各図面を参照して、本発明の実施形態に係る自動車ドア開閉機構について説明する。以下の説明における上下、左右、前後の用語は、自動車の乗員から見たときの方向を示す。また、複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付して説明を簡略化する。
図1には、本発明の実施形態に係るキャノピードア型自動車の斜視図が示されている。キャノピードア型自動車は、車室の上側を覆うキャノピードア10が車体12に取り付けられたものである。車体12は、左右にドアが設けられた通常の車体に対し、車室の前方上側が切り欠かれた形状を有しており、車体12の切り欠き部分にキャノピードア10が開閉可能に嵌められている。
キャノピードア10は、フロントウインドウ14、左右のサイドウインドウ16、天井18、および裾広がり部20を有している。フロントウインドウ14は前方の視界に臨んでおり、サイドウインドウ16はフロントウインドウ14の左側の縁および右側の縁のそれぞれから後方に広がり、左右の視界に臨んでいる。天井18は、フロントウインドウ14と左右のサイドウインドウ16に囲まれた領域を上方から塞いでいる。裾広がり部20は、フロントウインドウ14および左右のサイドウインドウ16の下端から自動車の外側に向けて広がっている。裾広がり部20は張り出し領域22を左右に有している。左側の張り出し領域22は、左方向に広がった先で下方に折れ曲がり、右側の張り出し領域22は、右方向に広がった先で下方に折れ曲がっている。裾広がり部20の前方の縁における左端および右端は、回転機構としてのヒンジ24を介して車体12に取り付けられている。キャノピードア10は、左右のヒンジ24を中心軸として上下に回転することで開閉する。
車体12の左側の側面には左ドア操作部30Lが設けられ、車体12の右側の側面には右ドア操作部30Rが設けられている。左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rは、それぞれ、左側の張り出し領域22の前方および右側の張り出し領域22の前方に位置する。左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rのそれぞれは、ドアハンドルおよびキーシリンダを備えている。
車体12の左側および右側には、それぞれ、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rが設けられている。左ドアラッチ32Lは、左側の張り出し領域22の下面に対向する位置に設けられている。右ドアラッチ32Rは、右側の張り出し領域22の下面に対向する位置に設けられている。左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは、キャノピードア10に対する開閉動作をする。
左側の張り出し領域22の下面および右側の張り出し領域22の下面には、環状に突出したストライカが設けられている。キャノピードア10が閉められているときには、左側のストライカおよび右側のストライカは、それぞれ、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rに引っ掛かり、キャノピードア10を閉止状態に保持している。
車室の後壁の裏面には、左ドア操作部30Lまたは右ドア操作部30Rの操作に応じて、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを動作させる遠隔操作機構34が設けられている。左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rと遠隔操作機構34との間は、引張線(インナーケーブル)が可撓性の管に挿通されたケーブルによって機械的に接続されている。同様に、遠隔操作機構34と左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rとの間もケーブルによって機械的に接続されている。
左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rのうちの一方におけるドアハンドルの操作がされると、左ドアラッチ32Lは左側のストライカを外し、右ドアラッチ32Rは右側のストライカを外す。
キャノピードア10の前方左側と車体12との間、および前方右側と車体12との間には、伸縮シリンダ36が設けられている。伸縮シリンダ36はスプリングを備えており、キャノピードア10の左右のストライカが左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rから外れると共に伸張し、キャノピードア10を上側に付勢する。これによって、キャノピードア10は左右のヒンジ24を中心軸として上方向に回転し、開けられた状態となる。
図2には、キャノピードア10が開いた状態のキャノピードア型自動車が示されている。車体12の左右側部には凹み領域38が設けられている。凹み領域38には乗員が乗降する際に腰を下ろしてバランスをとるための乗降用ステップ40が設けられている。左側の乗降用ステップ40の後方の車体内部には左ドアラッチ32Lが設けられている。左ドアラッチ32Lを覆う車体12の壁には、ストライカが挿入されるラッチ穴44が設けられている。同様に、右側の乗降用ステップ40の後方における車体内部には右ドアラッチ32Rが設けられており、右ドアラッチ32Rを覆う車体12の壁にラッチ穴44が設けられている。キャノピードア10が閉められるときは、左側のストライカは左側のラッチ穴44を通って左ドアラッチ32Lに引っ掛かり、右側のストライカは右側のラッチ穴44を通って右ドアラッチ32Rに引っ掛かる。
外側の乗員がキャノピードア10を下方に押すことで伸縮シリンダ36が収縮し、キャノピードア10は、左右のヒンジ24を中心軸として下方に回転する。これによって左右のストライカが、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rに引っ掛かり、キャノピードア10が閉められる。
キャノピードア型自動車では、左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rのうち一方におけるキーシリンダに乗員がキーを差し込み、キーを回転することで、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rがケーブルを介して施錠または解錠される。
図3には、自動車ドア開閉機構が機能ブロックによって示されている。自動車ドア開閉機構は、左ドア操作部30L、右ドア操作部30R、左ドアラッチ32L、右ドアラッチ32Rおよび遠隔操作機構34を備えている。左ドア操作部30Lは、左ドアハンドル50Lおよび左キーシリンダ52Lを備え、右ドア操作部30Rは、右ドアハンドル50Rおよび右キーシリンダ52Rを備えている。
自動車ドア開閉機構は、以下に説明するように、左ドア操作部30L、右ドア操作部30R、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rのそれぞれと遠隔操作機構34との間を機械的に接続するケーブルを備えている。遠隔操作機構34は、左ドアハンドル50Lおよび右ドアハンドル50Rのうちのいずれか一方から各ドアラッチに、ケーブルを介して各ドアラッチを動作させる力を伝達する。各ケーブルは、プラスチック樹脂等によって形成された可撓性の管に引張線を挿通したものであってよい。引張線は、金属の他、プラスチック樹脂、自然繊維等、その他の材料で線状に形成されたものであってよい。ケーブルは、引張線が一端から引っ張られることによって、その引っ張られたことによる力を他端に伝達する。
左ドアハンドル50Lは左ハンドルケーブルHLによって遠隔操作機構34に接続されており、右ドアハンドル50Rは右ハンドルケーブルHRによって遠隔操作機構34に接続されている。また、左ドアラッチ32Lは左ラッチケーブルTLによって遠隔操作機構34に接続されており、右ドアラッチ32Rは右ラッチケーブルTRによって遠隔操作機構34に接続されている。
遠隔操作機構34は、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを施錠または解錠するロック機構46を含んでいる。左キーシリンダ52Lは、左施錠ケーブルKLおよび左解錠ケーブルUL(キーケーブル)によってロック機構46に接続されている。右キーシリンダ52Rは、右施錠ケーブルKRおよび右解錠ケーブルUR(キーケーブル)によってロック機構46に接続されている。左施錠ケーブルKLおよび右施錠ケーブルKRは、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを施錠するためのケーブルであり、左解錠ケーブルULおよび右解錠ケーブルURは、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを解錠するためのケーブルである。
なお、左キーシリンダ52Lおよび右キーシリンダ52Rのうち一方は、必ずしも設けられなくてもよい。例えば、車室の右側に運転席があるときは、右キーシリンダ52R、右施錠ケーブルKRおよび右解錠ケーブルURが設けられ、左キーシリンダ52L、左施錠ケーブルKLおよび左解錠ケーブルULは設けられなくてもよい。
図4には、遠隔操作機構34に含まれている機構のうち、ドアハンドルおよびドアラッチの動作に関連するドアオープン機構54が模式的に示されている。図4に示されている上下方向、左右方向、および前後方向を示す矢印は説明の便宜上のものであり、ドアオープン機構54が自動車に取り付けられる際の姿勢を限定するものではない。
ドアオープン機構54は、回転レバー56および中心支持柱60を備えている。中心支持柱60はドアオープン機構54を収容する筐体に固定されており、前後方向に延びている。回転レバー56は略長方形の板状の部材であり、中心に回転穴58が開けられている。回転穴58は中心支持柱60によって貫かれている。後述するように、ロック機構46によって動作が阻止されている場合を除いて、回転レバー56は中心支持柱60を中心に回転自在である。
左ハンドルケーブルHLは回転レバー56の下端部に接続され、左側に延びている。より詳細には、左ハンドルケーブルHLの引張線の先端が回転レバー56の下端部に固定され、その引張線が左方向に延びて左ハンドルケーブルHLの管に入り込んでいる。左ハンドルケーブルHLと同様に、右ハンドルケーブルHRは回転レバー56の上端部に接続され、右側に延びている。左ハンドルケーブルHLと回転レバー56との接続点と、右ハンドルケーブルHRと回転レバー56との接続点は、180°回転対称の位置にある。
左ラッチケーブルTLは回転レバー56の上端部に接続され、左側に延びている。より詳細には、左ラッチケーブルTLの引張線の先端が回転レバー56の上端部に固定され、その引張線が左方向に延びて左ラッチケーブルTLの管に入り込んでいる。左ラッチケーブルTLと同様に、右ラッチケーブルTRは回転レバー56の下端部に接続され、右側に延びている。左ラッチケーブルTLと回転レバー56との接続点と、右ラッチケーブルTRと回転レバー56との接続点は、180°回転対称の位置にある。
図4には、左ドアハンドル50Lおよび右ドアハンドル50Rのいずれもが操作されていない状態が示されている。この状態において右ドアハンドル50Rが操作されると、右ハンドルケーブルHRの引張線が右ドアハンドル50Rによって引っ張られる。この引張線は、回転レバー56の上端部を右方向に引っ張る。これによって、図5に示されているように、回転レバー56は時計回りに回転し、左ラッチケーブルTLの引張線を右方向に引っ張り、右ラッチケーブルTRの引張線を左方向に引っ張る。左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは左右のストライカを外し、キャノピードアが開けられる。このとき、左ハンドルケーブルHLの管の先端と回転レバー56の下端部との間隔は縮まるものの、引張線は左ハンドルケーブルHLの管に入り込まず、左ハンドルケーブルHLの管の先端と回転レバー56の下端部との間で引張線は撓む。
同様に、左ドアハンドル50Lが操作されると、左ハンドルケーブルHLの引張線が左ドアハンドル50Lによって引っ張られる。この引張線は、回転レバー56の下端部を左方向に引っ張る。これによって回転レバー56は時計回りに回転し、右ドアハンドル50Rが操作された場合と同様の動作によってキャノピードアが開けられる。このとき、右ハンドルケーブルHRの管の先端と回転レバー56の上端部との間隔は縮まるものの、二点鎖線で示されているように引張線は右ハンドルケーブルHRの管に入り込まず、右ハンドルケーブルHRの管の先端と回転レバー56の上端部との間で引張線は撓む。
なお、回転レバー56には、車室で操作可能なノブが設けられてよい。この場合、乗員が車室でノブを操作することで回転レバー56が回転し、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rが動作して、キャノピードアが開けられる。
図6には、ドアオープン機構54に加えて、ロック機構46が模式的に示されている。回転レバー56の回転穴58の下方には、略L字形状のロック溝80が設けられている。ロック溝80のうち横方向に延びた周溝80aは、回転レバー56の中心を中心とした円弧を描いている。ロック溝80のうち縦方向に延びた径溝80bは、回転レバー56の長手方向に沿って延びている。
ロック溝80には、前後方向に延びるロックピン82が挿入されている。左ドアハンドル50Lおよび右ドアハンドル50Rのいずれもが操作されておらず、回転レバー56が反時計回りに回り切った状態では、ロックピン82はロック溝80の径溝80bを移動自在である。
ロックピン82が径溝80bの下端に位置するときは、周溝80aがロックピン82に引っ掛からないため、回転レバー56は回転自在となる。この状態では、左ラッチケーブルTLおよび右ラッチケーブルTRによる力の伝達が許容され、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは解錠された状態となる。
一方、ロックピン82が径溝80bの上端に位置するときは、径溝80bの左右の縁にロックピン82が引っ掛かるため、回転レバー56の回転が阻止される。この状態では、左ラッチケーブルTLおよび右ラッチケーブルTRによる力の伝達が阻止され、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは施錠された状態に保持される。
後述する構造によって、左キーシリンダ52Lおよび右キーシリンダ52Rは次のように動作する。すなわち、乗員が左キーシリンダ52Lにキーを差し込み、施錠方向にキーを回転させると、左キーシリンダ52Lは左施錠ケーブルKLの引張線を引っ張る。また、乗員が右キーシリンダ52Rにキーを差し込み、施錠方向にキーを回転させると、右キーシリンダ52Rは右施錠ケーブルKRの引張線を引っ張る。
左施錠ケーブルKLの引張線が引っ張られ、または右施錠ケーブルKRの引張線が引っ張られることで、ロック機構46はロックピン82を径溝80bの下端から上端に移動させ、径溝80bの上端に保持する。図6には、径溝80bの上端に保持されたロックピン82が二点鎖線で示されている。これによって、回転レバー56は、ロックピン82によって回転が阻止された状態となり、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rが施錠される。
他方、乗員が左キーシリンダ52Lにキーを差し込み、解錠方向にキーを回転させると、左キーシリンダ52Lは左解錠ケーブルULの引張線を引っ張る。また、乗員が右キーシリンダ52Rにキーを差し込み、解錠方向にキーを回転させると、右キーシリンダ52Rは右解錠ケーブルURの引張線を引っ張る。
左解錠ケーブルULの引張線が引っ張られ、または右解錠ケーブルURの引張線が引っ張られることで、ロック機構46はロックピン82を径溝80bの上端から下端に移動させ、径溝80bの下端に保持する。これによって、回転レバー56は回転自在な状態となり、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rが解錠される。なお、ロック機構46の具体的な構造および動作については後述する。
本実施形態に係る自動車ドア開閉機構では、左ドアハンドル50Lおよび右ドアハンドル50Rのうちの一方からハンドルケーブルを介して遠隔操作機構34に、ドアハンドルの操作によって生じた操作入力が伝達される。さらに、遠隔操作機構34からラッチケーブルを介して左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rに操作出力が伝達される。したがって、遠隔操作機構34から左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rに至るまでの機構が、左ドアハンドル50Lおよび右ドアハンドル50Rの両者に対して共通化される。これによって自動車ドア開閉機構の構造が単純化される。
また、左キーシリンダ52Lおよび右キーシリンダ52Rのうちの一方からキーケーブルを介して遠隔操作機構34に、施錠操作または解錠操作によって生じた操作入力が伝達される。そして、この操作入力に応じてロック機構46が施錠状態または解錠状態となり、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rが施錠または解錠される。したがって、左キーシリンダ52Lおよび右キーシリンダ52Rに対してロック機構46が共通化される。さらに、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは、力が伝達される経路の上流側にあるロック機構46で施錠または解錠される。そのため、遠隔操作機構34から左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rに至るまでの間に施錠および解錠のための機構が設けられなくてもよい。これによって自動車ドア開閉機構の構造が単純化される。
さらに、左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rは、キャノピードア10側ではなく車体12側に設けられているため、キャノピードア10が軽量化され、キャノピードア10の操作が容易になる。
上述の実施形態では、ケーブルとして可撓性の管に引張線を挿通したものが用いられている。ケーブルでは、引張線の総ての区間が管で覆われていなくてもよく、ケーブルの管には引張線が露出した区間が設けられてもよい。また、ケーブルとしては、所定間隔で配置された複数の環状の部品に引張線が挿通されたものが用いられてもよい。
また、上記では、車体12における異なる位置として、車体12の左右に左ドア操作部30Lおよび右ドア操作部30Rが設けられた実施形態が示された。これら複数のドア操作部は、車体12の後部、前部等、その他の位置に設けられてもよい。また、自動車ドア開閉機構は、キャノピードアに限られず、その他の種類のドアに対して用いられてよい。この場合、複数のドアラッチが、ドアの形状に合わせた位置に配置されてよい。また、1つのドア操作部に含まれるドアハンドルとキーシリンダは、一体的に形成されていなくてもよく、車体における離れた位置に配置されてもよい。
図7には、左キーシリンダ52Lとその周辺の機構によって構成されるキー操作機構62が模式的に示されている。描画面に向かう方向は、自動車の外側に向かう方向に対応する。また、図7の左方向は自動車の後方に対応し、上方向は自動車の上方向に対応する。
図7には、施錠操作状態および解錠操作状態のいずれの状態でもない中立状態のキー操作機構62が示されている。左キーシリンダ52Lは略円柱形状を有している。左キーシリンダ52Lは左ドア操作部30Lの筐体68を貫いており、左キーシリンダ52Lの一端は自動車の外側に向けられ、左キーシリンダ52Lの他端は自動車の内側に向けられている。自動車の外側に向けられた端面からは、内側に延びるキー穴64が設けられている。キー穴64に適合するキーがキー穴64に差し込まれると、左キーシリンダ52Lはキーと共に回転自在となる。図7には、略円柱形状の左キーシリンダ52Lが示されているが、左キーシリンダ52Lの形状は、自動車の内側から外側に延伸し、自動車の外側から差し込まれたキーを中心に回転する柱形状であってよい。
キー操作機構62は、左キーシリンダ52Lの側面から下側に延出する施錠レバー66Kと、左キーシリンダ52Lの側面から上側に延出する解錠レバー66Uを備えている。施錠レバー66Kおよび解錠レバー66Uは、左キーシリンダ52Lと同一の材料で一体的に形成されてよい。施錠レバー66Kおよび解錠レバー66Uは、左キーシリンダ52Lの中心軸よりも前方で左キーシリンダ52Lを上下に貫く直線上にある。
なお、施錠レバー66Kおよび解錠レバー66Uは、左キーシリンダ52Lの中心軸よりも後方で左キーシリンダ52Lを上下に貫く直線上にあってもよいし、左キーシリンダ52Lの中心軸に上下方向に交わる直線上にあってもよい。さらに、施錠レバー66Kおよび解錠レバー66Uは、直線上にない異なる方向に左キーシリンダ52Lの側面から延出してもよい。筐体68には、ケーブルブラケット70が固定されている。ケーブルブラケット70は、筐体68の内面にネジ止めされたベース板72Bと、ベース板72Bから自動車の内側方向に立設した解錠ケーブル固定壁72Uおよび施錠ケーブル固定壁72Kを備えている。施錠ケーブル固定壁72Kは、解錠ケーブル固定壁72Uの下方で後方斜め下に延びた後、ベース板72Bから突出して下方に延びている。
左施錠ケーブルの管kLの先端部は、施錠ケーブル固定壁72Kの下端付近に固定されている。左解錠ケーブルの管uLの先端部は、左解錠ケーブル固定壁72Uに固定されている。
これによって、支持部材としてのケーブルブラケット70は、左キーシリンダ52Lが図の反時計回り(施錠方向)に回転したときに施錠レバー66Kが離れる位置で施錠引張線74Kを筐体68上に支持する。また、ケーブルブラケット70は、左キーシリンダ52Lが図の時計回り(解錠方向)に回転したときに解錠レバー66Uが離れる位置で解錠引張線74Uを筐体68上に支持する。
施錠レバー66Kは、左キーシリンダ52Lから下方に延びて後方に折れ曲がり、左キーシリンダ52Lの中心軸の左側を上方に見る位置を後端とする。施錠レバー66Kの後端には、引張線固定壁76Kが立設され、左施錠ケーブルの管kLから露出した施錠引張線74Kが、引張線固定壁76Kの引張線挿通穴を摺動自在に貫通している。施錠引張線74Kの先端には球状の施錠引張線ストッパ78Kが設けられている。施錠引張線ストッパ78Kは、引張線挿通穴を通過しない大きさであればどのような形状を有していてもよい。左キーシリンダ52Lが図面の反時計回りに回転したときには、施錠引張線ストッパ78Kが引張線固定壁76Kの前面に引っ掛かって施錠引張線74Kが前方に引っ張られる。
解錠レバー66Uは、施錠レバー66Kと同様の構造を有している。左解錠ケーブルの管uLから露出した解錠引張線74Uは、解錠レバー66Uの引張線固定壁76Uの引張線挿通穴を摺動自在に貫通している。解錠引張線74Uの先端には、施錠引張線ストッパ78Kと同様の解錠引張線ストッパ78Uが設けられている。左キーシリンダ52Lが図面の時計回りに回転したときには、解錠引張線ストッパ78Uが引張線固定壁76Uの前面に引っ掛かって解錠引張線74Uが前方に引っ張られる。
図8には施錠操作状態のキー操作機構62が示されている。施錠操作状態では、左キーシリンダ52Lは図面の反時計回りに回転した状態にある。施錠引張線74Kは施錠レバー66Kによって前方に引っ張られている。施錠引張線74Kが引っ張られることで、ロック機構46は左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを施錠する。
一方、解錠引張線74Uは、解錠レバー66Uにおける引張線固定壁76Uの引張線挿通穴に入り込むと共に撓んでいる。これは、左解錠ケーブルの管uLの先端と引張線固定壁76Uとの間の距離よりも、左解錠ケーブルの管uLから解錠引張線74Uが露出した長さが長いためである。
このように、解錠引張線74Uは、解錠レバー66Uの引張線固定壁76Uにおける引張線挿通穴を摺動自在となっている。これによって、解錠引張線74Uが左キーシリンダ52Lの動きを妨げることが回避される。
図9には解錠操作状態のキー操作機構62が示されている。解錠操作状態では、左キーシリンダ52Lは図面の時計回りに回転した状態にある。解錠引張線74Uは解錠レバー66Uによって前方に引っ張られている。解錠引張線74Uが引っ張られることで、ロック機構46は左ドアラッチ32Lおよび右ドアラッチ32Rを解錠する。
一方、施錠引張線74Kは、施錠操作状態における解錠引張線74Uと同様の原理によって、施錠レバー66Kにおける引張線固定壁76Kの引張線挿通穴に入り込むと共に撓んでいる。
このように、施錠引張線74Kは、施錠レバー66Kの引張線固定壁76Kにおける引張線挿通穴を摺動自在となっている。これによって、施錠引張線74Kが左キーシリンダ52Lの動きを妨げることが回避される。
左キーシリンダ52Lは、施錠操作状態にあるときに、キー穴64に差し込まれたキーに与える回転力を乗員が緩めると、施錠操作状態から中立状態にバネによって付勢されるものであってよい。同様に、左キーシリンダ52Lは、解錠操作状態にあるときに、キー穴64に差し込まれたキーに与える回転力を乗員が緩めると、解錠操作状態から中立状態にバネによって付勢されるものであってよい。
上記では施錠レバー66Kが左キーシリンダ52Lの下側に設けられ、解錠レバー66Uが左キーシリンダ52Lの上側に設けられた構造について説明した。施錠レバー66Kは左キーシリンダ52Lの上側に設けられ、解錠レバー66Uは左キーシリンダ52Lの下側に設けられてもよい。この場合、左施錠引張線74Kと左解錠引張線74Uの配置も上下が逆になり、左キーシリンダ52Lを回転させるときの施錠方向および解錠方向が逆になる。
上記では、左側のキー操作機構62について説明したが、右側のキー操作機構は、左側のキー操作機構62と同様の構造を有してよい。
図10にはロック機構46の例が示されている。この図には、回転レバー56の回転が阻止されていない解錠状態のロック機構46が示されている。図10に示されている上下方向、左右方向、および前後方向を示す矢印は説明の便宜上のものであり、ロック機構46が自動車に取り付けられる際の姿勢を限定するものではない。ロック機構46は、T型レバー84、T型レバー支持柱86、L型レバー92およびL型レバー支持柱96を備えている。
T型レバー84は板状の部材をT型に形成したものであり、上下に延びるレバー本体部84aとレバー本体部84aから右側に突出した腕部84bを有する。レバー本体部84aの中心には回転穴85が設けられており、回転穴85は前後方向に延びるT型レバー支持柱86に貫かれている。T型レバー支持柱86は、ロック機構46を収容する筐体に固定されており、T型レバー84はT型レバー支持柱86を中心に回転自在である。腕部84bには、腕部84bの長手方向に沿った長穴からなるレバー係合穴88が設けられている。
レバー本体部84aの下端部には左施錠ケーブルKLの施錠引張線74Kが接続されている。レバー本体部84aの下端部と同様に、レバー本体部84aの上端部には右施錠ケーブルKRの施錠引張線74Kが接続されている。
なお、図10には、各ケーブルの管とレバー本体部84aとの間の引張線が直線で示されているが、これは説明の便宜上の描写であり、引張線の引っ張り具合によっては、ケーブルの管とレバー本体部84aとの間で引張線が撓む場合がある。
レバー本体部84aの下端部には、右解錠ケーブルURの解錠引張線74Uが接続されている。レバー本体部84aの上端部には、左解錠ケーブルULの解錠引張線74Uが接続されている。
L型レバー92は板状の部材をL型に形成したものであり、左側の力点側区間92aと右側の作用点側区間92bがL字を描いている。力点側区間92aと作用点側区間92bとが結合した部分には回転穴94が設けられており、回転穴94は前後方向に延びるL型レバー支持柱96に貫かれている。L型レバー支持柱96はロック機構46を収容する筐体に固定されており、L型レバー92はL型レバー支持柱96を中心に回転自在である。
力点側区間92aの先端部からは係合ピン90が突出している。係合ピン90は、T型レバー84の腕部84bに設けられたレバー係合穴88を貫通している。係合ピン90は、レバー係合穴88の長手方向に摺動自在である。作用点側区間92bの先端部には、作用点側区間92bの長手方向に沿った長穴からなるロックピン係合穴98が設けられている。ロックピン係合穴98には、回転レバー56のロック溝80を貫通して後方に延びたロックピン82が貫通している。ロックピン82は、ロックピン係合穴98に摺動自在である。
ロック機構46の施錠動作について説明する。施錠のために左施錠ケーブルKLのまたは右施錠ケーブルKRの施錠引張線74Kが引っ張られることで、T型レバー84は、T型レバー支持柱86を中心に時計回りに回転する。これによって、T型レバー84の腕部84bが下方向に移動すると共に、レバー本体部84a側に向けてレバー係合穴88を摺動しながら下方向に向かう力が係合ピン90に作用する。係合ピン90に作用する力によってL型レバー92に反時計回りの回転力が与えられ、L型レバー92はL型レバー支持柱96を中心に反時計回りに回転する。これによって、L型レバー92の作用点側区間92bが上方向に移動すると共に、作用点側区間92bの先端側に向けてロックピン係合穴98を摺動しながら上方向に向かう力がロックピン82に作用する。図11に示されているように、ロックピン82は、回転レバー56のロック溝80における径溝80bの上端に移動し、回転レバー56は回転が阻止された施錠状態となる。
ロック機構46の解錠動作について説明する。解錠のために左解錠ケーブルULまたは右解錠ケーブルURの解錠引張線74Uが引っ張られることで、T型レバー84は、T型レバー支持柱86を中心に反時計回りに回転する。これによって、T型レバー84の腕部84bが上方向に移動すると共に、腕部84bの先端側に向けてレバー係合穴88を摺動しながら上方向に向かう力が係合ピン90に作用する。係合ピン90に作用する力によってL型レバー92に時計回りの回転力が与えられ、L型レバー92はL型レバー支持柱96を中心に時計回りに回転する。これによって、L型レバー92の作用点側区間92bが下方向に移動すると共に、回転穴94側に向けてロックピン係合穴98を摺動しながら下方向に向かう力がロックピン82に作用する。図10に示されているように、ロックピン82は、回転レバー56のロック溝80における径溝80bの下端に移動し、回転レバー56は回転が阻止されていない解錠状態となる。
ロック機構46は、左施錠ケーブルKLまたは右施錠ケーブルKRの施錠引張線74Kがキーシリンダ側から引っ張られることで施錠状態となり、左解錠ケーブルULまたは右解錠ケーブルURの解錠引張線74Uがキーシリンダ側から引っ張られることで解錠状態となる。そして、キー操作機構62によって、キーシリンダに与えられた施錠方向への回転力が施錠引張線74Kを引っ張る力に変換され、キーシリンダに与えられた解錠方向への回転力が解錠引張線74Uを引っ張る力に変換される。したがって、施錠用および解錠用の2本のケーブルに対して1つのキーシリンダを設ければよいため、キー操作機構62の構造が単純化される。
また、キー操作機構62では、キーシリンダとロック機構46との間がケーブルによって接続されている。したがって、ロック機構46とキーシリンダとの間の距離が長い場合や、キーシリンダから見て複雑に入り組んだ位置にロック機構46が配置された場合であっても、キーシリンダとロック機構46との間の機構は単純となる。
本実施形態に係るキー操作機構は、キャノピードアに限らず、その他の種類のドアに対して用いられてよい。すなわち、施錠用に設けられたケーブルの引張線を引っ張ることで施錠状態となり、解錠用に設けられたケーブルの引張線を引っ張ることで解錠状態となるような施錠機構に対して上述のキー操作機構が用いられてよい。