げられる。すなわち、押さえ部材313、案内棒311等は、蓋体305と同時に横臥台303に取り外し、あるいは取り付けすることができる。
図26は、横臥台303の揺動に伴う、押さえ部材313の動作を例示する動作説明図である。図26(a)に示すように、紐体321の一端と他端とは、横臥台303の揺動軸である中心軸13を挟んで、互いに左右方向12の反対側に位置するように、連結部材319及び横臥台303にそれぞれ連結される。しかも、中心軸13から一端までの距離325と、中心軸13から他端までの距離327は、同一ではなく、距離327の方が長く設定される。紐体329の一端と他端は、上述の通り、連結部材319及び係止部材331にそれぞれ連結される。このように構成されるため、図26(b)に示すように、押さえ部材313が持ち上がるように、所定角度を超えて横臥台303が傾斜すると、紐体329が引っ張られることとなる。その結果、紐体329は張力により、スプリング315の抗力に抗して、押さえ部材313を下方へ引き下ろす。押さえ部材313による押圧が解除されると、閉塞していた流路300が開くこととなる。その結果、パッド310に封じられた流体が流路300を通じて、1つの袋体から別の袋体へ流動する。
横臥台303の傾斜角が所定角度以下に戻ると、スプリング315の付勢力により、流路300は再び閉塞する。図26(c)に示すように、逆に、押さえ部材313が沈み込むように、所定角度を超えて横臥台303が傾斜すると、今度は、紐体321が引っ張られることとなる。その結果、紐体321は張力により、スプリング315の抗力に抗して、押さえ部材313を下方へ引き下ろす。押さえ部材313による押圧が解除されると、閉塞していた流路300が開くこととなる。その結果、パッド310に封じられた流体が流路300を通じて、別の袋体から元の袋体へ逆戻りするように流動する。このように、ベッド102では、パッド310に封じられた流体が、横臥台303の揺動周期に合わせて袋体から袋体へ、往復するように移動することとなる。流路300が開くための横臥台303の所定の傾斜角は、揺動の最高傾斜角に近い大きさに設定するのが望ましい。紐体321、329の長さを適度に設定することにより、所定角を望ましい大きさに設定することが可能である。紐体321、329の長さを調節する周知の部材を設けることにより、所定角を容易に調節することが可能となる。
パッド310は、3個以上の袋体を有してもよい。また、パッド310は、複数の流路300を有してもよい。複数の流路300のそれぞれが、抑え部材313により、開閉するようにベッド102を構成することも可能である。また、パッド310は、互いに内部が連通する複数の袋体の全体で、流体を出し入れ不能に密封するものであってもよく、流体栓を有して、当該流体栓を通じて流体の供給排出が可能なように構成されてもよい。
(その他の実施の形態)
図27は、図11に例示した横臥台支持機構及び地震検出部の変形例を示す拡大断面図である。この例では、前方のピン17のうち、箱状部7の前部壁体の前方に突出する部分に、フランジ411が設けられている。箱状部7の前部壁体とフランジ411との間には、圧縮バネ413がピン17を囲むように配置されている。圧縮バネ413は、前方のピン17、さらには係合部材129及び連結棒131を通じて後方のピン17(図11参照)を、前方へ摺動するように付勢する。箱状部7の前部壁体の前面には、例えば鈎状である係止部材415が上下に回動可能に設けられている。係止部材415は、図27に示す通常の回動位置において、フランジ411の前面に当接し、ピン17の過剰な飛び出しを制止する。それにより、前方及び後方ピン17は、通常の位置を保持する。
係止部材415には、例えば金属ワイヤなどの紐体417の一端が連結されている。紐体417は、中継部材として例えば滑車419,421を介することにより、延在する方向を変え、その他端が錘31に連結されている。紐体417には、多少の緩みが確保されるのが望ましい。前方のピン17も、紐体35を通じて錘31に連結されている。紐体35は、例えば中継部材としての滑車423により、延在方向が変えられる。紐体35にも緩みが付与されており、この緩みは紐体417よりも大きく確保されるのが望ましい。
図27に例示する横臥台支持機構及び地震検出部は、以上のように構成されるので、規定を超える強さの地震の発生により、錘31が錘支持部材33から転げ落ちると、先に紐体417が緊張状態となり、係止部材415を上方へ回動させる。それにより、ピン17は係止状態を解除され、圧縮バネ413の弾性復元力により前方へ摺動する。その結果、図11を参照しつつ述べたところと同様の機構により、前後2本のピン17による横臥台3の支持状態が解除され、横臥台3は落下する。係止部材415による係止が解除された後のピン17の摺動を、より確かなものとするために、紐体417の後に緊張状態となる紐体35によっても、前方へ向かう力がピン17に付与される。このように、ピン17を前方へ摺動させるのに、錘31の重力に加えて圧縮バネ413の弾性復元力が利用されるので、図11に例示した形態に比べて、錘31を軽くすることが可能となる。圧縮バネ413の弾性復元力を、十分に強く確保することにより、紐体35及び滑車423を除去し、圧縮バネ413の弾性復元力のみでピン17を前方へ摺動させることも可能である。
長尺部材45に接続されるバネ47(図4),バネ163,165(図17)に代えて、ゴムひも等の、他の弾性部材を用いることも可能である。
パッド内の複数の袋体111(図6〜図8)は、独立した袋体ではなく、単一の袋体の内部が隔壁により仕切られることにより、複数の袋体に分割されたものであってもよい。この場合、複数の袋体111の内部を連通させる狭窄流路113は、隔壁に形成される微小な孔であってもよい。
図11の例において、連結棒131と係合部材129は、それらの全体が、前後方向11に沿うように横臥台3の内部に形成される貫通孔に、挿通されていてもよい。
図11の例において、後方のピン17は、連結棒131により駆動する代わりに、紐体35とは別に錘31に連結する紐体により、横臥台3の貫通孔133から箱状部7の孔132に引き込むように、駆動されてもよい。そのためには例えば、箱状部7の孔132を、箱状部7の後部壁体を貫通する貫通孔とし、当該貫通孔の後方から紐体の端部を挿入し、ピン17に連結するとよい。この場合、箱状部7の側壁には、紐体が巡らされ、当該紐体を案内するとともに保護する保護カバーを、配設するとよい。