JP2020134799A - ポリマー光導波路 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)基材上に硬化性組成物を塗布し、光照射を行って硬化させ、アンダークラッドを形成する。
(2)アンダークラッド上に硬化性組成物の塗膜を形成した後、該塗膜をフォトリソグラフィ法で加工してコアを形成する。
(3)アンダークラッドおよびコア上に硬化性組成物を塗布し、光照射を行って硬化させ、オーバークラッドを形成する。
本発明のポリマー光導波路は、コアと、コアよりも屈折率が低いクラッドとで構成される。該コアおよびクラッドが光照射により硬化性樹脂を硬化させてなる。この目的で実施される光照射には、中心波長が365nmのi線が広く用いられている。
クラッドのi線吸収特性に関して、本願発明者らは、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの吸光度に着目した。膜厚50μm当たりの吸光度に着目した理由は、吸光度の評価が容易であるため。膜厚50μm未満だと、曲げや反りが発生しやすくなり、取り扱いが困難になる。膜厚が50μm超だと、基板上に形成した際の反りが大きくなり、応力も大きくなるため、クラックが発生する原因にもなる。
なお、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの吸光度は、例えば、分光光度計により測定できる。
本発明のポリマー光導波路において、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの吸光度が0.22以下が好ましく、0.21以下がより好ましく、0.18以下がさらに好ましい。
本発明のポリマー光導波路は、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの透過率が59%以上である。この場合、クラッドにおけるi線の吸収が少ないため、クラッド形成時において、硬化性樹脂が十分硬化する。この状態でクラッド上にコアを形成すると、クラッドとの界面にコアが十分に密着するため、クラッドとの界面でのコアの剥離が抑制される。
なお、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの透過率は、例えば、分光光度計により測定できる。
本発明のポリマー光導波路において、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの透過率が60%以上が好ましく、61%以上がより好ましく、65%以上が好ましい。
段落[0003]に例示した手順で上記構成のポリマー光導波路を製造する場合、アンダークラッド上にコアを形成するため、アンダークラッドが上述した波長365nmにおける膜厚50μm当たりの吸光度、あるいは、上述した波長365nmにおける膜厚50μm当たりの透過率を満たしていれば、クラッドとの界面でのコアの剥離が抑制される。この場合、オーバークラッドは、上述した波長365nmにおける膜厚50μm当たりの吸光度、あるいは、上述した波長365nmにおける膜厚50μm当たりの透過率を満たしていなくてもよい。
これらの材料のうち、フッ素系樹脂は、吸水率又は吸湿率が低く、高温高湿に対する耐性に優れ、化学的な安定性が高いため、コアやクラッドの材料として好適である。フッ素系樹脂を用いたポリマー光導波路は、外的環境の変化、特に湿度の変化による屈折率の変動が小さくて特性が安定しており、また、光通信波長帯域における透明性が高い。
コアおよびクラッドの少なくとも一方が、架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(A)(以下、単にプレポリマー(A)ということもある。)を硬化させることが好ましい。
コアの構成材料の好適例は、架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(A)であり、プレポリマー(A)を硬化させてコアを形成する。
硬化方法としては、熱でも光でもよいが光照射がより好ましい。
ポリアリーレン構造における連結基は、例えばエーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホン酸基から水酸基を除いた二価基(−SO2−)等が挙げられる。プレポリマー(A)のうち、特に芳香族環どうしがエーテル結合(−O−)を含む連結基で結合されている構造を有するものを含フッ素ポリアリーレンエーテルプレポリマー(A1)という。本明細書におけるプレポリマー(A)は含フッ素ポリアリーレンエーテルプレポリマー(A1)を含む概念である。
該エーテル結合を含む連結基の具体例としては、エーテル性酸素原子のみからなるエーテル結合(−O−)、炭素鎖中にエーテル性酸素原子を含むアルキレン基等が例示される。
なお、メタクリロイル(オキシ)基とは、メタクリロイル基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。アクリロイル(オキシ)基も同様である。
プレポリマー(A)のうちでも、特に、含フッ素ポリアリーレンエーテルプレポリマー(A1)は、エーテル性酸素原子を有するため、分子構造が柔軟性を有し、硬化物の可とう性が良好である点で好ましい。
プレポリマー(A)はフッ素原子を有する。すなわちプレポリマー(A)はC−H結合の水素原子がフッ素原子に置換されたC−F結合を有するため、C−H結合の存在割合が少なくなっている。C−H結合は光通信波長帯域(1250〜1650nm)において吸収を有するため、C−H結合が少ないプレポリマー(A)は、光通信波長帯域における光の吸収が抑えられる。またプレポリマー(A)はフッ素原子を有するため、吸水性または吸湿性が低く、高温高湿に対する耐性に優れるとともに、化学的にも安定性が高い。したがって、プレポリマー(A)を用いたポリマー光導波路は、外的環境の変化、特に湿度変化、による屈折率変動が小さく特性が安定しており、また光通信波長帯域における透明性が高い。
また、プレポリマー(A)の硬化物は、波長1310nm付近における透明性が高いため、既存の光学素子との適合性が良いポリマー光導波路が得られる。すなわち、一般に石英系光ファイバを用いた光伝送装置においては、1310nmを使用波長とする場合が多いため、この使用波長に適合する受光素子等の光学素子が多く製造されており、信頼性も高い。
クラッドの構成材料の好適例は、分子量が140〜5000であり、架橋性官能基を有し、フッ素原子を有していない化合物(B)と、上記のプレポリマー(A)を含む硬化性組成物(I)であり、硬化性組成物(I)を硬化させてクラッドを形成する。
硬化方法としては、熱でも光でもよいが光照射がより好ましい。
化合物(B)の分子量が5000以下であると、化合物(B)の粘度が低く抑えられ、プレポリマー(A)と混合したときに均一な組成物が得られやすい。また良好な平坦性が得られやすい。
化合物(B)の分子量が140以上であると、良好な耐熱性が得られ、加熱による分解、揮発が生じ難い。化合物(B)の分子量の範囲は250〜3000が好ましく、250〜2500が特に好ましい。
化合物(B)の架橋性官能基は、少なくとも化合物(B)と反応して架橋又は鎖延長を引き起こす。化合物(B)の架橋性官能基が、プレポリマー(A)および化合物(B)の両方と反応して架橋又は鎖延長を引き起こすことが好ましい。
化合物(B)の架橋性官能基としては、炭素原子−炭素原子における二重結合または三重結合が好ましい。ただし芳香族性の二重結合、三重結合は含まない。
具体的には、ビニル基、アリル基、エチニル基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらのうちで、感光剤の存在下でなくても、光照射により反応を生じる点でアクリロイル基、アクリロイルオキシ基が好ましい。
上記に挙げた中でも、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートが硬化膜の成形性が良好であるので好ましい。
上記に挙げた化合物(B)の例示の中で、化合物(B)単独で硬化させた硬化物の屈折率が、プレポリマー(A)を単独で硬化させた硬化物の屈折率より低いものは、これをプレポリマー(A)に配合することにより、硬化性組成物(I)の硬化物の屈折率をプレポリマー(A)の硬化物よりも低くできる。
化合物(B)単独で硬化させた硬化物の屈折率が、プレポリマー(A)を単独で硬化させた硬化物の屈折率より高いものを用いる場合は、硬化物の屈折率がプレポリマー(A)を単独で硬化させた硬化物の屈折率より低い化合物(B)と組み合わせて使用することによって、クラッドの屈折率を、コアの屈折率よりも低くできる。
硬化性組成物(I)に含まれる、プレポリマー(A)と化合物(B)との合計質量に対する、プレポリマー(A)の割合は1〜97質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、8〜35質量%がさらに好ましい。
プレポリマー(A)の含有割合が多いほど高耐熱性が得られやすく、化合物(B)の含有割合が多いほど硬化物表面の平坦性が良好となりやすい。
但し、感光剤を含有量が多すぎると、形成されるクラッドのi線吸収特性に影響を及ぼし、波長365nmにおける単位膜厚当たりの吸光度が増加する、波長365nmにおける単位膜厚当たりの透過率が低下する、といった問題が生じるので留意する必要がある。
本発明のポリマー光導波路の製造方法は特に限定されず、各種方法を用いることができる。具体的には、複製(スタンパ)法、直接露光法、反応性イオンエッチング(RIE)とフォトリソグラフィプロセスを組み合わせる方法、射出成形をもとにした方法、フォトブリーチング法、直接描画法、自己形成法等を使用できる。
まず、スピンコート法により、基板の上にアンダークラッドの構成材料である硬化性組成物(A)を含有する塗布液を塗布する。続いて、光照射により該硬化性組成物(A)を硬化させてアンダークラッドを形成する。
次に、スピンコート法により、アンダークラッドの上にコアの構成材料である硬化性組成物(B)を含有する塗布液を塗布する。続いて、フォトリソグラフィプロセスにより、該硬化性組成物(B)をパターニングし、アンダークラッドの上にコアを形成する。このとき、コアの幅が光の伝搬方向に沿って異なる形状を形成するには、コアの幅が光の伝搬方向に沿って異なる形状のフォトマスクを用いて露光を行った後、現像することによってコアを形成すればよい。また、コアを形成した後、必要に応じてポストベークを行ってもよい。
次に、スピンコート法により、アンダークラッド及びコアの上にオーバークラッドの構成材料である硬化性組成物(C)を含有する塗布液を塗布する。続いて、光照射により該硬化性組成物(C)を硬化させてオーバークラッドを形成する。オーバークラッドを形成する際、フォトリソグラフィプロセスにより、オーバークラッドが存在せず、コアおよび該コアの周辺のアンダークラッドが露出したコア露出部を形成できる。
(例1〜例6)
例1〜例6では、以下に示す手順でポリマー光導波路を作製した。例1〜例6のうち、例1〜例4が実施例、例5、例6が比較例である。
コア形成材料、クラッド形成材料の調製手順
コアの形成に用いる硬化性組成物(I−1)を以下の手順で調製した。
N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)溶媒中で、ペルフルオロビフェニル(67質量%)と、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(12質量%)とを炭酸カリウムの存在下に、下記表に示す平均温度Aで5時間反応させた後、続けて4−アセトキシスチレン(21質量%)を添加し、水酸化カリウム水溶液の存在下、下記表に示す平均温度Bに冷却しながら反応させてプレポリマーを合成した。得られたプレポリマーのDMAc溶液を塩酸水溶液に投入することで再沈精製し、真空乾燥して粉末状の硬化性組成物を得た。粉末状の硬化性組成物30質量%とポリプロピレングリコールメチルエーテルアセタート70質量%に溶解させ、室温で55時間混合して硬化性組成物(I−1)を調製した。
クラッドの形成に用いる硬化性組成物(I−2)、(I−3)を以下の手順で調製した。
上記手順で得られた粉末状の硬化性組成物(I−1)50質量%を、ポリプロピレングリコールジメタクリレート10質量%とをポリプロピレングリコールメチルエーテルアセタート50質量%に溶解させ、室温で55時間混合して、硬化性組成物(I−2)、(I−3)を得た。
なお、本実施例で用いた硬化性組成物(I−1)は、調製時における平均温度Aが41℃以下が好ましく、30℃〜41℃がより好ましく、38〜41℃が更に好ましい。
スピンコート法により、基板の上にアンダークラッドの構成材料である硬化性組成物(I−2)を含有する塗布液を塗布した。続いて、光照射により該硬化性組成物(I−2)を硬化させて、膜厚50μmとなるようにアンダークラッドを形成した。
次に、スピンコート法により、アンダークラッドの上にコアの構成材料である硬化性組成物(I−1)を含有する塗布液を塗布した。続いて、フォトリソグラフィプロセスにより、該硬化性組成物(I−1)をパターニングし、アンダークラッドの上に、厚さが2.0〜3.0μmの範囲で、幅が2.0〜10.0μmの範囲の部分を有するコアを形成した。次に、スピンコート法により、アンダークラッド及びコアの上にオーバークラッドの構成材料である硬化性組成物(I−3)を含有する塗布液を塗布した。続いて、光照射により該硬化性組成物(I−3)を硬化させて、膜厚20〜25μmとなるようにオーバークラッドを形成した。最後に形状を安定させるためN2雰囲気化でポストベークを行って、ポリマー光導波路を作成した。
作製したポリマー光導波路について、波長365nmにおける膜厚50μm当たりのクラッドの吸光度と透過率を以下に示す手順で測定した。
膜厚50μm当たりのクラッドの吸光度と透過率の測定方法
吸光度と透過率の測定には顕微紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、製品型式MSV5200)を使用して、測定範囲径φ50umでクラッド部分を測定した。
測定箇所の膜厚測定には白色干渉計(ZYGO社製、製品型式:3次元光学プロファイラーシステムNewview7300)を使用した。対物レンズは20倍を使用した。
顕微紫外可視近赤外分光光度計で測定された吸光度と透過率を白色干渉計で測定した膜厚から膜厚50μmあたりの吸光度と透過率を算出した。
各例について、ポリマー光導波路を100サンプル作製し、コアの剥離の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:1〜9サンプルで剥離発生
B:10〜19のサンプルで剥離発生
C:20以上のサンプルで剥離発生
Claims (9)
- コアと、前記コアよりも屈折率が低いクラッドとで構成され、前記コアおよび前記クラッドが光照射により硬化性樹脂を硬化させてなるポリマー光導波路であって、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの前記クラッドの吸光度が0.23以下である、ポリマー光導波路。
- 前記クラッドが、前記コアの周囲に存在するアンダークラッド、および、前記アンダークラッドとは反対側のコア周囲に存在するオーバークラッドとで構成され、前記アンダークラッドおよび前記オーバークラッドのうち、少なくとも一方が、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの吸光度が0.23以下である、請求項1に記載のポリマー光導波路。
- 少なくとも一部に、前記オーバークラッドもしくは前記アンダークラッドが存在せず、前記コアおよび該コアの周囲の前記アンダークラッドもしくは前記オーバークラッドが露出した部位を有しており、前記部位における前記アンダークラッドもしくは前記オーバークラッドが、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの吸光度が0.23以下である、請求項2に記載のポリマー光導波路。
- コアと、前記コアよりも屈折率が低いクラッドとで構成され、前記クラッドが、波長365nmの光照射により硬化性樹脂を硬化させてなるポリマー光導波路であって、前記クラッドが、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの透過率が59%以上である、ポリマー光導波路。
- 前記クラッドが、前記コアの周囲に存在するアンダークラッド、および、前記アンダークラッドとは反対側のコア周囲に存在するオーバークラッドとで構成され、前記アンダークラッドおよび前記オーバークラッドのうち、少なくとも一方が、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの透過率が59%以上である、請求項4に記載のポリマー光導波路。
- 少なくとも一部に、前記オーバークラッドもしくは前記アンダークラッドが存在せず、前記コアおよび該コアの周囲の前記アンダークラッドもしくは前記オーバークラッドが露出した部位を有しており、前記部位における前記アンダークラッドもしくは前記オーバークラッドが、波長365nmにおける膜厚50μm当たりの透過率が59%以上である、請求項5に記載のポリマー光導波路。
- 前記コアおよび前記クラッドの少なくとも一方が、架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(A)を硬化させてなる、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー光導波路。
- 前記コアが、架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(A)を硬化させてなり、
前記クラッドが、 分子量が140〜5000であり、架橋性官能基を有し、フッ素原子を有していない化合物(B)、および含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(A)を含む硬化性組成物を硬化させてなる、請求項7に記載のポリマー光導波路。 - シングルモード光導波路である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー光導波路。
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